『安全地帯II』八曲目、「つり下がったハート」です。
この曲は…ツインギターの絡みが聴きモノです。いつも同じことばっかり言っているんですが(笑)、安全地帯はなんといってもギターバンドなんです。ボーカルの威力が凄まじすぎたせいで、ボーカルばっかり注目を集める結果になってしまっているだけで、よくよく聴けばボーカルに負けない魅力のあるメンバーたちのアンサンブルこそが、安全地帯の真の魅力だとわたくしは思っております。
注意して聴いていないと聴き取れないのですが、右チャンネル(おそらく矢萩さん)ではフロントピックアップを使用したような丸みのある音、左チャンネル(たぶん武沢さん)ではリアピックアップを使用したようなシャリーンというクリーントーンが聴こえます。このクリーントーンは、MIASSツアーのビデオ(『I Love Youからはじめよう』)で聴くことのできる、メンバー紹介中の武沢さんのカッティングの音と同じに聴こえますので、おそらく武沢さんだろう、じゃあそうじゃないほうが矢萩さんだろう、という安易な推測なんですが。
で、サビでこの二本のギターが入れる刻みが、ズレているんですね。ズレているって書いたらなんだかミスしているみたいでヘンですが、そうじゃなくて、わざとズラしてあるんです。比較的よく聞こえる丸い音が頭打ち、クリーントーンが裏打ち、というとわかりやすいでしょうか。
メンバーは、へ?こんなのできて当然じゃん?と、きっと意識せずにサラッとこなしているんだと思うんですけど、これは二人のギタリストがリズム感覚に優れており、かつリズム隊がほぼ完ぺきなリズムをキープしていることが求められます。簡単に真似できるものではありません。キミたちなんでギター二人いるの?、ああ、高校とか大学で仲良しだったわけね、ってレベルのバンドでは、ほとんどムリでしょう。
そんなわけで、安全地帯なら楽勝だろうけど、そんじょそこらのバンドではムリっぽい、ステキなアンサンブルを聴くことのできる曲なわけです。
ギターソロは、おそらく矢萩さんなんでしょうけど、アームやチョーキングを使ったビブラートが凄いですね。けっして複雑なフレーズじゃないんですけど、同じように弾けといわれても、わたくしレベルでは弾けないです。わたくし人前で「メロディー」のソロを担当したことがあるのですが、似せるのに四苦八苦したあげく、とうとうごまかしてそれっぽく、しかし確実に違うように弾いてしまいました。これは、歌で考えてみるとわかりやすいんですが、玉置さんのように歌える人がほとんど皆無なことに似ています。矢萩さんのソロと、武沢さんのカッティングは、完コピできる自信がほとんどありません。わたくし彼らの曲を20年以上ちょろちょろとコピーしてますが、完コピできたと思ったことは一度もないのです。単にわたくしがヘタクソなだけかもしれませんが。
さて、この曲は、このアルバムのなかでは地味な存在かもしれません。「あなたに」や「…ふたり…」のような、うっとりする歌メロとはちょっと違いますし、「真夜中すぎの恋」や「ダンサー」のような激しさやスピード感があるわけでもありません。
しかし、この曲の凄さはそういう特徴ではないのでしょう。なんというか……この「ダルさ」とでもいうべきところが、妙にクセになる曲です。すでに述べたように、メンバーの凄まじい演奏能力によって緻密に計算・演出されたダルさとでもいいましょうか、心臓の音を思わせるドラム、血液の流れのようなベース、楽器を操る両腕のようなツインギター、そして悩みと安心が同居する不安定な心のようなボーカル、このすべてがメンバーの卓越した技量によって表現されているように思えてなりません。夜明けに聴いていると、この曲が妙に効きます(笑)。いやなに、このアルバムが良すぎて、夜じゅう聴いていて朝になってしまったことがあるもので。
そうそう、歌詞では「時計」初登場かもしれませんね。「青い時計」「時計の針」は、松井さんの歌詞にはしばしば登場するようなイメージがあります。
そんなわけで、安全地帯の、なんというか、バイオリズム直撃な感じの、異色の名曲といえるのではないでしょうか。
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そういやこの曲まだ誰からもコメント頂いてなかったんですね。この名盤で!なんと不憫な……いやわたしの記事がまずいのでしょう。
まだ、誰も書かれていない領域に挑んでみるというセコい戦法に変えます笑
確か、松井さん詩集には「夢に似ている 白い風 ⚪⚪ ありすぎて」みたいな、歌にはないフレーズも載っていましたか。
私も最初聴いたのがもう38年も前になりますが、歌詞の意味とか後付けで、とにかく田中さんのドラム、メロディー、歌声に惹きつけられてここまで来ました。あなたの瞳から 落ちてゆく ロマンスという名の ときめき、と聴いても小学6年の坊主頭には全く意味がわかりません。
紅白歌合戦の歌手欄には、官能的な歌で幅広く支持されている、と更にかいてあって、官能的笑な表現にまたドキッとしたのをよく覚えてます。まあ、少したてば皆自然に知ってしまう、スタンドバイミー的な大人の世界を、はじめから安全地帯というバンドは持っているのであろうことは、子供心によくわかりました。それはテレビに本当によく出てたからだと思います。ひょうきん族にもプルシアンブルーで出ていたのを最近、ユーチューブで観て爆笑しました。では!