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昔は「Trados さん、頑張って!」とお祈りしながら訳文生成していませんでしたか? 今も、たまにそんな気分になるときがあります。Trados って本当にわからないことばかりです。特に、日本語の情報は少ないですよね。いくら翻訳者とはいえ、日本語の情報が欲しいのです。Trados ユーザーの方々といろいろ情報交換できたらと思っています。




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posted by fanblog

2021年09月13日

【前編】Xbench を便利に使う

今回は、このブログでも何回か登場している Xbench を取り上げたいと思います。このツールはとても便利ですが、私は設定に毎回かなりの手間をかけて使っています。なんとかスムーズに使える方法はないかと考えてはいるのですが、あまり良い方法が思いつきません。ここでは、Trados と Xbench で私がどんな面倒なことをしているかを披露しますので、何かアドバイスがありましたら、ぜひぜひお知らせください。

Xbench とは?


Xbench は、さまざまな翻訳ファイルの検索とチェックを便利に行えるツールです。バージョン 2.9 が無料で提供され、バージョン 3.0 からは有料 (年間 99 ユーロのサブスクリプション) です。このツールは既にいろいろなところで取り上げられているので、概要などについては以下のサイトを参考にしてください。


翻訳を効率的に行う秘訣〜Xbench編〜 | 翻訳会社川村インターナショナル

Xbench の概要がまとめられています。Xbench ってなに? という方は、まずこちらを参照してください。


※※※※※ 最近の参考サイトを追加しておきます 2022/05/10 ※※※※※※※※※※※※※※※
Xbench の基本的な説明については、以下のサイトなども参考にしてください。

Xbench という翻訳作業を効率化するソフトウェアについて | 翻訳メシ
Xbench の概要がとてもわかりやすくまとめられています。

プロ翻訳者必携!Xbenchの活用方法について | ストラテ

※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※


フクログ フリーランスで翻訳&ライティング

Xbench の購入方法から詳しく説明されています。主に、有料版 (V3.0) についての説明です。


Xbenchのつぼの記事一覧 | つぼログ。 | 横浜で翻訳業務を行うシーブレインスタッフによる技術情報ブログ

初期設定から各種機能までいろいろ紹介されています。ただ、少し日付が古いので無料版 (V2.9) に該当する内容も含まれています。


無料版 (V2.9) と有料版 (V3.0)


Xbench は以前は無料で使えるツールでした。その無料で使えていたバージョンが 2.9 で、その後の新しいバージョンは有料になっています。私は、無料のバージョン (V2.9) を使い続けています。この V2.9 を使用していることが、手間が増える原因のひとつだとわかってはいるのですが、私は数か月単位でオンサイト勤務になることもあり、なかなか購入には踏み切れません。私が感じている V2.9 の問題点としては、以下のようなものがあります。

 ・正規表現が日本語に対して機能しない
 ・QA の CamelCase Mismatch と ALLUPPERCASE Mismatch を有効にできない
 ・Memsource や memoQ のファイルに対応していない
 ・Xbench の QA 結果から Trados の該当箇所に直接飛ぶことができない

Memsource や memoQ については、xliff ファイルとして読み込むことはできるのですが、私が試した限り、あまりうまく機能しません。

また、V2.9 は Trados のプラグインにも制限があります。Trados では Xbench 向けに ApSIC Xbench PluginXbench 2.9 Plugin という 2 つのプラグインが提供されていますが、前者は V3.0 以上でないと使えません。後者はその名前のとおり V2.9 で使用できますが、機能は前者に比べると限られているように見えます。(私は後者のプラグインを使用しているので、これについては後で説明します。)


Xbench を使う目的 ― 主に検索に使う


Xbench を使用する目的は、上記に挙げたサイトでも説明されているとおり、主に検索とチェックです。私は、どちらかといえば、検索に使用することの方が多いです。Trados はメモリや用語ベースの検索機能が貧弱ですが、Xbench を使えば、翻訳中のファイル、メモリ、用語ベースを一気に検索できます。

チェック機能も便利ですが、私は Trados の検証機能をメインに使い、Xbench は補助的に使っています。Trados も Xbench も自作の検証ルールを登録できますが、ルールが 2 つのツールに分散してしまうと不便なので、私はルールの登録は Trados だけにしています。

検索とチェックの具体的な方法は後編で説明することとして、まずは、そのための準備の方法を説明したいと思います。この準備がなかなか面倒です。


Xbench の設定方法 ― 使うまでの準備


Xbench を使うには、まず「プロジェクト」を作成し、使用するファイルをそこに登録する必要があります。今回の前編では、このプロジェクトの設定を完了するところまでを説明します。


前提条件

・Xbench 2.9 (無料版)
・Trados Studio 2021 SR1


使用するプラグインとアプリ

Xbench 2.9 Plugin (プロジェクトの作成と、翻訳ファイルの登録に使用)
SDLTMExport (メモリの変換に使用)
Glossary Converter (用語ベースの変換に使用)

上記の 3 つを事前にインストールします。Trados 2021 の場合は、[ようこそ] > [RWS AppStore] から簡単にインストールできます。Xbench 2.9 Plugin はプラグインなので、Trados 内に組み込まれます。SDLTMExport と Glossary Converter はアプリなので、Trados とは別の独立したアプリケーションとしてインストールされます。

Glossary Converter については、RWS 公式のブログ「Glossary Converter – Excelから用語ベースおよびTMXへの変換」も参照してください。インストール方法などから説明されています。また、私の以前の記事「マイクロソフトの用語集を使いたい 【前編】【後編】」でも説明しています。


準備の手順

準備の主な手順は、以下のようになります。プロジェクトを作成してから、翻訳ファイル、メモリ、用語ベースの 3 つを準備します。

 1. プロジェクトを作成して、翻訳ファイルを登録する
 2. メモリをテキスト形式に変換して登録する
 3. 用語ベースをテキスト形式に変換して登録する

では、手順を順番に見ていきましょう。


1. プロジェクトを作成して、翻訳ファイルを登録する


まずは、Xbench のプロジェクトを作成します。この操作に Xbench 2.9 Plugin を使用します。このプラグインはプロジェクトの作成と翻訳ファイル (sdlxliff ファイル) の登録までを自動で行ってくれます。



(1) Trados 上で、作業対象のプロジェクトを選択し、[アドイン] > [Check with Xbench 2.9] をクリックします。


84_1.png



(2) Xbench のプロジェクトが自動的に作成されます。

プラグインのアイコンをクリックするだけでプロジェクトが自動的に作成されます。もし、ファイルの種類を選択するような画面が表示されたら、[Trados Studio File] を選択します。


84_1_2.png


Trados のプロジェクト ファイル (.sdlproj) と同じ場所に、<Trados のプロジェクト名>.xbp というファイルが作成されます。この xbp ファイルが Xbench のプロジェクト ファイルです。ここに、Xbench のさまざまな設定をしていきます。



(3) 翻訳ファイル (sdlxliff) が登録されていることを確認します。

Xbench で、[Project] > [Properties] と選択します。ここに、そのプロジェクトに登録されているファイルが一覧されます。Trados のプロジェクト内の sdlxliff ファイルが登録済みになっているはずです。


84_1_3.png


これで、Xbench のプロジェクトの作成と、翻訳ファイルの登録は完了です。



2. メモリをテキスト形式に変換して登録する


次にメモリを登録します。メモリは、sdltm ファイルのままでは登録できないので、テキスト形式の tmx ファイルに変換します。



(1) SDLTMExport を使ってメモリをテキスト形式 (tmx) に変換します。

SDLTMExport を起動すると、下図のような画面が表示されます。ここに sdltm ファイルをドラッグ & ドロップして、[Export] をクリックします。これで、元の sdltm ファイルと同じ場所に tmx ファイルが作成されます。複数のファイルを同時にドラッグ & ドロップすることもできます。


84_2.png



(2) 変換したメモリを Xbench のプロジェクトに登録します。

Xbench で [Project] > [Properties] と選択して、[Add] をクリックします。下図の画面が表示されるので、[TMX Memory] を選択して [Next] をクリックします。


84_3.png


下図の画面が表示されたら、変換した tmx ファイルを指定します。 [Add File] は、ファイルを 1 つずつ登録します。[Add Folder] は、複数のファイルをフォルダー単位で一括登録します。


84_4.png


[Add Folder] を使って登録すると、優先度などをそのフォルダー単位でしか設定できなくなります。ファイルごとに優先度などを変えたいときは、[Add File] を使って 1 つ 1 つ指定してください。参照したいメモリをすべて登録したら、完了です。



3. 用語ベースをテキスト形式に変換して登録する


最後に用語ベースを登録します。用語ベースも sdltb ファイルのままでは登録できないので、まずテキスト形式に変換します。用語集のテキスト形式として使用できるものはいくつかあり、カンマ区切りやタブ区切り、MultiTerm の XML 形式、TBX 形式などがあります。

Excel ファイルとして用語集が提供されているときは、カンマ区切りかタブ区切りに変換するのが便利です。ただ、この場合は、「英語」や「日本語」といった言語の属性がなくなり、単純に 1 列目が原語、2 列目が訳語となります。

Trados の用語ベース (sdltb) は、言語などの属性がせっかくあるので、MultiTerm の XML 形式か、TBX 形式に変換します。どちらでも大差ないですが、私は TBX 形式をよく使います。なぜなら、私の経験上、Glossary Converter で作成される XML ファイルは Xbench でうまく処理されないことが多いからです (理由はよくわかりません)。

XML 形式に変換するときは、Glossary Converter ではなく、Trados に付属の Multiterm Convert を使います。Multiterm Convert で作成した XML ファイルは Xbench で正常に処理できます。ただ、Multiterm Convert ではドラッグ & ドロップで一括変換といったことはできないので、Glossary Converter に比べると手間がかかります。


※※※※※ 追記 2023/07/03 ※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
すみません、実は、原語の訳語の組み合わせが 1 対 1 になっていない用語ベースの場合、Glossary Converter で変換した TBX ファイルは Xbench (無料版) で正常に検索できないことに、今さらですが気付きました。詳しくは、こちらの記事「Xbench と TBX ファイル」を参照してください。ホント今さらで、すみません。
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※


では、具体的な手順を見ていきます。メモリと同様、変換して、登録しますが、用語ベースの場合は、その後で少し設定が必要です。



(1) Glossary Converter を使って用語ベースをテキスト形式 (tbx) に変換します。

Glossary Converter を起動したら [settings] をクリックして、[General] タブの [TBX (Term Base eXchange)] を選択します。([TBX (Term Base eXchange V3)] というオプションもありますが、すみません、これは新しいオプションのようで、私は使ったことがありません。)


84_5.png


上記の設定をしたら、変換したい用語ベース (sdltb) ファイルをドラッグ & ドロップします。複数のファイルをまとめてドラッグ & ドロップしても大丈夫です。



(2) 変換した用語ベースを Xbench のプロジェクトに登録します。

Xbench で [Project] > [Properties] と選択して、[Add] をクリックします。下図の画面が表示されるので、今度は [TBX/MSRTIF Glossary] を選択して [Next] をクリックします。


84_6.png


用語ベースの場合は、[Add File] のみ有効で、[Add Folder] は使用できません。フォルダー単位ではなく、ファイル単位で 1 つ 1 つ追加する必要があります。(ただ、メモリの場合も同様ですが、[Add File] のファイル選択画面で複数のファイルを一気に選択することはできます。)



(3) 原語と訳語の設定をします。

ファイルを追加して、画面の指示に従って操作していくと、Special Settings についてのプロンプトが表示されるので、そこで言語の設定をします。以下のような画面です。


84_7.png


[Source] と [Target] に表示される言語の名前は、各用語ベースで設定されているものです。上図に表示されている「en-US」に限らず、「English」や「英語」だったり、「Source」や「原語」だったりと、用語ベースによってさまざまです。Xbench の検索で用語ベースがヒットしてこないときは、この言語の設定が間違っていることがよくあります。



(4) Key Terms に指定します。

用語集は、検索結果でメモリや翻訳ファイルと区別したいことが多いので「Key Terms」として指定します。


84_8.png


Key Terms として設定しておくと、星マークが付き、検索結果でも他と区別されるので便利です。ちなみに、この画面の [Properties] ボタンをクリックすると、上記の言語の設定画面を再表示できます。

これで、プロジェクトの設定はひとまず完了です。最後に保存ボタンをクリックしてプロジェクトを保存します。細かい設定はまだありますが、それは後編で触れたいと思います。


今回は以上です。ずいぶん長い記事になってしまいました。新しい仕事が始まるたびにこの設定をするのは相当な手間ですが、それでも Xbench は便利です。後編は、もう少しお待ちくださいませ。





  



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