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昔は「Trados さん、頑張って!」とお祈りしながら訳文生成していませんでしたか? 今も、たまにそんな気分になるときがあります。Trados って本当にわからないことばかりです。特に、日本語の情報は少ないですよね。いくら翻訳者とはいえ、日本語の情報が欲しいのです。Trados ユーザーの方々といろいろ情報交換できたらと思っています。




2022年12月14日

【前編】タイピングを減らそう

Advent Calendar 「翻訳に役立ってくれそうなツール」の記事です。今回は、がっつり Trados です。


翻訳作業を効率化しようと考えたとき、私が真っ先に思いつくのは「タイピングの量を減らす」ことです。少ないタイピングで正確に入力できれば作業スピードは確実に上がるでしょう。しかし、そうは思いつつも、タイピングの 1 回 1 回はわずかな時間なので対策をついつい後回しにしがちです。

そんな私も、IME の単語登録と AutoHotkey は使っています。ただ、IME は基本的に日本語を入力するためのものなので英訳をしているときはあまり役立ちません。また、AutoHotkey はとても便利ですがスクリプトの記述はどうしても面倒です。というわけで、今回は Trados の中でタイピングを減らすために使用できる機能をまとめてみました。Trados の外でタイピングを減らす方法は数多くあると思いますが、まずは Trados に付いている機能だけでも十分に活用していきましょう。ここに挙げた以外にも良いアイデアがあれば、ぜひぜひお聞かせください。


設定の種類: [プロジェクトの設定] と [ファイル] > [オプション]

さて、Trados 内だけとはいっても、タイピングを減らす効果が期待できる機能はけっこうたくさんあります。今回は Trados の設定を 2 つに分け、それらを前編と後編の 2 つの記事で説明したいと思います。Trados の設定は大きく分けると、プロジェクトごとの設定である [プロジェクトの設定] と、Trados 環境全体の設定である [ファイル] > [オプション] の 2 つになります。この 2 つの詳細については、以前の記事「Trados の設定を変えるには − [ファイル] と [プロジェクトの設定]」を参照してください。

[ファイル] > [オプション] の設定は一度設定すればその後ずっと有効ですが、[プロジェクトの設定] はプロジェクトごとに設定を行う必要があります。つまり、プロジェクトの設定は新しいパッケージを開くたびに設定をします。ファイルが追加になりましたなどと言われて更新パッケージを受け取ったときも、残念ながら、設定をやり直さなければなりません。

では、今回の前編ではこのプロジェクトの設定を見ていきます。



フラグメント一致


設定の場所: [言語ペア] > [すべての言語ペア] > [翻訳メモリと自動翻訳] > [検索] > [upLIFT 用のフラグメント一致のオプション]


フラグメント一致の機能は既定で有効ですが、一部無効になっているオプションがあります。フラグメント一致や upLIFT の詳細については、以前の記事「フラグメント一致に関する設定」や、Trados の公式ブログを参照してください。


32-8.png


上図の [TU のフラグメント] をオンにします。これをオンにすると、分節全体ではなく、語句の単位でマッチが検出されるので、[フラグメント一致] ウィンドウに表示されるマッチが多くなります。[フラグメント一致] ウィンドウに表示された語句は、ショートカット キー Ctrl+Alt+M で訳文に挿入できます。

単語数のフィールドは、上記の公式ブログの推奨に従ってどちらも「2」に設定します。あまりにマッチが多く表示されるようなら「3」に変更します。数字を大きくするとマッチが減ります。



固定要素を「認識」する


設定の場所: [言語ペア] > [すべての言語ペア] > [翻訳メモリと自動翻訳]、メモリを選択して [設定] > [言語リソース] > [次を認識する]


「固定要素」とは、数字、日付、大文字の英単語などのことです。「認識済みトークン」と呼ばれることもあります。私にとっては、Trados の中でよくわからない機能のトップにあがるものですが、自動認識とか、自動置換とか、 QuickPlace (ショートカット キーは Ctrl+Alt+下矢印または Ctrl+カンマ) とか、繰り返し処理とか、いろいろなところに影響するので注意が必要です。詳細については、公式ヘルプの「固定要素」を参照してください。(ただ、参照してもよくわかりません。)

固定要素の設定は 2 段階で行います。最初に「認識」を有効にし、その後で「置換」を有効にします。では、まず「認識」を有効にする方法です。

エディターの原文で、数字や日付などに青色の下線が引かれていることがあると思います。これが、固定要素が「認識されている」状態です。認識された要素は、QuickPlace 機能 (ショートカット キーは Ctrl+Alt+下矢印または Ctrl+カンマ) で訳文にコピーできます。

103_1.png


認識を有効にする設定は、メモリに付属する「言語リソース」で行います。メモリの設定画面で [言語リソース][次を認識する] の各チェックボックスをオンにします。これで、それぞれの要素が認識されるようになります。

103_2.png




固定要素を「置換」する


設定の場所: [言語ペア] > [特定の言語ペア] > [翻訳メモリと自動翻訳] > [自動置換]


では次に、認識された固定要素の「置換」を有効にする設定を行います。これは、日付や通貨などの形式を自動的に変換してくれる機能です。詳細については、公式ヘルプの [翻訳メモリと自動翻訳] > [自動置換] を参照してください。

置換の設定は、[すべての言語ペア] ではなく、Japanese->English など、特定の言語ペアで行います。日付や通貨の形式は言語に依存するので、言語ごとに設定する必要があります。以下の [自動置換] ページに表示される項目のチェックボックスをオンにすると、それぞれの要素の置換が有効になります。


103_4.png


ただ、自動置換の動作はあまり信用できないので、より安全な方法をとるなら「認識は有効、置換は無効」と設定するのもよいと思います。認識を有効にして青色の下線が引かれていれば、置換は無効でも QuickPlace 機能のショートカット キーで入力が可能です。

実は、私は今回の記事を書いていて初めてこの置換設定ページの存在に気づきました。以前の繰り返し処理の記事でも固定要素については説明していますが、この自動置換の有効/無効はすっかり抜け落ちていました (すみません)。繰り返し処理の動作にもこの「認識」と「置換」の 2 段階の設定が影響します。

ちなみに、私は毎回「認識」と「置換」の全チェックボックスをオンにしていますが、これはあくまでタイピングを減らすためです。決して、自動で訳文を作ってもらおうとしているわけではありません。「Windows」は OS ではなくて複数のウィンドウかもしれないし、「SW」はスイッチかもしれないけどソフトウェアかもしれないし、「バージョン 100 は 100 億個のファイルを 100 分の 1 の時間で処理する」みたいな文があるかもしれません。自動的な変換は信頼できないのですべて確認が必要です。このため、ペナルティとの併用は必須です。自動置換を有効にするとマッチ率が上がったりしますが、それで料金を割り引きできると考えるのは間違いです (と私は思っています)。翻訳会社側で解析をするときは「自動置換なし、もし置換するならペナルティを付ける」が原則です (と私は思っています)。



置換の詳細を設定する


設定の場所: [言語ペア] > [特定の言語ペア] > [翻訳メモリと自動翻訳] > [自動置換]
(必要に応じて、[言語ペア] > [すべての言語ペア] > [翻訳メモリと自動翻訳]、メモリを選択して [設定] > [言語リソース])


自動置換の設定画面には、[日付と時刻][単位][数字と通貨] の 3 つが用意されています。ここでは、[日付と時刻] についてだけ説明したいと思います。[単位] については、以前の記事「単位記号の前にスペースを入れる」を参照してください。[数字と通貨] については、すみません、よくわからないことだらけなので今回は省略します。

日付と時刻は、以下の画面で形式を設定できます。スタイルガイドなどを確認して、適切な形式を選びます。ただ、自動置換は原文も正しい形式で入力がされていないと適切に機能しません。月と日だけ、または日だけ、というような場合は認識されず、置換もされません。


103_6.png


この設定画面のドロップダウンに表示されるオプションは自分で設定が可能です。たとえば、[日付 (長い形式)] にはかなりたくさんのオプションがありますが、スタイルガイドが「全角と半角の間にスペースを入れる」というルールの場合、これに合ったオプションはありません。

このルールにあったオプションを作成するには、メモリの言語リソースの設定に戻ります。


103_3.png


この表から [日付][日本語] をクリックして編集画面を開きます。ここで、必要な形式を追加します。yyyy などの要素が親切にプロンプトされてくるので、それを組み合わせていけば設定できます。


103_5.png


「全角と半角の間にスペースを入れる」というルールの場合は、以下を設定します (コピペできます)。

yyyy' 年 'M' 月 'd' 日 ('ddd')'


これで、先ほどの自動置換の設定画面に戻ると、追加した形式がドロップダウンに表示されるようになります。



まとめ


「プロジェクトの設定」でタイピングを減らすための機能の説明は以上です。最後に、まとめとしていくつか注意点を挙げておきます。固定要素の認識や置換は、私の経験上、なぜか設定がうまくいかないことが多いです。必ず解決するとは限りませんが、何かのときの参考にしてください。


言語リソースは 1 番上にあるメモリで設定する

言語リソースの設定はメモリに付属しますが、プロジェクトには複数のメモリが設定されていることがあります。その場合は、メモリのリストで 1 番上に表示されているメモリで設定を行ってください。たぶん、1 番上のメモリの設定が優先的に使われていると思います。(すみません、あくまで、私の経験則です。)

ただし、翻訳会社から提供されるサーバー TM の言語リソースは翻訳者側では設定を変更できません。このため、受け取ったパッケージでサーバー TM が 1 番上に設定されている場合は少し対応に困ります。私がよく行う対策は「自作のメモリを 1 番上に追加する」ですが、これによって翻訳ファイルが開かなくなったこともあります。メモリの順番を変えると、マッチの優先度も変わるので、その辺りも注意が必要です。


特定の言語ペアの設定が優先される

上記の説明では、「すべての言語ペア」と「特定の言語ペア」の設定を使用していますが、多言語プロジェクトの場合で「特定の言語ペア」に既に何らかの設定がされている場合は「すべての言語ペア」より「特定の言語ペア」の設定が優先されます。このため、自分で設定を変更するときも、「特定の言語ペア」で設定を変更する必要があります。詳細については、以前の記事「最近の Trados のワナ: メモリがヒットしてこない」を参照してください。


設定を変えたら、エディターをいったん閉じて、開き直す

固定要素などのメモリの設定は、設定画面で変更をしても、すぐに動作が変わらないことがあります。私は、設定がうまくできていないのではないかと思って、何回も確認や変更をしていたことがあります。そんなときはいったんエディター画面を閉じて、改めて翻訳ファイルを開き直すと動作が変わることがあります。


メモリをアップグレードする??

言語リソースの設定を変更すると、メモリにアップグレードを促す警告マークが表示されます。アップグレードしなくても正常に機能しているように見えますが、とにかく少しでも設定を変更すると警告マークが付きます。アップグレードの処理はメモリが大きいとかなり時間がかかるので、私はいろいろ設定してから、最後に念のためアップグレードするようにしています。


以上です。とてつもなく長くなってしまいました。「タイピングを減らすためにどれだけ設定が必要なんだよ!」という感じですが、これをパッケージを受け取るたびに行う必要があります。はっきりいって面倒です。とても面倒です。ですが、AutoHotkey など他の手段ですべて実現しようとすると、それも難しいので、とりあえずは Trados さんの設定に頼っています。次回は、プロジェクトの設定ではなく、エディターの設定を取り上げます。こちらは、プロジェクトごとに設定する必要がなく、若干ですが楽かもしれません。





  


2022年12月12日

Visual Studio Code を使ってみよう

Advent Calendar 「翻訳に役立ってくれそうなツール」の記事です。今回は、プログラミングのためのエディター「Visual Studio Code」の紹介です。

Visual Studio Code (VS Code) はマイクロソフトが無償で提供しているテキスト エディターで、主にプログラムのソースコードを編集することを目的としたものです。一般的にはプログラミングに使用するものなので複雑な機能が搭載されてはいますが、私は「無料で使えるテキスト エディター」と考えてごくごく簡単な用途に使っています。

概要、ダウンロード、インストールなどについては、以下のようなサイトが参考になります。


 ・Visual Studio Code – コード エディター | Microsoft Azure
  公式サイトです。ここからダウンロードできます。

 ・【VSCode】インストール/日本語化/基本的な使い方 (senseshare.jp)

 ・開発の定番「VSCode」とは? インストールから使い方までを解説 (1/3)|CodeZine(コードジン)
  まだ、連載の第1回しかありませんが、今後追加されるようです。

 ・VSCode | Visual Studio Codeのダウンロードとインストール (javadrive.jp)



インストールと日本語化

VS Code は、上記にも挙げた公式サイトからダウンロードできます。インストーラーが用意されているので、それをダウンロードして、画面の指示に従ってなんとなく進めていけば OK です。特に難しい手順はありません。上記の 2 番目に挙げているサイトの説明がわかりやすいと思います (が、特に参照しなくても普通にインストールできます)。

ただ、単にインストールしただけでは UI が英語です。日本語表示にしたい場合は日本語用の拡張機能を別途インストールする必要があります。これの手順も上記のサイトに説明されていますが、おそらく読まなくても大丈夫です。英語のまま使っていると VS Code からしつこいくらい「日本語にしますか」というプロンプトが表示されてきます。プロンプトが表示されたら、それに従って操作すれば日本語表示にできます。



拡張機能

VS Code で何かしたいときは、たいてい「拡張機能」をインストールします。Trados の「アプリ」のようなものですが、Trados とは比較にならないくらい種類がたくさんあります。ただ、検索もインストールも簡単なので心配は無用です。


102_1.png


左側のメニューから、四角いパズルのようなアイコンをクリックすると拡張機能のパネルが表示されます。このパネルから、検索、インストールとアンインストール、設定など、いろいろな操作が行えます。

では、ここからは私が VS Code をどのように使っているのかを紹介していきます。最初に紹介する AutoHotkey のスクリプト以外は、特にプログラミングとは関係のない用途です。




AutoHotkey のスクリプトを書く


AutoHotkey のスクリプトは普通のテキスト エディターで書けますが、VS Code を使った方がコードの色分けやオートコンプリート機能などが使えるので便利です。


102_3.png


私は上記の拡張機能をインストールしていますが、拡張機能はこれ以外にもいくつかあります。拡張子が 「.ahk」のファイルを VS Code で開くと「AutoHotkey 用の拡張機能を入れますか」というようなプロンプトが表示されてきます。それに従って適当な拡張機能をインストールします。



Windows の仮想デスクトップを使う

AutoHotkey のスクリプトを書き換えたくなることはよくありますが、スクリプトを書くのはどうしても面倒なのでついつい後回しにしがちです。その対策として、私はよく使うスクリプト ファイルを常に VS Code で開きっぱなしにしています。いちいち開く手間がなくなり手軽に更新できるので、後回しにせず小まめに更新するようになります。

とはいえ、翻訳作業をしているときはウィンドウをたくさん開いていてデスクトップは常に一杯の状態です。そこに VS Code まで開くと切り替えの操作などが面倒になります。そこで使うのが Windows の仮想デスクトップ機能です。これは、仮想的にデスクトップ画面を追加して、複数のデスクトップを使えるようにする機能です (詳細については、こちらのサイトが参考になります)。私は、通常の翻訳作業に使っているデスクトップの他に、仮想デスクトップを 1 つ追加し、そこに VS Code を開いています。

デスクトップの追加は、ショートカットキー Windows+Ctrl+D で行います。追加した後の切り替えは、Windows+Ctrl+右矢印/左矢印 です。これで、スクリプトの変更が必要になったら、さっと画面を切り替えて編集できます。(といっても、スクリプトを書くのはやっぱりちょっと面倒です。)



Markdown ファイルをプレビューする


最近、Markdown の翻訳を依頼されることがたまにあります。Markdown ファイルは VS Code で開けば簡単にプレビューできます。拡張機能もいくつかありますが、何も入れなくても既定でプレビューできます。(詳しい方法については、@IT の VS CodeでMarkdownをプレビューするには?:Visual Studio Code TIPS が参考になります。)

拡張子が「.md」のファイルを開くと、エディターの右上に以下のようなアイコンが表示されます。これをクリックするとプレビューが表示されます。

102_4.png




日本語のチェックをする


チェック機能は CAT ツールにも付属していますし、いろいろなツールがあるのでわざわざ VS Code を使う必要はないのですが、たまに違うツールを使うと思わぬ指摘があったりします。私がたまに使っているのは「テキスト校正くん」という拡張機能です。



102_5.png



これは、テキスト ファイルの日本語をチェックしてくれる拡張機能です。Word ファイルなどをそのままチェックすることはできませんが、Word ファイルのテキストをコピーしてテキスト ファイル (.txt ファイル) に貼り付ければチェックできます。Trados ならエディターからすべてのテキストをコピーして貼り付ければ OK です。

テキスト ファイルを開くと、自動でチェックが実行され、エディターの左下にエラー数が表示されます。それをクリックすると [問題] パネルが開き、そこにエラーの詳細が表示されます。



102_6.png



本格的な校正は期待できませんが、「することができます」などの冗長表現のチェックは便利です。たまに使うと、びっくりするほど指摘されることがあり、自分の文章のクセがわかります。

校正ツールとしては、これ以外にも Vale (英語用)、textlint (日本語用) などがあります。が、すみません、記事にするほど理解できていないので、これらについてはまた今度にしたいと思います。もし「使っているよ」という方がいらしたら、ぜひ情報のご共有をお願い致します。



今回は以上です。VS Code のごくごく簡単な活用例を紹介しました。VS Code はプログラミングをまったくしたことのない人にとってはとっつきにくいかもしれませんが、単なる「テキスト エディター」と考えれば難しくありません。AutoHotkey のスクリプトも、VS Code で書くと、なんとなくすばらしいスクリプトが書けそうな気がしてきます。雰囲気だけでも気分を高めていきましょう!






  


2022年12月04日

AutoHotkey の簡単な使用例

Advent Calendar 「翻訳に役立ってくれそうなツール」の記事です。今回は、AutoHotkey の紹介です。

AutoHotkey は、スクリプトを書いてキーボードの操作を便利にカスタマイズしよう、というようなことを目的にしているツールです。既にいろいろなところで取り上げられているので、概要や設定方法などについては以下を参考にしてください。

AutoHotKeyを使ってみよう|翻訳者の引き出し (honyaku-hikidashi.net)

AutoHotkeyを導入して、翻訳作業の効率を上げる | Koujou Blog

AutoHotkeyのつぼの記事一覧 | つぼログ。 | シーブレインスタッフによる技術情報ブログ (c-brains.jp)


検索すると他にもたくさん情報が見つかりますが、私のこの記事では細かいことはすっ飛ばして、現在私が使っているごくごく簡単なスクリプトをそのままお見せしたいと思います。本当にかなり適当なスクリプトなので、もし改善案などありましたらぜひご連絡ください。


Phrase (Memsource) の訳語検索


最近、Memsource から名前が変わった Phrase は、全体的にとてもシンプルなのが特徴ですが、シンプルなだけに設定やオプションが少なく、少し使いにくく感じることもあります。その 1 つが訳語検索です。

訳語検索はショートカット キー Ctrl+k で実行できます。ただし、カーソルが原文側にあるときは原文を検索、訳文側にあるときは訳文を検索するという動作になっていて、これを変更することはできません。翻訳作業中、カーソルは編集をしている訳文側にたいていあるので、カーソルが訳文側にある状態で原文を検索するという操作が最も多くなりますが、これをキーボードだけで行おうとするとなかなか面倒です。


98_1.png


日英翻訳 (ja → en) をしている場合、訳文 (en) 側にカーソルがある状態で Ctrl+k を押すと、上記のように、選択していた語句を訳文 (en) から検索します。(この UI の [原文:][訳文:] は、あくまでどこを検索しているかを表しています。翻訳作業自体の原文と訳文ではありません。)

この状態で、原文 (ja) を検索したい場合は、入力フィールドの横にある [<->] をクリックして、再度 [検索] ボタンを押す必要があります。この [<->] を操作するショートカット キーが Phrase には用意されていないので、AutoHotkey の登場となります。

AutoHotkey で行っている操作は、以下のとおりです。

 1. タブを 2 回押して、フォーカスを入力フィールドから [<->] に移動
 2. スペースを押して、[<->] をクリックしたことにする
 3. Shift+タブを押して、フォーカスを [<->] から [検索] ボタンに移動
 4. スペースを押して、[検索] ボタンをクリックしたことにする


スクリプトは、こんな感じです。


SendInput, {Tab 2} ;タブ 2 回
SendInput, {Space} ;スペース
SendInput, +{Tab} ;Shift+タブ
SendInput, {Space} ;スペース

Return


スクリプトは、いたって単純です。私はこれを Ctrl+Alt+k に割り当てています。普通に Ctrl+k を押して訳語検索をした後、Ctrl+Alt+k を押すと、原文と訳文を入れ替えて再度検索ができます。

「キーボード操作じゃなくて、マウスでクリックすればいいんじゃない?」というご指摘はあるかと思いますが、私はマウスを使うと肩がこるので、できるだけキーボードを使いたいのです。ちなみに、Trados と memoQ はもう少し簡単に検索対象を切り替えられます (訳語検索の詳しい方法については、また別記事で取り上げたいと思います)。


URL の言語指定を切り替える


ウェブサイトで英語ページと日本語ページを切り替えたいことはよくあると思います。多言語対応のサイトなら、一般的に URL 内の特定の文字を変換することで切り替えられます。

 98_2.png

言語指定に使われることが多い文字列は「en-us」や「ja-jp」ですが、 これは各サイトによって異なります。すみません、私はその辺りはすべて手動対応で、必要になったものをその都度追加しています。そのため、下記のように、スクリプトが else if でどんどん長くなっていきます (が、ひとまず動いているので OK としています)。


Send, ^c
ClipWait 1

Sleep, 300

keyword = %clipboard%

; E to J
if InStr(keyword, "en-us") <> 0
{
StringReplace, keyword, keyword, en-us, ja-jp, All
}
else if InStr(keyword, "hl=en") <> 0
{
StringReplace, keyword, keyword, hl=en, hl=ja, All
}
; J to E
else if InStr(keyword, "ja-jp") <> 0
{
StringReplace, keyword, keyword, ja-jp, en-us, All
}
else if InStr(keyword, "hl=ja") <> 0
{
StringReplace, keyword, keyword, hl=ja, hl=en, All
}

Clipboard := keyword

Sleep, 300

Send, ^v

Return



キーに割り当てるスクリプトを変更する


AutoHotkey の定番の使い方として、括弧で文字を囲む、読点とカンマを置換するといった操作がありますが、日英と英日の両方向で作業をする場合、全角半角の区別や、読点とカンマのどちらからどちらに置換するのかなどを考えると、わりと面倒なことになります。また、英日の単方向だとしてもスタイルガイドによって括弧が半角だったり全角だったりするので、作業のたびに切り替えが必要になります。

私は、同じショートカット キーに対して両方のスクリプトを書いておき、特定の作業を始めるときに、スタイルガイドを確認しながら、コメントを使ってどちらかのスクリプトを有効にするようにしています。


;Hotkey, vk1D & 8, InParentheses_HAN
Hotkey, vk1D & 8, InParentheses_ZEN

;Hotkey, vk1D & [, InSquare_HAN
Hotkey, vk1D & [, InSquare_ZEN

;Hotkey, ^!w, Replace_Ten
Hotkey, ^!w, Replace_Comma



この記事を書きながら考えてみたら、読点とカンマは、いちいち切り替えなくても自動処理できそうな気もしてきました。それは、今後の課題としたいと思います。


今回は以上です。AutoHotkey が初めてという方にはよくわからない内容だったかもしれません (すみません)。ただ、AutoHotkey は、少し時間をかけても習得して使ってみる価値があると思います。ぜひ挑戦してみてください。スクリプトはその辺からのコピペでもわりとちゃんと動きます。大丈夫です。