2018年08月07日
「訳文の表示」を使ってみる
前回に引き続き、訳文を確認する方法を考えてみます。今回は「訳文の表示」です。
「訳文の表示」は、[ファイル] > [印刷 & 表示] > [表示方法] > [訳文の <外部プログラム名>] と選択するか、ショートカット キーの Ctrl+Shift+P を使うことで実行できます。<外部プログラム名> には、Word や PowerPoint といった本来のプログラムの名前が表示されます。HTML ファイルの場合は「Web ブラウザ」と表示されます。
「訳文の表示」は、簡単に言うと、訳文を Trados ではなく本来のプログラムで表示してくれる機能です。「表示」という名前のとおり、訳文ファイルの「生成」よりは、表示するだけの「プレビュー」に近い機能です。手軽に使用できて比較的完成形に近い表示を得られるので、訳文を確認する方法としては最も出番の多い機能かと思います。
私のこれまでの経験から言うと、
HTMLファイル以外なら「訳文の表示」がかなり便利
です。スタイルシートを適用する HTML ファイルを除いて、ほとんどの文書に便利に機能します。HTML ファイルの場合はスタイルシートが適用されないので完成形に近いとは言えませんが (スタイルシートを適用する HTML ファイルについては、前の記事 「訳文のみで保存」を使ってみる をご覧ください)、Office 文書であれば完成形とほぼ変わらない*1 表示を見ることができます。私は、レイアウトを確認する必要のある Word、PowerPoint、Excel などのときに C「訳文の表示」をよく使います。その理由を以下に説明したいと思います。
C「訳文の表示」では、ショーカット キー Ctrl+Shift+P を押すだけで自動的に Office などの外部プログラムが立ち上がり訳文が表示されます。もちろん、バイリンガル ファイルを開いたままの状態で実行できます。
@〜B の機能は、訳文ファイルを生成することが主目的であり、訳文を見るには、生成して表示するという 2 段階のアクションが必要になります。また、既存のファイルを開いたままだと Trados からファイルを上書きできないので、ファイルを閉じておくという操作も必要になります。これに対して C「訳文の表示」は、前回に表示したファイルを開いていても、そのまま実行できます。Trados が自動でファイルを開き直すか、別ファイルとして新しい訳文を開いてくれます。
C「訳文の表示」では、ファイルが外部プログラムで表示されるので、フォントを変える、レイアウトを調整する、といった操作を自由に行うことができます。
訳文を表示するという点でほぼ同じ機能を持つ D「プレビュー」では、訳文が Trados 内のプレビュー ウィンドウに表示されるため、フォントやレイアウトの調整などはほとんどできません。原文のフォントやレイアウトのままでは読みにくいこともあるので、こうした操作は自由にできる方が便利です。
繰り返しになりますが、C「訳文の表示」では、Trados から独立した外部プログラムで訳文が表示されます。このため、Trados のエディタに影響が及ぶことがありません。この点が D「プレビュー」と大きく異なります。
D「プレビュー」は、基本的には Trados のプレビュー ウィンドウに訳文が表示されます。分節を確定するごとに表示が更新される「リアルタイム プレビュー」なども可能で、プレビューの表示と Trados のエディタがかなり密接に連動しています。しかし、このために、Trados のエディタでは動きが遅くなったり、カーソルが勝手に動いたり (あるいは、消えたり) といったことがしばしば起こります。
C「訳文の表示」で表示されるファイルは Trados のエディタとの連動がないので、Trados のエディタの動きが不安定になる心配がありません。*2
さて、「連動しない」のは安定性の面からすると良いことですが、やはり、使い勝手の面から考えると少々不便です。
Trados のエディタでどこを編集していても、C「訳文の表示」で表示されるファイルは先頭(または、原文でのカーソルの位置)に戻ります。大きなファイルの場合は、編集していた箇所を探すのにひと手間かかります。もちろん、リアルタイム プレビューなどの機能もないので、表示を更新したいときは再度 Ctrl+Shift+P を押す必要があります。そして、Ctrl+Shift+P を押すと、前のファイルを閉じて新しいファイルを作り直す、という処理が行われるようでかなり時間がかかります。
C「訳文の表示」は、最初に述べたとおり、Office 文書にとても便利なのですが、Office 文書の場合は「訳文生成」ができないケースがたまに (頻繁に?) あります。Trados や Office のバージョン、ファイルの特性など何かしらの理由はあるのでしょうが、とにかく「訳文生成」できないファイルは C「訳文の表示」でも訳文を表示できません。その場合は D「プレビュー」もできない可能性が高いので、あきらめて E「印刷プレビュー」を使うか、脳内でレイアウトを再現するか、ということになります。
今回は以上ですが、私が Office 文書を訳しているときは、たいてい以下のようなことを繰り返しています。
D「プレビュー」を使ってみる
↓
エディタの動きがおかしくなる
↓
C「訳文の表示」を使う
↓
いちいち更新するのが面倒になる
↓
また D「プレビュー」を使ってみる
↓
やっぱりエディタが動かない …
小さいファイルのときはそうでもないですが、大きなファイルになると、C「訳文の表示」と D「プレビュー」のどちらを使ってもうまく行かない!ということが多いです (私の環境が悪いのでしょうかね〜)。
注記 *1: 「訳文の生成」、「エクスポート」、「訳文のみで保存」は、いずれを使ってもほぼ同じ訳文ファイルが生成されます。「訳文の表示」と「プレレビュー」も、ファイルは生成されませんが、ほぼ同じ訳文が表示されると思います。ただ、厳密には違う点があるかもしれません。最近になってからは詳しくは検証していないのですが、少し前には、確定していない空白分節の処理や、各種スペースと改行文字の処理などに違いがあったような記憶があります。
注記 *2: 「心配ありません」としましたが、実は、Trados 自体が落ちてしまうことがあります。詳しくは、Trados のエディタが落ちる! をご覧ください。ただ、これはかなり限られた条件で起きる現象だったようで、私自身、最近はこの現象に遭遇していません。何かの update で直ったのか、原文ファイルに問題があったのか、原因はよくわかりません。心配な方は「バイリンガル ファイルを保存してから訳文を表示する」ことをお勧めします。(私も、一応、そうしています。)
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「訳文の表示」は、[ファイル] > [印刷 & 表示] > [表示方法] > [訳文の <外部プログラム名>] と選択するか、ショートカット キーの Ctrl+Shift+P を使うことで実行できます。<外部プログラム名> には、Word や PowerPoint といった本来のプログラムの名前が表示されます。HTML ファイルの場合は「Web ブラウザ」と表示されます。
「訳文の表示」は、簡単に言うと、訳文を Trados ではなく本来のプログラムで表示してくれる機能です。「表示」という名前のとおり、訳文ファイルの「生成」よりは、表示するだけの「プレビュー」に近い機能です。手軽に使用できて比較的完成形に近い表示を得られるので、訳文を確認する方法としては最も出番の多い機能かと思います。
私のこれまでの経験から言うと、
HTMLファイル以外なら「訳文の表示」がかなり便利
です。スタイルシートを適用する HTML ファイルを除いて、ほとんどの文書に便利に機能します。HTML ファイルの場合はスタイルシートが適用されないので完成形に近いとは言えませんが (スタイルシートを適用する HTML ファイルについては、前の記事 「訳文のみで保存」を使ってみる をご覧ください)、Office 文書であれば完成形とほぼ変わらない*1 表示を見ることができます。私は、レイアウトを確認する必要のある Word、PowerPoint、Excel などのときに C「訳文の表示」をよく使います。その理由を以下に説明したいと思います。
ワンアクションで訳文を表示できる
C「訳文の表示」では、ショーカット キー Ctrl+Shift+P を押すだけで自動的に Office などの外部プログラムが立ち上がり訳文が表示されます。もちろん、バイリンガル ファイルを開いたままの状態で実行できます。
@〜B の機能は、訳文ファイルを生成することが主目的であり、訳文を見るには、生成して表示するという 2 段階のアクションが必要になります。また、既存のファイルを開いたままだと Trados からファイルを上書きできないので、ファイルを閉じておくという操作も必要になります。これに対して C「訳文の表示」は、前回に表示したファイルを開いていても、そのまま実行できます。Trados が自動でファイルを開き直すか、別ファイルとして新しい訳文を開いてくれます。
外部プログラムで自由に操作できる
C「訳文の表示」では、ファイルが外部プログラムで表示されるので、フォントを変える、レイアウトを調整する、といった操作を自由に行うことができます。
訳文を表示するという点でほぼ同じ機能を持つ D「プレビュー」では、訳文が Trados 内のプレビュー ウィンドウに表示されるため、フォントやレイアウトの調整などはほとんどできません。原文のフォントやレイアウトのままでは読みにくいこともあるので、こうした操作は自由にできる方が便利です。
Trados のエディタに影響しない
繰り返しになりますが、C「訳文の表示」では、Trados から独立した外部プログラムで訳文が表示されます。このため、Trados のエディタに影響が及ぶことがありません。この点が D「プレビュー」と大きく異なります。
D「プレビュー」は、基本的には Trados のプレビュー ウィンドウに訳文が表示されます。分節を確定するごとに表示が更新される「リアルタイム プレビュー」なども可能で、プレビューの表示と Trados のエディタがかなり密接に連動しています。しかし、このために、Trados のエディタでは動きが遅くなったり、カーソルが勝手に動いたり (あるいは、消えたり) といったことがしばしば起こります。
C「訳文の表示」で表示されるファイルは Trados のエディタとの連動がないので、Trados のエディタの動きが不安定になる心配がありません。*2
Trados のエディタと連動しない
さて、「連動しない」のは安定性の面からすると良いことですが、やはり、使い勝手の面から考えると少々不便です。
Trados のエディタでどこを編集していても、C「訳文の表示」で表示されるファイルは先頭(または、原文でのカーソルの位置)に戻ります。大きなファイルの場合は、編集していた箇所を探すのにひと手間かかります。もちろん、リアルタイム プレビューなどの機能もないので、表示を更新したいときは再度 Ctrl+Shift+P を押す必要があります。そして、Ctrl+Shift+P を押すと、前のファイルを閉じて新しいファイルを作り直す、という処理が行われるようでかなり時間がかかります。
「訳文生成」ができないときは使えない
C「訳文の表示」は、最初に述べたとおり、Office 文書にとても便利なのですが、Office 文書の場合は「訳文生成」ができないケースがたまに (頻繁に?) あります。Trados や Office のバージョン、ファイルの特性など何かしらの理由はあるのでしょうが、とにかく「訳文生成」できないファイルは C「訳文の表示」でも訳文を表示できません。その場合は D「プレビュー」もできない可能性が高いので、あきらめて E「印刷プレビュー」を使うか、脳内でレイアウトを再現するか、ということになります。
今回は以上ですが、私が Office 文書を訳しているときは、たいてい以下のようなことを繰り返しています。
D「プレビュー」を使ってみる
↓
エディタの動きがおかしくなる
↓
C「訳文の表示」を使う
↓
いちいち更新するのが面倒になる
↓
また D「プレビュー」を使ってみる
↓
やっぱりエディタが動かない …
小さいファイルのときはそうでもないですが、大きなファイルになると、C「訳文の表示」と D「プレビュー」のどちらを使ってもうまく行かない!ということが多いです (私の環境が悪いのでしょうかね〜)。
注記 *1: 「訳文の生成」、「エクスポート」、「訳文のみで保存」は、いずれを使ってもほぼ同じ訳文ファイルが生成されます。「訳文の表示」と「プレレビュー」も、ファイルは生成されませんが、ほぼ同じ訳文が表示されると思います。ただ、厳密には違う点があるかもしれません。最近になってからは詳しくは検証していないのですが、少し前には、確定していない空白分節の処理や、各種スペースと改行文字の処理などに違いがあったような記憶があります。
注記 *2: 「心配ありません」としましたが、実は、Trados 自体が落ちてしまうことがあります。詳しくは、Trados のエディタが落ちる! をご覧ください。ただ、これはかなり限られた条件で起きる現象だったようで、私自身、最近はこの現象に遭遇していません。何かの update で直ったのか、原文ファイルに問題があったのか、原因はよくわかりません。心配な方は「バイリンガル ファイルを保存してから訳文を表示する」ことをお勧めします。(私も、一応、そうしています。)
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