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ママのホーム・オブ・ブルース

 今回も前回の流れを受け、「最近、ダブリ買いをしてしまったCD」を取り上げます。
 こうしてテーマを決めてのぞめば、「CDのチョイスにさほど悩まなくていい」ということもあります。
 でも、それだけでなく、結果的にダブリ買いをしてしまったということは、その音楽に強い関心があるということでもあり、取り上げる価値は充分以上にあるのでした。

angela strehli1.jpg

Deja Blue
Angela Strehli

1. Cut You Loose (M. London)
2. A Stand By Your Woman Man (Angela Strehli)
3. Deja Blue (Angela Strehli, Mike Schermer, Joe Kubek)
4. A Man I Can Love (angela Strehli)
5. Boogie Like You Wanna (Charlie Bradix)
6. Give Me Love (Angela Srehli)
7. Still A Fool (Angela Strehli) with Lou Ann Barton, Marcia Ball (vocals)
8. Close Together (Jimmy Reed)
9. Hey, Miss Tonya (Angela Strehli)
10. Too Late (Tarheel Slim & Little Anne) with Doug Sahm (vocals)
11. Where The Sun Never Goes Down (Willie Mae Williams)

 
 今回は、テキサスのブルース・ウーマン、Angela Strehliの98年作、"Deja Blue"です。

 本作には、Doug Sahmが2曲でゲスト参加しています。
 トラック8の"Close Together"では、Dougはギターを弾き、いつものDoug Sahmシンジケートのメンツたち、Jack Barber(bass)、George Rains(drums)のほか、ブルース・クラブ・アントンズのハウス・ミュージシャンで、Dougとも親交の深いDerek O'Brien(gt)が録音に参加しています。

 そしてもう1曲が、トラック10の"Too Late" (元曲の表記は"It's Too Late")で、ほとんどDougメインという感じでAngelaとデュエットしています。
 録音メンツでは、"Close Togethr"の面々に加え、あのGene Taylor(p)が加わっています。

 Doug亡きあと、未発表音源の発掘に期待し続ける日々ですが、こういったゲスト参加での限られた既発音源、とりわけボーカル参加曲は、やはり貴重です。
 (Dougは99年に天に召されたので、本曲の録音時期は不明ですが、晩年の収録と言っていいと思います。)

 というわけで、私がこの盤に愛着を持ち、よく確かめずにふらふらとダブリ買いしてしまった理由は、Doug Sahm参加盤で、しかも彼の声が聴けるからです。
 (まあ、だからこそ「きっと持っているはず、もっとよく探せ」、と今は自分自身に言いたいです。) 

 さて、くだんの"Too Late"のオリジナルは、Tarheel SlimとLittle Anneによるデュエツト曲で、Fireのレーベル・コンピなどで比較的容易に聴くことができます。
 今は、さわりだけなら、アマゾンのMP3で手軽に試聴出来るので便利ですね。
 余談ですが、私は、ターヒールという名前の響きが、以前から好きです。
 名前だけ聞いていると、あたかも戦前のブルースマンかのようなイメージを持ってしまいます。

 この男女デュエット曲、Doug、Angelaのどちらが選曲したのでしょう。
 Angelaの声はLittle Annほどの個性を感じませんが、私にとっては、Dougの声が聴けるだけで幸せです。
 今夜は、この盤のこのトラックを繰り返して聴いて、しばしば不定期に発症する、Doug Sahm欠乏症の頓服としたいです。
 薬効は、レア曲であるほど効き目が強いのでした。

angela strehli2.jpg


 さて、これで終わりでもいいのですが、その他の曲についても軽く触れたいと思います。

 まず、基本のバンドですが、バンマスのギター、Mike Schermerが地味ながら好プレイで全体の演奏をリードしています。
 マイク・シャーマーさんは、マイティ・マイクの二つ名を持つ、スタジオのエースで、多くのブルース、ソウル系のミュージシャンの録音でギターを弾いてる人です。
 また、自身のバンドを率い、メイン・アーティストのツアー・サポートをしたりもしています。

 私がまず注目したのは、"Cut You Loose"、"A Stand By Your Woman Man"、そしてアルバム・タイトル曲"Deja Blue"へと続く冒頭の3曲でした。

 "Cut You Loose"は、かっこいいテキサス・シャッフルで、線の細いレイ・ヴォーンなんて言葉が浮かびます。
 曲は、Ricky Allenというよく知らない人がオリジナルのようですが、作者のMel Londonは、マディ、ウルフ、エルモアなど、そうそうたる偉人に曲を書いている人です。
 マディの"Manish Boy"には、作者として、エラス・マクダニエル(ボ・ディドリー)、マディに加え、なぜか(?)このMel Londonの名前がクレジットされています。
 Londonの作品で、今の気分で私が好きなのは、Junior Wellsの"Messin with The Kid"です。

 そして、シャッフル・ブルースの後を受けるのが、ブルージー・バラードの"A Stand By Your Woman Man"です。
 がらっと曲調の変わる、このアルバムの流れが良いです。
 曲は、Angelaのオリジナルですが、タイトルが有名なタミー・ワイネットのカントリー・ヒット、"Stand By Your Man"を連想せずにはいられません。

 そんな中、真っ先に注目してしまうのは伴奏のアレンジで、とりわけ出だしのギターの退廃的なトーンに耳が惹きつけられます。
 これは、私の耳には、まるでAl Greenの"Love And Happiness"のイントロのデフォルメみたいに聴こえます。
 (私のまぶたの裏には、スロウにチークする男女の姿が映っています。)
 
 そして、"Deja Blue"です。
 再びレイ・ヴォーンを連想せずにはいられないファスト・ナンバーです。
 ここでは、マイティ・マイクがかなり弾きまくっていて本領発揮という感じです。

 その他、マイクのオブリガードを中心としたプレイが、メインのアンジェラを盛り立てていて、派手さこそありませんが、気持ちいい響きのブルース、ソウル風味の曲が楽しめる好盤だと思います。
 
 ちなみに、トラック7の"Still A Fool"には、Marcia Ball、Lou An Bartonの二人がボーカルで参加していて、特にルー・アンの声が、相変わらず魅力的です。



A Stand By Your Woman Manをどうぞ
(ただし、ライヴ音源です)




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Mike Schermer
マイティ・マイク
マイティ・マイク 1st set

おまけ
曲に歴史あり、ケパソ物語

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