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ジャック・ダニエルズの夜

 この人は、以前から思っていたのですが、シングル時代のヴィンテージ期とLP時代では声が変わりましたね。
 ヴィンテージ期は、細くて青くさい声質でしたが、老成して若干太めのハスキーな声になっています。

 
I've Changed My Style
Tommy McLain 

1. Roses Don't Grow Here Anymore (Tommy McLain)
2. Baby Dolls (Tommy McLain)
3. Please Mr. Sandman (Heuy P.Meaux)
〜 I'll Change My Style (Parker, Villa)
〜 Crazy Baby (Buck Rogers)
4. Jukebox Songs (Tommy McLain)
5. Sweet Dreams (dance mix) (Don Gibson)
6. You Can Have My Lovin' (Tommy McLain)
7. Cajun Candy (Tommy McLain)
8. Wrong # (Again) (Tommy McLain)
9. My Love Belongs To You (Keb Mo)
10. It Always Rains When We're Together (Carol Skaggs, Tommy McLain)
11. She's My Baby (Tommy McLain)
12. Cowboy Hat (Tommy McLain)
13. From Your Lips To God's Ears (Tommy McLain)
14. Matching Shoes And Purses (Tommy McLain)
15. Let's Change Our Lives (Right Now) (Tommy McLain)
16. Hear The Greatest Show On Hurt (Tommy McLain)
17. Lipstick On A Dollar (Tommy McLain)
18. I Wish I'd Never Loved You Darlin (Tommy McLain)
19. Tell Everybody I Know (Keb Mo)
20. Rosaries (Tommy McLain)
21. What Joy! (Tommy McLain)
22. (The Night Ole Jack Daniels) Met John (James Payne, Mark Payne)

 ヴィンテージ期は、はかなげな声でバラードを歌っていました。
 それが、LP時代になってからの声を聴きますと、ときに酒やけしたようなダミ声といいますか、良く言えばハスキーともいえて、聴きようによっては魅力が増したと感じる人もいると思います。
 
 実は、私はそう感じる一人です。
 Freddy Fenderとのライヴ音源などでの、かすれたダミ声が好きでした。
 本作で聴ける歌声も、私は好きです。

 このCDは、どうやら元々は、"Lipstick On A Doller"(1ドル札に口づけ)というカセットのみでリリースされたものをCD化したもののようで、トラック1から19までがオリジナルのようです。
 トラック20、21、22は、CD化の際に追加されたボーナス・トラックです。

 Tommy McLainという人は、あるいは機材ヲタかもしれず、キーボードとベースを担当して多重録音している節があります。
 加えて、ほとんどの曲が自作ですから、多才な人なのだと思いました。

 全体のサウンドですが、聴く前に、一瞬懸念したピコピコ風ではなく、しっかりと生のギター、ドラムス、サックスが入ったもので、シンセ音はほとんど気になりません。

 さて、Tommy Mclainといえば、"Sweet Dreams"と"Before I Grow Too Old"ですね。
本作には、"Sweet Dreams"の新録音が収録されています。
 この曲は、ナッシュビル・カントリーのヒットメイカー、ドン・ギブソンのカバーです。

 ドン・ギブソンは、アップでは"Oh Lonesome Me"、スローでは"I Can't Stop Loving You"「愛さずにいられない」を書いたシンガー、ソングライターでした。

 "Sweet Dreams"は、先の2曲同様、多くのシンガーにカバーされている名バラードです。
 本作には、わざわざダンス・ミックスと謳っているバージョンを収録していますが、聴くと普通にバラードでした。

 軽快なリズム・アレンジを期待すると「あれっ」という感じです。
 何事も、事前にハードルを上げるのはよくないという例ですね。
 意識せずに聴けば、違和感なく歌世界に自然と浸れる、やはりいい曲だと思います。

 私的には、注目曲がいくつかありますが、万人向けのスペシャルな1曲というものがなく、人それぞれの好み次第だと思います。
 それよりも、アルバム全体を通して、好意を感じずにはいられない雰囲気が、なんとも良いです。

 どこが好きとは言えないのがもどかしいですが、"Baby Dolls"とか、"Jukebox Songs"とか好きです。
 間違い電話のことを歌っている(と思われる)"Wrong # (Again) "も気に入りました。

 収録曲は、比較的バラエティさがあって退屈させません。
 それでも、やはり哀愁系の三連バラードは良いですね。
 つい聴き入ってしまいます。

 白人のスワンプ・ポップは、乱暴に言ってしまえば、根っこにケイジャンがあるケースが多く、その傾倒度の差がシンガーの個性になっているように思います。
 Tommy McLainは、Johnny Allanなどと比較すれば、ケイジャン度は薄目だと感じます。 
 ニューオリンズR&Bにより近い音楽的嗜好を持つ人なのでしょう。

 さて、有名曲(?)では、トラック3のメドレーはやはり注目です。
 ジミー・ドンリーも、サニー・オズナもやった"Please Mr. Sandman"に加えて、バック・ロジャースの永遠の名曲"Crazy Baby"は、悪くなりようがないです。

 そして、特記したいのが、ボートラの3曲です。
 この3曲は、おそらく全てゴスペルだと思います。

 ライナーでは、特にラストの"(The Night Ole Jack Daniels) Met John"に触れて、スワンプ・ポップ・スタイルのゴスペルだと言っています。

 「?」が浮かんだ方は、本CDを入手して、ただし過度な期待はせず、フラットな心で音を聴いてください。
 私はと言えば、心に沁みるいい曲だと思いました。

 今夜の私は、もう少し夜更かしして、Tommy McLainのアナログLPを探したい気分です。

 白亜紀の湿地帯を描いたような(?)、イラストのジャケットのLPがあったはずなのです。



Baby Dollです。







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