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昔は「Trados さん、頑張って!」とお祈りしながら訳文生成していませんでしたか? 今も、たまにそんな気分になるときがあります。Trados って本当にわからないことばかりです。特に、日本語の情報は少ないですよね。いくら翻訳者とはいえ、日本語の情報が欲しいのです。Trados ユーザーの方々といろいろ情報交換できたらと思っています。




2018年04月28日

提供された訳文と自分の訳文を区別する ー @ メモリを分ける

翻訳会社さんからのお仕事では、既訳のメモリを提供され、料金はそのメモリとのマッチ率で割り引かれる、ということが多いと思います。そのような場合、私がとにかく気を付けているのは「提供された訳文と自分の訳文を区別しておく」ことです。

具体的には、次の 2 つのことを行います。

  1. 提供されたメモリは更新せず、自分の訳文は別のメモリに保存する。
  2. ヒットしてきた訳文が、どのメモリのものなのかひと目でわかるようにする。


この記事では、1 つ目の「提供されたメモリは更新せず、自分の訳文は別のメモリに保存する」方法を紹介します。2 つ目については、また次の記事で取り上げたいと思います。


まず、翻訳会社さんからメモリを提供された場合、そのメモリは更新せず、そのままとっておく方が安全です。後になってから、もともとの訳文を見たいと思うことはよくあるので、自分の訳文で更新してしまうのは避けたいところです。

じゃあ、自分の訳文はどうするかというと、別のメモリを作成してそこに保存するようにします。

     注記: 一部の翻訳会社さんのパッケージには「プロジェクト用メモリ」が設定されている場合があります。プロジェクト用メモリは、まさに、「自分の訳文をメインメモリとは別に保存する」ということをやってくれるのだと思いますが、私は、この「プロジェクト用メモリ」の動きがどうも理解できず、、、 結局、「プロジェクト用メモリ」が設定されていても、新たにメモリを作り、自分の訳文はそちらに保存するようにしています。


では、手順を説明しましょう。

1. 新しいメモリを作成する


17-1.png

まず、自分のメモリを保存するための新しいメモリを作成します。[プロジェクトの設定] -> [言語ペア] -> [翻訳メモリと自動翻訳] と選択して、メモリの設定画面を表示します。 [作成] -> [翻訳メモリの作成] をクリックして、表示された画面の指示に従ってメモリを作成します。いろいろ設定はありますが、とりあえず、画面の指示に従ってそのまま作成します。

新しく作成したメモリは、リストの最後に表示されます。このリストの順序はメモリの検索順序に影響します。一番上にあるメモリが最初に検索されるので、提供されたメモリを上に、自分のメモリは下に置いておくのがいいと思います。


2. 更新するメモリを設定する


メモリを作成したら、[更新] 列で、作成した自分のメモリだけをチェックし、ほかのメモリはチェックを外します。

17-2.png

これで、エディタで入力した訳文は「自分のメモリ.sdltm」だけに登録され、提供されたメモリには何の変更も加えられないことになります。

翻訳会社さんによっては、この状態まで設定したうえでパッケージを送ってきてくれることがあります。その場合、自分でメモリを作成する必要はないので、すぐに作業を開始できます。(助かります!)

また、翻訳会社さんからのパッケージでは、たまに、どのメモリにも [更新] のチェックが入っていないことがあります。翻訳会社さんはバイリンガル ファイルさえあればメモリはいらないので、「いずれのメモリも更新しない」という設定にしてくるのもわからなくはありません。ただ、作業を進めてしまってから、訳文がメモリに登録されていないことに気づくとちょっと悲しいので、更新されるメモリが設定されているどうかを作業前に確認しておくことをお勧めします。


3. ペナルティを設定する


[更新] のチェックさえ設定すれば作業を開始できますが、必要に応じて [ペナルティ] を設定しておくと便利です。このペナルティは、メモリのマッチ率を差し引くペナルティです。メモリごとに設定できるので、「特定メモリからのヒットについてはマッチ率を下げる」ということができます。

17-3.png

私は、自分のメモリにはペナルティ「1」を設定することが多いです。このようにしておくと、自分のメモリからのヒットがエディタ上で 100% マッチやコンテキスト マッチとなることを避けられます。

100% マッチやコンテキスト マッチは「作業対象外で!」と指示されることがあると思いますが、エディタ上で自分のメモリからのヒットが「100%」や「CM」と表示されてしまうと、どこが作業対象外だったのかわからなくなってしまいます。また、「作業対象外」でないとしても、提供されたメモリとの 100% マッチと、自分の訳文との 100% マッチでは、まったく意味が違ってきます。提供されたメモリとの 100% マッチなら、まあ軽く見直す感じですが、自分の訳文のときはそうはいかないですよね。

作業対象外の分節については、あらかじめロックしてきてくれる翻訳会社さんもありますが、なかなかそんな会社さんばかりではありません。Trados のデフォルト設定では、完全一致はロックがかかりますが、100% マッチとコンテキスト マッチはロックがかかりません。そのためか、「100% マッチとコンテキスト マッチは作業対象外だけどロックされていない」という状態のパッケージを受け取ることがたまにあります。(翻訳者としては、この状態はとても困ります。)

安全のため、ロックを使用する方が私は好きですが、ロックはマッチ率以外の条件で使用されることもあり、パッケージを受け取った翻訳者が勝手にロックをかけるわけにはいかない場合もあります。そのようなときでも、このペナルティを設定しておけば、自分の作業中に 100% マッチやコンテキスト マッチが新たに発生することがないので安心して作業できます。


今回は、以上です。メモリの作成は慣れてしまえばとても簡単です。ちょっとひと手間ではありますが、あとあとのことを考えると、やはり自分用のメモリを作成して作業するのが安全かと思います。

次回は、2 つ目の「ヒットしてきた訳文が、どのメモリのものなのかひと目でわかるようにする」方法を紹介したいと思います。これも、設定の手間はかかりますが、私はとても便利に感じています!











2018年04月22日

Trados の正規表現は .NET です

Trados では、検索、フィルタ、QA Checker など、正規表現を使うことがよくあります。私は、どなたかが書いてくれたものを拝借することが多いのですが、最近になってようやくヘルプを調べて、.NET だということを知りました。

14.png


.NET なんですね。Perl でも、Java でもないですよ。ましてや、秀丸なんかでも当然ありません。

ちなみに、参照先として記載されている「正規表現」のリンクをクリックしても、.NET の説明のページにジャンプできるわけではありません。リンク先は、http://www.regular-expressions.info/reference.html で、正規表現全般を説明するページです。確かに、少し下にスクロールすると .NET 構文へのリンクもあるにはありますが、、、


私は、.NET 構文のリファレンスとして以下のページを使っています。

正規表現言語 - クイック リファレンス
https://docs.microsoft.com/ja-jp/dotnet/standard/base-types/regular-expression-language-quick-reference

これは、マイクロソフトの日本語ページです。マニュアル翻訳者として見るとツッコミどころ満載のページではありますが、タイトルのとおり、「クイック リファレンス」としては役立ちます。

正規表現が初めてという方は、このページを見ても何がなんだかよくわからないと思います。ただ、正規表現を一応理解したうえで、「あの表現、どうやって書くんだっけ?」と調べる用途には使えます。

私は、.NET 構文だとわかったところで、正規表現をすらすらと書けるわけではないのですが、まあなんとか頑張りたいと思います。



 


2018年04月19日

意外と使える「印刷プレビュー」

Trados で作業する場合、私は、翻訳後のチェック作業として、なんとか Trados のエディタ以外で訳文を表示して読み返すようにしています。よく使うのは、訳文生成やプレビューの機能ですが、これらの機能は、ファイルの種類やバージョン、その他よくわからないエラーなどの都合で、使えないことがよくあります。

で、最近になって存在を知ったのが「印刷プレビュー」です。これは、エディタの画面を印刷するときのイメージをブラウザーでプレビューするという機能です。「印刷プレビュー」という名前ではありますが、意外といろいろな機能が揃っていて便利です! エディタの画面の印刷イメージなので、レイアウトの再現性はほとんどありませんが、「Trados のエディタ以外で訳文を表示する」という目的は果たせます。

以下の方法で表示できます。
メニュー選択:[ファイル] -> [印刷 & 表示] -> [印刷プレビュー]
ショートカットキー:Ctrl+P

13-1.png

たとえば、こんな感じで表示されます。

原文の Word 文書
13キャプチャ.PNG



ブラウザーに表示された「印刷プレビュー」
  13-3.png

どうですか?? 意外ときれいに表示されると思いませんか?
Word の場合は、文字のサイズや色、書式設定 (下線と太字は ○、斜体は ×) などがある程度再現されます。

さらに、右上端の [オプション] を開くと、以下のような設定ができます。

  13-4.png

[訳文の出所の表示]
このチェックを外すと、カラーキーで設定されている色が表示されなくなります。より原文に近い表示になるので、マッチ率が関係ないときはチェックを外します。チェックを外してもロックされている分節はグレー背景のままです。

[テキストのみ表示] と [タグの表示]
タグを表示するかどうかの設定です。一部の書式設定タグは、書式としては再現されませんが、[タグの表示] を選択すればタグとして表示されるので、それで確認することもできます。

[カラーキー]
マッチ率によってカラーリングされます。ここにはリストされていませんが、100% マッチもコンテキストマッチと同じ緑色で表示されます。また、100% マッチやコンテキストマッチでも、編集を加えた分節は、インタラクティブ翻訳 (?) として黒色で表示されます。

なんだか、とても「印刷プレビュー」とは思えない充実ぶりです。

メリット

速い − 訳文生成などはしないので、とにかくすぐに表示されます。
・ファイルの種類を選ばない − エラーなどで訳文生成できないファイルでも表示されます。
分節ごとではなく、パラグラフごとに表示される − これは、訳文をチェックする段階ではかなり重要です。エディタでは分節ごとに枠線が入るので、どうしても分節単位で訳文を読んでしまいますが、枠線がなくなるだけで、なんとなく全体を通して読めるようになります。

デメリット

表、図など、レイアウトはほとんど再現されない − 表は再現されません。PowerPoint などの場合は、ちょっと厳しいかもしれないです。
毎回、新しく表示され、カーソルが先頭に戻る − エディタでどこを編集していたかにかかわらず、プレビューは必ずカーソルが先頭にある状態で表示されます。大きい文書のときは該当箇所を探すのにひと手間かかります。
変更履歴は履歴付きで表示される − 履歴付きの状態で表示されます。変更後のテキストだけを表示することはできません。

以上です。最近まで、私はこんな機能があることを知らず 、、 見つけたときはちょっとびっくりしました。Trados では、訳文生成やプレビューができない!ということがよくあるので、そんなときの最終手段として「印刷プレビュー」は役立ちそうです。