今回の失敗の原因は、ハイパーリンクのタグでした。訳文上で不要になったハイパーリンク タグが自動で削除され、検証でもエラーとして検出されず、訳文生成が失敗したということです。こうなってしまうそもそもの原因は、Trados が PowerPoint ファイルのハイパーリンク タグを「書式タグ」とみなすことにあるような気がしています。ハイパーリンクは「書式」じゃないと思うんですが、どうなんでしょう。
ただ、今回のハイパーリンク タグが削除されると訳文生成が正常にできないという現象は、必ず発生するわけではなさそうです。実は、この記事を書くために自分でサンプル ファイルを作ってみたら、正常に訳文生成できてしまいました。実際の仕事で使っていたエラーになるファイルと見比べても、結局どこが違うのかわかりませんでした。ですので、以下の説明は「そういう場合もある」程度のものとしてご解釈ください。
空の書式タグは自動で削除される
Trados のエディターは空の書式タグを自動で削除します。翻訳では、訳文で語順が変わるなどすると、タグが不要になることがよくあります。このようなときにタグの中身を空にしておくと、分節を確定したタイミングでそのタグは自動的に削除されます。
タグが自動的に削除されるこの動作は、太字や文字の色など本当に「書式」の場合は問題ありませんが、ハイパーリンクの場合は困ったことになります。ハイパーリンク タグには属性があり、その属性が翻訳対象であることがあるからです。よくあるのは、リンク先の URL が翻訳対象のケースです。リンク先は、訳文の言語に合わせて変えることが多いので、Trados の既定設定でも翻訳対象となり、該当部分が別の分節に書き出されます。
上図では、1 番上の分節にハイパーリンクが 2 つあり、そのリンク先の URL が下の 2 つの分節に書き出されています。このように URL が独立した分節として存在している状態で本体のハイパーリンク タグを削除してしまうと、URL の行き場がなくなりエラーになるのではないかと私は考えています (実際のところは、エラーにならない場合もあり、よくわかりません)。実際の仕事でエラーになったファイルは、ハイパーリンク タグが空にならないように訳文を調整したら、タグが削除されることがなくなり、無事に訳文生成されるようになりました。
ちなみに、Trados には書式タグを一気に削除するショートカット キー (Ctrl+Alt+Space) がありますが、ハイパーリンク タグはこのショートカット キーでも削除されてしまいます。もう、完全に「書式」とみなされています。
検証機能は既定で書式タグを無視する
実は、ハイパーリンク タグに限らず、タグが原因で訳文生成できないことはよくあります。よくあるというより、私の経験ではタグが原因であることが最も多い気がします。ですので、訳文生成が失敗したら、私は真っ先にタグの検証をします。もちろん、今回も検証はしました。でも、タグのエラーは検出されませんでした。
エラーにならなかった原因は、上図の設定です。既定で [書式タグを無視する] はオンになっています。検証機能でもハイパーリンクは書式タグとみなされるようで、この設定がオンになっているとハイパーリンクはエラーとして検出されません。
[書式タグを無視する] をオフにすると、ハイパーリンク タグを削除したことがエラーとして検出されます。後から考えれば簡単なことですが、訳文生成ができなくてあせっていた私には、なかなかのトラップでした。
ちなみに、3 つの検証機能 (QA Checker、タグ、用語集) の中で、タグ検証機能だけはロックされた分節を既定で無視しません。おそらく、ロックされた分節でもタグのエラーがあると訳文生成が失敗するので、ロックにかかわらず検証する設定になっているのだと思います。私自身、ロックされた分節内のエラーで訳文生成できないケースにたまに遭遇するので、この設定はありがたい場合もあります。
今回は以上です。この記事では、PowerPoint ファイルのハイパーリンク タグに注目しましたが、この他にもいろいろなケースがあると思います。Office 文書でもタグはいろいろですし、HTML や XML になればもっと種類が増えます。すみません、他のケースはまったく検証していないのですが、<xx> </xx> という形式のタグはすべて書式タグという認識ですかね。どうだろう。
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