バージョン 2022 が悪いのか、その後の CU でのアップデートがだめなのか、もしくは以前からのバグに自分が気付いていなかっただけなのか、正確な原因はわからないものばかりです。作業がまったくできなくなる程の大問題ではありませんが、微妙にイラっとするので、ブログのネタにさせてもらいます。
ショートカット キー (F6) で原文と訳文を切り替えられない
現象
これまで、エディター上で F6 キーを押すと、原文エリアと訳文エリアを行き来できたのですが、これができなくなってしまいました。F6 キーを押すと、[翻訳結果] ビューにカーソルが移動します。
ショートカット キーの設定 ([ファイル] > [オプション] > [ショートカット キー]) を確認してみると、以下のように、3 つのアクションに F6 キーが割り当てられていました。以前からこの設定だったのか、どこかの時点でこの設定に変わったのか、それはよくわかりませんが、現状として、この設定ではエディター上で F6 キーを押しても原文と訳文を切り替えられません。
対応策
仕方がないので、ショートカット キーの設定を変えることにしました。実は、F6 キーで [翻訳結果] ビューや [訳語検索] ビューに移動できるのは、使ってみるとわりと便利だったので、この設定はそのまま残し、「訳文と原文の切り替え」の方を変えることにしました。
私は、現在、原文と訳文の切り替えには Ctrl+キャレット (^) を設定しています (ショートカット キーの設定画面では、Ctrl+Oem7 と表示されます)。キャレットは、キーボード上で数字のゼロ (0) の隣の隣にあるキーです。このキーを選んだ理由は、Ctrl+0 というショートカット キーをよく使うからです。本当は、ゼロ (0) の隣のハイフン (-) を使いたかったのですが、Ctrl+ハイフン (-) は既に他の機能で使っているため、その隣のキャレットにしました。
Ctrl+0 は、下図のように「[Focus Editor] ウィンドウ」というアクションに割り当てられています。意味不明なアクション名ですが、これは、おそらく「エディター ウィンドウにフォーカスする」という意味です。Trados 内のどのウィンドウやビューにいても、このショートカット キーでエディター部分に移動できます。この「エディター部分に移動する」動作と、「原文と訳文を切り替える」動作は、何となく用途が似ていますし、連続して使うことも多いので、近くにあるキーで実行できると便利です。
たとえば、以下のような一連の操作ができます。
1. 原文で単語を選択して Ctrl+F3 キーで訳語検索をし、
2. F6 キーで [訳語検索] ビューに移動して訳語をコピーし、
3. Ctrl+0 キーでエディター部分に戻り (このとき、もともと原文側にいたので、戻り先は原文側)、
4. Ctrl+キャレット キーで訳文側に移動して、コピーした訳語を貼り付ける
このように文字で書くと面倒そうな感じですが、実際やってみるとなかなか便利です (少なくとも、私にとっては便利です)。
というわけで、問題が根本的に解決したわけではありませんが、「訳文と原文の切り替え」のショートカット キーに Ctrl+キャレット (^) を割り当てる、という対応でよしとしています。
参考までに、今回の記事を書くにあたりコミュニティを調べたら「'Toggle between Source and Target' shortcut issue」という投稿が既に2020年の時点でありました。こちらの投稿でも、「F6 キーが 3 つのアクションに割り当てられていて、それが機能しない」というそもそもの問題は解決されていないようでした。Trados 上のショートカット キーの設定画面でうまく設定できない場合は、以下の設定ファイルを手動で編集せよ、とのことでした。
c:\Users\[USERNAME]\AppData\Roaming\SDL\SDL Trados Studio\Studio16\UserSettings.xml
(ただし、「Studio16」はおそらくバージョン 2021 を表しているので、バージョン 2022 の設定ファイルがどこにあるのかは、ちょっと不明です。)
半角スペースの検索が機能しないことがある
現象
半角スペースの検索が正常に機能しません。ヒットするときと、ヒットしないときがあるので、いろいろ試してみると、どうやら「1 つの文書構造の中で 2 番目以降の分節は検索されない」ようでした。
上図は、Word 文書の翻訳画面です (わかりやすくするため、半角スペースを表示する設定にしています。中黒のように見える小さい点がスペースです)。右端の列が「文書構造」を表しています。FN は脚注、H は見出し、P は段落です。赤枠で囲った部分は、P という 1 つの文書構造の中に 3 つの分節が存在する形になっています。
検索できないのは、この赤枠内の 2 番目以降の分節にあるスペースです。赤枠で囲んでいない分節は、それぞれ、1 つの文書構造の中に 1 つの分節しかないので、これらの分節内のスペースは正常に検索されます。
対応策
検索が正常に機能しないなんて、エディターとして致命的じゃない?? という気もしますが、その感情は脇に置いて、対応策を考えましょう。
ダメもとで、正規表現での検索を試しましたが、ダメでした。同じ結果になるか、さらに不可解な結果になります。不可解すぎるので、ここでは詳細は省略します。現在のところ、私が思い付く対応策はアプリの使用と検証機能の使用です。
アプリ「SegmentSearcher」を使う
アプリ「SegmentSearcher」は、現在エディターに開いているファイルを検索し、下図のように検索結果を別画面で一覧してくれるアプリです。このアプリでは半角スペースが正常に検索されます。
このアプリでは、正規表現での検索や、ステータスでのフィルターなど、細かい検索条件も使用できます。また、普通の検索機能では検索でヒットしたところにカーソルが動きますが、このアプリは検索結果を別画面に一覧してくれるので、現在作業している分節から移動せずに結果を見ることができます。検索した語に色が付く点もわかりやすくて便利です。
普通の検索機能とはまったく動きが違うので完全な代用にはなりませんが、どうしても検索したい場合には使用できます。
検証機能を使う
私の場合、半角スペースを検索したい理由は、主に余分なスペースが入っていないかのチェックです。括弧の前後、タグの前後、読点の後ろなどには余分なスペースが入りやすいので、翻訳後にチェックするようにしています。この目的でスペースを検索するのであれば、ある程度は検証機能で対応できます。検証機能については、以前の記事「正規表現なしで、検証機能を使う」と「検証機能の設定を調整する」も参考にしてください。
[分節の検証] > [訳文分節のチェック] > [禁止文字がないかチェックする]
上図の入力欄に、禁止したい文字を単純にずらずらと並べて入力しておくと、自動でチェックしてくれます。通常は、全角スペースや全角英数字が混入していないかのチェックに使用します。ここに半角スペースも指定できますが、半角スペースは、英単語の区切りなど、正常なケースで使われることが多いので false positive が多くなり過ぎます。私は、念のために指定していますが、他の手段でのチェックと組み合わせる方が安全です。
[句読点] > [句読点] > [次の文字の前に余分なスペースがないかチェックする]
[余分なピリオドとスペース] > [連続するスペースがないかチェックする]
[訳文分節の末尾に余分なスペースがないかチェックする]
余分なスペースのチェックについては、ある程度の設定が用意されています。[次の文字の前に余分なスペースがないかチェックする] は、この文言のとおり、「文字の前」にあるスペースをチェックしてくれるので、閉じ括弧や閉じ引用符、コロンなどを設定しておくと便利です。
最終手段は正規表現
上記以外のチェックは正規表現でなんとか頑張ってください。簡単なところでは、
、\s
で読点の後ろのスペースを検索できます。その他、全角文字間のスペースとか、半角文字と全角文字の間のスペースとか、単位の前のスペースとか、頑張って設定してみましょう! (正規表現については、詳しい解説がいろいろなところにあると思うので、そちらを参考にしてください。)私の対応策は以上です。最後はかなり投げやりですみません。参考までに、この問題についてもコミュニティに投稿がありました (Error when searching for double spaces in Studio 2022)。この投稿では、ダブルスペースが検索できない、ということですが、シングルスペースでも同じ現象が起きていると思われます。
単位が勝手に翻訳される
現象
QuickPlace 機能 (Ctrl+Alt+下矢印キーまたは Ctrl+カンマ キー) で MB (メガバイト) などの単位が勝手に翻訳されます。たとえば、英日翻訳で原文に「10 MB」とあった場合、入力候補として「10 MB」ではなく、「10 メガバイト」が表示されてきます。
これは非常に面倒なので、ブログのネタにしようと画策していたのですが、実はこの記事を書き始めてから改めて試したところ、問題が再現されませんでした。プロジェクトの設定の問題なのか、メモリの設定の問題なのか、原因はよくわかりませんが、いつの間にか正常に「10 MB」と表示されるようになっていました。
対応策
問題は再現されないのですが、一応、私が取った対応策を紹介しておきます。QuickPlace 機能は、メモリの設定で「認識」を有効にし、プロジェクトの設定で「置換」を有効にすることで、便利に機能します。詳細については、以前の記事「【前編】タイピングを減らそう」を参照してください。
今回は、プロジェクトの設定で「置換」を無効にしました。この設定は、下図のように、[プロジェクトの設定] > [言語ペア] > [(特定の言語ペア)] > [翻訳メモリと自動翻訳] > [自動置換] で行います。この画面で、[単位] チェックボックスのみオフにします。これで置換が行われなくなるので、「10 MB」はそのまま「10 MB」と表示されます。
ただ、これにはひとつ問題があります。それは、数字と単位の間のスペースです。一般的な表記ルールとして、英語では数字と単位の間にスペースを入れますが、日本語ではスペースを入れません。つまり、英日翻訳で英語の原文に「10 MB」とあったら、日本語の訳文は「10MB」とする必要があります。この調整を自動で行うための設定が [自動置換] > [単位] にあります。
ここで、スペースの表記ルールに合わせて、原文と同じにする、スペースを挿入する、挿入しない、などを設定できます。ただし、この調整が機能するのは、あくまで自動置換が有効になっているときのみです。自動置換を無効にすると、この調整も実行されなくなります。
今回は、以上です。書いていたら、だいぶ長くなってしまいました。結局、今回取り上げた 3 つの問題はいずれも根本的には解決されていません (最後の問題も、今のところ発生はしていませんが、発生する理由も、発生しない理由もわからないので、再発の恐れはあります)。
特に、スペースが検索できない問題はかなり致命的じゃないかと思うのですが、なんとかならないでしょうかね、Trados さん!!
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