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posted by fanblog

ぼくの服が マッチ箱に入るなら

 
 赤字追記しました。

 久々に聴きました。
 当時、好きだったんですよね。
 実は私、この人たちのアナログLPを(多分、おそらく、少なくとも!)5枚は持っています。
 そんな私ですが、CDは1枚も持っていませんでした。
 今回、ちょっとしたことをきっかけに、CDを入手したのです。

matchbox1.jpg

The Magnet Records
Singles Collection
Matchbox

Disc 1
1. Black Slacks (Bennet, Denton)
2. Mad Rush (Steve Bloomfield)
3. Rockabilly Rebel (Steve Bloomfield)
4. I Don't Wanna Boogie Alone (Steve Bloomfield)
5. Buzz Buzz A Diddle It (Slay, Crewe)
6. Everybody Needs A Little Love (Steve Bloomfield)
7. Palisades Park (As Cyclone) (Barris)
8. Crazy Haze (As Cyclone) (Major)
9. Midnite Dynamos (Steve Bloomfield)
10. Love Is Going Out Of Fashion (New Version) (Steve Bloomfield)
11. Scotted Dick (Matchbox)
12. When You Ask About Love (Curtis, Allison)
13. You've Made A Fool Of Me (Poke)
14. Over The Rainbow / You Belong To Me (Harburg, Arlen, King, Price, Stewart)
15. Don't Break Up The Party (Steve Bloomfield)
16. Stay Cool (Redhead, Scott, Callan, Poke)

Disc 2
1. Babe's In The Wood (Steve Bloomfield)
2. Tokyo Joe (Callan)
3. Love's Made A Fool Of You (Holly)
4. Springheel Jack (Fanton, Callan)
5. Angels On Sunday (Steve Bloomfield)
6. City Woman (Callan, Scott)
7. 24 Hours (Reed)
8. Arabella's On Her Way (Steve Bloomfield)
9. One More Saturday Night (Hodgson, Peters)
10. Rollin' On (Matchbox)
11. Riding The Night (Hodgson, Peters)
12. Mad Bad And Dangerous (Hodgson, Callan)
13. I Want Out (Featuring Kirsty Maccoll) (Hodgson, Peters, Colton)
14. Heaven Can Wait (Hodgson, Callan)
Bonus Japanese Single
15. I'm A Lover Man (Tadao Inoue, English lyrics by Bill Crutchfield)
16. Little Lonely Girl (Tadao Inoue, English lyrics by Bill Crutchfield)

 
 正直、ほとんど覚えていませんでした。
 ですので、かなり新鮮な気持ちで聴くことが出来ました。
 
 ロカビリーではありますが、かなりポップです。
 オールディーズ系のノスタルジー・バンドに近い楽しさがあります。
 しかし、そのサウンドには(当時)新しさが感じられ、スラッピングの録り方など、すぐ近づいていたネオ・ロカビリーの萌芽を見る(聴く)ことが出来ます。

 本盤は、本年14年に組まれた最新編集盤で、Magnet Records時代のシングルを2枚組にまとめた、大変お得なCDになっています。
 
 オリジナルLPで言いますと、

Riders In The Sky (76年) Rockhouse (ニュージーランド?盤)
Settin' The Woods On Fire (78年) Chiswick (UK)

 の2枚を経て

Matchbox (79年) CDにはボートラ3曲追加
Midnite Dynamos (80年) CDボートラ6曲追加
Flying Colours (81年) CDボートラ3曲追加
Crossed Line (82年)

 以上4枚がMagnet Records(UK)のもので、本盤の対象の時代になります。
 最初の2枚を含めた上記6枚の内、最後の"Crossed Line"のみ、私は持っていません。(これは間違いないです。)
 また、その"Crossed Line"のみ、現時点では未だCD化されていません。
 追記:どうやら、Bear Familyから、Flying Colours+Crossed Lineという2in1盤が出でいるようです。

 ちなみに、この後、Magnetとの契約が切れ、次のアルバム、"Comin' Home"(98年)を出すまで、何と約16年のインターバルを要することになったのでした。(一旦解散、もしくは休業状態だったかも知れません。)
 そして時代は移り、CD時代になっていくのでした。

 私が今回、Matchboxに関心を寄せることになった原因は、2つあります。
 まず、あるコンピCDで、"Seventeen"というMatchboxがカバーした曲の原曲を聴いて感激したこと。
 (狙ったわけでもなく、不意打ちのように、こういう曲に出会うと興奮します。)

 そして、スウェーデンのロカビリー、R&Rバンド、Simon Crashly & The Roadmastersの最新作で、"Harricane"のカバーを聴いたことです。
 "Harricane"は、Matchbox"の中心人物、リード・ギターリストのSteve Broomfieldが書いたオリジナル曲です。

 これら2つの出来事が相次いで起こったため、Matchboxを聴きたい症候群が発生していたのでした。
 しかし、LPを引っ張りだすことは出来ればしたくありません。
 (ここ2年ほど、LPは全く触っていないため…。ぶるる)

 そんな時、この新しい編集盤の存在を知ったのでした。

 あの懐かしい代表曲がズラリ並んでいて壮観です。

Disc 1
1. Black Slacks
3. Rockabilly Rebel
5. Buzz Buzz A Diddle It
6. Everybody Needs A Little Love
9. Midnite Dynamos
12. When You Ask About Love
Disc 2
3. Love's Made A Fool Of You
14. I'm A Lover Man
15. Little Lonely Girl

 なかでも、"Rockabilly Rebel"、"Buzz Buzz A Diddle It"、"Midnite Dynamos"、"When You Ask About Love"などは、英本国での代表ヒットでしょう。
 いずれもDisc1に収録されていますが、実はDisc2も、内容的に決して負けてはいません。

 私は、これらを聴いて、久々に胸が熱くなりました。
 しかも、他にも美味しい曲があるのです。

 本盤未収録の曲では、The Blastersの"Marie Marie"、Joe Crayの"Sixteen Chicks"、Buddy Hollyの"Tell Me How"、Richie Valensの"C'mon Let's Go""なんかもレパートリーです。 
 "Marie Marie"は、本家やShakin' Stevens盤が上かも知れませんが、総じて良い出来の作品が多いです。
 
 さて、Magnet時代のLP4枚プラスCDに追加収録されたボートラ12曲を含む全62曲のうち、本2枚組にはほぼ半数の曲が収録されています。
 本盤はシングル・コレクションであるため、代表曲は網羅しています。
 しかし、アルバムのみの収録曲に良曲があることはよくあることです。
 ちなみに、前述した、"Seventeen"、"Harricane"は、いずれも3rdアルバム(Magnetの1枚目)、"Macthbox"収録曲ですが、本盤には未収録です。

 逆に、本CDでしか聴けない曲もあります。
 未CD化の"Crossed Line"からは5曲がセレクトされていて、現時点では貴重です。
 この"Crossed Line"から、それまでの中心人物、Steve Broomfield(g)が脱退し、新加入したメンバー、Brian Hodgson(b)が作曲の中心を担っていて、これがなかなか良くて新鮮です。
 1曲名前をあげるなら、"One More Saturday Night"でしょうか。
 他の曲も良いです。

 そして、日本盤LPにのみ追加収録されていた2曲が、本盤で聴くことが出来きるのですが、これは、あるいは英国初登場かもしれません。

I'm A Lover Man
Little Lonely Girl

 の2曲です。

 この2曲は、いずれも元ブルーコメッツの井上大輔(井上忠夫)氏の作品で、Bill Crutchfieldという人が英詞をつけているようです。
 サントリー(Suntori Beerと表記)のCMソングだったと、ブックレットのライナーで触れられています。
 また、日本語タイトルを"Bi Ri Te N Go Ku"だとして、Rockabilly Heavenという意味だと解説しています。
 どこかで"Ro Ka"が行方不明になったようで面白いです。

 この2曲も、やはり懐かしくて涙がでそうです。
 とりわけ、"I'm A Lover Man"は、マンブル風の口ごもった歌い方から始まるのがかっこよく、怪しげなエコーの中、しゃくりあげるヒーカップ唱法まで、日本人がイメージするロカビリーの典型そのもので、最高にムネアツです。

 このバンド、実は地味に現役のようで、しかも全盛期(Magnet時代)のメンバーが再結成しているようなので、またおっかけてみようか、なんて思いだしているこの頃です。



Rockabilly Rebel
by Matchbox



Midnite Dynamos
by Matchbox



I'm A Lover Man
by Matchbox




 関連記事はこちら

Shakin' Stevens
シェイキー、霧の中の結末
シェイキーの青空の使者
僕のシェイキーに何か
シェイキーのマンハッタン・メロドラマ
シェイキー、日の出に旅立つ
シェイキー、理由ある反抗
シェイキーの陽気にいこうぜ 
シェイキーのロッキン・クリスマス
テイク・ワン
ジス・オール・ハウス
やっかいごとはごめんだよ      
終わりだなんて言わないで      
涙はほんの少しだけ

The Blasters
前門の爆風、後門の狼

Simon Crashly
ロック、スウェディッシュ・ロール
ロックパイルが北欧に残した芽




ごきげん医師は 海賊の末裔

 今、北欧が面白い 
 全く個人的な思いですが、そう感じています。

 80年代、メジャーを離れたDoug Sahmは、北欧のレーベルの誘いを受け、自由な発想でアルバムをリリースしました。
 その作品は、適度にポップで、かつ適度にマニアックという、まさにファン感涙の絶妙なブレンドで創られていました。

 90年代後期以降のDave EdmundsやBilly Bremnerら、パブ・ロック系のアーティストもまた、似た状況をうかがうことができます。
 Sean Tylaもそうです。
 彼らは、なぜ北欧へ向かい、あるいは迎えられ、新たな活躍の場を得ることが出来たのでしょう。
 彼らが優れたアーティストであるのはもちろんですが、受け入れる土壌があったのだと思います。

 私好みのアーティストが、北欧で一定の成果を残している、このことは、私のかの国への愛着を育てました。
 そして、そこでの彼らの活動は、小さな歩みでも着実に芽吹き、今に続いている、そう感じます。

 そんな例のひとつ、新たな芽が今回のバンド、The Spellkastersです。
 
spellkasters1.jpg

Kastin' The Spell
The Spellkasters

1. Louise, Louise (Lasse Schill)
2. I Can Tell (Samuel Smith, {Ellas McDaniel})
3. Coming Home (Pete Edmunds)
4. Bad Blood and Voodoo (Pete Edmunds)
5. Casting My Spell (Edwin Johnson, Alvin Johnson)
6. Vodka Headed Woman (Pete Edmunds)
7. Going Back Home (Wilko Johnson, Mick Green)
8. Valley Girl (Pete Edmunds)
9. All Through The City (Wilko Johnson)
10. Rollin' and Tumblin' (McKinley Morganfield)
11. Ain't Getting Mad (Pete Edmunds)
Bonus Track
12. Don't Munchen It (Mick Green, Johnny Spence)
13. Gibson Martin Fender (Mick Green)

 本作は、今年14年にスウェーデンのAngel Air社からリリースされた、本バンドのデビュー・アルバムです。
 メンツは、以下のとおりです。

Pete Edmunds : lead vocals, guitar, harp
BJ Anders : bass, vocals
Romek Parol : drums, percussion

 ギター1本からなるロックンロール・トリオで、その音楽性は、The Pirates、Dr.Feelgood直系のハード・ロッキンR&Bです。
 曲目をご覧下さい。
 いかにもな、ナンバーが並んでいますよね。
 悪いはずがないですよね、楽しみましょう。
 以上。

 それで終わりたいところです。
 実際、理屈より、Don't Think, Feel It のバンドでしょう、

 ですが、本盤を聴いた私から、おせっかいなトリビアをいくつか紹介させてください。

 彼らは海賊の末裔です。
 (突然ですみません。)
 傍系かも知れませんが、正統性を主張できる材料もあります。
 なぜなら、リズム隊の二人、ベースのBJ・アンダース、ドラムスのロメック・パロルは、90年代にパイレーツの一員だったのです。

 (以下、未確認情報、推測を含みます。)

 彼らとMick Greenによる編成で、私の知る限りでも、2枚のアルバムを出しています。
 私の手元にあるアルバム、The Piratesの"Rock Bottom"(01年)と、"Land of The Blind"(99年)がそれです。
 なぜ、"Rock Bottom"を先に書いたかと言いますと、"Rock Bottom"は、録音が95年で、未確認ですが、フィンランドのレーベルから出された、"We've Been Thinkin'(96年)の再発ではないか、と私は考えているからです。
 (事実をご存知の方がいらっしゃったら、ご教示いただければ嬉しいです。)

 The Piratesは、Johnny Kid & The Piratesとして60年代半ばまで4人組で活動し、その後、70年代後半に、Mick Green(g)、Johnny Spence(b,vo)、Frank Farley(d)のトリオで再結成されました。
 そして、05年頃、病気引退したFrank FarleyからMike Robertsへとドラムスの交替はありましたが、10年のMick Greenの死をもって自然と活動停止するまで、Dr.Feelgoodの兄貴格として活躍していました。

 …と、私は深く考えずに思っていたのですが、実はそんな順風満帆な歴史ではなかったようなのです。

 Green、Spence、Farleyのトリオの最初の活動期は。どうやら76年から83年頃と、案外短いようです。
 その後、99年頃に再結成し、Farley→Robertsの交替はありましたが、Greenの死亡まで続いたのだと思います。
 では、83年頃から99年頃までの間、彼らはどうしていたのでしょう。

 私の知る限り、アルバムで判断できるのは、Mick Greenを核に別の編成でPiratesが活動していた、ということで、元のリズム隊については、よく分かりません。

 80年代後半からの数年間(?)は、Johnny Gustafson(b)、Geoff Britton(d)とMickのトリオでPiratesを名乗って活動していたのではないか、と思います。
 "Still Shakin'"というアルバムが、その時代を記録したものだと思います。
 (持っていないので、こういう表現にしています。)
 
 88年に来日した際は、ドラムスがLes Sampsonに代わっていましたが、"Live In Japan"としてアルバムが作られました。
 (私が持っている日本盤の裏ジャケ写真は、"Still Shakin'"のものを使いまわしているため、Geoff Brittonが写っています。)

 その後先述のとおり、90年代には、本盤のリズム隊で2枚のアルバムを創っています。
 "Rock Bottom"と"Land of The Blind"です。
 この間、これら2組以外にも、アルバムを残せなかったトリオがあるかも知れません。
 さらに、もしかすると、未知のメンバーと創った私の知らないアルバムがある可能性もあります。
 しかし、最終的には、Mick Green、Johnny Spence、Frank Farleyのトリオに帰結していくのでした。

 Mick Greenが亡くなったのは10年ですが、最後のオリジナル盤は、おそらく06年の"Skullduggery"ではないかと思います。
 Doctor's Orderが、Mick Greenをゲストにして創ったミニ・アルバム、"Cutthroat And Dangerous"は07年のリリースでした。
 そして、Johnny Spenceが、Johnny Spence & Doctor's Order名義の1枚目、"Full Throttle No Brakes"を出したのは09年です。
 これらから、Mick晩年の大まかな流れが見えてくる気がします。

spellkasters2.jpg


 さて、寄り道が長くなりました。
 海賊の末裔の意味を説明しようとして、こんなことになりました。
 
 本盤について、まず気になるのは、フロントマンのギタリスト、Pete Edmundsです。
 この人は、名前が英語風ですが、素直に英国人でいいのでしょうか。
 Wilkoの古くからの友人らしいです。
 突然現れたこの人、私は全く知らないので、過去のキャリアなど知りたいです。
 ギターのスタイルは、MickよりWilkoに近く、バンドもDr.Feelgoodに近いかも知れません。

 そして、ベーシストのBJ Andersですが、本盤のプロデュースをしています。
 また、バンドのワールド・ツアー(?)に併せ、本盤制作を最後に、バンドを脱退したということです。
 理由は、スタジオの運営や関連会社の経営に支障が出るからということらしいです。

 ここでまた、私の推測を述べさせてください。
 BJ Andersは、英語風の名乗りを使うためのステージ・ネームで、本名は、Bjorn Almquistというスウェーデン人ではないか。

 BJ Andersのファースト・ネームが、Bjorn(ビヨルン、若しくはビヨン)であることは、明かされていました。
 BJのJは、ミドルネームではなく、Bjornの短縮形の一部というわけです。

 Bjorn Almquistというのは、Piratesがスウェーデンで録音したアルバム、"Land of the Blind"のプロデューサーの名前です。
 つまり、プレイヤーとしてはBJ Andersという英語風の名前を使い、プロデューサーとしては本名を名乗って、使い分けしていたのではないかと考えたのです。
 今回のメンバー脱退、スタジオや会社運営への専念という事実が、私にこのような想像をさせました。

 さて、ようやく本盤の中身に触れたいと思います。
 "Rock Bottom"、"Land of the Blind"を聴かれた方は、あるいは予断を持たれるかも知れません。
 かの2作は、Piratesとしては少し変化球的なサウンドのアルバムでした。
 そこから、今作もそれに近いのではないか、と私も思いました。
 しかし、実際の音は、シンプルなDr.Feelgood、The Piratesのパブリック・イメージとおりのサウンドでした。
 これは喜ばしいです。

 1曲目の"Louise, Louise"から、かっこいいハード・ロッキンR&Bで痺れます。
 ちなみに、有名なルイ・ルイではなく、ルイーズ、ルイーズです。

 以下、Pete作のオリジナルを挟みつつく、Pirates、Feelgoodのカバーが、期待どおりのビートを展開してゆきます。
 今の私の気分では、"All Through The City"が一番のお気に入りです。
 Peteのオリジナルに、もう少し魅力的なフックが加えられたら、さらに飛躍できるバンドじゃないかと思いました。

 当分は、引き続き北欧に注目します。

 PS
 本盤には、以下のような謝辞が記されています。
 
 Inspired by Wilko、Lee、Gypie and Stevie
 This album is dedicated to Mick Green
(Gordon Russellの名前がないのが(私は)解せませんが…。)


Castin' My Spell
(Kastin' My Spell On You)
by The Spellkasters

 

'ウィルコ歩き'まで真似してる?


Louise Louise
by The Spellkasters




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ロック、スウェディッシュ・ロール
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進撃の赤い鼻
爆走! トナカイ・ビート

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手風琴の壁

 今回は、こちらのバンドを聴きました。
 デビュー当時、Tex-Mex Beatlesと評された、The Krayolasのアルバムです。
 Krayolasは、サンアントニオを拠点とするChicano R&Rバンドで、Augie Meyers、Doug Sahm、そして彼らの周辺アーティストらと古くから交流があるようです。

 本作は、最初は新作かと思ったのですが、実は過去作からのセレクションに、新曲4曲を加えた編集盤でした。
 また、比較してはいないのですが、もしかすると一部(あるいは全曲?)ミックス違いが含まれているかも知れません。
 しかし、ほとんど初めて聴いたような感覚で聴けました。
 これを喜ぶべきかどうか、心中は複雑です。

krayolas3.jpg

Tormenta
The Krayolas

1. Americano (Hector Saldana)
2. Fruteria (The Fruit Cup Song)(Hector Saldana)
3. Quiero Ser Tu Novio (Spanish)
4. La Inundacion De Piedras Negras (Hector Saldana)
5. Wall of Accordion (Hector Saldana)
6. Under One Roof (Hector Saldana)
7. Little Fox (Augie Meyers)
8. Corrido - Twelve Heads in a Bag (Hector Saldana)
9. Exit / Salida (Hector Saldana)
10. La Conquistadora (Hector Saldana)
11. Tony Tormenta (Hector Saldana)
12. Bird Don't Fly Away (Hector Saldana)
13. Piso Diez (Hector Saldana)
14. I'm Your Dirty Mexican (Hector Saldana)
15. Lala La Lala (Hector Saldana)
16. Lazy Afternoon (Hector Saldana)
17. Epitaph Street (Hector Saldana)
18. Canicas (Hector Saldana)
19. I Wanna Be Your Boyfriend (Bilingual) (Joey Ramone)
20. Home (Hector Saldana)
Bonus Track
21. All I Really Want To Do (Bob Dylan)

 本作は、13年にリリースされたもののようですが、私は最近まで知りませんでした。
 Krayolasは、現在までに、(CD時代になってから)私の知る限り6枚のアルバムと2枚のミニ・アルバム(若しくはマキシ・シングル)があります。
 以下のとおりです。

Best Riffs Only (07年) 過去(77〜88年)のシングル等をコンパイルしたアルバム
Little Fox (07年) 4曲入りマキシ・シングル("La Conquistadora"に2曲収録)
La Conquistadora (08年) 初のオリジナル・アルバム(多分)
Long Leaf Pine (No Smack Gum) (09年)
Americano (10年)
Tipsy Topsy Turvy (11年)
Canicas-Marbles (13年) 8曲入りミニ・アルバム、全曲"Tormenta"に収録
Tormenta (13年) 本作、既発からのセレクトに新曲を加えた編集盤

 私は、このうち、"Little Fox"と"Tipsy Topsy Turvy"の2枚が未入手なのですが、特に"Tipsy Topsy Turvy"が気になっています。
 今回の"Tormenta"とは一切ダブっていないからです。
 編集盤に1曲もチョイスされなかった理由が、むしろ気になります。

 おさらいをしておきましょう。
 バンドの編成は以下のとおりです。

Hector Saldna、リズム・ギター、リード・ホーカル
David Saldana、ドラムス、ハーモニー・ボーカル(曲によりリード・ボーカルも)
Van Baines、リード・ギター、ペダル・スチール、ハーモニー・ポーカル
Abraham Humphrey、ペース

 ギター2本からなるギター・バンドです。
 ここに、しばしば、オルガンやサックスなどがゲスト参加します。
 その代表が、Augie Meyers(key)であり、Louie Bustos(sax)とAl Gomez(tp)らのWest Side Horns勢(旧Doug Sahm人脈)です。

krayolas2.jpg


 さて、本作をざっと聴いたところ、可愛いらしい曲が多いという印象を持ちました。
 可愛いらしいというのは、性急感や反抗心といった、ロックの一部のイメージとは合わない、のどかでほんわかした感じを指しています。
 比較的、ミディアム・テンポの曲が多いうえ、アコーディオンのゆったりした響きがからむ曲などの印象が強いからかも知れません。
 
 そんな中、今作の私の注目曲は、以下のとおりです、

3. Quiero Ser Tu Novio (Spanish)
5. Wall of Accordion (Hector Saldana)
6. Under One Roof (Hector Saldana)
14. I'm Your Dirty Mexican (Hector Saldana)
19. I Wanna Be Your Boyfriend (Bilingual) (Joey Ramone)
21. All I Really Want To Do (Bob Dylan)

 3曲目の"Quiero Ser Tu Novio"は、本盤が初出の4曲のうちの1曲です。
 実は、19曲目のラモーンズのカバー、"I Wanna Be Your Boyfriend"(英語、スペイン語のちゃんぽん版)の完全スペイン語バージョンで、おそらくリズム・トラックは同じものだと思います。
 黒い皮ジャンだとか、不良だとか、バイクだとか、全く連想できない、ポップ・ソングに仕上がっています。

 5曲目の"Wall of Accordion"は、出落ち的なネタが(初めて気づいた時には)面白かった曲です。
 フィル・スペクター風のドラム・イントロから始まる曲で、音の壁ならぬ、手風琴の壁ということでしょうか。
 全体的に、アンダー・プロデュース風な曲が多く感じる中、色々と工夫を凝らしたアレンジになっています。
 "Americano"(10年)初出の曲です。

 6曲目の"Under One Roof"は、本盤初出の曲です。
 アコーディオンがアレンジの柱になる曲で、フォーキーな雰囲気で進行する、ゆったりしたアクースティック・ナンバーです。

 14曲目の"I'm Your Dirty Mexican"は、やはり本盤初出の曲です。
 オルガン伴奏がメインの曲で、歌詞はなく、時折り「ラーララ」というコーラスが入る、聴き方によってはアシッド、またはノベルティック(?)な、グルーヴィー・ナンバーです。
 タイトルの意味は、うかがい知れません。

 最後はボートラで、ディランのカバー、"All I Really Want To Do"です。
 本盤が初出の曲です。
 あっという間に終わる短い構成の曲ですが、タイトな伴奏、厚みのあるコーラスなど、初期のコレクション・アルバム、"Best Riffs Only"に入っていても違和感のない、若さを感じさせる、力強いフォーク・ロックに仕上がっています。

 そろそろ、完全新作のリリースを期待します。



La Conquistadora
by The Krayolas




関係記事はこちら

The Krayolas
マージーでフォーキー、そしてテキサス
テックス・メックス・ビートルズ



遥かなる スオミからの便り

 最近、ビート・バンドをよく聴いています。
 そして、それがなぜか北欧のバンドだったりします。
 別に意識してチョイスしているわけではありません。

 私は普段、ロックよりも、古いブルースやR&B、サザン・ソウルなどを聴くことが多いです。
 そんな私ですが、最近、バイオリズムがロックを聴く体調になっているらしく、その流れが当ブログの再開のきっかけとなり、そして、ここ何回かの記事になりました。

 ただ、なぜか普通に英米のロックを聴いていないのが不思議です。
 ちなみに、現在、本盤と並行して聴いているCDは、スウェーデンのビート・バンドとイタリアのジャンプ、スイング・バンドです。 
 
love messengers1.jpg

We Said We Said
Love Messengers

1. Save My Soul (Dee Christopolus, John Kelman)
2. Don't Look Back (Billy Vera)
3. Handbags And Gladrags (Mike D'Abo)
4. I Need You (Ray Davies)
5. She Said Ride (Steve Kipner, Steve Grovers)
6. Security (Otis Redding)
7. Answer To Life (Pembroke)
8. Your Body Not Your Soul (Eelco Gelling, Harry Muskee)
9. Can't Help Thinking About Me (David Bowie)
10. I Can Tell (Ellas McDaniel)
11. War Or Hands Of Time (Mick Bower)
12. Coast To Coast (Sean Tyla, Nick Garvey)
13. Love Hound (Dennis Linde, Alan Rush)

 今回聴いたのは、フィンランドのビート・バンド(R&B系パブ・ロック風)で、「愛の使者」という気恥ずかしい名前を持つ、イカツイおっさんのバンドです。
 本作は、10年にリリースされました。
 
 いつものように、メンバー、編成をご紹介します。
 以下のとおり、ギターは1本で、キーボードを擁する4人組です。

Jussi Reunamakr : keyboards
Keith Hall : drums
Timo Paakko : guitar, vocals
Tarmo Lehtonen : bass

 例によって、カナ表記に迷うような名前が多いですね。
 ドラムスのみ、英語圏のような名前ですが、北欧のミュージシャンで、ステージ・ネームを英語風にしている人が案外いるようなので、油断はできません。

 さて、先ほど、R&B系パブ・ロックと書きましたが、そんな風なイメージを持っていただければ、ほぼ間違いありません。
 重ねて、本バンドの姿を伝えるとすれば、3つのキーワードが浮かびます。
 それは、60s British Beat、Dr. Feelgood、Lenny KayeのNuggetsです。

 初めの2つのワードは説明不要ですね。

 レニー・ケイのオリジナル・ナゲッツは、60年代の半ば、ブリティッシュ・インベイジョンの襲来で衝撃を受けた米国のティーン達に、いったい何が起こったかをドキュメントした、優れた仕事でした。
 あのコンピレーションに、大きな影響を受けた人は多いと思います。

 70年代パブ・ロックの雄、Count Bishopsは、1stアルバムで、Standellsの"Sometimes Good Guys Don't Wear White"をカバーしました。
 Inmatesは、やはり1stで、Standellsの"Dirty Water"をカバーしています。
 御大Dr.Feelgoodは、Strangelovesの"Night Time" をやっていたはずで、これらは、いずれもNuggetsで広く知られるようになった曲だと思います。

 ブリティッシュ・ビートの本家である英国の若者たちが、一回りして、米国のガレージ・パンクに逆に感化されたわけで、ナゲッツは、それも当然と思える魅力的な音が詰まったコンピでした。

love messengers2.jpg


 さて、それらを踏まえて、本盤の(私の)注目曲は、以下のとおりです。

2. Don't Look Back (Billy Vera)
4. I Need You (Ray Davies)
6. Security (Otis Redding)
10. I Can Tell (Ellas McDaniel)
12. Coast To Coast (Sean Tyla, Nick Garvey)
13. Love Hound (Dennis Linde, Alan Rush)

 まず、"Don't Look Back"です。
 この曲は、くだんのナゲッツの収録曲で、ボストンの学生バンド、Remainsのナンバーです。
 渋いチョイスで、私は、正直、あまり注目していなかった曲ですが、これを契機に興味がわいてきました。
 時代の熱気を感じさせる曲だと思います。

 続いて、Kinksの"I Need You"です。
 これまた渋い選曲です。
 あまたあるKinksの曲の中でこの曲を選んだのは、もしや、Count Bishopsの影響でしょうか?
 ビショップスの1stの1曲目を飾ったのは、この曲のヘヴィなカバーでした。
 初期キンキー・サウンドは、ハード・ロッキンなR&Bバンドにぴったりだと思います。

 次は、"Security"です。
 オーティス・レディングのカバーで、さすがにボーカルはつらいですが、健気なビート・バンド・アレンジの演奏に、頑張れと声援を贈りたくなります。

 そして、"I Can Tell"の登場です。
 この曲は、人気ありますよね。
 ボー・ディドリーは、60年代ビート・バンドがこぞってカバーしていましたが、この曲の北欧での人気は、やはりDr.FeelgoodやPiratesのカバー盤によるところが大きいでしょう。
 ここでも、Dr.Feelgood風のギターが聴けます。

 そしてそして、何と"Coast To Coast"です。
 私は、あくまで個人的な思いではありますが、本作のハイライトと言いたい曲です。
 Ducks DeLuxeのカバーで、作者は、ダックスのメンバーのSean TylaとNick Garveyです。
 Love Messengersのダックスへの愛情が感じられるカバーだと思いました。

 ラストは、"Love Hound"です。
 Dr.Feelgoodが、Nick Loweのプロデュースでリリースしたアルバム、"A Case Of The Shakes"(80年)の収録曲です。
 かの盤は、オーティス・ラッシュのカバーもありましたが、ニックの制作は全体的にブルージーさは抑え気味で、タテにもヨコにも乗れるような、スピード感あふれるロックンロール・アルバムでした。
 Gypie Mayoは、もっとソロが弾きたかったかも知れない、と想像します。
 思い入れが先行する私は、今作のカバーに甘い点数を付けています。

 本盤は、私の経験からいって、初見だけでは、人見知りのように無愛想かも知れず、何度か聴いて自然と旨みを味わっていくのが正解なのかな、などと思っています。




Love Hound
by Love Messengers




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Nuggets
from英to米、and to英again
ほら吹き半ズボン


キッズ アー アイリッシュ オール モルト

 いやー、どうもです。
 ようやく私も聴きました。

 久々ですね。
 ロックの大御所なら別ですが、ロック雑誌の表紙を飾るような新人(まだ、そうですよね)のバンドを聴いたのは…。
 なにしろ、ティーンネイジャー、それも、やっとこさ中坊終わったような子どもらなんでしょ。
 えっ、17歳くらい?
 どっちにしても若いよね。

 それで、リズム&ブルースが好きで、60年代のビート・バンドや、70年代のパブ・ロックに傾倒しているなんて素敵すぎる。
 オールド・ファン感涙もののksgkたちですね。
 やっぱり、一部のビート・バンド好きたちの間では、結構盛り上がっているのかな?
 
strypes1.jpg
 
Snapshot
The Strypes
 

1. Mystery Man (Evan Walsh, Josh McClorey, The Strypes)
2. Blue Collar Jane (Album Version)(Josh McClorey, The Strypes)
3. What The People Don't See (Album Version)(Josh McClorey, The Strypes)
4. She's So Fine (Josh McClorey, The Strypes)
5. I Can Tell (Album Version)(Elass McDaniel, Huey 'Piano' Smith)
6. Angel Eyes (Josh McClorey, The Strypes)
7. Perfect Storm (Josh McClorey, The Strypes)
8. You Can't Judge A Book By The Cover (Album Version)(Willie Dixon)
9. What A Shame (Josh McClorey, The Strypes)
10. Hometown Girls (Album Version)(Josh McClorey, The Strypes)
11. Heart Of The City (Nick Lowe)
12. Rollin' And Tumblin' (Niall Walsh, The Strypes, Mckinley Morganfield)
13. I'm A Hog For You Baby (Jerry Leiber, Mike Stoller)
14. Monkey (Cris Difford, Glenn Tilbrock )
15. Shot Down (Gerry Roslie)
16. It Ain't Right (Walter Jacobs)(Live At King Tuts, Glasgow/2013)

 今回は、アイルランドのビート・バンド、The Strypesの1stアルバム、"Snapshot"(13年)を聴きました。

 ジャケ写をご覧ください。
 子どもですよね。
 欧米には、(日本でいう)アイドルはいないそうですが、この雰囲気だけを捉えれば、我がクール・ジャパンが輸出する、"Kawaii"じゃないでしょうか。

 でも、このルックスで、Dr. FeelgoodやCount Bishopsみたいな音を出すなんて、天然記念物ものです。
 白人のガキんちょが踏ん張る、青いボーカル(green voice)が好みすぎます。

 さらに、彼らの音からは、60年代ビート・バンドのような、青臭くてもひるまず、ひたすら頑張るR&Bの解釈や、70年代のR&B系パブ・ロック・バンドのような、パンクに通じる性急さ、疾走感溢れるスタイルが容易に連想されます。

 私は、全体の雰囲気から、一部の方が言っている(らしい)意見、「ビートルズの若いころみたい」に、現時点では激しく同意します。
 (彼らのPVを見て、(恐らくは監督の狙いどおり)、見事に感化されました。)

 さて、バンドのメンツ、編成は以下のとおりです。
 ボーカル、ギター、ベース、ドラムスからなる、4ピース・ギター・バンドです。 

Ross Farrelly : lead vocals, harmonica, percussion, guitar on 6,9
Josh McClorry : lead guitar, slide guitar, backing vocals, lead vocals on 4,7
Pete O'hanlon : bass, harmonica on 2, 12, keyboards on 9
Evan Walsh : drums, percussion, keyboards on 9

 ボーカルのロス・ファレリーの青い声と、ドライブするブルース・ハープ、そして、オリジナルのほとんどを書いている、ジョシュ・マクローリーによる、存在感たっぷりに駆け回るリズムとスライドのプレイが、このバンドの看板です。
 疾走するビート・ナンバーでありながら、メロディックな曲が多いのも特徴です。
 こういうものをこそ、私はポップと言いたいです。

strypes3.jpg


 さて、収録曲ですが、オリジナル、カバーを含めて、とても聴かせます。
 というか、現時点では、オール・オリジナルではなく、この形がベストかな、と感じました。

 (小声で)
 「オリジナルに、まだバリエーションが少ない。
 今なら、粒よりの好曲ぞろいといわれそうだけど…。
 オール・オリジナル(若しくはそれに近い形)で打って出たときの評価が勝負かな。」

 オリジナルで特に耳に残ったのは、現時点では以下の曲です。

1. Mystery Man (Evan Walsh, Josh McClorey, The Strypes)
2. Blue Collar Jane (Album Version)(Josh McClorey, The Strypes)
4. She's So Fine (Josh McClorey, The Strypes)
7. Perfect Storm (Josh McClorey, The Strypes)
10. Hometown Girls (Album Version)(Josh McClorey, The Strypes)

 R&B系パブ・ロックあたりをスタートにして、表面には出ていませんが、その後のロックの発展を消化して血肉にした感じです。

 私は、冒頭の2曲、"Mystery Man"、"Blue Collar Jane"が、本作の顔になる曲ではないかと思います。
 いずれも、オールド・ファンが喜びそうな(私は喜んだ)ハード・ロッキンR&Bです。

 ところで、虚心で選んだのですが、"She's So Fine"と"Perfect Storm"の2曲が、ギターのジョシュのボーカル曲でした。
 ロス・ファレリーの声を「青い」と言いましたが、ジョシュ・マクローリーは、それに加えて「可愛い」です。
 もう一人のボーカルまで「良い」と感じるなんて、これはもうファンになったかも…。
 
 そして、"Hometown Girls"は、ポップな味付けが若干強めな曲です。
 とんがったコーラスの感じなどから、私はThe Knackを思い出しました。

 さて、カバーにも触れます。
 すべて注目といいたいですが、ここでは(これでも)絞り込んで、以下の曲に焦点を当てます。

5. I Can Tell (Album Version)(Elass McDaniel, Huey 'Piano' Smith)
8. You Can't Judge A Book By The Cover (Album Version)(Willie Dixon)
11. Heart Of The City (Nick Lowe) 
13. I'm A Hog For You Baby (Jerry Leiber, Mike Stoller)
14. Monkey (Cris Difford, Glenn Tilbrock )
15. Shot Down (Gerry Roslie)

 ポー・ディドリー関連の2曲、そして、コースターズの"I'm A Hog For You Baby"、さらに、ディフォード&ティルブルックの"Monkey"まで、これらは間違いなく、Dr. Feelgood経由で、彼らのお気に入りになった曲でしょう。
("I Can Tell"では、期待通り、Wilko Johnson風のギターが聴けます。)

 ここからあえて1曲に絞るなら、"Monkey"が(私には)ベストです。
 "Monkey"は、もともと大好きだった曲ですが、ここでの演奏も性急感たっぷりに、突っ込み気味に迫るバンド全体のノリが、オリジナル(82年、"Fast Women Slow Horses"収録、Dr.Feelgood、(gt)=Johnny Guitar)に負けないかっこよさです。

 そして、15曲目の"Shot Down"は、Sonicsのカバーのようですが、1stを2枚持っている(得意のダブリ買い)けれど、2nd以降は持っていない私は、早速検索したのでした。(YouTubeで聴けました。)
 
 今後についてですが、現時点では、オリジナルにこだわらず、本作のようなバランスで、カバーの好曲を交えたアルバム作りをしていってほしいと、おじさんである私は思うのでした。
 


Mystery Man
by The Strypes



Blue Collar Jane
by The Strypes



Got Love If You Want It (Live)
by The Strypes




PS
"I Can Tell"の作者名に、Huey 'Piano' Smithのクレジットがあるのが気になります。

老海賊 ハーレーを駆る

 届きましたあ !!
 まあ、何というか、手に入るまでは焼きもきしますよね。
 それが手に入った途端、まだ音を一切聴いていないうちから漂ってくる、この「ほっ」とした感はなんでしょう。
 この感覚、実はしばしば経験しています。
 ここで、その安堵感に身を任せていると、そのうち、もう聴き終えたかのような錯覚まで起こったりします。
 怖いですね。
 年を重ねるとは、こういうことでしょうか?


doctor's order7.jpg

Kickstart Your Mojo
Johnny Spence & Doctor's Order

1. Kickstart Your Mojo (Johnny Spence)
2. Keep My Motor Running (Ken Beal, Bruce Channel)
3. Get Me To The Doctor (Johnny Spence)
4. Up Jumped The Devil (Ronnie Dawson, James Barnaby Koumis)
5. Blues About You Baby (Delbert McClinton, Al Anderson)
6. Voodoo Thing (Colin James)
7. Restless (Wadmore, Kidd, Dale)
8. Going Back Home (Mick Green, Wilko Johnson)
9. Rockin' My Life Away (Mack Vickery)
10. Crazy Personality (Johnny Spence)
11. Roll On (Wall, Ball)
12. Let It Rock (Chuck Berry)

 今回のアルバムは、Johnny Spence & Doctor's Order名義での3枚目で、先月末に目出度くリリースされました。

 さて、私は、彼らを一貫して4人組のバンドだと認識していますが、一部では、Johnny Spenceとそのバック・バンドと見ている方もいるようです。
 ラインナップは、以下の通りです。

Johnny "The Pirates" Spence : vocals
Grande-Archie" Hämäläinen : guitar
Teddy Bear Nättilä : bass
Mighty Man Oikarinen : drums

 今回改めて、過去作を含めて聴き返したところ、なるほど、一部の方の考え方も分からなくはない、と思いました。
 Johnny Spence不参加のDoctor's Order単独盤とでは、聴いた印象が少し違うからです。

 その大きな違いは、何よりも、トリオ盤では、収録曲の多くがメンバーのオリジナルで占められていることです。
 そのスタイルの多くは、Wilko直系の、魅力的なフックを持つサイド・プレイを中心に、加えてサイド、リードが混然とした、アイデア溢れるギター・ブレイで構成されています。

 対して、4人組盤ではカバー曲が大半なのです。
 いきおい、アルバムの印象は変わってきます。

 これらカバーの選曲を、Spence主導と見れば、一部の方が持たれる認識も、自然なものと言えなくもないです。
 Wilko直系の曲は、あくまで全体の一部で、トリオ盤と比較すれば、若干しつこさが薄まっている気がします。
 とは言え、普通のバンドに比べれば、まだまだ濃厚です。
 
 トリオ盤では、耳に残る魅力的なビート曲が目立ち、わくわく度が高い気がします。
 しかし、昔から止むことのない、「ドカドカうるさい」、「同じような曲ばかり」という意見にも納得できます。

 一方で、4人組盤では、曲の構成がバラエティに富み、自然と聴きとおせます。
 しかし、くだんの「ドカドカうるさい曲」が希少になると、むしろ新鮮に思え、愛おしくなって、思わず「このタイプの曲をもっと」とおねだりしたくなるのでした。
 人間って、めんどくさいですね。

 さて、今作のラインナップです
 トリオ盤と違って、なかなかに興味深い構成です。
 なかでも、今の私の趣味と気分で、以下の曲に注目です。
 意識してSpenceが書いた曲は外しました。 

2. Keep My Motor Running (Ken Beal, Bruce Channel)
5. Blues About You Baby (Delbert McClinton, Al Anderson)
6. Voodoo Thing (Colin James)
7. Restless (Wadmore, Kidd, Dale)
8. Going Back Home (Mick Green, Wilko Johnson)
9. Rockin' My Life Away (Mack Vickery)

doctor's order8.jpg

 
 これを、仮に次のように分類します。

海賊セット
7. Restless (Wadmore, Kidd, Dale)
8. Going Back Home (Mick Green, Wilko Johnson)

55年組セット
2. Keep My Motor Running (Ken Beal, Bruce Channel)
9. Rockin' My Life Away (Mack Vickery)

ブルース・ロック・セット
5. Blues About You Baby (Delbert McClinton, Al Anderson)
6. Voodoo Thing (Colin James)

 以上です。

 まずは、海賊セットから
7. Restless (Wadmore, Kidd, Dale)
8. Going Back Home (Mick Green, Wilko Johnson)

 この2曲は、どちらもパイレーツのレパートリーです。
 ただし、同じパイレーツでも、別のバンドというべきで、セット扱いは強引かもません。

 "Restless"は、Johnny Kidd & The Pirates時代のレパートリーで、作者にKiddの名前があります。
 Johnny Spenceは、Kidd時代の第二期(多分)からのメンバーで、原曲の録音時は加入前ではないかと思いますが、加入後のライヴでよく演奏した可能性はあるでしょう。
 ちなみに、ジェリー・リー・ルイスに同名曲がありますが、別の曲です。

 "Going Back Home"は、作者名クレジットのとおり、Mick GreenとWilko Johnsonの共作曲で、お互いに、自身が所属するバンドで吹き込んでいます。
 しかし、私などは、ほとんどWilkoの曲という認識しかありません。
 それだけ、Wilkoらしさの感じられる作品です。
 本盤でも、この曲のイントロが始まると、期待で目が覚めるような、新鮮な気分になります。

 ちなみに、この曲は、Wilko JohnsonがRoger Daltreyと組んで作り、本年リリースしたアルバム、"Going Back Home"のタイトル曲として、当該CDの1曲目を飾っています。
 Dr. Feelgood盤、The Pirates盤、Wilko+Roger盤、そして本盤と、このあたりの録音は、一挙に聴き比べしたい気もします。
 
 ちなみついでに余談をひとつ
 Johnny Spence & Doctor's Order名義の過去2作では、Johnny Kidd & The Pirates時代のレパートリーを他にも吹き込んでいます。
 09年のアルバム、"Full Throttle No Brakes"では、"Big Blon' Baby"(60年)と"Doctor Feelgood"(64年)を、11年のアルバム、"Hot And Rockin"では、"'A Shot Of Rhythm & Blues"(62年)と"Whole Lotta Woman"(64年)を録音しています。

 次に、55年組セットです。
2. Keep My Motor Running (Ken Beal, Bruce Channel)
9. Rockin' My Life Away (Mack Vickery)

 この2曲は、"Class Of 55"という、50sレジェンドの同窓会的アルバムで演奏されていた曲です。
 本盤とその盤との関係は不明で、むしろ、全く無関係の可能性が高いですが、私の勝手な分類におつきあい下さい。

 "Class Of 55"は、Johnny Cash、Carl Perkins、Jerry Lee Lewis、Roy Orbisonという、Sun Record出身の4人によるコンサートの実況盤で、ロックンロールの創成期(及び亡きElvis)を懐かしむ感傷的アルバムでした。
 かの盤は、ゴスペルやセイクレッド・ソング満載になるかと思いきや、Bruce Channel("Hey Baby"の人)や、ロカビリアンのMack Vickery(本人盤よりもJerry Lee盤の方が有名)が作者に名を連ねる、この2曲がひっそり入っていたのでした。
 
 "Keep My Motor Running"は、カバーではありますが、Doctor's Orderらしさの出た、まるでオリジナルかのような、かっこいいビート曲に仕上がっていると思います。

 "Rockin' My Life Away"は、Doctor's Orderの過去作、"The Real Thing"(02年)、"Live How Sweet It Is"(04年)でもやっていた曲ですが、残念ながら両作ともに入手困難で、私は未聴です。
 本盤での演奏は、ぐんぐん突き進むようなロックンロールで、ゲストのピアノとギターのアンサンブルが気持ちいいです。
 
 次に、ブルース・ロック・セットです。
5. Blues About You Baby (Delbert McClinton, Al Anderson)
6. Voodoo Thing (Colin James)

 やはり、カバーものは、こういう「へーっ、彼らって、こういうのも趣味なんだ!?」なんて、勝手に盛り上がる材料をくれるのがいいです。

 "Blues About You Baby"は、テキサスのハスキー・ボーカリストにして、Bruce Channelの"Hey Baby"でハーモニカを吹き、Beatlesの"Love Me Do"(のイントロ)にも影響を与えたベテラン、Delbert McClintonの作品です。
 しかも、Al Andersonという何とも気になる名前の人との共作です。
 これって、元NRBQのあの人と考えていいんでしょうか?

 ちなみに、収録しているDelbert McClintonのアルバムは、02年にNew Roseからリリースされた、"Room To Breathe"です。
 "Room To Breathe"では、もう1曲Al Andersonとの共作があり、興味深いですが、両曲ともに演奏への参加クレジットはありません。
 Al Andersonって、他人へ作品提供したり、共作したりするような人でしたっけ?
 それとも、同名の別人かな?

 "Voodoo Thing"は、カナダのブルージーなロッカー、Colin Jamesのカバーです。
 この曲のチョイスは誰ですかね。
 Colin Jamesは、ポップさと渋いブルース志向が同居した人で、既にベテランですが、近年はブライアン・セッツァーみたいな(?)スイング・バンドをやっていて、興味を持たずにはいられません。

 最後に、Johnny Spenceの作品から1曲、紹介します。
 2曲目の"Get Me To The Doctor"は、Piratesより、Doctor's Orderに向いた曲で、軽快な曲調ながらもヘヴィにロールする、「医師の指示」ファンへのおすすめの1曲です。

 やはり私は、本盤は、Johnny Spence主体のプロジェクトではなく、あくまでJohnny Spence & Doctor's Orderという4人組バンドの作品だと思います。



Going Back Home
by Johnny Spence & Doctor's Order



Going Back Home
by Wilko Johnson、Roger Daltrey





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Hey Baby
「心の声」が叫んでる


ブギウギ マエストロ 

 先だって、ダブリ買いの未着分、Doctor's OrderのCDが届きました。
 何とも切ないです。
 封を開けずにそっと保管しておきました。

 一方、同じDoctor's Orderの先月末に発売された(はずの)最新作は、未だ届きません。
 ただ、ショップのサイトのステータスが変わり、処理済、カード請求済となったため、その通りなら配送中ということになります。
 ショップからの発送通知は来ていませんが…。

 さて、気を取りなおしましょう。
 今回は、スウェーデンのロックンロール・バンド、The Refreshmentsの鍵盤奏者、Johan Blohm先生の最新ソロ作(13年)を聴きました。

johan blohm1.jpg

Reborn man
Johan Blohm

1. Hot Mess (Rick King)
2. There Won't Be Anymore (Charlie Rich)
3. Big Big City (Moon Mullican)
4. If I Could Change You (Carl Mann, Kelton Herston)
5. Reborn Man (Joakim Arnell)  
6. She's Not Really Cheatin’ (R. Chaffer) 
7. Bad Case of a Broken Heart (R. Daniels, M. Daniel)
8. Cold Day Light (Joakim Arnell)
9. Paradise Coast (Joakim Arnell)
10. Where Ever I Turn (Eva Eastwood) duet with Eva Eastwood
11. Little Ol' Wine Drinker Me (Hank Mills, Dick Jennings)
Bonus Tracks
12. Rocket 88 (Jackie Brenstoan n)
13. Bada Bing Boogie (Johan Blohm)


 はっきり確認してはいないんですが、多分ソロ2作目なんじゃないかと思います。
 そこで、前作がどんな感じだったか、確認しようとしたところ、何ともデジャブっぽいことが起こってしまいました。
 持っているはずの前作が見当たらないのです。(まただ !!)
 ジャケ写には、猛烈に記憶があります。
 しかし見当たらないのです。
切ない出来事は尽きないのでした。

 さて、気を取り直して、本作の参加メンバーを紹介します。
 次のとおりです。 

Johan "JB" Blohm : vocals & Piano
Jonas Goransson : guitars
Ulf Holmberg : guitars (2,4,7)  
Robin Olsson : guitar (1)
Joakim Arnell : bass, acoustic guitars and backup vocals
Goran Holmberg : bass (2)
Mats Forsberg : drums
Linda Gail Lewis and Eva Eastwood :backup vocals
J.T. Holmstrom : saxophones on Rocket 88

 このメンツを見て、1曲目の"Hot Mess"を聴いたあと、私は、「これって、Johan Blohmがメインでリード・ボーカルを取っているRefreshmentsの新作に過ぎないんじゃないの?」…と思わずつぶやきました。

 上記リストのうち、ギターのJonas Goransson、ベースのJoakim Arnell、ドラムスのMats Forsbergが、Refreshmentsのメンバーで、ここにJohan本人が加って勢揃いというわけです。
 ついでに言えば、今回サックスで1曲参加した、J.T. Holmstromは、Mikael Finell(sax)脱退後の作品(13年作)でゲスト参加していた人です。

 サウンドから曲のスタイルまで、Refreshmentsそのものと思えた冒頭の1曲でしたが、どうやら私の早合点でした。
 その後の展開が違っていたのです。

 おそらくは、というか当然かも知れませんが、その後は、Johanの嗜好が現れた曲調、スタイルの曲が続いていくのでした。
 結果的に、Refreshmentsを即座に連想する曲は、最初の1曲だけでした。
 (こうなると、なおさら前作が気になります。)

johan blohm3.jpg


 さて、カバー曲を見れば(聴けば)、本人の趣味嗜好の傾向が推察できます。
 まずは、無心で次のリストをご覧ください。

2. There Won't Be Anymore (Charlie Rich)
3. Big Big City (Moon Mullican)
4. If I Could Change You (Carl Mann, Kelton Herston)
6. She's Not Really Cheatin’ (R. Chaffer)
12. Rocket 88 (Jackie Brenstoan)

 他にもカバーがありそうですが、私の知らない人はオミットします。
 
 上から順に
2. チャーリー・リッチ
3. ムーン・マリカン
4. カール・マン
6. モウ・バンディ
12. ジャッキー・ブレンストン
 のカバーです。

 このうち、私が最も親しんできた曲は、"Rocket 88"です。
 これは、まず曲がいいですね。
 私は、ブルース・ハーピストのJames Cotton盤をよく聴いた記憶があります。
 ジャッキー・ブレンストンは、この曲のみというイメージですが、バックを務めたアイク・ターナーはその後有名人になりました。
 これはサンで録音され、チェスで出されたものですね。

 チャーリー・リッチの曲は、サンが初出で、その後RCA(?)あたりで再録音している曲だと思います。
 本盤のアレンジは、おそらくRCA盤がお手本だと思います。
 サン盤は、ミディアム・スローのブルージーな3連メランコリー・アレンジでした。
 こちらは、明るいエイト・ビートです。

 ムーン・マリカンの曲は、おそらくキングですね。
 ヒルビリー・ブギ・ピアニストで、Nick Loweが"Seven Nights To Rock"をやっていました。
 私は、"I'll Sail My Ship Alone"あたりが好きでした。
 Merrill Mooreと並んで、Jerry Lee Lewisの師匠(先輩?)的な人です。
 ここでは、ピアノは目立たず、ギターのトワンギーなプレイが耳に残ります。

 サンのピアノマン、カール・マンは、モナリザの人ですね。
 ロックンロール(ロカビリー)版「モナリザ」です。
 今回の曲は初めて聴きました。

 そして、モウ・バンディは、ここまでの流れのピアニストつながりを切ってしまいますが、手ぶらかギターの人だと思います。
 曲は、コロンビアからのヒットらしく、やはり初めて聴きましたが、ミディアム・テンポの良い曲です。
 この曲のみ(多分)、メンツ一覧にはありませんが、スチール・ギターっぽい音が聴こえます。

 さて、こうやってカバー曲を聴いていくと、いかにもピアニストのソロ・アルバムという感じで良いですね。
 Refreshmentsのパブリック・イメージとは違い、ミディアムの歌もの+ピアノ・ブギという感じで、黒人白人の別なく、良い曲をチョイスした、思いのほか美味しいアルバムでした。

 あわせて、1曲目やその他のJoakim Arnellの作品が、従来のRefreshmentsファン向けの欲求に応えています。
 ちなみに、Joakim作品では、アルバム・タイトル曲の"Reborn Man"が、"Mystery Train"に似たリフ・パターンを持つ曲で、唐突かもしれませんが、私はサン・レコードへの敬意みたいなものを感じました。
 なぜなら、これは推察ですが、本盤のボートラである"Rocket 88"が、他の曲と違い、Sun Studioで録音されているからです。
 時期的にいって、Refreshmentsの13年作、"Let It Rock - Chuck Berry Tribute"が、サン・スタジオで録音された際のアウトテイクの可能性が高いです。 

 個人的な結論を言わせてください。
 本作は、Refreshmentsのピアニストのソロ作として、盲信的な既存のファンの期待にも配慮しつつ、一方で、「また金太郎飴的なアルバムなのかな」と予断を持って聴いた普通のファンの予想をも裏切る、中々のバラエティに富んだ好盤になっていると思います。
 若干点数が甘いかもしれませんが、予断を持って聴いてしまった、私の今の素直な感想です。
 
 PS
 10曲目の"Where Ever I Turn"でデュエットしている、Eva Eastwoodは、レーベル・メイトの女性シンガーで、多くは知らないのですが、60年代アメリカン・ポップス風の曲を得意としているシンガーです。
 私は、かってに北欧のコニー・フランシスなんて呼んでいます。



本盤のプロモ動画をどうぞ。




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ロック、スウェディッシュ・ロール

 当ブログを再開してから、なぜかスカンジナビア半島関連のバンドをよく取り上げています。
 ですが、他意はありません。
 まったくその通りなのですが、結果的に今回もまた、スウェーデンのバンドをチョイスしちゃいました。
 かなり以前に、一度取り上げた、こちらのバンドです。


simon crashly8.jpg

It's Only Rock'n'Roll
Simon Crashly
and the Roadmasters

1. Letter To My Baby (Sten Asberg, Peter Nilsson, Christer Nordahl, Anders Larsson)
2. Hey Pretty Baby (Sten Asberg, Peter Nilsson, Christer Nordahl, Anders Larsson)
3. You Broke Another Heart (Sten Asberg, Peter Nilsson, Christer Nordahl, Anders Larsson)
4. I'll Keep On Lovin You (Billy Barton)
5. Hurricane (Steve Bloomfield)
6. Mary Ann (Sten Asberg, Peter Nilsson, Christer Nordahl, Anders Larsson)
7. Don't You Lie To Me (Hudson Whittaker)
8. You Went Away And Left Me (Sten Asberg, Peter Nilsson, Christer Nordahl, Anders Larsson)
9. Deep In The Heart of Texas (Geraint Watkins)
10. House of Blue Lights (Freddie Slack, Don Raye)
11. Jill (Sten Asberg)  
12. Susie's House (Danny Wolfe)
13. True Love (Kim Wilson)

 本作は、本年14年にリリースされたもので、彼らの最新作になります。
 まずは、いつものとおり、バンドのメンバー構成をおさらいします。
 
Sten Asberg : guitar, vocals
Christer Nordahl : double bass
Anders Larsson : piano
Peter Nilsson : drums, backup vocals

 ギター1本で、ピアノが加わった4人編成のバンドです。
 ベースがコントラバスで、ネオロカをイメージします。
 実際、バンド結成時は、ロカビリー・バンドだったんだろうと思われます。
 ギター、リード・ボーカルのSten Asbergが、バンド名にあるSimon Crashlyだと思われます。
 (ステージ名の由来は不明です。)

 今作でやっているスタイルは、乱暴にざっくりと書いてしまうと、ロカビリーとビート・バンドです。
 もう少し言えば、ネオ・ロカビリーとロックパイルのようなロックンロールに大別できます。
 このへんは、個人の印象ですので、異論はあるかと思います。

 以前に取り上げた過去作では、ロックパイルのことを歌った曲、"Tribute To Rockpile"をやっていた嬉しいバンドです。

 RockpileやDr. Feelgoodって、北欧ツアーとかやって、大いに受け入れられたんでしょうね。
 地元のバンドに影響を与えて、しっかりと芽吹いているように感じます。

 卵が先かニワトリが先かなんて話じゃないですが、R&Bを好む下地があったのも確かでしょう。
 スウェーデンって、昔から米国の古い音楽が好まれていて、例えば、本国はもちろん(?)、英国でも手を付けていなかった頃から、スウェーデンでは、ジャンプ・ブルースのリイシューがいち早く出ていて、私はお世話になったものでした。

 また、スウェーデンとフィンランドは、文化交流が密になる歴史的必然があったため、フィンランドも似たような状況となったのでは、と推察します。
 なぜ、ここでフィンランドのことを持ち出したかと言いますと、Doctor's Orderのことが頭に浮かんだからです。
 その点、同じ隣国でも、デンマークやノルウェーはどうなんでしょう? 
 日本への情報が少ないこともありますが、「?」ですね。

 (ところで、唐突かつ全くの余談ですが、最近、マルティン・ベック・シリーズ(スウェーデンを代表する警察小説)の一部が、電子書籍化されました。 
 当該の紙の本が書店から消えて久しい中、古くからのファンとしては、大変嬉しいです。
 紙の本と電子書籍の関係は、かつてのLPとCDというより、もはやCDと音楽ダウンロードとの関係に似て、興味深いです。)

 閑話休題
 
 さて、何曲か気になった曲をご紹介します。
 
 冒頭の2曲は、ロカビリー系の曲です。
 いずれもオリジナルですが、2曲目の"Hey Pretty Baby"は、イントロこそRockpile風で始まりますが、スラッピングもオン気味の、ネオロカ風味で進行するゴキゲンなナンバーになっています。

 対して、3曲目の"You Broke Another Heart"、8曲目の"You Went Away And Left Me"あたりは、ロックパイル系のロックンロールです。
 乾いたサウンドにのせた、軽めのビート・バンド・スタイルが良いです。
 
 そして、しばしば、サウンドの方向性まで決定するかのような、躍動的なピアノのプレイにも心が惹かれます。

 10曲目の"House Of Blue Lights"では、ギターよりも、よく転がるピアノの古いスタイルが目立っていて、ブギの楽しさ満載という感じです。
 こちらは、カバー曲でしたが、本作には、他にもカバーがあります。
 
 中でも注目は、5曲目の"Hurricane"です。
 作者名でピンときた人は、私のお友達です。
 ネオ・ロカビリーの少し前、ロックンロール、ロカビリー・リバイバル期のバンド、Matchboxの中心メンバー、Steve Bloomfieldが書いた曲で、もちろんマッチボックスがやっていた曲です。 

 曲としては、ヴィンテージ・ロカビリーのフォーマットから外れてはいますが、よく聴けば、ポール・バーリソンお得意の、Honey Hush風のギター・リックがしっかり入っている曲です。
 これは、曲そのものの仕上がりよりも、その選曲センスに萌えました。
 こういう1曲があるだけで、本盤への私の愛着はいや増すのでした。

 7曲目の"Don't You Lie To Me"は、古いブルースのカバーです。
 多くの人がやっている曲で、R&B、ロックンロールでは、Fats Domino、Chuck Berryの名前をあげたいです。
 作者のハドソン・ウィッテイカーは、タンパ・レッドのことですね。
 このバンドは、オリジナル曲に有名曲と同じタイトルを付けるくせがあるため、普通にカバーというだけで軽い驚きだったりします。

 9曲目の"Deep In The Heart of Texas"は、伝承曲の方ではなく、何とGerant Watkinsの作品で、Rockpile解散後のDave Edmundsが、"DE7th"でやっていた曲です。
 つべを検索すると、Refreshmentsのメンバーをバックに、この曲を歌うワトキンス本人の動画があって驚きました。
 パブ・ロック勢と北欧って、思っていた以上につながりがあるんですね。
 
 そして、ラストの"True Love"は、Kim Wilsonが書いた曲で、T-Birdsが、あのアルバム出世作"Tuff Enuff"でやっていた曲です。
 渋い選曲だと言いたいです。 
 はっきりいって、どんな曲だったのか覚えていませんでしたが、この機会にT-Birdsのオリジナルと併せて聴きました。
 同盤でのDave Edmundsのプロデュースは、平凡な曲に魔法を掛け、魅力的にしていると改めて感じます。

 本盤は、ベテランらしく気負いのない、余裕さえ感じさせるサウンドが、安心して聴ける作品だと思います。



Hey Pretty Babyです。




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ロックパイルが北欧に残した芽

ハラペーニョ 聖者にはならない

 今回は、ここ最近の流れをひと区切りしたいと思います。
 すなわち、「最近、ダブリ買いしてしまったCD」シリーズの、ひとまず最終回です。
 アイテムは、Louie Ortegaの2ndアルバム、97年作の"In My Heart"です。


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In My Heart
Louie Ortega
and the Wild Jalapenos

1. Today (Louie Ortega)
2. My Lucky Stars (Louie Ortega)
3. She's An Angel (Louie Ortega)
4. Never Be A Saint (Louie Ortega)
5. Georgie Baker (Louie Ortega)
6. I Believe In You (Louie Ortega)
7. Amor De Mi Vida (Louie Ortega, Max Baca)
8. Set Me Free (Louie Ortega)
9. Heaven On Earth (Louie Ortega)
10. Destiny (Louie Ortega)
11. Mi Casa Es Su Casa (Louie Ortega)
12. Llevame (Louie Ortega)
13. In My Heart (Louie Ortega)
Bonus Track
14. Ring Of Fire (J. Carter, M. Kilgore)
15. Llevame Jam (Louie Ortega)

 本作がリリースされた97年は、Louie Ortegaにとって、彼の音楽人生に深く関わり、大きな影響を与えた盟友Doug Sahmが、静かに天に召された時より、遡ること2年前のことです。
 Doug Sahmのアルバムの歴史で言いますと、Texas Tornados名義のラスト作、"4Aces"が96年で、Sir Douglas Quintet名義のラスト作、"Get A Life"(別題"SDQ 98")が98年ですので、その2枚の間に出された作品ということになります。

 とりあえず、本作の参加メンバー、担当楽器等をご紹介します。
 以下のとおりです。

Louie Ortega : Vocals, Electric Guitars, Acoustic Guitars, Bajo Sexto
Frank Paredes : Bass Guitar, Background Vocals
Don "Spike" Burr : Bass Guitar, Background Vocals
Bill Flores : Dobro, Accordion, Saxophone,
Rich Burr : Drums, Percussion
Jim Calire : Piano, Hammond Organ
Produced by Louie Ortega

 まず、ひとこと、結論から先に述べさせてください。

 本作は、粒よりの曲を取りそろえた、優れたアルバムだと思います。
 また、アクースティック系の楽器の響きが耳にやさしく、繰り返し聴きかえせるアルバムでもあります。

 ほとんど自作で占められた本作は、Ortegaの非凡なソング・ライティングの冴えを感じさせるアルバムになっています。
 ただ、おそらくは、長い期間の中で書き溜めた作品を吐き出したものだと思われ、はっきりわかるものだけでも、トラック1の"Today"、トラック4の"Never Be A Saint"、トラック5の"Georgie Baker"の3曲は、本作が初の録音ではなく、過去に発表した曲の新録音となっています。

 まず"Today"ですが、本作では題名がえらく短縮していますが、これは元は、"Tomorrow Just Might Change"の名前で、70年代に出されたシングルの新録音です。
 「今日は今日、明日は変わるかもしれない」と、歌われる曲で、メロディの美しさにのみ耳がいきがちですが、実は若干の説法くささ、もっと言えば宗教臭も漂う作品です。

 これは、トラック4の"Never Be A Saint"にも共通するスタイルかも知れず、Louieがやはり、伸びやかな声で、「聖者にはならない」と歌っています。
 "Never Be A Saint"は、元は84年にスウェーデンのレーベルSonetからリリースされた、Sir Douglas Quintetのアルバム、"Rio Medina"で披露された曲でした。
 "Rio Medina"は、未だにCD化されていませんが、そのバージョンは、Sonet音源から選曲した編集盤CD、"Scandinavian Years"で聴くことができます。
 
 そして、"Georgie Baker"です。
 この曲は、元は"Tomorrow Just Might Change"の裏面として、70年代に出されたもので、その際は"Little Georgie Baker"という表記が使われていたものです。
 80年代には、やはり、現在も未CD化のSir Douglas Quintetのアルバム、"Midnight Sun"(83年リリース、"Rio Medina"のひとつ前のアルバム)でQuintet盤が録音され、本作収録曲は、Louieにとって3度目の吹き込みになります。
 ところで、Georgieという名前は、Georgeの女性名ですかね?

 さて、ここで落穂拾い的なことをひとこと、ふたこと。
 
 トラック7の"Amor De Mi Vida"には、共作者としてMax Bacaの名前が記されていて興味深いです。
 Max Bacaは、ルーツ系チカーノ・バンド、Los Texmaniacsのメンバーで、マルチ・プレイヤーだと思いますが、主としてバホ・セストをプレイしている人です。
 最近では、完全なコンフント・スタイルで、フラーコ・ヒメネスとの共作アルバムを出しています。
 Ortegaとの接点は、あっても不思議ではありませんが、本作ではコンポーザーとしてのクレジットだけですので、共作するきっかけとなったような、共演盤があるのなら、ぜひ聴いてみたいです。
 
 そして、本作は、ジャケット表記では13曲入りとなっていますが、CDプレイヤーにディスクを入れると、トラック数が15と表示されます。
 13曲目が終了すると、しばしの無音のあと、2曲のシークレット・トラックが演奏されるのです。
 
 14曲目は、ジョニー・キャッシュとジューン・カーターのデュエット曲、"Ring Of Fire"のカバーです。
 原曲からして、メキシカン・トランペットの響きが印象的なボーダー・ソングですので、おそらくは、チカーノ・コミュニティで人気がある曲なんだと思います。
 (そういえば、Louie & The Lovers(60年代末〜70年代初期のLouieのバンド)には、マーティ・ロビンスのカウボーイ・ソング、「エルパソ」のカバーもありました。)
 
 ラストの15曲目は、12曲目のアウトテイクのような演目で、インスト・ナンバーです。

 近年のLouie Ortegaは、Shawn Sahm率いる新生Texas Tornadosのメンツであるとともに、どうもレコーディングこそ未だないようですが、Louie & The Loversの名前で、自らのバンドを組んで活動しているようなので、他人作のゲストばかりじゃなく、リーダー・アルバムを出してほしい、ファンとしては、そう切に願います。




Sir Douglas Quintetがスウェーデンのテレビに出演した際の映像です。
6分40秒あたりから、Ortegaが"Little Georgie Baker"を歌っています。


1. Every Breath You Take (ポリスの最高にイナたいカバー)
2. Everybody Gets Lonely Sometime(3分15秒〜)
3. Little Georgie Baker(6分40秒〜)



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ママのホーム・オブ・ブルース

 今回も前回の流れを受け、「最近、ダブリ買いをしてしまったCD」を取り上げます。
 こうしてテーマを決めてのぞめば、「CDのチョイスにさほど悩まなくていい」ということもあります。
 でも、それだけでなく、結果的にダブリ買いをしてしまったということは、その音楽に強い関心があるということでもあり、取り上げる価値は充分以上にあるのでした。

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Deja Blue
Angela Strehli

1. Cut You Loose (M. London)
2. A Stand By Your Woman Man (Angela Strehli)
3. Deja Blue (Angela Strehli, Mike Schermer, Joe Kubek)
4. A Man I Can Love (angela Strehli)
5. Boogie Like You Wanna (Charlie Bradix)
6. Give Me Love (Angela Srehli)
7. Still A Fool (Angela Strehli) with Lou Ann Barton, Marcia Ball (vocals)
8. Close Together (Jimmy Reed)
9. Hey, Miss Tonya (Angela Strehli)
10. Too Late (Tarheel Slim & Little Anne) with Doug Sahm (vocals)
11. Where The Sun Never Goes Down (Willie Mae Williams)

 
 今回は、テキサスのブルース・ウーマン、Angela Strehliの98年作、"Deja Blue"です。

 本作には、Doug Sahmが2曲でゲスト参加しています。
 トラック8の"Close Together"では、Dougはギターを弾き、いつものDoug Sahmシンジケートのメンツたち、Jack Barber(bass)、George Rains(drums)のほか、ブルース・クラブ・アントンズのハウス・ミュージシャンで、Dougとも親交の深いDerek O'Brien(gt)が録音に参加しています。

 そしてもう1曲が、トラック10の"Too Late" (元曲の表記は"It's Too Late")で、ほとんどDougメインという感じでAngelaとデュエットしています。
 録音メンツでは、"Close Togethr"の面々に加え、あのGene Taylor(p)が加わっています。

 Doug亡きあと、未発表音源の発掘に期待し続ける日々ですが、こういったゲスト参加での限られた既発音源、とりわけボーカル参加曲は、やはり貴重です。
 (Dougは99年に天に召されたので、本曲の録音時期は不明ですが、晩年の収録と言っていいと思います。)

 というわけで、私がこの盤に愛着を持ち、よく確かめずにふらふらとダブリ買いしてしまった理由は、Doug Sahm参加盤で、しかも彼の声が聴けるからです。
 (まあ、だからこそ「きっと持っているはず、もっとよく探せ」、と今は自分自身に言いたいです。) 

 さて、くだんの"Too Late"のオリジナルは、Tarheel SlimとLittle Anneによるデュエツト曲で、Fireのレーベル・コンピなどで比較的容易に聴くことができます。
 今は、さわりだけなら、アマゾンのMP3で手軽に試聴出来るので便利ですね。
 余談ですが、私は、ターヒールという名前の響きが、以前から好きです。
 名前だけ聞いていると、あたかも戦前のブルースマンかのようなイメージを持ってしまいます。

 この男女デュエット曲、Doug、Angelaのどちらが選曲したのでしょう。
 Angelaの声はLittle Annほどの個性を感じませんが、私にとっては、Dougの声が聴けるだけで幸せです。
 今夜は、この盤のこのトラックを繰り返して聴いて、しばしば不定期に発症する、Doug Sahm欠乏症の頓服としたいです。
 薬効は、レア曲であるほど効き目が強いのでした。

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 さて、これで終わりでもいいのですが、その他の曲についても軽く触れたいと思います。

 まず、基本のバンドですが、バンマスのギター、Mike Schermerが地味ながら好プレイで全体の演奏をリードしています。
 マイク・シャーマーさんは、マイティ・マイクの二つ名を持つ、スタジオのエースで、多くのブルース、ソウル系のミュージシャンの録音でギターを弾いてる人です。
 また、自身のバンドを率い、メイン・アーティストのツアー・サポートをしたりもしています。

 私がまず注目したのは、"Cut You Loose"、"A Stand By Your Woman Man"、そしてアルバム・タイトル曲"Deja Blue"へと続く冒頭の3曲でした。

 "Cut You Loose"は、かっこいいテキサス・シャッフルで、線の細いレイ・ヴォーンなんて言葉が浮かびます。
 曲は、Ricky Allenというよく知らない人がオリジナルのようですが、作者のMel Londonは、マディ、ウルフ、エルモアなど、そうそうたる偉人に曲を書いている人です。
 マディの"Manish Boy"には、作者として、エラス・マクダニエル(ボ・ディドリー)、マディに加え、なぜか(?)このMel Londonの名前がクレジットされています。
 Londonの作品で、今の気分で私が好きなのは、Junior Wellsの"Messin with The Kid"です。

 そして、シャッフル・ブルースの後を受けるのが、ブルージー・バラードの"A Stand By Your Woman Man"です。
 がらっと曲調の変わる、このアルバムの流れが良いです。
 曲は、Angelaのオリジナルですが、タイトルが有名なタミー・ワイネットのカントリー・ヒット、"Stand By Your Man"を連想せずにはいられません。

 そんな中、真っ先に注目してしまうのは伴奏のアレンジで、とりわけ出だしのギターの退廃的なトーンに耳が惹きつけられます。
 これは、私の耳には、まるでAl Greenの"Love And Happiness"のイントロのデフォルメみたいに聴こえます。
 (私のまぶたの裏には、スロウにチークする男女の姿が映っています。)
 
 そして、"Deja Blue"です。
 再びレイ・ヴォーンを連想せずにはいられないファスト・ナンバーです。
 ここでは、マイティ・マイクがかなり弾きまくっていて本領発揮という感じです。

 その他、マイクのオブリガードを中心としたプレイが、メインのアンジェラを盛り立てていて、派手さこそありませんが、気持ちいい響きのブルース、ソウル風味の曲が楽しめる好盤だと思います。
 
 ちなみに、トラック7の"Still A Fool"には、Marcia Ball、Lou An Bartonの二人がボーカルで参加していて、特にルー・アンの声が、相変わらず魅力的です。



A Stand By Your Woman Manをどうぞ
(ただし、ライヴ音源です)




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マイティ・マイク 1st set

おまけ
曲に歴史あり、ケパソ物語
   
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