2014年10月06日
ロック、スウェディッシュ・ロール
当ブログを再開してから、なぜかスカンジナビア半島関連のバンドをよく取り上げています。
ですが、他意はありません。
まったくその通りなのですが、結果的に今回もまた、スウェーデンのバンドをチョイスしちゃいました。
かなり以前に、一度取り上げた、こちらのバンドです。
1. Letter To My Baby (Sten Asberg, Peter Nilsson, Christer Nordahl, Anders Larsson)
2. Hey Pretty Baby (Sten Asberg, Peter Nilsson, Christer Nordahl, Anders Larsson)
3. You Broke Another Heart (Sten Asberg, Peter Nilsson, Christer Nordahl, Anders Larsson)
4. I'll Keep On Lovin You (Billy Barton)
5. Hurricane (Steve Bloomfield)
6. Mary Ann (Sten Asberg, Peter Nilsson, Christer Nordahl, Anders Larsson)
7. Don't You Lie To Me (Hudson Whittaker)
8. You Went Away And Left Me (Sten Asberg, Peter Nilsson, Christer Nordahl, Anders Larsson)
9. Deep In The Heart of Texas (Geraint Watkins)
10. House of Blue Lights (Freddie Slack, Don Raye)
11. Jill (Sten Asberg)
12. Susie's House (Danny Wolfe)
13. True Love (Kim Wilson)
本作は、本年14年にリリースされたもので、彼らの最新作になります。
まずは、いつものとおり、バンドのメンバー構成をおさらいします。
Sten Asberg : guitar, vocals
Christer Nordahl : double bass
Anders Larsson : piano
Peter Nilsson : drums, backup vocals
ギター1本で、ピアノが加わった4人編成のバンドです。
ベースがコントラバスで、ネオロカをイメージします。
実際、バンド結成時は、ロカビリー・バンドだったんだろうと思われます。
ギター、リード・ボーカルのSten Asbergが、バンド名にあるSimon Crashlyだと思われます。
(ステージ名の由来は不明です。)
今作でやっているスタイルは、乱暴にざっくりと書いてしまうと、ロカビリーとビート・バンドです。
もう少し言えば、ネオ・ロカビリーとロックパイルのようなロックンロールに大別できます。
このへんは、個人の印象ですので、異論はあるかと思います。
以前に取り上げた過去作では、ロックパイルのことを歌った曲、"Tribute To Rockpile"をやっていた嬉しいバンドです。
RockpileやDr. Feelgoodって、北欧ツアーとかやって、大いに受け入れられたんでしょうね。
地元のバンドに影響を与えて、しっかりと芽吹いているように感じます。
卵が先かニワトリが先かなんて話じゃないですが、R&Bを好む下地があったのも確かでしょう。
スウェーデンって、昔から米国の古い音楽が好まれていて、例えば、本国はもちろん(?)、英国でも手を付けていなかった頃から、スウェーデンでは、ジャンプ・ブルースのリイシューがいち早く出ていて、私はお世話になったものでした。
また、スウェーデンとフィンランドは、文化交流が密になる歴史的必然があったため、フィンランドも似たような状況となったのでは、と推察します。
なぜ、ここでフィンランドのことを持ち出したかと言いますと、Doctor's Orderのことが頭に浮かんだからです。
その点、同じ隣国でも、デンマークやノルウェーはどうなんでしょう?
日本への情報が少ないこともありますが、「?」ですね。
(ところで、唐突かつ全くの余談ですが、最近、マルティン・ベック・シリーズ(スウェーデンを代表する警察小説)の一部が、電子書籍化されました。
当該の紙の本が書店から消えて久しい中、古くからのファンとしては、大変嬉しいです。
紙の本と電子書籍の関係は、かつてのLPとCDというより、もはやCDと音楽ダウンロードとの関係に似て、興味深いです。)
閑話休題
さて、何曲か気になった曲をご紹介します。
冒頭の2曲は、ロカビリー系の曲です。
いずれもオリジナルですが、2曲目の"Hey Pretty Baby"は、イントロこそRockpile風で始まりますが、スラッピングもオン気味の、ネオロカ風味で進行するゴキゲンなナンバーになっています。
対して、3曲目の"You Broke Another Heart"、8曲目の"You Went Away And Left Me"あたりは、ロックパイル系のロックンロールです。
乾いたサウンドにのせた、軽めのビート・バンド・スタイルが良いです。
そして、しばしば、サウンドの方向性まで決定するかのような、躍動的なピアノのプレイにも心が惹かれます。
10曲目の"House Of Blue Lights"では、ギターよりも、よく転がるピアノの古いスタイルが目立っていて、ブギの楽しさ満載という感じです。
こちらは、カバー曲でしたが、本作には、他にもカバーがあります。
中でも注目は、5曲目の"Hurricane"です。
作者名でピンときた人は、私のお友達です。
ネオ・ロカビリーの少し前、ロックンロール、ロカビリー・リバイバル期のバンド、Matchboxの中心メンバー、Steve Bloomfieldが書いた曲で、もちろんマッチボックスがやっていた曲です。
曲としては、ヴィンテージ・ロカビリーのフォーマットから外れてはいますが、よく聴けば、ポール・バーリソンお得意の、Honey Hush風のギター・リックがしっかり入っている曲です。
これは、曲そのものの仕上がりよりも、その選曲センスに萌えました。
こういう1曲があるだけで、本盤への私の愛着はいや増すのでした。
7曲目の"Don't You Lie To Me"は、古いブルースのカバーです。
多くの人がやっている曲で、R&B、ロックンロールでは、Fats Domino、Chuck Berryの名前をあげたいです。
作者のハドソン・ウィッテイカーは、タンパ・レッドのことですね。
このバンドは、オリジナル曲に有名曲と同じタイトルを付けるくせがあるため、普通にカバーというだけで軽い驚きだったりします。
9曲目の"Deep In The Heart of Texas"は、伝承曲の方ではなく、何とGerant Watkinsの作品で、Rockpile解散後のDave Edmundsが、"DE7th"でやっていた曲です。
つべを検索すると、Refreshmentsのメンバーをバックに、この曲を歌うワトキンス本人の動画があって驚きました。
パブ・ロック勢と北欧って、思っていた以上につながりがあるんですね。
そして、ラストの"True Love"は、Kim Wilsonが書いた曲で、T-Birdsが、あのアルバム出世作"Tuff Enuff"でやっていた曲です。
渋い選曲だと言いたいです。
はっきりいって、どんな曲だったのか覚えていませんでしたが、この機会にT-Birdsのオリジナルと併せて聴きました。
同盤でのDave Edmundsのプロデュースは、平凡な曲に魔法を掛け、魅力的にしていると改めて感じます。
本盤は、ベテランらしく気負いのない、余裕さえ感じさせるサウンドが、安心して聴ける作品だと思います。
関連記事はこちら
Simon Crashly
ロックパイルが北欧に残した芽
ですが、他意はありません。
まったくその通りなのですが、結果的に今回もまた、スウェーデンのバンドをチョイスしちゃいました。
かなり以前に、一度取り上げた、こちらのバンドです。
It's Only Rock'n'Roll
Simon Crashly
and the Roadmasters
Simon Crashly
and the Roadmasters
1. Letter To My Baby (Sten Asberg, Peter Nilsson, Christer Nordahl, Anders Larsson)
2. Hey Pretty Baby (Sten Asberg, Peter Nilsson, Christer Nordahl, Anders Larsson)
3. You Broke Another Heart (Sten Asberg, Peter Nilsson, Christer Nordahl, Anders Larsson)
4. I'll Keep On Lovin You (Billy Barton)
5. Hurricane (Steve Bloomfield)
6. Mary Ann (Sten Asberg, Peter Nilsson, Christer Nordahl, Anders Larsson)
7. Don't You Lie To Me (Hudson Whittaker)
8. You Went Away And Left Me (Sten Asberg, Peter Nilsson, Christer Nordahl, Anders Larsson)
9. Deep In The Heart of Texas (Geraint Watkins)
10. House of Blue Lights (Freddie Slack, Don Raye)
11. Jill (Sten Asberg)
12. Susie's House (Danny Wolfe)
13. True Love (Kim Wilson)
本作は、本年14年にリリースされたもので、彼らの最新作になります。
まずは、いつものとおり、バンドのメンバー構成をおさらいします。
Sten Asberg : guitar, vocals
Christer Nordahl : double bass
Anders Larsson : piano
Peter Nilsson : drums, backup vocals
ギター1本で、ピアノが加わった4人編成のバンドです。
ベースがコントラバスで、ネオロカをイメージします。
実際、バンド結成時は、ロカビリー・バンドだったんだろうと思われます。
ギター、リード・ボーカルのSten Asbergが、バンド名にあるSimon Crashlyだと思われます。
(ステージ名の由来は不明です。)
今作でやっているスタイルは、乱暴にざっくりと書いてしまうと、ロカビリーとビート・バンドです。
もう少し言えば、ネオ・ロカビリーとロックパイルのようなロックンロールに大別できます。
このへんは、個人の印象ですので、異論はあるかと思います。
以前に取り上げた過去作では、ロックパイルのことを歌った曲、"Tribute To Rockpile"をやっていた嬉しいバンドです。
RockpileやDr. Feelgoodって、北欧ツアーとかやって、大いに受け入れられたんでしょうね。
地元のバンドに影響を与えて、しっかりと芽吹いているように感じます。
卵が先かニワトリが先かなんて話じゃないですが、R&Bを好む下地があったのも確かでしょう。
スウェーデンって、昔から米国の古い音楽が好まれていて、例えば、本国はもちろん(?)、英国でも手を付けていなかった頃から、スウェーデンでは、ジャンプ・ブルースのリイシューがいち早く出ていて、私はお世話になったものでした。
また、スウェーデンとフィンランドは、文化交流が密になる歴史的必然があったため、フィンランドも似たような状況となったのでは、と推察します。
なぜ、ここでフィンランドのことを持ち出したかと言いますと、Doctor's Orderのことが頭に浮かんだからです。
その点、同じ隣国でも、デンマークやノルウェーはどうなんでしょう?
日本への情報が少ないこともありますが、「?」ですね。
(ところで、唐突かつ全くの余談ですが、最近、マルティン・ベック・シリーズ(スウェーデンを代表する警察小説)の一部が、電子書籍化されました。
当該の紙の本が書店から消えて久しい中、古くからのファンとしては、大変嬉しいです。
紙の本と電子書籍の関係は、かつてのLPとCDというより、もはやCDと音楽ダウンロードとの関係に似て、興味深いです。)
閑話休題
さて、何曲か気になった曲をご紹介します。
冒頭の2曲は、ロカビリー系の曲です。
いずれもオリジナルですが、2曲目の"Hey Pretty Baby"は、イントロこそRockpile風で始まりますが、スラッピングもオン気味の、ネオロカ風味で進行するゴキゲンなナンバーになっています。
対して、3曲目の"You Broke Another Heart"、8曲目の"You Went Away And Left Me"あたりは、ロックパイル系のロックンロールです。
乾いたサウンドにのせた、軽めのビート・バンド・スタイルが良いです。
そして、しばしば、サウンドの方向性まで決定するかのような、躍動的なピアノのプレイにも心が惹かれます。
10曲目の"House Of Blue Lights"では、ギターよりも、よく転がるピアノの古いスタイルが目立っていて、ブギの楽しさ満載という感じです。
こちらは、カバー曲でしたが、本作には、他にもカバーがあります。
中でも注目は、5曲目の"Hurricane"です。
作者名でピンときた人は、私のお友達です。
ネオ・ロカビリーの少し前、ロックンロール、ロカビリー・リバイバル期のバンド、Matchboxの中心メンバー、Steve Bloomfieldが書いた曲で、もちろんマッチボックスがやっていた曲です。
曲としては、ヴィンテージ・ロカビリーのフォーマットから外れてはいますが、よく聴けば、ポール・バーリソンお得意の、Honey Hush風のギター・リックがしっかり入っている曲です。
これは、曲そのものの仕上がりよりも、その選曲センスに萌えました。
こういう1曲があるだけで、本盤への私の愛着はいや増すのでした。
7曲目の"Don't You Lie To Me"は、古いブルースのカバーです。
多くの人がやっている曲で、R&B、ロックンロールでは、Fats Domino、Chuck Berryの名前をあげたいです。
作者のハドソン・ウィッテイカーは、タンパ・レッドのことですね。
このバンドは、オリジナル曲に有名曲と同じタイトルを付けるくせがあるため、普通にカバーというだけで軽い驚きだったりします。
9曲目の"Deep In The Heart of Texas"は、伝承曲の方ではなく、何とGerant Watkinsの作品で、Rockpile解散後のDave Edmundsが、"DE7th"でやっていた曲です。
つべを検索すると、Refreshmentsのメンバーをバックに、この曲を歌うワトキンス本人の動画があって驚きました。
パブ・ロック勢と北欧って、思っていた以上につながりがあるんですね。
そして、ラストの"True Love"は、Kim Wilsonが書いた曲で、T-Birdsが、あのアルバム出世作"Tuff Enuff"でやっていた曲です。
渋い選曲だと言いたいです。
はっきりいって、どんな曲だったのか覚えていませんでしたが、この機会にT-Birdsのオリジナルと併せて聴きました。
同盤でのDave Edmundsのプロデュースは、平凡な曲に魔法を掛け、魅力的にしていると改めて感じます。
本盤は、ベテランらしく気負いのない、余裕さえ感じさせるサウンドが、安心して聴ける作品だと思います。
Hey Pretty Babyです。
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Simon Crashly
ロックパイルが北欧に残した芽
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