前回の記事でメモリのアップグレードが突然必要になるという現象を紹介しました。作業を始める時点でアップグレードの警告マークはなかったのに、作業を進めていたらいつのまにか警告マークが表示されていた、という現象です。対訳がたまったことが原因なのか、それともほかに原因があるのかよくわからないのですが、アップグレードをしてそのまま作業を続けていたら、さらに困ったことに。
いったんアップグレードしても、またいつのまにか警告マークが表示されている!!
よく考えたら、今回のプロジェクトは 2017 を更新して初めてのものでした。
上図のとおり、現在のバージョンは SDL Trados Studio 2017 SR1 - 14.1.10015.44945 で、これは SDL Trados Studio 2017 SR1 CU15 に相当するものです。この 「CU15」は、SDL いわく「SDL Trados Studio 2019と同じ強化されたTM」を使えるバージョンです。詳しくは、SDL のこちらのブログ「SDL Trados Studio 2019 SR1で強化された翻訳メモリの使用方法」をご覧ください。
で、原因はおそらくこのあたりかなぁと。でも、今回のメモリは翻訳会社さんからもらったパッケージに含まれていたもので、その翻訳会社さんがどのバージョンを使っているのかはわかりません。まぁ、わかったところでどうしようもないんですけど。
このメモリに限ったことなのか、ほかでも今回の現象になるのか、最初が空メモリでなければいいのか、英日か日英かが関係するのか、などなど検証してみないといけないとは思うのですが、幸いにというか、私個人的にはしばらくオンサイトの仕事になるので自宅の Trados は使わない予定です。その間に、なんか直ってた!なんてことにはならないですかねぇ。
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2019年01月20日
2019年01月17日
作業中にメモリのアップグレードが突然必要になる
2017 以降の Trados Studio でメモリのアップグレードが必要になるケースについては、SDL の公式ブログでも説明されていますし、私の記事「メモリを 2017 SR1 用にアップグレードする」でも取り上げました。
アップグレードが必要になるのは、古いバージョンで作られたメモリを使うときだけかと思っていたのですが、どうもそうではなさそうです!! 実は、
空メモリから作業を始めた場合、ある程度の対訳がたまるとメモリのアップグレードが必要になる
ようです。あくまで私の経験からの話です。対訳がたまったことが原因なのか、私が途中で何かの設定を触ってしまったのか、よくはわからないのですが。
私がぶちあたった現象の経緯を説明します。英日の新規翻訳で 2 万ワードと、私としてはかなり大きめのプロジェクトでした。
もう、びっくりです。いつから警告マークが表示されていたのかはわかりません。警告マークが表示されていたのは「プロジェクトの設定」のメモリ設定画面です。エディタ ビューは、もしかしたら開きっぱなしだったかもしれませんが、警告マークは表示されていませんでした。
■ [プロジェクトの設定] > [言語ペア] > [翻訳メモリと自動翻訳] のメモリ設定画面に警告マークが表示された。
■ エディタには、以下のような警告は表示されなかった。
ここからは、私の推測ですが。
新規の空メモリの場合、 下図のように、[翻訳メモリの設定] 画面 (プロジェクトの設定画面から各メモリを選択して [設定] をクリックすると表示される) の [フラグメント整合ステータス] はオフに設定され、オンはグレーアウトで無効になっています (つまり、変更できない状態です)。これが、今回の警告マークが表示されていたときは「設定はオフだけれども、オンも有効になっていて変更できる状態」でした。メモリのアップグレードをすると、この設定は自動的にオンに変わります。
おそらく、対訳がある程度たまってくるとオンに変更できるようになり、「オンに変更できるけれども、まだ変更していない状態」だと警告マークが表示される、という感じなのかと。
この設定が何にどう影響するのかとか、パッケージを作った翻訳会社さんはおそらく 2017 を使っているのになぜ?とか、自分で作ったメモリのときは大丈夫なのかとか、毎回こんなことになっていたらさすがに気付くと思うので「対訳がたまる」以外に何か原因があったのかとか、いろいろ疑問は残りますが、考えてもよくわかりません。とにかく、最初の時点でメモリに警告マークがなかったとしても、作業中にヒットが少ないなぁと感じたら、警告マークがないかを確認してみる必要がありそうです。
※※※ 追記 2019/01/17 ※※※
すみません、この記事を書いている時点では「対訳がたまったこと」が原因だろうと思っていたのですが、一晩寝て改めて考えると、まさかそんなことはないかとも思えてきて、少し文を修正しました。空のメモリから作業することはよくありますが、毎回こんな現象が発生していたわけではないような気がします。
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アップグレードが必要になるのは、古いバージョンで作られたメモリを使うときだけかと思っていたのですが、どうもそうではなさそうです!! 実は、
空メモリから作業を始めた場合、ある程度の対訳がたまるとメモリのアップグレードが必要になる
ようです。あくまで私の経験からの話です。対訳がたまったことが原因なのか、私が途中で何かの設定を触ってしまったのか、よくはわからないのですが。
私がぶちあたった現象の経緯を説明します。英日の新規翻訳で 2 万ワードと、私としてはかなり大きめのプロジェクトでした。
- 翻訳会社さんから、新規メモリ (空のメモリ) が設定されたパッケージを受け取った。
- メモリにアップグレードの警告マークは表示されていなかったので、そのまま作業を始めた。
- 1 週間ほど作業した後に、どうもメモリがヒットしてこないような気がしたので、メモリの設定を確認すると、アップグレードの警告マークが表示されていた!!
- アップグレードをしたら、警告マークは消え、メモリもヒットしてくるようになった。
もう、びっくりです。いつから警告マークが表示されていたのかはわかりません。警告マークが表示されていたのは「プロジェクトの設定」のメモリ設定画面です。エディタ ビューは、もしかしたら開きっぱなしだったかもしれませんが、警告マークは表示されていませんでした。
■ [プロジェクトの設定] > [言語ペア] > [翻訳メモリと自動翻訳] のメモリ設定画面に警告マークが表示された。
■ エディタには、以下のような警告は表示されなかった。
ここからは、私の推測ですが。
新規の空メモリの場合、 下図のように、[翻訳メモリの設定] 画面 (プロジェクトの設定画面から各メモリを選択して [設定] をクリックすると表示される) の [フラグメント整合ステータス] はオフに設定され、オンはグレーアウトで無効になっています (つまり、変更できない状態です)。これが、今回の警告マークが表示されていたときは「設定はオフだけれども、オンも有効になっていて変更できる状態」でした。メモリのアップグレードをすると、この設定は自動的にオンに変わります。
おそらく、対訳がある程度たまってくるとオンに変更できるようになり、「オンに変更できるけれども、まだ変更していない状態」だと警告マークが表示される、という感じなのかと。
この設定が何にどう影響するのかとか、パッケージを作った翻訳会社さんはおそらく 2017 を使っているのになぜ?とか、自分で作ったメモリのときは大丈夫なのかとか、毎回こんなことになっていたらさすがに気付くと思うので「対訳がたまる」以外に何か原因があったのかとか、いろいろ疑問は残りますが、考えてもよくわかりません。とにかく、最初の時点でメモリに警告マークがなかったとしても、作業中にヒットが少ないなぁと感じたら、警告マークがないかを確認してみる必要がありそうです。
※※※ 追記 2019/01/17 ※※※
すみません、この記事を書いている時点では「対訳がたまったこと」が原因だろうと思っていたのですが、一晩寝て改めて考えると、まさかそんなことはないかとも思えてきて、少し文を修正しました。空のメモリから作業することはよくありますが、毎回こんな現象が発生していたわけではないような気がします。
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2019年01月08日
CAT ツール比較:繰り返しの自動入力
最近、各種の CAT ツールを日替わりで使うような状態になることがよくありますが、私はこうした状態にかなりのストレスを感じてしまいます。どの CAT ツールも基本的な機能はあまり変わりませんが、細かいところはいろいろ違いがあります。作業を効率良く進めるにはその細かいところの活用こそが重要だったりするわけですが、これがなかなかうまくいかず、ストレスばかりが増していきます。
今回は、同じ文が繰り返し登場する場合に訳文を自動で入力してくれる機能についてまとめてみたいと思います。たいていの CAT ツールにはこの機能が備わっていますが、機能の名称も内容もさまざまです。自動で入力してくれる機能はありがたいですが、なにせ「自動」なので、うっかりしていると、訳し分けしていたところが変更されてしまったり、逆に、変更されていると思っていたところが変更されていなかったりと危ない目にあうことがあります。
この記事では、最近私がよく使っている、Trados、Memsource、memoQ の 3 つを比較します。よく使っているといっても、Trados 以外の 2 つのツールは翻訳会社さんから提供されるライセンスで作業しています。このため、使用できる機能が限られていますし、細かいところまでは理解できていないような気もしています。もしご指摘がございましたら、どうぞご連絡ください。
Trados ― 細かい設定はできるが...
・機能の名称:自動反映
・設定の場所:[ファイル] > [オプション] > [エディタ] > [自動反映]
設定項目の多さでは、Trados が一番です。私は、基本的には上記のような設定で作業しています。これが、最も「モレなく反映し」かつ「意図しない反映を防げる」設定かと思います。
確定済みの分節に 100% 一致を自動反映させる
既に訳してしまった分節にも後から自動反映を適用するかどうかの設定です。作業を進めていると、途中で訳文を変えたくなることはよくあるので、私は確定済みの分節にも反映が適用されるようにしています。
開始する位置
[文書内の最初の分節] と [文書内の次の分節] のいずれかを選択します。自動反映をエディタの一番上から適用するか、現在のカーソル位置の下だけに適用するかの設定です。これも、途中で訳文を変えることを考慮して、私は「最初の分節」からにしています。
ちなみにこの UI の文言は「文書」となっていますが、エディタに複数の文書 (ファイル) をまとめて開いていると、開いている文書すべてに自動反映が適用されます。現在カーソルがある「文書」だけに適用されるわけではありません。
ユーザーへの確認メッセージ
自動反映を適用するときに、確認のダイアログ ボックスを表示するかどうかの設定です。私は、安全のため [常に確認] を選択しています。毎回確認されるのは少々面倒ではありますが、訳し分けをするには必要な機能です。一気に反映したい場合は、表示されたダイアログ ボックス上で [すべて] をクリックします。(まあ、たいていは [すべて] をクリックすることになります。)
Memsource ― 細かい設定はないが、便利!
・機能の名称:繰り返しの自動入力
・設置の場所:[設定] > [CAT]
設定は、[繰り返しの自動入力] のオン/オフしかありません。なんともシンプルです。実際にどのような動作になるかというと、現在のカーソル位置より下にのみ自動入力が適用されます。途中で訳文を変えた場合、さかのぼって自動入力を適用することはできないので、自分の記憶を頼りに手動で前に戻るしかありません。
「繰り返し」の分節には翻訳前からマークが表示されている
下図の青色の三連下矢印が繰り返しマークです。Trados にこのようなマーキングはありません。Trados では、自動反映を適用した分節にはそのことを示すマークが付きますが、作業する前は何も表示されていません。
このマーキングはとても便利ですが、問題が 1 つあります。それは、初出かどうかがわからないことです。Memsource の場合は、現在のカーソル位置からさかのぼって自動入力を適用することができないので、その繰り返しが初出なのか、そうでないのかがとても重要になってきます。マーキングでこれがわかればとても助かるのですが、残念ながらそうはなっていません。
※※※※※ 2020/03/25 追記 ※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
最近アップデートで、初出かどうかがわかるようにマークが変わっていました!
これは、とても便利です。Trados さんにも、ぜひ頑張って欲しいところです。
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
「例外」を指定できる
Memsource の機能で私が最も便利だと感じているのは、自動入力の「例外」を設定できることです。これができるのは、今回の 3 つのツールの中では Memsource だけです。
繰り返しのマークをクリックして「例外」とすると、上図のように斜線が表示されて例外であることが示されます。「例外」にしておくと、後から自動入力を行っても、その分節は自動入力の対象とならず、訳文が変更されることがありません。訳し分けをしたいときにとても便利な機能です。
memoQ ― 多少の設定はあるけど、危険!?
・機能の名称:自動伝播
・設定の場所:[翻訳] > [翻訳設定] > [自動伝播]
最後に、memoQ です。ある程度は設定もできますし、繰り返しのマーキングもあります。(ただ、マーキングは、Memsource と同様、初出かどうかの区別はありません。)
訳し分けが難しく、危険
memoQ は訳し分けをする場合にはとても不便です。Trados のように、ダイアログ ボックスで確認してくれる機能はありません。また、Memsource のように例外を設定することもできません。自動伝播を許可している限り、自動で適用されてしまうので少々危険です。
私は、memoQ を初めて使ったときはこのことに気付かず、訳し分けをしたくて訳文を何回も入力してしまった記憶があります。最近の私の対処方法としては、最初に [前方と後方に伝播] を選択してとりあえず最後まで訳文を入力し、その後 [後方にのみ伝播] に変えて、文書の最初から見直しをするようにしています。この見直しの段階で、訳し分けが必要な部分は自分の記憶と繰り返しのマークを頼りになんとか頑張ります。
3 つのツールの比較は以上です。翻訳の段階でいろいろ苦労して訳し分けしておいても、レビューの段階でサラッと全体を変更される、という可能性もなくはないですが、それはあまり考えないことにしています。
おまけ ― 繰り返しは 0 円??
翻訳会社さんからお仕事を依頼される場合、自動処理の対象となる繰り返しの分節はたいていレートが低く設定されています。それでも、0% でない限り、私からレートについて抗議することはあまりありません。作業後に、割に合わなかったなぁと感じるケースも多々ありますが、面倒さが先に立ち、ついついそのままにしてしまいます。
ただ、これまでに 1 社だけ、0% と設定してくる翻訳会社さんがありました。この会社さんには強弱混ぜて 3 回くらい抗議しましたが、だめでした (T-T)。仕方ないので、この翻訳会社さんのときは繰り返しのことは一切考えずに作業することにしました。いろいろと設定を変えることすら面倒なので、とにかくあまり考えず作業負担が最も少ない状態で作業します。結果としては、訳し分けはもちろん、統一もされていない状態になります (が、0 円なので仕方ないですよね)。
おそらく、この翻訳会社さんは、レビューの段階で統一や訳し分けの対応をしているのだと思います。確かに、翻訳の段階ではなく、レビューの段階でまとめて作業した方が効率的なのかもしれません。でも、0 円はないですよね〜。一応、訳文を入力しますし。Trados なんて、自動反映の処理は相当な時間を待たされることもあります。もし、事前にロックしてあって訳文を入力する必要もない、というなら 0 円でも納得です。
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