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安全地帯・玉置浩二の音楽を語るブログ、管理人のトバです。安全地帯・玉置浩二の音楽こそが至高!と信じ続けて四十年くらい経ちました。よくそんなに信じられるものだと、自分でも驚きです。
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2017年07月17日

海と少年

安全地帯5 [ 安全地帯 ]

価格:2,511円
(2021/4/17 17:16時点)
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安全地帯V 好きさ』三曲目、「海と少年」です。

この曲は、いわゆるバラードなんですが、もう、ひたすらさみしいバラードです。悲しいんじゃありません。さみしいんです。

田中さんのリム打ち、ごくごく抑え目な、スナッピーだけを震わせるかのようなスネア、そして四回だけ、一回目の「涙はそのまま」の直前、サックスソロの直後「あのなつかしい」の直前、そして最後の「涙はそのまま」の直前、「返さなくて」の直前にズドンと打ち据える音……これは、スネアとフロアタムを同時に叩いた音に聴こえますが、これがもう効果的で効果的で……目の前でこの音圧を受けたら、泣けてくるでしょうね。ドラムだけで泣く人も珍しいですけど(笑)、それくらい強弱とタイミングは人の心を震わせる可能性があるのだと教えてくれます。

そして六土さん、いくつかの箇所でアクセントを効かせつつも、原則はけっして歌の存在感を減ずることのないように、いや、歌の存在感を増すためのように、全音符や二分音符を中心に低音を響かせます。また、「あのなつかしい」からの箇所で「ドゥー・ドゥドゥー、ドゥー・ドゥドゥー」とリズムを刻んでいる箇所が、寄せては返す波のようで、忘れても忘れても思い出される想い出のようで、これもまた涙モノです。

さて、ギターですが……サビ、というか、田中さんの「ズドン!」で始まり六土さんが「ドゥー・ドゥドゥー、ドゥー・ドゥドゥー」と弾いている箇所で、短音刻みがわずかに聴こえます。『安全地帯VI LIVE〜月に濡れたふたり〜』だと比較的はっきりと聴こえますが、ギター一本なのか二本なのか、矢萩さんなのか武沢さんなのか、正直よく聴き取れませんでした。音の聴こえる方向からすると武沢さんの音だと思われますが、もしかしてライブではお二人で同じ刻みをしているのかもしれません。この渋さが涙モノ……いや、これはちょっとムリしました、すみません(笑)。この曲は余計にギターを入れないほうがよいと判断されたのでしょう。

さて、一番目立つホーンの音ですが……ご存知の通り、これは一番わたくしの苦手とすることでありまして……、おそらくトランペットなんだと思います。ほんとにおそらく、で申し訳ありません。わたくしトランペットとトロンボーンの区別もよくできないのです。ただ、トロンボーンにある低音部の「ブッポンブッポン」感が聴こえてこないもので、トランペットだと判断しただけなのです。『安全地帯V』ではトランペットは数原晋さん、という方だけがクレジットされていますので、おそらくはこの方が吹かれたのではないでしょうか。Wikiでみると、なんだかとんでもない大物スタジオミュージシャンな感じがする経歴で、うおー、なんでこういうことを知らずに過ごしていたんだろう、という気持ちになります。わたくしの場合、トランペットとトロンボーンの区別ができるようになるほうが先ですけどね、ふつうに考えて。

さて、歌ですが、この曲では、ドラムとベース、トランペットで十分泣けますので、玉置さんの歌が入ると危険なくらい泣けます(笑)。

おそらく中西さんの弾かれたピアノをバックに、「白い砂浜なら」と玉置さんがささやくように歌った瞬間に、気分はもう海です。泳ぐ海でなく、眺める海です。ああー、そうそう、砂浜に一人で寝転んで、誰にも邪魔されたくない気分のときってきっとあるよねー、とか思うまでもなく、主人公と一体化してしまいます。

ただ、それは松井さんの仕掛けた罠でして、

実は主人公は、砂浜で寝転んでなどいないのです。「海をみつめている」のが、砂浜に寝転んでいる「きみ」ですよね。で、その瞳はかつての、「僕」だと言っているんですね。つまり、これは、砂浜に寝転んでいる「少年」を見ている「僕」が語っている歌なのではないでしょうか。

「寝転んでいたら、みつめるのは海じゃなくて空だよ」

うっ!

すると……砂浜に寝転んでいるのは「僕」で、そのほかに、海をみつめている「きみ」がいる……「僕」は何かでふさぎ込んでいるか考えこんでいるかして、誰かが呼びにきても振り向かないような心境にある……のに、「涙はかえさなくていい」などと、「きみ」に思いやりを見せる……?

いやいやいやいや、何をおっしゃるうさぎさん!

これは傷心の少年を、やさしい気持ちでみつめる「僕」(大人)の話だよ。ほらほらほら「心の広さ」を「きみ」が知ることを期待して待っているんだろう? これこそ少年特有の傷心を懐かしい気持ちで思い出してその心情を思いやる大人の歌なのさ!

うーん、と、すっかり話は歌詞の話になっていますが、これは上に色々混乱して書いた通り、もしかしたら幾通りかの解釈を許す歌なのかもしれません。わたくし自身は、傷心の少年をやさしい気持ちでみつめる大人説を採りたいです。わたくしにとって松井さんとは、そういうロマンをもった人なんだと、これまでずっと信じてきたからです。こういう思い込みにかぎって、あっさり新情報によってひっくり返されがちなんですけども、それはそれで心地よいショックがあって、なかなかいいものです。

さて、玉置さんの歌に戻りますが、

どうしてこの人は、こういう歌が歌えるんでしょう……上川盆地育ちで海など知らずに育っているのに……広大な海原が目の前に広がるような、とんでもない説得力です。「その瞳は僕なんだ……」と、ものすごい声量なのに、つぶやいているかのように聴こえる箇所なんか、他の歌手ではおそらく近いニュアンスを出すことすら難しいでしょう。これは本当に、玉置さんだけの能力なのではないでしょうか。しいて言うなら美輪明宏さんなんですが……だいぶ毛色が違いますね。

「涙はそのまま……」で涙をたたえているのは少年の瞳なんですが、こっちの目にも涙がじわっとしてきかねません。松井さんの詞と玉置さんの歌で表現されているだけの、実際には存在しない光景なのに、うっかり自分の若き日の心象風景にとって代わりかねないほどの迫力で歌いあげられます(笑)。わたくし波が荒くて堤防が設けられた海辺(子どもは砂浜へは立ち入り禁止)で幼少期を過ごしましたが、うっかり砂浜で寝転んで海をみつめ暮らしていたんじゃないかと思い込みかねません。ああー、これはもはや洗脳に近いものがあります。

「いいよ いいよ」もなんて破壊力でしょうか。ただ許可しているだけなのに(笑)、何かもう、絶対的安心を与えるかのごとく、聴く者の胸に迫り、心を包み込みます。これは、『安全地帯V』の、この時期から玉置さんの歌に加わった魅力ではないでしょうか。

そして曲は、トランペットソロとエレクトリックピアノの掛け合いを、六土さん田中さんが土台を支えてフェイドアウトしていきます。ああー、これはフェイドアウト許す!(笑)。フェイドアウトは安易な気がしてあまり好きでないわたくしですが、この曲はフェイドアウトせざるを得ないでしょう。ライブバージョンでも、フレーズ的にはまだ思わってないよって感じで終わってますよね。最後まで聴きたいけど、最後があったらつまらないから最後があってほしくない、という、フェイドアウト必須の楽曲といえるでしょう。

安全地帯5 [ 安全地帯 ]

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2017年07月08日

パレードがやってくる

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安全地帯V 好きさ』二曲目、「パレードがやってくる」です。

どうして「どーだい」の次にこんないい曲をもってくるんでしょう、出し惜しみしなさすぎです。あ、いや、もちろん全曲いい曲なんですから、たんにわたくしにとって大好きな曲が二連発で収録されていて歓喜というか、もっとこの二曲は離して聴きたいなあ〜というだけのことです。

川島さんの「カコココ!カカココ!ン!カココ!チロリロリロリリンリン〜」というシンセが効きまくってますよね。八十年代には比較的良く耳にした音色です。アイドル的なバンドや、アイドルそのもののバックバンドで使ってたように思います。まあ、当時はそれが珍しくもなかったのであんまり違和感を感じませんでしたが、いま聴くと「あーあ」って感じかもしれません。安全地帯の実力だからこそこういう強いシンセの音色を装飾音的に「使えた」のであって、実力的に劣る歌手やバンドでは、シンセに「使われる」ことになりかねません。川島さんは、安全地帯のサポートだからこそ思う存分活躍できたような気がしてならないのです。『ドキュメント I LOVE YOUからはじめよう』でみられる川島さんの、この曲を演奏する姿の楽しそうなことったらありません。

いきなりサビの話で恐縮です。前奏〜Aメロでは、「フルフル〜」という、なんだか鳩の鳴き声みたいな音が入ってます、というか、それがリード的な役割ですよね。この音……何なのかよくわからないんです。いや、これもおそらく川島さんがシンセで鳴らしている音なんですが……Sine Wave?あ、よくわからない話をして自分のバカがばれるのは嫌だから、これくらいにしておきましょう。あー、うん、いい音色ですよね(笑)。

CDで耳を澄まして聴いててみると、左右からギターの音が、似た音色で聴こえます。右チャンネルの、おそらく武沢さんが、アコースティックギターでコードストロークによるリズム刻み、左チャンネルの、おそらく矢萩さんが、これもアコースティックギターか、もしくはエレキギターのクリーントーンで、全音符でのコードストローク、そして四小節ごとにキメのフレーズをユニゾンで弾きます。このユニゾンの箇所でなければ、武沢さんがアコースティックギターだとは聴き取りにくいように思われます。あ、いや、わたくしには聴き取りにくいです。まいったな、どうも最近、書けば書くほど、確信がどんどんなくなってくるような感覚に襲われがちです(笑)。音色の聴き分けに関しては、わたくしおそらくそこらのスコア採譜者以下ですので、少しも参考にならないことをお許しください。うーん、『安全地帯II』『安全地帯III 抱きしめたい』の頃に比べて、安全地帯が多様な音色を使うようになったからだとは思うのですが……このアルバムを越えるとこの手の悩みはかなり減ることが予想されますので、頑張れワタクシ!すみません、勉強のために、いまはこの程度の実力で書かせてください。きっと皆さまに何らかの形でご恩返しできるよう努力いたします(笑)。

間奏のギターソロは、オクターブでのユニゾンです。音色的にはアコースティックギターのようでもありますが、アコギにしては不自然なくらいずいぶんサスティーンがあるので、おそらくはエレキギターで重ねて作ったものと思われます。きっとオクターバなど使わず、丁寧に重ねたのでしょう。わたくしこの音色が好きなのですが、ライブだとホーンセクションに演奏されてしまって悔しい限りです。でも、ホーンセクションの音色、豪華ですよね。会場で聴いたら「こっちのほうがいいかも!」とか思うに違いないのです。

さて、六土さんのベースは、前奏ではドーンと全音符、Aメロに入るあたりで四分での刻みに映ります。曲を支えることを最優先する六土さんらしい控えめなベースラインです。サビ、間奏では「ボペボペボペボペ」と、オクターブ上の音と交互に八分で弾いています。これは「風」で聴くことのできた奏法ですね。いかにもパレードがいま目の前を通り過ぎているかのような感覚を演出しています。音色に起伏がほとんど感じられず、一瞬シンセベースかとも思ったのですが、ライブ盤では指弾きで同じ音をお出しになっている様子が見て取れますので、単に六土さんが超絶に安定していただけでした(笑)。 

田中さんも、手数をあまり入れない方針で、フィルイン以外はふつうの八分に徹しているように聴こえます。実はわたくし、こういう曲だったらきっとバスドラは全踏みするんで、田中さんもきっとそうだろうと思っていたのです。ところが今回聴きなおしてみると、バスドラは一拍目と三拍目だけでした。あり?と思って何回か聴きなおしましたが二拍目四拍目にはバスドラが鳴っていないように聴こえます。あきらめずDVDでも確認しようと試みましたが(笑)、やはり踏んでいないようです。うーん、思い込みって怖い、というか、わたくし、自分が聴きたいようにしか音楽を聴いていないのだということを、またまた思い知ってしまいました……。

そんな具合で、この曲ではわたくし、聴き取り五連敗くらいしています。遠藤が故障した時の大洋ホエールズのようです。この状態で玉置さん松井さんの二連戦に挑むのは、危険すぎるような気がしなくもありません(笑)。

危険な第一戦、玉置さんの歌です。あ、いきなり大量失点でコールドです。うーん、「晴れた午後の〜」の一回目のAメロ(ヴァース)と、「昔 恋に〜」の二回目のAメロ(ブリッジ)とでは、玉置さんの声のトーンが変わっているように聴こえますね。「晴れた午後の〜」は若干ささやき声ですが、「昔 恋に〜」は声に張りをもたせ、サビ(コーラス)への弾みをつけているように聴こえるのです。たんにメゾ・フォルテにしただけといえばそうなんですが、「昔 恋に遊んだ きみ」がやってくる(かのような気分になった)ので、心が浮き立った、ざわめいた、という心情描写のように聴こえます。なんと切ない……。

どさくさに第二戦、松井さんの歌詞も語ってしまいます。ダブルヘッダー二連敗です。むしろ、この二つを切り離して語るほうが難しいと初めから知るべきでした。野球ノリで書いてしまったので引っ込みがつかなくなりお見苦しい箇所があったことをお詫びいたします。あの日、「きみ」と一緒にみたパレードが、あの日と同じような午後に、「ぼく」の住む街へとやってくる。当然に、「きみ」と過ごしていたあの日々のことを思い出します。いま「ぼく」はあの頃の日々の恋の楽しさ、興奮、それによる生活の充実感といった感覚を失いそうになっている「つらい日々」の只中にいます。そこへあの日「きみ」とみたパレードがやってくるわけです。「きみ」との日々を強制的に思い出させるかのように。これは悲しい・寂しいのと同時に、それでも何か嬉しい気分にさせられてしまう切ない気分になること請け合いです。

もっとも、この「パレード」は、消防団の出初式とか(笑)の、現実のそれではなく、何かをパレードに見立てたものなのかもしれません。具体的に何か?はわからないのですが……川面を泳ぐ小魚たちとか……アーケード商店街を行き交う人々がわたる横断歩道とか……うーん、具体的な何かを想定してしまうと一気に気分が台無しですのでこれくらいにして、ともかく何かの象徴的なものなのではないか?とわたくしは考えております。だって、パレードって、そんなにやってこないじゃないですか。消防団の出初式とか、夏祭り夜くらいですよ。たとえば『イージー・ライダー』で主人公たちが紛れ込んで逮捕されてしまったようなパレードって、一体何のパレードなんでしょう。わたくしもバイクに乗っている最中に、あー、前方のパレードに混じって逮捕されてみたいーでも頭の茹ったやつにトラックの助手席から撃たれて死にたくはないーとか、アホな妄想をしなくもないのです(バカ)。

ああ、話がすっかりずれました。曲はサビ(コーラス)に入って、玉置さんの声も最高潮、すっかりフォルテです。これは、眼前を過ぎ行くパレードを観ながら、ぼくをあの日に戻してくれ!あの日のように、ときめかせてくれパレードよ!こんなに楽しげな歌なのに、この玉置さんのフォルテが、助けを求める絶叫のように聴こえるのです。ライブ盤ですと、若干この強弱をあまり意識しないで楽しく歌っているように聴こえますね……心境の変化が多少なりともあったのかもしれません。

さて、曲は二番に入ります。この歌詞は昔から謎でした。襟のボタンを外すのは、「先輩……第二ボタンください……」でブチッと外すあれではなく(笑)、ふつうに襟を開けて広げ、解放感一杯で駆け出した、と解するべきなのでしょう。いやー、第二ボタンのアイデアに何年もに引っかかっていました。それじゃ訳が分からないのは無理もありません。

とはいえ、空に名前を投げる、という比喩はまだまだ謎です。なるべく頑張って妄想してみましょう(笑)。

名札の付いた制服を着ているときには、集団内での識別に「名前」を要しますから「名前」を常に意識して生活せざるを得ません。受刑者が自分のナンバーを呼ばれても、自分のナンバーを忘れていて返事をできなければ懲罰房入りになってしまう、に近い緊張感があるわけです。

しかしここは「名前」の必要のない恋のフィールド。名前なんてまったく意識することなく「ぼく」と「きみ」だけで充分のまま、思う存分駆け回れるわけです。これはものすごい解放感です。それこそ少年の頃に草原を駆け回り、膝がすりむけても意に介せず走り続けたときのように、集団内での識別なんて意識する必要はまったくありません。そこで、そんな少年の頃に戻るために、えいっと「名前」という呪縛を自ら解き放ったのです。それが名前を空に投げる、という比喩の意味するところなのではないか……と、現時点では考えております。

あー!うまく考えられたぞ!松井さんそうでしょ?そうだと言ってください!と詰め寄りたくなる気分です。なんて迷惑な話でしょう。例のごとく、「え?そんなこと考えてなかったけど……ただ単に名札の付いた上着を放り投げて走り出したくらいの意味なんだけど……」ですべてが崩壊する仮説です。ああ、切ない……。これは歌詞の切なさとは全然別なんですけども。

「春の詩」は、そんな少年の頃に駆け回った草原のような、恋愛というフィールドを二人だけで駈けた日々の想い出なのです。それを忘れないで、と言いたい気分というのは、わたくしとっくに失って久しいですけれども、というかうっかり思い出すと寝込みたくなるのでなるべく目を背けて生きようと思っている段階ですけども、これも、もっと歳を重ねれば、きっと「ジャンジャン思い出すぜ!どんとこい!」とか、思い出しても少しも心が痛まない悟りの段階とかに行きつくのかもしれません。どんな心境に至るのか、自分でもなんだか楽しみです。玉置さんはどのようなご気分でいらっしゃるのでしょうか。例の再婚騒動で少しだけ垣間見えましたけども、奥様の心中察して余りあるものがあります。

さすがにもう、「きみがほしいことば」は、わかっています。言ってあげればいいんです。というか、意識せずに言ってしまいます。多分に後難をおそれて(笑)。ああ、今日はなんだかパソコンに向かって仕事する気分じゃないな。君の靴でも探しに行こうか、とか。でも、これが言えないんですよね。まだ後でどんなことが起こるか、パターン認識ができていないうちは。ああ、きっとそのくらいの段階が、恋愛にドキドキワクワクしたり、傷ついたり自尊心を保とうとしたりで、かなり楽しい時期なのかもしれません。ドラゴンクエストで、まだ行ってない街やダンジョンが最初のマップにけっこう残っているくらいの時期といえるでしょう。

きっと きっと

最初にその「きみがほしいことば」を口にするとき、確実に何かの階段を登ります。登らないと次の世界が見えませんから登るに決まってるんですけど、それは何か、寂しいことでもあるのです。

おっと!気が付いたらかなり長い記事になっていました。どうやらわたくし、「どーだい」と同じくらいこの曲が好きだったようです。

安全地帯5 [ 安全地帯 ]

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2017年06月25日

どーだい

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安全地帯V 好きさ』一曲目、「どーだい」です。

やっと、この曲を語れるところまでたどり着きました……長かった……といっても当ブログを始めてからまだ一年強ほどですけども。ワタクシ的には、「どーだい」は、「エイジ」「風」などと並ぶ名曲なのです。「エレキギターバリバリ」系ではダントツに一位と言っていいでしょう。

ところが、待ちに待った「どーだい」をやっと書けるというのに、いざその時になると文章が浮かばなくて困ります。これはかなり重症の恋煩いに似た気持ちです。

気を取り直して、曲の最初から……何やら海岸沿いの喧騒のような、海水浴でもはじまるかのような、なんだかわからない演出があります。なんだかわからないんですけど、これからゴキゲンな爽快ソングが始まるぜ!感がいっぱいです。そして田中さんのスネア、玉置さんの掛け声で一気に曲に突入します。

武沢さんがリフを弾き、矢萩さんは刻みとソロを弾く、という組み合わせになっているのですが、これがまた見事なんです。矢萩さんなんてソロ以外はほとんどただ刻んでいるだけなのに、ベストタイミングで武沢さんのリフと絡み合い、これ以外ない!というコンビネーションを作り出しています。弾くことなかったからとりあえず刻んでみました感はゼロです。

そしてわずか四小節で爽快な前奏は終わり、玉置さんの歌が始まります。ライブですと、前奏は八小節ですね。八小節のほうが演奏していて気持ちがいい、というか、メンバーの腑に落ちる感が高かったのでしょう。わたしの聴いたライブ音源はすべて八小節、ついでにいうと一音下げです。これも玉置さんの高音がきつかったからというより、おそらくはそのほうがメンバーの腑に落ちたのでしょう。これにはいろいろな事情が絡み合って「こっちのほうがいいね」となるわけでしょうから、簡単にはわかりません。

そして、歌と同時に六土さんのベースが始まります。基本的にすべて八分刻みで、田中さんと同じく、ひたすらシンプルなリズムキープに徹します。おお、これは初心者でもコピーしやすいですね。スコアは売ってないですし、あってもレアな古本で高いでしょうから、耳コピになりますけど。まあ、コピーってのは本来ぜんぶ耳で聴き取ってあーでもないこーでもないといろいろ試してやるもんですから、市販のスコアなどに頼らないでコピーする練習にはうってつけの曲です。

そんな、初心者でもコピーできそうな、とにかくシンプルなアレンジで、この曲は組み立てられています。テクニカルで複雑なだけが安全地帯じゃないぜ!こういうシンプルでカッコいいロックも、俺たちの得意技なんだぜ!と、見せつけるかのようなカッコよさです。クニハラ派のみんな、見てる〜?あのときコップをスプーンでチンチン鳴らしてこれも音楽だとか言った人がいたよね〜確か〜?とか、そんなこと思うわけないんですけど(笑)。ともかく、安全地帯がこういう曲をやると、ものすごい説得力を発揮します。

この曲が、のちの「I Love Youからはじめよう」とか「情熱」とかの源流になったのではないか?というご意見が、ネット上ではちらほら見られます。たしかに、わたくしもそう思います。しかし、わたくし、「I Love Youからはじめよう」と「情熱」の二曲を、この「どーだい」ほどは好きではないのです。いや、もちろん好きなんですけど、「どーだい」が好きすぎて、のちの二曲はこれに及ばない地位なのです。「どーだい」が太政大臣なら、「I Love Youからはじめよう」とか「情熱」はせいぜい左大将右大将かなー、というくらいなのです。これは単にわたくしの偏った好みのせいなのか、はてまた「どーだい」には、他にない何かがあるのか……。何かがあると信じたいのです。シングル曲ではないこの曲が、シングル曲である他の二曲と同じく2010年の復活ツアーで演奏され、その後も演奏され続けるだけの何かがあるのです。きっと。

目の前でこの曲が演奏されたときの興奮は、今でも忘れません。ビデオの川島さんと同じ指のポーズを作って、大声で歌いました。他の観客もそうでしたので、そんなに迷惑ではなかったと思うんですけど、そのときは迷惑とかそんな気持ちもすっ飛んでしまいました。うう、一生の不覚です。いらっしゃらなかったとは思うのですが、もしわたくしの近辺にお座りになっていた方で、じっくり静かに観たかったのにわたくしめに邪魔されたという方がいらしたら、どれだけお詫びしてよいやらわかりません。本当に申し訳ありませんでした。

この曲から始まる『安全地帯V 好きさ』ですが、アルバムのオープニングとして、こんなに似つかわしい曲は滅多にないでしょう。昔のCMにあった「スカッとさわやか」そのものです。失恋の憂鬱を強く感じさせる『安全地帯V Friend』の印象を一気にひっくり返し、新しいアルバムが始まった!という確かな感触を与えてくれるのです。

「もうこれ以上」ひとりではない、失うものもない、みんな集まれ、思い切り楽しもう!どーだい!……こんなに明るい曲なのに、なぜ涙がこぼれるのでしょうか……もう、松井さんたら……(笑)。ペンタトニック一発に近い矢萩さんのソロが、玉置さんを励ますかのようで、やけに胸に沁みます。玉置さんの底抜けの笑顔での叫びが、つらい過去を振りほどこうとする絶叫に聴こえます。ライブでの武沢さんのコーラスが、玉置さんへの応援歌に聴こえます。田中さんと六土さんのリズムは、つとめて平静を保ち、玉置さんを動揺させないようにニコニコと笑顔を見せているように聴こえます。いったんそう思い始めると、もうそうとしか聴こえなくなります(笑)。

そして、三十年の時を経て、この曲はいまでもライブを盛り上げる曲として演奏されています。これを奇跡といわずとしてなんというべきでしょうか。この曲をこよなく愛するわたくしは、たのむから甲子園の応援とかでは使わないでくれ!趣旨がぜんぜん違うんだよおおおお!とか要らぬ心配をしているのですが、メンバーや松井さん的にはあっさり「え?どーぞどーぞ」なのかもしれませんね。わたくしだけがこの曲を変に神聖視しすぎているというオチがもっともありがちです。好みのアイドルが結婚すると知って悲嘆にくれるあまり、なぜか怒り出すファンのような心境なのかもしれません(笑)。

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2017年06月17日

記憶の森

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安全地帯V Friend』十三曲目、すなわちラストの曲、「記憶の森」です。

この流麗で美しいピアノをアレンジなさったのはトシヤ・タケザワさん、すなわち武沢豊さんのお兄さんの俊也さんだ、とのクレジットがあります。

メジャーデビューなさる前に、ツインギターでキメまくっていた武沢兄弟の兄、そしてこんな美しいピアノフレーズをお作りになる音楽人、武沢俊也さん、いったいどんな人物なんだ!そしてなぜ安全地帯を離れたのか!謎だ!伝説上の人物だ……このまま詳細を知らず伝説のままにしておくほうが神秘性があってよかろう……なんて思うんですが、ご本人はブログを開設されていたりして、勝手に伝説にしてすみませんでしたああああ!という気分になります。

聖飢魔II創始者のダミアン浜田陛下もわたくしにとってそのような人物でしたが、ご本人がビデオメッセージをDVDに載せたり、「サタン・オールスターズ」で共演したり、はてまたTwitterをおやりになったりと、わりと積極的に魔界からお顔をお出しになるものですから(多分にネタ的ですが)、もうそんな「伝説のメンバー」なんて言って楽しもうとすること自体がナンセンスなのかもしれないですね。勝手にわたくしが楽しがってるだけですし。リンゴ・スターの前任者のドラマーのことも、インターネットを駆使して調べればある程度のことが自宅に居ながらにしてわかってしまうことでしょう。意地でも調べませんが(笑)。

さてこの曲、「タタタタ」「(タタタ)(タタタ)」と、一小節の前半が八分音符×4、後半が八分三連×2のパターンでピアノの高音部が奏でられます。たったこれだけのことなんですが、なんと美しいのでしょう!もっと聴いていたいと思うのですが、たったの四小節で玉置さんが歌い始めてしまいます。ええー、ここはもう一回繰り返しで八小節でしょう?とか思うんですが、その歌がまた美しいため、違和感を表明する間もなく引き込まれてしまいます。

そしてそのままたっぷり16小節も聴かせて、曲は展開します。これまでアルペジオ主体だったピアノがコードストローク主体に切り替わります。おおー、ダイナミック!これまでの儚げなピアノが力強い響きへと変わりますので、大きく曲が展開した!感が大きいです。玉置さんの歌も「ゆめ」「まよ」と、二連発で弱起しますので、リズムが大きく変わった!感が強く感じられます。洋楽ですと、aとかtheとかの冠詞やら接頭辞やらがありますから、イチイチ弱起とか言わなくても弱起ばっかりになりがちなのですが、安全地帯の曲は日本語であるにもかかわらずこのように卓越した松井さんの作詞と、天下一品の歌い手である玉置さんの歌唱とが、見事に日本語ロックの壁をあっさり超えます。あっさりすぎて、本人たちは超えているという自覚すらないでしょう。この曲のこの部分は、それがよくわかる(わたくしがそれを思い出させられた、というのに過ぎませんが)箇所になっています。

曲はまたアルペジオ主体の箇所を繰り返します。そして、あのコードストローク主体の箇所もこのまま繰り返すかと思いきや、大音量のストリングスを従えて、曲は別の展開を見せます。これまでEmを中心にしたコード展開だったものが、Gを中心としたものに切り替わります。うおー!大展開!いや、ありがちといえばありがちな構築法なんですが、曲・アレンジのシリアスさと玉置さんの歌が陳腐さなどみじんも感じさせない迫力をかもし出しているので、聴くほうはただただ圧倒されるしかありません。ユベントスとかACミランがふつうにパスを回しているだけなのに蹴散らされ、なすすべもなく次々とゴールを決められてゆく弱小チームのような気分になります(笑)。

静寂な森を思わせる曲、アレンジ、そして歌詞……歌詞が示唆するのはもちろん「記憶の」森ですから、実際の森林を歌った曲ではないのは間違いないのですが、実際の森林に似合う曲であることもまた、間違いありません。もしこの曲がカラオケにあれば、ロケ地はきっと森林になることでしょう。深い霧が立ち込め、一本一本の木がよく見えないように、「記憶の森」のなかでも、かつての記憶がよく思い出せないわけです。ああ、黒沢監督並みに霧を待って、ロケ隊一週間待機、とかしないと撮れませんね(笑)。

これまでの恋物語は、この記憶の森を通過することによって、いわば「新しい世界・物語」へと章を進めるのです。「わかりはじめた」あなたを伴い、前世界のことは「やさしい声だけ」を胸に秘めるにとどめ、いざ新しい世界へ!実際は何もかも記憶に生々しく残っているにしても、それは忘れたことにするのがマナーってもんでしょうし、第一自分にケジメをつけた気分になれません。年をとると「別にそんなに肩ひじ張らなくてもいいんじゃない?過去が消せるわけじゃないし」とか、いささか無粋なことを考えてしまうのですが(笑)。

まだ若々しいふたりが新しい物語を始めるために、きっと思い切って飛び込んだ「記憶の森」で、この怒涛の三部作はその一部を終えます。次回からは『安全地帯V 好きさ』のご紹介にコマを進めたいと思います。

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2017年06月10日

想い出につつまれて

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安全地帯V Friend』十二曲目、「想い出につつまれて」です。シングル「好きさ」のB面、いまでいうカップリングの曲になります。

B面だし、かるーく作った曲だったかなー、なんて思いながら聴きなおしてみましたが、これがどうしてどうして、「夢のつづき」を彷彿とさせる力作ではありませんか。

冒頭に、ジミ・ヘンドリクスかいって思うくらい変なコード、いやGなんですけど、不協和音なんじゃないのって思うくらいへんなGが使われていて、ギターの弾き語りではわたくしいきなりお手上げです。しょうがないのでGでゴマかします(笑)。

これも有名な話だとは思うのですが、玉置さんはコードとかあんまり知らないとおっしゃるんですね。ギターもどんどん変則チューニングしてしまって、次に弾くときに自分で押さえ方が分からなくなってしまい、自分でコピーする羽目になるそうなんです。どれくらい天才なんですか玉置さん……。

ほとんどのギター弾きがそうなんだと思うんですが、まずコードありきで、いくつかのコードの押さえ方を覚えて、コード譜を見ながらジャカジャカかき鳴らしているうちに大体のコードを押さえられるようになり、おれってギター弾けるなあ、と思ったあたりで、車の教習でいう第一段階になります。まだまだ先は長いわけです。

そのうち流れている曲を聴いて、ああ、この曲はこのパターンだなあ、とコード譜なしでだいたい追って弾けるようになったあたりで第二段階なんですが、これだってコードとコード進行の知識や慣れをもとにしているわけで、コードありきには違いないのです。

ところが玉置さんはこの手のことを、どうも全てすっ飛ばし、いきなり「こういうふうに押さえたらギターはこういう音で鳴る」ということを体で覚えてしまったようなのです。これは英語の文法事項はさっぱり知らないのにパーフェクトな英語を話せて書けてしまう、に近いものがありますね。ああこれは過去完了だとかこれは仮定法だとかいちいち思い出しながら話したり書いたりしている人とは次元が違うのです。

やや、曲の解説もせずに、冒頭の変なコードだけにこだわりすぎてしまいました。まだぜんぜん曲は進んでいません。

冒頭からいきなりサビ……いや、この曲、大きく二部に分けられるんですが(間奏はそのうち一部とほぼ同じです)、どっちがサビとか、そんな歌謡曲的な分解や格付けを拒む曲のように思われます。曲作りの段階から、じゃあAメロから作ろうか、次はこういうBメロで、サビはこんな感じかな?みたいな、曲の構成ありきでそれにあてはめて曲を作るような、そんな曲作りをしていないんじゃないでしょうか。それはギターのコードなりコード進行なりを先に覚えなかった玉置さんの天衣無縫さとおそるべき才能の高さを示すことでもあります。

そんな話ばかりだと一向に曲が先に進まないので(笑)、じゃあ冒頭のメロディーをAパート、展開後のメロディーをBパートと便宜上呼ぶことにして、Aパートですが……

最初だけジャーン!とドラム・ベースがなり、しばらくはギターの伴奏……これも贅沢なツインギターによるものと思われますが……これも、聴けば聴くほどあの二人が弾いているギターじゃないのか?と思えてきただけで、当初はシンセだと思っていた音色です。ただ、和音がギターのそれに聴こえますし、クリーントーンの達人たる矢萩さん・武沢さんなら、これくらいのことはやりかねない!とわたくし常日頃から思っておりますもので、ギターにしか聞こえなくなってきたんですが、こういう伴奏がほしいときはシンセを第一に考えるでしょうし、シンセで済ますでしょう……安全地帯はギター・バンドなんだ!ということを、こういう曲でこそ感じられるようになってきました。『リメンバー・トゥ・リメンバー』の頃の、バリバリエレキで喜んでいた当ブログも、思えば遠くに来たものです(笑)。

そして繰り返しの冒頭から、田中さん六土さんが本格参入します。タメてタメて……落合の流し打ちのような老獪さで曲を展開させます。さらに重ねられる、ストリングスの音と、そして鳥の鳴き声のようなホーンの音、さすがにこれはギターではないでしょう(笑)によって、曲は一気にゴージャスになります。そのまま、曲は短いBパートに突入します。キーはGですから、展開後、C→D→Gのスリーコードを基本とするのがわたくしのような凡人ですが(笑)、玉置さんはCmをいきなり使います。これが、「こんなに好きでいたと」の箇所で感じる「うお!大きく展開したな!」感の正体でしょう。だいたいのコード進行はC→D→Gに沿っていますから、おおむねセオリー通りなんですけど、それは玉置さんが狙ってそうしたものではないわけです。

それにしてもこのBパート、玉置さんのファルセットによる高音ボーカルの、何と美しいことか!そこで歌われる歌詞の、なんとせつないことか!口笛によって奏でられる間奏をはさんで、このBパートは繰り返されます。季節が変わり人の心もうつろいゆくのは古今東西きっと同じなのですが、その理に身を委ねることにためらいを覚えるという歌詞も、古くから洋の東西を問わずにあったものです。しかし、このときの玉置さんにこれを歌わせるという選択は、松井さんの超ファインプレーといえるでしょう。陳腐さや使い古された感の皆無な、信じられないほどのリアリティの高さがそこにはあります。

シングル「好きさ」は「Friend」のわずか二か月後にリリースされ、安全地帯の物語が早くも第二章に入ったことを印象付けるのだったといえるでしょう。そこにこのカップリング「想い出につつまれて」は、「好きさ」の「動」に対して「静」の役割を負わされたものです。そしてアルバム『安全地帯V Friend』においては、「Friend」で終わった第一章を、第二章へと誘う静かな導入の任を与えられていたように思えるのです。

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2017年06月04日

約束

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安全地帯V Friend』十一曲目、「約束」です。

「Friend」後の、やや攻めすぎな感のある曲三連発とうって変わって、聴きやすいことこのうえないギターポップになっています。

ああ、ホーンの音が目立ちますんで、ブラスロックとかいったほうが世間のジャンル分けに近くなるとは思うんですが、当ブログ的には安全地帯の曲は九割がたギターロック、ギターポップということになります(笑)。この曲でも、武沢さんのものと思われるクリーントーンばっかり聴こえてしまうのだから、半ば病気かもしれません。すこし注意して聴けば、サビの箇所における、矢萩さんのものと思われるアルペジオや刻みも聴こえてきますし、それが効果的に鳴らされていることにも気づきます。これがまた抑制の効いた素晴らしい音で……とか、いつもの話になるのでこの辺にしておいて(笑)。

イントロとAメロBメロは、六土さんのベースがホーンとリズムを合わせ(逆か?)、田中さんがリムの音(カツ!カツ!という音)で全体のリズムを取りバスドラで六土さんのベースにおおむね歩調を合わせる、というリズム隊の基盤に乗せ、武沢さんがシャリシャリシャリーン!シャリシャリシャリーン!とクリーントーンで思う存分リズムギターを響かせる、そしてアオリはシンセとホーンに任せるという作戦ですね。この三人が奏でる軽やかなリズムの、なんと心地よいことか!

そしてサビでは、田中さんはこれまで我慢してたかのようにスネアをバシ!バシ!と叩きながらも、これまでのリムの音もコンビネーションに組み込んでリズムを豊かなものにします。そしてここが肝心なのですが、ハイハットをシャンシャン派手に鳴らします。しかしけっして目立つほどの音量では収録されていないという……これは実に渋いです。田中さんはきっと、ドラマーなら誰でも簡単に思いつくフレーズだけど……とか呆れ顔で言いそうですけど、わたくしのような勢いばっかりのロック馬鹿は、その細かい配慮が当たり前に行き届いた職人技にしびれるわけです。

さらにサビでは、そう、矢萩さんのものと思われるギターが、甘い音色で刻みと単音リフで玉置さんの歌に対するオブリガート兼アオリ的な役割を果たします。これがまた効いています。「トゥクトゥクトゥクトゥク……ウィウォーーン!」と、擬音で書くと滑稽になりかねませんが、こうとしか書きようのないこのフレーズ、ぜひ耳を澄ませて浸ってください!なんとカッコいいんでしょう。わたくし、自分のオリジナル曲でずいぶんマネしたものです。あ、それはパクったというのか(笑)。

さて、歌詞と歌ですが……

曲調はこんなにも爽やかなのが、なんと切ないことか!これは、失われた恋にとらわれ続けている心情を歌ったものです。なんでまた、こんな時期に!ああ、もちろんわざとなのでしょう(笑)。玉置さん、何もご自分の失恋をネタになさることはないでしょう、聴いているこちらは胸が詰まってしまうじゃないですか。ああ、もちろんそれを求めて聴いてるんですけども(笑)……とまあ、なんとも、玉置浩二という歌手がいかなる生き様を見せているかを、まざまざと見せつける曲であるといえるでしょう。

80年代中盤にはすでに、太田祐美さんがほんとうに木綿のハンカチーフをくださいと、故郷を離れた恋人に言ったとは誰も思えないような時代になってきていました。歌の世界は完全に作り事なんだということを中学生ですら理解してきたのです。そのご時勢で、玉置浩二は本当に自分のことを歌っているんだ!と大の大人にさえ思わせたこの迫力たるや、そんじょそこらの歌手にできることではありません。中森明菜さんが「難破船」を歌ったのがそれに近い迫力を感じさせましたけど、同時にあれは加藤登紀子さんの曲だということもみんな理解してましたから中森明菜さんの恋愛沙汰に関するリアリティはあんまり感じませんでしたし、いっぽう加藤登紀子さんの「難破船」はどう見てもマジでしたから(笑)、ロマンチックを通り越して恐怖に似た感覚さえあったものです。安全地帯の楽曲は、圧倒的な技量を駆使して、まさに絶妙のさじ加減で、ちょっと痛いくらいのロマンチックな恋物語を私たちに与えてくれたといえるでしょう。

歌詞中に織り込まれた、去った恋人あての手紙が届くとか戻ってくるとかのパターンはのちの「ひとりぼっちの虹」でも使われたものですね。恋と生活とが密接に関連したものであることを、恋愛のさなかにある人にふと思い出させる効果を抜群に発揮しています。そうなんです。恋はなんだか、二人だけのプラネタリウムみたいに非現時的な時間を私たちに与えてくれますが、実は、それは全部社会とか生活とかの一シーンの連続であって、間違いなく現実の出来事であるわけです。「ふたりの消息」を知らない差出人にとって、ふたりが別れたことなど、あずかりしらないことですので、あっさりと手紙を投函するでしょう。郵便局にとっては、それがだれそれの恋人あての手紙であるのか、税金督促状であるのかはまったくもってどうでもいいことですので、恋人に去られて傷心のさなかにある人にも、あっさりと手紙を配達してくれます。失恋の二次被害とでも呼ぶべきこれらの出来事は、じわじわと効くんです。

あなたと一緒に「夢」みたものを一人になってもまだ追いかけていて、まだ終わったと認めたくないけど終わってしまった「夏」を思い出し、そしてあなたと暮らしてきた生活の痕跡に囲まれて暮らす……ああ、恐ろしい(笑)。

つい先日、玉置さんがNHKのSONGSに出ていまして、どんなにつらいことがあっても、歌をやめたいと思っても、自分は「これも歌にしよう」とする歌手なんだ、といった旨のことをお話になってました。それで、わたくしの中でこの「約束」のリアリティがまた少し上がってしまいました(笑)。30年もたっているのに!しかもぜんぜん別のことを話していたのに!どうなっているんですか玉置さん!(完全に筋違いな賞賛)

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2017年05月28日

不思議な夜

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安全地帯V Friend』十曲目、「不思議な夜」です。

タイトルが示す以上に、不思議な曲です。まず、コード進行がさっぱりわかりません。おおざっぱにいうとD♭とCmの繰り返しなんだと思うんですが、キーに合わない音がバンバン出てきて、ほんとにこれでいいのか?と悩んでいるうちにサビらしきキメで一番終わり、「ヒイ〜イ〜イイ〜」と玉置さんが歌う背景にポクポクとD♭とCmの繰り返し……という、川面を流れる枯葉のように非常に無常観の漂う曲です。

間奏に派手なストリングスパートがありますが、ここはここで半音ズレのコード進行を多用した信じられない曲になっています。しかもそれが流麗なストリングスの音色に彩られ、かなりカオス感が高いものになっているのです。のちの、玉置さんソロの『All I Do』の「1/2 la moitie」を先取りしたかのような、かなり風変わりな曲といえるでしょう。

あまりにも風変わりで受け入れられにくそうなのに堂々と一曲として存在しているため、もしかしてこれはこういうジャンルがこの世にあるのではないか?と思っているのですが、今日の今日までこの手の曲には他で出会ったことがありません。どなたか、この手の曲をヨソで聴いたことがあったら、ぜひ教えてください。

そして、これはそんなに珍しくもない手法なんですが、コードの切り変わり目が八拍目(四拍目のウラ)なんです。エクストリームの「More Than Words」すら満足に弾けないワタクシには、かなり難易度の高い曲となっています。や、これはわたくしがリズム音痴だというだけなんですけども、この曲ではそのリズムが不思議感・カオス感を一層高める効果を持っています。

しかも、アレンジまでもが不思議です。ひたすらン・チャーン・チャーチャーテレレレレレ〜と繰り返されるクリーントーンのギター、あまりなじみのない音のドラム、ブヨンブヨンとうなるベース(フレットレスか?と思いきや、たまにズシーンとエレキベースとしか思えない音が聴こえてくるから油断できません)、バストロンボーン?フルート?によるアオリ、グラスを叩いたような音……と、ロックバンドの標準装備をほぼ無視した編成になっています。わたくし、たとえ安全地帯のレコーディングに参加させてくださるという千載一遇のチャンスを与えられても(ありえないですが、もののたとえで)、この曲と前曲の「こわれるしかない」だけはお断りしたいです(笑)。リズムが難しすぎて、脱走してしまうに違いありません。

さて、歌詞ですが……

わからん!

曲があまりに不思議すぎて、それに幻惑されているのでしょうか、歌詞のほうまでさっぱりわかりません。

TVショーを騒がすカップルが、夏の夜に二人でTVの付いた部屋にいる……「新しい恋人発覚!」とかなんとか、ワイドショーの憶測があまりに的外れすぎて、「あっはっは、君があんなこというからだよ」という気分になる……「あー、あれは誤解を招いたかもなあ、まずかったなあ、あ、これはばれていない、よかった助かった」とかなんとか、TVをみながらちょっとハラハラしながら、新しい恋を楽しんでいる、もしくは旧交を温めている(笑)情景であろう……と、なんとか想像力の限りを尽くして推理してみましたが、あてずっぽう感がとても高いなあ、と我ながら思います。

しかし、自分とその周辺が恋愛沙汰でワイドショーや週刊誌を騒がせている最中に、自分でそのワイドショーを見るってどんな気分でしょうかね。いかりや長介さんが「自分が今出ているTVを見て笑っている光景を見られてうれしかった」的なことを『だめだこりゃ』で語ってましたけど、この曲の場合はそんなうれしいものじゃなさそうです。でも、耳のそばを飛び回っている蚊のような、うざったいマスコミをかわしたり遠ざけたりする作業にはうんざりしながらも、いま進行中の新しい恋にせよ復活した恋にせよ、それで多少心が浮き立っているのは確かなわけです。ああ、それはもう不思議な気分であり、不思議な夜であるに違いありません。

これは安全地帯初心者には「いまのところはまだ楽しめないかもしれませんよ」と教えてあげたい曲です。しかし、これはたまに出てくる玉置節のひとつであって、安全地帯・玉置浩二の音楽を楽しむ人生の回廊で、ひとつのカギになる曲であるのは間違いありません。ですから、「Friend」を聴いた後に次の「約束」まですっ飛ばされがちではあるでしょうけど、それはとても惜しいことであるとも付言しておきたいです。

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2017年05月21日

こわれるしかない

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安全地帯V Friend』八曲目、「こわれるしかない」です。

リズムが結構複雑怪奇な曲で、曲をパーフェクトに覚えていないと、これは演奏できそうもありません。最初のうちはベースとドラムにちょっと惑わされながらもなんとか「イチニサンシー」と口ずさんで、なんだただの四拍子じゃん驚かせやがって、とか余裕こいているんですが、サビの近辺から、あり?ああ、「Lazy Daisy」と同じ一瞬の二拍子か、あ?あれ?あれれれ?と、わけがわからなくなります。

「もう」「こわ」「れ」「る」で四分音符四つ分ですから、その前の一拍が加わって五拍子、「あな」「たは」「こわ」「れ」「る」で同じく五拍子かと思いきやその前にも一拍ありますので六拍子……と、サビはコロコロと拍子が変わります。これは三拍子と四拍子しか体の中にないワタクシのような単純リズム派にはかなり厳しい!

何が凄いって、ただ聴く分にはたいして違和感がないところなんですね。なんでって、そりゃ曲をこういうふうに思いついたからでしょう。この変則リズムしか、この曲には当てはまらないのです。

またまた私事ですが、わたくし学生バンドの頃はどうにかして変なリズムの曲を作ってやろうと頑張っていたのです。別に必要もないのに五拍子にしたり二拍子にしたりして、インテレクチュアルな編曲をすることに情熱を燃やしていたんですね、必要もないのに。初めから変拍子の曲を作ろうと意気込んでいるから、当然変拍子になるんですが、無理やり突っ込んだ変拍子というのは不自然極まりないことになります。これは恥ずかしい!恥ずかしいんですが本人たちは「フフン、ワレワレの知性についてこれるかな?ヘビメタは馬鹿にはできない音楽なのだよ?」とか悦に入っているのですから始末に負えません。

この「こわれるしかない」を、ちゃんと聴いていなかったんですね。聴いていればあんな恥ずかしいことをするわけがありません。こんなにも自然なリズムは、人工の変拍子ソングとはわけが違います。玉置さんの精神・肉体の中から生み出されたものそのままがこれで、メンバーがそれに形を与えた、としか思えません。例によって「アレ?これヘンだよ?ここが合わないからちょっと削らないと」とか、そんなことは一切言わずに、心の中で全員が「ああこうなのね、じゃあこうだね」とか思いながら当たり前に編曲・演奏したに違いないのです。なんという怪物バンド!

武沢さんのものと思われるあの「シャリーン」とした音でのストローク、カッティング、矢萩さんらしき、ごくごく控えめに刻まれるカッティングとアルペジオ、そしておそらくは武沢さんの、サビの裏に織り込まれるリフ、厳密にはリフレインしてないんですけどリフとしかいいようのない複雑なリズムで刻まれたフレーズと、それに絡めた矢萩さんのオブリ、甘いトーンによるソロと、物凄いリズムに乗せて織りなされる凄まじいギターバトル!思わずため息が出ます。学生の頃にこの凄さに気が付くべきだった……あの恥ずかしいデモテープたちは引っ越しのドサクサで失ってしまいましたが、とっくに焼却されたか埋め立て地で朽ちていることを切に願います(笑)。

そしてそして、おそらく「おっ!けっこう大変だな!」とか思いながら、きっとニコニコしながらレコーディングしたであろう田中さんと六土さんに、わたくし最大限の敬意を表したいと思います。わたくしがベーシストだったらきっと文句を言います。ドラマーだったら逃げます(笑)。このお二人が信じくれないくらいの完璧なリズムキープをしたからこそ、ギタリスト二人の、この競演が実現したのです。きっと全体で合わせて曲をある程度覚える時間なんてなかったでしょうに……。

さて歌詞ですが……ああ……「求めすぎれば」にすべてが集約されているようにわたくしには思われます。どうしても、どうしてもそうしたい、そうしてほしい、我を通させてほしいというよりも、相手に「我」になってほしい、同じことを感じてほしい、一体化したい、でもそんなことできっこないんだ……だからもう「こわれるしかない」「おぼれるしかない」、でもそれもできないんだ……という、あの、何というんでしょうかね、人生の中で四〜五年しかない、回数でいうと一、二回でもうお腹いっぱいです、の、分別もそれなりなんだけどワガママさが先に出てしまって失敗しがちな、あの切実だけど甘美な想い出となる時期の気持ちを、よーくぞここまで描き出してくれたものです。わたくしこんな感情をもったことが人生で果たしてあったのか自信と記憶があやふやになるくらいに、鋭く切り取られ描かれています。「怖くなる」だけの「愛のこわさ」は、体験してみたいような体験せずに済むなら済ませてしまいたくなるような……熱い思いに身も心も焦がせてみたい!という若い方には、「けっこうキツイですけど、あなた次第できっと身になります、グッドラック!」と送り出したいです。自分はもういいです(笑)。

「アスファルトにおちてゆく」「あの指輪」は、「あの」と言っている以上、きっと特別な指輪なのですが、そこで「おっと!」と手を伸ばしてしまうにちがいない野暮さを備えてしまった自分を、歳をとったなあ〜でも別に若くなりたいわけでもないなあ〜順番だからね、という気分にさせてくれる曲です。

しかし、玉置さん、こういう歌詞がおそろしく似合いますね……俳優業にも手を染めていったこの時期の玉置さんですが(多忙すぎる!)、歌唱力が物凄いのは当然として、ビジュアル的に、そしてサウンド的に、こういう歌詞の世界の主人公であるとしか思えません。歩くミックスメディアです。それはいくぶんかは演じてもいたのでしょうが、真実の姿の、一側面であったにも違いありません。これだけ真に迫る、鬼気迫る歌というものは、そうそうあるもんじゃありません。ジョン・レノンの「インスタント・カーマ」よりも凄いんじゃないでしょうか……もしかしてこの時期の安全地帯は、ビートルズを超えていたんじゃないのかと思わせる一曲です。

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2017年05月06日

チギルナイト

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安全地帯V Friend』八曲目、「チギルナイト」です。

ソースの確認できない話ばかりで申し訳ありません。この曲は、シングル候補だったそうなのです。もしシングルで発売されていたら、安全地帯にこういう音楽世界があると知らなかった人たちは、さぞたまげたことでしょう。ああ、わたくしもアルバムでこの曲を聴くまでは知りませんでした。先輩風を吹かせて申し訳ありませんでした(笑)。でも、かなり聴き込んでいた人でも、『安全地帯V』を聴く前なら誰でも同じような状況だったんじゃないでしょうか。ぜんぜん歌謡曲然としていないので、評価がだいぶ分かれたことでしょう。そしてそれはセールス的には危険信号を自ら灯すことでもあります。安全地帯はそんなこと全然気にしないでしょうけど。ロックなんですね、いかにも。サウンド自体は『安全地帯IV』の延長上にあるような感じですけど、曲全体の攻め方は『安全地帯VIII 太陽』くらいに入っていてもおかしくないくらい進んだものでした。

歌詞もかなり攻めてます。「チギルナイト」って、何ですか。わたくしがそんな単語を知らないだけかもしれませんが、まあ造語でしょう。「千切る」「契る」「ナイト(夜)」「ナイト(騎士)」「無いと」といったところでしょうか、パッと思いつくのは。これらの意味をいろいろ組み合わせて様々な物語の解釈が可能になるように作られていると考えるべきでしょう。

ピアスをシリアスに千切る夜(怖い!)
邪魔なバランスを捨てる夜
飾りたてたマスカラを千切る夜
男を誘っているようなマニキュアの女性と契る夜

……等々、当たり前に思いつく情景以外にも、さまざまな解釈が可能になっております。これはかなり盛りだくさんの思わせぶりソングですね。

瞳にkissをせびるルージュって、どんなんでしょう……目を見てるんだか唇を見てるんだか……唇を見て「うっ!これはとても唇にはkissできない!そんな完璧なルージュだ!これは瞳にkissしてって言ってるんだな?よーし!」とか思うわけはないので(笑)、正直よくわかりませんが、雰囲気はバッチリです。「愛はブラインド」ですから、本当に瞳にkissしてその間見えなくなっちゃったのかもしれません(野暮すぎ)。

「光線(ひかり)の中を泳ぎながら」の箇所は、初聴の頃に「うっ!」と感激した記憶があります。初聴の頃ですから、まだその表現がわりとよくあるものだとは知りませんでしたが、松井さんが書くと斬新で雰囲気を最高に盛り上げるから不思議です。積み上げてきたものが違うのですね。

さて、アレンジですが、シンセで主旋律を奏でながら、特徴的な16ビートをリズム隊が刻み、そしていかにもな武沢サウンドが空間を丹念に埋めます。リズムが主役といえるくらい、リズムで曲のイメージのかなりの部分を形成しています。

そして、なにか特徴的な、ガガガン!とした音が左チャンネル、グググッ!という鈍い音が右チャンネルにに聴こえますね。何かの打楽器……一斗缶を弱く叩いたような……?シンセで出せる音だとは思うので、川島さんが入れたのかもしれませんね。これらの音がなければ、曲の印象はだいぶ違った、寂しいものになったことでしょう。

そしてBメロの終わりからサビにかけて、ギターのサウンドが変化します。クリーントーンから、やや歪んだ、いわゆるクランチサウンドになります。おそらくここも武沢さんが弾いているんだと思うんですが、このクランチサウンド、透き通った低音がもう!惚れ惚れします。どうしてこんな音作りができるんですか!わたくしだったら歪みちょっと、ボリュームフルの、いわゆるチューブスクリーマーでブーストすることでこういう音を作るんですが、よほどジャストにセッティングしないと低音がけば立ち気味になって、こんな透明感のある音にはならないんです。イコライザーを使ったとか、そういう小手先の機材的なことでなくて、おそらくピッキングとかボリュームコントロールとか、そういう「腕」的なことなのでしょう。うーん、とてもマネできない……。みなさんも耳を澄ませて、サビの右チャンネルに流れるギターをお聴きになってみてください!

そしてAメロからもう一度繰り返して、曲は間奏のツインギター競演へと続きます。これは矢萩さんと武沢さんが一緒に弾いているものと思われます。まずはハモリですね。ドンピシャです。細かい指の動きさえもシンクロさせたかのような、見事なハモリです。そして武沢さん、矢萩さんと掛け合いをして、それぞれのフレーズを弾いて別れます。短いソロですけど、絶品ですね。むしろ長く弾く必要がないです。

さて最後になりましたが、玉置さんのボーカル、サビなんか叫んでいるかのような凄まじさですよね。車でいうとトップギアに入れているかのような声です。「遠くへ」のサビもそうでしたけど、従来の安全地帯では隠していたんじゃないのか?と思えるほどに、このアルバムでは思う存分に歌っているように思えます。安全地帯のパブリックイメージ、というものを本人がどのくらい気にしていたのかはわかりませんが、それを打ち破るかのような弾けっぷりです。

……こういうとき、「昔のほうがよかった」という声が出てくるのは、どのミュージシャンでも同じなんですが、ミュージシャン自身は進化してるんですね。聴衆がそれについていけない、あるいはついていく気がないというだけで。わたくしも、安全地帯を含むごく一部のミュージシャン以外であれば、好みに合わなくなったときに聴かなくなっています。さみしいことですが、仕方ありません。ミュージシャンも聴衆もみんなそれぞれ違う人間ですから、同じ道をずっと辿るはずがないのです。ミュージシャンは聴衆を教育する立場ではないですし、聴衆だってミュージシャンに付き合う義理はありません。安全地帯は、なぜかわたくしの心をずっととらえっぱなしで離してくれそうもありませんけども(笑)。それは小さな小さなことではありますが、きっと一種の奇跡なのでしょう。願わくば、そんな奇跡が皆様にも起こりますように(やけに湿っぽい終わり方)。

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2017年05月04日

Friend(reprise)

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安全地帯V Friend』七曲目、「Friend(reprise)」です。アナログ盤では、ここからB面になります。

わたくしは、前にも申し上げた通り針を落とすのがもったいなくて、アナログ盤を死蔵しているうちに失ってしまった大バカ者ですので、この曲を聴くためにはレコードをひっくり返してもう一度針を落とさなければならない、という経験をしたことがありません。前曲「Friend」が終わるとすぐにこの「Friend(reprise)」がはじまるという、あんまりrepriseの意味がないような聴き方ばかりしておりました。カセットだって、A面が終わってからオートリバースでこの曲が始まるまでに、「Friend」の余韻を楽しむ暇があったはずですよね。

いま不思議に思ったのですが、わたくしはKENWOODのウォーキングステレオを持って歩いていましたので、当然それで持ち歩いて聴きたいときはカセットに録音していたんですが、この「安全地帯V」は録音したことがなかったのです。ほかのアルバムはほとんど録音したカセットがあったんですが……まあ、メタルの110分テープを買う金を捻出できなかったとか、おそらくそんな理由でしょう。それ以上に、このCDは他のアルバムに比べてもかなり高頻度に家で聴きまくっていましたから、持ち歩いてまで聴こうと思わなかったのかもしれません。

さて、この曲、アレンジのことを語るような曲でないことは明らかなのですが、わたくし全曲解説するという執念をもって書いておりますもので(笑)、思いつくことを書いてみたいともいます。

この曲は、オルゴール風の音色で、「Friend」のサビだけを二回繰り返します。AメロもBメロもありません。そこがまたオルゴール風ですね。ただ、オルゴール風でないところは、けっしてエンドレスに繰り返しできないような終わり方をしているところです。最後が、「キューウーワアアアア〜」と、まるでギターのワウペダルを踏んだかのような壊れ方をするのです。シンセの、あの横についているぐりぐり回すダイヤルを使ったか、もしくはミックスの段階で回転数をいじったかしたのでしょう。美しいメロディーに穏やかな音色だった曲で、これは衝撃的と言っていいでしょう。そして曲はそのままポーズなしで「チギルナイト」へと続いていきます。

さてこの曲も、おそらく安全地帯のオリジナルメンバーは演奏していないのではないでしょうか。バンドサウンドはまったく要求していませんし、したがってリハーサルする必要もありません。玉置さんが「ここにFriendの、オルゴールみたいなのあったらいいんじゃないかなあ?」とか言って川島さんと二人で「こんなかな?」とか言いながら作られたのではないでしょうか。「あっ、これ、最後クワ〜ってできる?そのままチギルナイトに続けちゃおう!」……もちろんすべてわたくしの妄想ですが、非常にありそうじゃないでしょうか?(笑)

この曲は一分にも満たない小品中の小品ですが、位置づけ的には大きいものがあると言えそうです。一つには、「Friend」の余韻を膨らませつつ「終える」こと。すなわち、大曲である「Friend」でA面を終えて、少し間をおいて始まるB面の冒頭において、「Friend」の感動を膨らませつつ、聴く者の興奮をいったんリセットするためにクールダウンの間を取ることです。もう一つには、「チギルナイト」以降の新しい物語に、聴く者を円滑に誘うこと。すなわち、「Friend」で終えた、これまでの安全地帯のつくりあげてきた物語を、新章へ突入させるんだということを、聴く者にはっきりと印象付けることです。

ただ、アルバム名は依然として「Friend」ですし、この曲以降のB面にも、「約束」「想い出につつまれて」「記憶の森」と、なんだか過去を引きずっている感じの曲が並びます。「チギルナイト」「こわれるしかない」で勢いをつけた新しい物語の序盤には、まだ前章の余韻が垣間見える描写があるんですね。キッパリせんかい!とか思いつつも、その演出がまたニクいニクい。もちろん、全部わたくしが勝手に考えて面白がってるだけです(笑)。

この「Friend(reprise)」には、きっと「Friend」の余韻を楽しむだけ以上の意味があって、それはおそらく、アナログ盤で意図されていた「間」をとることによってこそ、真意の理解できるものであろう、とわたくしは考えております。

110分テープなんかに録音しなくてよかった。もし録音するなら40分テープ三本でよかったんですね。TDKのメタルだと確か42分でしたけど(いつものパナソニックには46分、60分、90分という当たり前のラインナップしかなかったのです)。あー、やっぱりCD-R六枚に焼こうかな(笑)。

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