昨日、Trados 質問会ウェビナーを視聴しました。今回はいつもより短時間で、さらっと終わってしまった印象でしたが、いくつか有用な情報はありました。なかでも、2019 にアップグレードしたばかりの私にとって重要だったのは、
ワンクリックですべての分節を選択できる
機能でした。このブログでは紹介するのをすっかり忘れていましたが、2019 バージョンのエディタに導入された最大の新機能はこれでした。
しかし、この機能には落とし穴があります。大きなファイルを開いたときは、最初の方の一部の分節しか選択されません。
エディタで大きなファイルを開いた場合、画面自体はすぐに表示されても、下の方にスクロールしたり、Ctrl+End を押して末尾に移動したりすると、分節が空白になる、画面が動かない、といったことがあると思います。おそらく、ファイルの最初の方の分節だけを読み込んでとりあえず表示し、後ろの方の分節は後から読み込んでいるんだと思います。
この「後ろの方の分節がまだ読み込まれていない状態」で上記の部分をクリックしても、読み込まれている分節が選択されるだけで、後ろの方の分節は選択されません。すべての分節を確実に選択するには、カーソルをファイルの末尾まで移動して、いったんすべてを表示する必要があります。
でも、ワンクリックで全選択したいと思うのは、たいてい、大きなファイルのときです。大きいファイルこそ、末尾まで移動するのが面倒だから。すぐに全選択をすることが無理なら、せめて、クリックした後にしばらく待たせるとか、なんとかならないですかねぇ。何事もなかったように操作できてしまうと、全選択したはずなのになぜ?ってことになります。
今回は、これだけです。この質問会ウェビナーでは、私がもう 1 つ気になった情報として、用語集から重複している用語を削除できる、というものがありました。これについてはちょっと検証してからまた紹介したいと思います。
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2020年06月26日
2020年06月15日
Google のテクニカル ライティング コース
最近、Google のテクニカル ライティング コースが良かったといろいろなところで紹介されていたので読んでみました。Google のライティングについては、以前の記事 公開されているスタイルガイド (日英翻訳向け) でスタイルガイドを取り上げました。このスタイルガイドもコースの中で参考資料として紹介されています。
この Technical Writing Courses は 2 つのコースで構成されています。
One がテクニカル ライティングそのものの細かい事項で、Two はドキュメント全体についてや、テキスト以外の要素 (図やサンプルコード) についてなど、ライティングの補足事項のような感じです。
今回の記事では、日英翻訳に役立ちそうなことで、私が知らなかったことを中心にごくごく一部だけを紹介したいと思います。このライティング コースには基本的なことも含めて多くのことが書かれています。全体の内容についてはコース自体の Summary (One、Two) を参照してください。当然ながら、とてもよくまとまっています。
日本語では「略語 (フルスペル)」と略語が先になっていることが多いです。略語がどれくらい浸透しているかにもよりますが、たぶん、日本語を読む人は英語のフルスペルをあまり気にしないからかと思います。また、文章の中で略語が続いたからたまにフルスペルに戻そう、といった気遣いは不要なようです。
代名詞の使い方については、Google のこのコースに限らずいろいろなところで説明されていると思います。代名詞を先に使わないというルールは、語順の入れ替えが発生する翻訳ならではの注意点かと思っていましたが、最初から英語を書く人も注意が必要なようです。また、5 語という基準は私は初めて知りました。
箇条書きの各項目は、名詞句でも大文字で始めてしまっていたような ( ̄0 ̄) ピリオドは、翻訳の場合でも、原文に従うのではなく、このルールを適用することが多いと思います。
表が複数ある場合、それぞれ内容が違うのに列の見出しはどの表も同じということが多々あります。たとえば、日本語の原文では「項目」や「内容」といった見出しがすごく多い気がします。 で、その下に文字がびっしりと並んでいたりすると、もう読む気がなくなります。
翻訳では、原文を切ったりつなげたりして、文の数が変わることがよくあります。日本語は 2 文だったのに、英訳したら 1 文になってしまった、なんてことは避けた方がいいんですかね。どうだろう。まあ、つなげることはあまりないので、細かく切りすぎて 7 文を超えないかを注意した方がよさそうです。
コメントが短すぎて暗号のようだったり、ソースコードとまったく同じだったり、そんなことがよくあります。また、英訳すると同じになってしまうケースもちょっと困ります。たとえば、
翻訳者として使うことはあまりありませんが、いつも Word と Excel ばかりなので、いろいろ試してみるのもよさそうです。
このライティング コースは主にソフトウェア開発者向けなので IT 分野の翻訳で頻出する表現がたくさんありました。例文もプログラミング関連のものが多いです。そんな中で私が気になった表現を 2 つだけ紹介します。
「知識の呪い」と訳されることが多いです。自分がよくわかっている内容は、わからない人の気持ちがわからず、返ってうまく説明できない、というときに使われる言葉です。私は、最初、curse を course と見間違えてしまいました。curse なんて IT 分野ではめったに登場してこないです (;。;)
code はたいていは名詞で、動詞でも自動詞として使われることが多いと思います。他動詞では、implement と同じく「〜を実装する」という意味のようです。
今回は以上です。翻訳では原文があるので全部を適用するのはなかなか難しいですが、英語ネイティブでない英訳者は、こうしたちょっと名の通ったガイドラインを知っておくと何かのときの備えとしていいかもしれないです。ここにこう書いてありますよって、自分の主張の根拠に使えそうです。
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この Technical Writing Courses は 2 つのコースで構成されています。
One がテクニカル ライティングそのものの細かい事項で、Two はドキュメント全体についてや、テキスト以外の要素 (図やサンプルコード) についてなど、ライティングの補足事項のような感じです。
今回の記事では、日英翻訳に役立ちそうなことで、私が知らなかったことを中心にごくごく一部だけを紹介したいと思います。このライティング コースには基本的なことも含めて多くのことが書かれています。全体の内容についてはコース自体の Summary (One、Two) を参照してください。当然ながら、とてもよくまとまっています。
略語 Acronyms
Technical Writing One > Words > Use acronyms properly- フルスペルを先に書き、「フルスペル (略語)」の形にする。
- フルスペルと略語を混ぜて使わない。一度略語を使ったら、その後はずっと略語にする。
日本語では「略語 (フルスペル)」と略語が先になっていることが多いです。略語がどれくらい浸透しているかにもよりますが、たぶん、日本語を読む人は英語のフルスペルをあまり気にしないからかと思います。また、文章の中で略語が続いたからたまにフルスペルに戻そう、といった気遣いは不要なようです。
代名詞 Pronouns
Technical Writing One > Words > Disambiguate pronouns- 本来の名詞よりも先に代名詞を使わない。
- 本来の名詞との間の語数が 5 語を超える場合は代名詞を使わない。
代名詞の使い方については、Google のこのコースに限らずいろいろなところで説明されていると思います。代名詞を先に使わないというルールは、語順の入れ替えが発生する翻訳ならではの注意点かと思っていましたが、最初から英語を書く人も注意が必要なようです。また、5 語という基準は私は初めて知りました。
箇条書き Lists
Technical Writing One > Lists and tables > Punctuate items appropriately- 文のときは、大文字で始め、ピリオドを付ける。
- そうでないときは、小文字で始め、ピリオドは付けない。
箇条書きの各項目は、名詞句でも大文字で始めてしまっていたような ( ̄0 ̄) ピリオドは、翻訳の場合でも、原文に従うのではなく、このルールを適用することが多いと思います。
表 Tables
Technical Writing One > Lists and tables > Create useful tables- 各列に、意味のある見出しを付ける。
- 表の 1 マスには、2 文まで。それを超える場合は、構成を考え直す。
表が複数ある場合、それぞれ内容が違うのに列の見出しはどの表も同じということが多々あります。たとえば、日本語の原文では「項目」や「内容」といった見出しがすごく多い気がします。 で、その下に文字がびっしりと並んでいたりすると、もう読む気がなくなります。
段落 Paragraphs
Technical Writing One > Paragraphs > Don't make paragraphs too long or too short- 1 段落は、長すぎても短すぎてもいけない。3 〜 5文程度。7 文を超えることは避ける。
- 1 文のみの段落がたくさんあるのもよくない。
翻訳では、原文を切ったりつなげたりして、文の数が変わることがよくあります。日本語は 2 文だったのに、英訳したら 1 文になってしまった、なんてことは避けた方がいいんですかね。どうだろう。まあ、つなげることはあまりないので、細かく切りすぎて 7 文を超えないかを注意した方がよさそうです。
ソースコード内のコメント Comments
Technical Writing Two > Creating sample code > Commented- 短い方がよいが、短さより、明確さを重視する。
- わかりきっていることを書かない。
コメントが短すぎて暗号のようだったり、ソースコードとまったく同じだったり、そんなことがよくあります。また、英訳すると同じになってしまうケースもちょっと困ります。たとえば、
Create
という命令に「作成」というコメントが付いている場合、英語のコメントを付けても意味がないですが、訳者の判断でコメントを消すわけにもいかず、悩ましいです。おすすめ作図ツール Illustration tools
Technical Writing Two > Illustrating > Illustration tools翻訳者として使うことはあまりありませんが、いつも Word と Excel ばかりなので、いろいろ試してみるのもよさそうです。
気になった英語表現
このライティング コースは主にソフトウェア開発者向けなので IT 分野の翻訳で頻出する表現がたくさんありました。例文もプログラミング関連のものが多いです。そんな中で私が気になった表現を 2 つだけ紹介します。
- the curse of knowledge
「知識の呪い」と訳されることが多いです。自分がよくわかっている内容は、わからない人の気持ちがわからず、返ってうまく説明できない、というときに使われる言葉です。私は、最初、curse を course と見間違えてしまいました。curse なんて IT 分野ではめったに登場してこないです (;。;)
- code (他動詞)
If there is more than one way to code the task, code it in the manner ...
code はたいていは名詞で、動詞でも自動詞として使われることが多いと思います。他動詞では、implement と同じく「〜を実装する」という意味のようです。
今回は以上です。翻訳では原文があるので全部を適用するのはなかなか難しいですが、英語ネイティブでない英訳者は、こうしたちょっと名の通ったガイドラインを知っておくと何かのときの備えとしていいかもしれないです。ここにこう書いてありますよって、自分の主張の根拠に使えそうです。
2020年05月28日
さらに高度な表示フィルタが便利!
先日、SDL Trados Studio を 2017 から 2019 にアップグレードしました。前回の記事は「2019 へのアップグレード」というタイトルだったにもかかわらず、すみません、2019 についてほとんど何も書いていませんでした。2017 のバグがあまりに多く、そればかり気になっていました。今回こそは 2019 について書きたいと思いますが、Trados 本体の新機能としては個人翻訳者に役立つ大きなものが見当たらないので、2019 で使える便利なプラグイン Community Advanced Display Filter を紹介しようと思います。
Community Advanced Display Filter は、SDL のブログでも「さらに高度な表示フィルタ」として紹介されています (プラグインのインストール方法から詳しく解説されているので、参考にしてください)。このプラグインは 2017 でも使えますが、最新の機能は 2019 でしか使えません。また、次期バージョンの 2021 では、このプラグインが標準機能として本体に組み込まれるそうです。現在のようにプラグインとしての提供では別途インストールが必要ですが、本体に装備されればそうした手間もなくなるのでさらに便利になりそうです。
さて、上記の SDL のブログのタイトルには「さらに高度な表示フィルタ」と少し妙な表現が使われています。これは、「さらに」「高度」ではない表示フィルタが存在するからです。
@ [レビュー] タブ > 表示フィルタ
A [表示] タブ > 高度な表示フィルタ
B [表示] タブ > Community Advanced Display Filter <--- これが「さらに高度な表示フィルタ」
まず、高度ではない普通のフィルタが [レビュー] タブにある「表示フィルタ」です。最も手軽に使えるフィルタで、ステータスなどの条件を 1 つだけ選択するか、検索したい文字列を入力して使用します。これに対して、複数の条件を指定できるなど、少し機能が強化されているフィルタが [表示] タブから表示する「高度な表示フィルタ」です。ここまでの 2 つが現在のところ Trados 本体に組み込まれている機能で、それらとは別にプラグインとして追加する Community Advanced Display Filter が「さらに高度な表示フィルタ」となります。
正直にいって、3 つに分かれている状態はわかりにくいですし、各画面での操作も面倒です。でも、2019 バージョンの Community Advanced Display Filter は少しだけ使い勝手が良くなっています。
2019 バージョンの Community Advanced Display Filter の使いやすいところは、右クリックで使える点です。エディタで右クリックをすると、次のようなメニューが表示されます。
4 つのコマンドが用意されていますが、私がよく使用するのは下の 3 つです。Source Filter と Target Filter は、カーソルのある分節の原文全体または訳文全体でフィルタをかけます。つまり、原文または訳文がまったく同じ繰り返しの分節を表示できます。
一番下の Selection Filter は、分節内の選択した文字列でフィルタをかけます。原文と訳文のどちらで選択しても大丈夫です。さらに、原文と訳文の両方で文字列を選択しておくと、両方を条件としてフィルタがかかります。
最近、Memsource を使うことが多かった私は、Memsource のフィルタの便利さにすっかり慣れてしまい、Trados のフィルタにかなりストレスを感じていました。でも、この右クリックのメニューのおかげで Memsource と同じようにワンアクションでフィルタをかけられるようになりました。便利です!
2019 バージョンの Community Advanced Display Filter で私が気になっていた機能の 1 つが「Highlight」です。
何か条件を指定してフィルタをかけた後、[Highlight] から色を選択して、表示中の分節に蛍光ペンでマークを付けることができます。[Clear] を選択すると、追加した蛍光ペンをすべて削除できます。
便利そうな機能ですが、実際に使うときはいくつか注意する点があります。
■ ステータスが変わる
蛍光ペンを追加する操作をすると、上図のようにステータスが「翻訳中」になってしまいます。「未翻訳」でも「翻訳済み」でもすべて「翻訳中」に変わります。Trados にとっては、人間が行う普通の編集と同じ認識になるようです。また、[Clear] で削除したときも、「翻訳中」に変わります。
■ エディタの設定で「書式を表示する」
上図のようにエディタ上で蛍光ペンの色を表示するには、エディタの [書式の表示スタイル] で書式を表示するように設定しておく必要があります。
[ファイル] > [オプション] > [エディタ] > [並列型エディタ] から設定します。
3 つのオプションがありますが、一番下の [書式を表示せずにタグを表示する] を選択していると、書式設定のタグが表示されるだけで、上図のような緑色の蛍光ペンの表示にはなりません。蛍光ペンを表示するには、上の 2 つのオプションのどちらかを選択する必要があります (この書式表示の設定については、以前の記事 エディタ上のフォントを変える でも少し説明しています)。私のお勧めは [すべての書式とタグを表示する] です。
■ 生成される訳文にタグが挿入される
書式の表示に [すべての書式とタグを表示する] をお勧めするのには理由があります。それは、この蛍光ペンがタグとして訳文に挿入されるからです。この蛍光ペンは、Trados のエディタ上のみのマーキングではなく、通常の書式と同じようにタグとして訳文に挿入され、生成される訳文にも蛍光ペンの書式が反映されます。
タグの内容を表示してみるとわかりますが、<cfhighlight> という書式タグが挿入されています。これは、Word で使われる蛍光ペンのタグです。このため、このまま訳文生成をすれば蛍光ペン付きの状態で訳文が生成されます。蛍光ペン付きの訳文を生成できるのは便利な場合もありますが、実は少し注意が必要です。
■ Word ファイル以外は要注意
Office 文書の場合、Word には蛍光ペンの機能がありますが、Excel や PowerPoint にはその機能がありません (PowerPoint の一部のバージョンにはあるようですが)。そのため、Word 以外のファイルに <cfhighlight> を挿入しても無視されてしまいます。また、無視されるだけならいいのですが、場合によっては、エラーになり訳文生成ができなくなることもあります。
HTML や XML など、ほかの形式の場合も同様で、<cfhighlight> タグを挿入しても、生成される訳文に蛍光ペンが表示されるわけではありません。エディタ上で蛍光ペンを残しておくと訳文に余計なタグが入ることになるので、訳文生成をする前に蛍光ペンはすべて削除した方がよさそうです。
Community Advanced Display Filter はとても便利です。便利ですが、そもそも表示フィルタって使いにくいですよね?? フィルタをかけて分節を非表示にすると、翻訳対象の前後の分節が見えなくなり作業しにくいことがよくあります。ツールを使っていると文脈を見失いがちとか、パッチワーク翻訳はだめとか、さんざん言われているのに、なぜ表示フィルタだけの強化なんだろうと疑問です。
タグの中身を検索する機能は、昔のように検索機能の中にあって欲しいし、ロックされている分節を飛ばしてジャンプしてくれる機能も欲しいところです。非表示にしないで、表示したままでジャンプして欲しいんです。非表示にしちゃおうっというのは、どちらかといえばコーディネーターさんの発想のような気がします。一括でロックをかけたいとか、特定の条件でワード数をカウントしたいとか、そんな用途じゃないかと思います。分節をひとつひとつ作業していく翻訳者としては、検索機能とジャンプ機能の充実も期待しています。
今回は以上です。先日、SDL のオンライン ロードショーに参加しましたが、今回の内容は主に企業向けの感じがしました。前回は翻訳者向けだった気がするのでバランスを取っているのかもしれないですが、今後も、翻訳者の存在が忘れられないよう、ほそぼそとでも声をあげていきたいなあと思っています。
Community Advanced Display Filter は、SDL のブログでも「さらに高度な表示フィルタ」として紹介されています (プラグインのインストール方法から詳しく解説されているので、参考にしてください)。このプラグインは 2017 でも使えますが、最新の機能は 2019 でしか使えません。また、次期バージョンの 2021 では、このプラグインが標準機能として本体に組み込まれるそうです。現在のようにプラグインとしての提供では別途インストールが必要ですが、本体に装備されればそうした手間もなくなるのでさらに便利になりそうです。
表示フィルタは 3 つある
さて、上記の SDL のブログのタイトルには「さらに高度な表示フィルタ」と少し妙な表現が使われています。これは、「さらに」「高度」ではない表示フィルタが存在するからです。
@ [レビュー] タブ > 表示フィルタ
A [表示] タブ > 高度な表示フィルタ
B [表示] タブ > Community Advanced Display Filter <--- これが「さらに高度な表示フィルタ」
まず、高度ではない普通のフィルタが [レビュー] タブにある「表示フィルタ」です。最も手軽に使えるフィルタで、ステータスなどの条件を 1 つだけ選択するか、検索したい文字列を入力して使用します。これに対して、複数の条件を指定できるなど、少し機能が強化されているフィルタが [表示] タブから表示する「高度な表示フィルタ」です。ここまでの 2 つが現在のところ Trados 本体に組み込まれている機能で、それらとは別にプラグインとして追加する Community Advanced Display Filter が「さらに高度な表示フィルタ」となります。
正直にいって、3 つに分かれている状態はわかりにくいですし、各画面での操作も面倒です。でも、2019 バージョンの Community Advanced Display Filter は少しだけ使い勝手が良くなっています。
右クリックで使える
2019 バージョンの Community Advanced Display Filter の使いやすいところは、右クリックで使える点です。エディタで右クリックをすると、次のようなメニューが表示されます。
4 つのコマンドが用意されていますが、私がよく使用するのは下の 3 つです。Source Filter と Target Filter は、カーソルのある分節の原文全体または訳文全体でフィルタをかけます。つまり、原文または訳文がまったく同じ繰り返しの分節を表示できます。
一番下の Selection Filter は、分節内の選択した文字列でフィルタをかけます。原文と訳文のどちらで選択しても大丈夫です。さらに、原文と訳文の両方で文字列を選択しておくと、両方を条件としてフィルタがかかります。
最近、Memsource を使うことが多かった私は、Memsource のフィルタの便利さにすっかり慣れてしまい、Trados のフィルタにかなりストレスを感じていました。でも、この右クリックのメニューのおかげで Memsource と同じようにワンアクションでフィルタをかけられるようになりました。便利です!
フィルタ表示された分節を蛍光ペンでマークする
2019 バージョンの Community Advanced Display Filter で私が気になっていた機能の 1 つが「Highlight」です。
何か条件を指定してフィルタをかけた後、[Highlight] から色を選択して、表示中の分節に蛍光ペンでマークを付けることができます。[Clear] を選択すると、追加した蛍光ペンをすべて削除できます。
便利そうな機能ですが、実際に使うときはいくつか注意する点があります。
■ ステータスが変わる
蛍光ペンを追加する操作をすると、上図のようにステータスが「翻訳中」になってしまいます。「未翻訳」でも「翻訳済み」でもすべて「翻訳中」に変わります。Trados にとっては、人間が行う普通の編集と同じ認識になるようです。また、[Clear] で削除したときも、「翻訳中」に変わります。
■ エディタの設定で「書式を表示する」
上図のようにエディタ上で蛍光ペンの色を表示するには、エディタの [書式の表示スタイル] で書式を表示するように設定しておく必要があります。
[ファイル] > [オプション] > [エディタ] > [並列型エディタ] から設定します。
3 つのオプションがありますが、一番下の [書式を表示せずにタグを表示する] を選択していると、書式設定のタグが表示されるだけで、上図のような緑色の蛍光ペンの表示にはなりません。蛍光ペンを表示するには、上の 2 つのオプションのどちらかを選択する必要があります (この書式表示の設定については、以前の記事 エディタ上のフォントを変える でも少し説明しています)。私のお勧めは [すべての書式とタグを表示する] です。
■ 生成される訳文にタグが挿入される
書式の表示に [すべての書式とタグを表示する] をお勧めするのには理由があります。それは、この蛍光ペンがタグとして訳文に挿入されるからです。この蛍光ペンは、Trados のエディタ上のみのマーキングではなく、通常の書式と同じようにタグとして訳文に挿入され、生成される訳文にも蛍光ペンの書式が反映されます。
タグの内容を表示してみるとわかりますが、<cfhighlight> という書式タグが挿入されています。これは、Word で使われる蛍光ペンのタグです。このため、このまま訳文生成をすれば蛍光ペン付きの状態で訳文が生成されます。蛍光ペン付きの訳文を生成できるのは便利な場合もありますが、実は少し注意が必要です。
■ Word ファイル以外は要注意
Office 文書の場合、Word には蛍光ペンの機能がありますが、Excel や PowerPoint にはその機能がありません (PowerPoint の一部のバージョンにはあるようですが)。そのため、Word 以外のファイルに <cfhighlight> を挿入しても無視されてしまいます。また、無視されるだけならいいのですが、場合によっては、エラーになり訳文生成ができなくなることもあります。
HTML や XML など、ほかの形式の場合も同様で、<cfhighlight> タグを挿入しても、生成される訳文に蛍光ペンが表示されるわけではありません。エディタ上で蛍光ペンを残しておくと訳文に余計なタグが入ることになるので、訳文生成をする前に蛍光ペンはすべて削除した方がよさそうです。
表示フィルタだけでなく、検索やジャンプも強化して欲しい
Community Advanced Display Filter はとても便利です。便利ですが、そもそも表示フィルタって使いにくいですよね?? フィルタをかけて分節を非表示にすると、翻訳対象の前後の分節が見えなくなり作業しにくいことがよくあります。ツールを使っていると文脈を見失いがちとか、パッチワーク翻訳はだめとか、さんざん言われているのに、なぜ表示フィルタだけの強化なんだろうと疑問です。
タグの中身を検索する機能は、昔のように検索機能の中にあって欲しいし、ロックされている分節を飛ばしてジャンプしてくれる機能も欲しいところです。非表示にしないで、表示したままでジャンプして欲しいんです。非表示にしちゃおうっというのは、どちらかといえばコーディネーターさんの発想のような気がします。一括でロックをかけたいとか、特定の条件でワード数をカウントしたいとか、そんな用途じゃないかと思います。分節をひとつひとつ作業していく翻訳者としては、検索機能とジャンプ機能の充実も期待しています。
今回は以上です。先日、SDL のオンライン ロードショーに参加しましたが、今回の内容は主に企業向けの感じがしました。前回は翻訳者向けだった気がするのでバランスを取っているのかもしれないですが、今後も、翻訳者の存在が忘れられないよう、ほそぼそとでも声をあげていきたいなあと思っています。
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