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メンフィス・ソウル、バイユー・スタイル

 この人は、現役のSwamp Popシンガーの中で、最も精力的に活動している人ではないかと思います。
 とはいえ、一般的には、全く無名ですよね。
 私も知ったのは、それほど以前ではありません。

 Don Richというと、Back Owensのバッカルーズのリード・ギターに同名の人がいて、アマゾンで検索すると、そちらが先にヒットしますが別人です。

 90年代後半くらいにCDデビューしたと思われ、当初は自作中心でアルバム作りをしていましたが、いつごろからか、ステージで受けるようなカバー曲をまじえるスタイルが定着し、現在に至っているようです。
 本作は、05年リリースの作品になります。


Bayou Soul
Don Rich

1. What Went Wrong (Don Rich)
2. Don't Be Afraid of Love (Otis Redding)  
3. You Don't Miss Your Water (William Bell)
4. I'm a Fool to Care (Ted Daffan)
5. Sad Song (Steve Cropper, Otis Redding)
6. My Lover's Prayer (Otis Redding)
7. 'Tit Bayou (Trad. arr. Don Rich)
8. Cry Foolish Heart (J. A. Guillot)
9. Bony Maronie (Larry Williams)
10. Dreams to Remember (Otis Redding, Z. Redding, J. Rock)
11. It's Killing Me (Charles Guilbeau, Don Rich)
12. Lose the Blues (Tommy McLain)
13. Just a Dream (Jimmy Clanton)
14. Hey Mom (Don Rich)

 Swamp Popは、ニューオリンズR&Bと付かず離れずの関係にあります。
 例えば、Bobby Charlesなどは、一般的にニューオリンズR&Bの人と見られていますが、その音楽は、Swamp Popと呼んでも差支えないでしょう。

 もともと、Swamp Popには明確な定義がないと思われ、米国のライターの中には、Fats DominoをSwamp Popの最大の成功者ととらえている人もいます。
 まあ、これは広義の考え方ですね。

 狭義には、ケイジャンやブラック・クリオールなど、出身文化にその定義を求める考えもあるようです。
 この考え方によれば、ケイジャンやザディコに近い音楽性となるでしょう。
 Johnnie Allanなどは、この考え方にぴったりの人ですね。

 しかし、Swamp Popの表の顔は、あくまで黒人R&Bのイミテイト(それが不適切ならシュガー・コート)というイメージです。
 しかも、しばしばセンチメントなメロを持つという特徴から、日本人に好まれてきました。

 そんなSwanp Popですが、メンフィス・ソウルなど、サザン・ソウルのカバーも好んで取り上げられてきました。
 本盤は、その典型といいますか、「どれだけOtisが好きなの?」と言いたくなる内容になっています。

 なんとOtis Reddingを4曲もやっているのでした。
 次の通りです。

2. Don't Be Afraid of Love
5. Sad Song
6. My Lover's Prayer
10. Dreams to Remember

 このうち、"Don't Be Afraid of Love"は、未発表曲集、"Remember Me"収録曲で、レアな選曲ですね。

 "Sad Song"は、一般的には"Fa-Fa-Fa-Fa-Fa"として知られている曲で、名盤"Dictionary Of Soul"収録曲です。

 そして、同じ「ソウル辞典」収録曲でも、"My Lover's Prayer"が渋いチョイスで興味深いです。
 私は、今回のOtisものでは、この曲の出来が一番好きです。

 "Dreams to Remember"は、もちろん"I've Got Dream to Remember"で、カバーも多い人気曲ですね。
 カバーでは、Delbert Mclinton盤を思い出します。

 Don Richという人は、モダンなSwamp Popシンガーの中では、かなり歌える人だと思います。
 Swamp Popでは、しばしばヘタうま系だったり、線の細い青白系のボーカリストが見受けられますが、この人は普通にうまい人です。

 ただ、ここまでOtisの楽曲をやられると、Otisファンとしては、声に「Sad感」が足りない、などとつい言いたくなるのでした。

 Don Richは、歌うだけでなく、ピアノとオルガンを弾いていて、バンドのサウンドの要でもあります。
 バンドは、生のホーン陣を擁する編成で、往年のメンフィス・サウンドの再現を試みようと頑張っています。

 そういえば、William Bellの名作、"You Don't Miss Your Water"は、Otisも"Otis Blue"でやっていますから、こちらもOtisのカバーと言えるかも知れません。
 やはり、好きなんでしょう。

 その他の曲も聴いていきましょう。

 "I'm a Fool to Care"は、ヒルビリー・シンガーのTed Daffanの作品ですが、Swamp Popでは、Joe Barry盤が成功したことから、人気曲になっています。
 カバーもかなりあると思います。
 Freddy Fenderもやっていると思いますが、私はデビューしたてのJoe King Carrascoがやったバージョンが強く印象に残っています。

 Ted Daffanという人は、他にも"Born To Lose"という人気曲があり、これまたカバーが多数あるはずです。
 私がすぐに連想するのは、Ray Charles盤です。

 "Cry Foolish Heart"は、初めて聴いた曲ですが、なかなかいい曲だと思いました。
 この曲の作者は、J.A.Guillotとなっていますが、Johnnie Allanの本名です。
 Johnnie Allan Guillotですね。
 芸名には、フランス系の姓が伏せられていたわけです。

 ファースト・ネームとミドル・ネームで芸名を名乗っている人は、少なくないですね。
 Raymond Charles Robinsonがそうです。
 Rayの場合は、有名なボクサー、Suger Ray Robinsonとの混同をさけるためだったらしいですが。

 もう一人例をあげれば、Robert Charles Guidryさんがいますね。
 もちろん、Bobby Charlesです。
 この人のGuidryという姓は、やはりフランス系なのでしょうか?
 英語系でないにしても、何となく違うような響きがしますが。

 では、Don Richはどうでしょう。
 Donald Richardとか、Richardsonかもしれないですね。
 仮にDonald Richardなら、そのあとに、やはりフランス系の姓があってもおかしくなさそうです。

 脱線しました。
 私は、この手の名前の話が好きなのです。

 Tommy MacLain作となっている"Lose the Blues"は、初めて聴く曲です。
 Tommyは、今気になっているひとりなので、過去作を探したい気持ちがふつふつとわいてきています。

 "Just A Dream"は、名作中の名作ですね。
 作者は、Jimmy Clantonで、原曲は彼の自作自演です。 
 米Aceを代表する曲ですね。
 私は、Sir Douglas Quintet盤で初めて聴いて以来、大好きな曲です。
 Johnny Aceの"Predging My Love"と並ぶ永遠の名曲だと思います。

 Don Richは、聴きがいのある歌い手だと思いました。
 カバー曲の料理ぐあいをなぞるだけでも楽しいです。
 
 もっと聴きたいシンガーです。



Heartache's Just Begun by Don Rich







もっとジミーの好きなもの

 久しぶりにJimmie Vaughanのアルバムを買いました。
 リリース前から予約オーダーをしていたのです。
 多分、新作を買ったのは10年ぶりくらいだと思います。
 私は、Jimmie Vaughanをそれなりに聴いてきたはずでしたが、いつしか興味が薄れ、縁遠くなっていたのです。 

 というわけで、確認のため調べたところ、驚くべきことが判明しました。
 確かに10年ほど疎遠だったという私の印象は正しいものでした。
 でも、この約10年、Jimmie Vaughanは、本作を含めて2枚のみアルバムをリリースしていただけだったのです。


Plays More Blues, Ballads & Favorites
Jimmie Vaughan
feauturing Lou Ann Barton

1. I Ain't Never (Webb Pierce, Mell Tillis)
2. No Use Knocking (Paul Gayten, Robert Guidry)
3. Teardrop Blues (Jimmy liggins)
4. I Hang My Head and Cry (Gene Autry, Fred Rose, Whitley)
5. It's Been a Long Time (Biggs, Thomas)
6. Breaking Up Is Hard to Do (Bourgeois, Huey P.Meaux)
7. What Makes You So Tough (Glover)
8. Greenbacks (Richard)
9. I'm in the Mood for You (Biggs, Thomas)
10. I Ain't Gonna Do It No More (Robert Guidry)
11. Cried Like a Baby (Brown, David, Herman)
12. Oh Oh Oh (Lloyd Price)
13. I'm a Love You (Jimmy Reed)
14. The Rains Came (Huey P.Meaux) 

 彼のソロ・ワークは以下のとおりです。

Strange Pleasure : '94
Out There : '98
Do You Get The Blues ? : '01
Plays Blues, Ballads & Favorites : '10
Plays More Blues, Ballads & Favorites : '11

 最初の94年の"Strange Pleasure"はそれなりに楽しめました。
 でも、その後の作品からは徐々に関心が薄れ、惰性で購入するようになっていたのです。
 私は、それらが、音楽雑誌のレビューで好評価なのを不思議に感じていました。
 「琴線に触れる、触れないというのは好みの問題だからなあ」と横目で見ていました。 

 そして、01年リリースの"Do You Get The Blues ?"を最後に、私はJimmieを追わなくなったのでした。

 そのはずでした。
 しかし、Jimmieはその後9年間、新作をリリースしなかったため、結局入手しなかったのは、昨年の"Plays Blues, Ballads & Favorites"だけだったというわけです。

 さて、今回、本盤を入手しようとしたのには、ちゃんとした理由があります。
 それは、Lou Ann Bartonと一緒に写っているジャケのせいでした。
 私は、以前からLou Ann Bartonが好きなのでした。

 Jimmieは、ボーカルが弱点です。
 強力なボーカリストと組んでほしいと以前から思っていました。
 その意味で、今回の試みは私にとって願ってもないことなのでした。

 しかし、またもしかしです。
 ジャケは誇大広告でした。
 Lou Ann Bartonが参加しているのは3曲だけです。

 そして、実は前作も全く同じコンセプトで作られ、Lou Ann Bartonが数曲で参加しているようなのです。
 「これって、2枚録りして、2年間に分けて小出しにしたんじゃないの?」
 と、私の心の声がつい叫んでしまうのでした。
 よく見ると、ジャケ写は、前作のものを使いまわして、JimmieのとなりにLou Ann Bartonの写真を加えただけのようにも思えます。

 ぶつぶつと独り言をつぶやきながらも、それとは裏腹に私は期待していました。
 さらに、前作にも関心を持ち出していたのです。

 私は、前作からのコンセプトを知りませんでした。
 無関心だったので気付かなかったのです。
 「ブルース、バラッド そして好きな曲を演る」
 いいじゃないですか!!
 うーん、カバー曲大好き、企画盤大好きの私としては、前作をスルーしたのはポカでした。

 気負いこみつつ、早速聴きましょう。
 
 冒頭の"I Ain't Never"は、意表をついてホンキー・トンク・カントリーでスタートします。
 Webb PierceとMell Tillisが書いた曲で、多分Webb Pierceの59年盤がオリジナルだと思います。
 私は、WebbのバージョンをBear familyの年代別カントリー・コンピで聴きました。
 72年には、もうひとりの作者、Mell Tillis盤がヒットしているようですが未聴です。

 ロッキン・カントリーで、ロカビリアンが好みそうな曲ですね。
 多くのカバーがあると思いますが、ロックでは、John Fogerty盤とDave Edmunds盤です。

 ここでのJimmie盤は、私が持っているJimmieのイメージそのままの仕上げでした。
 アルバムの1曲目は、アップテンポでロックンロール調、そしてリズム・ギターがとことん頑張ってドライヴしてほしいところ、しりすぼみになってしまう。
 バンドには、もう一本ギターがいるのだから、もう少し分厚くいってほしいものです。

 T-Birdsの出世作、Dave Edmunds制作のアルバムは良かったです。
 あれは間違いなく、Daveがサイドを弾いていますよね。
 グルーヴが違います。

 Jimmieのソロって、押しなべて、スイング感がいまいちだと思いませんか。
 私の理想は、弟とやったVaughan Brothersの"Family Style"です。
 中でも、1曲だけあげれば、"White Boots"です。
 あのファンキーなグルーヴは、ナイル・ロジャースの制作のたまものでしょうか。
 ああいうのをやってくれれば、私の興味が薄れることもなかったでしょう。

 さて、私は、Jimmieの音楽的趣味を探るほうに関心がいっています。
 Bobby Charlesを2曲やっていますが、私が知っているのは、"No Use Knocking"のみです。
 多分、もう1曲のほうもChess録音だと思いますが、記憶にありません。

 とはいえ、ニューオリンズR&Bのカバーは私の大好物です。
 さすがに、Lou Ann Bartonがいい味出してますが、ヴィンテージ期のBobby Carlesと同じ伴奏を付けてあげたいところです。

 私は、Jimmieの演奏から、もさっと感を受けます。
 あか抜けない感じです。
 私は、時にイナタいという言葉を使いますが、褒め言葉です。
 でも、あか抜けないというのは、そのままストレートな意味で使っています。

 "I Hang My Head and Cry"は、原曲は古いヒルビリーです。
 作者名に、Gene Autryとありますから、本人の録音もあると思います。
 ただ、私はGene盤は未聴で、聴いていたのは、Sons of Pioneer盤です。
 でも、明らかにJimmie盤のお手本ではないですね。

 この曲は、R&Bでは、Arthur Alexander盤があり、そっちでしょうか。
うーん、他にそれらしいのが見当たりませんが、Arthur盤の暖かみや、とぼけた味はJimmieには出しようがないですね。
 ブルージーな別の曲として楽しみましょう。
  
 "Breaking Up Is Hard to Do"は、ニール・セダカ作の同名曲があり、特にウキウキ感たっぷりのカーペンターズ盤は最高ですが、同名異曲です。

 こちらは、Swamp Popの初期の代表曲のひとつで、オリジネイターはJivin Geneです。
 Jivin Gene盤は若干レア気味なので、Cookie & his Cupcakes盤が聴きやすいですね。
 このあたりが好きだというのは、この世代のテキサンなら当然です。
 Johnny Winterもそうでした。
 ここでも、Lou Ann Bartonが良いです。

 "Cried Like a Baby"は、Nappy Brownの"I Cried Like Baby"ですね。
 好きなんでしょうが、こういうシャウターの曲だと、ボーカルの弱さが目立ってしまいます。
 ここは、朴訥なギターでカバーしたいです。

 "Oh Oh Oh"は、Lloyd Priceですが、原曲は未聴です。
 今回、原曲が聴きたくなった曲のひとつです。

 ラストは、"Rains Came"です。
 Jimmieさん、あなたもこの曲がお好きですか。
 嬉しいです。

 Doug Sahmのトリビュート盤に参加していた人ですから、当然かな。
 もし、Stevie Ray Vaughanが生きていたら、彼はDougの追悼盤に参加したんでしょうか。
 Dougの曲を歌うStevieが聴きたかったです。

 最後に、私の好きなJimmie Vauighnの助演プレイをひとつ。
 Lou Ann Bartonのソロ作、"Lead My Lips"の1曲目、"Suger Coated Love"でのソロです。
 あのアルバムは、他にもギタリストがいたと思いますが、私はJimmieのプレイだと思っています。
 (違ったらショックだな。)



In The Middle Of The Night by Jimmie Vaughan & Lou Ann Barton







タルバートさん、お電話です

 昨日のLarry Langeの記事の中で、"Two Hearts In Love"という曲に触れました。

 この曲は、Larry Langeの新作のクレジットでは、Doug Sahm作となっています。
 しかし、Doug Sahmの初期作品を集めた85年のアナログLP盤、"Texas Road Runner"では、Talbert作となっていることに気が付きました。 

 確認せずに書いてしまったので、ここで補足追記します。 
 ちなみに、同曲を収録した唯一のCD、00年の豪AIM盤、"In The Biginning"ではノー・クレジットになっているようです。


 
 これは、Larry Langeの新作の単純ミスという可能性は高いです。
 事実なんて、案外そういう簡単のことが正解であったりします。

 しかし、それでは話に発展性がないですね。 
 話を膨らませるとすれば、例えばTalnertがDoug Sahmの変名であるというのはいかがでしょう?
  (変名にする理由がない、という突っ込みは留保してください。)

 Dougは、後年、お遊びで複数の変名を名乗ることがありました。
 たとえば、Sam Dogg、Wayne Douglas、Doug Saldnaなどが思いつきます。

 ここで、ひとつの事実を書いておきます。

 Doug Sahmの関係者で、Talbertという姓を持つ人物がひとり存在します。
 Wayne Talbertという人で、68年のSir Douglas Quintetのアルバム"Honky Blues"で、ピアノを弾いていました。

 このアルバムは、サンフランシスコ時代のSir Douglas Quintetの1枚目にあたるもので、Augie Meyersが不参加という、他にはないものです。

 Wayne Talbertは、その後もう1枚だけ参加したアルバムがありますが、以降のキーボードはAugie Meyersがメインであり、完全にゲスト扱いになっていました。
 その後、みかけなくなったと思います。

 例えば、この人が実在していないというのはどうでしょう。
 Augieが不在だったとき、代役を誰も呼ばず、Dougが変名でピアノを弾いたというストーリーです。
 ありえないですか?

 ファースト・ネームが、Dougのミドル・ネームのWayneであるという、ただそれだけ繋がりのヨタ話なんですが…。

 今回は、言い訳のような妄想話でした。
 今も、サンフランシスコにいらっしゃるかもしれないWayne Talbertさん、すみません。






コンタクト落とした !

 いやー やっぱりいいです。
 このC級感、B級感がたまりません。
 前作からさほどブランクを開けずにリリースされた、Larry Lange and his Lonely Knightsの最新作です。
 私は、ここ数日ヘビロテしています。

 前作、"San Antonio Serenade"は、チカーノR&B、Tex-Mex、そしてメキシコ音楽の先達への愛情と敬意をまっすぐに表わしたアルバムでした。
 対して、この最新作は、ニューオリンズR&BやSwanp Popへと接近した内容になっています。


Wiggle Room
Larry Lange and his Lonely Knights

1. Jail In San Antone (Neal Walden)
2. Ooh La La (Dave Bartholomew)
3. What's So Hard About Love (Cam King, Freddie Krc)
4. Everything's Gonna Be Alright (Van Broussard)
5. Welcome To the Wiggle Room (Larry Lange)
6. Once In a While (Michael Edwards, Bud Green)
7. Feel So Good (Leonard Lee)
8. Don't Make Me Leave New Orleans (Tommy McLain)
9. How Many Midnights (Larry Lange, Joanna Ramirez, Grady Pinkerton)
10. I'll Try One More Time (J.Janot) al frrier
11. Another Saturday Night In Wardville (Tommy McLain)
12. Two Hearts In Love (Doug Sahm)
13. Once Upon a Time (Paul, Stevenson, Hamilton, Ales)
14. Between Here and Baton Rouge (Larry Lange)
15. Love Me (Glover, Nix)

 Larry Lange and his Lonely Knightsについて、おさらいしておきましょう。
 彼らは、テキサスのオースティン〜サンアントニオを本拠とする、テキサス、ルイジアナ音楽大好きバンドです。
 歴戦の職人集団ではありますが、いい意味でアマチュアイズムを失わない、何とも愛すべきバンドです。
 その編成は以下のとおりです。

Larry Lange : vocals, guitar, bass
Michael Christian : drums
Grady Pinkerton : lead guitar
Kenny Hayes : keyboard
Jesse Botello : tenor saxophone
Paul Klemperer : tenor, baritone saxophone
Michael Prillaman : trunpet, pfugel horn, trombone

 ギター、ベース、ドラムス、キーボードに、3管のホーンを擁するバンドです。
 リーダーのLarry Langeは、ベースを弾きながらリード・ボーカルをとります。

 ソウル・レビューっぽい編成で、Tex-MexからニューオリンズR&B、ノーザン・ソウルまで、めちゃくちゃイナタく迫ってくる愛しさ満点のバンドなのでした。

 さらに、今作のセッションでは、以下のゲストが参加しています。

featuring
Joanna Ramirez : vocals
Tommy McLain : vocals, piano

 女性シンガーのJoanna Ramirezは、前作に続いての参加ですね。
 Larryとのデュエットがひとつの売りになりつつあり、もはや準メンバー的存在になっているように思います。
 
 そして、今作では、Swamp Popレジェンドのひとり、Tommy McLainが参加しています。
 この人は、Don Gibsonのカバー、"Sweet Dreams"のヒットが有名ですが、自作曲も多く、すぐれたソング・ライターでもあります。

 私は、Swamp Popでは、Johnnie AllanやClint Westなどよりも、この人の方が好みかも知れません。
 今作では、ボーカルのほか、キーボードでも演奏に加わっています。


 さて、前作では、ハイウェイ90サウンドと称して、テキサス、ルイジアナからメキシコ湾まで、仮想の音楽の旅を巡ったわけで、ライナーでのLarryの愛情あふれるコメントもあり、アカデミック(?)なたたずまいも漂わせていました。

 しかし、今作ではバンド本来の猥雑さが戻ってきた感じがします。
 スタジオ盤ではありますが、ライヴ盤"Live At Evangeline Cafe"に近い匂いを感じさせるものがあります。

 とりあえず聴いてみましょう。
 初めて聴いたとき、まずアタマの2曲で、このアルバムの性格がわかった気がしました。
 
 バンドの音は勢いがあっていいと思います。
 しかし、ボーカルがへなちょこです。
 ありがちな表現を使えば、「良く言えば味がある、別の言い方をするならヘタうま」なのでした。

 Larryのボーカルがヘタうまなのは分かってたことです。
 でも、2曲めでリードをとるゲストのJoannaが、今作ではいまいちです。
 前作では、躍動感あるノーザンで、はじけるようなボーカルを聴かせてくれた彼女ですが、今回はちょっと地味気味なのでした。


 冒頭の"Jail In San Antone"は、Larryが早口でまくしたてる、ニューオリンズR&Bタイプのロックンロールです。
 これを聴いて、私は「あー このぬるい世界へ帰ってきた」と嬉しくなったものでした。
 はて、「サンアントンの監獄」というのは、オリジネイターは誰でしょう?

 続く"Ooh La La"は、女性シンガーのJoanna Ramirezがリード・ボーカルをとります。
 原曲は、Smiley Lewisで、この選曲は渋いです。
 ちなみに、フェイセスのアルバム・タイトル曲とは同名異曲です。
 ここでのJoannaのボーカルは、キュートさや溌剌さに乏しく、せっかく女声ボーカルを起用している効果はあまり出ているとは言い難いです。

 私は、この2曲を聴いた時点で、逆に頬が緩んでいました。
 このピリっとしないゆるさは、このあとのぐたぐたな展開を予感させて、思わず嬉しくなってしまうのでした。 
 この聴き方って変ですか?

 とにかく聴きましょう。 
 "What's So Hard About Love"は、のどかなアコーディオンの響きで進行するポップなTex-Mexです。
 ここでアコを弾いているのは、ゲストのBradley Williamsという人です。

 LarryとJoannaがデュエットするこの曲は、テキサスの面白バンド、Freddie Steady 5のレパートリーです。 
 このバンドは、最近私が関心を持っているバンドで、原曲は、リーダーの"Freddie KrcとギターのCam Kingが書いた曲です。

 Freddie Steady 5の最新作"Live From Sugarhill Studio"のライナーでは、ライターが"The Spirit of Sir Doug pops"という言葉を使って、彼らをSir Douglas Quintetになぞらえていました。

 
 "Everything's Gonna Be Alright"は、またもLarryとJoannaのデュオ曲です。
 この軽快に進行するニューオリンズR&Bスタイルの曲は、Swamp Popの兄妹デュオ、Van & Graceのカバーです。

 兄貴のVan Broussardは、ソロで何枚もアルバムを出しているSwamp Popシンガーです。
 多くの録音がある人ですが、英AceのSwamp Popの名コンピ、"Louisiana Saturday Nightでは、サザン・ソウルのカバー、"Feed The Flame"が収録されていました。

 一方、妹のGrace Broussardは、兄とは別の男女コンビ、Dale & Graceとして、あの"I'm Leavin' It All Up To You"を全国ヒットさせた人なのでした。

 "Welcome To the Wiggle Room"は、バンドのオリジナルで、R&Bインストです。
 ここでは、ホーン陣のリフが延々と響くなか、ブルージーなギターとハープのブロウが印象的です。
 そして、この曲のみライヴなのか、あるいはそれ風の録音なのか、酒場での喧噪のようなSEが聴こえます。

 続いて、Joannaのリードで、ポピュラー・スタンダードの"Once In a While"が歌われます。
 おとなしめの曲調ですが、しかし、お上品さなど一切ないバー・バンド・サウンドで、他の曲との違和感は全く感じさせません。

 "Feel So Good"は、またまたLarryとJoannaのデュオ曲です。
 ニューオリンズR&Bスタイルの快調に乗せるアップ・ナンバーで、原曲はShirly & Leeです。
 "Let The Good Times Roll"で有名な男女R&Bデュオですね。

 しかし、ここでお手本にしたのは、Van & Graceのバージョンかも知れません。
 Van & Graceは、この曲を60年代に録音しています。
 "Everything's Gonna Be Alright"をやっていることからして、そんな想像をしてしまいます。

 さて、次の曲が始まると、一転別のアルバムになったのかと思わず確認しそうになります。
 "Don't Make Me Leave New Orleans"は、Tommy McLainがリード・ボーカルをとる彼の自作曲です。
 そのハスキーな声は、得も言われぬ魅力に溢れていて、一気に別世界へといざなってくれます。

 Tommy自身によるピアノの伴奏にのせて、静かに美しいバラードが流れます。
 バンドは当然同じですが、彼と息を合わせ、完全にTommy McLain Worldを展開していて、流石というほかないです。

 "How Many Midnights"は、再びバンドのオリジナルです。
 歌うのはJoannaで、ブルージーなバラードを決めますが、やはり彼女には元気なノーザン・ソウル系がよい気がします。

 "I'll Try One More Time"は、ルイジアナ・ロカビリアンのAl Ferrierもやっていた、のどかなワルツです。
 ホンキートンク・カントリーを、流麗なペダル・スチールの音にのせて、Larryがせつせつと歌います。
 この曲調の転換は効果的で、出来以上によく聴こえます。

 "Another Saturday Night In Wardville"では、再びTommy McLainが素晴らしい喉を聴かせます。
 今度はミディアム〜アップで、改めてひとつ抜けたボーカルの力を見せてくれます。
 この曲でも、バンドがぐっとひきしまっているように感じました。

 "Two Hearts In Love"は、なんと、ここへきてDoug Sahmの作品です。
 しかも、選曲が渋すぎます。
 この曲は、Dougが62年にリリースしたもので、アナログの編集盤"Texas Road Runner"に収録されていました。

 Doug Sahmが10代のときに書いた作品ですね。
 これは、オーストラリア盤の初期作品集でCD化されたと思いますが、私は持っていません。
 まあ、アナログLPで聴きましょう。
 10代であったにしても、すでにきれいなメロディを書いていて流石です。

 "Once Upon a Time"は、Marvin GayeとMary Wellsの64年のデュオ・ヒットのカバーです。
 当然ながら、LarryとJoannaがデュエットしています。
 今作では、いくつもデュエットしている二人ですが、あえて選ぶならこの曲でしょう。
 モータウン・ナンバーですが、ダンスものではなく、バラードです。

 "Between Here and Baton Rouge"は、Larryの作品ですが、Doug Sahmの作風を思わせるTex-Mexで、これはよいです。
 「こことバトン・ルージュのあいだで」とは何のことを歌っているのでしょう。

 ラストの"Love Me"は、ブラス陣中心のムーディーなインストです。
 クロージング・テーマといったところでしょうか。
 ダンス・ホールの終了を告げるように、サックスの甘い響きで幕が下ろされるのでした。



Ain't No Big Thing by Larry Lange & his Lonely Knights




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もうあとへは引けない

 つい最近、Jim Fordの1stアルバム、"Harlan County"がストレート・リイシューされました。
 オリジナル・ジャケットでのCD化は初めてではないでしようか。

 私は、全曲+ボートラ入りのジャケ違い再発盤(タイトルも変更されているBear Family盤)を持っているので、購入予定はありません。
 というわけで、今回はレア音源集を聴き返します。


Point Of No Return
Previously Unreleased masters
& Lost 45 & Rere Demos
Jim Ford

1. I'm Ahead If I Can Quit While I'm Behind (Ford)
2. Point of No Return (Campbell, Ford)
3. Harry Hippie (Ford)
4. Go Through Sunday [Slow Version] (Ford)
5. Sweet Baby Mine (You Just A...) (Campbell, Ford)
6. Look Again (Ford)
7. Mill Valley (Ford)
8. Just Cause I Can (Ford)
9. Stoppin' to Start (Ford)
10. Don't Hold Back What You Feel (Ford)
11. It's My Life (Ford)
12. If I Go Country (Ford)
13. Bouquet of Roses (Hilliard, Nelson)
14. He Turns My Radio On [Sacred Version] (Ford)
15. Whicha Way [I Wonder What They'll Do with Today] (Ford, Vegas)
16. If You Can Get Away (She Don't Need Me Like I Need You) (Ford)

 Jim Fordは、R&Bテイストを持つカントリー系シンガー、ソングライターです。
 本盤は、独Bear Familyから08年にリリースされたもので、未発表と未LP化曲、デモ音源などを収集した内容(になっているらしい)です。

 私は、このCDのほか、もう1枚Bear Family盤を持っていますが、Jim Fordの全体像をほとんど把握していず、今回、初めてライナーをななめ読み(?)してみました。

 さすが、Bear Familyだけあって、資料性の高いブックレットが封入されています。
 まず、全体の概要があり、続いて4人のゆかりのある人物のインタビュー記事が掲載されています。

 その4人とは、Brinsley Schwartzのマネージャーだった、Dave Robinson、Jim Fordと共作した(しようと努力した)ラスト・ソウル・マン、Bobby Womack、L.A.のプロデューサー、ソングライターのKim Fowley、テキサスのシンガーで、親友だったというP.J.Probyです。

 このうち、興味のある、Dave RobinsonとBobby Womackの記事を読み(?)ましたが、途中で疲れてやめてしまいしまた。
 もちろん、英語が苦手だということが一番ですが、どうにも内容がネガティブなような気がしてやめたのでした。

 これから書くことは、もしかすると、私の読解誤りかも知れません。
 この盤をお持ちの方で、ライナーを読まれた方はご教示願いたいです。

 私が大意を読み取った(?)限りでは、このJim Fordという人は、豊かな才能とは裏腹に、性格破綻者のように感じます。
 どうもドラッグ依存者のようで、ときに無謀で無責任な行動をとることがあったようです。

 このあたりのくだりは、Dave Robinsonも、Bobby Womackも別の言葉で同様のことを語っているように思います。

 結果として、Brinsley Schwartzは、"Ju Ju Man"をレコーディングし、Bobby Womackは、本盤収録の"Point of No Return"、"Harry Hippie"ほかを録音しましたが、道のりは多難だったのではないかと推察します。

 というわけで、本盤では、特に"Point of No Return"、"Harry Hippie"の2曲に注目です。
 Bobby Womackのバージョンと単純には比較できませんが、"Point of No Return"に限って言えば、聴きようによっては、そのだみ声はまるでVan Morisonかのように聴こえたりします。

 一方、"Harry Hippie"は、デキシー調のアレンジがGood Time Miusic風で、そのての音楽好きにははまるかもしれません。
 ただ、いずれもくせのあるボーカルですので、人を選ぶシンガーかも知れません。
 ソウルフルさは、思ったほどありません。

 私が初めて聴いた印象は、さほど感銘を受けなかったというのが事実です。
 現在は、じわじわとくるタイプの音楽なのだと好意的に解釈しています。 

 もう1枚のBear Family盤(1st+ボートラの再発盤)には、Nick Loweへの取材記事が載っていて、Nickは取材の締めで最大級の賛辞を贈っているようです。

 「ジム・フォードの歌は、ダン・ペン、スプーナー・オールダム、ジョー・サウスらに匹敵する偉大な業績だ。彼は、私の人生に最も大きな音楽的影響を与えた。」
 たとえ社交辞令が入っていたとしても、Nickにここまで言わせるのは凄いです。

 私はと言えば、Jim Fordを好きになるには、もう少し時間が必要なようです。



It's My Life by Jim Ford



Harry Hippie by Bobby Womack




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マイルド・ジーン・ヴィンセント

 今回は、Gene Vincentの晩年の作品2枚を、1枚のCDにまとめたものを聴きました。
 原盤は、カーマスートラという、ブッダと同系のレーベルからリリースされたものです。

 トラック1から10までが、70年の"If You Could Only See Me Today"で、トラック11以降が、71年の"The Day the World Turned Blue"になります。


A Million Shades Of Blue
Gene Vincent

1. Sunshine (Newbury)
2. I Need Woman's Love (Mackay) 
3. Slow Times Comin' (Meyers) 
4. Danse Colinda (Ayres)
5. Geese (Frisco, Vincent) 
6. 500 Miles (West, Williams) 
7. Listen to the Music (Maxfeldt)
8. If Only You Could See Me Today (Meyers) 
9. A Million Shades of Blue (Frisco, Vincent)
10. Tush Hog (Maxfeldt)
11. How I Love Them Old Songs (Newbury)
12. High on Life (Self)
13. North Carolina Line (Vincent)
14. You Can Make It If You Try (Jarrett)
15. Our Souls (Frisco)
16. There Is Something on Your Mind (Mcneely)
17. The Day the World Turned Blue (Vincent)
18. Boppin' the Blues (Griffin, Perkins)
19. Looking Back (Benton, Hendricks, Otis)
20. Oh, Lonesome Me (Gibson)
21. The Woman in Black (Vincent)

 今回は、前半の10曲、70年リリースの"If You Could Only See Me Today"に注目したいと思います。

 まず、ブックレットの写真に驚きます。
 風呂上りのような、サラサラ髪に、少しぽっちゃり系の男性が写っています。
 これが、あのGene Vincentと同じ人物でしょうか。
 Elvisのような、ジャンプ・スーツを着ていないだけましかもしれません。

 私のGene Vincentのイメージといえば、スリムな体型にこけた頬、髪は当然リーゼントです。
 しかし、ここに写っているのは、ポマードの気配もない、七三分けの青年(?)なのでした。

 衝撃は続きます。
 CDをスタートさせると、軽快なアクースティック・ギターのストロークから、はずむようなエレキ・ベース、そしてグルーヴィーなオルガンの音が聴こえてきたのでした。
 1曲目の"Sunshine"です。

 ここには、クリフ・ギャラップの雷のようなギターはありません。
 悪魔と競い合うボーカルもありません。
 なによりも、残響音のない爽やかなサウンドに驚きます。

 本作のセッションには、これまでのGeneのキャリアとは無縁のリズム隊が参加しています。
 Amigos De Musicaとクレジットされた彼らの正体こそ、驚くべきことに、Sir Douglas Quintetの残党達なのでした。
 問題のメンツは以下の通りです。

Amigos De Musica
Augie Meyers : keyboard, organ, piano
Harvey Kagan : bass
Johnny Perez : drums

 Augie Meyersは、説明不要の人物ですね。
 Doug Sahmの盟友にして、現在も広く活躍している、テキサスのリヴィング・レジェンドです。
 彼とDougは、60年代から、ミレニアム前のDougの最期に至るまで、常にもつれ合うようにして、ともに活動してきた魂の兄弟でした。

 そんな二人ですが、ごくごく短期間だけ、離れていた時期がありました。
 69年の終わり、ないしは70年の初頭ころ、Doug Sahmは、看板バンド、Sir Douglas Quintetを解散したのでした。
 
 スマッシュからのサンフランシスコ時代最後のオリジナル・アルバム、"1+1+1=4"がリリースされたのは、70年のことでした。

 翌年の71年には、Doug Sahm抜きのQuintetが、単独アルバムをUAからリリースしています。
 アルバム、"Future Tense"は、未だ一度もCD化されていないと思います。
 このままビニールの世界の中で埋もれていく運命なのでしょうか。
 "Future Tense"の参加メンバーは次のとおりです。

Augie Meyers : guitar, organ, piano
Byron Farlow : guitar
Jim Stallings : bass
John Perez : drums
Metin Fierro : alto sax
Luis Gasca : trumpet
Frank Morin : flute, harp, sax

 重箱の隅をつつくような、レア盤のCD化はもう終わったのでしょうか?
 決して、好盤とはいいがたいですが、できればCD化を望みたいです。

 さて、"Future Tense"には参加していませんが、ベースのHarvey Kaganは、マーキュリー(スマッシュ)時代の全てをDoug Sahmと行動をともにしてきた人です。
 サンフランシスコに残った人なのでしょうか。

 テキサスに戻ったDoug Sahmのバックでベースを弾いたのは、Huey Meaux制作時代のSir Douglas Quintetのメンバー、Jack Barberでした。

 以降、Dougのベースは、このJack BarberとSpeady Sparksが多くを務めることになります。
 Jack Barberは、Garrett、Sahm、Taylor Bandの来日公演にも、同行していました。

 ドラムスのJohnny Perezは、Augie Meyersと同じくらいDougと長くプレイしている人です。
 最初期のSir Douglas Quintetのメンバーでもあります。
 この人は、細く長くDougとつきあった人ですが、次第にGeorge Rainsなどに、その位置を譲ることになります。

 さて、アルバムの仕上がりですが、好き嫌いの別れるところでしょう。
 少なくとも、Gene Vincentの古くからファンが好むとは思いずらいです。

 では、Sir Douglas Quintetのファンにはどうかと言いますと、これも微妙なところです。
 "Future Tense"もそうでしたが、Quintetらしいサウンド(Augieのオルガンとか)で、その趣きを楽しむ程度が限界かも知れません。
 テキサス・サイケ風の展開になる曲などは、まさに好き嫌いが二分されると思います。

 Augieの作品が2作入っていますが、私の知る限り、その後ソロでもDougとの活動でも再び取り上げなかった曲だと思います。

 "Slow Times Comin'"は、ディラン風のフォーク・ロックで、長いインストのインプロヴィゼーションがあります。
 Augieは、初期のソロ作でディラン好きを明らかにしていた人ですから、こういう曲をつくる可能性はあります。
 しかし、Geneにはどうでしょう。

 アルバム・タイトル曲の"If Only You Could See Me Today"は、Augie流カントリー・ロックだと思いますが、Gene、Augieの個性がうまく化学反応したとは言い難いです。
 ロッキン・ギターのソロを聴くことが出来ます。

 実は、私が最も印象に残ったのは、1曲目の"Sunshine"でした。
 この曲は、Mickey Newburyが書いた曲で、誰がオリジネイターか知りませんが、おそらくは多くのシンガーが歌っている曲だと思います。
 Mickey Newburyは、私にとっては、"Sweet Memories"です。
 とりわけ、Willie Nelson盤が心に染み入る名唱でした。

 "Sunshine"は、原曲を知りませんので、見当違いなことを言っているかも知れませんが、ここではQuintet風のサウンドに仕上げながらも、うまくまとめていると思います。

 ここで珍品を2曲。
 "Danse Colinda"は、明るくかわいいケイジャンで、Geneとしては他にないタイプの曲でしょう。
 "500 Miles"は、有名なフォーク・ソングで、Geneのイメージにはない曲ですね。
 ここでは、Geneのモノローグを聴くことが出来ます。 

 最後に、10曲目の"Tush Hog"です。
 この曲は、Quintetと無関係の作ですが、なぜか"She's About a Mover"を連想させる曲調です。
 Augieが不在っぽいサウンドなのが残念ですが、ギターとマラカスががんばっています。

 Amigos De Musica参加曲については、Augieのファンなら、一聴をお奨めします。

 それ以外の方には、今回触れなかった後半の"The Day the World Turned Blue"を薦めます。
 こちらのほうが、Geneの新しい個性を出しつつも、従来のファン向けにも配慮した内容になっています。

 Gene Vincentは、71年に短い生涯を閉じました。
 36歳でした。
 友人のEddie Cochranが21歳で天に召されてから、11年後のことでした。



Tush Hog by Gene Vincent




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ママはブルースが好きじゃない

 最近、私はニューオリンズR&Bをよく聴いています。
 英AceのDave Barthoromewの作品集を聴き、さらにFats Dominoの最新コレクションを聴いて、関心が再燃しているようです。
 このあたりは、Swamp Popの鉄板ネタでもありますから、彼らのナイス・カバーを聴くと刺激を受けて、つい原曲を聴き返したくなるのでした。


Mama Don't Like It ! 1950-56
Smiley Lewis

1. Shame, Shame, Shame [Original Imperial Records Master] (Fisher, Hopkins)'56
2. I Hear You Knocking (Bartholomew, King)'55
3. The Bells Are Ringing (Bartholomew, Lewis)'52
4. One Night (Bartholomew, King)'55
5. Please Listen to Me (Bartholomew, Lewis)'56
6. Tee Nah Nah (Trad.)'50
7. Growind Old (Lewis) '50
8. Dirty People (Lewis)'50
9. Bee's Boogie (Lewis)'51
10. Lillie Mae (Bartholomew, Lewis)'52
11. My Baby Was Right (Lewis)'51
12. Gumbo Blues (Bartholomew)'52 
13. I Ain't Gonna Do It (Bartholomew, King)'52
14. Caldonia's Party (Bartholomew)'53  
15. Big Mamou (Davis)'53
16. Playgirl (Bartholomew)'53
17. Lying Woman (Lewis)'53
18. Blue Monday (Bartholomew)'53
19. Down the Road (Bartholomew, Lewis)'53
20. Can't Stop Loving You (Liggins)'54
21. Ooh La La (Bartholomew)'54
22. Jailbird (Bartholomew)'54
23. Real Gone Lover (Bartholomew, Durand, Robichaux)'54
24. Bumpity Bump (Bartholomew)'55
25. I Can't Believe It (Bartholomew)'55
26. Queen of Hearts (Bartholomew, King)'55
27. Nothing But the Blues (Bartholomew, King)'56
28. She's Got Me Hook, Line and Sinker (Bartholomew, King)'56
29. Rootin' and Tootin' (Bartholomew, King)'56
30. Down Yonder We Go Ballin' (Bartholomew, King)'56
31. No Letter Today (Brown)'56
32. Mama Don't Like It (McLollie, Thomas)'56
33. Shame, Shame, Shame [From the Baby Doll Soundtrack] (Fisher, Hopkins)'56

 Smiley Lewisを初めて聴いたのは、いつだったでしょう。
 日本盤のR&BのコンピレーションLPで聴いたのでした。

 その時聴いたのは、"I Hear You Knocking"と"Blue Monday"だったと思います。
 ほくほくの焼き芋をほおばりながら歌っているかのような、得も言われぬリッチなボーカルが魅力的でした。

 私は当時、既にFats Dominoのファンでしたが、Smiley Lewisも一発で気に入りました。
 二人とも、Dave Barthoromewが制作していましたから、その音楽はかなり似ています。

 さて、今回も注目曲をピックアップしたいと思います。
 次の通りです。

2. I Hear You Knocking
3. The Bells Are Ringing
6. Tee Nah Nah
11. My Baby Was Right 
15. Big Mamou 
18. Blue Monday
21. Ooh La La

 本盤は、最初の方に代表曲をかため、そのあとはほぼ年代順に収録されています。

 "I Hear You Knocking"は、"Blue Monday"と並ぶ、Smiley Lewisの代表曲です。
 もちろん、Dave Edmundsの出世作の元ネタであるのは言うまでもありません。

 ゆったり余裕を感じさせる、SmIley Lewisの魅力満載のキラー・チューンです。
 ライナーによれば、この55年のセッションでピアノを弾いたのは、なんとHuey Smithらしいです。
 ちなみに、ドラムスはEarl Parmerです。

 "The Bells Are Ringing"は、これまた、Smiley Lewisのカッコよさが凝縮された名演でしょう。
 「電話(の呼び出し音)が鳴っている」というのは、ブルースの常套的なシチュエーションのひとつですね。

 ベタに言えば「ラヴ・コール」というやつでしょうか。
 ピアノのせわしない三連の連打が印象に残ります。
 ライナーによれば、52年ころまでのセッションで、ピアノの弾いたのは、Tats Washingtonらしいです。

 "Tee Nah Nah"は、トラッドのアレンジとなっていますが、元はニューオリンズのフォーク・ソングでしょうか?
 トラッドですが、後輩たちの多くは、このSmiley盤をお手本にしていくことになります。
 私は、ついよく似たタイトルを持つ、Slim Harpoの"Te Ni Nee Nu"を連想してしまいます。

 "My Baby Was Right"は、Smileyとしては珍しく、ピアノよりギターが印象に残る曲です。
 この曲で、テキサスっぽい攻撃的なソロを弾いているのは、Ernest McLeanという人です。
 この51年のセッションでは、Tats Washingtonのピアノに、Earl Parmerのドラム、Ernest McLeanのギターという編成になっています。

 "Big Mamou"は、トラッドかと思いましたが、Link Davis作のクレジットが使われています。
 Link Davis(パパの方)は、ケイジャンのBob Willsというべき人で、息子同様、サックス・ブレイヤーでもあります。

 "Blue Monday"は、Fats Domino盤もヒットした名曲ですね。
 Fats盤のリリースは、56年のことです。
 このSmiley盤は、53年のセッションで録音されたものですが、このとき、ピアノを弾いたのが、Fats Dominoでした。

 "Ooh La La"は、フェイセスを連想しますが、こちらは、いつもどおりDave Barthoromewが書いたもので、同名異曲です。
 あちらは、ウッドとレインのダブル・ロニーの作品でした。

 このSmiley盤は、テキサス、ルイジアナ音楽大好きバンド、Larry Lange and his Lonely Knightsが最新作でカバーしています。

 本盤は、07年にリリースされたもので、すでにもっと新しい編集盤が出ていると思いますが、1枚ものとしては充分満足いく内容だと思います。

 私などは、CD1枚に30曲以上というのはツー・マッチな気がするくらいです。
 就寝前に流しながら聴いていると、大抵は最後まで聴き終えないうちに眠ってしまいます。

 というわけで…。



Ooh La La by Smiley Lewis





ナンカー・フェルジのひらめき

 George Thorogoodを、久しぶりに聴きました。
 本作は、リリースされたばかりの最新作です。

 新作を追いかけなくなって、もうかなりになります。
 最後にリアル・タイムで聴いたのは、"Haircut"とかあたりじゃないかと記憶しています。
 軽く10年以上前でしょうか。

 ネットで確認したところ、"Haircut"は何と93年リリースでした。
 さすがに驚いて、CD棚から現物を探したところ、"Rockin' My Life Away"、"Harf A Boy and A Harf Man"がひょっこり出てきました。

 "Harf〜"は、99年のリリースです。
 どうやら、この作以来、聴いていなかったというのが正解のようでした。
 でも、それらは全然中身が思い出せなくて、印象に残っているのは、"Haircit"なんですよね。


2120 South Michigan Ave.
George Thorogood and the Destroyers

1. Going Back (Tom Hambridge, George Throgood)
2. Hi-Heel Sneakers (Featuring Buddy Guy) (Robert Higginbotham)
3. Seventh Son (Willie Dixson)
4. Spoonful (Willie Dixson)
5. Let It Rock (Chuck Berry)
6. Two Train Running (Still A Fool) (McKinley Morganfield)
7. Bo Diddley (Ellas McDaniel)
8. Mama Talk To Your Daughter (J.B.Lenour, Alex Atkins)
9. Help Me (Willie Dixson, Alex "Rice" Miller, Ralph Bass)
10. My Babe (Featuring Charlie Musselwhite) (Willie Dixson)
11. Willie Dixon's Gone (Ton Hambridge, George Thorogood, Richard Fleming)
12. Chicago Bound (James A. Lane)
13. 2120 South Michigan Ave. (Featuring Charlie Musselwhite) (Nanker Phelge)

 本作は、Chessサウンドに焦点を当てた企画盤ですが、オリジナルが2曲だけ入っています。
 冒頭の1曲がそのひとつで、音が出た瞬間、思わず「おおっ」と声を出しそうになりました。
 私の耳には、まるでビリー・ギボンズみたいに聴こえたのです。

 このぶっといギターの音は、魅力的であるとともに、心を騒がせる不安をあおる音でもあります。
 ハードでありながらも、シンプルな美しさを失わず、ぎりぎりのところでバランスを保っている、危険な綱渡りのようなサウンドに感じました。

 そんな出だしでしたが、2曲目以降は、お馴染みの曲がそれなりのアレンジで演奏されていて、一転して安心感を感じます。
 選曲としては、"Seventh Son"があまり記憶にない曲です。
 これは誰ですか?

 やっている曲で、私が一番注目していたのは、"Chicago Bound"です。
 私は、比較するために、何年ぶりかでJimmy Rogersの原曲を聴き返しました。
 やはり、シカゴ・ブルースのベーシックな魅力は、Jimmy Rogersでしょう。
 ただ、ここでのThorogood盤の感じは、別の曲という印象ですね。

 私は、Muddyのベスト盤(1st)を初めて聴いたとき、何とも落ち着かない気分になりました。
 "I'm Ready"のモダンなスイング感と、イナタすぎる"I Can't Be Satisfied"のあまりの落差にボー然としたものでした。

 私が特に好きなMuddyは、"Long Distance Call"、"I Feel Like Going Home"、"Louisiana Blues"などです。
 どちらかといえば、Willie Dixsonの制作より前が好きです。

 この当たりの曲をカバーするロック・アーティストはまれですね。
 Jimmy Hallが"Long Distance Call"をやっているのを聴いたときは、その心意気だけで嬉しかったです。

 ちなみに、私が好きなGeorge Thorogoodのナンバーは、オリジナルでは"Back To Wentzville"、カバーでは、"New Boogie Chillen"です。
 次点は、"Crowling King Snake"と"Goodbye Baby"あたりです。

 Geroge Thorogoodは、John Lee Hookerをやらせれば最高です。
 Thorogoodの"New Boogie Chillen"は、J.Giles Bandの"Serves You Right To Suffer"とともに、John Leeのカバーでは特に好きです。
 ThorogoodのElmoreは、ブルーム調はちょっとうるさいので、ブルース・バラードがいいです。 

 それにしても、George Thorogoodは、スタンスのぶれない人です。
 ロックで、ここまでシンプルにブルースにこだわる人は、もはや天然記念物クラスじゃないですか。
 
 改めて、ロック・ミュージシャンがやるブルースのひとつの理想形かも知れないと思いました。
 頑固一徹なたたずまいが、職人ぽくて愛おしいです。
 30年前から変わらない、ときにドスを効かせたボーカルも健在で嬉しいです。

 何度か聴き返して、現時点で一番のお気に入りは、J.B.Lunoirの"Mama Talk To Your Daughter"です。
 アップの勢いと、全体から感じられる、ゴツゴツした耳ざわりが特に気に入りました。

 えーと、最後に付けたしのように言ってしまいますが、ゲストの存在感がほとんど感じられないアルバムだったと思いました。
 私の耳には、Buddy Guyのソロも涼しいBGMのようでした。
 Thorogoodのエグいしつこさが、本作に限ればBuddy Guyらのそれを圧倒しています。



It Wasn't Me by George Thorogood





毎日がスワンプ・ポップ

 今回は、最近の私のお気に入りの一人、Van Broussardの70年代の音源集を聴きました。
 Van Broussardは、60年代から活動している人ですが、近年もアルバムをリリースしている、現役のSwamp Popシンガーです。


The Legendary Bayou Boogie Recordings 1977-79
Van Broussard

1. Lord I Need Somebody Bad (Peters)
2. Oooh Poo Pah Doo (Jessie Hill)
3. Pledging My Love (Don Robey, Washington) *
4. Everything's Gonna Be Alright (Broussard, Rogers) *
5. Tell Me What You Want Me to Do (Jimmy Reed)
6. Crazy Baby (Maltais) *
7. Baby Moroni (Williams)
8. Feed the Flame (Oldham, Pen) *
9. Little Boy Blue (Harper)
10. Blueberry Hill (Lewis, Rose, Stock)
11. Tonight's the Night (Gonna Be Alright) (Rod Stewart)
12. That's My Desire (Allan, Russel)
13. Mojo (M. Morganfield) *
14. Why Can't You (R. Guidry)
15. Record Machine (Huey)
16. Mathilda (Kloury, Thierry)
17. Don't Take It So Hard (Boudreaux)
18. Kidnapper (Douglas) *
19. One Night of Sin (Bartholomew, King, Steiman)
20. If You Don't Love Me (Tommy McLain)
21. There Goes That Train (McGill)

 アルバム・ジャケットの右側の男性がVanです。
 クレジットによれば、演奏を務めたのは、その名も"The Fabulous Bayou Boogie Band"といい、メンツは以下の通りです。

Lead Vocals : Van Broussard、(track3,4 only with) Grace Broussard
Guitar : Van Broussard
Saxophone : Harvey Monson、Bobby Lovless、Allan Gautreaux、Dale Dugas
Trumpets : Joe Guedry、Mike Steen
Keyboards : Henry Broussard、Paul Breaux、Gene Foster
Bass : Dale Babin、Dee Braud
Drums : Junior Bergeron
Background Vacals : Deep South

 さて、この人は、特段の全国ヒットはないはずですが、何曲か60年代に吹き込んだ曲を再度録音しています。
 「*」を付けた曲がそれに当たります。

 このへんは、本人のお気に入りなのかもしれませんし、あるいは、地元ではヒットしたレパートリーなのかもしれません。

 ちなみに、英Aceの定番コンピ、"Louisiana Saturday Night"に収録されていたのは、本盤収録バージョンの"Feed The Flame"でした。

 今回も、何曲か私の注目曲をチョイスしたいと思います。
 以下の通りです。

1. Lord I Need Somebody Bad
3. Pledging My Love
4. Everything's Gonna Be Alright
5. Tell Me What You Want Me to Do
6. Crazy Baby
9. Little Boy Blue
11. Tonight's the Night
15. Record Machine
19. One Night of Sin
20. If You Don't Love Me

 まず、冒頭の"Lord I Need Somebody Bad"ですが、どうもこの曲が、Vanの最大のヒット曲らしいです。
 タイトルから察するところ、カントリー・ゴスペルなのでしょうか?

 曲調は完全にゆるいカントリー・ソングで、黒っぽさはありません。
 しかし、伴奏のニューオリンズ・スタイルの三連ピアノと、ユニゾンで絡んでくるホーン陣がしっかりと主張していて、ナッシュビル産カントリーとの違いは明らかです。

 "Pledging My Love"と"Everything's Gonna Be Alright"は、60年代に、Van & Graceとして吹き込んでいた曲です。
 ここでも、この2曲のみ、妹のGrace Broussardとデュエットしています。

 "Pledging My Love"は、60年代盤と同様のアレンジで、恋人にみたてた男女のセリフ入りになっています。
 そして、"Everything's Gonna Be Alright"は、テキサスの好きものバンド、Larry Lange and his Lonely Knightsが、最新作でカバーしていました。

 妹のGrace Broussardは、兄貴とのペアよりも、Dale & Graceという別のペアで、全国ヒットを持っています。

 "Tell Me What You Want Me to Do"は、何となくタイトルが違うような気がしますが、Jimmy Reedの曲です。
 ゆるーいウォーキン・ブギ・リズムが快感の曲で、歌終わりのインスト・パートで、バンドがバスター・ブラウンの「ファニー・メイ」のリフをやっています。

 "Crazy Baby"は、テキサス、ルイジアナではみんな大好きな(多分)、Buck Rogersの名作バラードです。
 別の記事でも何度か書いていますが、ここでも作者名が誤記されています。

 Maltais作となっていますが、同名異曲で、そちらは、ヒーカップしまくりのワイルドなロカビリーです。
 パフォーマーは、作者である、Gene Maltais自身で、Deccaから57年にリリースされています。
 Crazy Crazyと繰り返す女性コーラスと、Geneの口笛が印象的なナンバーでした。
 いったいどうしてこうなったのでしょうか。
 正しい作者名は、Buck Rogersもしくは、Rogersの本名である、L.M.Rodriguezが正解です。

 "Little Boy Blue"は、もちろんBobby Blandの初期の名作のひとつですね。
 Vanは、特段すごいことをやっているわけではありませんが、曲の良さもあって、やはり惹きつけられます。

 "Tonight's the Night"は、Rod Stewartの有名バラードのカバーです。
 こういうメジャーな曲をやるのは似つかわしくない気がしますが、意外にSwamp Popシンガーは、ロッドが好きかも知れません。
 トミー・マクレインには、確か「ケイジャン・ロッド・スチュワート」という、ふざけたタイトルのアルバムがあったはずです。

 "Record Machine"という曲は、初めて聴いた曲だと思いますが、気に入りました。
 気持ちのいいギターのリフから入って、キーボードとホーンが素晴らしい伴奏をつけています。
 くせになるリズム・リフを持つ曲で、軽快なボーカルも、うまくのっています。
 ぜひとも原曲が知りたいものです。
 作者が、Hueyとなっていますが、誰でしょう?
 姓がHueyという人は、すぐに思いつきません。

 "One Night of Sin"は、Smiley Lewisの名作です。
 Elvisのバージョンは、忘れられない名唱でした。
 これらと比較するのは酷ですが、Vanも頑張っています。
 私は最近、Fats Dominoの新しい編集盤や、Dave Barthoromewの作品集を聴いたばかりなので、この曲にもはまります。

 "If You Don't Love Me"は、Tommy Mclainの作品で、本人の録音もありますが、おそらくは、Freddy Fenderのバージョンで有名になった曲だと思います。
 Tommy Mclainは、Sweet Dreamsなど、他人のカバーの方でより有名ですが、自作曲もかなりよくて、多分自作では、この曲が最高作ではないかと思います。

 全体を通して聴いてみて、60年代の作品が持っていた、一種独特な空気感は希薄になった気がしましたが、また別の味わいが出ていると感じました。
 さらに近年の作品を追いかけたいと思います。

 
 追記
 YouTubeで、Gene Maltaisの"Crazy Baby"を見つけました。
 私は、Bear Familyの人気(?)ロカビリー・コンピ・シリーズ、"That'll Flat Git It ! のVol.2で聴いていましたが、どうも単独CDが出ているようで驚きました。


Crazy Baby by Gene Maltais




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サイケデリック・カウボーイ

 このバンドは、なんと形容すればいいんでしょう。 
 基本は、アクースティック楽器の音をうまく隠し味にした、カントリー・ロック系のバンドではないかと思います。
 これは、使用楽器から受ける印象が強いかも知れません。

 フィドルや、マンドリンなどの使い方は、決して強く主張していないにも関わらず、確かな存在感を感じます。
 ただ、曲調はさまざまで、単純にカテゴリー分けすることを躊躇わせる、変幻自在の実力派バンドだと感じました。


Ranger Motel
The Red Dirt Rangers

1. Red Dirt Roads (LaFave)
2. Spice and Sugar (Piccolo, Cooper, Han)  
3. Under the Radar (Cooper, Childers, Piccolo, Mcclure)
4. Psychedelic Cowboy (Song for Sir Doug) (Piccolo, Cooper)
5. Lavena (Cooper, Piccolo, Clark, Peaden)
6. This Time (Piccolo, Wiles)
7. Wild Horses (Jagger, Richards)
8. Enjoy the Ride (Jacobs, Childers)
9. Soul Satisfaction (Cooper, Childers)
10. Midnight Rain (Childers, Piccolo, Nielson)
11. Always Come Back (Ham, Morris)
12. Turn This Train Around (Childers, Skinner, Trout)
13. Pennies from Heaven (Childers)
14. Stillwater (Piccolo)

 彼らは、93年ころデビューしたと思われ、ウディ・ガスリー、テキサス・スイング、グレイトフル・デッド、ベイカーズフィールド・カントリーなどに影響を受けたバンドだということです。

 また、彼らには、故郷オクラホマ州へのこだわりがあるようで、そのあたりもこのバンドの個性を独特なものにしているようです。

 本作の参加ミュージシャンは、以下の通りです。

Ben Han : vocals, read guitar
John Cooper : vocals, mandlin, percussion
Brad Piccolo : vocals, guitar

with
Jimmy Karstein : drums
Randy Crouch : fiddle, steel guitar
Don Morris : bass guitar

special guest
Augie Meyers : vox organ, hammond B-3 organ, grand piano, accordion
Jimmy "Junior" Markham : harmonica

produced by Steve Ripley and The Red Dirt Rangers
recorded at church studio Tulsa Ok.

 録音は、オクラホマのタルサ、制作はトラクターズのSteve Ripleyが行っています。

 オクラホマといえば、私などは田舎とか、農場といったイメージがあります。
 マール・ハガードのヒット曲に、「オーキー・フロム・マスコギー」という曲がありました。
 「ファイティン・サイド・オブ・ミー」とともに、保守的米国人の心情を歌った曲です。

 そして、テキサスとともに、ウエスタン・スイングが盛んだった土地柄です。
 ロックでは、レオン・ラッセルやJ.J.ケイルですね。

 さて、様々な顔を見せてくれるこのバンド、1曲目から嬉しくなる曲調でスタートします。
 "Red Dirt Roads"は、Chuck BerryからRockpileあたりまでを連想させる、タイトなロックンロールです。
 隠し味のアクースティック楽器の音が、一筋縄ではいかないこのバンドの個性を表わしています。

 続く"Spice and Sugar"は、一転してキーボードが印象に残る小粋なナンバーです。
 コマーシャルになりすぎる一歩手前のJ.ガイルズ・バンドのような曲で、ここでセス・ジャストマンのようなキーボードを弾いているのは、まさかまさかのAugie Meyersでしょうか。
 聴きようによっては、はっちゃけていないJoe King Carrascoみたいにも聴こえます。

 そして、Augie Meyersといえば、この曲への参加が何と言ってもハイライトです。
 "Psychedelic Cowboy (Song for Sir Doug)"です。

 この曲は、Red Dirt Rangersのオリジナルですが、タイトルから分かるように、Doug Sahmのことを歌った曲です。


 彼は サンアントニオからやってきた
 ギターを持った サイケデリック カウボーイ
 
 子どものころ 南部のラジオで 彼の歌を聴いた
 He was about a mover

 彼は サイケデリック カウボーイなのさ
 おまえさん (you all son of a gun)


 歌詞の中に、"She's About A Mover"や、"Mendocino"、"Texas Tornado"などのフレーズが織り込まれていて、Doug Sahmファンにはたまりません。

 とりわけ、"Texas Tornado"の決めフレーズ、"Texas Tornado you all son of a gun"が、それ風のメロにのせて、うまく織り込まれていて聴きどころです。

 "Son of a gun"は、ハンク・ソングの「ジャンバラヤ」でも、"son of a gun, we'll have big fun on the bayou"として出てくる慣用句です。

 サノバビッチ(son of a bitch)を少し上品にいった言葉で、意味は多分同じです。
 親しい男性同士で使われる言葉で、「こんちくしょう」とか「この野郎」とか訳されることが多く、字づらを見ると怒っているかのようです。
 でも、通常はもっと軽い冗談か、あるいは嬉しいときにも使う言葉らしく、親しい友人への呼びかけとしても使われるようです。


 メンバーの演奏力が高く、聴きどころの多いアルバムですが、Doug Sahmファンの私は、ひたすらこの1曲をヘビロテしています。

 Augieの素晴らしいサポートのせいか、Sir Douglas Quintetを思わせる曲が散見するように思います。
 StonesやGramのファンには、"Wild Horses"もあります。



Psychedelic Cowboy by Red Dirt Rangers






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