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昔は「Trados さん、頑張って!」とお祈りしながら訳文生成していませんでしたか? 今も、たまにそんな気分になるときがあります。Trados って本当にわからないことばかりです。特に、日本語の情報は少ないですよね。いくら翻訳者とはいえ、日本語の情報が欲しいのです。Trados ユーザーの方々といろいろ情報交換できたらと思っています。




2023年06月09日

Trados 質問会の補足

久しぶりに Trados の質問会が開催されたので参加してみました。毎回、なんとなくずれた回答もある質問会ですが、参考になる情報がないわけではありません。

この記事では、私の感想と補足事項を簡単にまとめました。以下に挙げた質問のタイトルや内容はあくまで私の解釈です。この私の解釈も、実際にご質問をされた方の真意からずれているかもしれませんが、その辺りはご了承ください。


画面のカスタマイズ

翻訳、レビュー、リリースというモードごとに画面をカスタマイズできるそうです。私が普段使っている画面のレイアウトは以前の記事「デュアル ディスプレイでの作業」で紹介しているのでご覧ください。

この質問で私が最も気になったのは、質問の内容そのものではなく、SDL の方の「レビューのときはメモリを使っていろいろすることはないでしょうから〜」というような発言です。レビューのときは、メモリをあまり使わないからメモリ ペインは既定で画面下部に表示する仕様なのだそうです。

私は以前から、レビュー モードのときになぜメモリ ペインが画面下部に表示されるのか疑問だったのですが、そもそも開発会社の中でそういう認識だったのですね。そういう認識だったら、もちろんレビュー料金をマッチ率で割り引いたりすることもないですよね? そうですよね。だって、メモリを使わないんですから。(ちなみに、私がなぜこんなことを書いているのかはこちらの記事をお読みください。)


プロジェクトの構成とバックアップからの復元方法

sdlxliff ファイルだけをバックアップしているが、実際に復元するときはどうすればよいのかという質問がありました。

プロジェクトの各ファイルがどこに格納されているかを知るには、プロジェクト ビューで対象のプロジェクトを右クリックし、表示されるメニューから [プロジェクト フォルダを開く] を選択します。これで、プロジェクトが格納されているフォルダーがエクスプローラーで開かれます。


117_1.png


開かれたフォルダーの中に「en-US」や「ja-JP」など、言語ごとのフォルダーがあり、sdlxliff ファイルはその言語ごとのフォルダーの中に格納されています。

私も、毎日の作業では sdlxliff ファイルをバックアップとして保存しています。メモリや何かの設定が壊れてうまくいかないときは、翻訳会社から提供されたパッケージを開きなおし、バックアップしておいた sdlxliff ファイルをそこに上書きします。これで、メモリや設定は最初の状態に戻しつつ、訳文は今まで訳したものを維持できます。


訳文生成の方法、プレビューと訳文生成の違い

Trados には、訳文生成やプレビューの方法がたくさんあります。プレビューと訳文生成の違いは私も聞きたかったのですが、今回の回答はそこまで詳しいものではありませんでした。

訳文を表示する方法については、以前の記事 「訳文のみで保存」を使ってみる「訳文の表示」を使ってみる を参照してください。

少しだけ紹介されていた「エクスポート」機能は出力先などを設定できるのでとても便利です。以前の記事「同時に複数の画面を開く」で簡単に紹介しています。


セグメンテーション (分節規則)

「コロンで分かれないようにしたい」「括弧内の句点では分かれてほしくない」など、分節規則の設定はなかなか面倒です。設定する場所は、回答で説明されていたとおり、翻訳メモリの [言語リソース] > [分節規則] です。(詳細な設定方法は、すみません、セミナーでの回答のとおり検索してください。)

この分節規則について、私はいつも SDL さんに強調して説明してほしいなあと思っていることがあります。それは「分節規則は原文を取り込む前に設定する必要がある」ことです。つまり、パッケージを渡された翻訳者は設定を変えることができません。翻訳会社がパッケージを作る段階で設定をする必要があります。

また、最近は、機械翻訳が事前に挿入されていることがありますが、括弧内の句点で分割しないという設定がされていないために、文が途中で切れ、機械翻訳がうまく機能していないことがよくあります。何の設定もせずに機械翻訳を適用して、料金は割り引きますねって言ってくる会社さんもあります。いっそのこと、括弧内の句点で分割しない設定を既定にした方がいい気もしますが、だめですかね。


「分節のロック」の用途

質問文も簡単なものでしたが、回答も「ヘルプを見てください」という簡単なものでした。せっかく質問しているのだから、もう少し答えてあげてもいいんじゃないかと感じたので翻訳者の立場から少し補足します。

ロックをする一番の目的は、おそらく「作業対象外であることを示す」ことです。翻訳会社さんとの仕事の場合、ロックされている分節は基本的に作業をしないので料金が発生しません。つまり、ロックの有無は料金に直接かかわります。このため、翻訳者側でロックをかけたり、解除したりすることは原則禁止です。

さらに、ロックをかけているのが、翻訳会社ではなく、その先のソース クライアントである場合もあります。その場合、翻訳会社もロック部分については料金をもらっていない可能性があるので、それを翻訳者が勝手に変えてしまったら大変なことになります。誤訳だろうと、なんだろうと、ロックされている部分に勝手に触れるのは厳禁です。

また、逆に、ロックされていないのに作業対象外ということも原則ありません。100% マッチを作業対象外とするなら、その分節はロックされた状態でファイルを渡されるのが通常です。私は、作業対象外にもかかわらずロックされていない場合は、必ず作業前にコーディネーターさんに確認するようにしています。


右クリックの「選択フィルタ」「原文フィルタ」「訳文フィルタ」

これは「高度な表示フィルタ」の右クリック コマンドです。詳しくは「2021 で新しくなった表示フィルタ」を参照してください。

上記の記事でも説明していますが、この右クリック コマンドにはショートカット キーを割り当てられます。私は Phrase と同じ動作になるように「選択フィルタ」に Ctrl+Shift+F を割り当てています。また、フィルターの解除は Ctrl+Alt+F6 で可能です。(かなり便利です。)


ハイライト

今回の回答ではエディター上で 1 色ならハイライトを付けられるとのことでした。そんな機能があったかどうか私の記憶ではよくわかりませんが、ひとまず、紹介されていたプラグイン Wordlight をインストールしてみました。これも、ショートカット キーを設定すればとても便利そうです。


117_2.png


ショートカット キーの設定画面には「Highlight Word」という同じ名前のアクションが 2 つ表示されています。実際に設定してみたところ、上のアクションでは色の選択画面が表示されました。下のアクションでは、色の選択画面は表示されず、そのままハイライトを付けることができました。


用語ベースの単語数

「用語ベースの単語数に制限はありますか」という質問に対して「登録数に制限はありません」という回答がされていましたが、私は、この質問は用語ベース内の用語 1 つ 1 つの長さに制限はあるのか、という意味だったのではないかと思いました。

以前、翻訳会社から提供されたパッケージで UI 文言がメモリに登録されていたことがあり、私は「メモリでは短い用語がヒットしないので用語ベースに登録してもらえませんか」とお願いしたことがあります。そのときに翻訳会社さんから返ってきた答えが「エラー メッセージなどの長い文も入っているので、用語ベースではうまくヒットしない可能性があります」というものでした。結局、翻訳会社さんが「調査します」と言っている間にそのプロジェクトは終了し、それっきりでした。

確かに、用語ベースに長い文を入れるとどうなるのかちょっと不安です。ちゃんとヒットしてくるでしょうか。実際、エラー メッセージなど、ある程度の長さを持つ文がヒットしてくることはあるので、おそらく大丈夫だろうと個人的には考えています。その辺りのことをこの質問の答えでは期待していました。

なお、用語認識の設定などについては「用語ベースの設定」もどうぞ参考にしてください。



まだまだ質問はたくさんありましたが、今回はここまでとします。この質問会で話題に上った中で私も欲しいと思った機能は、エディター上でフォントを指定する機能と、繰り返しの適用時に訳文を修正できる機能です。「Ideas に投稿してください」と何回か言われていましたが、実装されるまでの道のりは長そうです。





  



2023年04月24日

安易にバイリンガル Excel を使っていませんか

最近、すっかり更新頻度が落ちていますが、Trados のネタが尽きたわけではありません。大丈夫です。書きたいことはまだもう少しありますので、どうぞ気長にお付き合いくださいませ。

今回は Excel ファイルの翻訳についてです。Trados は Excel ファイルに対してもかなり豊富な機能を備えています。特に、下図のように原文と訳文を併記する形式には「バイリンガル Excel」というファイルの種類が便利です (バイリンガル Excel については、公式サイトのブログ「対訳形式の Excel を翻訳メモリに変換」および「Trados Studio 2022 で多言語 Excel ファイルを翻訳する方法」も参照してください)。 が、併記の形式だからといって、安易にバイリンガル Excel を使うことはあまりお勧めできません。

例として、以下のファイルを訳すことを考えてみましょう。A 列には、識別子となる番号が振られています。D 列には、参照する URL が記載されています。No. 3 のセルには、文が複数含まれています。


106_image1.png


さて、このファイルを「バイリンガル Excel」として Trados に取り込むと以下のようになってしまいます。


106_image2.png


最大限に設定を施してもこれが限界です (設定の詳細は後述します)。どうでしょう?? これで訳せるでしょうか。番号や参照の URL はなくなっています。No. 3 のセルも、複数の文が取り込まれてはいますが、他のセルとの区切りがわからなくなっています。

これが、下図のようになっていたらどうでしょうか。こちらの方が訳しやすくないでしょうか。


106_image3.png


上図は「Microsoft Excel 2007-2019」というファイルの種類を使って通常の Excel ファイルとして取り込んだ例です。番号と URL もエディターに表示されています。ただ、ロックされているので、そこを訳してしまう心配はありません。番号が表示されていることによって、セルの区切りがわかりやすくなり、番号で検索をすることも可能になります。クエリを書くときには番号などを記入しなければならないこともあるので、そうした場合にも番号が表示されていた方が便利です。

「バイリンガル Excel」というファイルの種類は、手軽で使いやすくはありますが、実際に翻訳作業を行うことを考えると必ずしも便利ではありません。番号やセルの区切りなど、翻訳に必要な情報が消えてしまいます。バイリンガル Excel が最も有効に機能するのは「原文と訳文のテキストが存在するから何とかメモリにしたい」というときかと思います。翻訳作業をするなら、安易にバイリンガル Excel を選択するのではなく、他の形式の機能も併せて考え、本当に翻訳しやすい環境になるように多少の工夫を施すことも必要です。



「バイリンガル Excel」の設定


というわけで、あまりお勧めはしないバイリンガル Excel ですが、設定はいろいろと用意されているので少しだけ紹介します。先に挙げた例では、以下の設定を使っています。


106_image5.png


列 (原文列と訳文列)
原文と訳文の列を指定します。原文と訳文は Excel の 1 列目と 2 列目である必要はありません。どこにあっても、どちらが先にあってもかまいません。この設定を使えば、原文と訳文を簡単に入れ替えることもできます。


コンテキスト情報
実は、A 列にある番号は「文書構造」として取り込んでいます。エディターの右端に表示されている「NO.」がそれです。クリックすると、下図のように「No. 3」という情報が表示されます。


106_image6.png


ただ、いちいちクリックすることはあり得ないので、ここに情報を取り込んでもまず役立ちません。一応、RWS AppStore には、この文書構造情報 (Document Structure Information) をわかりやすく表示するためのアプリ「DSI Viewer」が用意されています。(すみません、私は使っていないので詳しい説明は省略します。)


コメント情報
さらに実は、D 列の参照 URL はコメントとして取り込んでいます。ただ、コメントも、翻訳作業をするエディターとは別タブに表示されるのであまり見やすいとはいえません。

なお、設定の一番下にある [Studio のコメントを保存する列] を指定すると、Trados 上で追加したコメントを Excel ファイル上の特定の列に出力できます。



「Microsoft Excel 2007-2019」の設定


では、次に普通の Excel ファイルとして取り込むときの設定を紹介します。使用するファイルの種類は「Microsoft Excel 2007-2019」です。まず、取り込む前に、原文の Excel ファイルに 1 つだけ加工をします。下図のように、Source 列をそのまま Target 列にコピーします。これだけです。Trados 上では、元々の Source 列は無視して、コピーした Target 列を翻訳していきます。


106_image7.png


コンテンツ処理 -> 列による除外
特定の列を除外できます。今回の例では、Source の列が不要なので、B 列をスキップします。Notes の列は除外せずにそのまま取り込みます。今回の Notes は URL のみなので取り込んでいますが、長い文章での説明のような場合には取り込むと返って翻訳作業がしにくくなることもあります。状況に応じて、取り込むか、除外するかを判断します。


106_image9.png


全般設定 -> 数値コンテンツのあるセル
今回の例では、A 列の番号が数値なので [数値コンテンツのあるセル] チェックボックスをオンにします。これがオフの場合、数値のみのセルは Trados で翻訳対象になりません。


106_image11.png


設定は以上です。これで Excel ファイルを取り込みます。取り込んだ後は、数値のみの分節と URL のみの分節をフィルターで抽出し、ロックして完成です。

番号や Notes が今回の例のように単純でない場合、フィルターでうまく抽出するには正規表現などが必要になるかもしれません。この抽出ができるかどうかが、通常の Excel ファイルを使うか、あきらめてバイリンガル Excel を使うかの分かれ目になります。後から抽出してロックできるなら、テキストとして Trados に取り込んでしまいます。抽出できないなら、最初から取り込まないようにするしかありません。Notes は無理としても、形式の決まっている番号や ID などは抽出が比較的簡単なので、できるだけ Trados に取り込む方向で考えるようにします。


今回は以上です。翻訳会社から提供されるパッケージではバイリンガル Excel が使われていることが多いですが、いろいろな情報を切り捨てておいて、コンテキストを見ろだの、クエリには ID を記入しろだの、そんなことばかり言われても、翻訳者だって対応しきれないですよ〜






  



2023年03月17日

訳文のフォントを変えたい

ずいぶん久しぶりの更新になってしまいました。今回は、Trados で訳した文書のフォントについてです。最近の仕事で、翻訳会社から Trados のパッケージではなく、Word や PowerPoint のファイルをそのまま渡されて翻訳することが何回かありました。原文のファイルをそのまま渡される場合、細かいレイアウトは別作業としても、フォントの指定くらいはされることがよくあります。今回は、自分で Trados にファイルを取り込んで訳すときに、訳文のフォントを設定する方法を説明します。


パッケージを渡されたら、それをそのまま使う


今回の記事では、自分で Trados にファイルを取り込んで作業する場合の方法を紹介します。残念ながら、翻訳会社からパッケージを渡された場合は自分で原文ファイルを取り込むことができないので、パッケージ内のファイルをそのまま使用するしかありません。「ファイルの種類」にあるフォント マッピングを自分で変更することはできますが、「ファイルの種類」には翻訳会社が何らかの設定をしてきている場合があります。この中の設定を変更する場合は、くれぐれも慎重に行ってください。



エディター内のフォント指定は、別の設定で行う


今回の記事は、プレビューや訳文生成の処理で作られる訳文ファイルのフォントについての説明です。エディターに表示される文字のフォントではありません。エディターの表示で使われるフォントについては、以前の記事「エディタ上のフォントを変える」を参考にしてください。

では、フォントを設定する方法を説明していきましょう。まずは、英日翻訳の場合です。



「フォント マッピング」の設定でフォントを変える


PowerPoint ファイルの英日翻訳をしているときに、訳文ファイルで日本語のフォントが明朝になりプレゼンテーションの見た目が少し残念な感じになってしまったことはありませんか。それは「ファイルの種類」のフォント マッピングですべてのフォントに「MS Mincho」が設定されているからです。

おそらく既定で、下図のように、[プロジェクトの設定] > [ファイルの種類] > [PowerPoint 2007-2019] > [フォント マッピング] の日本語に対して <AllFonts>MS Mincho に変換する設定がされています。

110_1.png


このマッピングが有効になっていると、訳文ファイルですべてのフォントが明朝に変換されます。

■ すべてのフォントが明朝に変換される
110_2.png


明朝ではなく別のフォントに変換したい場合は、上図の画面で [MS Mincho] を右クリックして [選択したアイテムの削除] を選択し、フォントの設定をいったん削除します。その後で [日本語] を右クリックして [新規訳文フォントの追加] を選択し、フォントを追加します。下図のような画面が表示されるので、[原文のフォント] では下部の [原文のフォントをすべてマップ] を選択し、[訳文のフォント] で使用したいフォントを選択します (この例では、Meiryo UI を選択しています)。


110_3.png


これで、[OK] をクリックすると、下図のように <AllFonts>Meiryo UI に変換する設定になります。


110_4.png


この設定で訳文生成をすると、今度はすべてのフォントが Meiryo UI に変換されます。

■ すべてのフォントが Meiryo UI に変換される
110_5.png


上図の [フォント マッピングの選択] 画面では、もちろん「すべてのフォント」ではなく、個別のフォントを設定することもできます。フォントごとに変換ルールが決まっている場合は個々に設定を行います。


ちなみに、上記で使用した Meiryo UI には斜体が存在しません。Trados のエディター上でタグを使用して斜体を設定していても、訳文ファイルで Meiryo UI に変更してしまうと正体で表示されます (私は、Trados のバグなんじゃないかと思っていたのですが、そうではありませんでした)。日本語文書で斜体を意図的に使うことは少ないと思いますが、もし斜体を使いたい場合は他のフォントを使用する必要があります。



「フォント マッピング」の設定でフォント変換を無効にする


フォント マッピングの設定では、Trados でのフォント変換を一切無効にすることもできます。フォント変換を無効にしたい場合は、上図の画面で [日本語] を右クリックして [選択したアイテムの削除] を選択し、日本語の設定そのものを削除します。これで、フォントの変換は行われず、原文の PowerPoint ファイルで設定されている日本語用フォントが使用されるようになります。

■ フォント変換を無効にすると、原文ファイルで設定されているフォントが使用される
110_6.png


原文ファイルに日本語用フォントがきちんと設定されている場合は、Trados での変換は無効にするのがお勧めです。ただ、英語の原文ファイルで日本語用のフォントが設定されていることはまれです。たいていは、設定がされていないために、何らかの既定値が使用されてしまうことになります。このため、Trados でのフォント変換を無効にする場合は、原文ファイルに対して自分でフォントの設定を行っておく必要があります。



Trados に取り込む前に、原文ファイルでフォントを設定する


フォント マッピングによる変換を行わない場合は、Trados にファイルを取り込む前に、原文ファイルでできるだけフォントの設定を行っておきます。事前に原文ファイルで設定を行っておけば、フォント マッピングを設定しなくてもプレビュー時にフォントが変換された訳文が表示されるので、翻訳後の見た目も確認しやすくなります。

また、Trados のフォント マッピング機能が実際にどのようにフォントを変更しているのかはわかりませんが、この機能は Word や PowerPoint の訳文ファイルに適切な日本語用フォントを設定するわけではありません。見た目上は変換されたフォントが表示されていても、フォント設定自体は原文のままだったりすることがあります。

というわけで、原文ファイルでフォントの設定を行うのが理想ではあるのですが、実はこれがなかなか大変です。Word や PowerPoint の本格的な文書では「スタイル」や「マスター」などを使ってかなり複雑な設定が施されていることがあります。そのような場合、フォントだけとはいっても自分で適切な設定をするのは難しく、さらに Trados の訳文生成の動作も怪しくなることがあります。

私は、単純なファイルだったら原文ファイルで設定を行いますが、それが難しい場合は Trados のフォント マッピング機能を使ってしまいます。そして、それでもうまくいかない場合は、最終手段として、訳文生成後に手動でフォントを変更します。



英語のフォント マッピングは既定で無効


さて、ここまでは英日翻訳で訳文が日本語の場合の説明でしたが、日英翻訳の場合は訳文が英語になります。先に挙げたフォント マッピングの図で気付いている方もいるかもしれませんが、既定のフォント マッピングに「英語」は存在しません。このため、訳文が英語の場合、フォントの変換は行われません。英語に対してフォントの変換を行いたい場合は、上図の [フォント マッピング] の画面を右クリックして [新しい言語の追加] を選択し、「英語」を追加する必要があります。


今回は以上です。フォントの変換は正確に行おうとするとなかなか大変です。原文ファイルの作られ方や、翻訳者に求められる作業範囲も考慮して、なんとなくいい感じに仕上げることを目指しましょう。




  


2023年01月30日

本当に原文からコピーしたままか?

年末のアドベント カレンダーでたくさん記事を書いたのでちょっとお休みしたらあっという間に 1 か月以上がたってしまいました。ネタが尽きたわけではないですが、今回はちょっと簡単な記事にします。


IT 系の翻訳をしていると、プログラムのソースコードなど原文のまま残さなければならない分節がたまにあります。原文をコピー (Ctrl+Ins) をするだけなので翻訳者としてはお得ですが、後で見直しをしているときに、本当にコピーしたか、コピーした後にうっかり触っていないかと不安になり、結局もう一度 Ctrl+Ins を押してしまうことがよくあります。

こんな不安を解消してくれる機能として、Trados では原文をコピーした分節の色を変えることができます。私はこの機能にまったく気付いていなかったのですが、少し前に Twitter で翻訳会社の方がつぶやいていたので、それをヒントに早速試してみました。

設定の場所は [ファイル] > [オプション] > [色] です。ここで、さまざまな色を設定できます。[翻訳ステータス][背景色][原文からコピー] というオプションがあるので、これを既定の白から別の色に変更します。私は下図のように薄紫色っぽくしています。


110_2.png


この設定をしておくと、以下のように原文からコピーしたままの分節に色が付くようになります。


110_1.png


薄紫色になっている分節は原文からコピーしたまま一切触っていない分節です。中央あたりの「We have several …」の分節は原文と訳文が同じように見えますが、実は原文からコピーをした後にスペースを入れて削除するという編集を加えたので薄紫色になっていません。

この機能は、原文と訳文が同じかをチェックしているのではなく、「原文からコピー」という操作をしたかどうかで色を付けています。「原文からコピー」の操作をした時点で色が付き、他の操作を行うとその時点で色は消えます。

地味な機能ですがとても便利で、私はかなり助かっています。他にもいろいろな設定で色が変えられるようなので、どうぞお試しください。




  









2022年12月25日

【後編】タイピングを減らそう

Advent Calendar 「翻訳に役立ってくれそうなツール」の記事です。記事の公開が遅くなってしまいました。今回も、がっつり Trados です。


前編に引き続き、Trados 内でタイピングを減らす方法を考えてみます。今回は、プロジェクトの設定ではなく、[ファイル] > [オプション] から行う Trados 環境全体の設定です。これらの設定の詳細については、以前の記事「Trados の設定を変えるには − [ファイル] と [プロジェクトの設定]」を参照してください。

[ファイル] > [オプション] の設定は、プロジェクトの設定と異なり、一度設定すればどのプロジェクトで作業をしても有効です。これは便利である反面、プロジェクトごとに設定を変えることはできないということでもあります。言語の方向 (日英か、英日か) によって設定を変えたくなることはありますが、プロジェクトを変えても設定は変わらないので、そうした場合は手動で設定を変えるしかありません。(結局、プロジェクトごとに設定を変えるんじゃん! ということです。)

今回紹介する機能は、主に AutoSuggest です。AutoSuggest は、英訳をする (英語を入力する) ときはうまく機能しますが、和訳をする (日本語を入力する) ときは、IME との関係上、あまり期待どおりの動作になりません。和訳の場合は、AutoSuggest は無効にして IME の機能を活用するのも一つの選択肢です。この記事の以下の説明は、英訳をする (英語を入力する) 場合を前提としています。では、始めていきましょう。



AutoSuggest


AutoSuggest の有効無効の切り替えや詳細の設定は、[ファイル] > [オプション] > [AutoSuggest] から行います。


108_5.png


画面下部の [AutoSuggest のプロバイダ] リストで、AutoSuggest の候補をどこから持ってくるのかを指定できます。順番も変更できます。私はすべてのチェックボックスをオンにしていることが多いですが、不要なものはオフにできます。

このリストの一番上に表示されている [RegexMatchAutoSuggestProvider] は、AutoSuggest を強化するプラグインです。これについては後で説明します。[AutoText][翻訳メモリと自動翻訳] については、別の画面で詳細を設定できます。これも後述します。

[AutoSuggest 辞書] は、特定のメモリから用語を抽出した対訳集 (.bpm ファイル) のようなものです。長らく、フリーランス版ではこの辞書を生成することができなかったのですが、なんと Trados Studio 2021 からは生成できるようになっています。(私は、この記事を書いていて、辞書生成機能がフリーランス版に追加されていることを初めて知りました。びっくりしました。) これも後で簡単に説明します。

この画面の細かい設定は、正直に言って、個人の好みです。メモリや用語集の充実度にもよりますし、慣れの問題もあります。候補があまりに多く表示されるようなら [翻訳メモリと自動翻訳] をオフにするとか、作業しているプロジェクトに合わせて面倒がらずに設定を変えてください。(まあ、結局、プロジェクトごとに設定を変えることになるので面倒です。)

では、いくつかの機能を詳しく見ていきます。



翻訳メモリと自動翻訳


この機能を有効にすると、表示される候補がかなり多くなります。私は、候補を減らすため、たいてい「あいまい一致」のチェックボックスはオフにしています。

108_6.png


 
AutoText


訳文でよく使う語句を自分で登録しておくことができます。AutoText は、原文に関係なく表示されるのが特徴です。メモリや用語集は原文に該当する語句がなければ機能しませんが、AutoText は訳文の語句を登録しているので、最初の数文字を入力すれば原文に関係なく候補が表示されてきます。「person in charge」や「company/organization」など、空白やスラッシュを含む語句も登録できます。


108_7.png


AutoText のリストはファイルとして保存できます。右下にある [インポート][エクスポート] のボタンを使います。このリストは、Trados が落ちたりすると、新しく追加した語句が消えてしまうことがあるので、こまめにエクスポートしておくことをお勧めします。



Regex Match AutoSuggest Provider


Regex Match AutoSuggest Provider は、AutoSuggest を強化してくれるプラグインです。無料で使用できます。詳細については、以前の記事「■プラグイン■ 原文にある英数字を訳文にコピーする (日⇒英の場合)」を参照してください。

以前の記事では英数字をコピーする方法しか説明していませんが、もちろん、いろいろな使い方ができます。基本的には正規表現ですが、普通の語句を登録するだけなら正規表現を特に意識する必要はありません。

たとえば、日本語でよく使われる丸囲み数字を以下のように変換できます (@ を (1) に変換する)。

108_1.png


以下は、数字を月名に変換しています。全角に対応するため少しだけ正規表現を使っています (すみません、順番がばらばらなことに特に意味はありません)。

108_2.png


上図のように設定した場合、11 に対しては NovemberJanuary の両方が候補として表示されます。また、単に数字を指定しているだけなので、月名とは関係のない数字の場合も月名が候補として表示されます。その辺りは、私としては許容範囲内です。


AutoSuggest 辞書


最後に AutoSuggest 辞書です。前述のとおり、この辞書はこれまでフリーランス版では作成できなかったので、私は使ったことがありません。どの程度役立つのかは未知数ですが、大きなメモリが提供されている場合は便利に機能するのではないかと思います。

AutoSuggest 辞書の個々の設定は、[ファイル] > [オプション] ではなく、プロジェクトの設定から行います。プロジェクトの設定で [言語ペア] > [特定の言語ペア] > [AutoSuggest 辞書] をクリックすると以下の画面が表示されます (言語に依存するものなので、[すべての言語ペア] ではなく、Japanese など特定の言語ペアから設定します)。


108_3.png


まず、辞書を作成します。この画面で [生成] ボタンをクリックするとウィザードが開始されます。ウィザードを進めていけば、辞書ファイル (.bpm) ができあがります。メモリが大きいとかなり時間がかかると思われるので、設定を適宜調整してみてください。また、辞書の作成は、この画面ではなく、[翻訳メモリ] ビューから行うこともできます。

辞書ファイルが作成されたら、[追加] ボタンをクリックしてそのファイルを登録します。これで、準備は完了です。辞書の内容が候補に表示されてくるはずです。


今回は以上です。AutoSuggest は、設定によっては、期待どおりの候補が表示されなかったり、表示される候補が多すぎたりすることがあります。ベストな設定を見つけるのはなかなか難しいですが、いろいろとお試しください。作業しているプロジェクトに応じて、こまめに設定を変えることも大切かと思います (そう思ってはいますが、実際のところは面倒です)。






  




2022年12月20日

原文と訳文を入れ替える

Advent Calendar 「翻訳に役立ってくれそうなツール」の記事です。今回も Trados です。すみません。


前回の英単語チェックの記事で、原文と訳文を入れ替えてチェックをすると効果的という話をしました。今回は、実際に Trados で原文と訳文を入れ替える方法を説明します。

原文と訳文を入れ替えるといっても、その目的はさまざまだと思います。また、入れ替える方法も実はたくさんあります。この記事では、前回の記事で説明した英単語チェックを目的として入れ替える方法を紹介します。ここで紹介する方法は、すべての分節が含まれない、タグが消える、などの問題もあるので、原文と訳文を入れ替える目的によっては使えません。

以下の 2 つの方法を説明します。

 ・テキスト形式のメモリ (TMX ファイル) を使う

 ・Excel ファイルにエクスポートする



どちらの方法にも問題がある


すべての分節がメモリに登録されるわけではない

テキスト形式のメモリ (TMX ファイル) は、原文と訳文の入れ替えを行うには手軽に使えてとても便利です。TMX ファイルには、原文と訳文の区別だけでなく「英語」や「日本語」など言語の種類も記録されています。このため、英日メモリ (.sdltm ファイル) からエクスポートした .tmx ファイルは、そのまま反対方向の日英メモリにインポートできます。これで入れ替えができます。タグもほぼ維持されます。変更履歴が付いていてもメモリは履歴を適切に処理できます。

ただ、1 つ問題があります。それは、固定要素だけが違う分節はメモリに登録されないことです (固定要素の詳細については、以前の記事【前編】タイピングを減らそうも参照してください)。以下のような 2 つの分節があり、頭字語の「AC」と「DC」が固定要素として認識されていたとします。


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この場合、2 つの分節を訳しても、メモリに登録される分節は「AC電源ケーブルをチェックします。」の 1 つだけです。「DC」の分節は「AC」の分節と固定要素以外がまったく同じなのでメモリに登録されません。前回の英単語チェックではこうした英単語こそチェックしたいので、1 つしかメモリに登録されない仕様は困ります。

もうメモリの形になっていて、それをチェックしたいというときは TMX ファイルを使って問題ありませんが、sdlxliff ファイルの状態でチェックをしたい場合はメモリを介さない方法が必要になります。


Excel へのエクスポートはタグと変更履歴を無視する

メモリを介さない方法の 1 つが、sdlxliff ファイルを Excel ファイルにエクスポートして原文と訳文を入れ替える方法です。これなら、sdlxliff ファイル内にある分節をすべてチェックできます。ただ、この方法にも問題があります。Excel ファイルにエクスポートするとタグがほぼ消えます。また、変更履歴が認識されないので、変更履歴を残している場合は使えません (削除した文字もすべてそのままエクスポートされます)。

今回の英単語チェックという目的では、タグは消えても構わないので、私は Excel ファイルにエクスポートする方法を使います。変更履歴があるときは悩ましいですが、変更履歴付きのファイルをバックアップした上で、変更履歴をすべて適用します。これでファイルをエクスポートし、その後で元の変更履歴付きのファイルを戻します (かなり、面倒です)。



テキスト形式のメモリ (TMX ファイル) を使う


TMX ファイルを使う方法から説明していきます。以下の説明では「英日翻訳をしているときに、日英に入れ替えてチェックを行う」という状況を想定しています。

事前に必要なもの: TMX ファイル用のファイル タイプ定義 (File type definition for TMX)

手順は、以下のようになります。

 1. すべての分節をメモリに登録する
 2. 登録した英日メモリを TMX ファイルにエクスポートする
 3. 日英メモリを作り、TMX ファイルをインポートする (ここで、入れ替えを行う)
 4. 日英メモリを TMX ファイルにエクスポートする
 5. 日英プロジェクトに TMX ファイルを追加する

では、始めていきましょう。



事前準備

事前準備として、TMX ファイル用のファイル タイプ定義を Trados にインストールします。このファイル タイプをインストールしておくと .tmx ファイルをそのまま翻訳ファイルとしてエディターで開くことができます。

ファイル タイプは、他のアプリと同様に AppStore からダウンロードしてインストールできます。バージョン 2021 以降だったら、Trados の [ようこそ] 画面から検索できます。インストールすると、プロジェクトの設定の [ファイルの種類] 画面に [新たなインストール済みのファイルの種類が存在します。] というメッセージが表示されるので、そこをクリックして TMX ファイル用のファイル タイプを有効にします。


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事前準備はこれで完了です。では、実際の手順に進みます。


1. すべての分節をメモリに登録する

まず、念のため、現在エディターに入力してある訳文をすべてメモリに登録します。ファイル リストから、対象の翻訳ファイルを右クリックして [一括タスク] > [メインの翻訳メモリの更新] を選択します。画面の指示に従ってウィザードを進めます。メモリに登録する分節のステータスなども必要に応じて設定できます。なお、この操作を行っても、最初に説明した「固定要素以外がまったく同じ分節」は登録されません。


2. 英日メモリを TMX ファイルにエクスポートする

メモリを更新したらエクスポートします。[プロジェクトの設定] のメモリの設定画面で、対象のメモリを選択して [エクスポート] をクリックします。既定で TMX ファイルにエクスポートされると思いますが、念のためファイル名を指定するときにファイルの形式も確認します。


3. 日英メモリを作り、TMX ファイルをインポートする

ここで、言語方向を入れ替えた日英メモリを新しく作成します。そこに、エクスポートした TMX ファイルをインポートします。英日メモリからエクスポートした TMX ファイルをそのまま日英メモリにインポートできます。これで、入れ替えは完了です。


4. 日英メモリを TMX ファイルにエクスポートする

日英メモリにインポートできたら、改めて TMX ファイルにエクスポートします。これで、日英の TMX ファイルの完成です。


5. 日英プロジェクトに TMX ファイルを追加する

最後に、日英プロジェクトを作成して、日英の TMX ファイルを翻訳ファイルとして追加します。これで、日英の TMX ファイルに対して QA Checker を実行できます。日英プロジェクトは、チェック用のものを 1 つ作り、そこに QA Checker の設定などをしておくと便利です。 毎回、そのプロジェクトにファイルを追加してチェックできます。


TMX ファイルを使う手順は以上です。書いてみると、意外と手順が多くなってしまいました。英日の TMX ファイルをそのまま日英プロジェクトに追加できないかと思って試してみたのですが、それはできませんでした。メモリ (.sdltm ファイル) にインポートして入れ替えるという処理がどうしても必要なようです。次の Excel ファイルを使う方が手順は少ないです。



Excel ファイルにエクスポートする


次に、メモリを介さず、sdlxliff ファイルを Excel ファイルにエクスポートして入れ替えをする方法を説明します。

事前に必要なもの: Excel にエクスポートするアプリ (Export to Excel)

手順は、以下のようになります。

 1. Excel ファイルにエクスポートする
 2. 日英プロジェクトに Excel ファイルを Bilingual Excel として追加する (ここで、入れ替えを行う)



事前準備

事前準備として、sdlxliff ファイルを Excel ファイルにエクスポートしてくれるアプリ Export to Excel をインストールします。Excel ファイルへのエクスポートを行う方法はこのアプリを使う以外にもいくつかありますが、このアプリはいろいろな設定もできて便利なので私はこれを使っています。

では、始めましょう。


1. Excel ファイルにエクスポートする

Export to Excel アプリをインストールすると、ファイル リストの [一括タスク][Export to Excel] というコマンドが表示されるようになります。このコマンドをクリックしてエクスポートします。


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エクスポートする対象などを設定できます。ロックされている分節をチェックしない場合は、[Exclude locked segments] を選択して、ロックされている分節がエクスポートされないようにします。

以下のような Excel ファイルがエクスポートされます。この Excel ファイルはエクスポート元の sdlxliff ファイルと同じ場所に生成されます。残念ながら、この時点でタグはなくなっています。


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2. 日英プロジェクトに Excel ファイルを Bilingual Excel として追加する

Excel ファイルへのエクスポートができたら、今度はそれを日英プロジェクトに翻訳ファイルとして追加します。このとき、Excel ファイルを通常の Excel ファイルではなく「Bilingual Excel」として追加します。

ファイルを追加する前に、ファイルの種類として Bilingual Excel が選ばれるように設定をします。日英プロジェクトの [プロジェクトの設定] から [ファイルの種類] 画面を開き、拡張子「.xlsx」に対してBilingual Excel だけが有効になるように他の Excel 関連のチェックボックスをオフにします。


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このリストは、上から順番に適用されていくので、チェックボックスをオフにするのではなく、Bilingual Excel を一番上に移動することでも Bilingual Excel が選ばれるように設定できます。

Bilingual Excel が選ばれるように設定したら、次に、Bilingual Excel の中身を設定します。 左側のリストから [Bilingual Excel] > [全般設定] を選択すると、以下の画面が表示されます。


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[原文列:] には、先ほどエクスポートした Excel ファイルで日本語が入力されている「C」列を指定し、[訳文列:] には英語が入力されている「B」列を指定します。ここで、原文と訳文の入れ替えを行います。

これで準備は完了です。後は、エクスポートした Excel ファイルをプロジェクトに追加すれば、原文が日本語、訳文が英語の翻訳ファイルができあがります。これで QA Checker を実行できます。



今回は以上です。「原文と訳文を入れ替える」というタイトルにしていますが、それ以外の説明が少し多くなってしまいました。原文と訳文を入れ替える方法はその目的によっていろいろあると思いますので、目的に合った方法を探してみてください。







  





2022年12月18日

CamelCase と ALLUPPER CASE を自作する

Advent Calendar 「翻訳に役立ってくれそうなツール」の記事です。今回は、Trados と正規表現です。


私はしつこく Xbench の無料版 (V2.9) を使っていますが、無料版で一番残念なのが QA チェックの CamelCase Mismatch と ALLUPPER CASE Mismatch を有効にできないことです。有料版の V3 以降では有効にできるらしいですが、V2.9 では DISABLED と表示されるだけで、これを有効にするオプションがありません。このチェックは、大文字の単語 (WAF や HTTP など) とキャメルケースの単語 (GetStatus や SetTranslationMemory など) が原文と訳文で一致しているかを確認してくれるものだと思います。英単語は「必ず原文からコピーする」というルールを徹底していれば間違うはずはないのですが、それでも抜けてしまったりすることがあるので、こうしたチェックはどうしても必要になります。

そこで、今回はこのチェックを Trados の QA Checker を使って再現することに挑戦します。日英翻訳と英日翻訳の両方向について再現する方法を考えてみました。で、考えてみたので今回はその方法を紹介しますが、実はあまりうまく機能しないケースがあります。どうしても誤検出が増えてしまいます。もし、改善案などありましたら、教えて頂けると嬉しいです。



QA Checker の正規表現


QA Checker の詳細については、以前の記事「正規表現なしで、検証機能を使う」を参照してください。この記事でも書いているとおり、QA Checker の設定はファイルにエクスポートして保存しておくことができます。同じように、正規表現にも [アクション] の中に [アイテムのエクスポート][アイテムのインポート] が用意されています。この画面のエクスポートは正規表現のみをエクスポートします。また便利な点として、この画面のインポートは削除をせず、追加と更新だけをしてくれます。つまり、既存のアイテムはそのまま残り、新しいアイテムは追加され、そして更新されたアイテムは更新されます。QA Checker 全体のプロファイルからインポートをすると、総入れ替えになるので古いアイテムは削除されます。


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日本語 -> 英語の場合


日英翻訳の場合は、大文字やキャメルケースなど関係なく単純に「英単語を抜き出す」と考えればよいので簡単です。


英単語

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原文: ([a-zA-Z0-9\-\.]+)
訳文: $1

私は、数字、ハイフン、ピリオドも含めて上記のように設定しています。これで、英語の小文字、大文字、数字、ハイフン、ピリオドで構成される単語を原文から抽出できます。訳文の $1 は「原文の ( ) 内とまったく同じ内容」ということを意味します。原文から CAT が抽出されたら、訳文でも CAT を探します。


全角の英単語

ここまでは簡単ですが、日英翻訳で問題になるのは全角です。原文が日本語の場合、英数字が全角で書かれていることがあります。上記の式は全角にはマッチしません。そこで、私は以下の式も追加しています。

原文: ([a-zA-Z0-9]+)
訳文: $1

これで全角の英数字も抽出できます。抽出はできますが、訳文の $1 はうまく機能しません。訳文の英語では英数字は半角にするので、原文の全角 CAT を訳文で正しく半角 CAT に変換していてもすべてエラーとして検出されます。安全のためにこの式を使ってはいますが、誤検出が多くなります。



英語 -> 日本語の場合


原文が英語の場合は、当然ながらすべてが英単語なので上記のように単純にはいきません。大文字とキャメルケースを指定する必要があります。


大文字で構成される単語

大文字は比較的簡単です。私は、ハイフンも含めて以下のように指定しています。「大文字かハイフンが 2 回以上連続する」という意味です。

原文: ([A-Z\-]{2,})


1 文字の英数字

上記の条件は「2 回以上」という指定なので server A などにはマッチしません。そこで、英数字 1 文字だけを抽出する式も追加します。

原文: (\b[\w\d]\b)

\b は単語の始まりまたは終わりを示します。\w は英文字、\d は数字です。この式は「単語の始まりがあって、英数字が 1 つあって、単語の終わりになる」という条件になります。私は数字も含めていますが、数字は数字チェックの機能が別にあるのでここに含めなくても OK です。


キャメルケース

いよいよキャメルケースです。少し複雑になります。私は、考えていたら複雑すぎてよくわからなくなったので「小文字始まり」と「大文字始まり」の 2 つに分けることにしました。

・小文字始まりキャメルケース (getTableStatus など)

原文: (\b[a-z]+\-*[A-Z]+[a-z\-]*)

\b は単語の始まりなので「小文字で始まって、大文字が 1 回以上登場して、また小文字がある」という条件です。念のため、ハイフンもありということにしています。

・大文字始まりキャメルケース (GetTableStatus など)

原文: (\b[A-Z]+\-*[a-z]+\-*[A-Z]+[\w\d\-]*)

こちらは「大文字で始まって、小文字が登場して、また大文字が登場する」という条件です。「大文字で始まって、小文字が登場する」だけでは、先頭を大文字にする通常の文すべてに一致してしまうので、2 度目の大文字が必要です。


文頭以外の大文字始まり (This is a Windows server など)

大文字の連続やキャメルケースではなく、単に文の中で大文字で始まる単語もチェックしたい場合があります。ただ、英語の文は通常大文字で始まるのでこれがなかなか大変です。文頭の大文字は抽出しないようにする必要があります。

原文: ^.+([A-Z]+\-*[a-z0-9]+\-*\b)

先頭の ^ は正規表現で「文頭」を意味します。この式は「文頭から何か文字があった後に大文字が登場する」という条件になります。すみません、これも考えてはみたものの、かなり誤検出が多くなります。文頭以外に大文字が登場する文は実はかなりあります。たとえば、見出しでヘッドライン スタイルが使われている、文全体が丸括弧で囲まれている、Note: のようなコロンの後に文が書かれている、などです。こうしたケースを除外しようとするとなかなか面倒です。



原文と訳文を入れ替えてチェックする


さて、いろいろなチェックをしても、コマンドやプロパティ名などが満載の IT 系文書のときは英単語の記述にどうしても不安が残ります。そんなときは、原文と訳文を入れ替えてチェックをしてみます。これはかなり有効です。

Trados の正規表現の一部は「原文から訳文」方向のチェックしか行いません。正規表現の条件をよく見てみると「グループ化された検索表現」は以下の 2 つしか条件がありません。


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訳文に $1 などと記述するケースが「グループ化された検索表現」にあたりますが、この場合は必ず原文を先に検索する必要があります。それ以外の場合は「訳文は一致するが〜」や「訳文チェックのみ」が可能ですが、$1 などを使う場合はそれができません (この画面上ではどの条件も選択できますが、期待どおりの動作になりません)。このため、通常は「訳文に余計な英単語が入っている」というケースは検出できませんが、原文と訳文を入れ替えてチェックをすれば検出できます。

また、上記のとおり、英語 -> 日本語のチェックはかなり複雑で False positive も False negative も多くなります。これを、日本語 -> 英語に変えるとチェックが単純になり、エラーも見つかりやすくなります。英語 -> 日本語の場合、setget などの小文字始まりのプログラム コマンドは普通の英語と区別がつかないので検出できませんが、訳出後に日本語 -> 英語に変えて英単語のチェックをすれば検出できます。このチェックは、私の経験上、けっこう有効に機能します。



今回は以上です。Trados で原文と訳文を入れ替える方法については、次回とりあげたいと思います。正規表現をいろいろ考えていると、素直に新しい Xbench を購入した方がいいんじゃないかという考えが頭をよぎらないこともないですが、とりあえず、もう少し頑張ってみます。正規表現はよくわからないことが多いので、アドバイス頂けるととても嬉しいです。






  







2022年12月14日

【前編】タイピングを減らそう

Advent Calendar 「翻訳に役立ってくれそうなツール」の記事です。今回は、がっつり Trados です。


翻訳作業を効率化しようと考えたとき、私が真っ先に思いつくのは「タイピングの量を減らす」ことです。少ないタイピングで正確に入力できれば作業スピードは確実に上がるでしょう。しかし、そうは思いつつも、タイピングの 1 回 1 回はわずかな時間なので対策をついつい後回しにしがちです。

そんな私も、IME の単語登録と AutoHotkey は使っています。ただ、IME は基本的に日本語を入力するためのものなので英訳をしているときはあまり役立ちません。また、AutoHotkey はとても便利ですがスクリプトの記述はどうしても面倒です。というわけで、今回は Trados の中でタイピングを減らすために使用できる機能をまとめてみました。Trados の外でタイピングを減らす方法は数多くあると思いますが、まずは Trados に付いている機能だけでも十分に活用していきましょう。ここに挙げた以外にも良いアイデアがあれば、ぜひぜひお聞かせください。


設定の種類: [プロジェクトの設定] と [ファイル] > [オプション]

さて、Trados 内だけとはいっても、タイピングを減らす効果が期待できる機能はけっこうたくさんあります。今回は Trados の設定を 2 つに分け、それらを前編と後編の 2 つの記事で説明したいと思います。Trados の設定は大きく分けると、プロジェクトごとの設定である [プロジェクトの設定] と、Trados 環境全体の設定である [ファイル] > [オプション] の 2 つになります。この 2 つの詳細については、以前の記事「Trados の設定を変えるには − [ファイル] と [プロジェクトの設定]」を参照してください。

[ファイル] > [オプション] の設定は一度設定すればその後ずっと有効ですが、[プロジェクトの設定] はプロジェクトごとに設定を行う必要があります。つまり、プロジェクトの設定は新しいパッケージを開くたびに設定をします。ファイルが追加になりましたなどと言われて更新パッケージを受け取ったときも、残念ながら、設定をやり直さなければなりません。

では、今回の前編ではこのプロジェクトの設定を見ていきます。



フラグメント一致


設定の場所: [言語ペア] > [すべての言語ペア] > [翻訳メモリと自動翻訳] > [検索] > [upLIFT 用のフラグメント一致のオプション]


フラグメント一致の機能は既定で有効ですが、一部無効になっているオプションがあります。フラグメント一致や upLIFT の詳細については、以前の記事「フラグメント一致に関する設定」や、Trados の公式ブログを参照してください。


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上図の [TU のフラグメント] をオンにします。これをオンにすると、分節全体ではなく、語句の単位でマッチが検出されるので、[フラグメント一致] ウィンドウに表示されるマッチが多くなります。[フラグメント一致] ウィンドウに表示された語句は、ショートカット キー Ctrl+Alt+M で訳文に挿入できます。

単語数のフィールドは、上記の公式ブログの推奨に従ってどちらも「2」に設定します。あまりにマッチが多く表示されるようなら「3」に変更します。数字を大きくするとマッチが減ります。



固定要素を「認識」する


設定の場所: [言語ペア] > [すべての言語ペア] > [翻訳メモリと自動翻訳]、メモリを選択して [設定] > [言語リソース] > [次を認識する]


「固定要素」とは、数字、日付、大文字の英単語などのことです。「認識済みトークン」と呼ばれることもあります。私にとっては、Trados の中でよくわからない機能のトップにあがるものですが、自動認識とか、自動置換とか、 QuickPlace (ショートカット キーは Ctrl+Alt+下矢印または Ctrl+カンマ) とか、繰り返し処理とか、いろいろなところに影響するので注意が必要です。詳細については、公式ヘルプの「固定要素」を参照してください。(ただ、参照してもよくわかりません。)

固定要素の設定は 2 段階で行います。最初に「認識」を有効にし、その後で「置換」を有効にします。では、まず「認識」を有効にする方法です。

エディターの原文で、数字や日付などに青色の下線が引かれていることがあると思います。これが、固定要素が「認識されている」状態です。認識された要素は、QuickPlace 機能 (ショートカット キーは Ctrl+Alt+下矢印または Ctrl+カンマ) で訳文にコピーできます。

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認識を有効にする設定は、メモリに付属する「言語リソース」で行います。メモリの設定画面で [言語リソース][次を認識する] の各チェックボックスをオンにします。これで、それぞれの要素が認識されるようになります。

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固定要素を「置換」する


設定の場所: [言語ペア] > [特定の言語ペア] > [翻訳メモリと自動翻訳] > [自動置換]


では次に、認識された固定要素の「置換」を有効にする設定を行います。これは、日付や通貨などの形式を自動的に変換してくれる機能です。詳細については、公式ヘルプの [翻訳メモリと自動翻訳] > [自動置換] を参照してください。

置換の設定は、[すべての言語ペア] ではなく、Japanese->English など、特定の言語ペアで行います。日付や通貨の形式は言語に依存するので、言語ごとに設定する必要があります。以下の [自動置換] ページに表示される項目のチェックボックスをオンにすると、それぞれの要素の置換が有効になります。


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ただ、自動置換の動作はあまり信用できないので、より安全な方法をとるなら「認識は有効、置換は無効」と設定するのもよいと思います。認識を有効にして青色の下線が引かれていれば、置換は無効でも QuickPlace 機能のショートカット キーで入力が可能です。

実は、私は今回の記事を書いていて初めてこの置換設定ページの存在に気づきました。以前の繰り返し処理の記事でも固定要素については説明していますが、この自動置換の有効/無効はすっかり抜け落ちていました (すみません)。繰り返し処理の動作にもこの「認識」と「置換」の 2 段階の設定が影響します。

ちなみに、私は毎回「認識」と「置換」の全チェックボックスをオンにしていますが、これはあくまでタイピングを減らすためです。決して、自動で訳文を作ってもらおうとしているわけではありません。「Windows」は OS ではなくて複数のウィンドウかもしれないし、「SW」はスイッチかもしれないけどソフトウェアかもしれないし、「バージョン 100 は 100 億個のファイルを 100 分の 1 の時間で処理する」みたいな文があるかもしれません。自動的な変換は信頼できないのですべて確認が必要です。このため、ペナルティとの併用は必須です。自動置換を有効にするとマッチ率が上がったりしますが、それで料金を割り引きできると考えるのは間違いです (と私は思っています)。翻訳会社側で解析をするときは「自動置換なし、もし置換するならペナルティを付ける」が原則です (と私は思っています)。



置換の詳細を設定する


設定の場所: [言語ペア] > [特定の言語ペア] > [翻訳メモリと自動翻訳] > [自動置換]
(必要に応じて、[言語ペア] > [すべての言語ペア] > [翻訳メモリと自動翻訳]、メモリを選択して [設定] > [言語リソース])


自動置換の設定画面には、[日付と時刻][単位][数字と通貨] の 3 つが用意されています。ここでは、[日付と時刻] についてだけ説明したいと思います。[単位] については、以前の記事「単位記号の前にスペースを入れる」を参照してください。[数字と通貨] については、すみません、よくわからないことだらけなので今回は省略します。

日付と時刻は、以下の画面で形式を設定できます。スタイルガイドなどを確認して、適切な形式を選びます。ただ、自動置換は原文も正しい形式で入力がされていないと適切に機能しません。月と日だけ、または日だけ、というような場合は認識されず、置換もされません。


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この設定画面のドロップダウンに表示されるオプションは自分で設定が可能です。たとえば、[日付 (長い形式)] にはかなりたくさんのオプションがありますが、スタイルガイドが「全角と半角の間にスペースを入れる」というルールの場合、これに合ったオプションはありません。

このルールにあったオプションを作成するには、メモリの言語リソースの設定に戻ります。


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この表から [日付][日本語] をクリックして編集画面を開きます。ここで、必要な形式を追加します。yyyy などの要素が親切にプロンプトされてくるので、それを組み合わせていけば設定できます。


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「全角と半角の間にスペースを入れる」というルールの場合は、以下を設定します (コピペできます)。

yyyy' 年 'M' 月 'd' 日 ('ddd')'


これで、先ほどの自動置換の設定画面に戻ると、追加した形式がドロップダウンに表示されるようになります。



まとめ


「プロジェクトの設定」でタイピングを減らすための機能の説明は以上です。最後に、まとめとしていくつか注意点を挙げておきます。固定要素の認識や置換は、私の経験上、なぜか設定がうまくいかないことが多いです。必ず解決するとは限りませんが、何かのときの参考にしてください。


言語リソースは 1 番上にあるメモリで設定する

言語リソースの設定はメモリに付属しますが、プロジェクトには複数のメモリが設定されていることがあります。その場合は、メモリのリストで 1 番上に表示されているメモリで設定を行ってください。たぶん、1 番上のメモリの設定が優先的に使われていると思います。(すみません、あくまで、私の経験則です。)

ただし、翻訳会社から提供されるサーバー TM の言語リソースは翻訳者側では設定を変更できません。このため、受け取ったパッケージでサーバー TM が 1 番上に設定されている場合は少し対応に困ります。私がよく行う対策は「自作のメモリを 1 番上に追加する」ですが、これによって翻訳ファイルが開かなくなったこともあります。メモリの順番を変えると、マッチの優先度も変わるので、その辺りも注意が必要です。


特定の言語ペアの設定が優先される

上記の説明では、「すべての言語ペア」と「特定の言語ペア」の設定を使用していますが、多言語プロジェクトの場合で「特定の言語ペア」に既に何らかの設定がされている場合は「すべての言語ペア」より「特定の言語ペア」の設定が優先されます。このため、自分で設定を変更するときも、「特定の言語ペア」で設定を変更する必要があります。詳細については、以前の記事「最近の Trados のワナ: メモリがヒットしてこない」を参照してください。


設定を変えたら、エディターをいったん閉じて、開き直す

固定要素などのメモリの設定は、設定画面で変更をしても、すぐに動作が変わらないことがあります。私は、設定がうまくできていないのではないかと思って、何回も確認や変更をしていたことがあります。そんなときはいったんエディター画面を閉じて、改めて翻訳ファイルを開き直すと動作が変わることがあります。


メモリをアップグレードする??

言語リソースの設定を変更すると、メモリにアップグレードを促す警告マークが表示されます。アップグレードしなくても正常に機能しているように見えますが、とにかく少しでも設定を変更すると警告マークが付きます。アップグレードの処理はメモリが大きいとかなり時間がかかるので、私はいろいろ設定してから、最後に念のためアップグレードするようにしています。


以上です。とてつもなく長くなってしまいました。「タイピングを減らすためにどれだけ設定が必要なんだよ!」という感じですが、これをパッケージを受け取るたびに行う必要があります。はっきりいって面倒です。とても面倒です。ですが、AutoHotkey など他の手段ですべて実現しようとすると、それも難しいので、とりあえずは Trados さんの設定に頼っています。次回は、プロジェクトの設定ではなく、エディターの設定を取り上げます。こちらは、プロジェクトごとに設定する必要がなく、若干ですが楽かもしれません。





  


2022年09月30日

繰り返し処理にメモリは不要

しばらく更新が滞っておりました。今回は、繰り返しの処理を詳しく見ていきたいと思います。繰り返される文を自動的に処理することは翻訳メモリの代表的な機能のように思えますが、Trados に限っていえば、繰り返しの処理にメモリは不要です。メモリがなくても、エディタの機能だけで繰り返しは自動処理できます。

自動処理はできるのですが、この「自動」というのがやっかいです。実際に作業をしていると、自分が想定している「自動」と違って戸惑うことがよくあります。今回は、この自動動作に影響を与えている設定をいくつか紹介します。

まず、繰り返し処理の基本的な設定は [ファイル] > [オプション] > [エディタ] > [自動反映] で行います。これについては、以前の記事「CAT ツール比較:繰り返しの自動入力」を参照してください。今回は、これ以外の設定で自動反映の動作に影響を与えるものを主に取り上げます。



メモリは使わないが、メモリの設定は使う


最初に書いたように、繰り返しの自動反映にメモリは不要です。プロジェクトにメモリを 1 つも設定していなくても、以下のように自動反映は行われます。

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しかし、メモリがなくても、メモリの設定は使われます。この辺りが Trados のよくわからないところですが、メモリにはいろいろと重要な設定が存在し、それが使われます。

使われる設定は、メモリの [設定] から設定する「言語リソース」と、プロジェクト設定の [翻訳メモリと自動翻訳] から設定する「ペナルティ」です。どちらも、本来はメモリのための設定であり、繰り返しの自動反映のための設定ではありませんが、これらの設定が自動反映の動作に影響を与えます。


言語リソース


では、言語リソースの設定から見ていきます。この設定はメモリに付属するものですが、下図のように、メモリを 1 つも指定していないプロジェクトでは「既定の言語リソース」が使用されます。


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プロジェクトにメモリを設定した場合は、そのメモリの [設定] 画面から以下のような設定が可能になります。

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今回は、言語リソースの設定のためにダミーのメモリを 1 つ設定しました。おそらく、言語リソースを直接編集することも可能でしょうが、言語リソースをどう編集するのかとか、プロジェクトを作った後に編集してもその変更は反映されるのかとか、パッケージを受け取った場合はどうなるのかとか、いろいろ考えることが多くなりそうなのでダミーのメモリを使うことにしました。ただし、メモリとの 100% 一致が発生すると検証が面倒になるので、今回は [更新] チェックボックスをオフにしてメモリが登録されないようにしています。


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さて、言語リソースの設定で注意するのは [次を認識する] です。ここでチェックボックスがオンになっていないと繰り返しの自動反映でも認識がされません。ここに表示されている「日付」「頭字語」「変数」「英数字文字列」の詳細については、Trados のヘルプ「自動置換の例」を参照してください。ただ、その他の項目も含め、自動置換の動作はなかなか複雑でよくわからないことがたくさんあります。本当によくわからないので、すみません、今回は数字と頭字語だけに着目したいと思います。頭字語は、簡単にいうと「大文字の英字のみ」で構成される単語です。


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たとえば、[数字][頭字語] のチェックボックスをオフにすると、自動反映の結果は以下のようになります。


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分節 6 〜 10 は数字の例です。数字を認識しない設定の場合、分節 6 と 7 はまったく同一なのでそれでも繰り返しと見なされますが、分節 8 〜 10 は繰り返しになりません。分節 11 〜 14 は頭字語の例です。これらも頭字語を認識しない設定にしていると、まったく同一でない限り繰り返しになりません。

認識しない設定にすると、むやみに自動反映されることがないので安全にはなりますが、正直にいって不便です。この設定は、繰り返しの自動反映だけでなく、メモリとのマッチや QuickPlace 機能 (ショートカット キーは Ctrl+Alt+下矢印または Ctrl+カンマ) にも影響します。ワード数やマッチ率への影響は要検討ですが、入力時の負荷だけを考えれば、たくさん認識してくれた方が助かります。

というわけで、私はいつもすべてのチェックボックスをオンにして作業しています。しかし、そうしていると繰り返しが無条件に自動反映されてしまうので、それを防ぐための手段は必要です。


少し余談ですが、プロジェクトの [翻訳メモリと自動翻訳] の設定や、メモリの [設定] から行う設定は、反映されるタイミングが実はよくわかりません。[次を認識する] のチェックボックスをオンにしても認識されなかったり、逆に、オフにしているのに認識されたりします。私が何回か試してみた結果としては、設定をした後、エディタでいったんファイルを閉じ、改めて開き直すと設定が反映されるような気がしています。今回の記事を書くためにいろいろ試したのですが、かなり混乱しました。


※※※※※※ 追記 2022/12/14 ※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※

上記では、[次を認識する] のチェックボックスについてしか記述していませんでしたが、実は [自動置換] のチェックボックスも併せてオンにする必要がありました。すみません、[自動置換] の存在にまったく気づいていませんでした。詳細については、こちらの記事「タイピングを減らそう」を参照してください。

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ペナルティ


むやみな自動反映を防ぐ手段の 1 つとして使えるのがペナルティです。設定する場所は、[プロジェクトの設定] > [言語ペア] > [すべての言語ペア] > [翻訳メモリと自動翻訳] > [ペナルティ] です。ペナルティを設定しておくと、マッチ率をペナルティ分だけ引き下げられます。「1」を設定しておけば、100% マッチでも 99% と見なされるのでさまざまな自動処理の予防になります。


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今回注目するのは、既定でゼロになっている [自動ローカリゼーションによるペナルティ][テキスト置換によるペナルティ] の 2 つです。簡単に説明すると、「自動ローカリゼーション」は日付や数値の置換、「テキスト置換」は頭字語や英数字文字列の置換です。詳細については、Trados のヘルプ「TM ペナルティ」を参照してください。

先に説明した言語リソースで数字と頭字語を認識する設定にしていても、この 2 つのペナルティを「1」に設定すれば、繰り返しの自動反映は下図のように制限されます。まったく同一でない限り、ペナルティが効くので 100% マッチにならず自動反映はされません。


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でも、やっぱり自動反映したい


上記のペナルティは、当然ながら、繰り返しの自動反映だけでなく、メモリから訳文を入力するときの動作に影響します。このため、私は必ず全項目に「1」を設定して作業しています。数字が複数あったりすると自動置換の動作は信用できないので、必ず確認する必要があります。

必ず確認する必要はあるのですが、数字だけが違う分節がずらずらと並ぶ場合など、やっぱり自動反映してほしいときはあります。その場合は、最初に挙げたエディタの設定を変えます。


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[一致率の最小値] を「99」に設定し、[ユーザーへの確認メッセージ] が「常に」表示されるようにします。これで、ペナルティが効いて 99% マッチになっても自動反映が行われ、確認メッセージが毎回表示されるようになります。

注意点として、一致率の最小値を引き下げるとかなり危険な動作になることを心しておいてください。ペナルティではなく、通常の文字の違いで 99% マッチになっているものも自動反映されるので、これはあくまで一時的な設定という扱いにし、必要でなくなったらすぐに元に戻します。

確認メッセージは下図のように表示されます。「99%」の下に表示されている青色のマークは自動ローカリゼーションで置換が行われたことを示しています。(ただし、どこが置換されたのかはわかりません。そこは自分で確認するしかありません。)


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このメッセージはすべての繰り返しについて毎回表示されますが、本当に確認が不要な場合は、[すべてはい] をクリックすることで一気に自動反映を適用できます。



で、結局どう設定すればいいの?


繰り返しの自動反映に関する設定の説明は以上です。繰り返しの処理にメモリは不要ですが、メモリの設定は使われるのでいろいろな注意が必要です。

私は、たいてい以下のように設定して作業しています。


  言語リソース
    ・ すべての項目を認識する (すべてのチェックボックスをオン)

  ペナルティ
    ・ すべての項目に「1」を設定する

  エディタ
    ・ 一致率の最小値は「100」
    ・ 確認メッセージは「常に」表示する


上記のように設定した場合、まったく同一でない限り繰り返しの自動反映は行われません。ただ、今回は検証のためにメモリの更新をオフにしていましたが、通常はメモリに訳文を登録しているので、繰り返しとして自動反映がされなくても、メモリから訳文を入力できます。どうしても不便な場合は「一致率の最小値」を引き下げますが、これは危険なのでむやみには行いません。


今回は以上です。繰り返し処理の設定はかなり複雑で、私は今も試行錯誤することがあります。繰り返しがほとんど発生しない文書も多いので、設定しては忘れ、またいろいろ試す、ということを繰り返しています。





  


2022年08月15日

パッケージを受け取ったら、まずココを確認しよう

今回は、このブログの開設当初に書いた記事を書き直してみました。Trados のバージョンが上がるにつれてインターフェイスが少しずつ変わってきていることに加えて、当時書いた記事を今になって見ると少々お粗末な内容に思えたので、改めて書くことにしました。

翻訳会社さんからパッケージを受け取ったら、まずはそれを開き、中に含まれている翻訳ファイル、メモリ、用語ベースを確認します。パッケージでのデータの受け渡しは、何かの都合でうまくできないこともあるので、パッケージを受け取ったらなるべく早く中身を確認します。いざ作業を始めようとしたらパッケージが開かなかった、なんてことにならないようにしましょう。



翻訳ファイル


まずは、翻訳ファイルを確認します。翻訳ファイルはプロジェクトの [ファイル] ビューから確認できますが、最初に [ファイル] ビューの表示設定を整えておかないと見たい情報がうまく表示されません。詳細については、以前の記事「ファイル ビューをカスタマイズする」を参照してください。



確認の前に ― ファイル ビューの設定を変える

[サブフォルダを含める] チェックボックスをオンにする: このチェックボックスは既定でオフです。この状態では、フォルダーごとにしかファイルを表示できずとても不便です。オンにすると、全フォルダー内の全ファイルを一気に表示できるようになります。ファイルが階層構造になっている場合の表示方法については、上に挙げた記事「ファイル ビューをカスタマイズする」を参照してください。

レイアウトを [ファイルの詳細のレイアウト] に変える: 選択しているレイアウトによって、一覧に表示される項目が変わってきます。[ファイルの詳細のレイアウト] を選択すると、パス、サイズ、翻訳対象かどうか、などが表示されるので便利です。

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[ファイル] ビューの準備が整ったら、早速、詳しい確認をしていきましょう。



ファイルがすべて揃っているかを確認する

最初に、ファイルがすべて揃っているかを指示書や発注書を参照しながら確認します。ファイルが多くて 1 つ 1 つ確認できない場合は、ファイルの総数だけでも確認します。総数を確認するには、画面上部の一覧で全ファイルを選択し、画面下部で [ファイルの詳細] タブを表示します。これで、ファイルの総数が表示されます。

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翻訳会社は、1 つのプロジェクトを複数の翻訳者に分割することがあり、そのときのファイルの分配は手動で行っている場合があります。ファイルが間違っているなんてことはさすがにめったにありませんが、それでも念のため確認しましょう。



ファイルを開いてみる

ファイルが揃っていることが確認できたら、次は実際にファイルを開いてみます。まれに、エラーでファイルが開けないこともあるので、実際に開いてみることをお勧めします。よくあるエラーは「依存関係ファイルが見つかりません」です。このエラーが出た場合の対処方法については、他のブログなどでも紹介されているので検索してみてください。

ファイルがたくさんあって全ファイルを開くことが難しい場合は、「ファイルの種類」ごとに、「サイズが最も大きいもの」を開いてみます。Trados は「ファイルの種類」が違うと動作が大きく変わるため、たとえば、プロジェクトの中に Word ファイルと HTML ファイルがある場合は、最低でも、Word ファイルと HTML ファイルを 1 つずつ開いてみます。そして、サイズが大きいほどエラーになる可能性が高いので、サイズが大きいファイルを試すようにします。



プレビューをしてみる

ファイルを開くことができたら、次に、プレビューまたは訳文生成ができるかを確認します。プレビューができれば、たいていは訳文生成もできるので、私は手軽なプレビューを試してみます。私の経験上、Trados でプレビューができないことはよくあります。Trados さんを過信せず、確認してみるのが安全です。

PowerPoint などの場合、プレビューなしで翻訳するのはかなり難しくなります。このため、私はプレビューができないときは早めに「自分の環境ではプレビューができません」と翻訳会社に連絡するようにしています。

プレビューができない原因は、Trados のバージョンだったり、原文ファイルを作成するアプリケーション (Office など) のバージョンだったり、何か特殊なデータ構造だったり、といろいろあって翻訳者側で調べてもわからないケースがほとんどです。パッケージの作成者はプレビューができないことに気付いていない (もしくは、作成者の環境ではプレビューができる) こともあるので、まずは連絡してみることが大切です。




翻訳メモリ


翻訳ファイルの確認ができたら、次にメモリを確認します。確認する場所は、[プロジェクトの設定] -> [言語ペア] -> [すべての言語ペア] -> [翻訳メモリと自動翻訳] です。



アップグレードする

Trados は 2017 SR1 あたりからメモリの構造が大きく変わっているので、それ以前のバージョンで作成されたメモリを使う場合はメモリをアップグレードする処理が必要になります。翻訳会社さんが古いバージョンを使い、自分が新しいバージョンを使っているようなケースでこのアップグレードが必要になります。メモリのアイコンに黄色い警告マークが表示されていたら、そのメモリを選択し、右上の [アップグレード] ボタンを押してアップグレードします。(ただし、メモリのサイズによっては処理に相当な時間がかかります。)

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エラーがなく有効であることを確認する

各メモリについて、エラーが表示されていないこと、 [有効] チェックボックスがオンになっていることを確認します。[有効] チェックボックスがオンになっていないと、メモリが設定されていてもそのメモリは使用されません。

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もしエラーが表示されている場合は、メモリ名の上にマウスポインターを置くとメモリのパスが表示されるので、正しいパスになっているかを確認します。ごくたまにですが、パッケージ作成者のローカルのパスになってしまっていることがあります。



メイン メモリは提供されないこともある

翻訳会社によっては、メイン メモリの一部を抽出した「プロジェクト用翻訳メモリ」を使用してくる場合があります (プロジェクト用翻訳メモリの詳細については、公式ブログを参照してください)。この場合、メモリが巨大すぎるなどの理由から、翻訳会社側が意図的にメイン メモリをパッケージに含めてこないことがあります。

もちろん、翻訳者としてはメイン メモリも提供して欲しいので、メイン メモリが無効になっていたら、私は念のため、意図的なのかどうかを翻訳会社に確認するようにしています。




用語ベース


最後に用語ベースを確認します。用語ベースは、設定がされていなくても普通に作業を進められてしまうので、作業を進めてしまってからあれっと思ったりすることがないよう、最初にきちんと確認しましょう。確認する場所は、翻訳メモリの場合と同じく [プロジェクトの設定] の中です。[言語ペア] -> [すべての言語ペア] と選択して [用語ベース] を確認します。

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緑色のチェックマークが表示されていれば OK です。エラーが表示されていたら、メモリのときと同じように、用語ベース名の上にマウスポインターを置いてパスを確認します。メモリと同様、[有効] チェックボックスも確認してください。



用語認識されるかを確認する (この確認は、後回しでもよい)

できれば、翻訳ファイルを開いて、用語認識機能が正常に機能するかを確認します。ただ、この確認を行うには、用語ベースに登録されている用語を含む分節を見つけなければならず、少し手間がかかります。また、用語認識の動作はかなり不安定で、まったく認識しなかったり、画面を開き直したら認識するようになったり、といった現象もしばしばです。

このため、パッケージを受け取った時点の確認としては、用語ベースのファイルが存在するかだけでもよいと思います。その後、作業を始める段階になって、詳しい確認をするようにします。



今回は以上です。私のこれまでの経験からすると、翻訳メモリと用語ベースの設定ミスはそれなりの頻度で遭遇します。コーディネーターさんは複数のプロジェクトを同時進行していて、非常に、非常に忙しいこともあるので、翻訳者としては「たぶん大丈夫だろう」ではなく、「何か間違っているかもしれない」と思って確認するほうが安全です。