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2023年01月30日
本当に原文からコピーしたままか?
年末のアドベント カレンダーでたくさん記事を書いたのでちょっとお休みしたらあっという間に 1 か月以上がたってしまいました。ネタが尽きたわけではないですが、今回はちょっと簡単な記事にします。
IT 系の翻訳をしていると、プログラムのソースコードなど原文のまま残さなければならない分節がたまにあります。原文をコピー (Ctrl+Ins) をするだけなので翻訳者としてはお得ですが、後で見直しをしているときに、本当にコピーしたか、コピーした後にうっかり触っていないかと不安になり、結局もう一度 Ctrl+Ins を押してしまうことがよくあります。
こんな不安を解消してくれる機能として、Trados では原文をコピーした分節の色を変えることができます。私はこの機能にまったく気付いていなかったのですが、少し前に Twitter で翻訳会社の方がつぶやいていたので、それをヒントに早速試してみました。
設定の場所は [ファイル] > [オプション] > [色] です。ここで、さまざまな色を設定できます。[翻訳ステータス] の [背景色] に [原文からコピー] というオプションがあるので、これを既定の白から別の色に変更します。私は下図のように薄紫色っぽくしています。
この設定をしておくと、以下のように原文からコピーしたままの分節に色が付くようになります。
薄紫色になっている分節は原文からコピーしたまま一切触っていない分節です。中央あたりの「We have several …」の分節は原文と訳文が同じように見えますが、実は原文からコピーをした後にスペースを入れて削除するという編集を加えたので薄紫色になっていません。
この機能は、原文と訳文が同じかをチェックしているのではなく、「原文からコピー」という操作をしたかどうかで色を付けています。「原文からコピー」の操作をした時点で色が付き、他の操作を行うとその時点で色は消えます。
地味な機能ですがとても便利で、私はかなり助かっています。他にもいろいろな設定で色が変えられるようなので、どうぞお試しください。
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IT 系の翻訳をしていると、プログラムのソースコードなど原文のまま残さなければならない分節がたまにあります。原文をコピー (Ctrl+Ins) をするだけなので翻訳者としてはお得ですが、後で見直しをしているときに、本当にコピーしたか、コピーした後にうっかり触っていないかと不安になり、結局もう一度 Ctrl+Ins を押してしまうことがよくあります。
こんな不安を解消してくれる機能として、Trados では原文をコピーした分節の色を変えることができます。私はこの機能にまったく気付いていなかったのですが、少し前に Twitter で翻訳会社の方がつぶやいていたので、それをヒントに早速試してみました。
設定の場所は [ファイル] > [オプション] > [色] です。ここで、さまざまな色を設定できます。[翻訳ステータス] の [背景色] に [原文からコピー] というオプションがあるので、これを既定の白から別の色に変更します。私は下図のように薄紫色っぽくしています。
この設定をしておくと、以下のように原文からコピーしたままの分節に色が付くようになります。
薄紫色になっている分節は原文からコピーしたまま一切触っていない分節です。中央あたりの「We have several …」の分節は原文と訳文が同じように見えますが、実は原文からコピーをした後にスペースを入れて削除するという編集を加えたので薄紫色になっていません。
この機能は、原文と訳文が同じかをチェックしているのではなく、「原文からコピー」という操作をしたかどうかで色を付けています。「原文からコピー」の操作をした時点で色が付き、他の操作を行うとその時点で色は消えます。
地味な機能ですがとても便利で、私はかなり助かっています。他にもいろいろな設定で色が変えられるようなので、どうぞお試しください。
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2022年12月25日
【後編】タイピングを減らそう
Advent Calendar 「翻訳に役立ってくれそうなツール」の記事です。記事の公開が遅くなってしまいました。今回も、がっつり Trados です。
前編に引き続き、Trados 内でタイピングを減らす方法を考えてみます。今回は、プロジェクトの設定ではなく、[ファイル] > [オプション] から行う Trados 環境全体の設定です。これらの設定の詳細については、以前の記事「Trados の設定を変えるには − [ファイル] と [プロジェクトの設定]」を参照してください。
[ファイル] > [オプション] の設定は、プロジェクトの設定と異なり、一度設定すればどのプロジェクトで作業をしても有効です。これは便利である反面、プロジェクトごとに設定を変えることはできないということでもあります。言語の方向 (日英か、英日か) によって設定を変えたくなることはありますが、プロジェクトを変えても設定は変わらないので、そうした場合は手動で設定を変えるしかありません。(結局、プロジェクトごとに設定を変えるんじゃん! ということです。)
今回紹介する機能は、主に AutoSuggest です。AutoSuggest は、英訳をする (英語を入力する) ときはうまく機能しますが、和訳をする (日本語を入力する) ときは、IME との関係上、あまり期待どおりの動作になりません。和訳の場合は、AutoSuggest は無効にして IME の機能を活用するのも一つの選択肢です。この記事の以下の説明は、英訳をする (英語を入力する) 場合を前提としています。では、始めていきましょう。
AutoSuggest の有効無効の切り替えや詳細の設定は、[ファイル] > [オプション] > [AutoSuggest] から行います。
画面下部の [AutoSuggest のプロバイダ] リストで、AutoSuggest の候補をどこから持ってくるのかを指定できます。順番も変更できます。私はすべてのチェックボックスをオンにしていることが多いですが、不要なものはオフにできます。
このリストの一番上に表示されている [RegexMatchAutoSuggestProvider] は、AutoSuggest を強化するプラグインです。これについては後で説明します。[AutoText] と [翻訳メモリと自動翻訳] については、別の画面で詳細を設定できます。これも後述します。
[AutoSuggest 辞書] は、特定のメモリから用語を抽出した対訳集 (.bpm ファイル) のようなものです。長らく、フリーランス版ではこの辞書を生成することができなかったのですが、なんと Trados Studio 2021 からは生成できるようになっています。(私は、この記事を書いていて、辞書生成機能がフリーランス版に追加されていることを初めて知りました。びっくりしました。) これも後で簡単に説明します。
この画面の細かい設定は、正直に言って、個人の好みです。メモリや用語集の充実度にもよりますし、慣れの問題もあります。候補があまりに多く表示されるようなら [翻訳メモリと自動翻訳] をオフにするとか、作業しているプロジェクトに合わせて面倒がらずに設定を変えてください。(まあ、結局、プロジェクトごとに設定を変えることになるので面倒です。)
では、いくつかの機能を詳しく見ていきます。
この機能を有効にすると、表示される候補がかなり多くなります。私は、候補を減らすため、たいてい「あいまい一致」のチェックボックスはオフにしています。
訳文でよく使う語句を自分で登録しておくことができます。AutoText は、原文に関係なく表示されるのが特徴です。メモリや用語集は原文に該当する語句がなければ機能しませんが、AutoText は訳文の語句を登録しているので、最初の数文字を入力すれば原文に関係なく候補が表示されてきます。「person in charge」や「company/organization」など、空白やスラッシュを含む語句も登録できます。
AutoText のリストはファイルとして保存できます。右下にある [インポート]と[エクスポート] のボタンを使います。このリストは、Trados が落ちたりすると、新しく追加した語句が消えてしまうことがあるので、こまめにエクスポートしておくことをお勧めします。
Regex Match AutoSuggest Provider は、AutoSuggest を強化してくれるプラグインです。無料で使用できます。詳細については、以前の記事「■プラグイン■ 原文にある英数字を訳文にコピーする (日⇒英の場合)」を参照してください。
以前の記事では英数字をコピーする方法しか説明していませんが、もちろん、いろいろな使い方ができます。基本的には正規表現ですが、普通の語句を登録するだけなら正規表現を特に意識する必要はありません。
たとえば、日本語でよく使われる丸囲み数字を以下のように変換できます (@ を (1) に変換する)。
以下は、数字を月名に変換しています。全角に対応するため少しだけ正規表現を使っています (すみません、順番がばらばらなことに特に意味はありません)。
上図のように設定した場合、11 に対しては November と January の両方が候補として表示されます。また、単に数字を指定しているだけなので、月名とは関係のない数字の場合も月名が候補として表示されます。その辺りは、私としては許容範囲内です。
最後に AutoSuggest 辞書です。前述のとおり、この辞書はこれまでフリーランス版では作成できなかったので、私は使ったことがありません。どの程度役立つのかは未知数ですが、大きなメモリが提供されている場合は便利に機能するのではないかと思います。
AutoSuggest 辞書の個々の設定は、[ファイル] > [オプション] ではなく、プロジェクトの設定から行います。プロジェクトの設定で [言語ペア] > [特定の言語ペア] > [AutoSuggest 辞書] をクリックすると以下の画面が表示されます (言語に依存するものなので、[すべての言語ペア] ではなく、Japanese など特定の言語ペアから設定します)。
まず、辞書を作成します。この画面で [生成] ボタンをクリックするとウィザードが開始されます。ウィザードを進めていけば、辞書ファイル (.bpm) ができあがります。メモリが大きいとかなり時間がかかると思われるので、設定を適宜調整してみてください。また、辞書の作成は、この画面ではなく、[翻訳メモリ] ビューから行うこともできます。
辞書ファイルが作成されたら、[追加] ボタンをクリックしてそのファイルを登録します。これで、準備は完了です。辞書の内容が候補に表示されてくるはずです。
今回は以上です。AutoSuggest は、設定によっては、期待どおりの候補が表示されなかったり、表示される候補が多すぎたりすることがあります。ベストな設定を見つけるのはなかなか難しいですが、いろいろとお試しください。作業しているプロジェクトに応じて、こまめに設定を変えることも大切かと思います (そう思ってはいますが、実際のところは面倒です)。
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前編に引き続き、Trados 内でタイピングを減らす方法を考えてみます。今回は、プロジェクトの設定ではなく、[ファイル] > [オプション] から行う Trados 環境全体の設定です。これらの設定の詳細については、以前の記事「Trados の設定を変えるには − [ファイル] と [プロジェクトの設定]」を参照してください。
[ファイル] > [オプション] の設定は、プロジェクトの設定と異なり、一度設定すればどのプロジェクトで作業をしても有効です。これは便利である反面、プロジェクトごとに設定を変えることはできないということでもあります。言語の方向 (日英か、英日か) によって設定を変えたくなることはありますが、プロジェクトを変えても設定は変わらないので、そうした場合は手動で設定を変えるしかありません。(結局、プロジェクトごとに設定を変えるんじゃん! ということです。)
今回紹介する機能は、主に AutoSuggest です。AutoSuggest は、英訳をする (英語を入力する) ときはうまく機能しますが、和訳をする (日本語を入力する) ときは、IME との関係上、あまり期待どおりの動作になりません。和訳の場合は、AutoSuggest は無効にして IME の機能を活用するのも一つの選択肢です。この記事の以下の説明は、英訳をする (英語を入力する) 場合を前提としています。では、始めていきましょう。
AutoSuggest
AutoSuggest の有効無効の切り替えや詳細の設定は、[ファイル] > [オプション] > [AutoSuggest] から行います。
画面下部の [AutoSuggest のプロバイダ] リストで、AutoSuggest の候補をどこから持ってくるのかを指定できます。順番も変更できます。私はすべてのチェックボックスをオンにしていることが多いですが、不要なものはオフにできます。
このリストの一番上に表示されている [RegexMatchAutoSuggestProvider] は、AutoSuggest を強化するプラグインです。これについては後で説明します。[AutoText] と [翻訳メモリと自動翻訳] については、別の画面で詳細を設定できます。これも後述します。
[AutoSuggest 辞書] は、特定のメモリから用語を抽出した対訳集 (.bpm ファイル) のようなものです。長らく、フリーランス版ではこの辞書を生成することができなかったのですが、なんと Trados Studio 2021 からは生成できるようになっています。(私は、この記事を書いていて、辞書生成機能がフリーランス版に追加されていることを初めて知りました。びっくりしました。) これも後で簡単に説明します。
この画面の細かい設定は、正直に言って、個人の好みです。メモリや用語集の充実度にもよりますし、慣れの問題もあります。候補があまりに多く表示されるようなら [翻訳メモリと自動翻訳] をオフにするとか、作業しているプロジェクトに合わせて面倒がらずに設定を変えてください。(まあ、結局、プロジェクトごとに設定を変えることになるので面倒です。)
では、いくつかの機能を詳しく見ていきます。
翻訳メモリと自動翻訳
この機能を有効にすると、表示される候補がかなり多くなります。私は、候補を減らすため、たいてい「あいまい一致」のチェックボックスはオフにしています。
AutoText
訳文でよく使う語句を自分で登録しておくことができます。AutoText は、原文に関係なく表示されるのが特徴です。メモリや用語集は原文に該当する語句がなければ機能しませんが、AutoText は訳文の語句を登録しているので、最初の数文字を入力すれば原文に関係なく候補が表示されてきます。「person in charge」や「company/organization」など、空白やスラッシュを含む語句も登録できます。
AutoText のリストはファイルとして保存できます。右下にある [インポート]と[エクスポート] のボタンを使います。このリストは、Trados が落ちたりすると、新しく追加した語句が消えてしまうことがあるので、こまめにエクスポートしておくことをお勧めします。
Regex Match AutoSuggest Provider
Regex Match AutoSuggest Provider は、AutoSuggest を強化してくれるプラグインです。無料で使用できます。詳細については、以前の記事「■プラグイン■ 原文にある英数字を訳文にコピーする (日⇒英の場合)」を参照してください。
以前の記事では英数字をコピーする方法しか説明していませんが、もちろん、いろいろな使い方ができます。基本的には正規表現ですが、普通の語句を登録するだけなら正規表現を特に意識する必要はありません。
たとえば、日本語でよく使われる丸囲み数字を以下のように変換できます (@ を (1) に変換する)。
以下は、数字を月名に変換しています。全角に対応するため少しだけ正規表現を使っています (すみません、順番がばらばらなことに特に意味はありません)。
上図のように設定した場合、11 に対しては November と January の両方が候補として表示されます。また、単に数字を指定しているだけなので、月名とは関係のない数字の場合も月名が候補として表示されます。その辺りは、私としては許容範囲内です。
AutoSuggest 辞書
最後に AutoSuggest 辞書です。前述のとおり、この辞書はこれまでフリーランス版では作成できなかったので、私は使ったことがありません。どの程度役立つのかは未知数ですが、大きなメモリが提供されている場合は便利に機能するのではないかと思います。
AutoSuggest 辞書の個々の設定は、[ファイル] > [オプション] ではなく、プロジェクトの設定から行います。プロジェクトの設定で [言語ペア] > [特定の言語ペア] > [AutoSuggest 辞書] をクリックすると以下の画面が表示されます (言語に依存するものなので、[すべての言語ペア] ではなく、Japanese など特定の言語ペアから設定します)。
まず、辞書を作成します。この画面で [生成] ボタンをクリックするとウィザードが開始されます。ウィザードを進めていけば、辞書ファイル (.bpm) ができあがります。メモリが大きいとかなり時間がかかると思われるので、設定を適宜調整してみてください。また、辞書の作成は、この画面ではなく、[翻訳メモリ] ビューから行うこともできます。
辞書ファイルが作成されたら、[追加] ボタンをクリックしてそのファイルを登録します。これで、準備は完了です。辞書の内容が候補に表示されてくるはずです。
今回は以上です。AutoSuggest は、設定によっては、期待どおりの候補が表示されなかったり、表示される候補が多すぎたりすることがあります。ベストな設定を見つけるのはなかなか難しいですが、いろいろとお試しください。作業しているプロジェクトに応じて、こまめに設定を変えることも大切かと思います (そう思ってはいますが、実際のところは面倒です)。
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2022年12月24日
Vale を使ってみる
Advent Calendar 「翻訳に役立ってくれそうなツール」の記事です。今回は、英文校正ツール Vale についてです。
以前の記事で英文用の校正ツールとして Vale という名前だけ挙げていました。Vale はコマンドラインで実行する校正ツールです。マイクロソフトや Google Developers などのスタイルガイドに沿ってチェックを行うことができます。Grammarly のような校正ツールにも似ていますが、それらとはまた違った観点でチェックが行われるので、役立つ場面もあるかと思い、今回使ってみることにしました。
Vale では、校正ルールの設定ファイルが「パッケージ」として提供されています。マイクロソフトや Google Developers を始めいくつかのスタイルガイド用にパッケージが用意されているので、これらをダウンロードして使えばそれぞれのスタイルガイドに合わせてチェックを行えます。
こうしたパッケージの操作も含めて、Vale はコマンドを打って操作する必要があります。コマンド操作は少し面倒ですが、慣れてしまえば大丈夫です。インストールも、Chocolatey を使うとか、Path を通すとか、いろいろ書いてありますが、すみません、今回その辺りのことはすべて省略します。普通にダウンロードして、プログラム本体、設定ファイル、チェック対象ファイルをすべて同じフォルダーに入れてしまえばひとまず動きます。この記事では「ひとまず動かす」ことを目標とします。
手順は、以下のとおりです。
では、始めていきましょう。
Vale のプログラムをダウンロードします。GitHub ページの右側にある [Releases] から最新版をダウンロードできます。このリンクをクリックするとダウンロード ファイルの一覧が表示されるので、Windows だったら vale_2.21.3_Windows_64-bit.zip などをダウンロードします。
zip ファイルをダウンロードしたら、適当なフォルダーを作ってそこに展開します。プログラム本体 (vale.exe) を展開したフォルダーに、この後、設定ファイル (.ini ファイルと各種パッケージ) とチェック対象ファイル (テキスト ファイルなど) を入れ、プログラムを実行します。
プログラム本体 (vale.exe) を展開できたら、次に設定ファイル (.ini ファイル) を作成します。設定ファイルは Vale のサイト上にある Config Generator を使って簡単に作成できます。Vale.sh ページの上部にあるメニューから [Resource ] > [Config Generator] を選択すると、以下のようなページが表示されます。
上部の 3 つの項目をそれぞれ選択すると、下部に ini ファイル用のテキストが自動的に生成されて表示されます。vale.exe と同じ場所に「vale.ini」という名前のファイルを作成し、そこにこの表示されたテキストをコピペすれば設定ファイルは完成です。
3 つの項目は、ほぼ表示されている名前のとおりの意味です。[Base style] で、マイクロソフトか Google かなど基本となるスタイルを選択します。[Supplementary styles] は補助的なスタイルです。これは複数選択できます。[Static Site Generator] は特に必要なければ「None」のままで OK です。
設定ファイルが完成したら、設定ファイルに指定したスタイルのパッケージをダウンロードして設定します。ここからの操作はコマンドで行います。
まず、コマンド操作用に Windows PowerShell ウィンドウを起動します。PowerShell ウィンドウの起動には Shift+右クリックを使うと便利です。vale.exe と vale.ini が格納されているフォルダーを Shift キーを押しながら右クリックし、表示されるメニューから [PowerShell ウィンドウをここで開く] を選択します。これで、PowerShell ウィンドウが起動します。
ウィンドウが起動したら、念のため vale.exe と vale.ini が格納されているフォルダーにいることを確認してください。そのフォルダーで以下のコマンドを実行します。
これで、設定ファイルに指定したスタイルのパッケージが自動でダウンロードされ、設定されます。パッケージは styles というフォルダーに格納されます。以下のように SUCCESS と表示され、100% となれば準備完了です。これでチェックを実行できます。
設定ファイルとパッケージの準備ができたら、いよいよチェックの実行です。チェック対象のテキスト ファイルを同じフォルダー (vale.exe および vale.ini と同じ場所) に入れます。これで、コマンドを入力すればチェックが実行されます。以下は、test.txt というファイルのチェックを実行しています。
コマンドを実行すると、チェックの結果が出力されます。これで完了です。出力が折り返されて見にくい場合は
このオプションを付けると以下のように出力されます。メッセージが折り返されずに表示されるので見やすくなります。
コマンドの詳細については CLI Manual を参照してください。また、設定ファイルでもいろいろと細かい設定ができます。
今回は以上です。本当に「ひとまず動かした」だけですが、けっこういろいろなエラーが検出されて驚きました。たとえば、技術英語としては「don’t などの省略形は使わない」というルールが一般的だと思いますが、マイクロソフトのスタイルガイドでは省略形を使ってよいことになっています。私は、今回のチェックで検出されて初めてこのルールに気付きました。
なお、今回は Windows PowerShell ウィンドウでコマンドを使用しましたが、Vale には VS Code 用の拡張機能も用意されています。VS Code 内で拡張機能を使った方が簡単に操作できるかもしれないです。その辺りのことは、また次の機会に調べてみたいと思います。
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以前の記事で英文用の校正ツールとして Vale という名前だけ挙げていました。Vale はコマンドラインで実行する校正ツールです。マイクロソフトや Google Developers などのスタイルガイドに沿ってチェックを行うことができます。Grammarly のような校正ツールにも似ていますが、それらとはまた違った観点でチェックが行われるので、役立つ場面もあるかと思い、今回使ってみることにしました。
Vale では、校正ルールの設定ファイルが「パッケージ」として提供されています。マイクロソフトや Google Developers を始めいくつかのスタイルガイド用にパッケージが用意されているので、これらをダウンロードして使えばそれぞれのスタイルガイドに合わせてチェックを行えます。
こうしたパッケージの操作も含めて、Vale はコマンドを打って操作する必要があります。コマンド操作は少し面倒ですが、慣れてしまえば大丈夫です。インストールも、Chocolatey を使うとか、Path を通すとか、いろいろ書いてありますが、すみません、今回その辺りのことはすべて省略します。普通にダウンロードして、プログラム本体、設定ファイル、チェック対象ファイルをすべて同じフォルダーに入れてしまえばひとまず動きます。この記事では「ひとまず動かす」ことを目標とします。
手順は、以下のとおりです。
- プログラムの zip ファイルをダウンロードして展開する
- 設定ファイルを作成する
- パッケージを設定する
- チェックを実行する
では、始めていきましょう。
1. プログラムの zip ファイルをダウンロードして展開する
Vale のプログラムをダウンロードします。GitHub ページの右側にある [Releases] から最新版をダウンロードできます。このリンクをクリックするとダウンロード ファイルの一覧が表示されるので、Windows だったら vale_2.21.3_Windows_64-bit.zip などをダウンロードします。
zip ファイルをダウンロードしたら、適当なフォルダーを作ってそこに展開します。プログラム本体 (vale.exe) を展開したフォルダーに、この後、設定ファイル (.ini ファイルと各種パッケージ) とチェック対象ファイル (テキスト ファイルなど) を入れ、プログラムを実行します。
2. 設定ファイルを作成する
プログラム本体 (vale.exe) を展開できたら、次に設定ファイル (.ini ファイル) を作成します。設定ファイルは Vale のサイト上にある Config Generator を使って簡単に作成できます。Vale.sh ページの上部にあるメニューから [Resource ] > [Config Generator] を選択すると、以下のようなページが表示されます。
上部の 3 つの項目をそれぞれ選択すると、下部に ini ファイル用のテキストが自動的に生成されて表示されます。vale.exe と同じ場所に「vale.ini」という名前のファイルを作成し、そこにこの表示されたテキストをコピペすれば設定ファイルは完成です。
3 つの項目は、ほぼ表示されている名前のとおりの意味です。[Base style] で、マイクロソフトか Google かなど基本となるスタイルを選択します。[Supplementary styles] は補助的なスタイルです。これは複数選択できます。[Static Site Generator] は特に必要なければ「None」のままで OK です。
3. パッケージを設定する
設定ファイルが完成したら、設定ファイルに指定したスタイルのパッケージをダウンロードして設定します。ここからの操作はコマンドで行います。
まず、コマンド操作用に Windows PowerShell ウィンドウを起動します。PowerShell ウィンドウの起動には Shift+右クリックを使うと便利です。vale.exe と vale.ini が格納されているフォルダーを Shift キーを押しながら右クリックし、表示されるメニューから [PowerShell ウィンドウをここで開く] を選択します。これで、PowerShell ウィンドウが起動します。
ウィンドウが起動したら、念のため vale.exe と vale.ini が格納されているフォルダーにいることを確認してください。そのフォルダーで以下のコマンドを実行します。
vale sync
これで、設定ファイルに指定したスタイルのパッケージが自動でダウンロードされ、設定されます。パッケージは styles というフォルダーに格納されます。以下のように SUCCESS と表示され、100% となれば準備完了です。これでチェックを実行できます。
4. チェックを実行する
設定ファイルとパッケージの準備ができたら、いよいよチェックの実行です。チェック対象のテキスト ファイルを同じフォルダー (vale.exe および vale.ini と同じ場所) に入れます。これで、コマンドを入力すればチェックが実行されます。以下は、test.txt というファイルのチェックを実行しています。
vale test.txt
コマンドを実行すると、チェックの結果が出力されます。これで完了です。出力が折り返されて見にくい場合は
--no-wrap
オプションを付けて実行します。vale --no-wrap test.txt
このオプションを付けると以下のように出力されます。メッセージが折り返されずに表示されるので見やすくなります。
コマンドの詳細については CLI Manual を参照してください。また、設定ファイルでもいろいろと細かい設定ができます。
今回は以上です。本当に「ひとまず動かした」だけですが、けっこういろいろなエラーが検出されて驚きました。たとえば、技術英語としては「don’t などの省略形は使わない」というルールが一般的だと思いますが、マイクロソフトのスタイルガイドでは省略形を使ってよいことになっています。私は、今回のチェックで検出されて初めてこのルールに気付きました。
なお、今回は Windows PowerShell ウィンドウでコマンドを使用しましたが、Vale には VS Code 用の拡張機能も用意されています。VS Code 内で拡張機能を使った方が簡単に操作できるかもしれないです。その辺りのことは、また次の機会に調べてみたいと思います。
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