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監獄からこんにちは

 久しぶりに、アナログ盤の棚をあさりました。
 あることを調べるために、Wes McgheeのLPを探したのですが、例によって色々と目移りがして、手に取った目的外のLP盤を、ついしげしげと眺めてしまうのでした。

 本盤は、75年にリリースされた、Freddy Fenderのレアな音源を収録したアルバムです。
 75年は、前年にABC-dot盤、"Before The Next Teardrop Fall"がベストセラーになったことから、過去の音源が便乗でLP化された時期でした。
 このアルバムもそんな1枚です。


Recording Inside Louisiana State Prison
Freddy Fender

Side One
1. My Happy Days Have Gone
2. Our Pledge of Love 
3. I Hope Someday You'll Forgive Me
4. Hello Loneliness
5. My River 
6. Quit Shucking Me Baby 
Side Two
1. Bye Bye Little Angel
2. The Village Queen 
3. Carmella 
4. Oh My Love 
5. Blow of Your Love 
6. Gonna Be Looking 

 本盤のタイトルは、ルイジアナ州監獄(の中での)録音となっています。
 私は、初めてこの題名を目にしたとき、てっきり刑務所でのライヴだと思いました。

 こういった思い込みは、売り手側にもあるようで、ショップによっては、ライヴ盤として紹介しているところがあります。

 刑務所でのライヴというと、Johnny Cashが有名ですね。
 フォルサム・プリズンとか、サン・クウェンティンとかのライヴは、ベストセラーになりました。
 服役囚の前で、世の中の理不尽さをなじるような、際どい内容の歌を歌って、大喝采をあびるCashのシーンは、未聴の方にはぜひ聴いていただきたいです。

 さて、本盤はライヴ盤ではありません。
 ジャケット裏のライナーによれば、これは62年に監獄の中で録音された音源だということです。
 本当なんでしょうか?

 音は、あるいはスタジオ・ライヴかも知れませんが、歓声などは一切ないきれいな録音です。

 50年代終盤から60年代初めに、Duncan Recordで録音された音源は、イナたさを残しつつも、きっちりまとめられたプロの仕事でした。
 一方、本盤の音源も、録音の雰囲気はまるで違いますが、やはりきっちりした仕事だと思います。

 Freddy Fenderは、"Wasted Days and Wasted Nights"がローカル・ヒットして、これから全国へというとき、ドラッグ不法所持で収監されてしまいます。
 Duncan Recordsのオーナー、Wayne Duncanによれば、2万ドルの保釈金を払ってFreddyを保釈させ、わずかな間にレコーディングを行ったそうです。
 これらの音源は、シングル・リリースされ、75年にLP、"Since I Met You Baby"にまとめられました。

 Freddyが服役していたのは、おそらく63年ころまでだと思われます。
 本盤のライナーによれば、収録曲は、前述のとおり62年の録音だということです。

 一体どうやって録音したのでしょうか?
 機材を持ち込んだにしても、監獄にはスタジオはないですよね。

 本盤収録曲は、ホーンレスで、比較的ソフィスティケートされた曲が多いように思います。
 まるで、都会の録音スタジオで、お上品な雰囲気で吹き込まれたかのように感じます。
 例えば、女性コーラスが入っていたり、美しいピアノの調べが耳に残るバラード中心の構成になっています。

 このあたりは、後からダビングしたのだとすれば、不思議はないですが、音を聴いていて、監獄録音というイメージが全く思い浮かびません。
 私は、60年代初期の録音ということすら、疑いたい気持ちになったりします。

 A面1曲目、"My Happy Days Have Gone"は、美しいゆったりした12ビートのラヴ・バラードです。
 「あれっ」と思うのは、2曲目の"Our Pledge of Love"で、これはほとんど"My Happy Days Have Gone"と同じようなメロを持った曲です。

 作者が同じなのかもしれませんが、聴きようによっては、同じ曲に別の歌詞をのせた、そんな試行錯誤中のテイクかと思ったりもします。
 A面は、同じような路線の曲が続き、最後の曲のみリズム・ナンバーが入っています。 

 B面の半ばになると、Freddyのボーカルが、気取った太めの声質になり、一瞬別人かと思ったりしました。
 やはりバラード中心の展開ですが、最後に楽しいリズム・ナンバーで終了する構成は同じです。

 バラーディアーの面目躍助というスタイルのアルバムに仕上がっています。
 特に、"Bye Bye Little Angel"は、胸キュン系の可愛らしいバラードで、Swamp Popといってもいい曲だと思います。
 続く"The Village Queen"も、ちょっとRoy Orbisonを連想させるバラードで、歌詞の内容が気になる、私のお気に入りの1曲です。

 本盤収録曲は、Terry E. Gordon氏作成のディスコグラフィーによれば、全てGoldbandのアンイシューとなっています。
 Eddie Shulerの指揮で録音されたのでしょうか。
 あるいはDuncanから買い上げたのでしようか。
 音の感じ、レパートリーともに、これまでのDuncan録音と全く違うので、監獄録音の真偽は保留として、私は前者ではないかと思っています。

 ところで、収録曲のクレジットですが、基本的に62年なんですが、"Bye Bye Little Angel"と"Oh My Love"のみ66年となっています。
 これは不思議ですね。
 クレジットが録音年だとすれば、この2曲のみ塀の外へ出てからの作品になります。

 実は、私は"Bye Bye Little Angel"のドーナツ盤(Goldband 1264)の写真を、オークション・サイトで見たことがあります。
 作者は、G.Marcontelとなっていました。
 作者が全く分からない本盤収録曲ですが、この1曲のみ、これで判明しました。
 私の想像では、この曲は66年にイシューされ、B面が"Oh My Love"だったのではないでしょうか。

 とにかく、時代毎にその時の最高のパフォーマンスを見せてくれるFreddyです。
 本盤のレパートリーは、その後目にすることがないように思いますが、とても貴重な記録だと思います。



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