今回は、エディタ上のフォントについてです。Trados のエディタ上のフォントを見やすいものに変更しようと思って私はかなり悩んだことがあります。悩んで解決できればよかったのですが、結局、無理そうだなぁということがわかっただけでした。現在のところの私の理解としては、パッケージを受け取る翻訳者は Trados の仕様と諦めるしかなく、可能性のある解決策としてはパッケージを作る翻訳会社さん頼み、という感じです。
Trados では、フォントに関する設定がいくつかあります。
- @ [ファイル > オプション] の
[エディタ] > [フォントの調整] > [ユーザー設定の言語フォント] - A [ファイル > オプション] の
[エディタ] > [並列型エディタ] > [書式の表示スタイル] - B [プロジェクトの設定] の
[ファイルの種類] > [<該当の種類>] > [フォント マッピング]
[ファイル > オプション] と [プロジェクトの設定] の違いなどについては、以前の記事「Trados の設定を変えるには − [ファイル] と [プロジェクトの設定]」をご覧ください。
上記 3 つの設定の機能を簡単にまとめると、以下のようになります。
- エディタ上のフォントは、@「ユーザー設定の言語フォント」で設定できる。
- ただし、@の設定を有効にするには、A「書式の表示スタイル」を「書式を表示せずにタグを表示する」にする必要がある。
- B「フォント マッピング」はエディタ上のフォントには影響しない。
まずは、@「ユーザー設定の言語フォント」を設定する
設定の場所: [ファイル > オプション] の [エディタ] > [フォントの調整] > [ユーザー設定の言語フォント]
エディタ上のフォントを変えたい場合、まず設定するのは@「ユーザー設定の言語フォント」です。上図の 2 つのドロップダウンリストで、言語(「Japanese (Japan)」や「English (United States)」)と、それぞれのフォントを設定します。
ちなみにこのドロップダウンリストですが、私の環境では最初の表示が必ず「Bislama」という言語 (おそらく、アルファベット順で最初にくる言語) になります。日本語や英語のフォントを設定しても、とにかく最初は Bislama です。私は設定がうまくできていないのではないかと思って何回も設定を繰り返してしまいました。Bislama が表示されても、[言語] リストから言語を選択して、[フォント]リストに、設定したフォントが表示されてくれば大丈夫です。設定されています。
A「書式の表示スタイル」を変える必要がある
設定の場所: [ファイル > オプション] の [エディタ] > [並列型エディタ] > [書式の表示スタイル]
@「ユーザー設定の言語フォント」を設定しても、エディタ上のフォントが変わらないことがあります。それは、A「書式の表示スタイル」が原因です。
A「書式の表示スタイル」には、上図のように 3 つのオプションがあります。@で設定したフォントを有効にするには「書式を表示せずにタグを表示する」にする必要があります。3 つのオプションの文言をよ〜く読んでみるとわかりますが、「書式を表示する」にしたら、当然既定のフォントは使われないので、「書式を表示しない」にする必要があります。
理屈はわかります。タグで設定されている書式が優先という仕様はもっともです。でも、日英翻訳の場合、P明朝などの日本語フォントで表示される英文はとにかく読みにくいのです!!
私は、普段は「書式を表示せずにタグを表示する」を使用しています。これなら、@「ユーザー設定の言語フォント」で設定したフォントが使われます。でも、カラフルな文字が並ぶ PowerPoint や、一部のセルだけ太字になっている Excel など、書式が重要な場合はどうしても「すべての書式とタグを表示する」にする必要があります。そしてこのオプションでは、原文で日本語フォントが設定されていると英文にもそれが適用されてしまうので、ものすごく読みにくいフォントで英文を編集することになります。
B「フォント マッピング」はエディタ上のフォントには影響しない
設定の場所: [プロジェクトの設定] の [ファイルの種類] > [<該当の種類>] > [フォント マッピング]
なんとかならないかと思って試した設定が「ファイルの種類」から設定するB「フォント マッピング」です。結論からいうと、これはエディタ上のフォントには影響しません。この設定を変えても、エディタ上のフォントは変わりません。
では、この設定は何なのかというと、訳文生成や外部プログラムでプレビューするときなどに影響するようです。つまり、B「フォント マッピング」を設定すれば、「訳文のみで保存」(Shift+F12) や「訳文の表示」(Ctrl+Shift+P) で表示される訳文のフォントが変わります。
ただ、複数のフォントが使われている場合、すべてのフォントを設定するのは面倒です。「All Fonts」という設定もありますが、これにすると余計なところまでマッピングが適用されてしまうことがあります。
さらに、この設定は「プロジェクトの設定」の「ファイルの種類」から行いますが、「ファイルの種類」の中の設定は翻訳会社さんが既に何らかの設定を行っている可能性があります。そして、まだ Studio になる前の 2007 の頃の話ですが、この辺りの設定を翻訳者側で勝手に変えると訳文生成ができなくなるという苦〜い経験があり、パッケージを受け取って作業するようになった今でもなんとなく恐ろしいので、私はこの辺りの設定はさわらないようにしています。(QuickInsert だけはさわります。)
というわけで、設定も面倒だし、動きもよくわからないし、何か問題があっても困るし、という感じで、パッケージを受け取って作業する場合、B「フォント マッピング」の使用はあまり現実的ではありません (と、私は考えています)。
結局は、翻訳会社さんでの前処理頼み
ここまで長々と書いてきましたが、エディタ上で日本語フォントが適用されてしまうこの現象は、実は、すべてのファイルで発生するわけではありません。Office 文書の場合、たいていは、1 つの文書の中で日本語用フォントと英数字用フォントが別々に設定されています。きちんと別々に設定されていれば、A「書式の表示スタイル」を「すべての書式とタグを表示する」にしても、エディタ上で英文に日本語フォントが適用されることはなく、ちゃんと見やすい表示になります。
ただ、日本語で文書を書く方は、英数字にも日本語フォントを設定している場合があります。Word の場合はともかく、Excel の場合は、フォントの設定が少し面倒なので※1、すべてが日本語フォントになっているケースがかなりの頻度であります。
翻訳会社さんは、最終的に訳文をお客様に納品するときにはおそらくフォントを変えるでしょうから、パッケージを作る前に、原文に英数字用フォントをちょっと設定してくれればいいのに〜と思ってしまいます。もちろん、複数のフォントがあったら手間がかかるかもしれないし、一刻も早くファイルを渡したいとか、後で一括で処理した方が効率的とか、いろいろ事情はあると思います。でも、翻訳者がどのような環境で作業することになるのか、ちょっと考えてもらえるととても助かるんですよね。きっと、見やすさの面だけでなく、翻訳者の精神安定の面からも品質に影響があると思います (_ _)
※1: Excel の場合、日本語と英数字で別々のフォントを設定するには「テーマ」を使う必要があります。でも、Excel で作られている文書は、たいてい社内向けの仕様書などなので、「テーマ」まで使って体裁が整えられていることはあまりない気がします。
タグ:[ファイル] からの設定 プロジェクトの設定 すべての書式とタグを表示する 書式を表示せずにタグを表示する 書式の表示スタイル フォント マッピング ユーザー設定の言語フォント トラブルシューティング
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