2023年03月17日
訳文のフォントを変えたい
ずいぶん久しぶりの更新になってしまいました。今回は、Trados で訳した文書のフォントについてです。最近の仕事で、翻訳会社から Trados のパッケージではなく、Word や PowerPoint のファイルをそのまま渡されて翻訳することが何回かありました。原文のファイルをそのまま渡される場合、細かいレイアウトは別作業としても、フォントの指定くらいはされることがよくあります。今回は、自分で Trados にファイルを取り込んで訳すときに、訳文のフォントを設定する方法を説明します。
今回の記事では、自分で Trados にファイルを取り込んで作業する場合の方法を紹介します。残念ながら、翻訳会社からパッケージを渡された場合は自分で原文ファイルを取り込むことができないので、パッケージ内のファイルをそのまま使用するしかありません。「ファイルの種類」にあるフォント マッピングを自分で変更することはできますが、「ファイルの種類」には翻訳会社が何らかの設定をしてきている場合があります。この中の設定を変更する場合は、くれぐれも慎重に行ってください。
今回の記事は、プレビューや訳文生成の処理で作られる訳文ファイルのフォントについての説明です。エディターに表示される文字のフォントではありません。エディターの表示で使われるフォントについては、以前の記事「エディタ上のフォントを変える」を参考にしてください。
では、フォントを設定する方法を説明していきましょう。まずは、英日翻訳の場合です。
PowerPoint ファイルの英日翻訳をしているときに、訳文ファイルで日本語のフォントが明朝になりプレゼンテーションの見た目が少し残念な感じになってしまったことはありませんか。それは「ファイルの種類」のフォント マッピングですべてのフォントに「MS Mincho」が設定されているからです。
おそらく既定で、下図のように、[プロジェクトの設定] > [ファイルの種類] > [PowerPoint 2007-2019] > [フォント マッピング] の日本語に対して <AllFonts> を MS Mincho に変換する設定がされています。
このマッピングが有効になっていると、訳文ファイルですべてのフォントが明朝に変換されます。
■ すべてのフォントが明朝に変換される
明朝ではなく別のフォントに変換したい場合は、上図の画面で [MS Mincho] を右クリックして [選択したアイテムの削除] を選択し、フォントの設定をいったん削除します。その後で [日本語] を右クリックして [新規訳文フォントの追加] を選択し、フォントを追加します。下図のような画面が表示されるので、[原文のフォント] では下部の [原文のフォントをすべてマップ] を選択し、[訳文のフォント] で使用したいフォントを選択します (この例では、Meiryo UI を選択しています)。
これで、[OK] をクリックすると、下図のように <AllFonts> を Meiryo UI に変換する設定になります。
この設定で訳文生成をすると、今度はすべてのフォントが Meiryo UI に変換されます。
■ すべてのフォントが Meiryo UI に変換される
上図の [フォント マッピングの選択] 画面では、もちろん「すべてのフォント」ではなく、個別のフォントを設定することもできます。フォントごとに変換ルールが決まっている場合は個々に設定を行います。
ちなみに、上記で使用した Meiryo UI には斜体が存在しません。Trados のエディター上でタグを使用して斜体を設定していても、訳文ファイルで Meiryo UI に変更してしまうと正体で表示されます (私は、Trados のバグなんじゃないかと思っていたのですが、そうではありませんでした)。日本語文書で斜体を意図的に使うことは少ないと思いますが、もし斜体を使いたい場合は他のフォントを使用する必要があります。
フォント マッピングの設定では、Trados でのフォント変換を一切無効にすることもできます。フォント変換を無効にしたい場合は、上図の画面で [日本語] を右クリックして [選択したアイテムの削除] を選択し、日本語の設定そのものを削除します。これで、フォントの変換は行われず、原文の PowerPoint ファイルで設定されている日本語用フォントが使用されるようになります。
■ フォント変換を無効にすると、原文ファイルで設定されているフォントが使用される
原文ファイルに日本語用フォントがきちんと設定されている場合は、Trados での変換は無効にするのがお勧めです。ただ、英語の原文ファイルで日本語用のフォントが設定されていることはまれです。たいていは、設定がされていないために、何らかの既定値が使用されてしまうことになります。このため、Trados でのフォント変換を無効にする場合は、原文ファイルに対して自分でフォントの設定を行っておく必要があります。
フォント マッピングによる変換を行わない場合は、Trados にファイルを取り込む前に、原文ファイルでできるだけフォントの設定を行っておきます。事前に原文ファイルで設定を行っておけば、フォント マッピングを設定しなくてもプレビュー時にフォントが変換された訳文が表示されるので、翻訳後の見た目も確認しやすくなります。
また、Trados のフォント マッピング機能が実際にどのようにフォントを変更しているのかはわかりませんが、この機能は Word や PowerPoint の訳文ファイルに適切な日本語用フォントを設定するわけではありません。見た目上は変換されたフォントが表示されていても、フォント設定自体は原文のままだったりすることがあります。
というわけで、原文ファイルでフォントの設定を行うのが理想ではあるのですが、実はこれがなかなか大変です。Word や PowerPoint の本格的な文書では「スタイル」や「マスター」などを使ってかなり複雑な設定が施されていることがあります。そのような場合、フォントだけとはいっても自分で適切な設定をするのは難しく、さらに Trados の訳文生成の動作も怪しくなることがあります。
私は、単純なファイルだったら原文ファイルで設定を行いますが、それが難しい場合は Trados のフォント マッピング機能を使ってしまいます。そして、それでもうまくいかない場合は、最終手段として、訳文生成後に手動でフォントを変更します。
さて、ここまでは英日翻訳で訳文が日本語の場合の説明でしたが、日英翻訳の場合は訳文が英語になります。先に挙げたフォント マッピングの図で気付いている方もいるかもしれませんが、既定のフォント マッピングに「英語」は存在しません。このため、訳文が英語の場合、フォントの変換は行われません。英語に対してフォントの変換を行いたい場合は、上図の [フォント マッピング] の画面を右クリックして [新しい言語の追加] を選択し、「英語」を追加する必要があります。
今回は以上です。フォントの変換は正確に行おうとするとなかなか大変です。原文ファイルの作られ方や、翻訳者に求められる作業範囲も考慮して、なんとなくいい感じに仕上げることを目指しましょう。
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パッケージを渡されたら、それをそのまま使う
今回の記事では、自分で Trados にファイルを取り込んで作業する場合の方法を紹介します。残念ながら、翻訳会社からパッケージを渡された場合は自分で原文ファイルを取り込むことができないので、パッケージ内のファイルをそのまま使用するしかありません。「ファイルの種類」にあるフォント マッピングを自分で変更することはできますが、「ファイルの種類」には翻訳会社が何らかの設定をしてきている場合があります。この中の設定を変更する場合は、くれぐれも慎重に行ってください。
エディター内のフォント指定は、別の設定で行う
今回の記事は、プレビューや訳文生成の処理で作られる訳文ファイルのフォントについての説明です。エディターに表示される文字のフォントではありません。エディターの表示で使われるフォントについては、以前の記事「エディタ上のフォントを変える」を参考にしてください。
では、フォントを設定する方法を説明していきましょう。まずは、英日翻訳の場合です。
「フォント マッピング」の設定でフォントを変える
PowerPoint ファイルの英日翻訳をしているときに、訳文ファイルで日本語のフォントが明朝になりプレゼンテーションの見た目が少し残念な感じになってしまったことはありませんか。それは「ファイルの種類」のフォント マッピングですべてのフォントに「MS Mincho」が設定されているからです。
おそらく既定で、下図のように、[プロジェクトの設定] > [ファイルの種類] > [PowerPoint 2007-2019] > [フォント マッピング] の日本語に対して <AllFonts> を MS Mincho に変換する設定がされています。
このマッピングが有効になっていると、訳文ファイルですべてのフォントが明朝に変換されます。
■ すべてのフォントが明朝に変換される
明朝ではなく別のフォントに変換したい場合は、上図の画面で [MS Mincho] を右クリックして [選択したアイテムの削除] を選択し、フォントの設定をいったん削除します。その後で [日本語] を右クリックして [新規訳文フォントの追加] を選択し、フォントを追加します。下図のような画面が表示されるので、[原文のフォント] では下部の [原文のフォントをすべてマップ] を選択し、[訳文のフォント] で使用したいフォントを選択します (この例では、Meiryo UI を選択しています)。
これで、[OK] をクリックすると、下図のように <AllFonts> を Meiryo UI に変換する設定になります。
この設定で訳文生成をすると、今度はすべてのフォントが Meiryo UI に変換されます。
■ すべてのフォントが Meiryo UI に変換される
上図の [フォント マッピングの選択] 画面では、もちろん「すべてのフォント」ではなく、個別のフォントを設定することもできます。フォントごとに変換ルールが決まっている場合は個々に設定を行います。
ちなみに、上記で使用した Meiryo UI には斜体が存在しません。Trados のエディター上でタグを使用して斜体を設定していても、訳文ファイルで Meiryo UI に変更してしまうと正体で表示されます (私は、Trados のバグなんじゃないかと思っていたのですが、そうではありませんでした)。日本語文書で斜体を意図的に使うことは少ないと思いますが、もし斜体を使いたい場合は他のフォントを使用する必要があります。
「フォント マッピング」の設定でフォント変換を無効にする
フォント マッピングの設定では、Trados でのフォント変換を一切無効にすることもできます。フォント変換を無効にしたい場合は、上図の画面で [日本語] を右クリックして [選択したアイテムの削除] を選択し、日本語の設定そのものを削除します。これで、フォントの変換は行われず、原文の PowerPoint ファイルで設定されている日本語用フォントが使用されるようになります。
■ フォント変換を無効にすると、原文ファイルで設定されているフォントが使用される
原文ファイルに日本語用フォントがきちんと設定されている場合は、Trados での変換は無効にするのがお勧めです。ただ、英語の原文ファイルで日本語用のフォントが設定されていることはまれです。たいていは、設定がされていないために、何らかの既定値が使用されてしまうことになります。このため、Trados でのフォント変換を無効にする場合は、原文ファイルに対して自分でフォントの設定を行っておく必要があります。
Trados に取り込む前に、原文ファイルでフォントを設定する
フォント マッピングによる変換を行わない場合は、Trados にファイルを取り込む前に、原文ファイルでできるだけフォントの設定を行っておきます。事前に原文ファイルで設定を行っておけば、フォント マッピングを設定しなくてもプレビュー時にフォントが変換された訳文が表示されるので、翻訳後の見た目も確認しやすくなります。
また、Trados のフォント マッピング機能が実際にどのようにフォントを変更しているのかはわかりませんが、この機能は Word や PowerPoint の訳文ファイルに適切な日本語用フォントを設定するわけではありません。見た目上は変換されたフォントが表示されていても、フォント設定自体は原文のままだったりすることがあります。
というわけで、原文ファイルでフォントの設定を行うのが理想ではあるのですが、実はこれがなかなか大変です。Word や PowerPoint の本格的な文書では「スタイル」や「マスター」などを使ってかなり複雑な設定が施されていることがあります。そのような場合、フォントだけとはいっても自分で適切な設定をするのは難しく、さらに Trados の訳文生成の動作も怪しくなることがあります。
私は、単純なファイルだったら原文ファイルで設定を行いますが、それが難しい場合は Trados のフォント マッピング機能を使ってしまいます。そして、それでもうまくいかない場合は、最終手段として、訳文生成後に手動でフォントを変更します。
英語のフォント マッピングは既定で無効
さて、ここまでは英日翻訳で訳文が日本語の場合の説明でしたが、日英翻訳の場合は訳文が英語になります。先に挙げたフォント マッピングの図で気付いている方もいるかもしれませんが、既定のフォント マッピングに「英語」は存在しません。このため、訳文が英語の場合、フォントの変換は行われません。英語に対してフォントの変換を行いたい場合は、上図の [フォント マッピング] の画面を右クリックして [新しい言語の追加] を選択し、「英語」を追加する必要があります。
今回は以上です。フォントの変換は正確に行おうとするとなかなか大変です。原文ファイルの作られ方や、翻訳者に求められる作業範囲も考慮して、なんとなくいい感じに仕上げることを目指しましょう。
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