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2024年02月21日
IR 文書の前期上書き翻訳を Trados で頑張る
しばらくブログの更新をさぼっている間に IR (Investor Relations) 業界の繁忙期が迫る時期になってしまいました。私は数年前にこの分野に足を踏み入れたのですが、この業界の「繁忙期」といわれる 5 月頃の忙しさは、本当にものすごく、最初の年は衝撃を受けました。
IR (Investor Relations) とは、投資家への広報活動を意味し、投資家たちへのアピールのためにさまざまな文書の翻訳が必要とされます。ただ、「繁忙期」が生じる主な原因は株主総会の招集通知や決算報告書です。こうした文書は、毎年必要とされ、定型的な文も多いので、CAT ツールが活躍しそうに思うのですが、なぜかこの分野ではあまり CAT ツールの使用が広まっていません。
最近は Phrase を使う案件も多少ありますが、ほとんどは Word ファイルでの「前期上書き」翻訳です。前期の原文、今期の原文、前期の訳文、という 3 つのファイルが提供され、前期の訳文に今期の更新箇所を上書きして、今期の訳文を完成させます。
今回は、前回の記事からの Trados をエディターとして (無理にでも) 使おう企画の第 2 弾として、IR 分野の「前期上書き」翻訳を Trados を使って行う方法を紹介します。紹介といっても、これは私が試行錯誤している途中のものです。今年の繁忙期を前に、自分の中での整理として手順をまとめておきたかっただけです。何か効率的な方法がありましたら、ぜひ、ぜひ、ぜひ、ぜひ、ご教示いただきたいです。
ざっくりとした手順は、以下のとおりです。
1. 今期訳文のベースを Word で作る
2. 参考訳をメモリに入れる
3. 作成した今期訳文ファイルを Trados に取り込む
4. 翻訳が終わったら、訳文生成して Word に戻す
では、詳しく見ていきましょう。
原文を比較し、更新箇所を訳文に反映する
まず、前期と今期の原文を比較し、どこが更新されたのかを特定します。そして、更新された箇所を今期訳文上に日本語のまま反映していきます。
目検ではどこが更新されたのかわかりにくいので、私は WinMerge というテキスト比較ツールを使用して更新箇所を特定しています。 (私は WinMerge の操作に AutoHotkey を使用していますが、これについては、以前の記事「文字列を比較する ― AutoHotKey と WinMerge と Trados とレビュー」を参照してください。)
この比較結果を基に手動で今期の訳文を変更します。数字だけの変更はこの段階で済ませますが、文字の変更がある場合は、この段階では翻訳せず、原文の日本語をそのままコピーします。
今回は、わかりやすくするため変更箇所に赤色を付けていますが、これは特にそのような指示がなければ不要です。ただ、もしそのような指示があった場合は、Trados 上で編集しているときに色を付けられた方が便利なので、訳文上に、1) 全体が黒で、一部を赤くする、2) 全体が赤で、一部を黒くする、という 2 パターンの書式を組み込んでおきます。これで、Trados に取り込んだときに、両パターンのタグが生成されます。
上記の例の場合は、数字の変更箇所が「1) 全体が黒で、一部を赤くする」にあたるので、「2) 全体が赤で、一部を黒くする」のパターン用に以下のようなダミーのテキストを入れておきます。
なお、本議案につきましては、監査等委員会の検討がされましたが、意見はありませんでした。
レイアウトを整える
レイアウトはできるだけ事前に完成させます。訳した後に訳文生成してから修正する方法もありますが、私は事前に整えておくようにしています。事前に整えておけば、翻訳中にプレビューをしたときも適切なレイアウトで訳文を確認できます。
・フォントの種類と大きさ
日本語が表示されている部分も、ローマ字を少しだけ入力してみて、英数字用フォントが正しく設定されていることを確認する。
・行間
いろいろな文書からコピーしてくるので、行間が狭かったり、広かったりすることがある。ページ全体を見て整える。
・左寄せ or 両端揃え
これも、コピー元の書式が残り、左寄せと両端揃えが混在することがよくある。
・インデント
「1 行目だけ字下げする」というルールの場合は、訳文が長くなって 2 行になった場合も考慮して、2 行目以降の設定もしておく。
機械的な置換はしない
Word 上では機械的な置換はしません。一括置換などの機械的にできる操作は、メモリやフィルターが使える Trados で行う方が効率的です。人名や「執行役員」といった役職名など、繰り返し登場する表現はつい置換したくなりますが、その衝動はここではぐっとおさえます。
日本語のまま残して Trados に取り込んでおけば、後で QA チェックを行うことも可能になるので、Word 上で置換してしまうより安全です。この段階では、あくまで、チマチマと手動で行わなければならない作業に専念します。
作業中に見つけた既訳や用語は、メモリとして Trados に取り込みます。私は、Excel で対訳形式のファイルを作り、それを「バイリンガル Excel」として Trados に取り込み、メモリに変換します。(この辺りの詳細については、公式ブログ「Excelを翻訳メモリに変換」、または私の以前の記事「安易にバイリンガル Excel を使っていませんか」を参照してください。)
対訳ファイルの作成には WildLight やテキスト エディターも使う
対訳ファイルの作成はなかなか面倒ですが、過去訳の踏襲は必須ですし、参考となる訳はできるだけたくさん欲しいので、ツールなども使いながら頑張ります。ページまるごとなど、ある程度の量がある場合は WildLight が便利です。そこまで量がない場合は、いったんテキスト エディターに貼り付け、改行の追加や削除をしてから Excel に貼り付けます。(この改行の処理などのために、私は秀丸エディターとそのマクロを使っていますが、その詳細については、別の機会に紹介できればと思います。)
用語ベースは使わず、すべてメモリに登録
私は、人名や役職名などの短いフレーズも、面倒なので用語ベースは使わずメモリに登録してしまいます。本当は、用語ベースを作成して用語認識を有効にするのがベストですが、用語認識はメモリのフラグメント一致でもある程度代用が利きます。また、対訳形式にさえなっていれば、Xbench の検索機能も使えるので、用語ベースの作成は省略しています。
参考訳のメモリを作成し、今期の訳文のベースが完成したらそのファイルを Trados に取り込みますが、取り込みの前に分節規則の設定を少しだけ変更します。
かっこ内の句点で分節を区切らない
IR の文書では、丸かっこの中に句点 (。) が含まれていることがよくあります。Trados の既定の設定では、かっこの中でも句点があると分節が区切られてしまうので、これを区切られないようにします。
たとえば、以下のような原文があるとします。丸かっこの中に句点があります。しかも、1 つ目の文ではかっこが二重になっています。
これを、既定設定のまま取り込むと以下のようになります。句点で分節が区切られてしまいます。
分節規則の設定を変えることで、以下のように、句点があっても 1 つの分節として取り込めます。かっこが二重になっていても大丈夫です。
分節規則の設定は、メモリの言語リソースから行います。設定の詳細については、公式ブログ「翻訳メモリの分節規則をカスタマイズする」を参照してください。すみません、今回は以下に図だけ示し、詳しい説明は省略しますが、公式ブログに書いてあるとおりに進めれば大丈夫です。
英語になっている部分をロックする
分節規則を設定して原文を取り込んだら、翻訳を開始する前に、既に英語になっている部分をロックします。うっかり触って訳文を変更してしまうと困るので、私は必ずロックしています。
「既に英語になっている部分」の抽出には、高度な表示フィルターを使います。[コンテンツ] タブの [原文:] に英数字、カーリー引用符、円記号を示す正規表現
この設定は、右上の [保存] をクリックするとファイルとして保存できます。保存したファイルは、その隣の [インポート] から読み込めます。何回も使う条件はファイルとして保存しておくと便利です。
これで抽出した分節を、すべて選択してロックすれば完成です。下図のように、日本語が残っている部分のみ編集可能な状態になっているはずです。ロックはショートカット キー (Ctrl+Shift+L) で簡単にオン/オフができるので、もし過不足があれば手動で調整します。
これで翻訳の準備は完了です。既訳部分も含めて全文を Trados に取り込むと、既訳部分の分節は英英のペアになってしまいますが、それでも英語での検索は可能になるのでわりと便利です。
ちなみに、今回のサンプル文書を作っていて初めて気付いたのですが、ピリオドで分節が区切られないようです。これは、原文を日本語としているので日本語の分節規則が適用されているから、と思われますが、すみません、未検証です。ピリオドで区切られた方がフィルターなどを使うときに便利なので、この点は要改善です。
翻訳が完了したら訳文生成をしますが、このとき注意するのがコメントです。IR の文書のときは、申し送り事項を細かく記入することが求められるので、コメントがかなり重要になります。
コメントのユーザー名を変更する
Trados で入力したコメントは、訳文生成した Word ファイルのコメントとして出力できます。ここで気を付けたいのがコメントの作成者として設定されるユーザー名です。Trados 上では、このユーザー名に Windows のログイン名が勝手に使われてしまいます。Trados の本体にはこれを変更する設定がないので、私は Trados Batch Anonymizer というアプリを使ってユーザー名を変更しています。このアプリについては、以前の記事「コメントに表示される名前の変更」を参照してください。
訳文を完成させ、コメントの名前も変更したら、訳文生成を行います。これで、Trados での作業は完了です。後は、生成したファイル上で最終的な確認をします。
今回は以上です。Trados を使うことで効率が良くなっているかどうかは微妙かもしれませんが、私は翻訳そのものの作業とそれ以外の作業を切り分けるという意味でも Trados を使った方がよいと思っています。更新箇所を見つけながら、翻訳をして、レイアウトも整えて、とすべてを一緒にやっていくのはなかなか大変です。それよりも、更新箇所を見つけるときはそれだけに集中し、Trados 上ではひたすら翻訳をしていく、というように作業を分けた方が進めやすいかなと思っています。
今年も繁忙期がやってきますが、少しでも効率的に進められるよう、努めていきたいと思います。
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IR (Investor Relations) とは、投資家への広報活動を意味し、投資家たちへのアピールのためにさまざまな文書の翻訳が必要とされます。ただ、「繁忙期」が生じる主な原因は株主総会の招集通知や決算報告書です。こうした文書は、毎年必要とされ、定型的な文も多いので、CAT ツールが活躍しそうに思うのですが、なぜかこの分野ではあまり CAT ツールの使用が広まっていません。
最近は Phrase を使う案件も多少ありますが、ほとんどは Word ファイルでの「前期上書き」翻訳です。前期の原文、今期の原文、前期の訳文、という 3 つのファイルが提供され、前期の訳文に今期の更新箇所を上書きして、今期の訳文を完成させます。
今回は、前回の記事からの Trados をエディターとして (無理にでも) 使おう企画の第 2 弾として、IR 分野の「前期上書き」翻訳を Trados を使って行う方法を紹介します。紹介といっても、これは私が試行錯誤している途中のものです。今年の繁忙期を前に、自分の中での整理として手順をまとめておきたかっただけです。何か効率的な方法がありましたら、ぜひ、ぜひ、ぜひ、ぜひ、ご教示いただきたいです。
ざっくりとした手順は、以下のとおりです。
1. 今期訳文のベースを Word で作る
2. 参考訳をメモリに入れる
3. 作成した今期訳文ファイルを Trados に取り込む
4. 翻訳が終わったら、訳文生成して Word に戻す
では、詳しく見ていきましょう。
1. 今期訳文のベースを Word で作る
原文を比較し、更新箇所を訳文に反映する
まず、前期と今期の原文を比較し、どこが更新されたのかを特定します。そして、更新された箇所を今期訳文上に日本語のまま反映していきます。
目検ではどこが更新されたのかわかりにくいので、私は WinMerge というテキスト比較ツールを使用して更新箇所を特定しています。 (私は WinMerge の操作に AutoHotkey を使用していますが、これについては、以前の記事「文字列を比較する ― AutoHotKey と WinMerge と Trados とレビュー」を参照してください。)
この比較結果を基に手動で今期の訳文を変更します。数字だけの変更はこの段階で済ませますが、文字の変更がある場合は、この段階では翻訳せず、原文の日本語をそのままコピーします。
今回は、わかりやすくするため変更箇所に赤色を付けていますが、これは特にそのような指示がなければ不要です。ただ、もしそのような指示があった場合は、Trados 上で編集しているときに色を付けられた方が便利なので、訳文上に、1) 全体が黒で、一部を赤くする、2) 全体が赤で、一部を黒くする、という 2 パターンの書式を組み込んでおきます。これで、Trados に取り込んだときに、両パターンのタグが生成されます。
上記の例の場合は、数字の変更箇所が「1) 全体が黒で、一部を赤くする」にあたるので、「2) 全体が赤で、一部を黒くする」のパターン用に以下のようなダミーのテキストを入れておきます。
なお、本議案につきましては、監査等委員会の検討がされましたが、意見はありませんでした。
レイアウトを整える
レイアウトはできるだけ事前に完成させます。訳した後に訳文生成してから修正する方法もありますが、私は事前に整えておくようにしています。事前に整えておけば、翻訳中にプレビューをしたときも適切なレイアウトで訳文を確認できます。
・フォントの種類と大きさ
日本語が表示されている部分も、ローマ字を少しだけ入力してみて、英数字用フォントが正しく設定されていることを確認する。
・行間
いろいろな文書からコピーしてくるので、行間が狭かったり、広かったりすることがある。ページ全体を見て整える。
・左寄せ or 両端揃え
これも、コピー元の書式が残り、左寄せと両端揃えが混在することがよくある。
・インデント
「1 行目だけ字下げする」というルールの場合は、訳文が長くなって 2 行になった場合も考慮して、2 行目以降の設定もしておく。
機械的な置換はしない
Word 上では機械的な置換はしません。一括置換などの機械的にできる操作は、メモリやフィルターが使える Trados で行う方が効率的です。人名や「執行役員」といった役職名など、繰り返し登場する表現はつい置換したくなりますが、その衝動はここではぐっとおさえます。
日本語のまま残して Trados に取り込んでおけば、後で QA チェックを行うことも可能になるので、Word 上で置換してしまうより安全です。この段階では、あくまで、チマチマと手動で行わなければならない作業に専念します。
2. 参考訳をメモリに入れる
作業中に見つけた既訳や用語は、メモリとして Trados に取り込みます。私は、Excel で対訳形式のファイルを作り、それを「バイリンガル Excel」として Trados に取り込み、メモリに変換します。(この辺りの詳細については、公式ブログ「Excelを翻訳メモリに変換」、または私の以前の記事「安易にバイリンガル Excel を使っていませんか」を参照してください。)
対訳ファイルの作成には WildLight やテキスト エディターも使う
対訳ファイルの作成はなかなか面倒ですが、過去訳の踏襲は必須ですし、参考となる訳はできるだけたくさん欲しいので、ツールなども使いながら頑張ります。ページまるごとなど、ある程度の量がある場合は WildLight が便利です。そこまで量がない場合は、いったんテキスト エディターに貼り付け、改行の追加や削除をしてから Excel に貼り付けます。(この改行の処理などのために、私は秀丸エディターとそのマクロを使っていますが、その詳細については、別の機会に紹介できればと思います。)
用語ベースは使わず、すべてメモリに登録
私は、人名や役職名などの短いフレーズも、面倒なので用語ベースは使わずメモリに登録してしまいます。本当は、用語ベースを作成して用語認識を有効にするのがベストですが、用語認識はメモリのフラグメント一致でもある程度代用が利きます。また、対訳形式にさえなっていれば、Xbench の検索機能も使えるので、用語ベースの作成は省略しています。
3. 作成した今期訳文ファイルを Trados に取り込む
参考訳のメモリを作成し、今期の訳文のベースが完成したらそのファイルを Trados に取り込みますが、取り込みの前に分節規則の設定を少しだけ変更します。
かっこ内の句点で分節を区切らない
IR の文書では、丸かっこの中に句点 (。) が含まれていることがよくあります。Trados の既定の設定では、かっこの中でも句点があると分節が区切られてしまうので、これを区切られないようにします。
たとえば、以下のような原文があるとします。丸かっこの中に句点があります。しかも、1 つ目の文ではかっこが二重になっています。
- 吸収合併(会社以外の者との合併(当該合併後当該株式会社が存続するものに限る。)を含む。)又は吸収分割による他の法人等の事業に関する権利義務の承継
- 他の会社(外国会社を含む。)の株式その他の持分又は新株予約権等の取得又は処分
これを、既定設定のまま取り込むと以下のようになります。句点で分節が区切られてしまいます。
分節規則の設定を変えることで、以下のように、句点があっても 1 つの分節として取り込めます。かっこが二重になっていても大丈夫です。
分節規則の設定は、メモリの言語リソースから行います。設定の詳細については、公式ブログ「翻訳メモリの分節規則をカスタマイズする」を参照してください。すみません、今回は以下に図だけ示し、詳しい説明は省略しますが、公式ブログに書いてあるとおりに進めれば大丈夫です。
英語になっている部分をロックする
分節規則を設定して原文を取り込んだら、翻訳を開始する前に、既に英語になっている部分をロックします。うっかり触って訳文を変更してしまうと困るので、私は必ずロックしています。
「既に英語になっている部分」の抽出には、高度な表示フィルターを使います。[コンテンツ] タブの [原文:] に英数字、カーリー引用符、円記号を示す正規表現
^[(\p{IsBasicLatin})”“’‘\]+$
を指定し、[正規表現] チェックボックスをオンにします。この設定は、右上の [保存] をクリックするとファイルとして保存できます。保存したファイルは、その隣の [インポート] から読み込めます。何回も使う条件はファイルとして保存しておくと便利です。
これで抽出した分節を、すべて選択してロックすれば完成です。下図のように、日本語が残っている部分のみ編集可能な状態になっているはずです。ロックはショートカット キー (Ctrl+Shift+L) で簡単にオン/オフができるので、もし過不足があれば手動で調整します。
これで翻訳の準備は完了です。既訳部分も含めて全文を Trados に取り込むと、既訳部分の分節は英英のペアになってしまいますが、それでも英語での検索は可能になるのでわりと便利です。
ちなみに、今回のサンプル文書を作っていて初めて気付いたのですが、ピリオドで分節が区切られないようです。これは、原文を日本語としているので日本語の分節規則が適用されているから、と思われますが、すみません、未検証です。ピリオドで区切られた方がフィルターなどを使うときに便利なので、この点は要改善です。
4. 訳文生成して Word に戻す
翻訳が完了したら訳文生成をしますが、このとき注意するのがコメントです。IR の文書のときは、申し送り事項を細かく記入することが求められるので、コメントがかなり重要になります。
コメントのユーザー名を変更する
Trados で入力したコメントは、訳文生成した Word ファイルのコメントとして出力できます。ここで気を付けたいのがコメントの作成者として設定されるユーザー名です。Trados 上では、このユーザー名に Windows のログイン名が勝手に使われてしまいます。Trados の本体にはこれを変更する設定がないので、私は Trados Batch Anonymizer というアプリを使ってユーザー名を変更しています。このアプリについては、以前の記事「コメントに表示される名前の変更」を参照してください。
訳文を完成させ、コメントの名前も変更したら、訳文生成を行います。これで、Trados での作業は完了です。後は、生成したファイル上で最終的な確認をします。
今回は以上です。Trados を使うことで効率が良くなっているかどうかは微妙かもしれませんが、私は翻訳そのものの作業とそれ以外の作業を切り分けるという意味でも Trados を使った方がよいと思っています。更新箇所を見つけながら、翻訳をして、レイアウトも整えて、とすべてを一緒にやっていくのはなかなか大変です。それよりも、更新箇所を見つけるときはそれだけに集中し、Trados 上ではひたすら翻訳をしていく、というように作業を分けた方が進めやすいかなと思っています。
今年も繁忙期がやってきますが、少しでも効率的に進められるよう、努めていきたいと思います。
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2023年12月18日
Trados をエディターとして使うために
だいぶ久しぶりの更新となりました。今年は、いろいろと忙しく過ごしているうちにあっという間に時間がたち、あまりブログを更新できませんでした。が、実は、取引先の入れ替わりなどもあり、来年から Trados の使用頻度が増すことになりました! 奥の深い (闇の深い?) Trados にどっぷりとはまっていきそうな感じです。
さて、Trados などの CAT ツールの機能といえば、翻訳メモリ (Translation Memory、略して TM) が代表的ですが、CAT ツールの機能はそれだけではありません。メモリを一切使わない場合でも、さまざまな利用価値があります。私の場合、Trados の主な用途は「エディター」です。そうです。単なるエディターです。Word より、テキスト エディターより、翻訳作業で文字を入力するなら Trados が効率的です。原文と訳文を並列で参照できる、原文と訳文のどちらからでも検索できる、入力補助機能を使用できる、タグを処理できる、など翻訳作業に欠かせない機能が最初から備わっています。
もちろん、Word やテキスト エディターも、マクロなどでカスタマイズすれば相当便利に使えると思います。しかし、翻訳を始めた当初から CAT ツールを使っていた私の場合、他のエディターのマクロなどより、Trados の方が慣れています。まあ、ただ「慣れている」という理由だけで使い続けることが良いとは思っていませんが、今のところわざわざ他のエディターに変えるほどの理由もありません。
というわけで、私は、Word ファイルなどを渡されて「上書き翻訳で」と依頼されても、できるだけ Trados を使うようにしています。ただ、そうした案件は、自分で訳文生成まで行って元のファイル形式で納品する必要があるので、作業前に必ず「簡単に元の状態に戻せるか」を確認します。
この確認のポイントは「簡単に」です。Trados の便利さと、元のファイルに戻すときの手間を比較して、もし元ファイルに戻す手間の方が大きくなるようであれば、素直に「上書き翻訳」をせざるを得ません。そのため、Trados をエディターとして使いたいのなら、元ファイルに戻すときの手間をできるだけ少なくする必要があります。
今回は、Word ファイルで段落ごとの併記を依頼された場合を例に「簡単に」元ファイルに戻すために使えそうな小技を紹介します。あくまで「小技」です。段落ごとの併記という形式を Trados でパッと生成できるわけではありません。基本的には手動での作業になります。
では、以下のような Word ファイルを段落ごとに英日併記で翻訳してくださいと指示されたとします。このファイルは、私が実際に依頼されたファイルを基に作ったサンプルです。着目すべき点は、文章内にリンクがあることと、コメントが付いていることです。
まずは、段落ごとにコピペして併記の形にし、訳文を入力する側にハイライトを付けます。すみません、最も面倒なこの作業は手動で行います。(もし、何十ページもあるような大きなファイルだったら自動化を考えますが、そもそもこんな依頼をしてくるファイルは 1 〜 2 ページ程度のものが多いので、とりあえず、手動でがんばります。)
この例では、訳文となる部分へのマーキングとしてハイライトを使っています。このマーキングは、この後 Trados 上で原文と訳文を区別するために使います。マーキングは最終的に訳文生成をした後で削除する必要があるので、うまく削除できそうなものを使う必要があります。Trados の動作から考えると、ハイライト以外に、文字の色もマーキングとして使用できます。
今回のファイルでマーキングにハイライトを選んだのは、文章内にリンクがあったからです。リンクの文字に異なる色が使われているので、マーキングとして文字の色を使うと、後で戻すときにリンクの部分だけ別に色を変えなければならないことになります。逆に、原文にハイライトが使われていたら、マーキングには文字の色を使います。もし両方が使われていたら、面倒ですが、別の色のハイライトを使う、とかですかね。その都度、原文に合わせて適当に考えます。
Word ファイル上で併記の形を完成させたら Trados に取り込みますが、その前にひとつだけ設定をします。今回の原文にはコメントが付いているので、このコメントも Trados に取り込むようにします。コメントを訳す必要がないとしても、Trados に取り込んでおかないと、訳文生成してできあがるファイルでコメントが消えてしまいます。
コメントを取り込む設定は「ファイルの種類」で行います。プロジェクトを作成する前だったら、[ファイル] > [オプション] > [ファイルの種類] > [Microsoft Word 2007-2019] > [全般設定] です。プロジェクトを作成した後で設定を変える場合は、そのプロジェクトの [プロジェクトの設定] > [ファイルの種類] です。(この 2 つの設定の違いについては、以前の記事「Trados の設定を変えるには − [ファイル] と [プロジェクトの設定]」を参照してください。)
上図のように、[コメント] の [コメントを翻訳対象として抽出する] チェックボックスをオンにすると、原文ファイルにあるコメントを Trados に取り込むことができます。ここで取り込んでおけば、訳文生成したときにそのままコメントが出力されます。
その下の [Studio の訳文コメントを訳文文書に保持する] は、Trados 上で記入したコメントを訳文生成したファイルに出力するかどうかの設定です。チェックボックスをオンにすると、コメントが出力されます。
この設定が完了したら、Trados にファイルを取り込みます。この設定をせずに取り込んでしまった場合は、いったんそのファイルは削除し、設定を変えてから改めて取り込み直します。この設定は、取り込む前に行う必要があります。後から設定を変えても、コメントは取り込まれません。
Trados でファイルを開くと、以下のようになります。下図は、全分節について原文を訳文にコピーした後の状態です。タグとハイライトの色が表示されているのは、[エディタ] の [書式の表示スタイル] で [すべての書式とタグを表示する] を選択しているからです (詳しくは、以前の記事「エディタ上のフォントを変える」を参照してください)。真ん中のステータスの列が薄紫色になっているのは、原文をコピーしたときの色を設定しているからです (詳しくは、以前の記事「本当に原文からコピーしたままか?」を参照してください)。
原文を訳文にコピーしたら、翻訳作業をする以外の分節をロックします。間違って編集してしまうと困るので、必ずロックします。今回ロックする箇所は、併記形式の原文にあたる部分と、元々原文に入っていたコメントです。
ハイライトが付いていない分節をロックする
これには、「高度な表示フィルタ 2.0」を使います。[色] タブでマーキングに使った色を選択し、上部の [反転] ボタンをクリックします。
[色] タブのリストには、ハイライトや文字などの色が自動的に表示されてきます。実際にどの要素の色が表示されてくるのかはよくわかりませんが、ハイライトと文字の色は表示されてきます。ですので、赤字の部分のみ表示する、といった操作も可能です。[反転] ボタンは、選択した色が含まれる分節“以外”を抽出するために使います。つまり、[反転] ボタンを使うことで「ハイライトが付いていない」分節を抽出できます。
ハイライトが付いていない分節を抽出したら、その分節をすべて選択してそのままロックします。これで、余計な部分を誤って編集してしまう心配がなくなります。(下図は、ステータスを [翻訳承認済み] に変更してからロックしています。ステータスの変更は任意ですが、翻訳する部分以外を別のステータスにしておくと何かと便利です。)
コメントをロックする
上図で既にコメント部分もロックされていますが、色を使わずにコメントだけを抽出することもできます。それには、[文書構造] タブを使用します。[文書構造] タブには、エディターの右端に表示されている文書構造の情報が表示されてきます。ここから、適当な文書構造を選択して、その分節だけを抽出できます。
これで、翻訳の準備が整いました。後は、ロックされていない部分を翻訳していきます。ロック箇所が邪魔なら、フィルターでロック箇所を非表示にできます。また、ハイライトが目にうるさいようなら、上記の [書式の表示スタイル] を [書式を表示せずにすべてのタグを表示する] に変更します。これで、ハイライトの色は表示されなくなります。
翻訳を完成させて訳文生成をすると、下図のようなファイルができあがります。原文はそのまま残り、訳文にはハイライトが付いています。元々入っていたコメントもそのまま残っています。2 つ目の「翻訳者」のコメントは、翻訳時に Trados 上で入れたコメントです。最後に、ハイライトを消して完成です。
今回は以上です。ここまでして Trados を使う必要があるのか??という声も聞こえてきそうですが、私はこの程度の手間なら Trados を使った方がよいと思っています。私は Trados 上に入力補助や検証の設定をしているので、Word やテキスト エディターで作業をするとかなり効率が落ちてしまいます。メモリや用語集の提供がないとしても、私の場合は Trados を使った方が効率良く作業を進められます。
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さて、Trados などの CAT ツールの機能といえば、翻訳メモリ (Translation Memory、略して TM) が代表的ですが、CAT ツールの機能はそれだけではありません。メモリを一切使わない場合でも、さまざまな利用価値があります。私の場合、Trados の主な用途は「エディター」です。そうです。単なるエディターです。Word より、テキスト エディターより、翻訳作業で文字を入力するなら Trados が効率的です。原文と訳文を並列で参照できる、原文と訳文のどちらからでも検索できる、入力補助機能を使用できる、タグを処理できる、など翻訳作業に欠かせない機能が最初から備わっています。
もちろん、Word やテキスト エディターも、マクロなどでカスタマイズすれば相当便利に使えると思います。しかし、翻訳を始めた当初から CAT ツールを使っていた私の場合、他のエディターのマクロなどより、Trados の方が慣れています。まあ、ただ「慣れている」という理由だけで使い続けることが良いとは思っていませんが、今のところわざわざ他のエディターに変えるほどの理由もありません。
というわけで、私は、Word ファイルなどを渡されて「上書き翻訳で」と依頼されても、できるだけ Trados を使うようにしています。ただ、そうした案件は、自分で訳文生成まで行って元のファイル形式で納品する必要があるので、作業前に必ず「簡単に元の状態に戻せるか」を確認します。
この確認のポイントは「簡単に」です。Trados の便利さと、元のファイルに戻すときの手間を比較して、もし元ファイルに戻す手間の方が大きくなるようであれば、素直に「上書き翻訳」をせざるを得ません。そのため、Trados をエディターとして使いたいのなら、元ファイルに戻すときの手間をできるだけ少なくする必要があります。
今回は、Word ファイルで段落ごとの併記を依頼された場合を例に「簡単に」元ファイルに戻すために使えそうな小技を紹介します。あくまで「小技」です。段落ごとの併記という形式を Trados でパッと生成できるわけではありません。基本的には手動での作業になります。
では、以下のような Word ファイルを段落ごとに英日併記で翻訳してくださいと指示されたとします。このファイルは、私が実際に依頼されたファイルを基に作ったサンプルです。着目すべき点は、文章内にリンクがあることと、コメントが付いていることです。
1. 段落ごとにコピペし、訳文をハイライトでマーキングする
まずは、段落ごとにコピペして併記の形にし、訳文を入力する側にハイライトを付けます。すみません、最も面倒なこの作業は手動で行います。(もし、何十ページもあるような大きなファイルだったら自動化を考えますが、そもそもこんな依頼をしてくるファイルは 1 〜 2 ページ程度のものが多いので、とりあえず、手動でがんばります。)
この例では、訳文となる部分へのマーキングとしてハイライトを使っています。このマーキングは、この後 Trados 上で原文と訳文を区別するために使います。マーキングは最終的に訳文生成をした後で削除する必要があるので、うまく削除できそうなものを使う必要があります。Trados の動作から考えると、ハイライト以外に、文字の色もマーキングとして使用できます。
今回のファイルでマーキングにハイライトを選んだのは、文章内にリンクがあったからです。リンクの文字に異なる色が使われているので、マーキングとして文字の色を使うと、後で戻すときにリンクの部分だけ別に色を変えなければならないことになります。逆に、原文にハイライトが使われていたら、マーキングには文字の色を使います。もし両方が使われていたら、面倒ですが、別の色のハイライトを使う、とかですかね。その都度、原文に合わせて適当に考えます。
2. コメントも含めて Trados に取り込む
Word ファイル上で併記の形を完成させたら Trados に取り込みますが、その前にひとつだけ設定をします。今回の原文にはコメントが付いているので、このコメントも Trados に取り込むようにします。コメントを訳す必要がないとしても、Trados に取り込んでおかないと、訳文生成してできあがるファイルでコメントが消えてしまいます。
コメントを取り込む設定は「ファイルの種類」で行います。プロジェクトを作成する前だったら、[ファイル] > [オプション] > [ファイルの種類] > [Microsoft Word 2007-2019] > [全般設定] です。プロジェクトを作成した後で設定を変える場合は、そのプロジェクトの [プロジェクトの設定] > [ファイルの種類] です。(この 2 つの設定の違いについては、以前の記事「Trados の設定を変えるには − [ファイル] と [プロジェクトの設定]」を参照してください。)
上図のように、[コメント] の [コメントを翻訳対象として抽出する] チェックボックスをオンにすると、原文ファイルにあるコメントを Trados に取り込むことができます。ここで取り込んでおけば、訳文生成したときにそのままコメントが出力されます。
その下の [Studio の訳文コメントを訳文文書に保持する] は、Trados 上で記入したコメントを訳文生成したファイルに出力するかどうかの設定です。チェックボックスをオンにすると、コメントが出力されます。
この設定が完了したら、Trados にファイルを取り込みます。この設定をせずに取り込んでしまった場合は、いったんそのファイルは削除し、設定を変えてから改めて取り込み直します。この設定は、取り込む前に行う必要があります。後から設定を変えても、コメントは取り込まれません。
3. Trados で翻訳する部分以外をロックする
Trados でファイルを開くと、以下のようになります。下図は、全分節について原文を訳文にコピーした後の状態です。タグとハイライトの色が表示されているのは、[エディタ] の [書式の表示スタイル] で [すべての書式とタグを表示する] を選択しているからです (詳しくは、以前の記事「エディタ上のフォントを変える」を参照してください)。真ん中のステータスの列が薄紫色になっているのは、原文をコピーしたときの色を設定しているからです (詳しくは、以前の記事「本当に原文からコピーしたままか?」を参照してください)。
原文を訳文にコピーしたら、翻訳作業をする以外の分節をロックします。間違って編集してしまうと困るので、必ずロックします。今回ロックする箇所は、併記形式の原文にあたる部分と、元々原文に入っていたコメントです。
ハイライトが付いていない分節をロックする
これには、「高度な表示フィルタ 2.0」を使います。[色] タブでマーキングに使った色を選択し、上部の [反転] ボタンをクリックします。
[色] タブのリストには、ハイライトや文字などの色が自動的に表示されてきます。実際にどの要素の色が表示されてくるのかはよくわかりませんが、ハイライトと文字の色は表示されてきます。ですので、赤字の部分のみ表示する、といった操作も可能です。[反転] ボタンは、選択した色が含まれる分節“以外”を抽出するために使います。つまり、[反転] ボタンを使うことで「ハイライトが付いていない」分節を抽出できます。
ハイライトが付いていない分節を抽出したら、その分節をすべて選択してそのままロックします。これで、余計な部分を誤って編集してしまう心配がなくなります。(下図は、ステータスを [翻訳承認済み] に変更してからロックしています。ステータスの変更は任意ですが、翻訳する部分以外を別のステータスにしておくと何かと便利です。)
コメントをロックする
上図で既にコメント部分もロックされていますが、色を使わずにコメントだけを抽出することもできます。それには、[文書構造] タブを使用します。[文書構造] タブには、エディターの右端に表示されている文書構造の情報が表示されてきます。ここから、適当な文書構造を選択して、その分節だけを抽出できます。
これで、翻訳の準備が整いました。後は、ロックされていない部分を翻訳していきます。ロック箇所が邪魔なら、フィルターでロック箇所を非表示にできます。また、ハイライトが目にうるさいようなら、上記の [書式の表示スタイル] を [書式を表示せずにすべてのタグを表示する] に変更します。これで、ハイライトの色は表示されなくなります。
4. 訳文生成をして、ハイライトを消す
翻訳を完成させて訳文生成をすると、下図のようなファイルができあがります。原文はそのまま残り、訳文にはハイライトが付いています。元々入っていたコメントもそのまま残っています。2 つ目の「翻訳者」のコメントは、翻訳時に Trados 上で入れたコメントです。最後に、ハイライトを消して完成です。
今回は以上です。ここまでして Trados を使う必要があるのか??という声も聞こえてきそうですが、私はこの程度の手間なら Trados を使った方がよいと思っています。私は Trados 上に入力補助や検証の設定をしているので、Word やテキスト エディターで作業をするとかなり効率が落ちてしまいます。メモリや用語集の提供がないとしても、私の場合は Trados を使った方が効率良く作業を進められます。
2023年09月13日
【解決!】テンキーから数字の入力ができない
前回の記事で挙げていた問題が 1 つ解決しました。それも、最大の問題としていた「テンキーから数字の入力ができない」問題です。いやぁ、ブログも書いてみるもんです。
原因はショートカット キーの競合でした。わかってしまえば、なんてことはないよくある問題です。Trados には字幕翻訳用に Studio Subtitling というプラグインがあります。これの映像を操作するショートカット キーが既定でテンキーに割り当てられていました。ショートカット キーは [ファイル] > [オプション] > [エディタ] > [ショートカット キー] で確認できます。
私がこのプラグインをインストールしたのは随分前だったので、すっかり存在を忘れていました。先日、久しぶり (たぶん、1 年ぶりくらい) にこのプラグインを使う案件があり、ショートカット キー何だったかなぁと思って見てみたら、上図の設定になっていたので「これか!!!」と一人で思わず叫んでしまいました。
このショートカット キーの設定を変更すればテンキーからの入力はできるようになりますが、全部の設定を変えるのは少し面倒です。また、映像の再生を操作するものなので、キーを 2 つも 3 つも同時押しするより、1 つのキーで操作できる方が断然便利です。というわけで、Studio Subtitling を使うときは、テンキーからの入力はあきらめ、このショートカット キーをそのまま使うことにしました。
で、ショートカット キーの設定を残したまま競合を回避するにはどうするかというと、プラグインを無効にします。メニューの [アドイン] > [プラグイン] から、プラグインは個別に有効/無効を切り替えられます (切り替えには Trados の再起動が必要です)。
Studio Subtitling を無効にすればショートカット キーの設定も無効になるので、競合もなくなり、正常にテンキーから数字を入力できるようになります。有効/無効の切り替えは少し手間ですが、ショートカット キーを設定し直すよりは少ない手間で済みます。まあ、Studio Subtitling を有効にするとまた競合が発生しますが、これは仕方ないのであきらめます。
今回の字幕案件は英日翻訳だったので、IME で日本語入力をオンにしている時間が長くなりました。実は、日本語入力をオンにしている場合、この Studio Subtitling のショートカット キーは機能しません。キーをタイプしても確定前の状態だとショートカット キーとして認識されないようです。
ちなみに、この日本語入力がオンのときにショートカット キーが効かない現象は Studio Subtitling に限ったものではなく、他のプラグインでも (あるいは Trados 以外のアプリケーションでも) 発生することがあります。おそらく、プラグインの開発時に IME のことなどあまり考えられていないのではないかと思います。英訳の場合は英語を入力するのであまり問題になりませんが、和訳の場合は困ることが結構あります。
ただ、テンキーに限っては、解決策があります。私は ATOK を使っているので ATOK での方法になりますが、以下のような設定があります。
[確定文字で入力する] チェックボックスをオンにしておくと、日本語入力がオンになっている状態でもテンキーからの入力は確定した状態で入力され、ショートカット キーとして認識されます。
今回は以上です。私がショートカット キーの競合になかなか気付けなかったのは、Trados の使用頻度が全体的に落ちてきていることも原因かもしれません。あまり使わないので原因に考えが及ばないし、問題があってもとりあえず放っておくことになりがちです。いやいや、それでも今のところ Trados 以上に便利なツールはないと思っているので、Trados さん、なんとか頑張ってください。
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原因はショートカット キーの競合でした。わかってしまえば、なんてことはないよくある問題です。Trados には字幕翻訳用に Studio Subtitling というプラグインがあります。これの映像を操作するショートカット キーが既定でテンキーに割り当てられていました。ショートカット キーは [ファイル] > [オプション] > [エディタ] > [ショートカット キー] で確認できます。
私がこのプラグインをインストールしたのは随分前だったので、すっかり存在を忘れていました。先日、久しぶり (たぶん、1 年ぶりくらい) にこのプラグインを使う案件があり、ショートカット キー何だったかなぁと思って見てみたら、上図の設定になっていたので「これか!!!」と一人で思わず叫んでしまいました。
このショートカット キーはそのまま使う
このショートカット キーの設定を変更すればテンキーからの入力はできるようになりますが、全部の設定を変えるのは少し面倒です。また、映像の再生を操作するものなので、キーを 2 つも 3 つも同時押しするより、1 つのキーで操作できる方が断然便利です。というわけで、Studio Subtitling を使うときは、テンキーからの入力はあきらめ、このショートカット キーをそのまま使うことにしました。
使わないときはプラグインを無効にする
で、ショートカット キーの設定を残したまま競合を回避するにはどうするかというと、プラグインを無効にします。メニューの [アドイン] > [プラグイン] から、プラグインは個別に有効/無効を切り替えられます (切り替えには Trados の再起動が必要です)。
Studio Subtitling を無効にすればショートカット キーの設定も無効になるので、競合もなくなり、正常にテンキーから数字を入力できるようになります。有効/無効の切り替えは少し手間ですが、ショートカット キーを設定し直すよりは少ない手間で済みます。まあ、Studio Subtitling を有効にするとまた競合が発生しますが、これは仕方ないのであきらめます。
日本語入力のときのショートカット キー
今回の字幕案件は英日翻訳だったので、IME で日本語入力をオンにしている時間が長くなりました。実は、日本語入力をオンにしている場合、この Studio Subtitling のショートカット キーは機能しません。キーをタイプしても確定前の状態だとショートカット キーとして認識されないようです。
ちなみに、この日本語入力がオンのときにショートカット キーが効かない現象は Studio Subtitling に限ったものではなく、他のプラグインでも (あるいは Trados 以外のアプリケーションでも) 発生することがあります。おそらく、プラグインの開発時に IME のことなどあまり考えられていないのではないかと思います。英訳の場合は英語を入力するのであまり問題になりませんが、和訳の場合は困ることが結構あります。
ただ、テンキーに限っては、解決策があります。私は ATOK を使っているので ATOK での方法になりますが、以下のような設定があります。
[確定文字で入力する] チェックボックスをオンにしておくと、日本語入力がオンになっている状態でもテンキーからの入力は確定した状態で入力され、ショートカット キーとして認識されます。
今回は以上です。私がショートカット キーの競合になかなか気付けなかったのは、Trados の使用頻度が全体的に落ちてきていることも原因かもしれません。あまり使わないので原因に考えが及ばないし、問題があってもとりあえず放っておくことになりがちです。いやいや、それでも今のところ Trados 以上に便利なツールはないと思っているので、Trados さん、なんとか頑張ってください。
2023年08月28日
私が遭遇している問題いろいろ
このブログの記事を書くときは、何か少しでも役立つ情報を含めたいと考え、バグや不具合を取り上げるときも、なるべく解決方法や回避手段を一緒に書くようにしてきました。ただ、すみません、このところ私用でいろいろありあまり時間が取れないので、今回は私が遭遇したことのある問題をとりあえず羅列してみたいと思います。
本来なら少し調査をしてから記事を書くところですが、今回はほとんど何も調べたりしていません。私の環境特有のものも含まれているかと思いますが、もし「同じような問題が発生する!」とか、「こうやったら直った!」などの情報がありましたら共有してもらえると嬉しいです。
ライセンスのアクティベーション画面で、ショートカット キーを使ってライセンス キーを貼り付けられない
ライセンス キーを貼り付けるときにキーボードの Ctrl+V は機能せず、貼り付けのアイコンをマウスでクリックする必要があります。マウス操作をしなければならないのは、私にとっては非常に面倒です。
スペル チェッカーに MS Word を選択できない
MS Word を選択するとエラーになるので、仕方なく既定の Hunspell を使っています。MS Word の方が精度が良さそうな気がするので MS Word に切り替えたいのですが、それができません。
Trados をいったん閉じて、Word も開いているファイルをすべて閉じて、その後で改めて Trados を起動すると、MS Word を選択できることが (たまに) あります。
変更履歴をオンにして作業しているときに、エディターがよく強制終了する
メッセージも何もなく画面が消えてしまうことがあります。特に、Shift+F3 で大文字小文字の変換をしたときに画面が消えることが多い気がします。ただ、Shift+F3 を押したときは裏に「分節を挿入できません」というメッセージが表示されていることがあります。
変更履歴をオンにして作業しているときに、文字列を選択してコメントを追加できない
分節全体に対するコメントは追加できますが、分節内の文字列に対してのコメントは追加できないことが多いです。
Quick Insert で、ショートカット キーが Ctrl+Shift+0 に割り当てられると機能しない
これは以前の記事「QuickInsert を設定するときに注意したいこと」でも紹介しました。もうかなり長期間この状態が続いている気がします。1 回登録して、Ctrl+Shift+0 が割り当てられたら、それはそのままにしてもう一度登録します。面倒です。
Word ファイルをプレビューした後、プレビューのファイルを閉じるときに「Normal.dot が 〜〜」というメッセージが表示されてウィンドウをすぐに閉じられない
これは Word のマクロを設定しているのが原因だと思います。自分で設定するマクロを Normal.dot 以外に登録すればいいのではないか、と思ってはいるのですが、今のところ放置しています。
Trados の画面を最大化しても、画面下部の文字数などの数字が完全に表示されない
Trados を起動した直後は画面右下の数字が半分くらいしか表示されません。いったん画面の大きさを手動で変えて、改めて最大化すると完全に表示されるようになります。
テンキーから数字の入力ができない
現在のところ、私にとって最大の問題はこれかもしれないです。Trados 上でテンキーからの入力ができない場合でも、他のアプリに画面を切り替えると正常に入力ができるので、NumLock とかの問題ではないと思うのですがよくわかりません。
ちなみに、数字が入力できないだけで、テンキーの Enter キーなどは機能します。これがまたやっかいで、数字を入力して Enter キーを押したつもりが、Enter キーだけが押された状態になります。
プロジェクトの設定画面で、画面の遷移がものすごく遅くなるときがある
どういうときに遅くなるのかなどはわからないのですが、とにかく、ものすごく遅くて待ちきれないときがあります。
ファイル リスト画面で、「ステータス情報」タブの数字を単語数と文字数で切り替えられない
日英翻訳の場合は基準が単語数ではなく文字数になるので、ステータスなども文字数で表示してほしいのですが、これを切り替えるドロップダウン リストが表示されません。いったん別のタブを表示してから戻ってくると、このドロップダウン リストが表示されます。
リアルタイム プレビューを使うと、Trados のエディター上のカーソルが消えてしまう
バージョン 2022 でプレビューは改善されているらしいのですが、本当でしょうか 。(私が試した限りは改善されていないようでした。)
カーソルが消えてしまった場合は、Ctrl+0 を押すとカーソルが訳文欄に復活します。復活はしますが、いちいち面倒くさくてやってられません。
プラグインの MSWord Grammer Checker が遅すぎて使えない
ある会社さんに MSWord Grammer Checker を使って検証を行うように指示されたのですが、検証にかかる時間がとても長くなります。大きなファイルになると、まあ、待っていられません。
プラグインの SDLXLIFF Compare を使うと、エディター画面に移っても、このプラグインの残像が表示される
SDLXLIFF Compare を使った後、エディター上にこのプラグインの操作画面が表示されてしまい、たまたまその部分をクリックしたりすると、そのクリックがプラグインに対して効いてしまいます。ただ、しばらくするとこの現象はなくなる気がします。
以上です。何か解決したり詳細がわかったりしたら、また改めて記事を書きたいと思います。こんなにいろいろあっても Trados を使い続けている状態はどうなんだろうと思わなくもないですが、たぶん、まだしばらくは使い続けてしまう気がします。
本来なら少し調査をしてから記事を書くところですが、今回はほとんど何も調べたりしていません。私の環境特有のものも含まれているかと思いますが、もし「同じような問題が発生する!」とか、「こうやったら直った!」などの情報がありましたら共有してもらえると嬉しいです。
ライセンスのアクティベーション画面で、ショートカット キーを使ってライセンス キーを貼り付けられない
ライセンス キーを貼り付けるときにキーボードの Ctrl+V は機能せず、貼り付けのアイコンをマウスでクリックする必要があります。マウス操作をしなければならないのは、私にとっては非常に面倒です。
スペル チェッカーに MS Word を選択できない
MS Word を選択するとエラーになるので、仕方なく既定の Hunspell を使っています。MS Word の方が精度が良さそうな気がするので MS Word に切り替えたいのですが、それができません。
Trados をいったん閉じて、Word も開いているファイルをすべて閉じて、その後で改めて Trados を起動すると、MS Word を選択できることが (たまに) あります。
変更履歴をオンにして作業しているときに、エディターがよく強制終了する
メッセージも何もなく画面が消えてしまうことがあります。特に、Shift+F3 で大文字小文字の変換をしたときに画面が消えることが多い気がします。ただ、Shift+F3 を押したときは裏に「分節を挿入できません」というメッセージが表示されていることがあります。
変更履歴をオンにして作業しているときに、文字列を選択してコメントを追加できない
分節全体に対するコメントは追加できますが、分節内の文字列に対してのコメントは追加できないことが多いです。
Quick Insert で、ショートカット キーが Ctrl+Shift+0 に割り当てられると機能しない
これは以前の記事「QuickInsert を設定するときに注意したいこと」でも紹介しました。もうかなり長期間この状態が続いている気がします。1 回登録して、Ctrl+Shift+0 が割り当てられたら、それはそのままにしてもう一度登録します。面倒です。
Word ファイルをプレビューした後、プレビューのファイルを閉じるときに「Normal.dot が 〜〜」というメッセージが表示されてウィンドウをすぐに閉じられない
これは Word のマクロを設定しているのが原因だと思います。自分で設定するマクロを Normal.dot 以外に登録すればいいのではないか、と思ってはいるのですが、今のところ放置しています。
Trados の画面を最大化しても、画面下部の文字数などの数字が完全に表示されない
Trados を起動した直後は画面右下の数字が半分くらいしか表示されません。いったん画面の大きさを手動で変えて、改めて最大化すると完全に表示されるようになります。
テンキーから数字の入力ができない
現在のところ、私にとって最大の問題はこれかもしれないです。Trados 上でテンキーからの入力ができない場合でも、他のアプリに画面を切り替えると正常に入力ができるので、NumLock とかの問題ではないと思うのですがよくわかりません。
ちなみに、数字が入力できないだけで、テンキーの Enter キーなどは機能します。これがまたやっかいで、数字を入力して Enter キーを押したつもりが、Enter キーだけが押された状態になります。
プロジェクトの設定画面で、画面の遷移がものすごく遅くなるときがある
どういうときに遅くなるのかなどはわからないのですが、とにかく、ものすごく遅くて待ちきれないときがあります。
ファイル リスト画面で、「ステータス情報」タブの数字を単語数と文字数で切り替えられない
日英翻訳の場合は基準が単語数ではなく文字数になるので、ステータスなども文字数で表示してほしいのですが、これを切り替えるドロップダウン リストが表示されません。いったん別のタブを表示してから戻ってくると、このドロップダウン リストが表示されます。
リアルタイム プレビューを使うと、Trados のエディター上のカーソルが消えてしまう
バージョン 2022 でプレビューは改善されているらしいのですが、本当でしょうか 。(私が試した限りは改善されていないようでした。)
カーソルが消えてしまった場合は、Ctrl+0 を押すとカーソルが訳文欄に復活します。復活はしますが、いちいち面倒くさくてやってられません。
プラグインの MSWord Grammer Checker が遅すぎて使えない
ある会社さんに MSWord Grammer Checker を使って検証を行うように指示されたのですが、検証にかかる時間がとても長くなります。大きなファイルになると、まあ、待っていられません。
プラグインの SDLXLIFF Compare を使うと、エディター画面に移っても、このプラグインの残像が表示される
SDLXLIFF Compare を使った後、エディター上にこのプラグインの操作画面が表示されてしまい、たまたまその部分をクリックしたりすると、そのクリックがプラグインに対して効いてしまいます。ただ、しばらくするとこの現象はなくなる気がします。
以上です。何か解決したり詳細がわかったりしたら、また改めて記事を書きたいと思います。こんなにいろいろあっても Trados を使い続けている状態はどうなんだろうと思わなくもないですが、たぶん、まだしばらくは使い続けてしまう気がします。
タグ:MSWord Grammer Checker SDLXLIFF Compare プレビュー リアルタイム プレビュー ステータス情報 Normal.dot トラブルシューティング 変更履歴 コメント
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2023年07月03日
Xbench と TBX ファイル
Trados のメモリや用語ベースの検索機能はかなり貧弱なので、私は Xbench をよく使用しています。Xbench の使用方法については以前に記事を書いていますが、実は、そこで説明した方法ではうまく検索できない用語ベースがあることに今頃になって気付いたので、今回はその対処法などを紹介したいと思います。
前提事項として、私は Xbench の無料版 (バージョン 2.9) を使用しています。有料版だったら、もしかしたら今回の問題は起きないのかもしれないですが、どうでしょう。ちょっと自分では試せないので、何か情報がありましたらぜひご提供ください。
さて、Xbench でうまく検索できないのは、原語と訳語の組み合わせが 1 対 1 でない用語ベースです。このような用語ベース (.sdltb) を Glossary Converter を使って TBX ファイルに変換し、Xbench で検索を行うと、複数の訳語があっても 1 つの訳語しかヒットしてきません。
たとえば、用語ベースで、以下のように interlock に対して「インターロック」と「安全装置」という 2 つの単語が登録されていたとします。
これを単純に TBX ファイルに変換して Xbench に取り込むと、「安全装置」しかヒットしてきません。
ただし、この場合でも TBX ファイルには「インターロック」と「安全装置」の両方が正常に記述されています。つまり、Xbench の検索機能が 1 つしか見つけられないということのようです。
で、どうしたものかと考えた末、今回は、TBX ファイルではなく、タブ区切りファイルを使うことにしました。手順はこんな感じです。
1. Glossary Converter を使って用語ベースを Excel ファイルに変換する
2. Excel でデータを編集し、タブ区切り形式で保存する
では、手順を順番に説明していきましょう。
Glossary Converter での変換方法については、以前の記事「【前編】Xbench を便利に使う」と「【後編】マイクロソフトの用語集を使いたい」も参考にしてください。
まず、[setting] > [General] で 「Excel 2007 Workbook」を選択します。これで、用語ベース (.sdltb ファイル) が Excel ファイルに変換されるようになります。
さらに、[Spreadsheet] タブで [Synonyms in Excel Tables] を設定します。[Multi-line format (one row per synonym)] オプションを選択し、[Repeat source term] チェックボックスをオンにします。これで、複数の用語がある場合は複数の行が作成され、それぞれの行に原語が記述されるようになります。([Column/Language name] は空白のままでも大丈夫です。設定が必要な場合には、変換の実行時にプロンプトが表示されてきます。)
ここまで設定をしたら、Glossary Converter のアプリ上に対象の用語ベース ファイルをドラッグアンドドロップします。これで、元の用語ベースと同じフォルダーに Excel ファイルが作成されます。
作成された Excel ファイルを開いて、Xbench が検索できる形にデータを整えます。手の込んでいる用語ベースの場合は、たいてい、原語と訳語以外に参考情報のフィールドがいくつか設定されています。それらのフィールドは Excel ファイルの列として出力されますが、Xbench は常に A 列を原語、B 列を訳語として検索を行うので、Excel ファイル上でそのように列を並べ変える必要があります。不要な列は削除して構いませんが、参考情報も Xbench で表示したい場合は C 列以降にその情報を残しておきます。
列を整えたら [名前を付けて保存] をしますが、このときに [ファイルの種類] として「テキスト (タブ区切り) (*.txt)」を選択します。これで、Xbench に読み込めるタブ区切りファイルができあがります。
作成したタブ区切りファイル (.txt) を Xbench に「Tab-delimited Text File」として取り込むと、以下のように複数の用語がヒットしてきます。これで完成です。
今回は以上です。1 対 1 でない用語ベースの TBX ファイルをうまく検索できないことになぜ今まで気付かなかったのか、ちょっと恐ろしくなったので確認してみたところ、そんな形式の用語ベースは実はほとんどありませんでした。たいていの場合、Excel ファイルが基にあり、その時点で 1 対 1 になっているか、なっていない場合は Excel ファイル上で編集をして無理やり 1 対 1 にしていました。とはいえ、検索モレを防ぐため、TBX ファイルは 1 対 1 であることを確認してから Xbench に取り込む必要があります。
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前提事項として、私は Xbench の無料版 (バージョン 2.9) を使用しています。有料版だったら、もしかしたら今回の問題は起きないのかもしれないですが、どうでしょう。ちょっと自分では試せないので、何か情報がありましたらぜひご提供ください。
さて、Xbench でうまく検索できないのは、原語と訳語の組み合わせが 1 対 1 でない用語ベースです。このような用語ベース (.sdltb) を Glossary Converter を使って TBX ファイルに変換し、Xbench で検索を行うと、複数の訳語があっても 1 つの訳語しかヒットしてきません。
たとえば、用語ベースで、以下のように interlock に対して「インターロック」と「安全装置」という 2 つの単語が登録されていたとします。
これを単純に TBX ファイルに変換して Xbench に取り込むと、「安全装置」しかヒットしてきません。
ただし、この場合でも TBX ファイルには「インターロック」と「安全装置」の両方が正常に記述されています。つまり、Xbench の検索機能が 1 つしか見つけられないということのようです。
で、どうしたものかと考えた末、今回は、TBX ファイルではなく、タブ区切りファイルを使うことにしました。手順はこんな感じです。
1. Glossary Converter を使って用語ベースを Excel ファイルに変換する
2. Excel でデータを編集し、タブ区切り形式で保存する
では、手順を順番に説明していきましょう。
1. Glossary Converter を使って用語ベースを Excel ファイルに変換する
Glossary Converter での変換方法については、以前の記事「【前編】Xbench を便利に使う」と「【後編】マイクロソフトの用語集を使いたい」も参考にしてください。
まず、[setting] > [General] で 「Excel 2007 Workbook」を選択します。これで、用語ベース (.sdltb ファイル) が Excel ファイルに変換されるようになります。
さらに、[Spreadsheet] タブで [Synonyms in Excel Tables] を設定します。[Multi-line format (one row per synonym)] オプションを選択し、[Repeat source term] チェックボックスをオンにします。これで、複数の用語がある場合は複数の行が作成され、それぞれの行に原語が記述されるようになります。([Column/Language name] は空白のままでも大丈夫です。設定が必要な場合には、変換の実行時にプロンプトが表示されてきます。)
ここまで設定をしたら、Glossary Converter のアプリ上に対象の用語ベース ファイルをドラッグアンドドロップします。これで、元の用語ベースと同じフォルダーに Excel ファイルが作成されます。
2. Excel でデータを編集し、タブ区切り形式で保存する
作成された Excel ファイルを開いて、Xbench が検索できる形にデータを整えます。手の込んでいる用語ベースの場合は、たいてい、原語と訳語以外に参考情報のフィールドがいくつか設定されています。それらのフィールドは Excel ファイルの列として出力されますが、Xbench は常に A 列を原語、B 列を訳語として検索を行うので、Excel ファイル上でそのように列を並べ変える必要があります。不要な列は削除して構いませんが、参考情報も Xbench で表示したい場合は C 列以降にその情報を残しておきます。
列を整えたら [名前を付けて保存] をしますが、このときに [ファイルの種類] として「テキスト (タブ区切り) (*.txt)」を選択します。これで、Xbench に読み込めるタブ区切りファイルができあがります。
作成したタブ区切りファイル (.txt) を Xbench に「Tab-delimited Text File」として取り込むと、以下のように複数の用語がヒットしてきます。これで完成です。
今回は以上です。1 対 1 でない用語ベースの TBX ファイルをうまく検索できないことになぜ今まで気付かなかったのか、ちょっと恐ろしくなったので確認してみたところ、そんな形式の用語ベースは実はほとんどありませんでした。たいていの場合、Excel ファイルが基にあり、その時点で 1 対 1 になっているか、なっていない場合は Excel ファイル上で編集をして無理やり 1 対 1 にしていました。とはいえ、検索モレを防ぐため、TBX ファイルは 1 対 1 であることを確認してから Xbench に取り込む必要があります。
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2023年06月09日
Trados 質問会の補足
久しぶりに Trados の質問会が開催されたので参加してみました。毎回、なんとなくずれた回答もある質問会ですが、参考になる情報がないわけではありません。
この記事では、私の感想と補足事項を簡単にまとめました。以下に挙げた質問のタイトルや内容はあくまで私の解釈です。この私の解釈も、実際にご質問をされた方の真意からずれているかもしれませんが、その辺りはご了承ください。
翻訳、レビュー、リリースというモードごとに画面をカスタマイズできるそうです。私が普段使っている画面のレイアウトは以前の記事「デュアル ディスプレイでの作業」で紹介しているのでご覧ください。
この質問で私が最も気になったのは、質問の内容そのものではなく、SDL の方の「レビューのときはメモリを使っていろいろすることはないでしょうから〜」というような発言です。レビューのときは、メモリをあまり使わないからメモリ ペインは既定で画面下部に表示する仕様なのだそうです。
私は以前から、レビュー モードのときになぜメモリ ペインが画面下部に表示されるのか疑問だったのですが、そもそも開発会社の中でそういう認識だったのですね。そういう認識だったら、もちろんレビュー料金をマッチ率で割り引いたりすることもないですよね? そうですよね。だって、メモリを使わないんですから。(ちなみに、私がなぜこんなことを書いているのかはこちらの記事をお読みください。)
sdlxliff ファイルだけをバックアップしているが、実際に復元するときはどうすればよいのかという質問がありました。
プロジェクトの各ファイルがどこに格納されているかを知るには、プロジェクト ビューで対象のプロジェクトを右クリックし、表示されるメニューから [プロジェクト フォルダを開く] を選択します。これで、プロジェクトが格納されているフォルダーがエクスプローラーで開かれます。
開かれたフォルダーの中に「en-US」や「ja-JP」など、言語ごとのフォルダーがあり、sdlxliff ファイルはその言語ごとのフォルダーの中に格納されています。
私も、毎日の作業では sdlxliff ファイルをバックアップとして保存しています。メモリや何かの設定が壊れてうまくいかないときは、翻訳会社から提供されたパッケージを開きなおし、バックアップしておいた sdlxliff ファイルをそこに上書きします。これで、メモリや設定は最初の状態に戻しつつ、訳文は今まで訳したものを維持できます。
Trados には、訳文生成やプレビューの方法がたくさんあります。プレビューと訳文生成の違いは私も聞きたかったのですが、今回の回答はそこまで詳しいものではありませんでした。
訳文を表示する方法については、以前の記事 「訳文のみで保存」を使ってみる と 「訳文の表示」を使ってみる を参照してください。
少しだけ紹介されていた「エクスポート」機能は出力先などを設定できるのでとても便利です。以前の記事「同時に複数の画面を開く」で簡単に紹介しています。
「コロンで分かれないようにしたい」「括弧内の句点では分かれてほしくない」など、分節規則の設定はなかなか面倒です。設定する場所は、回答で説明されていたとおり、翻訳メモリの [言語リソース] > [分節規則] です。(詳細な設定方法は、すみません、セミナーでの回答のとおり検索してください。)
この分節規則について、私はいつも SDL さんに強調して説明してほしいなあと思っていることがあります。それは「分節規則は原文を取り込む前に設定する必要がある」ことです。つまり、パッケージを渡された翻訳者は設定を変えることができません。翻訳会社がパッケージを作る段階で設定をする必要があります。
また、最近は、機械翻訳が事前に挿入されていることがありますが、括弧内の句点で分割しないという設定がされていないために、文が途中で切れ、機械翻訳がうまく機能していないことがよくあります。何の設定もせずに機械翻訳を適用して、料金は割り引きますねって言ってくる会社さんもあります。いっそのこと、括弧内の句点で分割しない設定を既定にした方がいい気もしますが、だめですかね。
質問文も簡単なものでしたが、回答も「ヘルプを見てください」という簡単なものでした。せっかく質問しているのだから、もう少し答えてあげてもいいんじゃないかと感じたので翻訳者の立場から少し補足します。
ロックをする一番の目的は、おそらく「作業対象外であることを示す」ことです。翻訳会社さんとの仕事の場合、ロックされている分節は基本的に作業をしないので料金が発生しません。つまり、ロックの有無は料金に直接かかわります。このため、翻訳者側でロックをかけたり、解除したりすることは原則禁止です。
さらに、ロックをかけているのが、翻訳会社ではなく、その先のソース クライアントである場合もあります。その場合、翻訳会社もロック部分については料金をもらっていない可能性があるので、それを翻訳者が勝手に変えてしまったら大変なことになります。誤訳だろうと、なんだろうと、ロックされている部分に勝手に触れるのは厳禁です。
また、逆に、ロックされていないのに作業対象外ということも原則ありません。100% マッチを作業対象外とするなら、その分節はロックされた状態でファイルを渡されるのが通常です。私は、作業対象外にもかかわらずロックされていない場合は、必ず作業前にコーディネーターさんに確認するようにしています。
これは「高度な表示フィルタ」の右クリック コマンドです。詳しくは「2021 で新しくなった表示フィルタ」を参照してください。
上記の記事でも説明していますが、この右クリック コマンドにはショートカット キーを割り当てられます。私は Phrase と同じ動作になるように「選択フィルタ」に Ctrl+Shift+F を割り当てています。また、フィルターの解除は Ctrl+Alt+F6 で可能です。(かなり便利です。)
今回の回答ではエディター上で 1 色ならハイライトを付けられるとのことでした。そんな機能があったかどうか私の記憶ではよくわかりませんが、ひとまず、紹介されていたプラグイン Wordlight をインストールしてみました。これも、ショートカット キーを設定すればとても便利そうです。
ショートカット キーの設定画面には「Highlight Word」という同じ名前のアクションが 2 つ表示されています。実際に設定してみたところ、上のアクションでは色の選択画面が表示されました。下のアクションでは、色の選択画面は表示されず、そのままハイライトを付けることができました。
「用語ベースの単語数に制限はありますか」という質問に対して「登録数に制限はありません」という回答がされていましたが、私は、この質問は用語ベース内の用語 1 つ 1 つの長さに制限はあるのか、という意味だったのではないかと思いました。
以前、翻訳会社から提供されたパッケージで UI 文言がメモリに登録されていたことがあり、私は「メモリでは短い用語がヒットしないので用語ベースに登録してもらえませんか」とお願いしたことがあります。そのときに翻訳会社さんから返ってきた答えが「エラー メッセージなどの長い文も入っているので、用語ベースではうまくヒットしない可能性があります」というものでした。結局、翻訳会社さんが「調査します」と言っている間にそのプロジェクトは終了し、それっきりでした。
確かに、用語ベースに長い文を入れるとどうなるのかちょっと不安です。ちゃんとヒットしてくるでしょうか。実際、エラー メッセージなど、ある程度の長さを持つ文がヒットしてくることはあるので、おそらく大丈夫だろうと個人的には考えています。その辺りのことをこの質問の答えでは期待していました。
なお、用語認識の設定などについては「用語ベースの設定」もどうぞ参考にしてください。
まだまだ質問はたくさんありましたが、今回はここまでとします。この質問会で話題に上った中で私も欲しいと思った機能は、エディター上でフォントを指定する機能と、繰り返しの適用時に訳文を修正できる機能です。「Ideas に投稿してください」と何回か言われていましたが、実装されるまでの道のりは長そうです。
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この記事では、私の感想と補足事項を簡単にまとめました。以下に挙げた質問のタイトルや内容はあくまで私の解釈です。この私の解釈も、実際にご質問をされた方の真意からずれているかもしれませんが、その辺りはご了承ください。
画面のカスタマイズ
翻訳、レビュー、リリースというモードごとに画面をカスタマイズできるそうです。私が普段使っている画面のレイアウトは以前の記事「デュアル ディスプレイでの作業」で紹介しているのでご覧ください。
この質問で私が最も気になったのは、質問の内容そのものではなく、SDL の方の「レビューのときはメモリを使っていろいろすることはないでしょうから〜」というような発言です。レビューのときは、メモリをあまり使わないからメモリ ペインは既定で画面下部に表示する仕様なのだそうです。
私は以前から、レビュー モードのときになぜメモリ ペインが画面下部に表示されるのか疑問だったのですが、そもそも開発会社の中でそういう認識だったのですね。そういう認識だったら、もちろんレビュー料金をマッチ率で割り引いたりすることもないですよね? そうですよね。だって、メモリを使わないんですから。(ちなみに、私がなぜこんなことを書いているのかはこちらの記事をお読みください。)
プロジェクトの構成とバックアップからの復元方法
sdlxliff ファイルだけをバックアップしているが、実際に復元するときはどうすればよいのかという質問がありました。
プロジェクトの各ファイルがどこに格納されているかを知るには、プロジェクト ビューで対象のプロジェクトを右クリックし、表示されるメニューから [プロジェクト フォルダを開く] を選択します。これで、プロジェクトが格納されているフォルダーがエクスプローラーで開かれます。
開かれたフォルダーの中に「en-US」や「ja-JP」など、言語ごとのフォルダーがあり、sdlxliff ファイルはその言語ごとのフォルダーの中に格納されています。
私も、毎日の作業では sdlxliff ファイルをバックアップとして保存しています。メモリや何かの設定が壊れてうまくいかないときは、翻訳会社から提供されたパッケージを開きなおし、バックアップしておいた sdlxliff ファイルをそこに上書きします。これで、メモリや設定は最初の状態に戻しつつ、訳文は今まで訳したものを維持できます。
訳文生成の方法、プレビューと訳文生成の違い
Trados には、訳文生成やプレビューの方法がたくさんあります。プレビューと訳文生成の違いは私も聞きたかったのですが、今回の回答はそこまで詳しいものではありませんでした。
訳文を表示する方法については、以前の記事 「訳文のみで保存」を使ってみる と 「訳文の表示」を使ってみる を参照してください。
少しだけ紹介されていた「エクスポート」機能は出力先などを設定できるのでとても便利です。以前の記事「同時に複数の画面を開く」で簡単に紹介しています。
セグメンテーション (分節規則)
「コロンで分かれないようにしたい」「括弧内の句点では分かれてほしくない」など、分節規則の設定はなかなか面倒です。設定する場所は、回答で説明されていたとおり、翻訳メモリの [言語リソース] > [分節規則] です。(詳細な設定方法は、すみません、セミナーでの回答のとおり検索してください。)
この分節規則について、私はいつも SDL さんに強調して説明してほしいなあと思っていることがあります。それは「分節規則は原文を取り込む前に設定する必要がある」ことです。つまり、パッケージを渡された翻訳者は設定を変えることができません。翻訳会社がパッケージを作る段階で設定をする必要があります。
また、最近は、機械翻訳が事前に挿入されていることがありますが、括弧内の句点で分割しないという設定がされていないために、文が途中で切れ、機械翻訳がうまく機能していないことがよくあります。何の設定もせずに機械翻訳を適用して、料金は割り引きますねって言ってくる会社さんもあります。いっそのこと、括弧内の句点で分割しない設定を既定にした方がいい気もしますが、だめですかね。
「分節のロック」の用途
質問文も簡単なものでしたが、回答も「ヘルプを見てください」という簡単なものでした。せっかく質問しているのだから、もう少し答えてあげてもいいんじゃないかと感じたので翻訳者の立場から少し補足します。
ロックをする一番の目的は、おそらく「作業対象外であることを示す」ことです。翻訳会社さんとの仕事の場合、ロックされている分節は基本的に作業をしないので料金が発生しません。つまり、ロックの有無は料金に直接かかわります。このため、翻訳者側でロックをかけたり、解除したりすることは原則禁止です。
さらに、ロックをかけているのが、翻訳会社ではなく、その先のソース クライアントである場合もあります。その場合、翻訳会社もロック部分については料金をもらっていない可能性があるので、それを翻訳者が勝手に変えてしまったら大変なことになります。誤訳だろうと、なんだろうと、ロックされている部分に勝手に触れるのは厳禁です。
また、逆に、ロックされていないのに作業対象外ということも原則ありません。100% マッチを作業対象外とするなら、その分節はロックされた状態でファイルを渡されるのが通常です。私は、作業対象外にもかかわらずロックされていない場合は、必ず作業前にコーディネーターさんに確認するようにしています。
右クリックの「選択フィルタ」「原文フィルタ」「訳文フィルタ」
これは「高度な表示フィルタ」の右クリック コマンドです。詳しくは「2021 で新しくなった表示フィルタ」を参照してください。
上記の記事でも説明していますが、この右クリック コマンドにはショートカット キーを割り当てられます。私は Phrase と同じ動作になるように「選択フィルタ」に Ctrl+Shift+F を割り当てています。また、フィルターの解除は Ctrl+Alt+F6 で可能です。(かなり便利です。)
ハイライト
今回の回答ではエディター上で 1 色ならハイライトを付けられるとのことでした。そんな機能があったかどうか私の記憶ではよくわかりませんが、ひとまず、紹介されていたプラグイン Wordlight をインストールしてみました。これも、ショートカット キーを設定すればとても便利そうです。
ショートカット キーの設定画面には「Highlight Word」という同じ名前のアクションが 2 つ表示されています。実際に設定してみたところ、上のアクションでは色の選択画面が表示されました。下のアクションでは、色の選択画面は表示されず、そのままハイライトを付けることができました。
用語ベースの単語数
「用語ベースの単語数に制限はありますか」という質問に対して「登録数に制限はありません」という回答がされていましたが、私は、この質問は用語ベース内の用語 1 つ 1 つの長さに制限はあるのか、という意味だったのではないかと思いました。
以前、翻訳会社から提供されたパッケージで UI 文言がメモリに登録されていたことがあり、私は「メモリでは短い用語がヒットしないので用語ベースに登録してもらえませんか」とお願いしたことがあります。そのときに翻訳会社さんから返ってきた答えが「エラー メッセージなどの長い文も入っているので、用語ベースではうまくヒットしない可能性があります」というものでした。結局、翻訳会社さんが「調査します」と言っている間にそのプロジェクトは終了し、それっきりでした。
確かに、用語ベースに長い文を入れるとどうなるのかちょっと不安です。ちゃんとヒットしてくるでしょうか。実際、エラー メッセージなど、ある程度の長さを持つ文がヒットしてくることはあるので、おそらく大丈夫だろうと個人的には考えています。その辺りのことをこの質問の答えでは期待していました。
なお、用語認識の設定などについては「用語ベースの設定」もどうぞ参考にしてください。
まだまだ質問はたくさんありましたが、今回はここまでとします。この質問会で話題に上った中で私も欲しいと思った機能は、エディター上でフォントを指定する機能と、繰り返しの適用時に訳文を修正できる機能です。「Ideas に投稿してください」と何回か言われていましたが、実装されるまでの道のりは長そうです。
2023年04月24日
安易にバイリンガル Excel を使っていませんか
最近、すっかり更新頻度が落ちていますが、Trados のネタが尽きたわけではありません。大丈夫です。書きたいことはまだもう少しありますので、どうぞ気長にお付き合いくださいませ。
今回は Excel ファイルの翻訳についてです。Trados は Excel ファイルに対してもかなり豊富な機能を備えています。特に、下図のように原文と訳文を併記する形式には「バイリンガル Excel」というファイルの種類が便利です (バイリンガル Excel については、公式サイトのブログ「対訳形式の Excel を翻訳メモリに変換」および「Trados Studio 2022 で多言語 Excel ファイルを翻訳する方法」も参照してください)。 が、併記の形式だからといって、安易にバイリンガル Excel を使うことはあまりお勧めできません。
例として、以下のファイルを訳すことを考えてみましょう。A 列には、識別子となる番号が振られています。D 列には、参照する URL が記載されています。No. 3 のセルには、文が複数含まれています。
さて、このファイルを「バイリンガル Excel」として Trados に取り込むと以下のようになってしまいます。
最大限に設定を施してもこれが限界です (設定の詳細は後述します)。どうでしょう?? これで訳せるでしょうか。番号や参照の URL はなくなっています。No. 3 のセルも、複数の文が取り込まれてはいますが、他のセルとの区切りがわからなくなっています。
これが、下図のようになっていたらどうでしょうか。こちらの方が訳しやすくないでしょうか。
上図は「Microsoft Excel 2007-2019」というファイルの種類を使って通常の Excel ファイルとして取り込んだ例です。番号と URL もエディターに表示されています。ただ、ロックされているので、そこを訳してしまう心配はありません。番号が表示されていることによって、セルの区切りがわかりやすくなり、番号で検索をすることも可能になります。クエリを書くときには番号などを記入しなければならないこともあるので、そうした場合にも番号が表示されていた方が便利です。
「バイリンガル Excel」というファイルの種類は、手軽で使いやすくはありますが、実際に翻訳作業を行うことを考えると必ずしも便利ではありません。番号やセルの区切りなど、翻訳に必要な情報が消えてしまいます。バイリンガル Excel が最も有効に機能するのは「原文と訳文のテキストが存在するから何とかメモリにしたい」というときかと思います。翻訳作業をするなら、安易にバイリンガル Excel を選択するのではなく、他の形式の機能も併せて考え、本当に翻訳しやすい環境になるように多少の工夫を施すことも必要です。
というわけで、あまりお勧めはしないバイリンガル Excel ですが、設定はいろいろと用意されているので少しだけ紹介します。先に挙げた例では、以下の設定を使っています。
列 (原文列と訳文列)
原文と訳文の列を指定します。原文と訳文は Excel の 1 列目と 2 列目である必要はありません。どこにあっても、どちらが先にあってもかまいません。この設定を使えば、原文と訳文を簡単に入れ替えることもできます。
コンテキスト情報
実は、A 列にある番号は「文書構造」として取り込んでいます。エディターの右端に表示されている「NO.」がそれです。クリックすると、下図のように「No. 3」という情報が表示されます。
ただ、いちいちクリックすることはあり得ないので、ここに情報を取り込んでもまず役立ちません。一応、RWS AppStore には、この文書構造情報 (Document Structure Information) をわかりやすく表示するためのアプリ「DSI Viewer」が用意されています。(すみません、私は使っていないので詳しい説明は省略します。)
コメント情報
さらに実は、D 列の参照 URL はコメントとして取り込んでいます。ただ、コメントも、翻訳作業をするエディターとは別タブに表示されるのであまり見やすいとはいえません。
なお、設定の一番下にある [Studio のコメントを保存する列] を指定すると、Trados 上で追加したコメントを Excel ファイル上の特定の列に出力できます。
では、次に普通の Excel ファイルとして取り込むときの設定を紹介します。使用するファイルの種類は「Microsoft Excel 2007-2019」です。まず、取り込む前に、原文の Excel ファイルに 1 つだけ加工をします。下図のように、Source 列をそのまま Target 列にコピーします。これだけです。Trados 上では、元々の Source 列は無視して、コピーした Target 列を翻訳していきます。
コンテンツ処理 -> 列による除外
特定の列を除外できます。今回の例では、Source の列が不要なので、B 列をスキップします。Notes の列は除外せずにそのまま取り込みます。今回の Notes は URL のみなので取り込んでいますが、長い文章での説明のような場合には取り込むと返って翻訳作業がしにくくなることもあります。状況に応じて、取り込むか、除外するかを判断します。
全般設定 -> 数値コンテンツのあるセル
今回の例では、A 列の番号が数値なので [数値コンテンツのあるセル] チェックボックスをオンにします。これがオフの場合、数値のみのセルは Trados で翻訳対象になりません。
設定は以上です。これで Excel ファイルを取り込みます。取り込んだ後は、数値のみの分節と URL のみの分節をフィルターで抽出し、ロックして完成です。
番号や Notes が今回の例のように単純でない場合、フィルターでうまく抽出するには正規表現などが必要になるかもしれません。この抽出ができるかどうかが、通常の Excel ファイルを使うか、あきらめてバイリンガル Excel を使うかの分かれ目になります。後から抽出してロックできるなら、テキストとして Trados に取り込んでしまいます。抽出できないなら、最初から取り込まないようにするしかありません。Notes は無理としても、形式の決まっている番号や ID などは抽出が比較的簡単なので、できるだけ Trados に取り込む方向で考えるようにします。
今回は以上です。翻訳会社から提供されるパッケージではバイリンガル Excel が使われていることが多いですが、いろいろな情報を切り捨てておいて、コンテキストを見ろだの、クエリには ID を記入しろだの、そんなことばかり言われても、翻訳者だって対応しきれないですよ〜
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今回は Excel ファイルの翻訳についてです。Trados は Excel ファイルに対してもかなり豊富な機能を備えています。特に、下図のように原文と訳文を併記する形式には「バイリンガル Excel」というファイルの種類が便利です (バイリンガル Excel については、公式サイトのブログ「対訳形式の Excel を翻訳メモリに変換」および「Trados Studio 2022 で多言語 Excel ファイルを翻訳する方法」も参照してください)。 が、併記の形式だからといって、安易にバイリンガル Excel を使うことはあまりお勧めできません。
例として、以下のファイルを訳すことを考えてみましょう。A 列には、識別子となる番号が振られています。D 列には、参照する URL が記載されています。No. 3 のセルには、文が複数含まれています。
さて、このファイルを「バイリンガル Excel」として Trados に取り込むと以下のようになってしまいます。
最大限に設定を施してもこれが限界です (設定の詳細は後述します)。どうでしょう?? これで訳せるでしょうか。番号や参照の URL はなくなっています。No. 3 のセルも、複数の文が取り込まれてはいますが、他のセルとの区切りがわからなくなっています。
これが、下図のようになっていたらどうでしょうか。こちらの方が訳しやすくないでしょうか。
上図は「Microsoft Excel 2007-2019」というファイルの種類を使って通常の Excel ファイルとして取り込んだ例です。番号と URL もエディターに表示されています。ただ、ロックされているので、そこを訳してしまう心配はありません。番号が表示されていることによって、セルの区切りがわかりやすくなり、番号で検索をすることも可能になります。クエリを書くときには番号などを記入しなければならないこともあるので、そうした場合にも番号が表示されていた方が便利です。
「バイリンガル Excel」というファイルの種類は、手軽で使いやすくはありますが、実際に翻訳作業を行うことを考えると必ずしも便利ではありません。番号やセルの区切りなど、翻訳に必要な情報が消えてしまいます。バイリンガル Excel が最も有効に機能するのは「原文と訳文のテキストが存在するから何とかメモリにしたい」というときかと思います。翻訳作業をするなら、安易にバイリンガル Excel を選択するのではなく、他の形式の機能も併せて考え、本当に翻訳しやすい環境になるように多少の工夫を施すことも必要です。
「バイリンガル Excel」の設定
というわけで、あまりお勧めはしないバイリンガル Excel ですが、設定はいろいろと用意されているので少しだけ紹介します。先に挙げた例では、以下の設定を使っています。
列 (原文列と訳文列)
原文と訳文の列を指定します。原文と訳文は Excel の 1 列目と 2 列目である必要はありません。どこにあっても、どちらが先にあってもかまいません。この設定を使えば、原文と訳文を簡単に入れ替えることもできます。
コンテキスト情報
実は、A 列にある番号は「文書構造」として取り込んでいます。エディターの右端に表示されている「NO.」がそれです。クリックすると、下図のように「No. 3」という情報が表示されます。
ただ、いちいちクリックすることはあり得ないので、ここに情報を取り込んでもまず役立ちません。一応、RWS AppStore には、この文書構造情報 (Document Structure Information) をわかりやすく表示するためのアプリ「DSI Viewer」が用意されています。(すみません、私は使っていないので詳しい説明は省略します。)
コメント情報
さらに実は、D 列の参照 URL はコメントとして取り込んでいます。ただ、コメントも、翻訳作業をするエディターとは別タブに表示されるのであまり見やすいとはいえません。
なお、設定の一番下にある [Studio のコメントを保存する列] を指定すると、Trados 上で追加したコメントを Excel ファイル上の特定の列に出力できます。
「Microsoft Excel 2007-2019」の設定
では、次に普通の Excel ファイルとして取り込むときの設定を紹介します。使用するファイルの種類は「Microsoft Excel 2007-2019」です。まず、取り込む前に、原文の Excel ファイルに 1 つだけ加工をします。下図のように、Source 列をそのまま Target 列にコピーします。これだけです。Trados 上では、元々の Source 列は無視して、コピーした Target 列を翻訳していきます。
コンテンツ処理 -> 列による除外
特定の列を除外できます。今回の例では、Source の列が不要なので、B 列をスキップします。Notes の列は除外せずにそのまま取り込みます。今回の Notes は URL のみなので取り込んでいますが、長い文章での説明のような場合には取り込むと返って翻訳作業がしにくくなることもあります。状況に応じて、取り込むか、除外するかを判断します。
全般設定 -> 数値コンテンツのあるセル
今回の例では、A 列の番号が数値なので [数値コンテンツのあるセル] チェックボックスをオンにします。これがオフの場合、数値のみのセルは Trados で翻訳対象になりません。
設定は以上です。これで Excel ファイルを取り込みます。取り込んだ後は、数値のみの分節と URL のみの分節をフィルターで抽出し、ロックして完成です。
番号や Notes が今回の例のように単純でない場合、フィルターでうまく抽出するには正規表現などが必要になるかもしれません。この抽出ができるかどうかが、通常の Excel ファイルを使うか、あきらめてバイリンガル Excel を使うかの分かれ目になります。後から抽出してロックできるなら、テキストとして Trados に取り込んでしまいます。抽出できないなら、最初から取り込まないようにするしかありません。Notes は無理としても、形式の決まっている番号や ID などは抽出が比較的簡単なので、できるだけ Trados に取り込む方向で考えるようにします。
今回は以上です。翻訳会社から提供されるパッケージではバイリンガル Excel が使われていることが多いですが、いろいろな情報を切り捨てておいて、コンテキストを見ろだの、クエリには ID を記入しろだの、そんなことばかり言われても、翻訳者だって対応しきれないですよ〜
2023年03月17日
訳文のフォントを変えたい
ずいぶん久しぶりの更新になってしまいました。今回は、Trados で訳した文書のフォントについてです。最近の仕事で、翻訳会社から Trados のパッケージではなく、Word や PowerPoint のファイルをそのまま渡されて翻訳することが何回かありました。原文のファイルをそのまま渡される場合、細かいレイアウトは別作業としても、フォントの指定くらいはされることがよくあります。今回は、自分で Trados にファイルを取り込んで訳すときに、訳文のフォントを設定する方法を説明します。
今回の記事では、自分で Trados にファイルを取り込んで作業する場合の方法を紹介します。残念ながら、翻訳会社からパッケージを渡された場合は自分で原文ファイルを取り込むことができないので、パッケージ内のファイルをそのまま使用するしかありません。「ファイルの種類」にあるフォント マッピングを自分で変更することはできますが、「ファイルの種類」には翻訳会社が何らかの設定をしてきている場合があります。この中の設定を変更する場合は、くれぐれも慎重に行ってください。
今回の記事は、プレビューや訳文生成の処理で作られる訳文ファイルのフォントについての説明です。エディターに表示される文字のフォントではありません。エディターの表示で使われるフォントについては、以前の記事「エディタ上のフォントを変える」を参考にしてください。
では、フォントを設定する方法を説明していきましょう。まずは、英日翻訳の場合です。
PowerPoint ファイルの英日翻訳をしているときに、訳文ファイルで日本語のフォントが明朝になりプレゼンテーションの見た目が少し残念な感じになってしまったことはありませんか。それは「ファイルの種類」のフォント マッピングですべてのフォントに「MS Mincho」が設定されているからです。
おそらく既定で、下図のように、[プロジェクトの設定] > [ファイルの種類] > [PowerPoint 2007-2019] > [フォント マッピング] の日本語に対して <AllFonts> を MS Mincho に変換する設定がされています。
このマッピングが有効になっていると、訳文ファイルですべてのフォントが明朝に変換されます。
■ すべてのフォントが明朝に変換される
明朝ではなく別のフォントに変換したい場合は、上図の画面で [MS Mincho] を右クリックして [選択したアイテムの削除] を選択し、フォントの設定をいったん削除します。その後で [日本語] を右クリックして [新規訳文フォントの追加] を選択し、フォントを追加します。下図のような画面が表示されるので、[原文のフォント] では下部の [原文のフォントをすべてマップ] を選択し、[訳文のフォント] で使用したいフォントを選択します (この例では、Meiryo UI を選択しています)。
これで、[OK] をクリックすると、下図のように <AllFonts> を Meiryo UI に変換する設定になります。
この設定で訳文生成をすると、今度はすべてのフォントが Meiryo UI に変換されます。
■ すべてのフォントが Meiryo UI に変換される
上図の [フォント マッピングの選択] 画面では、もちろん「すべてのフォント」ではなく、個別のフォントを設定することもできます。フォントごとに変換ルールが決まっている場合は個々に設定を行います。
ちなみに、上記で使用した Meiryo UI には斜体が存在しません。Trados のエディター上でタグを使用して斜体を設定していても、訳文ファイルで Meiryo UI に変更してしまうと正体で表示されます (私は、Trados のバグなんじゃないかと思っていたのですが、そうではありませんでした)。日本語文書で斜体を意図的に使うことは少ないと思いますが、もし斜体を使いたい場合は他のフォントを使用する必要があります。
フォント マッピングの設定では、Trados でのフォント変換を一切無効にすることもできます。フォント変換を無効にしたい場合は、上図の画面で [日本語] を右クリックして [選択したアイテムの削除] を選択し、日本語の設定そのものを削除します。これで、フォントの変換は行われず、原文の PowerPoint ファイルで設定されている日本語用フォントが使用されるようになります。
■ フォント変換を無効にすると、原文ファイルで設定されているフォントが使用される
原文ファイルに日本語用フォントがきちんと設定されている場合は、Trados での変換は無効にするのがお勧めです。ただ、英語の原文ファイルで日本語用のフォントが設定されていることはまれです。たいていは、設定がされていないために、何らかの既定値が使用されてしまうことになります。このため、Trados でのフォント変換を無効にする場合は、原文ファイルに対して自分でフォントの設定を行っておく必要があります。
フォント マッピングによる変換を行わない場合は、Trados にファイルを取り込む前に、原文ファイルでできるだけフォントの設定を行っておきます。事前に原文ファイルで設定を行っておけば、フォント マッピングを設定しなくてもプレビュー時にフォントが変換された訳文が表示されるので、翻訳後の見た目も確認しやすくなります。
また、Trados のフォント マッピング機能が実際にどのようにフォントを変更しているのかはわかりませんが、この機能は Word や PowerPoint の訳文ファイルに適切な日本語用フォントを設定するわけではありません。見た目上は変換されたフォントが表示されていても、フォント設定自体は原文のままだったりすることがあります。
というわけで、原文ファイルでフォントの設定を行うのが理想ではあるのですが、実はこれがなかなか大変です。Word や PowerPoint の本格的な文書では「スタイル」や「マスター」などを使ってかなり複雑な設定が施されていることがあります。そのような場合、フォントだけとはいっても自分で適切な設定をするのは難しく、さらに Trados の訳文生成の動作も怪しくなることがあります。
私は、単純なファイルだったら原文ファイルで設定を行いますが、それが難しい場合は Trados のフォント マッピング機能を使ってしまいます。そして、それでもうまくいかない場合は、最終手段として、訳文生成後に手動でフォントを変更します。
さて、ここまでは英日翻訳で訳文が日本語の場合の説明でしたが、日英翻訳の場合は訳文が英語になります。先に挙げたフォント マッピングの図で気付いている方もいるかもしれませんが、既定のフォント マッピングに「英語」は存在しません。このため、訳文が英語の場合、フォントの変換は行われません。英語に対してフォントの変換を行いたい場合は、上図の [フォント マッピング] の画面を右クリックして [新しい言語の追加] を選択し、「英語」を追加する必要があります。
今回は以上です。フォントの変換は正確に行おうとするとなかなか大変です。原文ファイルの作られ方や、翻訳者に求められる作業範囲も考慮して、なんとなくいい感じに仕上げることを目指しましょう。
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パッケージを渡されたら、それをそのまま使う
今回の記事では、自分で Trados にファイルを取り込んで作業する場合の方法を紹介します。残念ながら、翻訳会社からパッケージを渡された場合は自分で原文ファイルを取り込むことができないので、パッケージ内のファイルをそのまま使用するしかありません。「ファイルの種類」にあるフォント マッピングを自分で変更することはできますが、「ファイルの種類」には翻訳会社が何らかの設定をしてきている場合があります。この中の設定を変更する場合は、くれぐれも慎重に行ってください。
エディター内のフォント指定は、別の設定で行う
今回の記事は、プレビューや訳文生成の処理で作られる訳文ファイルのフォントについての説明です。エディターに表示される文字のフォントではありません。エディターの表示で使われるフォントについては、以前の記事「エディタ上のフォントを変える」を参考にしてください。
では、フォントを設定する方法を説明していきましょう。まずは、英日翻訳の場合です。
「フォント マッピング」の設定でフォントを変える
PowerPoint ファイルの英日翻訳をしているときに、訳文ファイルで日本語のフォントが明朝になりプレゼンテーションの見た目が少し残念な感じになってしまったことはありませんか。それは「ファイルの種類」のフォント マッピングですべてのフォントに「MS Mincho」が設定されているからです。
おそらく既定で、下図のように、[プロジェクトの設定] > [ファイルの種類] > [PowerPoint 2007-2019] > [フォント マッピング] の日本語に対して <AllFonts> を MS Mincho に変換する設定がされています。
このマッピングが有効になっていると、訳文ファイルですべてのフォントが明朝に変換されます。
■ すべてのフォントが明朝に変換される
明朝ではなく別のフォントに変換したい場合は、上図の画面で [MS Mincho] を右クリックして [選択したアイテムの削除] を選択し、フォントの設定をいったん削除します。その後で [日本語] を右クリックして [新規訳文フォントの追加] を選択し、フォントを追加します。下図のような画面が表示されるので、[原文のフォント] では下部の [原文のフォントをすべてマップ] を選択し、[訳文のフォント] で使用したいフォントを選択します (この例では、Meiryo UI を選択しています)。
これで、[OK] をクリックすると、下図のように <AllFonts> を Meiryo UI に変換する設定になります。
この設定で訳文生成をすると、今度はすべてのフォントが Meiryo UI に変換されます。
■ すべてのフォントが Meiryo UI に変換される
上図の [フォント マッピングの選択] 画面では、もちろん「すべてのフォント」ではなく、個別のフォントを設定することもできます。フォントごとに変換ルールが決まっている場合は個々に設定を行います。
ちなみに、上記で使用した Meiryo UI には斜体が存在しません。Trados のエディター上でタグを使用して斜体を設定していても、訳文ファイルで Meiryo UI に変更してしまうと正体で表示されます (私は、Trados のバグなんじゃないかと思っていたのですが、そうではありませんでした)。日本語文書で斜体を意図的に使うことは少ないと思いますが、もし斜体を使いたい場合は他のフォントを使用する必要があります。
「フォント マッピング」の設定でフォント変換を無効にする
フォント マッピングの設定では、Trados でのフォント変換を一切無効にすることもできます。フォント変換を無効にしたい場合は、上図の画面で [日本語] を右クリックして [選択したアイテムの削除] を選択し、日本語の設定そのものを削除します。これで、フォントの変換は行われず、原文の PowerPoint ファイルで設定されている日本語用フォントが使用されるようになります。
■ フォント変換を無効にすると、原文ファイルで設定されているフォントが使用される
原文ファイルに日本語用フォントがきちんと設定されている場合は、Trados での変換は無効にするのがお勧めです。ただ、英語の原文ファイルで日本語用のフォントが設定されていることはまれです。たいていは、設定がされていないために、何らかの既定値が使用されてしまうことになります。このため、Trados でのフォント変換を無効にする場合は、原文ファイルに対して自分でフォントの設定を行っておく必要があります。
Trados に取り込む前に、原文ファイルでフォントを設定する
フォント マッピングによる変換を行わない場合は、Trados にファイルを取り込む前に、原文ファイルでできるだけフォントの設定を行っておきます。事前に原文ファイルで設定を行っておけば、フォント マッピングを設定しなくてもプレビュー時にフォントが変換された訳文が表示されるので、翻訳後の見た目も確認しやすくなります。
また、Trados のフォント マッピング機能が実際にどのようにフォントを変更しているのかはわかりませんが、この機能は Word や PowerPoint の訳文ファイルに適切な日本語用フォントを設定するわけではありません。見た目上は変換されたフォントが表示されていても、フォント設定自体は原文のままだったりすることがあります。
というわけで、原文ファイルでフォントの設定を行うのが理想ではあるのですが、実はこれがなかなか大変です。Word や PowerPoint の本格的な文書では「スタイル」や「マスター」などを使ってかなり複雑な設定が施されていることがあります。そのような場合、フォントだけとはいっても自分で適切な設定をするのは難しく、さらに Trados の訳文生成の動作も怪しくなることがあります。
私は、単純なファイルだったら原文ファイルで設定を行いますが、それが難しい場合は Trados のフォント マッピング機能を使ってしまいます。そして、それでもうまくいかない場合は、最終手段として、訳文生成後に手動でフォントを変更します。
英語のフォント マッピングは既定で無効
さて、ここまでは英日翻訳で訳文が日本語の場合の説明でしたが、日英翻訳の場合は訳文が英語になります。先に挙げたフォント マッピングの図で気付いている方もいるかもしれませんが、既定のフォント マッピングに「英語」は存在しません。このため、訳文が英語の場合、フォントの変換は行われません。英語に対してフォントの変換を行いたい場合は、上図の [フォント マッピング] の画面を右クリックして [新しい言語の追加] を選択し、「英語」を追加する必要があります。
今回は以上です。フォントの変換は正確に行おうとするとなかなか大変です。原文ファイルの作られ方や、翻訳者に求められる作業範囲も考慮して、なんとなくいい感じに仕上げることを目指しましょう。
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2023年01月30日
本当に原文からコピーしたままか?
年末のアドベント カレンダーでたくさん記事を書いたのでちょっとお休みしたらあっという間に 1 か月以上がたってしまいました。ネタが尽きたわけではないですが、今回はちょっと簡単な記事にします。
IT 系の翻訳をしていると、プログラムのソースコードなど原文のまま残さなければならない分節がたまにあります。原文をコピー (Ctrl+Ins) をするだけなので翻訳者としてはお得ですが、後で見直しをしているときに、本当にコピーしたか、コピーした後にうっかり触っていないかと不安になり、結局もう一度 Ctrl+Ins を押してしまうことがよくあります。
こんな不安を解消してくれる機能として、Trados では原文をコピーした分節の色を変えることができます。私はこの機能にまったく気付いていなかったのですが、少し前に Twitter で翻訳会社の方がつぶやいていたので、それをヒントに早速試してみました。
設定の場所は [ファイル] > [オプション] > [色] です。ここで、さまざまな色を設定できます。[翻訳ステータス] の [背景色] に [原文からコピー] というオプションがあるので、これを既定の白から別の色に変更します。私は下図のように薄紫色っぽくしています。
この設定をしておくと、以下のように原文からコピーしたままの分節に色が付くようになります。
薄紫色になっている分節は原文からコピーしたまま一切触っていない分節です。中央あたりの「We have several …」の分節は原文と訳文が同じように見えますが、実は原文からコピーをした後にスペースを入れて削除するという編集を加えたので薄紫色になっていません。
この機能は、原文と訳文が同じかをチェックしているのではなく、「原文からコピー」という操作をしたかどうかで色を付けています。「原文からコピー」の操作をした時点で色が付き、他の操作を行うとその時点で色は消えます。
地味な機能ですがとても便利で、私はかなり助かっています。他にもいろいろな設定で色が変えられるようなので、どうぞお試しください。
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IT 系の翻訳をしていると、プログラムのソースコードなど原文のまま残さなければならない分節がたまにあります。原文をコピー (Ctrl+Ins) をするだけなので翻訳者としてはお得ですが、後で見直しをしているときに、本当にコピーしたか、コピーした後にうっかり触っていないかと不安になり、結局もう一度 Ctrl+Ins を押してしまうことがよくあります。
こんな不安を解消してくれる機能として、Trados では原文をコピーした分節の色を変えることができます。私はこの機能にまったく気付いていなかったのですが、少し前に Twitter で翻訳会社の方がつぶやいていたので、それをヒントに早速試してみました。
設定の場所は [ファイル] > [オプション] > [色] です。ここで、さまざまな色を設定できます。[翻訳ステータス] の [背景色] に [原文からコピー] というオプションがあるので、これを既定の白から別の色に変更します。私は下図のように薄紫色っぽくしています。
この設定をしておくと、以下のように原文からコピーしたままの分節に色が付くようになります。
薄紫色になっている分節は原文からコピーしたまま一切触っていない分節です。中央あたりの「We have several …」の分節は原文と訳文が同じように見えますが、実は原文からコピーをした後にスペースを入れて削除するという編集を加えたので薄紫色になっていません。
この機能は、原文と訳文が同じかをチェックしているのではなく、「原文からコピー」という操作をしたかどうかで色を付けています。「原文からコピー」の操作をした時点で色が付き、他の操作を行うとその時点で色は消えます。
地味な機能ですがとても便利で、私はかなり助かっています。他にもいろいろな設定で色が変えられるようなので、どうぞお試しください。
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2022年12月25日
【後編】タイピングを減らそう
Advent Calendar 「翻訳に役立ってくれそうなツール」の記事です。記事の公開が遅くなってしまいました。今回も、がっつり Trados です。
前編に引き続き、Trados 内でタイピングを減らす方法を考えてみます。今回は、プロジェクトの設定ではなく、[ファイル] > [オプション] から行う Trados 環境全体の設定です。これらの設定の詳細については、以前の記事「Trados の設定を変えるには − [ファイル] と [プロジェクトの設定]」を参照してください。
[ファイル] > [オプション] の設定は、プロジェクトの設定と異なり、一度設定すればどのプロジェクトで作業をしても有効です。これは便利である反面、プロジェクトごとに設定を変えることはできないということでもあります。言語の方向 (日英か、英日か) によって設定を変えたくなることはありますが、プロジェクトを変えても設定は変わらないので、そうした場合は手動で設定を変えるしかありません。(結局、プロジェクトごとに設定を変えるんじゃん! ということです。)
今回紹介する機能は、主に AutoSuggest です。AutoSuggest は、英訳をする (英語を入力する) ときはうまく機能しますが、和訳をする (日本語を入力する) ときは、IME との関係上、あまり期待どおりの動作になりません。和訳の場合は、AutoSuggest は無効にして IME の機能を活用するのも一つの選択肢です。この記事の以下の説明は、英訳をする (英語を入力する) 場合を前提としています。では、始めていきましょう。
AutoSuggest の有効無効の切り替えや詳細の設定は、[ファイル] > [オプション] > [AutoSuggest] から行います。
画面下部の [AutoSuggest のプロバイダ] リストで、AutoSuggest の候補をどこから持ってくるのかを指定できます。順番も変更できます。私はすべてのチェックボックスをオンにしていることが多いですが、不要なものはオフにできます。
このリストの一番上に表示されている [RegexMatchAutoSuggestProvider] は、AutoSuggest を強化するプラグインです。これについては後で説明します。[AutoText] と [翻訳メモリと自動翻訳] については、別の画面で詳細を設定できます。これも後述します。
[AutoSuggest 辞書] は、特定のメモリから用語を抽出した対訳集 (.bpm ファイル) のようなものです。長らく、フリーランス版ではこの辞書を生成することができなかったのですが、なんと Trados Studio 2021 からは生成できるようになっています。(私は、この記事を書いていて、辞書生成機能がフリーランス版に追加されていることを初めて知りました。びっくりしました。) これも後で簡単に説明します。
この画面の細かい設定は、正直に言って、個人の好みです。メモリや用語集の充実度にもよりますし、慣れの問題もあります。候補があまりに多く表示されるようなら [翻訳メモリと自動翻訳] をオフにするとか、作業しているプロジェクトに合わせて面倒がらずに設定を変えてください。(まあ、結局、プロジェクトごとに設定を変えることになるので面倒です。)
では、いくつかの機能を詳しく見ていきます。
この機能を有効にすると、表示される候補がかなり多くなります。私は、候補を減らすため、たいてい「あいまい一致」のチェックボックスはオフにしています。
訳文でよく使う語句を自分で登録しておくことができます。AutoText は、原文に関係なく表示されるのが特徴です。メモリや用語集は原文に該当する語句がなければ機能しませんが、AutoText は訳文の語句を登録しているので、最初の数文字を入力すれば原文に関係なく候補が表示されてきます。「person in charge」や「company/organization」など、空白やスラッシュを含む語句も登録できます。
AutoText のリストはファイルとして保存できます。右下にある [インポート]と[エクスポート] のボタンを使います。このリストは、Trados が落ちたりすると、新しく追加した語句が消えてしまうことがあるので、こまめにエクスポートしておくことをお勧めします。
Regex Match AutoSuggest Provider は、AutoSuggest を強化してくれるプラグインです。無料で使用できます。詳細については、以前の記事「■プラグイン■ 原文にある英数字を訳文にコピーする (日⇒英の場合)」を参照してください。
以前の記事では英数字をコピーする方法しか説明していませんが、もちろん、いろいろな使い方ができます。基本的には正規表現ですが、普通の語句を登録するだけなら正規表現を特に意識する必要はありません。
たとえば、日本語でよく使われる丸囲み数字を以下のように変換できます (@ を (1) に変換する)。
以下は、数字を月名に変換しています。全角に対応するため少しだけ正規表現を使っています (すみません、順番がばらばらなことに特に意味はありません)。
上図のように設定した場合、11 に対しては November と January の両方が候補として表示されます。また、単に数字を指定しているだけなので、月名とは関係のない数字の場合も月名が候補として表示されます。その辺りは、私としては許容範囲内です。
最後に AutoSuggest 辞書です。前述のとおり、この辞書はこれまでフリーランス版では作成できなかったので、私は使ったことがありません。どの程度役立つのかは未知数ですが、大きなメモリが提供されている場合は便利に機能するのではないかと思います。
AutoSuggest 辞書の個々の設定は、[ファイル] > [オプション] ではなく、プロジェクトの設定から行います。プロジェクトの設定で [言語ペア] > [特定の言語ペア] > [AutoSuggest 辞書] をクリックすると以下の画面が表示されます (言語に依存するものなので、[すべての言語ペア] ではなく、Japanese など特定の言語ペアから設定します)。
まず、辞書を作成します。この画面で [生成] ボタンをクリックするとウィザードが開始されます。ウィザードを進めていけば、辞書ファイル (.bpm) ができあがります。メモリが大きいとかなり時間がかかると思われるので、設定を適宜調整してみてください。また、辞書の作成は、この画面ではなく、[翻訳メモリ] ビューから行うこともできます。
辞書ファイルが作成されたら、[追加] ボタンをクリックしてそのファイルを登録します。これで、準備は完了です。辞書の内容が候補に表示されてくるはずです。
今回は以上です。AutoSuggest は、設定によっては、期待どおりの候補が表示されなかったり、表示される候補が多すぎたりすることがあります。ベストな設定を見つけるのはなかなか難しいですが、いろいろとお試しください。作業しているプロジェクトに応じて、こまめに設定を変えることも大切かと思います (そう思ってはいますが、実際のところは面倒です)。
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前編に引き続き、Trados 内でタイピングを減らす方法を考えてみます。今回は、プロジェクトの設定ではなく、[ファイル] > [オプション] から行う Trados 環境全体の設定です。これらの設定の詳細については、以前の記事「Trados の設定を変えるには − [ファイル] と [プロジェクトの設定]」を参照してください。
[ファイル] > [オプション] の設定は、プロジェクトの設定と異なり、一度設定すればどのプロジェクトで作業をしても有効です。これは便利である反面、プロジェクトごとに設定を変えることはできないということでもあります。言語の方向 (日英か、英日か) によって設定を変えたくなることはありますが、プロジェクトを変えても設定は変わらないので、そうした場合は手動で設定を変えるしかありません。(結局、プロジェクトごとに設定を変えるんじゃん! ということです。)
今回紹介する機能は、主に AutoSuggest です。AutoSuggest は、英訳をする (英語を入力する) ときはうまく機能しますが、和訳をする (日本語を入力する) ときは、IME との関係上、あまり期待どおりの動作になりません。和訳の場合は、AutoSuggest は無効にして IME の機能を活用するのも一つの選択肢です。この記事の以下の説明は、英訳をする (英語を入力する) 場合を前提としています。では、始めていきましょう。
AutoSuggest
AutoSuggest の有効無効の切り替えや詳細の設定は、[ファイル] > [オプション] > [AutoSuggest] から行います。
画面下部の [AutoSuggest のプロバイダ] リストで、AutoSuggest の候補をどこから持ってくるのかを指定できます。順番も変更できます。私はすべてのチェックボックスをオンにしていることが多いですが、不要なものはオフにできます。
このリストの一番上に表示されている [RegexMatchAutoSuggestProvider] は、AutoSuggest を強化するプラグインです。これについては後で説明します。[AutoText] と [翻訳メモリと自動翻訳] については、別の画面で詳細を設定できます。これも後述します。
[AutoSuggest 辞書] は、特定のメモリから用語を抽出した対訳集 (.bpm ファイル) のようなものです。長らく、フリーランス版ではこの辞書を生成することができなかったのですが、なんと Trados Studio 2021 からは生成できるようになっています。(私は、この記事を書いていて、辞書生成機能がフリーランス版に追加されていることを初めて知りました。びっくりしました。) これも後で簡単に説明します。
この画面の細かい設定は、正直に言って、個人の好みです。メモリや用語集の充実度にもよりますし、慣れの問題もあります。候補があまりに多く表示されるようなら [翻訳メモリと自動翻訳] をオフにするとか、作業しているプロジェクトに合わせて面倒がらずに設定を変えてください。(まあ、結局、プロジェクトごとに設定を変えることになるので面倒です。)
では、いくつかの機能を詳しく見ていきます。
翻訳メモリと自動翻訳
この機能を有効にすると、表示される候補がかなり多くなります。私は、候補を減らすため、たいてい「あいまい一致」のチェックボックスはオフにしています。
AutoText
訳文でよく使う語句を自分で登録しておくことができます。AutoText は、原文に関係なく表示されるのが特徴です。メモリや用語集は原文に該当する語句がなければ機能しませんが、AutoText は訳文の語句を登録しているので、最初の数文字を入力すれば原文に関係なく候補が表示されてきます。「person in charge」や「company/organization」など、空白やスラッシュを含む語句も登録できます。
AutoText のリストはファイルとして保存できます。右下にある [インポート]と[エクスポート] のボタンを使います。このリストは、Trados が落ちたりすると、新しく追加した語句が消えてしまうことがあるので、こまめにエクスポートしておくことをお勧めします。
Regex Match AutoSuggest Provider
Regex Match AutoSuggest Provider は、AutoSuggest を強化してくれるプラグインです。無料で使用できます。詳細については、以前の記事「■プラグイン■ 原文にある英数字を訳文にコピーする (日⇒英の場合)」を参照してください。
以前の記事では英数字をコピーする方法しか説明していませんが、もちろん、いろいろな使い方ができます。基本的には正規表現ですが、普通の語句を登録するだけなら正規表現を特に意識する必要はありません。
たとえば、日本語でよく使われる丸囲み数字を以下のように変換できます (@ を (1) に変換する)。
以下は、数字を月名に変換しています。全角に対応するため少しだけ正規表現を使っています (すみません、順番がばらばらなことに特に意味はありません)。
上図のように設定した場合、11 に対しては November と January の両方が候補として表示されます。また、単に数字を指定しているだけなので、月名とは関係のない数字の場合も月名が候補として表示されます。その辺りは、私としては許容範囲内です。
AutoSuggest 辞書
最後に AutoSuggest 辞書です。前述のとおり、この辞書はこれまでフリーランス版では作成できなかったので、私は使ったことがありません。どの程度役立つのかは未知数ですが、大きなメモリが提供されている場合は便利に機能するのではないかと思います。
AutoSuggest 辞書の個々の設定は、[ファイル] > [オプション] ではなく、プロジェクトの設定から行います。プロジェクトの設定で [言語ペア] > [特定の言語ペア] > [AutoSuggest 辞書] をクリックすると以下の画面が表示されます (言語に依存するものなので、[すべての言語ペア] ではなく、Japanese など特定の言語ペアから設定します)。
まず、辞書を作成します。この画面で [生成] ボタンをクリックするとウィザードが開始されます。ウィザードを進めていけば、辞書ファイル (.bpm) ができあがります。メモリが大きいとかなり時間がかかると思われるので、設定を適宜調整してみてください。また、辞書の作成は、この画面ではなく、[翻訳メモリ] ビューから行うこともできます。
辞書ファイルが作成されたら、[追加] ボタンをクリックしてそのファイルを登録します。これで、準備は完了です。辞書の内容が候補に表示されてくるはずです。
今回は以上です。AutoSuggest は、設定によっては、期待どおりの候補が表示されなかったり、表示される候補が多すぎたりすることがあります。ベストな設定を見つけるのはなかなか難しいですが、いろいろとお試しください。作業しているプロジェクトに応じて、こまめに設定を変えることも大切かと思います (そう思ってはいますが、実際のところは面倒です)。
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