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2018年07月06日
カウント表をよく確認しよう ― その A
前回に引き続き、カウント表の確認ポイントです。まだまだ、難解というか不可解というか、いろいろな設定があるので、注意しながら見ていきたいと思います。

4 つ目は「ロックされた分節」です。私のこれまでの経験では、この設定が間違っていることが一番多いように思います。
通常、この設定は「はい」で、ロックされた分節を別にカウントします。実際の仕事では、「ロックされている分節は作業対象外で!」と指示されることが多く、ロックとしてカウントされた部分は 0 円となります。まあ、ロックされているので明確ですし、作業対象外と言われればその指示に従うしかありません。
ただ、Trados のデフォルト設定は「いいえ」のようなんです。なので、間違えてロック部分もカウントに含まれていることがたまにあります。カウント数が増えるので、間違っていたらラッキー!なんて考えてはいけません。この設定が間違っていた場合、翻訳会社さんは必ず訂正してきます。たとえ発注書が発行された後でも、あるいは作業を開始した後でも訂正してきますよー。(私も何回かそんなことがありました。)
ロックされているので作業はしないですし、料金が支払われないのは当然ですが、作業の直前や作業の開始後の訂正は翻訳者としてはとても困ります。たとえば、翻訳会社さんから「当初の打診の時点では 10,000 ワードとお伝えしていましたが、実際にファイルを見てロック部分を除外してみたら 5,000 ワードでした」と言われると、10,000 ワード分の時間を確保していたのに!!余った時間はどうすれば??という事態になります。
この設定では、もう 1 つ注意点があります。

前回の記事で紹介した設定も含め、ファイルの解析のオプションは [プロジェクトの設定] -> [言語ペア] -> [一括処理] -> [ファイルの解析] から設定できます。この設定画面には、ロックされた分節に関するオプションが 2 つあります。
@ ロックされた分節を別に分類して報告する
A ロックされた分節を解析対象から除外する
@ の「別に分類して報告する」を選択すると、解析レポートに「ロック済み」という欄が増え、そこにカウント数が表示されます。そして、レポート上部のオプションの一覧には「ロックされた分節を別に分類して報告する: はい」と表示されます。
A の「解析対象から除外する」を選択すると、解析レポートではロックされた分節のカウント数は除外され、どこにも表示されません。そして、レポート上部のオプションの一覧にも、このオプションについての表示はありません。本当に、すべてから除外されるんです! 「ロックされた分節を別に分類して報告する」の表示は、A の設定に関係なく、@ が選択されていない限り「いいえ」になります。
つまり、A の「解析対象から除外する」が選択されていても、解析レポート上ではそのことがわかりません。この「解析対象から除外する」のオプションは最近追加されたのでしょうか。私がこのオプションに気づいたのは最近です。解析レポートで「ロックされた分節を別に分類して報告する: いいえ」となっていても、翻訳会社さんに連絡する前に、一応「解析対象から除外する」オプションを確認してみましょう。

さて、最後のポイントは「単語単位のトークン化」です。これは、SDL Trados 2017 SR1 以降で、原文が日本語か中国語のときに関係してきます。原文が英語のときは気にする必要がないので、解析表にこのオプションは表示されてきません。
この設定は、単語ベースで解析するか、文字ベースで解析するかの選択ですが、詳細については、SDL のこちらのブログが参考になります。このブログの最後に「以前の解析方法(文字ベース)と新しい解析方法をユーザーが選択できるような仕組みを開発中です」とありますが、これで開発されたのがこの設定だと思います。
通常、これは「いいえ」です。原文が日本語の場合、料金は一般的に文字単価で計算されるので、当然ながら解析も文字ベースであるべきです。単語ベースで一致率を計算して、そこに文字単価を適用するとおかしなことになります。
ただ、上記のブログにもあるように、この設定は初期の SR 1 にはありませんでした。翻訳会社さんの使っている Trados のバージョンによってはこの設定がなく、単語ベースの解析が行われている可能性があります。(が、なかなか、翻訳者としてはそこまで確認しにくいですね〜)
自分でカウントする場合、この設定は「プロジェクトの設定」から行います。[プロジェクトの設定] の最初の画面 [プロジェクト] で、[原文がアジア言語の場合に単語単位のトークン化を使用する] チェックボックスをオフにします。(デフォルトでオフのようです。)

この設定が、解析結果だけでなくプロジェクト全体に何か影響するのかはちょっと不明です。これをオフにすると、解析レポートの「単語単位のトークン化を使用する」は「いいえ」になります。その状態でも、upLift の機能であるフラグメント一致などは有効に機能する気がします。
なお、プロジェクトの設定やファイルの大きさによるかもしれませんが、「単語単位のトークン化を使用する」がオンになっているとファイルの解析にかかる時間が異常に長くなることがあります。ファイルの解析は、もともと少し時間のかかるタスクですが、この時間がさらに長くなります。(私は、20 分以上かかったことがあり、失敗したぁと思いました。)
※※※ 追記 2018/11/21 ※※※
この設定をオンにすると処理時間が長くなるのかと思っていたのですが、これをオンにしなくても処理時間は長くなることがあります。フラグメント一致のカウント数は料金に関係しないので、この機能なしでカウントできればいいのですが、、、
※※※※※※※※※※※※※※※

最後に、私があえてあまり気にしないようにしているポイントを挙げておきます。それは、上記の図に赤枠で示した各種のペナルティです。
数字がうまく変換されないとか、書式が違ったら文のスタイルも違ってくるとか、タグが挿入されてこないとか、複数の選択肢があったら困るとか、翻訳者としてはいろいろ主張したいところではありますが、正直に言って、私は最近あきらめぎみです。それぞれについて細かく調べて理路整然と翻訳会社さんに異議を申し立てるのは簡単ではありません。
ただ、翻訳会社さんも深く検討したうえでこのペナルティを決定しているとは限らないと思います。Trados のデフォルト設定は、上記のとおり、上の 3 つが 1% で、下の 2 つが 0% です。デフォルト設定のままの場合もありますが、設定が変えられている場合もかなりの頻度であります。どちらにしても、私は、これまで、これこれこういう理由でこのペナルティを設定しています、というような説明を翻訳会社さんから受けたことはありません。同じコーディネーターさんでも、デフォルト設定のままだったり、設定が変更されていたりといろいろです。(もちろん、それぞれのファイルを検討したうえで最適な設定にしている、という可能性もなくはないですが。)
結局、私は、コンテキスト マッチや 100% マッチが作業対象である場合は、ペナルティを深く考えないようにしています。100% でも 99% でも作業することに変わりはないので、多少のレートの差はあきらめます。
もし、コンテキスト マッチや 100% マッチが作業対象に含まれない場合は、ここのペナルティをどうこうするのではなく、とにかく作業対象外の部分を事前にロックしてくれるように翻訳会社さんにお願いします。ロックされていれば明確なので、それを信じて作業します。
以上です。前回の記事から引き続きカウント表について説明してきました。カウントは毎回毎回のことなので、重要とはわかっていても、ついつい確認を怠ってしまうことがあります。翻訳会社さんへの連絡は、遅くなればなるほど行いにくくなるものです。作業ファイルを受け取ったら、なるべくすぐに確認することをお勧めします。(私も、そうしたいと常々思ってはいます。)
確認ポイント 4 ― ロックされた分節を別に分類して報告する

4 つ目は「ロックされた分節」です。私のこれまでの経験では、この設定が間違っていることが一番多いように思います。
通常、この設定は「はい」で、ロックされた分節を別にカウントします。実際の仕事では、「ロックされている分節は作業対象外で!」と指示されることが多く、ロックとしてカウントされた部分は 0 円となります。まあ、ロックされているので明確ですし、作業対象外と言われればその指示に従うしかありません。
ただ、Trados のデフォルト設定は「いいえ」のようなんです。なので、間違えてロック部分もカウントに含まれていることがたまにあります。カウント数が増えるので、間違っていたらラッキー!なんて考えてはいけません。この設定が間違っていた場合、翻訳会社さんは必ず訂正してきます。たとえ発注書が発行された後でも、あるいは作業を開始した後でも訂正してきますよー。(私も何回かそんなことがありました。)
ロックされているので作業はしないですし、料金が支払われないのは当然ですが、作業の直前や作業の開始後の訂正は翻訳者としてはとても困ります。たとえば、翻訳会社さんから「当初の打診の時点では 10,000 ワードとお伝えしていましたが、実際にファイルを見てロック部分を除外してみたら 5,000 ワードでした」と言われると、10,000 ワード分の時間を確保していたのに!!余った時間はどうすれば??という事態になります。
この設定では、もう 1 つ注意点があります。

前回の記事で紹介した設定も含め、ファイルの解析のオプションは [プロジェクトの設定] -> [言語ペア] -> [一括処理] -> [ファイルの解析] から設定できます。この設定画面には、ロックされた分節に関するオプションが 2 つあります。
@ ロックされた分節を別に分類して報告する
A ロックされた分節を解析対象から除外する
@ の「別に分類して報告する」を選択すると、解析レポートに「ロック済み」という欄が増え、そこにカウント数が表示されます。そして、レポート上部のオプションの一覧には「ロックされた分節を別に分類して報告する: はい」と表示されます。
A の「解析対象から除外する」を選択すると、解析レポートではロックされた分節のカウント数は除外され、どこにも表示されません。そして、レポート上部のオプションの一覧にも、このオプションについての表示はありません。本当に、すべてから除外されるんです! 「ロックされた分節を別に分類して報告する」の表示は、A の設定に関係なく、@ が選択されていない限り「いいえ」になります。
つまり、A の「解析対象から除外する」が選択されていても、解析レポート上ではそのことがわかりません。この「解析対象から除外する」のオプションは最近追加されたのでしょうか。私がこのオプションに気づいたのは最近です。解析レポートで「ロックされた分節を別に分類して報告する: いいえ」となっていても、翻訳会社さんに連絡する前に、一応「解析対象から除外する」オプションを確認してみましょう。
確認ポイント 5 ― 単語単位のトークン化を使用する

さて、最後のポイントは「単語単位のトークン化」です。これは、SDL Trados 2017 SR1 以降で、原文が日本語か中国語のときに関係してきます。原文が英語のときは気にする必要がないので、解析表にこのオプションは表示されてきません。
この設定は、単語ベースで解析するか、文字ベースで解析するかの選択ですが、詳細については、SDL のこちらのブログが参考になります。このブログの最後に「以前の解析方法(文字ベース)と新しい解析方法をユーザーが選択できるような仕組みを開発中です」とありますが、これで開発されたのがこの設定だと思います。
通常、これは「いいえ」です。原文が日本語の場合、料金は一般的に文字単価で計算されるので、当然ながら解析も文字ベースであるべきです。単語ベースで一致率を計算して、そこに文字単価を適用するとおかしなことになります。
ただ、上記のブログにもあるように、この設定は初期の SR 1 にはありませんでした。翻訳会社さんの使っている Trados のバージョンによってはこの設定がなく、単語ベースの解析が行われている可能性があります。(が、なかなか、翻訳者としてはそこまで確認しにくいですね〜)
自分でカウントする場合、この設定は「プロジェクトの設定」から行います。[プロジェクトの設定] の最初の画面 [プロジェクト] で、[原文がアジア言語の場合に単語単位のトークン化を使用する] チェックボックスをオフにします。(デフォルトでオフのようです。)

この設定が、解析結果だけでなくプロジェクト全体に何か影響するのかはちょっと不明です。これをオフにすると、解析レポートの「単語単位のトークン化を使用する」は「いいえ」になります。その状態でも、upLift の機能であるフラグメント一致などは有効に機能する気がします。
なお、プロジェクトの設定やファイルの大きさによるかもしれませんが、「単語単位のトークン化を使用する」がオンになっているとファイルの解析にかかる時間が異常に長くなることがあります。ファイルの解析は、もともと少し時間のかかるタスクですが、この時間がさらに長くなります。(私は、20 分以上かかったことがあり、失敗したぁと思いました。)
※※※ 追記 2018/11/21 ※※※
この設定をオンにすると処理時間が長くなるのかと思っていたのですが、これをオンにしなくても処理時間は長くなることがあります。フラグメント一致のカウント数は料金に関係しないので、この機能なしでカウントできればいいのですが、、、
※※※※※※※※※※※※※※※
あまり確認しないポイント ― 各種ペナルティ

最後に、私があえてあまり気にしないようにしているポイントを挙げておきます。それは、上記の図に赤枠で示した各種のペナルティです。
数字がうまく変換されないとか、書式が違ったら文のスタイルも違ってくるとか、タグが挿入されてこないとか、複数の選択肢があったら困るとか、翻訳者としてはいろいろ主張したいところではありますが、正直に言って、私は最近あきらめぎみです。それぞれについて細かく調べて理路整然と翻訳会社さんに異議を申し立てるのは簡単ではありません。
ただ、翻訳会社さんも深く検討したうえでこのペナルティを決定しているとは限らないと思います。Trados のデフォルト設定は、上記のとおり、上の 3 つが 1% で、下の 2 つが 0% です。デフォルト設定のままの場合もありますが、設定が変えられている場合もかなりの頻度であります。どちらにしても、私は、これまで、これこれこういう理由でこのペナルティを設定しています、というような説明を翻訳会社さんから受けたことはありません。同じコーディネーターさんでも、デフォルト設定のままだったり、設定が変更されていたりといろいろです。(もちろん、それぞれのファイルを検討したうえで最適な設定にしている、という可能性もなくはないですが。)
結局、私は、コンテキスト マッチや 100% マッチが作業対象である場合は、ペナルティを深く考えないようにしています。100% でも 99% でも作業することに変わりはないので、多少のレートの差はあきらめます。
もし、コンテキスト マッチや 100% マッチが作業対象に含まれない場合は、ここのペナルティをどうこうするのではなく、とにかく作業対象外の部分を事前にロックしてくれるように翻訳会社さんにお願いします。ロックされていれば明確なので、それを信じて作業します。
以上です。前回の記事から引き続きカウント表について説明してきました。カウントは毎回毎回のことなので、重要とはわかっていても、ついつい確認を怠ってしまうことがあります。翻訳会社さんへの連絡は、遅くなればなるほど行いにくくなるものです。作業ファイルを受け取ったら、なるべくすぐに確認することをお勧めします。(私も、そうしたいと常々思ってはいます。)
タグ:upLIFT テクノロジー 文字数 ワードカウント ワード数 ファイルの解析 SDL Trados Studio カウント ロックされた分節 ロック 単語単位のトークン化 プロジェクトの設定 Trados Studio 2017 SR1 ペナルティ
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2018年06月27日
カウント表をよく確認しよう ― その @
前回の文字数の話に引き続き、カウントの話題を取り上げたいと思います。今回は、前回の記事より少し大きな視点で考えます。
文字数やワード数のカウント方法は、細かく見ていくときりがありません。前回のタグはもちろんですが、数字、英単語、URL、ハイフンやアポストロフィ、特殊記号などを細かく調べていくと、翻訳会社さんから提示された数字に対していろいろ疑問が浮かんでくるかもしれません。ただ、設定で変えられなかったり、一般的とされているルールがあったりで、翻訳者の主張をとおすのはなかなか難しいのが現実です。
私も、たいていは翻訳会社から提示されてくるカウント数をそのまま信じてしまいますが、それでも、一応確認すべきポイントはあります。今回の記事では、「まあ細かい設定は翻訳会社さんを信じるけど、それでも確認しておきたいこと」を自分の備忘録も兼ねて紹介したいと思います。
まずは、以下のような Trados 生成の解析レポートを入手します。

解析レポートは翻訳会社さんから提供されることが多いですが、会社さんによっては、独自の形式のカウント表を使っていて、Trados 生成の解析レポートは提供してくれないことがあります。上記の図の赤線で囲んでいる部分を確認したいので、カウント値だけを抽出した独自作成の表などではなく、Trados で生成された解析レポートを入手します。
翻訳会社から提供されない場合は、自分でカウントします。プロジェクトを右クリックして [一括タスク] -> [ファイルの解析] と選択し、タスクを実行してレポートを作成します。プロジェクトやメモリの設定を変えてしまうとカウント値に影響することがあるので、パッケージを開いたら、まずそのままの設定で [ファイルの解析] を実行します。

最初のポイントは「翻訳ソース」です。聞き慣れない言葉になっていますが、何のことはない翻訳メモリのことです。一致率の基準となるものなので必ず確認します。作業指示書などに記載されているメモリと、実際に Trados に設定されているメモリと、そしてカウント表のメモリがすべて一致していることを確認します。
多数のメモリがある場合などは、翻訳会社さんもたまに間違えてくることがあります。実際に作業で使うメモリでカウントされていることを確認します。

2 つ目は「ファイル間の繰り返し」です。これは、複数のファイルを含むプロジェクトで、同じ文が別のファイルにある場合でも繰り返しとみなすかどうかの設定です。通常は「はい」で、別のファイルでも繰り返しとしてカウントします。
このとき注意したいのがファイル数です。大きなプロジェクトの場合、翻訳会社さんは 1 つのプロジェクトから複数のパッケージを作って何人かの翻訳者さんに配布することがあります。自分に割り当てられたファイルの中での繰り返しは「繰り返し」としてカウントされて問題ありませんが、ほかの翻訳者さんに割り当てられたファイルとの繰り返しはそうはいきません。なので、ファイル数が自分に割り当てられているファイル数と一致しているかを確認します。
翻訳会社さん作成のカウント表しか提供されない場合は、「繰り返し」のカウント数が、Trados 生成のレポート上の値と一致しているかを確認します。プロジェクト全体でカウントされていると、ほかの翻訳者さんのファイルとの繰り返しも含まれることになってしまうので、念のため確認しましょう。

3 つ目は「内部あいまい一致」です。これは、新規翻訳するけれども似たような文が繰り返し登場するような文書で、その「似たような文」をメモリとの一致と同じように「あいまい一致」としてカウントするというものです。
たとえば、新規翻訳する部分に「Click the Save button.」と「Click the OK button.」という文があると、後から登場した文が「内部あいまい一致」となり、メモリとの一致と同じように一致率が計算されます。
通常、この設定は「いいえ」です。当然です。これから自分で訳すのですから、新規翻訳としての料金をもらいます。既訳として提供されるメモリとの一致で料金が割り引かれるのは仕方ないとしても、既訳でもないのに料金が割り引かれるのはちょっと納得できません。
私は、これまでの仕事でこの設定が「はい」になっていたことが数回ありました。ほとんどの場合が単なる設定ミスで、翻訳会社さんに確認したらすぐに訂正してもらえました。まあ、内部あいまい一致がどれくらいあるのかはちょっと気になるので、「はい」にしてカウントしてみたくなる気持ちはわかります。
ただ、意図的にこの設定が「はい」にされていることもありました。少し前に、内部あいまい一致が適用されたカウント表が送られてきたので確認したところ、「今回はこの設定でお願いします」との返答でした。さすがに、「事前に何の断りもなくいきなりこの設定を適用してくるのはあんまりじゃありませんか?」と (やんわり) 抗議させていただきました。結果として、カウントし直してもらえましたが、あまりいい気分ではないですね〜。
「内部あいまい一致」を適用すると、カウント数は少なくなる可能性が高いので、こっそり「はい」に設定されていないか、念のため確認することをお勧めします。
さて、今回はここまでです。記事を書いてみたら予想以上に長くなってしまったので、後半は次回にさせていただきます。最近、ブログの更新頻度が低くなってきてしまっていますが、頑張ります! お楽しみに!!
文字数やワード数のカウント方法は、細かく見ていくときりがありません。前回のタグはもちろんですが、数字、英単語、URL、ハイフンやアポストロフィ、特殊記号などを細かく調べていくと、翻訳会社さんから提示された数字に対していろいろ疑問が浮かんでくるかもしれません。ただ、設定で変えられなかったり、一般的とされているルールがあったりで、翻訳者の主張をとおすのはなかなか難しいのが現実です。
私も、たいていは翻訳会社から提示されてくるカウント数をそのまま信じてしまいますが、それでも、一応確認すべきポイントはあります。今回の記事では、「まあ細かい設定は翻訳会社さんを信じるけど、それでも確認しておきたいこと」を自分の備忘録も兼ねて紹介したいと思います。
Trados 生成の解析レポートを入手する
まずは、以下のような Trados 生成の解析レポートを入手します。

解析レポートは翻訳会社さんから提供されることが多いですが、会社さんによっては、独自の形式のカウント表を使っていて、Trados 生成の解析レポートは提供してくれないことがあります。上記の図の赤線で囲んでいる部分を確認したいので、カウント値だけを抽出した独自作成の表などではなく、Trados で生成された解析レポートを入手します。
翻訳会社から提供されない場合は、自分でカウントします。プロジェクトを右クリックして [一括タスク] -> [ファイルの解析] と選択し、タスクを実行してレポートを作成します。プロジェクトやメモリの設定を変えてしまうとカウント値に影響することがあるので、パッケージを開いたら、まずそのままの設定で [ファイルの解析] を実行します。
確認ポイント 1 ― 翻訳ソース

最初のポイントは「翻訳ソース」です。聞き慣れない言葉になっていますが、何のことはない翻訳メモリのことです。一致率の基準となるものなので必ず確認します。作業指示書などに記載されているメモリと、実際に Trados に設定されているメモリと、そしてカウント表のメモリがすべて一致していることを確認します。
多数のメモリがある場合などは、翻訳会社さんもたまに間違えてくることがあります。実際に作業で使うメモリでカウントされていることを確認します。
確認ポイント 2 ― ファイル間の繰り返しを報告する

2 つ目は「ファイル間の繰り返し」です。これは、複数のファイルを含むプロジェクトで、同じ文が別のファイルにある場合でも繰り返しとみなすかどうかの設定です。通常は「はい」で、別のファイルでも繰り返しとしてカウントします。
このとき注意したいのがファイル数です。大きなプロジェクトの場合、翻訳会社さんは 1 つのプロジェクトから複数のパッケージを作って何人かの翻訳者さんに配布することがあります。自分に割り当てられたファイルの中での繰り返しは「繰り返し」としてカウントされて問題ありませんが、ほかの翻訳者さんに割り当てられたファイルとの繰り返しはそうはいきません。なので、ファイル数が自分に割り当てられているファイル数と一致しているかを確認します。
翻訳会社さん作成のカウント表しか提供されない場合は、「繰り返し」のカウント数が、Trados 生成のレポート上の値と一致しているかを確認します。プロジェクト全体でカウントされていると、ほかの翻訳者さんのファイルとの繰り返しも含まれることになってしまうので、念のため確認しましょう。
確認ポイント 3 ― 内部あいまい一致の活用効果を報告する

3 つ目は「内部あいまい一致」です。これは、新規翻訳するけれども似たような文が繰り返し登場するような文書で、その「似たような文」をメモリとの一致と同じように「あいまい一致」としてカウントするというものです。
たとえば、新規翻訳する部分に「Click the Save button.」と「Click the OK button.」という文があると、後から登場した文が「内部あいまい一致」となり、メモリとの一致と同じように一致率が計算されます。
通常、この設定は「いいえ」です。当然です。これから自分で訳すのですから、新規翻訳としての料金をもらいます。既訳として提供されるメモリとの一致で料金が割り引かれるのは仕方ないとしても、既訳でもないのに料金が割り引かれるのはちょっと納得できません。
私は、これまでの仕事でこの設定が「はい」になっていたことが数回ありました。ほとんどの場合が単なる設定ミスで、翻訳会社さんに確認したらすぐに訂正してもらえました。まあ、内部あいまい一致がどれくらいあるのかはちょっと気になるので、「はい」にしてカウントしてみたくなる気持ちはわかります。
ただ、意図的にこの設定が「はい」にされていることもありました。少し前に、内部あいまい一致が適用されたカウント表が送られてきたので確認したところ、「今回はこの設定でお願いします」との返答でした。さすがに、「事前に何の断りもなくいきなりこの設定を適用してくるのはあんまりじゃありませんか?」と (やんわり) 抗議させていただきました。結果として、カウントし直してもらえましたが、あまりいい気分ではないですね〜。
「内部あいまい一致」を適用すると、カウント数は少なくなる可能性が高いので、こっそり「はい」に設定されていないか、念のため確認することをお勧めします。
さて、今回はここまでです。記事を書いてみたら予想以上に長くなってしまったので、後半は次回にさせていただきます。最近、ブログの更新頻度が低くなってきてしまっていますが、頑張ります! お楽しみに!!
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タグ:SDL Trados Studio ファイルの解析 カウント ワード数 文字数 内部あいまい一致 繰り返し ファイル間の繰り返しを報告する 翻訳ソース 内部あいまい一致の活用効果を報告する ワードカウント
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2018年06月03日
SDL Trados Studio 2019 の新機能 ― 個人翻訳者の視点から
前回は文字数の細かいお話でした。そのときは次回も文字数のお話にしようと思っていたのですが、最近、Trados の新バージョン 2019 の紹介があったので、今回はこの新バージョンについてちょっと書いてみたいと思います。
SDL の公式ブログに紹介記事がありました。
SDL Trados Studio 2019の新機能
https://blog.sdltrados.com/jp/whats-new-trados-studio-2019/

この公式ブログをざっと読んだところでは、「翻訳会社さんからお仕事をもらう個人翻訳者にとって特に大きな新機能はない」という印象でしたが、どうでしょう?? こんな解釈でいいのかなぁ。以下、この公式ブログに書かれていた各項目について、個人翻訳者として思ったことを書いてみました。
Tradosビギナーの強力な味方 ― Walk Me
各機能への迅速なアクセス ― Tell Me
各機能への迅速なアクセス ― Tell Me
「Walk Me」は主に初心者向け、「Tell Me」は機能や設定を簡単に見つけられる、ということです。いろいろとわかりやすくなるのは喜ばしいです。
公式ブログに掲載されていたスクリーンショットでは、検索ボックスに英語を入力して機能を検索しています。これは、まだベータ版だからですよね、きっと。記事の冒頭にも「一部日本語化されていない」と注意書きがありますし。正式版では日本語で検索できますよね?? そうでないと、私は困ります。
新しいプロジェクト作成ウィザード
「Metro Map」というストリームラインによってわかりやすくなるそうです。よく通販サイトなどで、「商品の選択 -> 確認 -> お支払い」とステップの一覧が表示されることがありますが、それと同じです。
私は翻訳会社さんからパッケージを受け取って作業することが多く、自分で新しいプロジェクトを作成することはあまりありませんが、Metro Map はプロジェクトの新規作成ウィザード以外にも使われているようなので、いろいろわかりやすくなっていると嬉しいです。
プロジェクトファイルの追加や変更にも柔軟に対処
プロジェクトを作成した後でファイルを追加したり更新したりすることが簡単になったそうです。これは、個人の翻訳者でもちょっと気になります。パッケージを受け取って作業を始めてしまった後はどうなるのでしょう??
作業を開始してしまったファイルの更新はとても困ります。メモリはあるとしても、訳し分けなどをしている可能性があるので、単純に一括翻訳するわけにはいかず、いつも面倒な思いをしています。
作業を開始したバイリンガル ファイルを、変更になった部分だけ更新してくれる、というのであればとても便利そうに思えます。でも、本当にそんなことできるのでしょうか? パッケージを受け取った側でファイルの更新作業をしなければならないとなると、ファイルが複数ある場合などは手間がかかりそうですし、更新部分のワード数がどのようにカウントされるのかもかなり気になります。まあ、ちょっと期待??してみます。
検証機能の設定が訳文言語ごとに可能に
すみません、私は英語と日本語のみなので、あまり関係がないです。
翻訳メモリの内容がより見やすく
「翻訳メモリ」ビューで、1 ページに表示される個数を変更できるようになり、存在するページ数も表示されるようになったそうです。細かい機能ですがちょっと嬉しいです。メモリを編集していると、いったいどれだけメモリがあるのかわからず、うんざりしてしまうこともあったので、こうした機能はいいかもしれないです。
Visioファイルに対応
Visio ファイルに「対応」したそうです。これって、Visio が入っていない環境でも訳文生成やプレビューができる、ということではないですよね? 残念ながら、私は Visio を持っていません。フローチャートばかりの Visio ファイルを、プレビューできないけどバイリンガル ファイルで訳してね、という依頼がきたら、正直言ってお断りしたくなります。
公式ブログで紹介されていた機能は以上です。2017 のときの upLift テクノロジーのような大きな新機能はなさそうなので、アップグレードするかどうかは翻訳会社さんの状況によるでしょうか。2019 で作ったバイリンガル ファイルが 2017 ではプレビューや訳文生成できない、という事態にだけはなって欲しくないです。それって、個人翻訳者にとっては「下位互換がない」のとほぼ同じです。
今回は以上です。 しばらくは、期待も込めて、経過観察してみようかと思います。
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