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昔は「Trados さん、頑張って!」とお祈りしながら訳文生成していませんでしたか? 今も、たまにそんな気分になるときがあります。Trados って本当にわからないことばかりです。特に、日本語の情報は少ないですよね。いくら翻訳者とはいえ、日本語の情報が欲しいのです。Trados ユーザーの方々といろいろ情報交換できたらと思っています。




2024年12月19日

ファイルの更新と結合

最近、RWS の公式ブログで新しい記事がたくさん公開されています。その中で「Trados Studioにおけるファイルの更新、追加、結合」という記事が気になったので紹介したいと思います。

この公式ブログの記事は、原文ファイルの更新、追加、結合ができます、という内容ですが、今回の私の記事では、更新、追加、結合の 3 つのうち、更新と結合の 2 つについて説明します。すみません、追加についてはあまり改めて書くことがないので省略します。では、「ファイルの更新」から始めていきましょう。


Freelance 版では「ファイルの更新」は機能しない


公式ブログでは、ファイルの更新のことが「差し替え」と表現されています。私は、この「差し替え」という言葉にまずひかれました。翻訳作業においてとにかく面倒なのは、原文の差し替えです。これをうまく処理できる方法があるのなら、ぜひ活用したいと思いました。

公式ブログによると、「ファイルの更新」機能の一番の特長は、原文が少しだけ更新されて v1.0 から v1.1 になったときに、更新後の翻訳ファイルに「原文 v1.0 を翻訳しているときにエディターに表示されていた一致率や分節のステータスをそのまま引き継ぐ」ことができる点です。翻訳作業を始めてしまってから原文が更新された場合、更新後の原文にメモリから訳文を当て直すことはできますが、これをすると既に訳していた分節はすべて 100% 一致になってしまい、元から 100% 一致だったのか、今回訳した分節なのかがわからなくなります。こうなるのを避けて、元々のステータスを引き継いでくれるのが「ファイルの更新」です。これは、原文の更新以外にも、翻訳作業を始めてしまってから、ファイルの種類や分節規則の設定を変えて原文を読み込み直すときにも便利です。

というわけで、公式ブログで紹介されている「ファイルの更新」機能はとても魅力的な機能ですが、これは Professional 版でしか機能しません。Freelance 版にも「ファイルの更新」という機能はありますが、Freelance 版の場合は単純にメモリを当て直すだけです。ステータスを引き継いでくれることはありません。

こうなってしまう原因は、Freelance 版では「完全一致の適用」を利用できないことです。「完全一致の適用」は Professional 版でのみ利用できる機能です。完全一致の詳細については、以前の記事「完全一致がメモリに入っていない」と、公式ブログ「「100%一致」と「完全一致」の違い」も参照してください。

実際に、Freelance 版で「ファイルの更新」を試してみました。以下は、翻訳作業を始めた後に、分節規則を変更して原文を読み込み直すケースの例です。

まずは、通常どおり翻訳を始めます。中央の欄にあるステータスを見れば、機械翻訳そのままなのか、編集を加えたのかがわかります。青色の背景に「NMT」と表示されている分節は機械翻訳そのままです。背景が白色に変わっている分節は手動で編集しています。また、分節 9 と 10 は、訳文は入力しましたが、確定はしていません。


128_Pasted image 20241215162616.png


ここまで翻訳した時点で、コロンで分節が区切られない方がよいと思い分節規則を変更しました。分節規則を変更した場合は原文を読み込み直す必要があるので、ここで「ファイルの更新」機能を使用します。

Freelance 版で「ファイルの更新」を実行すると以下のようなメッセージが表示されます。ここに表示されているとおり、Freelance 版では「一括翻訳」が行われるのみです。おそらく、Professional 版では「完全一致の適用」も行われます。


128_Pasted image 20241215163410.png


結果は、以下のとおりです。ステータスが引き継がれることはなく、すべて CM か 100% マッチになってしまいます。これでは、機械翻訳を使ったのかどうかがわかりません。また、分節 9 と 10 は確定していなかったために訳文がメモリに入っておらず、入力していた訳文は消えてしまいました。


128_Pasted image 20241215174905.png


さて、一応、RWS の公式ブログには「Trados Studio Professional EditionとFreelance Editionの違い」という記事もあります。ここには、確かに Freelance 版では「完全一致 - 使用と作成」がサポートされないことが書かれています。ですが、「ファイルの更新」についての説明は一切ありません。Trados は Freelance 版で使っている人も多いと思うので、もう少し丁寧な説明が欲しいです。無料で使える CAT ツールが増えているなか、個人でわざわざ購入しているのだから、ぜひとも丁寧な対応をお願いしたいところです。なんなら、機能の制限自体をなくすくらいの対応が欲しいです!


「ファイルの結合」はちゃんと機能します


もうひとつの機能の「結合」は、私は今回初めて知りました。いつからあったのでしょう?? Trados では、複数のファイルをまとめてエディターに開くことは以前から可能でした。このため、細々としたファイルがたくさんあっても、それらを一気に開いて作業することはできていました。これに対して「ファイルの結合」が便利なのは、翻訳ファイル自体を結合するので、バイリンガル レビュー用のファイルも結合された状態で出力されることと、高度な表示フィルターでファイルを生成できるようになることです。

今回は、Feature_1.md、Feature_2.md、Feature_3.md の 3 つのファイルを使って実際に試してみました。結合したファイルは、下図のように表示されます。All_123.sdlxliff が結合によって生成されたファイルです。単語数やステータスは、元のファイルごとに表示することが可能です。


128_Pasted image 20241215214721.png


All_123.sdlxliff を開くと、下図のようになります。見た目は、結合せずにばらばらのファイルをまとめて開いたときとほとんど変わりません。


128_Pasted image 20241215215444.png


バイリンガル レビュー用ファイルを出力する
All_123.sdlxliff をバイリンガル レビュー用に出力すると、3 ファイルをまとめた 1 つの docx ファイルが出力されます。これは、とても便利です。ファイルの結合をしていないと、3 つの docx ファイルが出力されるので、レビューするときはファイルを 1 つ 1 つ開く必要があります。当然、Word 上でスペルチェックをかけるときも、ファイルごとにスペルチェックを実行しなければなりません。これが、1 つのファイルに結合されていれば、まとめて 1 回実行するだけで済みます。

また、変更履歴を残しているときも、この機能は大いに役立ちそうです。変更履歴を残している場合、下図のように複数の分節を一気に選択してコピーすると、変更履歴が認識されず、削除した文字も含めてコピーされてしまいます。このため、細かいファイルを作業していて、かつ変更履歴を残している場合は、Trados 以外のツール (Word や Just Right! など) でチェックをしようと思うととても面倒でした。変更履歴の詳細については、以前の記事「変更履歴は本当に必要?」も参照してください。


128_Pasted image 20241215221125.png


バイリンガル レビュー用のファイルは docx 形式になるので、変更履歴が正常に認識され、変更後の文字だけをコピーするのも簡単です。1 つのファイルにまとまって出力されていれば、一気にコピーして外部のツールに貼り付けることができます。


高度な表示フィルターでファイルを生成する
高度な表示フィルターの「生成」機能も、複数のファイルをまとめて開いているときは使えない機能ですが、ファイルが結合されていれば正常に使用できるようになります。高度な表示フィルターの詳細については、以前の記事「2021 で新しくなった表示フィルタ」も参照してください。

高度な表示フィルターの「生成」機能は、フィルターをかけて抽出した分節だけを sdlxliff ファイルとして出力する機能です。たとえば、以下の図は、[属性のフィルタ] で、[元データ] の [Interactive] を選択して、新規に翻訳した分節と、編集を加えた分節のみを表示しています。この状態で上部のメニューにある [生成] をクリックすると、現在画面に表示されている分節だけを含む sdlxliff ファイルを生成できます。


128_Pasted image 20241219185745.png


複数のファイルをエディターで開いている場合、その複数ファイルに対して画面上でフィルターをかけることはできますが、そのまま複数ファイルをまとめて sdlxliff ファイルを生成することはできません。これが、ファイルを結合しておけば、フィルターをかけた状態で正常に sdlxliff ファイルを生成できます。


今回は以上です。「ファイルの更新」は Freelance 版では機能しないですし、「ファイルの結合」もプロジェクトの作成時に結合を行う必要があるので、パッケージを受け取って作業をする個人翻訳者は、パッケージを作成する翻訳会社などに結合をお願いするしかありません。RWS 社が提供している情報は、翻訳会社向けなのか、個人向けなのか、どうもはっきりしないことがよくあります。何かよさげな情報を見つけたときは、どのエディションでサポートされるのか (Freelance 版か、Professional 版か) と、誰が使う機能なのか (パッケージの作成者か、パッケージを受け取る翻訳者か)、といった点を確認することをお勧めします。






  




2024年09月01日

Trados Studio 2024 へのアップグレード (環境の準備)

先日、Trados Studio を 2022 から 2024 にアップグレードしました。ただ、実際に 2024 を使う段階にはまだ至っていないので、今回の記事では、アップグレードして環境を整えるまでの手順をざっと説明したいと思います。私は、Freelance 版 (Plus なし) を使用しているので、以下の説明はすべてこのエディションでのお話です。

手順は、ざっとこんな感じです。
 1. インストール後、アクティベーションはしない
 2. 一括タスクの「連続タスク」を作成
 3. ショートカット キーなどの設定を移行
 4. 各種アプリをインストール

 
1. インストール後、アクティベーションはしない

Trados Studio 2024 をインストールすると、製品のアクティベーション画面が表示されますが、この時点ではアクティベーションは行いません。初めて 2024 をインストールした場合限定ですが、インストール後の 30 日間は試用期間として Professional 版を利用できます。Freelance 版のライセンスしか持っていなくても、Professional 版を利用できるので、試用期間中はアクティベーションをせずに、試用を続けます。Professional 版では、パッケージの作成や、完全一致の適用が可能です。そして何より、一括タスクの「連続タスク」を作成できます (これについては、後述します)。


133_1.png


ライセンスを持っていても、30 日間の試用期間中はアクティベーションを行わず、画面右下の [トライアルを継続する] をクリックしてください。起動のたびにこの画面が表示されてしまうので少し面倒ですが、30 日間は頑張りましょう。



 
2. 一括タスクの「連続タスク」を作成

試用期間中の Professional 版を使ってやっておきたいことのひとつが、一括タスクの「連続タスク」の作成です。Professional 版では、各種の一括タスクを自由に選択してカスタムの連続タスクを作成できます。Freelance 版では、自分で連続タスクを作成することはできず、既定の連続タスクをそのまま使うことしかできません。

ただ、少し裏技的ですが、試用期間中の Professional 版で連続タスクを作成しておけば、その後、Freelance 版でアクティベーションをしても、作成した連続タスクはそのまま使用し続けることができます。すみません、今回の 2024 へのアップグレードで本当に使用し続けられるかどうかはまだわからないですが、前回のアップグレードではこれができたので、今回もできるのではないかと期待しています。

さて、私が欲しい連続タスクは、単純に「翻訳形式への変換」と「訳文言語へのコピー」だけをしてくれるタスクです。私が自分でプロジェクトを作成するときは、メモリの適用などはせず、まっさらな状態から作業を始めたいことが多いので、この単純な連続タスクはどうしても欲しいと思っています。

タスクが 2 つだけなら手動でそれぞれ実行してもよいのでは? と思うかもしれませんが、実際にやってみると個別に実行するのはかなり面倒です。新しい文書の翻訳を始めるときは、設定を変えながら「翻訳形式への変換」を何回か試すこともあるので、変換とコピーを一気に実行してくれるタスクがあると便利です。


連続タスクの作成方法

1) ファイル ビューで、対象のファイルを右クリックして [一括タスク] > [カスタム] と選択し、表示された画面で [連続タスク] ボタンをクリックします。


133_9.png


2) [連続タスク] 画面で [追加] ボタンをクリックすると、下図の連続タスクの編集画面が表示されます。ここで、新しい連続タスクを作成します。


133_3.png


3) 作成したら、ファイル ビューに戻り、[一括タスク] を選択すると、作成した連続タスクが表示されます。(今回は、「変換とコピーと解析」という連続タスクも作成しました。)


133_8.png


これで、連続タスクの設定は完了です。あとは、Freelance 版でアクティベーションした後も、このタスクが表示されてくることをお祈りしておきます。 (たぶん、大丈夫だろうと思っているけど、ちょっと不安です。)


 
3. ショートカット キーなどの設定を移行

次に、ショートカット キーなどの設定を以前のバージョンから移行します。今回は、ユーザー プロファイルを使って設定全体を一気に移行しました。ユーザー プロファイルの中には、ショートカット キーだけでなく、AutoText のエントリーや、エディターの色の設定も含まれています。

ユーザー プロファイルは設定全体を移行できて便利ですが、正直にいうと、この中にどのような設定が含まれているのかはよくわかりません。ショートカット キーも、私は長年使っているので、自分が設定したキーが原因で、Trados の動きがおかしくなっている可能性がないとも言い切れません。アップグレードを機会に、過去の設定をいったん忘れてクリーンな状態で始める、というのもよいかと思います。

それでも、やっぱり設定を一気に移行したい、という場合は、以下の手順でユーザー プロファイルを移行できます。


ユーザー プロファイルの移行方法

1) まず、2022 で現在のユーザー プロファイルをエクスポートします。[ファイル] > [設定] > [ユーザー プロファイルの管理] を選択し、以下の画面が表示されたら、[ユーザーの設定のエクスポート] を選択します。


133_5.png


2) 次の画面で、ファイルのパスと名前を指定し、設定をファイルにエクスポートします。

3) 次に、2024 でユーザー プロファイルをインポートします。エクスポート時と同じように、[ファイル] > [設定] > [ユーザー プロファイルの管理] を選択し、以下の画面が表示されたら、今度は [ユーザープロファイルの変更] を選択します。


133_6.png


4) 次の画面で、2022 でエクスポートしたファイルを指定します。あとは、ウィザードを進めていけば、設定が移行されます。

これで、以前に使用していたショートカット キーなどを新しいバージョンでも使用できるようになります。



 
4. 各種アプリをインストール

最後に、各種のアプリをインストールします。アプリは、[ようこそ] 画面の [RWS AppStore] からインストールできます。左側のメニューで [AppStore] を選択すると、インストールが可能なアプリが一覧されます。

この一覧には、2024 に対応していないアプリは表示されてきません。前回の記事で、2024 年 8 月 28 日現在の対応状況を紹介していますが、いつ対応するかはアプリによって異なります。RWS のチームが公式に提供しているものは、さすがに対応も早いですが、個人から提供されているものなどは、少し時間がかかる場合もあるようです。個人的には、XbenchRegex Match AutoSuggest Provider の対応を、強く、強く、強く、希望します。


133_7.png


一覧に表示されたアプリは、[ダウンロード] アイコンをクリックするだけで、自動的にインストールされます。インストールが終わったら、メッセージに従って Trados を再起動して完了です。


今回は、以上です。2024 を実際に使うようになったら、その機能なども徐々に紹介していきたいと思います。



  



  





2024年08月28日

Trados Studio 2024 アプリの対応状況

少し前に Trados Studio 2024 がリリースされたので、先日インストールしてみました。まだ、本格的には使っていませんが、次回あたりにはインストール手順などの記事を上げたいなと思っています。

今回は、現時点での各種アプリの対応状況だけ紹介しておきます。私はかなりアプリを使っているので、それらが 2024 に対応してくれるまで、2024 を実際の業務に使うことはできません。特に、以下に挙げた Xbench と Regex Match AutoSuggest Provider は、私の場合、必須です。RWS さん、どうか、早めの対応をお願い致します。

なお、以下の「未対応」と「対応」は、あくまで AppStore に表示されている情報です。実際に動くかどうかは試していませんので、あしからず。


※※※2024年12月22日 更新※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※

「未対応」として挙げたアプリは、2024年12月22日現在、いずれも対応されています!

なお、Capybaraさんが開発されたアプリは、今回、公式チーム(Trados AppStore Team)から新たに提供されるようになりました。
Regex Match AutoSuggest Provider
Comment View Plugin
SegmentSearcher

Capybaraさん、Trados AppStore Teamさん、ありがとうございました。

※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※



未対応


Xbench
Xbench のプロジェクトを自動で作ってくれます。

Regex Match AutoSuggest Provider
AutoSuggest 機能を強化するアプリです(とっても便利です! これなしでの作業は考えられません)。

Comment View Plugin
コメントを Excel ファイルにエクスポートします。

SegmentSearcher
検索して、結果を別画面に一覧します。




対応済み


SDLXLIFF Compare
sdlxliff ファイルを比較して、差分を表示してくれます。

Trados Batch Anonymizer
コメントの作成者の名前を変更するために使っています。

DSI Viewer
文書構造情報を表示します。

Export to Excel
sdlxliff ファイルを Excel ファイルにエクスポートできます。

Studio Subtitling
字幕翻訳用アプリです。

Trados Translation Memory Management Utility
メモリ(sdltm ファイル)を TMX 形式に変換するために使っています。

SDLTM Import Plus
sdlxliff ファイルをメモリ(sdltm ファイル)にインポートするために使っています。






  






2024年07月15日

QA Checker の禁止文字に対する除外設定 (無理っぽい)

ちょっと時間があったので、Trados の長年の懸念事項を調べようと思ってやってみたけど、いろいろあって、結局だめだったお話。


英日翻訳のスタイルガイドで「コロンは全角」と指定されている場合は、QA Checker の禁止文字に半角コロン (:) を指定します。ただ、禁止文字に半角コロンを指定すると、ハイパーリンクに設定されている URL などの https:// もエラーになってしまいます。この false positive のエラーが長年の懸念事項でした。


除外の設定があるので、[文字列に基づく除外] に、URL を表す正規表現を指定してみる。(実は、この正規表現の指定にも少し苦労したのですが、それは Trados とは関係ないので、ここでは省略します。一応、この時点で、正規表現に間違いがないことは確認しました。)

[文字列に基づく除外] を設定しても、https:// は相変わらずエラーになる。Trados の画面上に [ヘルプ] ボタンがあったので、とりあえず、ヘルプを参照する。

日本語のヘルプが表示されたので、該当の説明を読むが、よくわからない。ヘルプを読むかぎり、やはり、[文字列に基づく除外] に URL を表す式を指定すれば、除外されそうな気がする。

それならばと、英語のヘルプを見ようと思ったが、ヘルプの表示言語をすぐには切り替えられない。言語の設定では English が選択されているのに、画面上は日本語が表示されている状態。

117_1.png


いったん言語の設定を日本語に切り替えると、ヘルプのトップページに戻される。そこで、表示言語を英語に切り替え、改めて目次をたどって、先ほどのページを表示する。(多言語対応のヘルプとしては、最悪の UX ですね、、)

英語のヘルプをよくよく読んでみて、もしかしたらこの除外は [原文のままの分節や空白の分節がないかチェックする][原文と訳文が同一] のチェックにしか適用されないのではないかと思い付く。

禁止文字のチェックにこの除外設定が適用されるかどうかを確かめようと思って、いつも自分で実験用に使っているサンプル プロジェクトを開く。

QA Checker の設定を開いてみると、読み取り専用だと怒られる。

117_2.png

ここで、先日クラウド機能を調べようと思って、プロジェクトをクラウドにアップロードしたことを思い出す。仕方がないので、メッセージに従い、クラウドの設定画面を開いてみる。

クラウドの設定画面はすぐに開けたが、そこには [文字列に基づく除外] の設定が存在しない。細かく探せばどこかにあるのかもしれないが、ざっと見た感じなさそうなので、クラウドでの設定をあきらめる。

117_3.png


クラウドにアップロードしたプロジェクトをローカルに戻す方法はないかと思って、右クリックのメニューなどを見てみるがなさそう。

プロジェクトをローカルに戻す方法を調べようかと思ったけれど、今使っているバージョンは 2022 で、少し前に新しいバージョンの 2024 もリリースされているので、クラウド機能をせっかく調べるなら、2024 をインストールした方がいいんじゃないかという考えが頭をよぎる。


と、ここまできたところで、もう時間もなくなってしまったので、あきらめました。結局、半角コロンの false positive は解決していません。一応、[文字列に基づく除外] 設定のことは後で調べてみようと思いますが、私の予想があたっているとすれば「解決しない」ことがわかるだけなので、その後はどうしたらいいでしょう?? 除外はできないですかねぇ。






  







2024年06月25日

最近のトラブルシューティング (解決していない件)

最近 (といっても数か月前) に Trados 2022 にアップグレードしたのですが、いくつか不可解な現象に遭遇しているので、自分のメモも兼ねてまとめておきたいと思います。

バージョン 2022 が悪いのか、その後の CU でのアップデートがだめなのか、もしくは以前からのバグに自分が気付いていなかっただけなのか、正確な原因はわからないものばかりです。作業がまったくできなくなる程の大問題ではありませんが、微妙にイラっとするので、ブログのネタにさせてもらいます。


ショートカット キー (F6) で原文と訳文を切り替えられない

現象

これまで、エディター上で F6 キーを押すと、原文エリアと訳文エリアを行き来できたのですが、これができなくなってしまいました。F6 キーを押すと、[翻訳結果] ビューにカーソルが移動します。

ショートカット キーの設定 ([ファイル] > [オプション] > [ショートカット キー]) を確認してみると、以下のように、3 つのアクションに F6 キーが割り当てられていました。以前からこの設定だったのか、どこかの時点でこの設定に変わったのか、それはよくわかりませんが、現状として、この設定ではエディター上で F6 キーを押しても原文と訳文を切り替えられません。


1.png


対応策

仕方がないので、ショートカット キーの設定を変えることにしました。実は、F6 キーで [翻訳結果] ビューや [訳語検索] ビューに移動できるのは、使ってみるとわりと便利だったので、この設定はそのまま残し、「訳文と原文の切り替え」の方を変えることにしました。

私は、現在、原文と訳文の切り替えには Ctrl+キャレット (^) を設定しています (ショートカット キーの設定画面では、Ctrl+Oem7 と表示されます)。キャレットは、キーボード上で数字のゼロ (0) の隣の隣にあるキーです。このキーを選んだ理由は、Ctrl+0 というショートカット キーをよく使うからです。本当は、ゼロ (0) の隣のハイフン (-) を使いたかったのですが、Ctrl+ハイフン (-) は既に他の機能で使っているため、その隣のキャレットにしました。

Ctrl+0 は、下図のように「[Focus Editor] ウィンドウ」というアクションに割り当てられています。意味不明なアクション名ですが、これは、おそらく「エディター ウィンドウにフォーカスする」という意味です。Trados 内のどのウィンドウやビューにいても、このショートカット キーでエディター部分に移動できます。この「エディター部分に移動する」動作と、「原文と訳文を切り替える」動作は、何となく用途が似ていますし、連続して使うことも多いので、近くにあるキーで実行できると便利です。


2 2.png


たとえば、以下のような一連の操作ができます。

 1. 原文で単語を選択して Ctrl+F3 キーで訳語検索をし、
 2. F6 キーで [訳語検索] ビューに移動して訳語をコピーし、
 3. Ctrl+0 キーでエディター部分に戻り (このとき、もともと原文側にいたので、戻り先は原文側)、
 4. Ctrl+キャレット キーで訳文側に移動して、コピーした訳語を貼り付ける

このように文字で書くと面倒そうな感じですが、実際やってみるとなかなか便利です (少なくとも、私にとっては便利です)。

というわけで、問題が根本的に解決したわけではありませんが、「訳文と原文の切り替え」のショートカット キーに Ctrl+キャレット (^) を割り当てる、という対応でよしとしています。

参考までに、今回の記事を書くにあたりコミュニティを調べたら「'Toggle between Source and Target' shortcut issue」という投稿が既に2020年の時点でありました。こちらの投稿でも、「F6 キーが 3 つのアクションに割り当てられていて、それが機能しない」というそもそもの問題は解決されていないようでした。Trados 上のショートカット キーの設定画面でうまく設定できない場合は、以下の設定ファイルを手動で編集せよ、とのことでした。

c:\Users\[USERNAME]\AppData\Roaming\SDL\SDL Trados Studio\Studio16\UserSettings.xml

(ただし、「Studio16」はおそらくバージョン 2021 を表しているので、バージョン 2022 の設定ファイルがどこにあるのかは、ちょっと不明です。)




半角スペースの検索が機能しないことがある

現象

半角スペースの検索が正常に機能しません。ヒットするときと、ヒットしないときがあるので、いろいろ試してみると、どうやら「1 つの文書構造の中で 2 番目以降の分節は検索されない」ようでした。


i3.png


上図は、Word 文書の翻訳画面です (わかりやすくするため、半角スペースを表示する設定にしています。中黒のように見える小さい点がスペースです)。右端の列が「文書構造」を表しています。FN は脚注、H は見出し、P は段落です。赤枠で囲った部分は、P という 1 つの文書構造の中に 3 つの分節が存在する形になっています。

検索できないのは、この赤枠内の 2 番目以降の分節にあるスペースです。赤枠で囲んでいない分節は、それぞれ、1 つの文書構造の中に 1 つの分節しかないので、これらの分節内のスペースは正常に検索されます。


対応策

検索が正常に機能しないなんて、エディターとして致命的じゃない?? という気もしますが、その感情は脇に置いて、対応策を考えましょう。

ダメもとで、正規表現での検索を試しましたが、ダメでした。同じ結果になるか、さらに不可解な結果になります。不可解すぎるので、ここでは詳細は省略します。現在のところ、私が思い付く対応策はアプリの使用と検証機能の使用です。


アプリ「SegmentSearcher」を使う

アプリ「SegmentSearcher」は、現在エディターに開いているファイルを検索し、下図のように検索結果を別画面で一覧してくれるアプリです。このアプリでは半角スペースが正常に検索されます。


i7_p.png


このアプリでは、正規表現での検索や、ステータスでのフィルターなど、細かい検索条件も使用できます。また、普通の検索機能では検索でヒットしたところにカーソルが動きますが、このアプリは検索結果を別画面に一覧してくれるので、現在作業している分節から移動せずに結果を見ることができます。検索した語に色が付く点もわかりやすくて便利です。

普通の検索機能とはまったく動きが違うので完全な代用にはなりませんが、どうしても検索したい場合には使用できます。


検証機能を使う

私の場合、半角スペースを検索したい理由は、主に余分なスペースが入っていないかのチェックです。括弧の前後、タグの前後、読点の後ろなどには余分なスペースが入りやすいので、翻訳後にチェックするようにしています。この目的でスペースを検索するのであれば、ある程度は検証機能で対応できます。検証機能については、以前の記事「正規表現なしで、検証機能を使う」と「検証機能の設定を調整する」も参考にしてください。

[分節の検証] > [訳文分節のチェック] > [禁止文字がないかチェックする]

i4_p.png


上図の入力欄に、禁止したい文字を単純にずらずらと並べて入力しておくと、自動でチェックしてくれます。通常は、全角スペースや全角英数字が混入していないかのチェックに使用します。ここに半角スペースも指定できますが、半角スペースは、英単語の区切りなど、正常なケースで使われることが多いので false positive が多くなり過ぎます。私は、念のために指定していますが、他の手段でのチェックと組み合わせる方が安全です。


[句読点] > [句読点] > [次の文字の前に余分なスペースがないかチェックする]
     [余分なピリオドとスペース] > [連続するスペースがないかチェックする]
                   [訳文分節の末尾に余分なスペースがないかチェックする]


i5_p.png


余分なスペースのチェックについては、ある程度の設定が用意されています。[次の文字の前に余分なスペースがないかチェックする] は、この文言のとおり、「文字の前」にあるスペースをチェックしてくれるので、閉じ括弧や閉じ引用符、コロンなどを設定しておくと便利です。


最終手段は正規表現

上記以外のチェックは正規表現でなんとか頑張ってください。簡単なところでは、、\s で読点の後ろのスペースを検索できます。その他、全角文字間のスペースとか、半角文字と全角文字の間のスペースとか、単位の前のスペースとか、頑張って設定してみましょう! (正規表現については、詳しい解説がいろいろなところにあると思うので、そちらを参考にしてください。)

私の対応策は以上です。最後はかなり投げやりですみません。参考までに、この問題についてもコミュニティに投稿がありました (Error when searching for double spaces in Studio 2022)。この投稿では、ダブルスペースが検索できない、ということですが、シングルスペースでも同じ現象が起きていると思われます。


単位が勝手に翻訳される

現象

QuickPlace 機能 (Ctrl+Alt+下矢印キーまたは Ctrl+カンマ キー) で MB (メガバイト) などの単位が勝手に翻訳されます。たとえば、英日翻訳で原文に「10 MB」とあった場合、入力候補として「10 MB」ではなく、「10 メガバイト」が表示されてきます。

これは非常に面倒なので、ブログのネタにしようと画策していたのですが、実はこの記事を書き始めてから改めて試したところ、問題が再現されませんでした。プロジェクトの設定の問題なのか、メモリの設定の問題なのか、原因はよくわかりませんが、いつの間にか正常に「10 MB」と表示されるようになっていました。


対応策

問題は再現されないのですが、一応、私が取った対応策を紹介しておきます。QuickPlace 機能は、メモリの設定で「認識」を有効にし、プロジェクトの設定で「置換」を有効にすることで、便利に機能します。詳細については、以前の記事「【前編】タイピングを減らそう」を参照してください。

今回は、プロジェクトの設定で「置換」を無効にしました。この設定は、下図のように、[プロジェクトの設定] > [言語ペア] > [(特定の言語ペア)] > [翻訳メモリと自動翻訳] > [自動置換] で行います。この画面で、[単位] チェックボックスのみオフにします。これで置換が行われなくなるので、「10 MB」はそのまま「10 MB」と表示されます。


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ただ、これにはひとつ問題があります。それは、数字と単位の間のスペースです。一般的な表記ルールとして、英語では数字と単位の間にスペースを入れますが、日本語ではスペースを入れません。つまり、英日翻訳で英語の原文に「10 MB」とあったら、日本語の訳文は「10MB」とする必要があります。この調整を自動で行うための設定が [自動置換] > [単位] にあります。


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ここで、スペースの表記ルールに合わせて、原文と同じにする、スペースを挿入する、挿入しない、などを設定できます。ただし、この調整が機能するのは、あくまで自動置換が有効になっているときのみです。自動置換を無効にすると、この調整も実行されなくなります。


今回は、以上です。書いていたら、だいぶ長くなってしまいました。結局、今回取り上げた 3 つの問題はいずれも根本的には解決されていません (最後の問題も、今のところ発生はしていませんが、発生する理由も、発生しない理由もわからないので、再発の恐れはあります)。

特に、スペースが検索できない問題はかなり致命的じゃないかと思うのですが、なんとかならないでしょうかね、Trados さん!!





  




2024年04月21日

IR 文書の前期上書き翻訳を Trados で頑張る

しばらくブログの更新をさぼっている間に IR (Investor Relations) 業界の繁忙期が迫る時期になってしまいました。私は数年前にこの分野に足を踏み入れたのですが、この業界の「繁忙期」といわれる 5 月頃の忙しさは、本当にものすごく、最初の年は衝撃を受けました。

IR (Investor Relations) とは、投資家への広報活動を意味し、投資家たちへのアピールのためにさまざまな文書の翻訳が必要とされます。ただ、「繁忙期」が生じる主な原因は株主総会の招集通知や決算報告書です。こうした文書は、毎年必要とされ、定型的な文も多いので、CAT ツールが活躍しそうに思うのですが、なぜかこの分野ではあまり CAT ツールの使用が広まっていません。

最近は Phrase を使う案件も多少ありますが、ほとんどは Word ファイルでの「前期上書き」翻訳です。前期の原文、今期の原文、前期の訳文、という 3 つのファイルが提供され、前期の訳文に今期の更新箇所を上書きして、今期の訳文を完成させます。

今回は、前回の記事からの Trados をエディターとして (無理にでも) 使おう企画の第 2 弾として、IR 分野の「前期上書き」翻訳を Trados を使って行う方法を紹介します。紹介といっても、これは私が試行錯誤している途中のものです。今年の繁忙期を前に、自分の中での整理として手順をまとめておきたかっただけです。何か効率的な方法がありましたら、ぜひ、ぜひ、ぜひ、ぜひ、ご教示いただきたいです。


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ざっくりとした手順は、以下のとおりです。

 1. 今期訳文のベースを Word で作る
 2. 参考訳をメモリに入れる
 3. 作成した今期訳文ファイルを Trados に取り込む
 4. 翻訳が終わったら、訳文生成して Word に戻す


では、詳しく見ていきましょう。


1. 今期訳文のベースを Word で作る


原文を比較し、更新箇所を訳文に反映する

まず、前期と今期の原文を比較し、どこが更新されたのかを特定します。そして、更新された箇所を今期訳文上に日本語のまま反映していきます。


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目検ではどこが更新されたのかわかりにくいので、私は WinMerge というテキスト比較ツールを使用して更新箇所を特定しています。 (私は WinMerge の操作に AutoHotkey を使用していますが、これについては、以前の記事「文字列を比較する ― AutoHotKey と WinMerge と Trados とレビュー」を参照してください。)


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この比較結果を基に手動で今期の訳文を変更します。数字だけの変更はこの段階で済ませますが、文字の変更がある場合は、この段階では翻訳せず、原文の日本語をそのままコピーします。


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今回は、わかりやすくするため変更箇所に赤色を付けていますが、これは特にそのような指示がなければ不要です。ただ、もしそのような指示があった場合は、Trados 上で編集しているときに色を付けられた方が便利なので、訳文上に、1) 全体が黒で、一部を赤くする、2) 全体が赤で、一部を黒くする、という 2 パターンの書式を組み込んでおきます。これで、Trados に取り込んだときに、両パターンのタグが生成されます。

上記の例の場合は、数字の変更箇所が「1) 全体が黒で、一部を赤くする」にあたるので、「2) 全体が赤で、一部を黒くする」のパターン用に以下のようなダミーのテキストを入れておきます。

  なお、本議案につきましては、監査等委員会の検討がされましたが、意見はありませんでした。



レイアウトを整える

レイアウトはできるだけ事前に完成させます。訳した後に訳文生成してから修正する方法もありますが、私は事前に整えておくようにしています。事前に整えておけば、翻訳中にプレビューをしたときも適切なレイアウトで訳文を確認できます。

・フォントの種類と大きさ
日本語が表示されている部分も、ローマ字を少しだけ入力してみて、英数字用フォントが正しく設定されていることを確認する。

・行間
いろいろな文書からコピーしてくるので、行間が狭かったり、広かったりすることがある。ページ全体を見て整える。

・左寄せ or 両端揃え
これも、コピー元の書式が残り、左寄せと両端揃えが混在することがよくある。

・インデント
「1 行目だけ字下げする」というルールの場合は、訳文が長くなって 2 行になった場合も考慮して、2 行目以降の設定もしておく。


機械的な置換はしない

Word 上では機械的な置換はしません。一括置換などの機械的にできる操作は、メモリやフィルターが使える Trados で行う方が効率的です。人名や「執行役員」といった役職名など、繰り返し登場する表現はつい置換したくなりますが、その衝動はここではぐっとおさえます。

日本語のまま残して Trados に取り込んでおけば、後で QA チェックを行うことも可能になるので、Word 上で置換してしまうより安全です。この段階では、あくまで、チマチマと手動で行わなければならない作業に専念します。



2. 参考訳をメモリに入れる


作業中に見つけた既訳や用語は、メモリとして Trados に取り込みます。私は、Excel で対訳形式のファイルを作り、それを「バイリンガル Excel」として Trados に取り込み、メモリに変換します。(この辺りの詳細については、公式ブログ「Excelを翻訳メモリに変換」、または私の以前の記事「安易にバイリンガル Excel を使っていませんか」を参照してください。)


対訳ファイルの作成には WildLight やテキスト エディターも使う

対訳ファイルの作成はなかなか面倒ですが、過去訳の踏襲は必須ですし、参考となる訳はできるだけたくさん欲しいので、ツールなども使いながら頑張ります。ページまるごとなど、ある程度の量がある場合は WildLight が便利です。そこまで量がない場合は、いったんテキスト エディターに貼り付け、改行の追加や削除をしてから Excel に貼り付けます。(この改行の処理などのために、私は秀丸エディターとそのマクロを使っていますが、その詳細については、別の機会に紹介できればと思います。)


用語ベースは使わず、すべてメモリに登録

私は、人名や役職名などの短いフレーズも、面倒なので用語ベースは使わずメモリに登録してしまいます。本当は、用語ベースを作成して用語認識を有効にするのがベストですが、用語認識はメモリのフラグメント一致でもある程度代用が利きます。また、対訳形式にさえなっていれば、Xbench の検索機能も使えるので、用語ベースの作成は省略しています。


3. 作成した今期訳文ファイルを Trados に取り込む


参考訳のメモリを作成し、今期の訳文のベースが完成したらそのファイルを Trados に取り込みますが、取り込みの前に分節規則の設定を少しだけ変更します。


かっこ内の句点で分節を区切らない

IR の文書では、丸かっこの中に句点 (。) が含まれていることがよくあります。Trados の既定の設定では、かっこの中でも句点があると分節が区切られてしまうので、これを区切られないようにします。

たとえば、以下のような原文があるとします。丸かっこの中に句点があります。しかも、1 つ目の文ではかっこが二重になっています。

  • 吸収合併(会社以外の者との合併(当該合併後当該株式会社が存続するものに限る。)を含む。)又は吸収分割による他の法人等の事業に関する権利義務の承継
  • 他の会社(外国会社を含む。)の株式その他の持分又は新株予約権等の取得又は処分


これを、既定設定のまま取り込むと以下のようになります。句点で分節が区切られてしまいます。


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分節規則の設定を変えることで、以下のように、句点があっても 1 つの分節として取り込めます。かっこが二重になっていても大丈夫です。


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分節規則の設定は、メモリの言語リソースから行います。設定の詳細については、公式ブログ「翻訳メモリの分節規則をカスタマイズする」を参照してください。すみません、今回は以下に図だけ示し、詳しい説明は省略しますが、公式ブログに書いてあるとおりに進めれば大丈夫です。


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英語になっている部分をロックする

分節規則を設定して原文を取り込んだら、翻訳を開始する前に、既に英語になっている部分をロックします。うっかり触って訳文を変更してしまうと困るので、私は必ずロックしています。

「既に英語になっている部分」の抽出には、高度な表示フィルターを使います。[コンテンツ] タブの [原文:] に英数字、カーリー引用符、円記号を示す正規表現 ^[(\p{IsBasicLatin})”“’‘\]+$ を指定し、[正規表現] チェックボックスをオンにします。

この設定は、右上の [保存] をクリックするとファイルとして保存できます。保存したファイルは、その隣の [インポート] から読み込めます。何回も使う条件はファイルとして保存しておくと便利です。


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これで抽出した分節を、すべて選択してロックすれば完成です。下図のように、日本語が残っている部分のみ編集可能な状態になっているはずです。ロックはショートカット キー (Ctrl+L) で簡単にオン/オフができるので、もし過不足があれば手動で調整します。


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これで翻訳の準備は完了です。既訳部分も含めて全文を Trados に取り込むと、既訳部分の分節は英英のペアになってしまいますが、それでも英語での検索は可能になるのでわりと便利です。

ちなみに、今回のサンプル文書を作っていて初めて気付いたのですが、ピリオドで分節が区切られないようです。これは、原文を日本語としているので日本語の分節規則が適用されているから、と思われますが、すみません、未検証です。ピリオドで区切られた方がフィルターなどを使うときに便利なので、この点は要改善です。



4. 訳文生成して Word に戻す


翻訳が完了したら訳文生成をしますが、このとき注意するのがコメントです。IR の文書のときは、申し送り事項を細かく記入することが求められるので、コメントがかなり重要になります。


コメントのユーザー名を変更する

Trados で入力したコメントは、訳文生成した Word ファイルのコメントとして出力できます。ここで気を付けたいのがコメントの作成者として設定されるユーザー名です。Trados 上では、このユーザー名に Windows のログイン名が勝手に使われてしまいます。Trados の本体にはこれを変更する設定がないので、私は Trados Batch Anonymizer というアプリを使ってユーザー名を変更しています。このアプリについては、以前の記事「コメントに表示される名前の変更」を参照してください。

訳文を完成させ、コメントの名前も変更したら、訳文生成を行います。これで、Trados での作業は完了です。後は、生成したファイル上で最終的な確認をします。


今回は以上です。Trados を使うことで効率が良くなっているかどうかは微妙かもしれませんが、私は翻訳そのものの作業とそれ以外の作業を切り分けるという意味でも Trados を使った方がよいと思っています。更新箇所を見つけながら、翻訳をして、レイアウトも整えて、とすべてを一緒にやっていくのはなかなか大変です。それよりも、更新箇所を見つけるときはそれだけに集中し、Trados 上ではひたすら翻訳をしていく、というように作業を分けた方が進めやすいかなと思っています。

今年も繁忙期がやってきますが、少しでも効率的に進められるよう、努めていきたいと思います。






  




2023年12月18日

Trados をエディターとして使うために

だいぶ久しぶりの更新となりました。今年は、いろいろと忙しく過ごしているうちにあっという間に時間がたち、あまりブログを更新できませんでした。が、実は、取引先の入れ替わりなどもあり、来年から Trados の使用頻度が増すことになりました! 奥の深い (闇の深い?) Trados にどっぷりとはまっていきそうな感じです。

さて、Trados などの CAT ツールの機能といえば、翻訳メモリ (Translation Memory、略して TM) が代表的ですが、CAT ツールの機能はそれだけではありません。メモリを一切使わない場合でも、さまざまな利用価値があります。私の場合、Trados の主な用途は「エディター」です。そうです。単なるエディターです。Word より、テキスト エディターより、翻訳作業で文字を入力するなら Trados が効率的です。原文と訳文を並列で参照できる、原文と訳文のどちらからでも検索できる、入力補助機能を使用できる、タグを処理できる、など翻訳作業に欠かせない機能が最初から備わっています。

もちろん、Word やテキスト エディターも、マクロなどでカスタマイズすれば相当便利に使えると思います。しかし、翻訳を始めた当初から CAT ツールを使っていた私の場合、他のエディターのマクロなどより、Trados の方が慣れています。まあ、ただ「慣れている」という理由だけで使い続けることが良いとは思っていませんが、今のところわざわざ他のエディターに変えるほどの理由もありません。

というわけで、私は、Word ファイルなどを渡されて「上書き翻訳で」と依頼されても、できるだけ Trados を使うようにしています。ただ、そうした案件は、自分で訳文生成まで行って元のファイル形式で納品する必要があるので、作業前に必ず「簡単に元の状態に戻せるか」を確認します。

この確認のポイントは「簡単に」です。Trados の便利さと、元のファイルに戻すときの手間を比較して、もし元ファイルに戻す手間の方が大きくなるようであれば、素直に「上書き翻訳」をせざるを得ません。そのため、Trados をエディターとして使いたいのなら、元ファイルに戻すときの手間をできるだけ少なくする必要があります。

今回は、Word ファイルで段落ごとの併記を依頼された場合を例に「簡単に」元ファイルに戻すために使えそうな小技を紹介します。あくまで「小技」です。段落ごとの併記という形式を Trados でパッと生成できるわけではありません。基本的には手動での作業になります。

では、以下のような Word ファイルを段落ごとに英日併記で翻訳してくださいと指示されたとします。このファイルは、私が実際に依頼されたファイルを基に作ったサンプルです。着目すべき点は、文章内にリンクがあることと、コメントが付いていることです。


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1. 段落ごとにコピペし、訳文をハイライトでマーキングする


まずは、段落ごとにコピペして併記の形にし、訳文を入力する側にハイライトを付けます。すみません、最も面倒なこの作業は手動で行います。(もし、何十ページもあるような大きなファイルだったら自動化を考えますが、そもそもこんな依頼をしてくるファイルは 1 〜 2 ページ程度のものが多いので、とりあえず、手動でがんばります。)


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この例では、訳文となる部分へのマーキングとしてハイライトを使っています。このマーキングは、この後 Trados 上で原文と訳文を区別するために使います。マーキングは最終的に訳文生成をした後で削除する必要があるので、うまく削除できそうなものを使う必要があります。Trados の動作から考えると、ハイライト以外に、文字の色もマーキングとして使用できます。

今回のファイルでマーキングにハイライトを選んだのは、文章内にリンクがあったからです。リンクの文字に異なる色が使われているので、マーキングとして文字の色を使うと、後で戻すときにリンクの部分だけ別に色を変えなければならないことになります。逆に、原文にハイライトが使われていたら、マーキングには文字の色を使います。もし両方が使われていたら、面倒ですが、別の色のハイライトを使う、とかですかね。その都度、原文に合わせて適当に考えます。



2. コメントも含めて Trados に取り込む


Word ファイル上で併記の形を完成させたら Trados に取り込みますが、その前にひとつだけ設定をします。今回の原文にはコメントが付いているので、このコメントも Trados に取り込むようにします。コメントを訳す必要がないとしても、Trados に取り込んでおかないと、訳文生成してできあがるファイルでコメントが消えてしまいます。

コメントを取り込む設定は「ファイルの種類」で行います。プロジェクトを作成する前だったら、[ファイル] > [オプション] > [ファイルの種類] > [Microsoft Word 2007-2019] > [全般設定] です。プロジェクトを作成した後で設定を変える場合は、そのプロジェクトの [プロジェクトの設定] > [ファイルの種類] です。(この 2 つの設定の違いについては、以前の記事「Trados の設定を変えるには − [ファイル] と [プロジェクトの設定]」を参照してください。)


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上図のように、[コメント][コメントを翻訳対象として抽出する] チェックボックスをオンにすると、原文ファイルにあるコメントを Trados に取り込むことができます。ここで取り込んでおけば、訳文生成したときにそのままコメントが出力されます。

その下の [Studio の訳文コメントを訳文文書に保持する] は、Trados 上で記入したコメントを訳文生成したファイルに出力するかどうかの設定です。チェックボックスをオンにすると、コメントが出力されます。

この設定が完了したら、Trados にファイルを取り込みます。この設定をせずに取り込んでしまった場合は、いったんそのファイルは削除し、設定を変えてから改めて取り込み直します。この設定は、取り込む前に行う必要があります。後から設定を変えても、コメントは取り込まれません。



3. Trados で翻訳する部分以外をロックする


Trados でファイルを開くと、以下のようになります。下図は、全分節について原文を訳文にコピーした後の状態です。タグとハイライトの色が表示されているのは、[エディタ][書式の表示スタイル][すべての書式とタグを表示する] を選択しているからです (詳しくは、以前の記事「エディタ上のフォントを変える」を参照してください)。真ん中のステータスの列が薄紫色になっているのは、原文をコピーしたときの色を設定しているからです (詳しくは、以前の記事「本当に原文からコピーしたままか?」を参照してください)。


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原文を訳文にコピーしたら、翻訳作業をする以外の分節をロックします。間違って編集してしまうと困るので、必ずロックします。今回ロックする箇所は、併記形式の原文にあたる部分と、元々原文に入っていたコメントです。


ハイライトが付いていない分節をロックする

これには、「高度な表示フィルタ 2.0」を使います。[色] タブでマーキングに使った色を選択し、上部の [反転] ボタンをクリックします。

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[色] タブのリストには、ハイライトや文字などの色が自動的に表示されてきます。実際にどの要素の色が表示されてくるのかはよくわかりませんが、ハイライトと文字の色は表示されてきます。ですので、赤字の部分のみ表示する、といった操作も可能です。[反転] ボタンは、選択した色が含まれる分節“以外”を抽出するために使います。つまり、[反転] ボタンを使うことで「ハイライトが付いていない」分節を抽出できます。

ハイライトが付いていない分節を抽出したら、その分節をすべて選択してそのままロックします。これで、余計な部分を誤って編集してしまう心配がなくなります。(下図は、ステータスを [翻訳承認済み] に変更してからロックしています。ステータスの変更は任意ですが、翻訳する部分以外を別のステータスにしておくと何かと便利です。)


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コメントをロックする

上図で既にコメント部分もロックされていますが、色を使わずにコメントだけを抽出することもできます。それには、[文書構造] タブを使用します。[文書構造] タブには、エディターの右端に表示されている文書構造の情報が表示されてきます。ここから、適当な文書構造を選択して、その分節だけを抽出できます。


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これで、翻訳の準備が整いました。後は、ロックされていない部分を翻訳していきます。ロック箇所が邪魔なら、フィルターでロック箇所を非表示にできます。また、ハイライトが目にうるさいようなら、上記の [書式の表示スタイル][書式を表示せずにすべてのタグを表示する] に変更します。これで、ハイライトの色は表示されなくなります。



4. 訳文生成をして、ハイライトを消す


翻訳を完成させて訳文生成をすると、下図のようなファイルができあがります。原文はそのまま残り、訳文にはハイライトが付いています。元々入っていたコメントもそのまま残っています。2 つ目の「翻訳者」のコメントは、翻訳時に Trados 上で入れたコメントです。最後に、ハイライトを消して完成です。


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今回は以上です。ここまでして Trados を使う必要があるのか??という声も聞こえてきそうですが、私はこの程度の手間なら Trados を使った方がよいと思っています。私は Trados 上に入力補助や検証の設定をしているので、Word やテキスト エディターで作業をするとかなり効率が落ちてしまいます。メモリや用語集の提供がないとしても、私の場合は Trados を使った方が効率良く作業を進められます。






  

2023年09月13日

【解決!】テンキーから数字の入力ができない

前回の記事で挙げていた問題が 1 つ解決しました。それも、最大の問題としていた「テンキーから数字の入力ができない」問題です。いやぁ、ブログも書いてみるもんです。

原因はショートカット キーの競合でした。わかってしまえば、なんてことはないよくある問題です。Trados には字幕翻訳用に Studio Subtitling というプラグインがあります。これの映像を操作するショートカット キーが既定でテンキーに割り当てられていました。ショートカット キーは [ファイル] > [オプション] > [エディタ] > [ショートカット キー] で確認できます。


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私がこのプラグインをインストールしたのは随分前だったので、すっかり存在を忘れていました。先日、久しぶり (たぶん、1 年ぶりくらい) にこのプラグインを使う案件があり、ショートカット キー何だったかなぁと思って見てみたら、上図の設定になっていたので「これか!!!」と一人で思わず叫んでしまいました。



このショートカット キーはそのまま使う


このショートカット キーの設定を変更すればテンキーからの入力はできるようになりますが、全部の設定を変えるのは少し面倒です。また、映像の再生を操作するものなので、キーを 2 つも 3 つも同時押しするより、1 つのキーで操作できる方が断然便利です。というわけで、Studio Subtitling を使うときは、テンキーからの入力はあきらめ、このショートカット キーをそのまま使うことにしました。



使わないときはプラグインを無効にする


で、ショートカット キーの設定を残したまま競合を回避するにはどうするかというと、プラグインを無効にします。メニューの [アドイン] > [プラグイン] から、プラグインは個別に有効/無効を切り替えられます (切り替えには Trados の再起動が必要です)。


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Studio Subtitling を無効にすればショートカット キーの設定も無効になるので、競合もなくなり、正常にテンキーから数字を入力できるようになります。有効/無効の切り替えは少し手間ですが、ショートカット キーを設定し直すよりは少ない手間で済みます。まあ、Studio Subtitling を有効にするとまた競合が発生しますが、これは仕方ないのであきらめます。



日本語入力のときのショートカット キー


今回の字幕案件は英日翻訳だったので、IME で日本語入力をオンにしている時間が長くなりました。実は、日本語入力をオンにしている場合、この Studio Subtitling のショートカット キーは機能しません。キーをタイプしても確定前の状態だとショートカット キーとして認識されないようです。

ちなみに、この日本語入力がオンのときにショートカット キーが効かない現象は Studio Subtitling に限ったものではなく、他のプラグインでも (あるいは Trados 以外のアプリケーションでも) 発生することがあります。おそらく、プラグインの開発時に IME のことなどあまり考えられていないのではないかと思います。英訳の場合は英語を入力するのであまり問題になりませんが、和訳の場合は困ることが結構あります。

ただ、テンキーに限っては、解決策があります。私は ATOK を使っているので ATOK での方法になりますが、以下のような設定があります。


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[確定文字で入力する] チェックボックスをオンにしておくと、日本語入力がオンになっている状態でもテンキーからの入力は確定した状態で入力され、ショートカット キーとして認識されます。


今回は以上です。私がショートカット キーの競合になかなか気付けなかったのは、Trados の使用頻度が全体的に落ちてきていることも原因かもしれません。あまり使わないので原因に考えが及ばないし、問題があってもとりあえず放っておくことになりがちです。いやいや、それでも今のところ Trados 以上に便利なツールはないと思っているので、Trados さん、なんとか頑張ってください。




  



2023年08月28日

私が遭遇している問題いろいろ

このブログの記事を書くときは、何か少しでも役立つ情報を含めたいと考え、バグや不具合を取り上げるときも、なるべく解決方法や回避手段を一緒に書くようにしてきました。ただ、すみません、このところ私用でいろいろありあまり時間が取れないので、今回は私が遭遇したことのある問題をとりあえず羅列してみたいと思います。

本来なら少し調査をしてから記事を書くところですが、今回はほとんど何も調べたりしていません。私の環境特有のものも含まれているかと思いますが、もし「同じような問題が発生する!」とか、「こうやったら直った!」などの情報がありましたら共有してもらえると嬉しいです。


ライセンスのアクティベーション画面で、ショートカット キーを使ってライセンス キーを貼り付けられない

ライセンス キーを貼り付けるときにキーボードの Ctrl+V は機能せず、貼り付けのアイコンをマウスでクリックする必要があります。マウス操作をしなければならないのは、私にとっては非常に面倒です。



スペル チェッカーに MS Word を選択できない

MS Word を選択するとエラーになるので、仕方なく既定の Hunspell を使っています。MS Word の方が精度が良さそうな気がするので MS Word に切り替えたいのですが、それができません。

Trados をいったん閉じて、Word も開いているファイルをすべて閉じて、その後で改めて Trados を起動すると、MS Word を選択できることが (たまに) あります。



変更履歴をオンにして作業しているときに、エディターがよく強制終了する

メッセージも何もなく画面が消えてしまうことがあります。特に、Shift+F3 で大文字小文字の変換をしたときに画面が消えることが多い気がします。ただ、Shift+F3 を押したときは裏に「分節を挿入できません」というメッセージが表示されていることがあります。



変更履歴をオンにして作業しているときに、文字列を選択してコメントを追加できない

分節全体に対するコメントは追加できますが、分節内の文字列に対してのコメントは追加できないことが多いです。



Quick Insert で、ショートカット キーが Ctrl+Shift+0 に割り当てられると機能しない

これは以前の記事「QuickInsert を設定するときに注意したいこと」でも紹介しました。もうかなり長期間この状態が続いている気がします。1 回登録して、Ctrl+Shift+0 が割り当てられたら、それはそのままにしてもう一度登録します。面倒です。



Word ファイルをプレビューした後、プレビューのファイルを閉じるときに「Normal.dot が 〜〜」というメッセージが表示されてウィンドウをすぐに閉じられない

これは Word のマクロを設定しているのが原因だと思います。自分で設定するマクロを Normal.dot 以外に登録すればいいのではないか、と思ってはいるのですが、今のところ放置しています。



Trados の画面を最大化しても、画面下部の文字数などの数字が完全に表示されない

Trados を起動した直後は画面右下の数字が半分くらいしか表示されません。いったん画面の大きさを手動で変えて、改めて最大化すると完全に表示されるようになります。



テンキーから数字の入力ができない

現在のところ、私にとって最大の問題はこれかもしれないです。Trados 上でテンキーからの入力ができない場合でも、他のアプリに画面を切り替えると正常に入力ができるので、NumLock とかの問題ではないと思うのですがよくわかりません。

ちなみに、数字が入力できないだけで、テンキーの Enter キーなどは機能します。これがまたやっかいで、数字を入力して Enter キーを押したつもりが、Enter キーだけが押された状態になります。



プロジェクトの設定画面で、画面の遷移がものすごく遅くなるときがある

どういうときに遅くなるのかなどはわからないのですが、とにかく、ものすごく遅くて待ちきれないときがあります。



ファイル リスト画面で、「ステータス情報」タブの数字を単語数と文字数で切り替えられない

日英翻訳の場合は基準が単語数ではなく文字数になるので、ステータスなども文字数で表示してほしいのですが、これを切り替えるドロップダウン リストが表示されません。いったん別のタブを表示してから戻ってくると、このドロップダウン リストが表示されます。



リアルタイム プレビューを使うと、Trados のエディター上のカーソルが消えてしまう

バージョン 2022 でプレビューは改善されているらしいのですが、本当でしょうか 。(私が試した限りは改善されていないようでした。)

カーソルが消えてしまった場合は、Ctrl+0 を押すとカーソルが訳文欄に復活します。復活はしますが、いちいち面倒くさくてやってられません。



プラグインの MSWord Grammer Checker が遅すぎて使えない

ある会社さんに MSWord Grammer Checker を使って検証を行うように指示されたのですが、検証にかかる時間がとても長くなります。大きなファイルになると、まあ、待っていられません。



プラグインの SDLXLIFF Compare を使うと、エディター画面に移っても、このプラグインの残像が表示される

SDLXLIFF Compare を使った後、エディター上にこのプラグインの操作画面が表示されてしまい、たまたまその部分をクリックしたりすると、そのクリックがプラグインに対して効いてしまいます。ただ、しばらくするとこの現象はなくなる気がします。



以上です。何か解決したり詳細がわかったりしたら、また改めて記事を書きたいと思います。こんなにいろいろあっても Trados を使い続けている状態はどうなんだろうと思わなくもないですが、たぶん、まだしばらくは使い続けてしまう気がします。




2023年07月03日

Xbench と TBX ファイル

Trados のメモリや用語ベースの検索機能はかなり貧弱なので、私は Xbench をよく使用しています。Xbench の使用方法については以前に記事を書いていますが、実は、そこで説明した方法ではうまく検索できない用語ベースがあることに今頃になって気付いたので、今回はその対処法などを紹介したいと思います。

前提事項として、私は Xbench の無料版 (バージョン 2.9) を使用しています。有料版だったら、もしかしたら今回の問題は起きないのかもしれないですが、どうでしょう。ちょっと自分では試せないので、何か情報がありましたらぜひご提供ください。

さて、Xbench でうまく検索できないのは、原語と訳語の組み合わせが 1 対 1 でない用語ベースです。このような用語ベース (.sdltb) を Glossary Converter を使って TBX ファイルに変換し、Xbench で検索を行うと、複数の訳語があっても 1 つの訳語しかヒットしてきません。

たとえば、用語ベースで、以下のように interlock に対して「インターロック」と「安全装置」という 2 つの単語が登録されていたとします。


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これを単純に TBX ファイルに変換して Xbench に取り込むと、「安全装置」しかヒットしてきません。


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ただし、この場合でも TBX ファイルには「インターロック」と「安全装置」の両方が正常に記述されています。つまり、Xbench の検索機能が 1 つしか見つけられないということのようです。

で、どうしたものかと考えた末、今回は、TBX ファイルではなく、タブ区切りファイルを使うことにしました。手順はこんな感じです。

 1. Glossary Converter を使って用語ベースを Excel ファイルに変換する
 2. Excel でデータを編集し、タブ区切り形式で保存する

では、手順を順番に説明していきましょう。



1. Glossary Converter を使って用語ベースを Excel ファイルに変換する


Glossary Converter での変換方法については、以前の記事「【前編】Xbench を便利に使う」と「【後編】マイクロソフトの用語集を使いたい」も参考にしてください。

まず、[setting] > [General] で 「Excel 2007 Workbook」を選択します。これで、用語ベース (.sdltb ファイル) が Excel ファイルに変換されるようになります。

さらに、[Spreadsheet] タブで [Synonyms in Excel Tables] を設定します。[Multi-line format (one row per synonym)] オプションを選択し、[Repeat source term] チェックボックスをオンにします。これで、複数の用語がある場合は複数の行が作成され、それぞれの行に原語が記述されるようになります。([Column/Language name] は空白のままでも大丈夫です。設定が必要な場合には、変換の実行時にプロンプトが表示されてきます。)


118_5.png


ここまで設定をしたら、Glossary Converter のアプリ上に対象の用語ベース ファイルをドラッグアンドドロップします。これで、元の用語ベースと同じフォルダーに Excel ファイルが作成されます。



2. Excel でデータを編集し、タブ区切り形式で保存する


作成された Excel ファイルを開いて、Xbench が検索できる形にデータを整えます。手の込んでいる用語ベースの場合は、たいてい、原語と訳語以外に参考情報のフィールドがいくつか設定されています。それらのフィールドは Excel ファイルの列として出力されますが、Xbench は常に A 列を原語、B 列を訳語として検索を行うので、Excel ファイル上でそのように列を並べ変える必要があります。不要な列は削除して構いませんが、参考情報も Xbench で表示したい場合は C 列以降にその情報を残しておきます。


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列を整えたら [名前を付けて保存] をしますが、このときに [ファイルの種類] として「テキスト (タブ区切り) (*.txt)」を選択します。これで、Xbench に読み込めるタブ区切りファイルができあがります。

作成したタブ区切りファイル (.txt) を Xbench に「Tab-delimited Text File」として取り込むと、以下のように複数の用語がヒットしてきます。これで完成です。


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今回は以上です。1 対 1 でない用語ベースの TBX ファイルをうまく検索できないことになぜ今まで気付かなかったのか、ちょっと恐ろしくなったので確認してみたところ、そんな形式の用語ベースは実はほとんどありませんでした。たいていの場合、Excel ファイルが基にあり、その時点で 1 対 1 になっているか、なっていない場合は Excel ファイル上で編集をして無理やり 1 対 1 にしていました。とはいえ、検索モレを防ぐため、TBX ファイルは 1 対 1 であることを確認してから Xbench に取り込む必要があります。