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メンフィスへの郷愁

 これ、結構よくないですか?
 私は、全く存在を知りませんでしたが、今年出た新作で、過去に1枚アルバムがあるらしいです。
 私は、Otis Clayが好きなので、そのアンテナに引っかかって知りました。

 このバンドは、基本的にソウル・インスト・バンドなので、ヴォーカル曲は、数人のゲストが参加して務めています。
 私は未聴ですが、前作の1stは全編インストかも知れないです。


Got To Get Back !
The Bo-Keys

1. Hi Roller  (Franklin, Bomar,Pitts)
2. Got To Get Back (To My Baby) (feat. Otis Clay)  (Bomar, Carter, Franklin, Pitts)
3. Just Chillin' (Bomar, Gamble, Franklin, Pitts, Tuner)
4. Catch This Teardrop (feat. Percy Wiggins) (C.Reese, H.Reese)
5. Jack And Ginger (Bomar, Franklin, Pitts)
6. Sundown On Beale (Bomar, Franklin, Pitts)
7. Weak Spot (feat. William Bell) (Bell, Bomar, Franklin, Hall, Pitts)
8. 90 Days Same As Cash (Bomar, Franklin, Hall, Pitts)
9. I'm Going Home (feat. Charlie Musselwhite) (Conley)
10. Cauley Flower (Franklin, Bomar, Pitts)
11. Work That Sucker (feat. Charles "Skip" Pitts)  (Pitts, Bomar, Franklin)
12. Got To Get Back (To My Baby) Pt. 2 (feat. Otis Clay)  (Bomar, Carter, Franklin, Pitts)

 私は、ソウル・ファンのつもりですが、Bar-keysにはほとんど関心を持っていませんでした。
 確かOtis Reddingのツアー・バンドを務めたバンドじゃなかったですか?
 Watstaxのビデオで見た気がします。

 私には、サザン・ソウルより、Albert Kingのバックをやったファンキー・ブルースのアルバムの印象が強いです。

 このBo-Keysは、そのBar-keysの残党をベースに、活きのいい若手を加えたバンドで、ざっくり言えば、60s70sの南部ソウル・サウンドのリバイバル・バンドです。

 ファンキーな曲やジャズ・ソウル的な展開を得意としているようですが、本盤では黄金時代のメンフィス・ソウルを意識した音づくりに挑んでいるようです。
 ゲストのメンツが、より一層、そう感じさせるのかも知れません。

 私は、オリジナル・メンバーにうといんですが、参加メンツは以下のとおりです。

Scott Bomer : bass, percussion
Charles "Skip" Pitts : guitar
Howard Grimes : drums, percussion
Willie Hall : drums, percussion
Archie "Hubbie" Turner : keyboad
Al Gamble : keyboad
Mark Franklin : trumpet
Ben Cauley : trumpet
Kirk Smothers : tenor & baritone sax
Derrick Williams : tenor sax
Floyd Newman : baritone sax
Jim Spake : baritone sax
Spencer Wiggins & John Gary Williams : background vocals on "Catch That Teardrop"

 Howard Grimesに反応してしまいますが、どうやらメインのドラムは、Willie Hallのようです。
 それよりも、最後にチラッと出てくる、Spencer Wigginsの名前が気になりますね。

 この人は、弟のPercy Wigginsがボーカルをとった、4曲目の"Catch This Teardrop"でコーラスとして参加しているようです。
 (声の判別は、言われなけば困難です。)

 Percy Wigginsは、兄貴が偉大すぎて影に隠れていますが、なかなか味のあるいい歌手です。
 本盤でも、いい感じに歌っていて好感が持てます。

 この人のヴィンテージ録音では、ずっと昔にアナログ盤で聴いた、"They Don't Know"が好きでした。
 当時、ワーナーが出していた「ソウル・ディープ」の第2集に入っていたような気が…。(未確認です)
 今なら、英KentのCD、"Sanctified Soul"で聴くことが出来ます。
 (廃盤になっていなければ)

 さて、お目当てのOtis Clayですが、私は現役のサザン・ソウル・シンガーでは、最も好きな人です。
 オリジナル・アルバムこそ、ご無沙汰気味ですが、ときどき色んな企画盤に参加していたりするので、常にアンテナを張っておく必要があります。

 本盤では、2曲に参加していますが、ラスト・ナンバーは同じ曲のPart2なので、実質は1曲ですね。
 Otis Reddingを連想させる南部風ジャンプ・ナンバーで、「ガッタ、ガッタ」ならぬ「ガットゥ、ガットゥ」と連呼しています。
 元気そうで、久しぶりに声が聴けただけでも嬉しかったです。

 それよりも、やはりこのバンドは、インスト・ナンバーですね。
 特に今回は意識してやっているのか、いくつかの曲では、MGsを思わせる曲があり、「おっ」と耳を惹かされます。

 5曲目の"Jack And Ginger"が、出だしからしてMGs風で、これはよいです。
 MGsは、グルーヴィーでねちっこいオルガンに、ギターが鋭くコンパクトに切り込んでくる曲が、ひとつの得意パターンでしたが、こちらはそんな雰囲気をうまく再現していて、嬉しくなります。

 MGsのもうひとつのパターンとしては、イージーリスニング的なリラックス・チューンがあって、そういった要素が感じられる曲も見受けられます。
 6曲目の"Sundown On Beale、"10曲目の"Cauley Flower"が、これまたいい雰囲気に決まっています。

 ボーカル曲では、何といっても、Willam Bellが参加した、"Weak Spot"が素晴らしい出来だと思いました。
 この曲の作者には、Bellの名前が共作者としてクレジットされていますが、メロディがいかにもBell風で、一音目が始まると同時に、一瞬世界がBell色に染まる感じを受けるのは、ひいきが過ぎるでしょうか。

 William Bellは、メンフィス・ソウルのパイオニアであり、優れたソング・ライターでもありました。
 ヴィンテージ期の名曲を、後年再録音するシンガーは少なくないですが、名作の新録音が素晴らしいと感じた人は、William Bellだけです。

 Bell自身の会社、Wilbeから02年リリースされた、"Collectable Edition Greatest Hits"は、Stax時代の代表曲の新録音集で、タイトルが陳腐でジャケもしょぼいですが、中身はお奨めです。
 生き生きとしたバックの演奏にのせて、Bellのジェントルなヴォーカルが、衰えない冴えを聴かせます。

 さて、本盤唯一のカバー曲だと思われるのが、9曲目の"I'm Going Home"です。
 Prince Conleyという無名のシンガーの曲ですが、Staxの9枚組Box、"The Complete Singles 1959-1968"のDisc1に収録されています。
 この渋すぎる選曲は、南部音楽ヲタとしては、にやりとさせられます。

 私は、先ほどから、本盤のテーマともいうべき、冒頭の"Hi Roller"をリピートして聴いています。
 インストなんですが、中盤で出てくるCropper風のフレーズ(Sam & Daveのバックに出てきそうな、Otis Rush風にも聴こえるもの)が気に入って、繰り返し聴いているのです。
 この曲と、"Jack And Ginger"が、特にお奨めです。

 もちろん、Otis Clay、Percy Wiggins、William Bellが参加したヴォーカル曲は、60sソウル・ファンには必聴でしょう。



Got To Get Back by Bo-Keys feat. Otis clay




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トミーのお気に入り

 このハスキー・ボイスには、得も言われぬ魅力があってはまります。
 私は、昔、Freddy Fenderとデュエットした曲での二人のからみが最高に好きでした。
 Freddyのスムースな高音と、この人の息苦しそうなかすれ声が不思議とマッチしていたのでした。

 本盤は、Huey P.Meauxの制作で78年にCrazy Cajunからリリースされたものです。
 Tommy McLainの60年代のシングルの新録音を中心に、彼のお気に入り曲集になっています。


If You Don't Love Me
& His All Time Favorites
Tommy McLain
 

Side One 
1. Tender Years (Darrell Edwards, George Jone)
2. Honky Tonk (Doggett, Scott, Butler, Shepherd)
3. Wasted Days & Wasted Nights (B. Huerta)
4. Before The Next Teardrop Falls (V. Keith, B. Peters)
5. Sweet Dreams (Don Gibson)'66 jin 197
Side Two
1. Where You Been Baby (Tommy McLain)
2. No Tomorrows Now (Tommy McLain)
3. If You Don't Love Me (Why Don't You Leave Me Alone)
4. Before I Grow Too Old (A. Domino)
5. Tennessee Blues (Bobby Charles Guidry)
6. When It Rains (It Really Pours) (Tommy McLain) 

 「フェイヴァリッツ」とか、「トレジャー」とかのタイトルが好きです。
 そのアーティストが煮詰まったときの企画盤の場合もありますが、しばしば好カバー集であることが多いです。

 本盤のサウンドは、何となく、いつものシュガーヒル・スタジオのものとは雰囲気が違う気がします。
 ただ、Huey MeauxとMickey Moodyの黄金コンビの制作で間違いありません。

 個別のミュージシャンがクレジットされていないので、確信はないですが、あるいは、Tommy McLainのツアー・バンドが参加しているのかも知れません。
 少なくとも、ハモンド・オルガンは、彼自身が弾いていると思います。

 本盤の売りは、やはり、Freddy Fenderの大ヒット曲、"Wasted Days & Wasted Nights"と"Before The Next Teardrop Falls"のTommy盤が入っていることですね。
 Freddy Fenderのヒット・バージョンは、74年にリリースされ、翌年にベストセラー・アルバム、"Before The Next Teardrop Falls"に収録されました。

 本盤の"Before The Next Teardrop Falls"では、2ndヴァースで、別の男性がデュエットしますが、誰か分かりません。

 冒頭の"Tender Years"は、ホンキートンク・カントリー・レジェンド、George Jonesのカバーだと思いますが、オリジナルを収録したアルバムが行方不明で、無念にも聴き比べが出来ませんでした。
 中期のGeorge Jonesらしい、スムースかつジェントルなバラードです。
 Tommy盤のシングルは、68年にJinからリリースされました。

 次の"Honky Tonk"は、Bill Doggettの有名R&Bインストのカバーです。
 原曲は、オルガン曲ですが、ここでは、ギターとサックス中心のアレンジになっています。
 ワイルドさと、チープさを併せ持ったような不思議なテイストに仕上がっています。

 A面ラストの"Sweet Dreams"は、Tommy McLainの代表曲の新録です。
 原曲は、ナッシュビル・ポップ・カントリーのシンガー・ソングライター、Don Gibsonの自演盤です。

 この人は、Ray Charlesの大ヒット「愛さずにいられない」の作者でもあります。
 無数のカバーがありますが、一般的には、Patsy Cline盤で知られています。
 Tommy盤のシングルは、66年にJinからリリースされました。

 B面のアタマの2曲は、このアルバムで初めて聴いた曲です。
 どちらも良い曲です。
 
 でも、本盤のハイライトは、やはり3曲目の" If You Don't Love Me (Why Don't You Leave Me Alone)"ですね。

 この曲は、Tommy McLain自作の一世一代の失恋バラードです。
 Freddy Fenderも、77年のアルバム"If You Don't Love Me"でカバーしていました。
 Tommyの原曲は、72年に吹き込まれています。

 続く2曲は、誰がやっても悪くなりようがない名作ですね。
 "Before I Grow Too Old"は、Fats Domino作となっていますが、Bobby Charlesとの共作だったような気が…。
 Tommyのかすれ声がいい感じにのっています。
 Tommy盤のシングルは、68年にJinからリリースされました。

 "Tennessee Blues"もまた、問答無用の名作です。
 Bobby Charlesの72年のベアズヴィル盤は、みんな大好きですよね。

 こちらも多数のカバーがあると思いますが、私は、Doug Sahmのバージョンと、親父を思わせる声で歌ってくれた、Shawn Sahmによる新生Texas Tornados盤が特に印象に残っています。
 ここでは、ライヴ風の演出がされていて、ドラムのエンディングがフェード・アウトせず、それ風の終わり方をしています。

 "When It Rains (It Really Pours)"は、同名異曲が複数あると思います。
 「降れば土砂降り」とか、「泣きっ面に蜂」といった訳で知られる、ことわざが元になっているのが理由ではないでしょうか。

 Elvisがカバーした、Billy The Kid Emersonの作品や、Parcy Sledgeの同名曲は、いずれも別の曲だったような気がします。
 こちらは、Tommyの自作で、Freddy Fenderも、78年のアルバム"Swamp Gold"でカバーしていました。

 ジャケ良し、選曲良し、パフォーマンス良しの好盤だと思います。


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翼よ あれがテキサスの灯だ

 あるアーティストを聴き始めたきっかけって、大抵は覚えているんじゃないでしょうか。

 流れている曲が気に入って、アーティストを調べたとか
 ジャケットが気に入って、つい手に取ったとか
 好きなアーティストがゲスト参加していたからとか
 プロデュースしていたからとか
 カバー曲のオリジナル・アーティストを追っかけたとか
 様々です。

 それなりに、何らかの理由を覚えていると思います。
 でも、なぜ手にすることになったのか、全く理由がわからない、覚えていないということが、ごくまれにあります。
 私にとって、今回の主役、Wes McGheeこそ、そのレアな例のひとつです。


Landing Lights
Wes McGhee
 
Side One
1. (They used To Say) Train Time (Wes McGhee)
2, Contrabandistas (Bobby Earl Smith, Joe Gracey)
3. Too High To Sing The Blues (Wes McGhee)
4. Ain't That Lovin' You Baby (Jimmy Reed)
5. Neon And Dust (Wes McGhee)
Side Two
1. Boys In The Band (Taught The Girl How To Boogie) (Wes McGhee)
2. No Angel On My Wing (Wes McGhee)
3. Texas Fever (Wes McGhee)
4. Mailman (Bring Me No More Blues) (Roberts, Kats, Clayton)
5. Heat Of The Highway  (Wes McGhee)

 このテキサス音楽が大好きな英国人を、私はどうして聴くようになったのでしょう。

 可能性が高いのは、ジャケ買いか、あるいは輸入盤店の店長の推薦かも知れません。
 最初に買ったのは、80年リリースの2ndアルバム、"Airmail"だと思います。
 入手した時期は不明です。

 本盤は、82年リリースの3rdアルバムになります。
 多分、未だCD化されていないと思います。
 このあとの4枚目が、定評の高い(?)85年の2枚組ライヴ盤、"Thanks For The Chicen !"になります。
 私が特に聴いていたのは、このあたりの時期です。

 CDが当たり前になった90年代以降は、すっかりご無沙汰していました。
 それがつい最近、この人が現役であることに気付き、久方ぶりに聴き返したくなったのでした。

 そのきっかけは、テキサスのバンド、Freddie Steady 5を聴いたからです。
 Freddie Steady 5のリーダー、Freddie "Steady" Krcは、ローティーンの頃、英国ビート・バンドの襲来に衝撃を受けて、音楽を始めたらしいです。

 その時、初めて見たのが、Sir Douglas Quintetだったというのが可笑しいです。
 Sir Douglas Quintetが、英国バンドを装ったテキサスのガレージ・バンド(当時)だったのはご存じのとおりです。

 さて、Freddie Steady 5のライナーによれば、Freddie "Steady" Krcは、若い頃、Wes McGheeのバンドでドラムを叩いていたらしいです。
 ブリティッシュ・インベイションに憧れて音楽を始めたテキサス男が、テキサス音楽大好きの英国人ロッカーのバンド・メンバーだったというのです。

 私は、LP棚をあさり、このアルバムを引っ張り出してきました。
 そして、確認することが出来たのでした。
 このアルバムは、ロンドン録音とテキサス録音で構成されています。
 そのうち、テキサスのセッションには、バンドのメンバーが、次のように記されていました。

Wes McGhee : vocals, guitar
Fred Krc : drums, percussion
Larry Lange, Mike Robberson : bass, piano 
Ponty Bone : accordion
Lloyd Maines : pedal steel guitar
Richard Bowden : fiddle
Don Caldwell : sax
Dermont O'Connor : mandlin
Kimmie Rhodes, Bobby Earl Smith, Jimmie Gilmore : vocals

 いやー、またまたテキサス音楽ギークには、たまらないメンツですね。
 このリストだけで、おかずなしで、茶碗1杯の白飯が食べられます。

 Fred Krcの名前が、しっかり、ドラムスとクレジットされています。
 情報は間違いなかったのでした。

 しかも、それだけでなく、予期していなかった喜びの発見がありました。
 ベースがLarry Langeと記されているではないですか。
 驚きです。

 Larry Langeは、後にテキサス、ルイジアナ音楽大好きバンド、Larry Lange & his Lonely Knightsを組む、あの人に間違いありません。
 これは、かなりの驚きです。
 Larry Lange & his Lonely Knightsは、私が大好きなバンドです。

 アコーディオン奏者のPonty Boneは、ケイジャン・バンド、Ponty Bone & the Squeeze Tonesのリーダーです。
 私は多分、LP盤を最低1枚は持っていると思います、(未確認です。)

 そして、コーラスで、Bobby Earl Smith、Jimmie Gilmoreの名前がクレジットされています。
 Bobby Earl Smithは、元Freda & Firedogsのシンガー、ベーシストで、解散後はDoug SahmやAlvin Crowと活動をともにした人でした。
 Freda & FiredogsのFredaは、後のソロ・シンガー、ピアニストのMarcia Ballです。

 Jimmie Gilmoreは、もちろん、Joe ElyやButch Hancockと共にFlatlandersを組んでいた、Jimmie Dale Gilmoreですね。

 そして、Kimmie Rhodesは、テキサスのアーティストのアルバムでは、よくコーラスで参加している人です。
 この人は、ソロ・アルバムが何枚かありますが、私は未聴です。

 というわけで、そもそもFreddie Krcの参加を確認することが目的でしたが、Larry Langeの名前を発見して、私は異常に高まりました。
 
 Freddie Krc、Ponty Boneの両名は、次作のライヴ盤、"Thanks For The Chicken !"にもクレジットされています。
 このライヴ盤には、ゲストとして、Alvin Crowもフィドルで参加していました。

 ちなみに、2ndアルバムの"Airmail"は、全く違う編成ですので、この3rdから付き合いが始まったのかも知れません。
 "Airmail"には、Hank Wangfordが参加していました。

 なんだか、クレジットを見ただけで、お腹一杯になった気分です。

 "Landing Lights"のレコードの内袋には、セッション風景の写真がプリントされていて、若き日のFreddie Krc、Bobby Earl Smith、Larry Langeの姿が確認できます。
 とりわけ、Larry Langeの写真が若いです。

 本盤は、好曲、"(They used To Say) Train Time"でスタートします。
 Ponty Boneの流麗なアコの調べが印象に残る、孤独な男の哀愁ソングです。
 この曲は、Freddie Krcの別プロジェクト、Freddie Steady's Wild Countryの08年作、"Ten Dollor Gun"(Wes McGhee制作)でカバーされていました。

 Wesがトランペットを吹く、Bobby Earl Smith作のボーダー・ソング、Contrabandistasから、Wes自作のロッキン・ナンバー、"Too High To Sing The Blues"、そしてJimmy Reedのブルースを元気一杯のアレンジでやった、"Ain't That Lovin' You Baby"を経て、再び哀愁のボーダー・ソングへと続くA面の流れが良いです。

 とりわけ、Wesのスパニッシュ・ギターや、Pontyのアコが素晴らしく、Jimmy Reed Songでは、ブルース・ハープのパートをアコが奏でます。

 B面冒頭の"Boys In The Band (Taught The Girl How To Boogie)"がまたよくて、こちらは雰囲気が変わって、ウエスタン・スイング・バンドがやる軽快なブギ・ナンバーのようです。
 Wesのボーカル・エコーのチューニングが最高にセクシーに決まっています。

 ポルカのような賑やかな"Texas Fever"は、当然かっこいいです。
 そして、"Mail Man Bring No More Blues"は、私が昔から大好きな曲で、原曲は誰でしたっけ?

 両面とも全くだれることなく、わくわくしながら聴きとおせました。
 懐かしさよりも、新鮮な驚きを感じて、大きく見直した1枚です。



Whiskey is My Driver by Wes McGhee Live In London 1987




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ファラオの子どもたち

 今回は、Sam The Sham & Pharaohsのトリビュート盤を聴き返しました。
 このCDを入手したのは、もう随分と以前のことです。
 当時よく出入りしていた、輸入盤店の店長の薦めで購入したのだと思います。

 くだんの店長は、私の趣味を知ってくれていて、彼なりのチョイスで薦めてくれるのでした。
 私は、小心者のため、欲しいアイテムが見つからない場合、そのまま帰るのは申し訳ない気がして、無理にでも1枚は買って帰ろうとしたものでした。

 ためらい続ける私を横目に見つつ、嬉しそうに店長がお奨め品を出してくるのでした。
 そうやって、さほど興味がないにも関わらず、何となく買ったCDがいくつもあります。
 その多くは、一度だけ聴いて棚のオブジェになりました。
 でも、実はその内のいくつかは、何年もたってから、価値を見出す結果となることがあったのです。

 
Turban Renewal
A Tribute To Sam The Sham & The Pharaohs

1. Wooly Bully : Hasil Adkins
2. Ring Dang Doo : The Lyres
3. Monkey See Monkey Do : The Untamed Youth
4. Love Me Like Before : The Brood
5. I Wish It Were Me : Homer Henderson
6. Don't Try It : The Devil Dogs
7. Lil' Red Riding Hood : John Felice
8. Pharaoh A Go-Go : Jackie And The Cedrics
9. Medicine Man : The Fleshtones
10. Grasshopper : The Original Ben Vaughn Combo
11. Green'ich Grendel : The Ranch Hounds
12. Sweet Talk : The Naughty Ones
13. Ju Ju Hand : Handsome Dick Manitoba
14. Oh That's Good, No That's Bad : Nine Pound Hammer
15. Juimonos (Let's Went) : Little Richard Elizondo Combo
16. Like You Used To : The Hentchmen
17. Let's Talk It Over : The Senders
18. (I'm In With) The Out Crowd : A-Bones
19. Deputy Dog : Great Gaylord And The Friggs
20. Struttin' : The Swingin' Neckbreakers
21. I Couldn't Spell !!*@! : Roy Loney And The Young Fresh Fellows
22. Sorry 'Bout That : Teengenerate
23. The Hair On My Chinny Chin Chin : Los Chiflados Del Ritmo
24. The Phantom : Flat Duo Jets
25. How Do You Catch A Girl : The Vacant Lot
26. Wooly Bully Espanol : Rudy "Tutti" Grayzell Y Los A-Bones

 本盤は、94年にNorton Recordsからリリースされたものです。
 Nortonは、ずっと後になって、Doug Sahmの初期の音源、Harlem Recordingをまとめた好CDを制作した会社です。

 このCDがお宝かどうかは、私自身よく分かりません。
 ただ、最近、レアな内容であることに気が付きました。

 収録されているアーティストは、ほとんど未知の存在ばかりです。
 最近になって、この中の一部がNortonで録音しているレーベル・メイトであることを知りましたが、初見のときは、ひたすら無名人をよく集めたなあ、というのが感想でした。
 基本的にガレージ・パンク、サイケ系のバンドが多いようです。

 まあ、そういったことよりも、「そもそもSam The Shamのレパーリーって、こんなにあったっけ?」
 そう思わずにはいられません。
 私が彼らの曲で、すぐに思いつくものといいますと…。

1. Wooly Bully
7. Lil' Red Riding Hood
13. Ju Ju Hand 
23. The Hair On My Chinny Chin Chin(この曲は、メロを聴いて思い出しましたが、タイトルは覚えていませんでした。)

 以上です。
 いやー、改めて驚きましたが、まあそんなものでしょう。
 (よく考えると、"Red Hot"が未収録ですね。)

 そもそもSam The Sham & Pharaohsというのは、どうも謎のバンドですね。
 リーダーのSamさんは、フルネームを、Domingo Samudioといい、チカーノ(メキシコ系アメリカ人)らしいです。

 しかし、そのいでたちは、第三世界風ですね。
 アラブ系の恰好をするのには、何か理由があったのでしょう。
 黒人R&Bアーティストでは、Chuck Willis、ドゥワップ・グループで、Turbansというのが、ターバン・スタイルでした。
 当然、売出しのためでしょうが、彼らがこのような戦略をとった理由が知りたいものです。

 さて、本盤での私の注目は、次の3曲です。

5. I Wish It Were Me : Homer Henderson
10. Grasshopper : The Original Ben Vaughn Combo
26. Wooly Bully Espanol : Rudy "Tutti" Grayzell Y Los A-Bones

 最初のHomer Hendersonは、全く知らない人です。
 しかし、そのサウンドは、明らかにSir Douglas Quintetを連想させるもので、雑誌を斜め読みしながら聴いていた私は、思わずCDパッケージを手にとって、アーティスト名を確認したものでした。

 Quintetを連想させる理由は、シンプルです。
 イントロから始まって、延々と続くオルガンのリフが、Augie Meyersのプレイを思い起こさせるからです。
 とはいえ、Sam The Sham自体が、Quintetと似た部分を持つバンドです。
 一時的に興味を持ちましたが、さほど気にすることなく、その場は聴き流したのでした。

 CDのリーフレットを確認したのは、つい最近のことです。
 そこには、各曲のパーソナルが記載されていました。

 この曲のセッション・メンバーは以下のとおりです。
 そこには、(私にとって)驚くべき内容が記されていました。

Homer Henderson : lead vocals
Casper Rawls : guitar, sax, string bass
Speady Sparks : bass
Rocky Morales : tenor sax
Doug Sahm : first bass coach
Kris Cummings : organ
Joe Nick Patoski : vocals
Mike Buck : drums, vocals 

 テキサスのロックに関心がある方なら、驚かれるのではないでしょうか?
 私は、かなり驚きました。
 何と主役以外のメンツは、聞き覚えのある名前ばかりだったからです。

 ベースのSpeady Sparks、サックスのRocky Moralesの二人は、完全Doug Sahm人脈の人たちです。
 二人とも、数多くのDoug Sahmのレコーディングに参加しています。

 また、Speady Sparksは、LeRoi BrothersやJoe King Carrascoのアルバムにも参加しています。
 そのつながりで連想したことを調べたところ、思ったとおりの事実が確認できました。

 ギターのCasper Rawlsは、本名をRick Rawlsといい、元LeRoi Brothersのメンツでした。
 また、ドラムのMike Buckは、T-Birdsの創設期メンバーで、その後LeRoi Brothersのメンツにもなりました。

 そして、オルガンのKris Cummingsは、おそらく元Joe King Carrasco & Crownsの紅一点に間違いないでしょう。
 何て素晴らしい編成でしょうか。
 テキサス音楽ヲタにはたまりません。

 ところで、(私にとって肝心の)Doug Sahmですが、first bass coachとなっています。
 このクレジットはどういう意味でしょう。

 第1ベース指導?って、何か意味がある言葉なんでしょうか。
 普通に読めば、1塁ベース・コーチなんでしょうが、不思議なクレジットです。
 でも、突然野球用語なんて、脈絡がなさすぎですよね。
 何かのジョークでしょうか。
 謎です。

 さて、残り2曲についても、簡単に触れたいと思います。

 "Grasshopper"を演奏した、The Original Ben Vaughn Comboですが、このBen Vaughnという人は、80年代から活動しているルーツ・ロッカーです。

 07年のソロ・アルバム、"Prehistoric Ben Vaughn"には、Doug Sahmの"She's About A Mover"のカバーが収録されていました。

 サザン・ソウルのファンには、Arthur Alexanderの93年の大傑作アルバム、"Lonely Just Like Me"のプロデューサーといえば、関心を持たれるかもしれません。

 最後に、"Wooly Bully Espanol"のRudy "Tutti" Grayzell Y Los A-Bonesです。
 この曲は、"Wooly Bully"のスパニッシュ・バージョンです。
 単にスペイン語でやっているだけでなく、ラテンの陽気さ満点のアレンジになっています。

 Rudy Grayzellは、一般的にはロカビリアンとして知られていて、キャピトルやスターデイ、そしてサンにも録音があります。
 ジョー・クレイで有名な"Duck Tail"は、彼がオリジネイターです。

 この人は、父方がヒスパニック(多分メキシコ)で、母方がイタリアという家系に生まれた人で、サンアントニオで成長しました。
 エルヴィスを知るまでは、普通のカントリーをやっていた人です。

 20歳のころ、当時11歳のDoug Sahmをバンドに加え、スチール・ギターを担当させていました。
 親戚のふりをして、Dougを学校から呼び出し、演奏に参加させたというエピソードが残っています。

 Skeletonsをバックに録音した98年のアルバム、"Let's Get Wild"では、Dougの"Why Why Why"をカバーしていました。
 そして、その少し前、91年の4曲入りアナログEP盤、"Texas Kool Kat"では、本盤の18曲目に登場するA-Bonesをバックにして、やはりDougの"Why Why Why"をやっています。

 このA-Bonesというのは、ガレージ系のバンドで、音がかなり違いますが、おそらくRudy "Tutti" Grayzell Y Los A-BonesのLos A-Bonesと同じではないかと思います。 

 Dougファンとしては、RudyとDougが共演した50年代録音がないのか、と思ってしまいます。
 残念ながら、知られているRudyのレコーディングは、スタジオ・ミュージシャンと吹き込んでいるようです。

 まあ、当然かもしれません。
 でも、後年、二度も"Why Why Why"を録音していることに、何か意味がないのか、と淡い期待をしてしまうのでした。

 本盤は、今回の記述内容に関心がある方のみに価値があるものだと思います。



Wooly Bully by Hasil Adkins




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ミステリー列車はトレモロで
ダックテール
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監獄からこんにちは

 久しぶりに、アナログ盤の棚をあさりました。
 あることを調べるために、Wes McgheeのLPを探したのですが、例によって色々と目移りがして、手に取った目的外のLP盤を、ついしげしげと眺めてしまうのでした。

 本盤は、75年にリリースされた、Freddy Fenderのレアな音源を収録したアルバムです。
 75年は、前年にABC-dot盤、"Before The Next Teardrop Fall"がベストセラーになったことから、過去の音源が便乗でLP化された時期でした。
 このアルバムもそんな1枚です。


Recording Inside Louisiana State Prison
Freddy Fender

Side One
1. My Happy Days Have Gone
2. Our Pledge of Love 
3. I Hope Someday You'll Forgive Me
4. Hello Loneliness
5. My River 
6. Quit Shucking Me Baby 
Side Two
1. Bye Bye Little Angel
2. The Village Queen 
3. Carmella 
4. Oh My Love 
5. Blow of Your Love 
6. Gonna Be Looking 

 本盤のタイトルは、ルイジアナ州監獄(の中での)録音となっています。
 私は、初めてこの題名を目にしたとき、てっきり刑務所でのライヴだと思いました。

 こういった思い込みは、売り手側にもあるようで、ショップによっては、ライヴ盤として紹介しているところがあります。

 刑務所でのライヴというと、Johnny Cashが有名ですね。
 フォルサム・プリズンとか、サン・クウェンティンとかのライヴは、ベストセラーになりました。
 服役囚の前で、世の中の理不尽さをなじるような、際どい内容の歌を歌って、大喝采をあびるCashのシーンは、未聴の方にはぜひ聴いていただきたいです。

 さて、本盤はライヴ盤ではありません。
 ジャケット裏のライナーによれば、これは62年に監獄の中で録音された音源だということです。
 本当なんでしょうか?

 音は、あるいはスタジオ・ライヴかも知れませんが、歓声などは一切ないきれいな録音です。

 50年代終盤から60年代初めに、Duncan Recordで録音された音源は、イナたさを残しつつも、きっちりまとめられたプロの仕事でした。
 一方、本盤の音源も、録音の雰囲気はまるで違いますが、やはりきっちりした仕事だと思います。

 Freddy Fenderは、"Wasted Days and Wasted Nights"がローカル・ヒットして、これから全国へというとき、ドラッグ不法所持で収監されてしまいます。
 Duncan Recordsのオーナー、Wayne Duncanによれば、2万ドルの保釈金を払ってFreddyを保釈させ、わずかな間にレコーディングを行ったそうです。
 これらの音源は、シングル・リリースされ、75年にLP、"Since I Met You Baby"にまとめられました。

 Freddyが服役していたのは、おそらく63年ころまでだと思われます。
 本盤のライナーによれば、収録曲は、前述のとおり62年の録音だということです。

 一体どうやって録音したのでしょうか?
 機材を持ち込んだにしても、監獄にはスタジオはないですよね。

 本盤収録曲は、ホーンレスで、比較的ソフィスティケートされた曲が多いように思います。
 まるで、都会の録音スタジオで、お上品な雰囲気で吹き込まれたかのように感じます。
 例えば、女性コーラスが入っていたり、美しいピアノの調べが耳に残るバラード中心の構成になっています。

 このあたりは、後からダビングしたのだとすれば、不思議はないですが、音を聴いていて、監獄録音というイメージが全く思い浮かびません。
 私は、60年代初期の録音ということすら、疑いたい気持ちになったりします。

 A面1曲目、"My Happy Days Have Gone"は、美しいゆったりした12ビートのラヴ・バラードです。
 「あれっ」と思うのは、2曲目の"Our Pledge of Love"で、これはほとんど"My Happy Days Have Gone"と同じようなメロを持った曲です。

 作者が同じなのかもしれませんが、聴きようによっては、同じ曲に別の歌詞をのせた、そんな試行錯誤中のテイクかと思ったりもします。
 A面は、同じような路線の曲が続き、最後の曲のみリズム・ナンバーが入っています。 

 B面の半ばになると、Freddyのボーカルが、気取った太めの声質になり、一瞬別人かと思ったりしました。
 やはりバラード中心の展開ですが、最後に楽しいリズム・ナンバーで終了する構成は同じです。

 バラーディアーの面目躍助というスタイルのアルバムに仕上がっています。
 特に、"Bye Bye Little Angel"は、胸キュン系の可愛らしいバラードで、Swamp Popといってもいい曲だと思います。
 続く"The Village Queen"も、ちょっとRoy Orbisonを連想させるバラードで、歌詞の内容が気になる、私のお気に入りの1曲です。

 本盤収録曲は、Terry E. Gordon氏作成のディスコグラフィーによれば、全てGoldbandのアンイシューとなっています。
 Eddie Shulerの指揮で録音されたのでしょうか。
 あるいはDuncanから買い上げたのでしようか。
 音の感じ、レパートリーともに、これまでのDuncan録音と全く違うので、監獄録音の真偽は保留として、私は前者ではないかと思っています。

 ところで、収録曲のクレジットですが、基本的に62年なんですが、"Bye Bye Little Angel"と"Oh My Love"のみ66年となっています。
 これは不思議ですね。
 クレジットが録音年だとすれば、この2曲のみ塀の外へ出てからの作品になります。

 実は、私は"Bye Bye Little Angel"のドーナツ盤(Goldband 1264)の写真を、オークション・サイトで見たことがあります。
 作者は、G.Marcontelとなっていました。
 作者が全く分からない本盤収録曲ですが、この1曲のみ、これで判明しました。
 私の想像では、この曲は66年にイシューされ、B面が"Oh My Love"だったのではないでしょうか。

 とにかく、時代毎にその時の最高のパフォーマンスを見せてくれるFreddyです。
 本盤のレパートリーは、その後目にすることがないように思いますが、とても貴重な記録だと思います。



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大人の贈りもの

 このアルバムは、買われた方が多いのではないでしょうか。
 私も、予約オーダーしていました。
 このアルバムの魅力は、私にとってはまずジャケですね。

 初めてサイトの告知でジャケ写を見たときから、私は、リイシューものと同じ目線で物欲センサーが発動していました。
 キャバリエさんと組んだアルバムのジャケには、まったく萌えませんでしたが、今作でのセピアなたたずまいには、ノックアウトされずにはいられません。


Dedicated
A Salute To The 5 Royales
Steve Cropper

1. Thirty Second Lover (Paul, Pauling): with Steve Winwood
2.Don't Be Ashamed (Pauling): with Bettye LaVette & Willie Jones
3.Baby Don't Do It (Pauling): with B.B.King & Shemekia Copeland
4.Dedicated to the One I Love (Bass, Pauling): with Lucinda Williams & Dan Penn
5.My Sugar Sugar (Pauling): with John Popper
6.Right Around the Corner (McCoy, Singleton): with Delbert McClinton
7.Help Me Somebody (Pauling): Inst.
8.I Do (Pauling): with Brian May
9,Messin' Up (Pauling): with Sharon Jones
10.Say It (Pauling): with Bettye LaVette
11.The Slummer the Slum (Carter, Pauling): with Buddy Miller
12.Someone Made You for Me (Glover): with Dan Penn
13.Think (Pauling): Inst.
14.Come On & Save Me (Pauling): with Dylan Leblanc & Sharon Jones
15.When I Get Like This (Jeffries, LeBow): with Lucinda Williams

 今作は、The Five Royalesのトリビュート盤になっています。
 Steve Cropperが、5 Royalesのギタリスト、Lowman Paulingをアイドルとしていたことは、よく知られています。

 R&Bファンには人気のグループですが、オールディーズ・ファンにとって5 Royalesといえば、彼らのオリジナルより、カバーですね。
 (普通の音楽ファンは、5 Royalesをまず知らないでしょう。)

 James Brownは、"Think"を二度吹き込んでいます。

 Beatlesのお気に入り、ガールズ・グループのShirellesは、"Dedicated To The One I Love"のカバーが有名です。
 この曲は人気曲で、様々なカバーがありますが、チカーノにはStaxのTemprees盤が定番です。
 5 Royalesとしては、他にあまりないタイプのバラードですね。

 本盤収録曲の選曲はどうなんでしょう。
 広く知られた曲がチョイスされているんでしょうか?
 私は、知らない曲がほとんどでした。
 知っていた曲は次のとおりです。

3. Baby Don't Do It
4. Dedicated To The One I Love
5. My Sugar Sugar(曲名を覚えていただけ)
10. Say It
11. The Slummer The Slum(曲名を覚えていただけ)
13. Think

 このうち、"Say It"は、Lowman Paulingのギターが飛びまくる曲です。
 ただ、Cropper的ではないです。

 よく考えると、5 Royalesのレパートリーのうち、いくつかギターが目立つ曲がありますが、あまりCropper的なものはないです。

 もともと、CropperはPaulingのどこが好きだったのでしょう。
 おそらくは、音数の多いソロではなく、"Think"などのバッキングに特徴がある曲が好きだったに違いありません。

 とはいえ、今回、Cropperは2曲のインストにチャレンジしています。
 "Think"はやはり名曲ですね。
 ただ、少し色々とやりすぎな気もします。
 私は、"Think"のカバーでは、Wilko Johnsonのバージョンが一番好きです。

 "Help Me Somebody"は、原曲を知らないせいもあり、新鮮に感じました。
 Cropperは、Albert Kingが好きということもあり、ブルージーなフレーズは予想以上にいいです。
 Otisの"Rock Me Baby"のプレイを初めて聴いたときは、他の曲とのあまりのギャップにぶっとびました。

 本盤にはチョイスされていませんが、"Wonder Where Your Love Has Gone"という曲が、Paulingのギターが活躍するブルージーな好曲で、個人的にはやってほしかった曲です。

 そして、Sam and Daveのバージョンで、"I'm With You"を弾いたのは、MG'sではなかったですか。
 もしそうなら、これもやってほしかった曲です。

 本盤には、有名ゲストが多数参加していますが、私の今回一番の注目は、Brian Mayです。
 5 RoyalesとBrian Mayの取り合わせは、かなり意外ですよね。

 私の思い込みかもしれませんが、Queenは、形式としてのブルースとは無縁だと思っていました。
 例えは、生まれたときから、家庭にグランド・ピアノがある、そんな環境に育ったメンバーというイメージです。
 当然、クラシックに囲まれて成長した印象を持っていました。

 そこへ、5 Royalesです、
 これはサプライズですね。
 しかも、自身のギターのトーン一発で世界を作るさまは、QueenがFreddyとBrianとの双頭バンドだったのだと、改めて思わせてくれます。

 ゲストの存在感という意味では、B.B.Kingです。
 もはや、現人神の域ですね。
 かつて、20年くらい前、ライヴはいいけど、スタジオ盤での衰えが目立つと評した音楽誌には、思い切り冷や汗をかいてほしいものです。
 ギターは、いまだに進化しているし、メリスマは効きまくっている、こんな人がいるのは奇跡でしょう。

 ほかでは、Dan Pennもがんばっていますが、Steve WimwoodのRay Charlesばりの歌いくちがいいです。
 ちなみに、本盤収録曲のベーシック・トラックは、Dan Pennが録音したそうです。
 おそらくは、ゲストの録音はすべて別録音で、同じスタジオでの共演はなかったのだと思います。
 

 最後に、私の好きなCropperを記しておきます。

 ヴィンテージ期では、Rufas Thomasの初期作品の伴奏が全て好きです。
 Otisは、みんな好きですが、あえて言うなら、「ソウル・アルバム」です。
 MG'sでは、"Time Is Tight"と、やはり"Green Onion"です。
 当たり前すぎますか。

 その後の活動では、次の2枚が特に好きです。
 80年代では、Roy Orbisonのアルバム、"Mystery Girl"でのプレイ。
 90年代では、Parcy Sledgeのアルバム、"Blue Night"でのプレイです。

 そして、Blues Brothers
 オリジナル版も、2000も輝いていました。
 昨年は、せっかく"Blues Brothers 2010"のチャンスだったのですが残念です。

 いつまでも、渋くきらりと光るバッキングを弾き続けてほしいです。


Time Is Tight by Booker T. & MG's


有名なCCRのオープニング・アクトでの映像だと思います。


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ルーファスおじさんのダンス


酒とあの娘とほら話

 今、私はとてもほっこりとしています。
 それは、このアルバムを聴いたからです。

 この「ほっこり」というのは、標準語でしょうか。
 私は、関西圏なので、書いた後、ついこれで通じているのかな、などと思ってしまいます。
 私がここで感じたのは、「ほっと落ち着いて、おだやかな気分になり、くつろいでいる」くらいのニュアンスです。


Lived That Song Before
Aaron Wendt
 

1. Drinkin' 2B Drinkin' (Aaron Wendt)
2. That's Your Memory (Aaron Wendt)
3. The Dog Song (Aaron Wendt)
4. Outlaw (Aaron Wendt)
5. Honkytonks, Nightclubs, Bars and Dives (M.Hodges)
6. Lived That Song Before  (Aaron Wendt)
7. Swim Up Bar (Aaron Wendt)
8. Yellow-Haired Rose of Texas (Aaron Wendt)
9. I Like Texas  (Aaron Wendt)
10. Slow Pouring Tequila (Aaron Wendt)
11. Don't Cry a Tear  (Aaron Wendt)

 初めて聴くアーティストです。
 本盤は、10年にリリースされたもので、テキサスのシンガー、ソング・ライター、Aaron Wendtの1stアルバムになります。

 いきなり余談ですが、Wendtという姓はどちら方面の姓で、なんと発音するのでしょう。
 語尾が「dt」で終わる姓というと、私は、リンダ・ロンシュタット(Linda Ronstadt)くらいしか思いつきません。
 彼女は、マリアッチのアルバムを出して、ルーツに向き合っていましたね。

 ロンシュタットという日本語表記が、必ずしも正しいとはいえないですが、これにならえば、dは発音せず、本盤の主人公は、アーロン・ウェントさんでしょうか。
 一方、ファースト・ネームのAaronは、私の思い込みでは、フランスっぽい臭いがしますね。
 興味深いです。

 さて、音楽の傾向ですが、ざっくりとWestern Swingと言ってしまいましょう。
 アクースティック度の高いホンキー・トンク・カントリーでもいいかもしれませんが、聴いて受ける印象はウエスタン・スイングです。

 バンドの編成は、ギター、べース、ドラムス、スチール・ギター、フィドルなどを基本として、曲によっては、バンジョー、マンドリン、ピアノ、アコーディオンなどが追加されます。
 主人公のAaron Wendtは、ボーカルとリズム・ギターです。

 ホーンレスのウエスタン・スイング・バンドと言うのが一番イメージがわきやすいでしょう。
 アクースティック・スイングに近いですが、編成だけでなく曲調としてもジャズ性があまりなく、そのレパートリーは、ホンキートンク・カントリー、カウボーイ・ソングが主体で、ごくわずかにTex-Mexも含まれています。

 私は、ウエスタン・スイングとは、ざっくり言えば、カントリー・バンドに、ジャズのビッグ・バンド編成を取り入れたものだと思っていますが、その定義からは外れていますね。
 でも、聴いた印象は、ほんわかムードのウエスタン・スイングなのでした。

 ホーンが入っているバンドでは、しばしばジャンプやブギが演奏されますが、このバンドではそういった要素が薄いです。
 ピアノもゲスト扱いですので、モダン性も低めで、全体から受ける印象はカントリー度が高いです。

 2曲目の"That's Your Memory"で、女性シンガーがデュエットしますが、これがまた、オールド・スタイルのシンガーで、古いヒルビリーのような懐かしさを感じました。
 キュート路線、鉄火肌路線のいずれでもないですが、魅力的です。

 実際、トラック5で初めてエレキ・ギターが登場するまで、完全なアクースティック・バンドかと思っていました。
 ここで登場したエレキ・ギターが、思いのほか普通にノリノリのロッキン・スタイルだったので、かえって驚いたくらいです。
 本盤で唯一のジャンプ系のブギウギ曲で、快調なスイング感が理屈抜きに楽しいです。
 ピアノもごきげんに跳ねています。

 とはいえ、特に前半のメインは、スチールやフィドルの流麗なサウンドをバックにした、ゆったりとしたワルツや、トロットのようなリズムの曲で、ひたすら和みます。
 曲は、酒、可愛い女、ならず者、一攫千金、武勇伝などなどの、ほら話が歌われているではないかと思います。

 アルバム後半になると、ロッキン度、モダン度が増して、タイトル曲の"Lived That Song Before"などは、John Fogertyが書きそうなカントリー・ロックという感じです。 

  そして、"I Like Texas"では、再度懐かしい古いスタイルのホンキー・トンク・カントリーの世界に誘われ、酔わされます。
 この曲の途中で、不意にブレイクが入って、"Sunshine Of Your Love"の印象的なフレーズが一瞬だけ出てくる箇所があり、眼が覚めます。
 何か意味があるんでしょうか?
 出来れば歌詞を聴き取りたいものです。 

 "Slow Pouring Tequila"は、いきなりメキシカン・スタイルのトランペットで始まり、驚きます。
 (唯一この曲のみ、管楽器が入ります。)
 さらに、アコーディオンが入り、巻き舌での「ルルルー、アイ、アイ、アイ」といった囃子言葉が出てきます。
 Tex-Mexの香りが漂うというか、もはやメキシコという感じですが…。
 アルバムも終わり近くになってのサプライズ・アクセントでした。

 そして、ラストは、フォーキーなカントリー・ロック調の曲で、静かに終了します。

 当初は、穏やかでアンプラグドなウエスタン・スイングだけなのかと思いましたが、実は随所にアクセントが盛り込まれた、最後まで飽きさせない、(意外にも)バラエティに富んだ内容なのでした。

 次作にも期待です。









時間に忘れられたロックンロール

 かつて、英国出身なのに、テキサスが好き過ぎるシンガーがいました。
 Wes Mcgheeという人です。(今でも現役のようですが…。)
 彼は、カウボーイ・ハットをかぶり、"Texas Fever"や"Texas #1というタイトルの曲を自作して歌っていました。

 今回の主人公は、私の考えるところ、スタンスがWesに少し似ています。
 こちらは、逆にテキサス出身なのに、英国好き(に違いない)人なのです。


Freddie Steady Go !
The Freddie Steady 5

1. Wooly Bully (Domingo)
2. I Can Beat Your Drum (Holtzman, Hotlzman)
3.You're Gonna Miss Me (Erickson)
4.96 Tears (Martinez)
5.I Want You to Know (Santos, Wade)
6.The "In"Crowd (Page)
7.I Know You Cried (Claxton)
8.She's About a Mover (Sahm)
9.I Fought the Law (Curtis)
10.99th Floor (Gibbons)
11.Splash 1 (Erickson, Hall)
12.Angry Sea (Fry)
13.Treat Her Right (Head, Kurtz)
14.Candy Man (Neil, Ross)
15.Western Union (Durrill, Ezell, Rabon)
16.Not Fade Away (Holly, Petty)
17.Pirate for Your Love (Freddie Steady Krc)
18.We're the Bulldogs (Freddie Steady Krc)

 Freddie Steady Krcさんです。
 真ん中のSteadyは、愛称なんでしょうね。
 渡世人でいえば、二つ名というやつです。
 The Freddie Steady 5は、バンド名です。

 彼らの代表曲、"What's So Hard About Love"は、テキサス、ルイジアナ音楽大好きバンド、Larry Lange & his Lonely Knightsが最新作でカバーしていました。


 さて、テキサスで成長したFreddieは、幼いころブリティッシュ・インベイションの波が襲来し、衝撃を受けたらしいです。

 Freddieが10歳のとき、彼は初めてプロのバンドを見ました。
 そのサウンドに天啓を受けた彼は、中学、高校とアマチュア・バンドを組んで音楽活動を続けたそうです。

 10歳のFreddieが見たそのバンドこそ、Sir Douglas Quintetであり、曲は"She's About A Mover"でした。
 当時の彼が、Sir Douglas Quintetが、実は英国バンドのふりをしているテキサスのバンドだと知っていたのかは明らかにされていません。

 さて、つらつらと書いてきましたが、05年リリースの本盤についていえば、冒頭の記述は、あまり当てはまりません。
 ご覧のとおり、カバー集だからです。
 本盤には、次のような副題が付されています。

16 Cool Covers Of Timeles Texas Rock & Roll

 彼が特別大好きなテキサス・ロックンロールのカバー集になっています。

 本盤でのThe Freddie Steady 5の編成は、次のとおりです。

Freddie Steady Krc : lead vocals, rhythm guitar, drums, harmonica & parcussion
Cam King : lead & rhythm guitar
Pattarson Brrett : keyboards
Waco Jack Mcvoy : drums
Lonnie Lomax : maracas

 Freddieの楽器クレジットが、ギター、ドラム、ハーモニカ、パーカッションとなっていますが、彼の他のアルバムでも同様の表記になっています。

 本盤では、もう一人ドラマーが参加していますが、アルバムによっては、追加のドラマーなしで、Freddie が全て叩き、さらにギターをダビングするというパターンは、普通にあるようです。

 冒頭で、Wes Mcgheeに触れましたが、実は、このFreddie Krcという人は、若い頃、Wes Mcgheeのバンドでドラムを叩いていたという経歴の持ち主なのでした。

 ライナーでそのことを知った私は、手持ちのWes McgheeのLPに、彼の名前がクレジットされていることを確認しました。
 (Wesのライヴ盤、"Thanks For The Chiken"のほか、いくつかのスタジオ盤でも彼の名前が見つけられます。)

 こうして、テキサンになりたかったジョン・ブルと、英国ビート好き(?)のテキサス男は、何とも愉快な邂逅をしていたわけです。

 さらに二人は、その後も交流が続いていたようで、Freddieの別プロジェクト、Freddie Steady's Wild Countryの08年作、"Ten Dollar Gun"は、Wes Mcgheeがプロデュースし、ギターでも全面参加しています。
 (さらに、Wes作の"Train Time"もカバーしています。)

 さて、本盤には、テキサス音楽のファンなら、誰でも知っている有名な曲がカバーされている一方で、いかにもローカルな、未知の曲も入っています。
 私に当てはめると、その比率はほぽ半々です。

 私にとって未知の曲は、次のとおりです。
 曲名の右に、オリジナル・アーティストを記載します。

2. I Can Beat Your Drum : Fever Tree
5.I Want You to Know : The Promarks
6.The "In"Crowd : Dobie Gray
7.I Know You Cried : The Sherwoods
10.99th Floor : The Moving Sidewalks
11.Splash 1 : The Clique
12.Angry Sea : The Vibrations
15.Western Union : The Five Americans

 いかがでしょう。
 ご存じのアーティストや曲はありましたでしょうか?

 "The In Crowd"は、確かBear FamilyのDVDでパフォーマンスを見た気がしますが、人違いでしょうか。
 私は、Dobie Grayが黒人か白人かさえ知りません。
 黒人R&Bシンガーだとすれば、他のバンドとは明らかにチョイスが違いますね。

 The Moving Sidewalksは、名前だけは知っていましたが、未だに聴いたことはありません。
 …と思います。
 Z.Z.Topのビリー・ギボンズがやっていたバンドですよね。
 Nuggetsとかのコンピに入っていたら、聴いたけど忘れているというパターンです。

 The Vibrationsは、確か黒人ボーカル・グループに同名のグループがいた気がしますが、どうでしょう。
 多分別で、こちらはガレージ・バンドなのでしょうね。

 The Cliqueの"Splash 1"は、作者の一人がEricksonとなっていますが、13階のエレベーターのあの人で間違いありません。

 いずれも、少しずつ興味を広げていきたいと思っています。

 有名曲は、どれも強力な曲ばかりですね。
 特に、13thフロアの"You're Gonna Miss Me"から、?マークの"96 Tears"へと続く流れは最強です。
 若干、"96 Tears"の解釈がお上品な気もしますが、Freddieの持ち味なのでしょう。

 ところどころ入ってくる未知曲も、概ねガレージっぽいかっこいい曲が多くて良いです。
 "I Can Beat Your Drum"、"I Know You Cried"などはそうですね。

 そんな中、"I Want You to Know"が、マージー・ビート風のキャッチーなメロを持つ曲で、私は、ブライアン・エプスタインがマネージメントしていた、Beatles以外のいくつかのビート・バンドを思い出します。

 そして、ロイ・オービソンの"Candy Man"は、そのどちらの流れでも、少し違う気がする曲ですね。
 ブルース・ハープが、ウェットなボーカルに寄り添い続けるブルージーなR&Bです。
 オービソンでも、あえてこの曲だというのが、Freddieのこだわりなのでしょう。

 "Western Union"のチョイスも面白いです。
 曲は、コーラスを売りにしたグループものというイメージです。
 私は原曲も、 The Five Americansも全く知りませんが、これが、Freddieにとって、テキサスを代表する時代を超越したロッンロールのひとつだというのです。

 さて、本盤では、ラストに、Freddieのオリジナルが2曲ボートラとして追加されています。
 Freddieの作風を知るためのサンプルですが、いずれも、確かに一連のカバー曲との関連性を感じるところがあります。 
 どちらも、彼の初期作品であり、彼のテキサス・ガレージ・ロック・ルーツです。

 特に、ラストの"We're the Bulldogs"は、彼が学生時代に作った曲で、演奏もなんと当時のメンツがやっているらしいです。

 実は、この2曲はむしろ例外で、他のアルバムを聴いた私の思うところ、Freddie Krcは、テキサスのどのパブリック・イメージとも、単純にカテゴリー分けできない音楽性の持ち主だと思います。

 サイケでも、ハード・ブギでもありません。
 また、アウトロー・カントリーでも、正調ウエスタン・スイングでもありません。
 ヒューストン・ジャンプとかのブルース系でもありません。
 そして、Tex-Mexでもありません。
 (それらのうちのいくつかは、時々顔をのぞかせますが…。)

 私の考えるところ、彼は、本盤の収録曲と同じくらい、英国60sビートにも大きな影響を受けた人だと思います。
 それも、ロンドン系ではなく、リバプール系です。
 その影響は、彼の血肉となり、自然と彼のつくる曲から、もれこぼれているように思います。

 Freddieの別のアルバムでは、ライナー氏が、彼の音楽を「英国50%、テキサス50%、カントリー・ソウル50%」と何やら算数を無視した、一筋縄ではいかない評し方をしていました。

 R&B好きだけれども、その解釈はあまり黒くなく、ハーモニーなどコーラスを効果的に使うのに長けていて、メロディがきれい、ポップな曲が多く、時にフォーキーなスタイルも得意……などなどが彼の特徴だと私は思います。

 ポップなソング・ライティングは、ときにニック・ロウを思わせたり、その歌声は、ときに鼻声じゃないコステロみたいにも思えたりします。

 本盤には、彼の音楽性を形成した様々な要素があります。
 それは、一見昇華されて、彼の中で別のものになったかのように思えますが、確かに彼の音楽の一部なのでした。

 彼は、自分の音楽の原点は、"She's About A Mover"であると、しばしば表明しています。
 そのことだけでも、私が彼の音楽を追いかけたいと思う、大きな理由なのでした。

 いつか機会があれば、彼のオリジナル・アルバムも取り上げたいと思います。


Gloria by Freddie Steady 5



I Know You Cried by Sherwoods




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コンタクト落とした





王様、わんこをレスキューする

 ジャケットのイラストがポップで楽しい、Joe King Carrscoの最新作です。
 今年11年のリリースで、最近気付いて入手しました。
 何月に出たのかは不明です。

 内容は、08年にオースティンのRuta Mayaで行われたライヴで、ホームレスと動物(主として虐待された犬)を支援する趣旨で開催さたチャリティ・コンサートの模様を収録しているようです。

 チカーノ音楽のジャケでは、ドクロのイラストが定番ですが、趣旨を反映して犬のバンドが描かれています。


Concierto Para Los Perros
Joe King Carrasco
en la Ruta Maya

1. Baby Let's Go To Mexico (Light, Perez)
2. Rock Este Noche (Crrasco)
3. Mas Mas (Crrasco)
4. Banana (Carrasco, Moskito)
5. Tequila Revolution (Crrasco)
6. Rosa La Famosa (Crrasco)
7. Wasted Days and Wasted Nights (Duncan, Fender)
8. Muchos Frijoles Borracho (Crrasco, Perez)
9. Jesus Malverde (Crrasco)
10. Chihuahua (Crrasco)
11. Por Que (Crrasco)

 最新作のわりには、収録からすでに3年近く経過していて、Carrascoの現況を伝える意味では、さほど新しい情報ではないですね。
 とはいえ、78年のレコード・デビューから、年月の経過を感じさせない、相変わらず楽しさ満載のステージです。
 
 本盤の出演メンバーは、次のとおりです。 

Joe King Carrasco : vocal, guitar
Dick Ross : drums
Miguel Cerventes : bass, vocal
Gil Herman : sax, vocal
Louis Murillo : Percussions

 相変わらずの楽しさと書きましたが、実は1点だけ、気持ちとして寂しいことがあります。
 それは、編成にキーボードが欠けていることです。
 といいつつも、実は、Carrascoは、初期のCrowns時代こそキーボード(アコーディオン含む)がいましたが(クリス・カミングス嬢 !)、その後は必ずしもいたわけではありません。

 ですので、予断なしに虚心に聴けば、何の問題もなく楽しめます。
 しかし、キーボードは、彼の過去作での能天気サウンドを形づくるうえで、とても重要な存在でしたので、あたかも必須であるかのように刷り込まれているのでした。

 Nick Loweの"Half A Boy And Half A Man"を初めて聴いたとき、思わず「あっ、Joe King Carrscoのサウンドだ!」と叫ばせた大きな要因だったと思います。

 さて、キーボードはありませんが、Carrscoを一度でも聴かれたことがある方なら、ここには頭に浮かばれたとおりのサウンドが展開しています。
 個々の曲がどうとかではなく、とにかく楽しませることに徹したパーティ・サウンドが嬉しいです。
 まさに、期待どおりのアルバムです。

 というわけで理屈抜きで楽しいライヴ盤です。
 かつてCarrascoを聴いて好きだった人なら、失望しない出来だと思います。




 
 さて、ここからは蛇足です。
 しばらくおつきあいください。

 冒頭の"Baby Let's Go To Mexico"という曲に注目です。
 私が以前から思っていることなんですが、この曲は、そもそも初出はいつで、誰がオリジネイターなのでしょうか。

 私が知る限りでは、この曲は、Carrascoが84年のLP盤、"Bordertown"でやっています。
 
 ここで思い出すのは、Sir Douglas Quintetのバージョンを収録したCDです。

 Sir Douglas Quintetのマーキュリー時代中心のベスト&未発表曲集、"The Best Of Doug Sahm & The Sir Douglas Quintet 1965-1975"のブックレットによれば、"Baby Let's Go To Mexico"は未発表曲となっていました。
 つまり、Quintet盤は、このCDが初出ということになります。
 クレジットは89年ですが、CDのリリースは90年のようです。

 これから考えると、Quintet盤は75年にハリウッドで録音されたあと、90年の上記CDで披露されるまで、文字通りお蔵入りしていたということだと思います。

 やはり、そのお蔵入り曲を、Carrascoが"Bordertown"で初めて取り上げ、リリースしたということでしょうか。

 ここで、気になるのことがふたつあります。

 ひとつは、CarrascoとDoug Sahmとの関係です。
 ふたりは近しい間柄だったのでしょうか。
 (CarrascoがDougをアイドルにしていたのは間違いないと思いますが…。)

 そして、もうひとつが、この曲の作者です。
 この曲は、Doug Sahmの作品ではありません。
 作者クレジットは、Perezとのみ記載されていることが多いですが、"Bordertown"では、Perez, Lightと共作名義になっていました。
 本盤での表記も同じです。

 これらに関わるつながりが確認できれば、Carrascoがオリジネイターになった(と思われる)理由も、少しは得心できるかも知れません。
 まあ、状況証拠探しです。

 まず、CarrascoとDougとの関係ですが、そもそもCarrascoのレコード・デビューは、El Molino Bandをバックに、まるでオルケスタのようなサウンドでスタートしました。
(最初はインディーズといいますか、もしかすると自主制作盤だったかも知れません。
 ちなみに、私が最初に入手したものは、カセット・テープでした。
 入手時期は覚えていません。) 

 このEl Molino Bandこそ、Augie Meyers(kd)、Speedy Sparks(b)、Ernie Durawa(dr)らのリズム隊に、Louie Bustos(sax)、Rockey Morales(sax)、Charlie MacBurney(tp)らを中心とするホーン陣で構成された、完全Doug Sahm人脈のバンドなのでした。

 Doug本人は参加していませんが、スタートから大きなつながりがあったといっていいですよね。
 Carrascoは、Dougの没後10年にリリースされたトリビュート盤では、"Adios Mexico"を録音しました。

 次に作者の件ですが、Perezというのは、Johnny Perezのことです。
 この人は、Sir Douglas Quintetでドラムを叩いていた人で、おそらくAugieと同じくらい、古くからDougとつるんでいた人です。
 少なくとも80年代半ばころまでは、様々なDougのセッションで叩いています。

 そして、Lightというのは、J.J.Lightという人で、別名(本名?)をJim Stallingsというベーシストです。
 この人は、多分、70年以降に、QuintetにHarvay Kaganの後任として加入した人だと思われ、レコーディングでは、Doug抜きで録音されたQuintetのUA盤、"Future Tense"で初お目見えしています。

 その後、72年の"The Return of Doug Saldanaで、正式にDougのバックを務めています。
 (余談ですが、この人はネイティヴ・アメリカンの家系らしく、J.J.Light名義でルーツに根差した(?)ヒット曲を持っており、ソロ・アルバムもあります。)

 というわけで、このLight、Perezコンビは、Sir Douglas Quintetのメンバーだったわけです。
 さらに、Carrascoと二人の関わりでいいますと、Johnny Perezが"Bordertown"のB面4曲で、別の数名とともに、Carrascoと共同制作者としてクレジットされています。
 かなりつながりましたね。、

 まあ、Quintetとしては、メンバー作の曲を録音したけれど、結局アルバムに収録しなかったということなんでしょう。
 作風としては、Doug作品といっても通る秀作ですので、シングルのB面で出すという手もあったと思うのですが…。
 

 さて、本盤収録曲で、Carrascoの過去作に収録されていたのは、私の知る限り、2曲目の"Rock Este Noche"と、4曲目の"Banana"だけです。
 "Rock Este Noche"は、78年の1st(and El Molino)に、"Banana"は、87年の"Bandido Rock"に収録されていました。

 今回、Carrascoバージョンの"Wasted Days and Wasted Nights"が聴けたのは収穫でしたが、欲を言えば、初期の無限グルーヴもの、"Let's Get Pretty"や"Betty's World"などもライヴで聴きたかったです。

 私は今、Carrascoの過去作を、まとめて聴き返したくなっています。



Buena by Joe King Carrasco




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若き日の王様とエル・モリーノ
コンチネンタル・クラブへようこそ


回想のダグラス卿

 正直に言います。
 私は、この人に関心がありませんでした。
 この人については、ほんのうわべの情報を知っていただけです。

 Long Rydersのリーダーだったこと、その後Coal Portersというバンドで活動していたことなどです。
 基本的な認識としては、Byrdsの流れを汲む音楽性を持つ人だということですね。
 実際どうかは別にして、12弦ギターのアルペジオがパブリック・イメージかも知れません。

 
As Certain As Sunrise
Sid Griffin

1. The Last Kentucky Waltz (Sid Griffin)
2. You Tore Me Down (Cryil Jordan, Chris Wilson)
3. Lost In This World Without You (Sid Griffin)
4. Alibi Bye (Sid Griffin, Steve Simmons)
5. Evidence (Sid Griffin)
6. Where Bluebirds Fly (Sid Griffin)
7. Just Let Her Go (Doug Sahm)
8. Wearing Out My Welcome With The Blues (Sid Griffin)
9. Faithless Disciple (Sid Griffin, Paul McGarvey)
10. I Come And Stand At Every Door (Nazim Hikmet arr. Sid Griffin)
11. Tell Me You Still Sing (Sid Griffin)
12. Written Upon The Birth Of My Daughter (Sid Griffin)

 本作は、05年リリースのセカンド・ソロ・アルバムになります。
 録音編集は、ロンドンとケッタッキーのルイズヴィルほかで行われました。

 私は、Byrdsには、ほとんど関心がありません。
 私のByrdsの聴き方は、ざっくり言いますと、1stアルバム、「イージー・ライダー」、「ロデオの恋人」あたりに基づいています。

 そこから、あまり発展しませんてじた。
 そして、ずっと後になって(Dylanのブートレグ・シリーズ1〜3に衝撃を受けたあと)、企画盤の「ディランを歌う」を聴いた時点で、消極的な肯定から無関心へと変貌したのでした。 

 Byrdsは、その活動時期によって、別のバンドかのような印象を受けます。
 初期のフォーク・ロック時代のシングルは、単純にキャッチーなポップ・ソングとして今でも好きです。

 フォーク時代のディランを分かりやすく紹介したのがPPMなら、フォーク・ロックの可能性を示したのがByrdsやAnimalsだったのだと思います。
 いずれも、ヒット曲として、わくわくさせる優れた仕事だと思いました。
 ディランを広く受け入れさせる地ならしになったとも思います。

 しかし、本物のディランの魅力に気づいてしまうと、もう後へは戻れません。
 医者が処方する劇薬の効果を知ってしまったら、市販薬では満足できないのでした。
 頭痛もちの私は、市販の頭痛薬には、ほとんど満足したことがありません。

 一方、「ロデオの恋人」は、興味深く聴いていましたが、Gramのソロ作2枚を知り、Chris Hilmanのその後の活動を追ううち、関心はすっかりそちらに移ったのでした。

 さて、そんな私が、Byrds信者だと思われるSidを聴く機会など、まずないと思っていました。
 しかし、こうして聴いています。

 理由は、トラック7の"Just Let Her Go"にあります。

 アマゾンの本アルバムの英文紹介文(カスタマーレビューではありません)では、この曲のことを、「アメリカーナのヒーロー、故ダグ・サームの未発表ないしは未録音かもしれない曲」と記述しています。

 もちろん誤りで、この曲は、Doug Sahmが、覆面バンド、Texas Mavericks(実態はSir Douglas Quintet)で披露した曲です。
 Dougの曲は、様々なシンガーがやっていますが、この曲をカバーした人は他に知りません。

 私が、このバージョンに特別な関心をよせるのには理由があります。
 直接的な表現でのクレジットはありませんが、この曲のアタマと終わりには、Dougの声が加えられているのではないかと思うからです。

 アタマで、「ワン ツー、 ワン ツー スリー、 プレイ !」とカウントしている声は、Dougではないでしょうか?
 また、最後の部分でもDougの語りが加えられているように思います。
 それは、まるでレコーディングでの未編集の会話のようでもあり、歌の締めのモノローグのようでもあります。

 曲は、(Dougの、ないしはそっくりな声の)カウントのあと、アクースティック楽器中心のイントロをバックに、Sid GriffinがDoug Sahmを讃え、紹介している(のだと思う)言葉を語り、そのまま歌へと引き継がれてスタートします。

 Sidのセリフの部分と、そして何よりも、私がDougの声ではないかと推察する箇所は、Dougファンにぜひ聴いていただきたいです。

 Sidのセリフは、イントロと重なって、私にはよく聞き取れませんが、何となくこんなことを言っているように(私の耳には)聞こえます。 
 (……の部分が聞き取れる方はご教示ください。)

This …… Doug Sahm,
Texas Tornado, Leader of Sir Douglas Quintet. 
…… Buddy Holly, Bob Wills,
God Bless You. 

 Doug Sahmが天に召されたのは99年のことですから、仮にこの声が本人のものだとすれば、当然過去の録音から持ってきたことになります。

 この"Just Let Her Go"のみ、他の曲とはプロデュースもセッション・メンバーの構成も違うようですので、この曲の本体部分の録音が古いものだという可能性もありますが、録音年は特記されていません。

 真相をご存じの方はご教示いただきたいです。
 私は、最近、機会があればこの曲をリピートしまくっています。

 ちなみに、謝辞一覧の名前の中に、「for the Sir Doug cut」と記載されている箇所があります。
 ただ、これがこのフレーズの直前に記されている人物のみを指す説明文なのか、それともその前の人物をも含むものなのか判然としません。
 人物名は、カンマで区切られて列挙されているからです。
 この部分は、「サー・ダグの(声の)箇所(の制作)に」尽力した人物へ謝辞を表わしているのでしょうか? 

 なお、"Just Let Her Go"のセッションには、Ian Maclaganがオルガンで参加しています。
 また、その他全体のセッションには、ギター、ピアノで、Wes Mcgheeの名前がクレジットされていて、とても興味深いです。


 追記
 トラック2の"You Tore Me Down"は、Flamin Grooviesの76年作"Shake Some Action"収録曲のカバーです。 
 "Shake Some Action"は、Dave Edmundsが制作したアルバムで、Gene Thomasの"Sometimes"もやっていました。

 Flamin Grooviesは、Beatles、Stonesなどの英国ビート・バンドのストレート・コピーのほか、Byrdsの "Feel a Whole Lot Better"もやっていたサンフランシスコ出身のガレージ・バンドでした。

 そして、"I Come And Stand At Every Door"は、Byrdsが66年作のアルバム、"5th dimension"でやっていた曲です。










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