2018年01月27日
1 つの文が複数の分節に分かれている場合の処理
Trados で作業していると、1 つの文が複数の分節に分かれる現象がかなり頻繁に発生します。Word の改段落、Excel のセル、PowerPoint のテキストボックスなど、いくつか原因はあるようですが、翻訳者にとってはあまり嬉しいことではありません。翻訳の作業がしにくくなるのはもちろんですが、分節が分かれた状態のまま、原文と訳文の内容が対応していないメモリが作られてしまうと、その後 100% マッチでヒットしてきた訳文がまったく使えないなど、あとあとまで影響が出ることになります。
翻訳料金はマッチ率によってレートが変わることが多いので、使えないメモリがヒットしてくると、翻訳者としてはとても困ります。100% マッチの料金なのに、新規翻訳しなければならない、というかなり悲しいことになります。
この「複数の分節に分かれる」ことへの対処方法は翻訳会社さんの方でもさまざまなようで、これまで私が受け取った作業指示にはいろいろなものがありました。そんな中から、今回は個人翻訳者の視点で「もっとも好ましい対処方法トップ 7」を紹介したいと思います。翻訳を依頼する側の視点で考えるとまた違うとは思いますが、今回はあくまで翻訳者の視点です!
翻訳者にとっての理想はまずこれです。分節が分かれてしまっていると、「分節が分かれている」と気付くまでに時間がかかり、それだけで作業の効率が落ちます。不要な「改段落」を削除するなど、少し手間をかけて前処理してくれれば Trados 上で分節が分かれる現象は防げます。
完璧な前処理が理想ではありますが、大量の文書になると難しいだろうことは翻訳者側からも想像がつきます。そこで、翻訳者側でも対応が必要になるわけですが、もっとも簡単な方法は Trados での分節の結合です。
結合する方法は簡単です。結合したい複数の分節を選択して、右クリックすると [分節の結合] が表示されるので、それを選択します。
Trados もいろいろ頑張ってくれてはいるようですが、「分節の結合」ができないケースは残ってしまうと思います。右クリックをしたときに [分節の結合] がグレーアウトされていたら、それらの分節は結合できません。あきらめて、次の対処方法に進みます。
「分節の結合」ができないときの対処方法として、翻訳会社から具体的な方法が指定されることがあります。ほとんどの場合は、「まとめて訳文を入力する」というものですが、ここで注意したいのは、どこの分節に訳文を入力するかです。
■例 1:最初の分節に訳文を入力する場合
■例 2:2 番目の分節に訳文を入力する場合
たとえば、上記の場合、例 1 のように最初の分節の「このファイルを、」という原文に対して「Add this file to the Temp folder.」という訳文を入力してしまうと、自動反映やチェックのときに面倒なことになります。できれば、例 2 のように、最初の分節は空白にし、2 番目の分節に訳文を入力したいです。こうしておけば、自動反映で、後続の「このファイルを、」に対して空白の訳文が入力されても問題ないですし、「原文にある英単語が訳文にも存在する」などのチェックをかけても、チェックが正常に機能します。
私は、作業指示で「最初の分節に」と明示されている場合はその指示に従いますが、特に明示されていない場合は、できるだけ意味的に中心となっている分節に、または自動反映の対象とならない分節に訳文を入力するようにしています。
明確な指示をしてくる翻訳会社さんは、後工程で何らかの処理をしている可能性があります。なので、「最初の分節に」と明示されていたら、それには従うのがよいでしょう。
訳文をどこに入力するかだけでなく、残りの分節をどうするかについても指示がある場合があります。たいていは、「◆◆◆」などのマーキングをするか、空白にするかのどちらかです。
「◆◆◆」などのマークを入力しておいた方が、後で検索しやすいので、私はこちらが好きです。空白の場合は、意図的に空白にしたのか、誤って空白になっているのかが後でわからなくなります。
具体的な作業指示をしてくる翻訳会社さんとは反対に、「特にルールはないので適当に」と依頼してくる翻訳会社さんもあります。
「適当に」訳文を入力して納品した場合、次の改訂翻訳などで「適当に」作られたメモリが付いてくる可能性が高いです。突発的な少量の文書など、メモリの再利用を考えていない場合は別ですが、メモリを再利用する可能性があるなら、「適当に」という指示はあり得ないでしょう。
以上、分節が分かれてしまっているときの対処方法でした。
上記以外の対処方法として、「なんとか原文に合わせて訳文を入力してください」と指示されたこともあります。ただ、これは翻訳者にとってはとても厳しいです。どうしても訳文が読みにくくなるうえに、その読みにくい訳文のために時間をかけているかと思うとやる気が削がれます。
さて、翻訳者の作業後、訳文を受け取った翻訳会社さんの方では、いろいろな後処理がされていることと思います。空白行や「◆◆◆」などのマークを手掛かりに、原文と訳文がきちんと対応したメモリを作るため、原文側の編集をしたり、何か整合ツールを使ったり、ときっと手間がかかっていることでしょう。(翻訳者としては、きちんとしたメモリが作られていると、とてもありがたいです )
それにしても、この現象、Trados もメモリも、ほんとっ面倒と思ってしまう大きな原因になってますよね〜。
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翻訳料金はマッチ率によってレートが変わることが多いので、使えないメモリがヒットしてくると、翻訳者としてはとても困ります。100% マッチの料金なのに、新規翻訳しなければならない、というかなり悲しいことになります。
この「複数の分節に分かれる」ことへの対処方法は翻訳会社さんの方でもさまざまなようで、これまで私が受け取った作業指示にはいろいろなものがありました。そんな中から、今回は個人翻訳者の視点で「もっとも好ましい対処方法トップ 7」を紹介したいと思います。翻訳を依頼する側の視点で考えるとまた違うとは思いますが、今回はあくまで翻訳者の視点です!
第 1 位:複数の分節に分かれないように完璧に前処理されている
翻訳者にとっての理想はまずこれです。分節が分かれてしまっていると、「分節が分かれている」と気付くまでに時間がかかり、それだけで作業の効率が落ちます。不要な「改段落」を削除するなど、少し手間をかけて前処理してくれれば Trados 上で分節が分かれる現象は防げます。
第 2 位:分節を結合する
完璧な前処理が理想ではありますが、大量の文書になると難しいだろうことは翻訳者側からも想像がつきます。そこで、翻訳者側でも対応が必要になるわけですが、もっとも簡単な方法は Trados での分節の結合です。
結合する方法は簡単です。結合したい複数の分節を選択して、右クリックすると [分節の結合] が表示されるので、それを選択します。
注記:Trados Studio 2017 の [段落を越えた分節の結合を無効にする] Trados Studio 2017 から、「改段落」で区切られていても分節を結合できる機能が追加されました。ただ、この機能はプロジェクトを作成するときに [段落を越えた分節の結合を無効にする] オプションなどがきちんと設定されていることが条件です。パッケージを受け取って作業する翻訳者側ではこのオプションを変更できません。つまり、プロジェクトの作成者が設定をしていない場合、翻訳者はこの機能を利用できません。 |
Trados もいろいろ頑張ってくれてはいるようですが、「分節の結合」ができないケースは残ってしまうと思います。右クリックをしたときに [分節の結合] がグレーアウトされていたら、それらの分節は結合できません。あきらめて、次の対処方法に進みます。
第 3 位:1 つの分節にまとめて訳文を入力する
第 4 位:最初の分節にまとめて訳文を入力する
第 4 位:最初の分節にまとめて訳文を入力する
「分節の結合」ができないときの対処方法として、翻訳会社から具体的な方法が指定されることがあります。ほとんどの場合は、「まとめて訳文を入力する」というものですが、ここで注意したいのは、どこの分節に訳文を入力するかです。
■例 1:最初の分節に訳文を入力する場合
■例 2:2 番目の分節に訳文を入力する場合
たとえば、上記の場合、例 1 のように最初の分節の「このファイルを、」という原文に対して「Add this file to the Temp folder.」という訳文を入力してしまうと、自動反映やチェックのときに面倒なことになります。できれば、例 2 のように、最初の分節は空白にし、2 番目の分節に訳文を入力したいです。こうしておけば、自動反映で、後続の「このファイルを、」に対して空白の訳文が入力されても問題ないですし、「原文にある英単語が訳文にも存在する」などのチェックをかけても、チェックが正常に機能します。
私は、作業指示で「最初の分節に」と明示されている場合はその指示に従いますが、特に明示されていない場合は、できるだけ意味的に中心となっている分節に、または自動反映の対象とならない分節に訳文を入力するようにしています。
明確な指示をしてくる翻訳会社さんは、後工程で何らかの処理をしている可能性があります。なので、「最初の分節に」と明示されていたら、それには従うのがよいでしょう。
第 5 位:まとめて訳文を入力し、残りの分節には「◆◆◆」を入力する
第 6 位:まとめて訳文を入力し、残りの分節は空白にする
第 6 位:まとめて訳文を入力し、残りの分節は空白にする
訳文をどこに入力するかだけでなく、残りの分節をどうするかについても指示がある場合があります。たいていは、「◆◆◆」などのマーキングをするか、空白にするかのどちらかです。
「◆◆◆」などのマークを入力しておいた方が、後で検索しやすいので、私はこちらが好きです。空白の場合は、意図的に空白にしたのか、誤って空白になっているのかが後でわからなくなります。
第 7 位:「適当に」済ませる
具体的な作業指示をしてくる翻訳会社さんとは反対に、「特にルールはないので適当に」と依頼してくる翻訳会社さんもあります。
「適当に」訳文を入力して納品した場合、次の改訂翻訳などで「適当に」作られたメモリが付いてくる可能性が高いです。突発的な少量の文書など、メモリの再利用を考えていない場合は別ですが、メモリを再利用する可能性があるなら、「適当に」という指示はあり得ないでしょう。
以上、分節が分かれてしまっているときの対処方法でした。
上記以外の対処方法として、「なんとか原文に合わせて訳文を入力してください」と指示されたこともあります。ただ、これは翻訳者にとってはとても厳しいです。どうしても訳文が読みにくくなるうえに、その読みにくい訳文のために時間をかけているかと思うとやる気が削がれます。
さて、翻訳者の作業後、訳文を受け取った翻訳会社さんの方では、いろいろな後処理がされていることと思います。空白行や「◆◆◆」などのマークを手掛かりに、原文と訳文がきちんと対応したメモリを作るため、原文側の編集をしたり、何か整合ツールを使ったり、ときっと手間がかかっていることでしょう。(翻訳者としては、きちんとしたメモリが作られていると、とてもありがたいです )
それにしても、この現象、Trados もメモリも、ほんとっ面倒と思ってしまう大きな原因になってますよね〜。
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