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玉置浩二『スペード』八曲目「ブナ(Instrumental)」です。作曲は玉置さんと安藤さんの共同クレジットになっています。
森の奥の静寂を思わせるキーン……という高音に、スタンウェイっぽいボキボキとしたピアノの音、そしてストリングスとも少し違った中音域のボワーン……とした音、これらが組み合わされて幻想的な雰囲気を作っています。一分半ほどの短い曲で、油断していると聴き逃すことうけあいです。わたくし的には前々曲「アンクルオニオンのテーマ」前曲「スペード」と一体の作品なのでこのくらい短いのがむしろ当然なのです。硬質な印象のある「スペード」を柔らかい雰囲気のある「アンクルオニオンのテーマ」「ブナ」で挟んで映画の三幕構成を思わせる壮大な仕掛けになっている(と執筆者が勝手に思っている)わけです。
当時、講談社から『ヤングマガジンアッパーズ』という雑誌が出ていました。ヤングマガジンは絶好調で、このような派生形というか、客寄せのための中堅〜大御所クラスの漫画家を幾人か混ぜたほかは、基本的に新人たちの本誌への登竜門的な位置づけになっている雑誌を刊行することができたのだと思われます。そしてその中堅〜大御所であるところのかわぐちかいじさんも作品をおよせになってました。そしてもう一人、一色まことさんが『ピアノの森』という作品を寄せておられました。そう、のちに『モーニング』に移籍して、しかもアニメ化されたあの名作『ピアノの森』です。とある名ピアニストが思い余って森の中に放置したピアノが野ざらし雨ざらしの経年劣化で当然にその音を失っているわけなんですが、森の端に住む少年だけがそのピアノを鳴らすことができる、幼いころからそのピアノを弾いて育った少年はいつしか天才的な音感と演奏技量を持つに至っており、音楽教師として街に戻ってきたピアノの持ち主を驚愕させ、やがて師匠と弟子として音楽の世界へと進んでゆくという美しい話です。
のちにアニメ化されちゃいましたから、当然に誰かが弾いて音をあてたんですけども、当時は漫画だけでしたから、森のピアノの音はこの「ブナ」のような音なんだろうとずっと思っていました。もちろん安藤さんがスタジオで弾いた音なんですけども(笑)、高音中音の混ぜ方と、そしてピアノの音の処理によるこの幻想的な雰囲気は、物語のピアノが出す音をイメージさせるものだったのです。
話は思い切り逸れてるのは承知の上です。その『ヤングマガジンアッパーズ』、1998年に創刊されたんですがこれがまあ、お下品な作品が多く(笑)、90年代の性とか薬物とか暴力とかに脅かされる少年少女たち的な状況設定の漫画が多かったように思います。これは別に漫画家さんや編集部のせいでなくて、世の中がそういうものを欲していた、それが当たり前だった、という事情によるところが大きいのでしょう。すぐにインターネットの波がやってきて、なにやら可愛らしい「萌え」キャラクターの時代に変わっていって、そういった90年代のお下品さとはまた違った雰囲気が世の中を席巻していったように思われるのです。そんな状況にあって漫画雑誌の売り上げも落ちて行ったのでしょう、『ヤングマガジンアッパーズ』はいつのまにか廃刊、『ピアノの森』もどうなったことやら、わたしも一年くらいしか読んでいませんでしたから状況は全然わかりませんでした(金がなく買い続けられなかった)。でも、あの美しい物語はその後どうなったのだろうと気にはしていたのです。のちに『モーニング』で復活していたと知った時はうれしかったです。
ぜんぜん玉置さんの話じゃないんですけども(笑)、この美しい「ブナ」はわたくしにとってエログロな時代にあって奇跡のような美しい光を放つ『ピアノの森』のイメージを長く担っていました。アニメ化されて音があてられてしまってからは、『火の鳥 望郷編』のロミがいまわの際に戯れたブナの森のBGMです(笑)。
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ツェッペリンもパープルもサバスも、田舎にスタジオ設営してそこに長期滞在して名作アルバム作っていました。都会のスタジオでやるのは新人で予算がもらえないときだけです。もっとも、彼らは衛生とか気にしなくて済むように建物ごと借りるんですがね。もしくは旧貴族の邸宅を買っちゃってそこに住んでスタジオ作るわけです。なんとも贅沢な話ですが、自分を極限まで追い込んで音楽作るのには、それくらいしないとやってられないのでしょう。
玉置さんもそれに近いことをやってたわけです。安全地帯だと伊豆のスタジオ使えましたけど、ソロだと信濃町に通いだったでしょうから、さぞストレスたまったことでしょう。
東京での暮らしに正直疲れちゃったんでしょう。音楽には寧ろ、スッキリとやりたいことに向かえてそのほうが楽だったと思います。
軽井沢の掟?がなにやら在るらしく、先日テレビでやってました。公衆衛生に厳しい街みたい。ジョンレノンが毎年避暑地として来ていて、息子のショーンと遊んだ公園がまだ残っています。