アフィリエイト広告を利用しています
最新記事
にほんブログ村 英語ブログ 英語 通訳・翻訳へ
にほんブログ村
 
翻訳ランキング
  翻訳ブログランキング参加中
翻訳ブログ人気ランキング


タグ
検索
ご意見・ご感想

ご意見、ご感想、ご質問をお待ちしております。
こちらから、どうぞお気軽に!

記事一覧
◆パッケージについて
 作業前に内容を確認する
 作業前に設定を変更する
 メモリをアップグレードする (2017 SR1)
 格納されているファイルにアクセスする

◆Trados の機能
 表示フィルタ・高度な表示フィルタ
   2021 の表示フィルタ
   タグの中の検索
   プラグイン
   プラグイン for 2019
   変更履歴
   すべてのコンテンツ
 検証機能
   全般の設定
   QA Checker
 QuickInsert
 印刷プレビュー
 メモリのフィールド
 ファイルの解析 @
 ファイルの解析 A
 AutoSggest
   ATOK との競合
   プラグイン
 ショートカット キー
   設定方法
   便利なキー
   高度な表示フィルタ
 変更履歴
 繰り返しの自動反映
 upLIFT テクノロジー
   フラグメント一致
   あいまい一致の自動修正
   単語数のカウント
 自動置換 > 単位
 ジャンプ
 用語認識
 MultiTerm
 変数リスト

◆Trados のバージョン・エディション
 2021 SR2 CU9
 2021 の新機能
 プラグインとアプリの 2021 対応 (2020/08)
 2017 SR1 の最近のバグ (2020/05)
 プラグインとアプリの 2019 対応 (2019/02)
 2019 の新機能
 Starter エディション
 2017 SR1 の新機能
 メモリのアップグレード (2017 SR1)

◆プラグインとアプリ
 2024 対応 (2024/08)
 フィルタで繰り返しを除外
 原文の英数字を訳文にコピー
 パッケージの中身を一覧表示
 コメントを Excel にエクスポート
 選択箇所の検索結果を別画面で一覧表示
 メモリをアップグレード
 用語集を変換
 コメントや変更履歴のユーザー名を変更
 sdlxliff ファイルを Excel にエクスポート
 Community Advanced Display Filter for 2019
 Community Advanced Display Filter
 Regex Match AutoSuggest Provider
 PackageReader
 Comment View Plugin
 SegmentSearcher
 TM Lifting
 Glossary Converter
 SDL Batch Anonymizer
 Export to Excel

◆トラブルシューティング
 QuickInsert の設定が表示されない
 QuickInsert が動かない
 訳文生成できない
   分節の結合
   コメント
   表示フィルタのハイライト
   ハイパーリンク タグ
 メモリがヒットしてこない
   完全一致が登録されていない
   検索オプション
   言語ペア
   サーバー TM
   Trados のバージョン
   空メモリから作業を始めた場合
   単語単位のトークン化
 「TM はアップグレードが必要」が消えない
 検証の除外設定が効かない
 エディタの動きが遅い
 エディタが落ちる
 ファイルの解析が終わらない
 エディタ上のフォントが変わらない
 用語が認識されない
 同じ用語が何回も表示される
 パッケージを正常に開けない

◆翻訳作業に役立つ Tips
 タグの中の文字を検索する
 複数の分節に分かれている場合の処理
 メモリに登録されるユーザー名を変える
 自分の訳文用のメモリを作る
 Trados の設定を変える
 パッケージを別プロジェクトとして開き直す
 訳文を表示する方法
   印刷プレビュー
   訳文のみで保存
   訳文の表示
 単語数・文字数のカウント
   解析レポート @
   解析レポート A
   単語単位のトークン化
 ショートカット キーを設定する
   設定方法
   便利なキー
 変更履歴を記録する
 繰り返しを自動入力する
 エディタ上のフォントを変える
 1 つの原文に複数の訳文を登録する
 単位記号の前にスペースを入れる
 英日と日英で同じメモリを使う

◆Trados 以外のツール
 CAT ツール
   Memsource
   memoQ
 その他のツール
   ATOK
   Xbench
    変更履歴
    使い方【前編】
    使い方【後編】
   QA Distiller
   AutoHotKey
   WinMerge
   Visual Studio Code
   Vale
最新コメント
プロフィール
さくらさんの画像

昔は「Trados さん、頑張って!」とお祈りしながら訳文生成していませんでしたか? 今も、たまにそんな気分になるときがあります。Trados って本当にわからないことばかりです。特に、日本語の情報は少ないですよね。いくら翻訳者とはいえ、日本語の情報が欲しいのです。Trados ユーザーの方々といろいろ情報交換できたらと思っています。




2022年06月30日

翻訳会社によってこんなに違う

先日、Trados の最新バージョン 2022 を紹介するオンライン セミナーに参加しました。 私はまだアップグレードをしていないので新バージョンの紹介はまた今度にしますが、そのセミナーの中で、Trados は「ニッチな使い方をしている人にも対応していく」という説明がありました。そんなことを言われても、ホントに?? と思ってしまわなくもないですが、RWS さんからすれば「ニッチ」と思えるような独自の使い方をしている人や会社が少なからず存在することは事実だと思います。Trados は歴史も長いので、昔から使っていた人と、最近使い始めた人とではそもそもの考え方からして違うようにも感じます。

今回は、私が翻訳会社さんと実際にどのような仕事をしているのかを少しだけ紹介したいと思います。私は、主に IT 分野の日英と英日の翻訳をしており、分野も言語の種類も決して多くありませんが、それでも翻訳会社によっていろいろなことが大きく違います。


A 社: 小規模ならではの “適当さ”


 言語方向: 英 -> 日

 ファイルの種類: Word と PowerPoint がほとんど

 ソース クライアント: ほぼ 1 社


まず、小規模ですがなかなか頑張っている A 社を紹介します。私は A 社からほぼ決まったソース クライアント 1 社の仕事を受けています (おそらく、A 社全体でも、このソース クライアントの仕事が大きな割合を占めていると思います)。ソース クライアントが決まっているので、翻訳するファイルも似たようなものが多く、Word と PowerPoint がほとんどで、Trados のプロジェクト設定もほぼ毎回同じです。


巨大なメモリが提供される

A 社は、この決まったソース クライアントの訳文を集めた巨大なメモリを 1 つ持っていて、たいていのプロジェクトにそのメモリを設定してきます。ただ、新規翻訳の案件が多いので、巨大なメモリであってもほとんどマッチはしません。マッチするのは、著作権や免責事項の定型文くらいです。

ほとんどマッチがないので、前処理もされていません。翻訳ファイルを開くと、まっさらな状態で、100% マッチやコンテキスト マッチがあっても事前に訳文が挿入されていることはありません。A 社は、100% マッチなどにも料金を払ってくれる (割り引きはありますが) ので、前処理がされていなくても特に問題はありません。というより、新規翻訳なら、下手に訳文が挿入されているより、何もされていないほうがやりやすく感じます。


適当にいい感じ

巨大なメモリからたまに見当違いな訳文がヒットしてくるとか、発注書の発行が遅いとか、用語ベースを使わないとか、なんとなく問題はありますが、納期はきつくないし、単価も高めだし、変に面倒な指示はないので、全体としては “適当に” いい感じです。



B 社: クライアントの指定で Trados を使う


 言語方向: 英 -> 日

 ファイルの種類: XML ファイル

 ソース クライアント: ほぼ 1 社


次に、A 社よりかなり会社の規模が大きい B 社を紹介します。 B 社からも私はほぼ決まったソース クライアント 1 社の案件しか受けませんが、A 社とは状況がだいぶ違います。B 社は、会社としては Memsource をメインの CAT ツールとして使い、特定のソース クライアントのときのみ Trados を使っているようです。

私が受ける案件のソース クライアントはいわゆる大手 IT 企業で、多言語の翻訳を行っています。Trados を導入しているのは、そのソース クライアント自体か、B 社よりさらに上流の MLV (Multiple-Language Vendor) らしく、プロジェクトやメモリの仕様は基本的にはその上流で決められているようです。
 

プロジェクト用翻訳メモリしか提供されない

B 社から受け取る Trados のプロジェクトには、プロジェクト用翻訳メモリのみ含まれていて、メイン メモリは含まれていません。「プロジェクト用翻訳メモリ」とは、一定のマッチ率 (おそらく、70%) 以上の分節だけを抽出したメモリです (詳しくは、公式ブログ「プロジェクト用翻訳メモリについて」を参照してください)。 メイン メモリが巨大でも各プロジェクトに含めるデータの量を減らせるので翻訳会社には便利なメモリです。

ただ、翻訳者としては、メイン メモリも提供して欲しいと思っています。マッチしてこなくても訳語検索はできますし、最近は「フラグメント一致」という機能で、分節全体としてはマッチしなくても、一部の用語だけがヒットしてくることもあります。B 社は、75% マッチから料金を割り引いてきますが、75% マッチで料金を割り引くほど適切で関連性のあるメモリなら 69% マッチの訳文も参照の必要があるでしょうし、69% マッチが参照不要となる程度の雑多なメモリなら 75% マッチの訳文も割り引きをするほど適切で関連性のあるものではない可能性が高いのではと思います。

以前に、メイン メモリの提供をお願いしたことがありますが、提供できないとの返事でした。おそらく、「巨大なメモリ」と紹介した A 社のメモリとは比にならない巨大さなのだと思います。そのうえ、多言語なので、ソース クライアント側にはその巨大なメモリが言語の数だけ存在しているはずであり、まあ管理が大変そうであることは想像がつきます。


多言語プロジェクトの注意点

多言語が関わる案件では、自分の担当が単一言語だとしても Trados のプロジェクト設定で少し注意が必要になります。

言語ペア
以前に Trados のワナとして紹介しましたが、プロジェクトの設定には「すべての言語ペア」と「特定の言語ペア」の両方があります。


  80_5.png


両方で設定がされている場合、優先されるのは「特定の言語ペア」の方です。メモリの設定などを変える場合は、「すべての言語ペア」ではなく、「Japanese」と表示されている特定の言語ペアの方で変える必要があります。

用語ベース
このソース クライアントの案件では、UI の文言が Excel ファイルと Trados の用語ベースの両方で提供されます。用語ベースの提供は大変嬉しいのですが、以前に用語がうまく認識されないことがあり、確認してみたら言語の設定が間違っていました。

多言語の場合は、そもそものソース言語が English だったり、Source だったり、en-US だったり、またはまったく違う言語だったりします。このソース クライアントから提供される Excel ファイルを見ると、十数言語の列が横にずらっと並んでいて、その中に Source 列と English 列があり、English 列は空になっていることがあります。こうしたファイルから用語ベースを作成するときは、どの列を用語ベースの「英語」とするのかに注意が必要です。


全体としては、きちんと整っている

B 社もソース クライアントも大手だけあって、作業データの内容や手順はかなりきちんと整えられています。翻訳するファイルは XML ファイルですが、完成形に近いプレビューができるように設定がされています。原文や UI のデータも最初に必ず提供されますし、発注書も作業前に発行されます。メイン メモリを提供してくれない点以外は、とても効率的に作業が進められて快適です。



C 社: 細部までの配慮がされている


 言語方向: 日 -> 英

 ファイルの種類: Word、PowerPoint、HTML ファイル

 ソース クライアント: 3、4 社


次に、会社の規模としては A 社より大きく、B 社よりは小さい中程度の C 社を紹介します。C 社は、かなり以前から Trados をメインに使っているようで、技術的な知識も豊富な感じの会社です。作業データの内容などを見ると、細部までいろいろな配慮がされていることがわかります。


参照用メモリと更新用メモリが設定されている

C 社は、Trados のプロジェクトに参照用メモリと更新用メモリを最初から設定してきてくれます。参照用メモリは更新されず、自分が訳したメモリは更新用メモリに登録されていきます。更新するメモリの設定については、以前の記事「提供された訳文と自分の訳文を区別する ー @ メモリを分ける」も参照してください。


17-2.png


翻訳会社から提供されたメモリを自分の訳文で更新してしまうと、後から確認したくなったときに困るので、提供されたメモリは更新しない設定にしておくほうが安全です。ただ、Trados の既定設定では更新されてしまうため、私はたいてい自分で設定を変えています。C 社はこの設定までしてきてくれるので、自分で設定する必要がなく、設定を忘れて更新してしまうこともありません。とても助かります。


英数字のみの分節をロックしてくる

細部までの配慮はすばらしいことですが、翻訳者にとっては少しシビアな点もあります。C 社は、日本語から英語に訳す案件の場合、日本語内の英数字のみの分節をロックして、作業対象外としてきます。「作業対象外」ということは、当然ながら、料金 0 円です。

ロックまでしてくるので 0 円でも構わないですが、「英数字のみ」の抽出は正規表現か何かで機械的に行われています。このため、和製英語や日本語独特の略語など (たとえば、OK/NG の「NG」、Number を略したピリオドなしの「No」) はロックされてきます。また、数字と単位だけの分節もロックされてきます。スタイルガイドに「数字と単位の間には空白を入れる」と書いてあっても、原文の「10cm」はそのままロックされてきます。おそらく、レビュアーさんがロックを解除して対応しているのではないかと思います。



D 社: いろいろな手法を挑戦的に取り入れる


 言語方向: 日 -> 英

 ファイルの種類: Word、PowerPoint、HTML ファイル、その他いろいろ

 ソース クライアント: 不特定


次に、C 社と同程度か、少し規模の大きい D 社を紹介します。D 社も Trados の使用実績は豊富と思われますが、C 社より個人の裁量が大きい社風のようで、コーディネーターさんによって作業データの内容や手順がさまざまに変わります。また、ソース クライアントや翻訳ファイルの種類が多いためか、いろいろな手法を挑戦的に取り入れている感じがします。


コンテキスト マッチが作業対象外のことがある

D 社は、私がお付き合いしている翻訳会社の中で唯一、コンテキスト マッチ (CM) を作業対象外としてくる “ことがある” 会社です。CM や 100% マッチについては公式ブログの「100%一致」と「完全一致」の違いでも説明されていますが、簡単にいうと、CM は 100% マッチより信頼度が高いマッチです。このため、Trados の設定では「100% マッチはロックしないが、CM はロックする」ことが可能です。Trados で「ロックする」ということは、作業対象外として 0 円にするという意味です。

とはいえ、翻訳会社さんも設定で可能だからといってむやみに CM を作業対象外にするわけではありません。品質、予算、納期などいろいろと検討した上でどこを作業対象とするかを決定しているはずです。D 社の場合も、すべての案件で CM が作業対象外となるわけではないので毎回確認が必要です。

作業対象の確認は、指示書、翻訳ファイル、発注書の 3 つで間違いがないか確認します。一番多い間違いは、指示書に「CM も作業してください」とあるのに、発注書で CM が 0 円になっているケースです。

また、もう 1 つ困るケースとして、CM が対象外なのに、翻訳ファイルでロックされていない場合があります。ロックされていないと、うっかり作業してしまう可能性があり、トラブルになりかねないので、私は必ず翻訳会社さんに対象外の部分をロックしてきてくれるようにお願いしています。


更新用メモリはないこともある

CM に加えて、もう 1 つ D 社の特徴的な点は、Trados のプロジェクトに更新用メモリを設定してこないことです。これも、コーディネーターさんによってばらつきはありますが、新規翻訳の場合にメモリが 1 つも設定されていなかったり、参照用メモリが設定されている場合に「更新」のチェックがオフにされていたりすることが多々あります。

「更新」のチェックがオフにされていれば、参照用メモリを間違って更新してしまうことはないので安心です。更新用メモリをあらかじめ設定してくる C 社の場合と異なり、自分で更新用メモリを作成してプロジェクトに追加する必要はありますが、自分で自由に設定したいこともあるので、私としては「更新」のチェックがオフにされているだけで十分です。


翻訳ファイルにいろいろな加工がされている

D 社は、C 社と同様、Trados などに関する知識は豊富なようで、翻訳ファイルに手の込んだ加工がされていることがあります。英数字のみの分節はロックしてきますし、何か別の基準でロックがされていることもあります。また、改訂版の翻訳で改訂部分だけが抜き出されていることもありました。加工されたファイルが翻訳者にとって作業しやすいものかといえば必ずしもそうではないこともあるのですが、いろいろと工夫がされていることは確かです。



E 社: IT 翻訳をメインにしていない会社


 言語方向: 英 -> 日

 ファイルの種類: Word、その他いろいろ

 ソース クライアント: 不特定


上で紹介した C 社と D 社は Trados を積極的に活用しようとする雰囲気が感じられますが、もちろん、世の中そんな会社ばかりではありません。私にたまに依頼をしてくる E 社は IT 翻訳をメインにする会社ではなく、Trados を長年使ってはいますが、積極的に活用しようとする意識はなさそうな感じです。


パッケージを使わない

Trados をあまり使わないためか、E 社はデータの受け渡しにパッケージを使用しません。プロジェクトのフォルダー (sdlproj ファイルと関連の各フォルダー) をそのまま送ってきます。作業後にこちらから納品するのは、sdlxliff ファイルです。

「パッケージを使わないから、とんでもなく不便」ということはありませんが、E 社以外はどの会社もパッケージを使います。パッケージは、Trados の長い歴史から見れば比較的新しい機能といえないこともないので、昔から Trados をほそぼそと使ってきた会社なら、パッケージを使わないという選択も自然かもしれません。



F 社: Trados を使わない会社


 言語方向: 日 -> 英

 ファイルの種類: Word、PowerPoint、Excel

 ソース クライアント: 不特定


さて、ようやく最後です。F 社は Trados をまったく使わない会社です。ほとんどの案件は Office 文書で、原文のファイルがそのまま送られてきます。私は、送られてきたファイルを Trados に取り込み、翻訳をして、訳文生成をして、レイアウトを整えて納品します。レイアウトの料金は追加で支払われますが、これまであまり複雑なものはなく、Trados の訳文生成後にそれほど手間がかかったことはありません。


自分の裁量で Trados を使う

自分の裁量で Trados を使用するので、何か問題が発生したときは自分で対処する必要があります。ただ、どうしても問題が解決できなければ、もちろん Trados を使わないという選択肢もあるので、最初から Trados を指定されるよりいいかもしれません。

Trados で問題が発生しないかを早めに確認するため、私は、原文をもらったらすぐに Trados に取り込み、訳文を少しだけ入力して訳文生成をしてみます。そこで、レイアウトが維持されるか、フォントがうまく変換されるかなどを確認して、大丈夫そうなら Trados で作業します。



今回は以上です。いろいろな会社があるということをお伝えしたくて、いろいろなことを書いていたら、ものすごく長くなってしまいました。プロジェクト用翻訳メモリとか、CM とか、ロックとか、今回はざっとしか説明しませんでしたが、また機会があったら詳しい記事を書きたいと思います。





  




2022年05月23日

デュアル ディスプレイでの作業

私は普段からデュアル ディスプレイで翻訳作業をしています。3 画面、4 画面と増やした方が便利かもしれませんが、物理的な制限から、私は 2 画面です。今回は、この 2 画面で Trados をどのように使って翻訳とチェックの作業をしているのかを紹介します。



92_1.png



2 つのディスプレイは 1 つの机の上に置いています。キーボードをメイン画面寄りに置き、顔を正面に向けたときはほぼメイン画面、少し右を向くとサブ画面という形になるようにしています。

私は、最初に翻訳をするときと、いったん訳し終わってからチェックをするときで各画面に表示する内容を変えます。ひと手間かかりますが、それぞれの作業に合わせて画面表示を調整した方が便利です。また、翻訳する文書の種類によっても表示を調整します。Word ファイルなら通常は縦長ですが、PowerPoint は横長ですし、HTML ファイルや XML ファイルは簡単には表示ができないこともあります。Trados にはもちろんプレビュー機能がありますが、なかなかうまく動作してくれないので多少の工夫も必要です。




翻訳をするとき


メイン画面に Trados

最初に翻訳をするときは、メイン画面に Trados、サブ画面に原文と訳文を表示します。サブ画面には、辞書やブラウザーなどの参考資料も表示します。2 画面の環境では参考資料などが表示しきれず、どうしてもウィンドウの切り替えが多くなるので、ディスプレイの数を増やせるなら増やした方がいいかもしれません。




92_2.png




Trados 内のレイアウト

Trados 内の各ペインなどのレイアウトはかなり自由に変更できます。ペインのタイトル部分をドラッグすると、配置可能な場所を示すガイドが表示されるので、それに合わせて移動します。

各ペインは Trados 本体のウィンドウから外に出して別ウィンドウとして表示することもできます。大きく表示したいプレビュー ペインなどは、本体のウィンドウから切り離して別ウィンドウとして表示した方が見やすくなります。ただ、ウィンドウを切り離しても 1 つのアプリケーションであることに変わりはないので、1 つのウィンドウをクリックすると、Trados のすべてのウィンドウがアクティブになり前面に表示されます。

不要なペインは非表示にできます。ペインの右上端の × アイコンをクリックすれば、そのペインは非表示になります。非表示にしてしまっても、リボンの [表示] タブから選択すれば再度表示できます。また、同じ [表示] タブにある [ウィンドウのレイアウトを元に戻す] をクリックすれば、全体の表示が初期設定に戻ります。変な風に変更しても元に戻せるので、安心していろいろお試しください。

私は、下図のように、自分が使わないペインやアイコンは消し、訳文を入力する部分がなるべく広くなるようにしています。また、用語認識とフラグメント一致は常に表示される場所に移動し、縦長に表示します。用語ベースを使わないプロジェクトのときは、用語認識ペインは非表示にします。




92_4.png




用語認識とフラグメント一致のペインを切り離してサブ画面に表示していたこともありましたが、今は元に戻しました。この 2 つのペインを外に出した方が訳文を入力する部分は広くなりますが、用語を見落とすリスクがどうしても高くなる気がします。




チェックをするとき


メイン画面に原文と訳文

さて、一応最後まで翻訳をしてチェックをしようというときは、メイン画面に原文と訳文を表示し、Trados はサブ画面に移動します。メイン画面に Trados を置いておくと、チェックをしているはずなのに気づくと Trados のウィンドウばかり見ていたという状態になりがちなので、最も目に入りやすいメイン画面に原文と訳文を置きます。

また、訳文だけでなく、必ず原文も目に入りやすいところに置きます。チェックをしているときは、当然ながら訳文に注意が向くので、原文がすぐ目の届くところにないと、これも、気づくと訳文しか読んでいなかったという状態になりがちです。PowerPoint などの横長ページで原文と訳文を 1 画面内に表示するのが難しい場合は、原文をメイン画面に、訳文をサブ画面に表示します。訳文は嫌でも見るので、やや見にくい方に置いておいても大丈夫です。




92_3.png





Trados 内のレイアウト

Trados 内のレイアウトも翻訳時とは少し違うものにします。フラグメント一致は、翻訳時には便利ですが、一度訳文を確定してメモリに登録した後は検索が行われなくなります。この状態でペインを表示していてもスペースの無駄なので、非表示にしてしまいます。

訳文の文字サイズも変更します。これは、改行位置を変えるためです。改行があると、スペースの有無がわかりにくいですし、無意識のうちにそこを区切りと感じてしまうので、読点を入れるかどうかの判断に影響することがあります。私は、チェック時は文字サイズを小さくして、1 行になるべく多くの文字が表示されるようにします。

以前にお話を聞いたことのある翻訳者さんは、チェック時には文字を大きくするとおっしゃっていました。自分の好みや文書の種類によってどちらでもいいと思いますが、とにかく「改行位置が変わる」ようにします。文字サイズを変えにくいときは、ペインの幅を変えるだけでも改行位置が変わります (もちろん、フラグメント一致を非表示にした時点で、エディター部分の幅は変わっています)。




92_5.png






便利なショートカット キー

Trados のエディター内での表示調整として、私は、空白文字の表示/非表示と、タグ表示モードの切り替えをショートカット キーに設定して使用しています。翻訳でも、チェックでも、必要に応じて随時切り替えながら作業します。


空白文字の表示/非表示

ショートカット キーの設定: [ファイル] > [オプション] > [ショートカット キー] > [エディタ] > [空白文字の表示]
リボン: [ホーム] > [書式]
設定画面: [ファイル] > [オプション] > [エディタ] > [空白文字の表示]

「空白文字の表示」という設定で、スペースはもちろん、改行、タブなどの記号も表示されます。ただ、スペースを示すポチっとした黒い点は、英語のピリオドや日本語の中黒との見間違えが起こりやすいです。また、改行が表示されている状態とされていない状態では、訳文を読んだときの印象が少し変わってくるような気がします。常に表示する、または常に非表示にするということではなく、切り替えながら作業するのがよいかと思います。


タグ表示モード

ショートカット キーの設定: [ファイル] > [オプション] > [ショートカット キー] > [エディタ] > [タグ表示モードの変更]
リボン: [表示] > [オプション]
設定画面: おそらく、なし

タグ表示モードも切り替えながら作業するのが便利です。タグの中身まで確認したいときはありますが、普段は邪魔なのであまり目立たない表示にしています。[タグ ID] という表示にすると、タグが番号で表示されます。UI や製品名など、同じタグで中身が違う場合は、タグ ID の表示が便利です。




訳文のプレビュー


最後に、難題を少しだけ取り上げます。ここまで「訳文を表示する」とさらっと書いてきましたが、実は訳文を表示するのはなかなか大変です。Trados には訳文のプレビュー機能がいくつかありますが、どれも一長一短あり、あまり便利ではありません。詳しくは、以前の記事、「訳文の表示」を使ってみる「訳文のみで保存」を使ってみる意外と使える「印刷プレビュー」を参考にしてください。


Office 文書なら「訳文の表示」

Word、PowerPoint、Excel などの Office 文書なら、「訳文の表示」機能を使うことで、Trados とは別に Word、PowerPoint、Excel など元々のアプリケーションで訳文を表示できます。ショートカット キーの Ctrl+Shift+P で簡単に表示できます。


HTML ファイルなら「訳文のみで保存」

HTML ファイルなら、訳文をファイルとして保存し、ブラウザーで表示するのが便利です。スタイルシートや画像が含まれている場合はひと手間かかりますが、それでもブラウザーでの表示はとても手軽です。訳文をファイルとして保存するには、[ファイル] > [別名 (訳文のみ) で保存] と選択するか、ショートカット キーの Shift+F12 を使います。


XML ファイルなら「プレビュー」

XML ファイルなら、Trados 内のプレビュー ペインでの表示が簡単です。リアルタイム プレビューにすれば、現在編集中の分節をハイライトすることもできます。プレビュー ペインは、XML ファイル以外にももちろん使用できますが、私の経験上、XML ファイル以外ではあまりうまく機能しません。私のパソコン環境の問題かもしれませんが、Trados のエディターの動きが遅くなったり、カーソルが消えたりします。XML ファイルのときだけは、こうした不可解な動作もなく、正常に機能します。


最終手段は「印刷プレビュー」

場合によっては、上記のいずれもうまく機能しないことがあります。そんなときは、最終手段として「印刷プレビュー」を使います。エディター上に表示されている原文と訳文をブラウザーで表示することができます。マッチ率による色分けや、タグの表示もできます。ショートカット キーは Ctrl+P です。



今回は以上です。私は、現在のデュアル ディスプレイ環境をとても気に入っていますが、3 画面、4 画面も少し憧れます。でも、自分の今の部屋では難しいし、しばらくは現状のままになりそうです。







  




2022年05月05日

ファイル ビューをカスタマイズする

先日、Trados から変なエラーが表示されるようになってしまったので、Trados のインストール環境をクリーンな状態に戻してくれるアプリ Trados Freshstart を使いました。これでエラーは解決しましたが、いろいろな設定が初期化され、再設定にだいぶ手間を取られました。忘れている設定も多かったので、今回は自分の備忘録も兼ねてファイル ビューの設定をまとめておきたいと思います。


サブフォルダを含める


まずは、左側のメニューで [サブフォルダを含める] チェックボックスをオンにします。これをオンにしないと、フォルダごとにしかファイルを表示できないので不便です。プロジェクトはいくつかのフォルダで階層構造になっていることもあるので、全ファイルを一気に一覧したいときはこのチェックボックスをオンにします。

たとえば、下図のプロジェクトには「Chapter1」と「Chapter2」というサブフォルダがあります。[サブフォルダを含める] チェックボックスがオフのままの場合、これらのサブフォルダ内のファイルはそのフォルダを選択しない限り一覧に表示されてきません。



■ [サブフォルダを含める] をオフにしたまま

91_1.png



■ [サブフォルダを含める] をオンにする

91_2.png


ただし、[サブフォルダを含める] をオンにしてファイルを表示すると、全ファイルが同じレベルで一覧されるのでフォルダの階層構造がわかりにくくなります。これについての対処方法は、後で説明します。



ファイル一覧のレイアウトを選択する


ファイルの一覧に表示される項目などはリボンの [レイアウト] タブから変更できます。状況に応じて既定のレイアウトが自動で選択されますが、自分の目的に合わせて変更することも可能です。私が普段よく使うのは「ファイルの詳細のレイアウト」です。

91_8.png



レイアウトを自分用に変更する


いろいろなレイアウトが既定で用意されていますが、実は、どれもこれもあまり使い勝手がよくありません。でも、大丈夫です。この既定のレイアウトはカスタマイズできます。また、自分でまったく新しいレイアウトを作成することもできます。

カスタマイズする場合は、項目名 (見出し行) のどこかを右クリックしてメニューを表示します。そのメニューから、表示したい項目を選択するか、[カスタマイズ] を選択して細かい設定を行います。また、項目名を直にドラッグ アンド ドロップして表示列を移動することもできます。

新しいレイアウトを作成する場合は、上図に示したレイアウト選択用のドロップダウンで、一番下にある <新しいレイアウト> を選択します。下図のような設定画面が表示されるので、[ビュー名] に新しいレイアウトの名前を入力し、後は、表示したい項目を選択していきます。

91_5.png



以下に、私がよく使用する項目を紹介します。

[全般] > [パス]

まず、ファイル一覧の先頭 (左端) にパスを表示します。[サブフォルダを含める] オプションを有効にしていると全ファイルが同じレベルで一覧されてしまいますが、先頭にパスを表示して、パスの値で並び替えをしておけば、フォルダの階層構造がわかりやすくなります。 さらに、[グループ化条件] に「パス」を選択すると、ファイルがフォルダごとにグループ化されます。フォルダが重要な意味を持つプロジェクトでは、グループ化の表示にしておくと視覚的にわかりやすくなり便利です。


■ 左端にパスを表示し、パスの値で並び替えをしておく

91_3.png


■ さらに、パスでグループ化することもできる

91_4.png
 

[全般] > [ファイルの種類の識別子] と [使用目的]

自分でプロジェクトを作成するのではなく、翻訳会社からパッケージとしてファイルを受け取る場合でも、原文の「ファイルの種類」を知っておくことは大切です。QuickInsert の設定や、生成した訳文ファイルにコメントを含めるかの設定など、「ファイルの種類」にはよく使う設定がいくつか含まれています。また、Trados はファイルの種類によってかなり動作が異なるので、何かを他の人に相談したいときなどは、まずファイルの種類を伝えると話がスムーズに進む可能性が高くなります。

ファイルの種類はアイコンで大体わかりますが、わかりにくいケースもあります。たとえば、Office 文書はバージョンによってファイルの種類が異なりますし、Excel には、訳文を併記するスタイル用に専用の種類が用意されています。正確な「ファイルの種類」を特定するには、ファイルの種類の識別子を確認する必要があります。この識別子をたよりに、[プロジェクトの設定] > [ファイルの種類] で該当するファイルの種類を見つけます。

ファイルの種類とあわせて「使用目的」も念のため表示しておきます。ごくまれにですが、パッケージには使用目的が「翻訳対象」ではなく「リファレンス」となっているファイルが含まれていることがあります。これは、参考資料として使ってください、という意味なので、そのファイルの翻訳は不要です。


[確認] > [進行状況]

これは、ステータスが確定済みになっている分節の文字数 (単語数) の割合です。どれくらい作業が進んでいるかの目安になります。

[確認] という分類の中には他にもいくつか項目がありますが、この分類の項目の値はエディターで作業を進めるにつれてどんどんと更新されていきます。一方、[解析] という分類の中にある「100%」などの項目は、一括タスクの「ファイルの解析」を実行しないと更新されません。エディターで作業を進めても、100% の値は増えないので注意してください。

91_6.png



ウィンドウ下部のタブ


最後に、ファイル一覧の下に表示されるタブについても少しだけ説明しておきます。ここには、リボンの [情報] タブで選択した情報が表示されます。表示した各ペインのレイアウトは、Trados の他の画面と同様、ドラッグ アンド ドロップで自由に変更できます。


91_9.png


[ファイルの詳細] タブ

一覧上で選択したファイルの詳細情報が表示されます。ここで注目するのは「最終変更日」です。各ファイルの最終変更日はここにしか表示されません。上部の一覧の項目としては表示できないので、最終変更日順に並べ替える、といった操作はできません。

最終変更日で並べ替えることができないのは、大量のファイルがあるときなどはとても不便です。一応、Ideas にリクエストは出ているので、もしよければ投票をお願いします。


[ステータス情報] タブと [解析結果] タブ

[ステータス情報] タブは一覧に表示する項目の分類でいえば [確認] に、[解析結果] タブは [解析] に相当します。ですので、[ステータス情報] はエディターで作業を進めるにつれて更新されますが、[解析結果] は解析を行わない限り更新されません。メモリとの一致も含めて作業の進捗を知りたいときは、一括タスクで解析を実行してから [解析結果] タブを確認します。


今回は以上です。ファイル ビューは頻繁に使う画面なので、面倒がらずに自分の使い方に合わせてカスタマイズすることをお勧めします。