前回は文字数の細かいお話でした。そのときは次回も文字数のお話にしようと思っていたのですが、最近、Trados の新バージョン 2019 の紹介があったので、今回はこの新バージョンについてちょっと書いてみたいと思います。
SDL の公式ブログに紹介記事がありました。
SDL Trados Studio 2019の新機能
https://blog.sdltrados.com/jp/whats-new-trados-studio-2019/
この公式ブログをざっと読んだところでは、「翻訳会社さんからお仕事をもらう個人翻訳者にとって特に大きな新機能はない」という印象でしたが、どうでしょう?? こんな解釈でいいのかなぁ。以下、この公式ブログに書かれていた各項目について、個人翻訳者として思ったことを書いてみました。
Tradosビギナーの強力な味方 ― Walk Me
各機能への迅速なアクセス ― Tell Me
各機能への迅速なアクセス ― Tell Me
「Walk Me」は主に初心者向け、「Tell Me」は機能や設定を簡単に見つけられる、ということです。いろいろとわかりやすくなるのは喜ばしいです。
公式ブログに掲載されていたスクリーンショットでは、検索ボックスに英語を入力して機能を検索しています。これは、まだベータ版だからですよね、きっと。記事の冒頭にも「一部日本語化されていない」と注意書きがありますし。正式版では日本語で検索できますよね?? そうでないと、私は困ります。
新しいプロジェクト作成ウィザード
「Metro Map」というストリームラインによってわかりやすくなるそうです。よく通販サイトなどで、「商品の選択 -> 確認 -> お支払い」とステップの一覧が表示されることがありますが、それと同じです。
私は翻訳会社さんからパッケージを受け取って作業することが多く、自分で新しいプロジェクトを作成することはあまりありませんが、Metro Map はプロジェクトの新規作成ウィザード以外にも使われているようなので、いろいろわかりやすくなっていると嬉しいです。
プロジェクトファイルの追加や変更にも柔軟に対処
プロジェクトを作成した後でファイルを追加したり更新したりすることが簡単になったそうです。これは、個人の翻訳者でもちょっと気になります。パッケージを受け取って作業を始めてしまった後はどうなるのでしょう??
作業を開始してしまったファイルの更新はとても困ります。メモリはあるとしても、訳し分けなどをしている可能性があるので、単純に一括翻訳するわけにはいかず、いつも面倒な思いをしています。
作業を開始したバイリンガル ファイルを、変更になった部分だけ更新してくれる、というのであればとても便利そうに思えます。でも、本当にそんなことできるのでしょうか? パッケージを受け取った側でファイルの更新作業をしなければならないとなると、ファイルが複数ある場合などは手間がかかりそうですし、更新部分のワード数がどのようにカウントされるのかもかなり気になります。まあ、ちょっと期待??してみます。
検証機能の設定が訳文言語ごとに可能に
すみません、私は英語と日本語のみなので、あまり関係がないです。
翻訳メモリの内容がより見やすく
「翻訳メモリ」ビューで、1 ページに表示される個数を変更できるようになり、存在するページ数も表示されるようになったそうです。細かい機能ですがちょっと嬉しいです。メモリを編集していると、いったいどれだけメモリがあるのかわからず、うんざりしてしまうこともあったので、こうした機能はいいかもしれないです。
Visioファイルに対応
Visio ファイルに「対応」したそうです。これって、Visio が入っていない環境でも訳文生成やプレビューができる、ということではないですよね? 残念ながら、私は Visio を持っていません。フローチャートばかりの Visio ファイルを、プレビューできないけどバイリンガル ファイルで訳してね、という依頼がきたら、正直言ってお断りしたくなります。
公式ブログで紹介されていた機能は以上です。2017 のときの upLift テクノロジーのような大きな新機能はなさそうなので、アップグレードするかどうかは翻訳会社さんの状況によるでしょうか。2019 で作ったバイリンガル ファイルが 2017 ではプレビューや訳文生成できない、という事態にだけはなって欲しくないです。それって、個人翻訳者にとっては「下位互換がない」のとほぼ同じです。
今回は以上です。 しばらくは、期待も込めて、経過観察してみようかと思います。
Tweet