2016年11月06日
アトリエ
『安全地帯III 抱きしめたい』八曲目、「アトリエ」です。
こういう暗い曲は、好き嫌いが分かれる……と書きたいところですが、嫌いな人いるの?こんな美しい曲!キャー信じられない!とかも書きたくなります。こりゃー好きずきなのは重々承知なんですが、この曲が嫌いな人は何ゆえにこのアルバムに手を出したのかが大きな謎ではあります。
アコースティック・ギター二本と、ストリングス系のシンセ音、おそらくはこれもシンセで出したオカリナっぽい音、そしてパーカッション……ですね。ベースは入っていないように聴こえますが、これはおそらくライブでも同様で、六土さんはシンセを担当したのでしょう。
「風」のスピードとテクニックによる爽やか感が、一気にスローな寂しさに変わっていきます。この降下感は、なかなかの快感です。
ところが、発売されているライブ盤等で、この順番で演奏されたこの二曲はありません。一番近い『ENDLESS LIVE』でもこの二曲は逆の順(「アトリエ」→「風」)で収録されています。ほかは、「風」はあっても「アトリエ」は収録されていません。
もしかして、この二曲の組み合わせに何か他からはうかがい知ることのできない事情が……「風」を先に演奏してしまうと、アコギ特有の弦の硬さによって指が痛くてたまらなくなるとか(笑)、もしくは、オーディエンスにこの降下感を味わわせるのは興行的に得策でないと判断したか、もしくはメンバーが「アトリエ」を気に入っていない、あるいは玉置さんがこの曲を歌うのが辛くて歌いたくないとか……。
歌うのが辛いとか、オーディエンスの反応とかは、完全にわたくしの妄想ですし、余計なお世話っていうか、そもそもわたくしがどんな妄想をしようと、メンバー的には耳にかすることもないので痛くもかゆくもないわけですが……いやいや、えーと、この妄想も、いちおうそう考える根拠らしきものはあるのです。
それは、松井さんの『Friend』に記されていたことですが、松井さんが、玉置さんの後姿を見て、玉置さんとその当時の奥様との間に、何か決定的な亀裂が生じたと思しき気配を察して、その日の夜に「とてもさみしい詞をぼくは書いた」のだそうです。
つまりこの歌は、玉置さんの辛い思い出を題材にしているわけです。そんなこと言っていたら、一昔以上まえの安全地帯の曲はほとんど全部歌うのが辛いじゃないか、というのも、もっともなのかもしれませんが、この曲ほど辛い思い出にダイレクトに結びつくものが、ほかにあるでしょうか。
「アトリエ」は「キティのスタジオ」で
「屋根裏部屋」は「自室」、
「カナリヤ」は、九月にレコーディングのためにスタジオ入りした「スタッフ」
「なつかしい夢」は、ワインレッドの心以前に抱いていた「ミュージシャンとしての夢」かもしれませんし、もっとささやかな、「家庭を営むという夢」だったかもしれません
「いま逢いにゆく恋人」は、いたのか、いなかったのか……「あなた」に似ていたのか似ていなかったのか…
電話(ベル)が鳴るのは、スタジオの自室なのでしょうか。それとも、東京の住処だったのでしょうか、レコーディング中は本当に誰も出ないことでしょう。
……と、このように、確かなことは何にもわかりませんが、思わせぶり度MAXな歌詞です(笑)。
安全地帯にとってこの時期は、矢継ぎ早に曲をリリースして、勝負すべき時期であったことは確かでしょう。家庭のことを顧みている場合じゃないんでしょうね、だから多くのものを失わなくてはならなかった時期なのかもしれません。あの落合も、三冠王を狙った時期には夫人に子育てをさせてもらえなかった(その機会を失った)と述べているくらいです。
安全地帯はこの後、武道館、横浜スタジアム、海外……、レコード大賞出場、紅白出場、と、日本のロックバンドとしては空前の快進撃を続けます。ですから、この時期に勝負をかけたのは、戦略的には成功したといえるでしょう。
そんな安全地帯、玉置浩二が、戦略上の成功と引きかえにしなければならなかったもの……それをさえも題材にした、悲しいほど美しい曲が、この「アトリエ」なのではないか……などと、わたくしは妄想しているのですが、この曲が後年演奏されなくなるのは、たんにメンバーがこれを大した曲だとは思っていない、もしくは気に入らないだけかもしれません(笑)。わたくしは大好きなんですが。
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その夜、ぼくはとても寂しい詞を書いた、で「アトリエ」が書かれててドンピシャですよね。あれはいい本です。何度読んだかわかりません、最初の詩も最後の詩も。子どもの頃からああいうものを読んでますんで、ちょっとやそっとのレトリックでは感動しません(笑)。
アトリエ。私も中学生の頃にトバさんと同じく、松井先生の書いたフレンドの本をバイブルとして持ち歩いていました。最後の言葉はほぼ暗記してるので、書いてみたいと思います(正確ではないかも)
〜どんなに辛いことがあっても、例え永遠の愛がないことがわかっても、僕らのうたを聴いてくれたすべての人に、愛がもたらす生きる力を忘れないでほしい〜
みたいな言葉で締めくくられてましたっけ。
素晴らしい。
愛のちからで人は生きよう、生きていたいと願う生き物だと、もう安全地帯を聴いて学んでいたんですね。
アトリエです。
私の母方の祖父が亡くなる1年前に祖父の傍で私はフレンド詩集を読んでいて、トバさんも書かれてた恋人との別れの描写からもありましたように、
次の歌はアトリエだろうとの推測がビンゴで、思わず「やっぱり!」と読みながら声を出すと、祖父がニコニコしていたことをアトリエを聴いたりすると思い出すので、私にとって不思議な曲です。
では。
運転にはどうぞお気をつけて!運転中にはこの曲とばしているほうが安全かもですよ(笑)。
またまたやって来ました🎵
この曲・・・実は車で聴いてても飛ばしてたんです!(ごめんなさいっ!)
ちょっと、静かすぎてあまり好みじゃない楽曲だったので。
でも、それじゃ、玉置さんに失礼だろって。
じっくり歌詞を聴いたんです。
「今会いにゆくこの恋人は あなたににてるけど
そう あなたではない」
えっ・・??!!
なんですって??そんな・・・・そんな・・・
今の恋人はどういう存在?
そのあなたっていう人は・・・?!
俄然、悲しくなりましてね。
ハンドル持ちながら泣きそうになりましたよ。いや、泣きました。
「カナリアが来たのは9月 あなたをしらない」
って、勘弁してくれよ!!!ってなりました。
松井さんの歌詞だとしても・・・トバさまの記事読ませていただいて
そうよ・・きっとそう。そうなのよ・・・でもね・・って
独り言ちました。
もし個人的につらい歌詞なら、
涙なしには歌えぬのでは。
もう終わっちゃったんだもの、みたいな寂寥感満載で。
ちなみに、色々曲を組み合わせて、聞く順番を、
風→行かないで→アトリエにすると
しばらく立ち直れそうにない…