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昔は「Trados さん、頑張って!」とお祈りしながら訳文生成していませんでしたか? 今も、たまにそんな気分になるときがあります。Trados って本当にわからないことばかりです。特に、日本語の情報は少ないですよね。いくら翻訳者とはいえ、日本語の情報が欲しいのです。Trados ユーザーの方々といろいろ情報交換できたらと思っています。




2018年12月20日

Starter エディションって仕事に使える?

先日、翻訳の仕事をこれから始めようかと考えている知人に「Trados の Starter エディションって仕事に使える?」と聞かれました。その知人は、まだ継続的な仕事が確定しているわけではないので値段の高い Trados は買いたくないが、Trados を使う仕事もやってみたいということのようでした。

私自身は Starter エディションを使ったことがなく、細かいことがわからなかったのでちょっと調べてみました。

Starter エディションは年単位契約できるライセンスで、1年間で 10,000円ほどです。ただし、いろいろな制約があります。正式な情報は以下を参考にしてください。

エディション比較表
    https://www.sdltrados.com/jp/products/trados-studio/editions-comparison.html

よくある質問
    https://www.sdltrados.com/jp/products/trados-studio/starter/faqs.html


が、正直に言って、上記のページを見てもどうもよくわかりません。大まかな特徴としては、

・パッケージをもらって作業することはできる。
・パッケージ以外では、単一のファイルと単一のメモリのみ可能。


という感じですが、いろいろ疑問が残ったので、コミュニティに質問してみました。かなり丁寧な回答 (こちらを参照) があり、だいたい理解できました。

で、結局「Starter エディションって仕事に使える?」という質問への回答としては、「なんとか、使えそう」という感じです (ちょっと弱気だけど)。以下、実際の仕事で問題になりそうと思われる点です。ご参考までに。


パッケージなら、複数のメモリも、大きなメモリも使える


上記の比較表などには「複数メモリを同時に開けない」、「メモリの件数に制限がある」と書いてありますが、それらはパッケージ以外で作業する場合の制限です。こうした制限は、翻訳会社からパッケージを受け取って作業するときは関係ありません。実際の仕事で受け取るパッケージでは、複数のメモリが存在することも、メモリが巨大なこともよくありますが、パッケージとして受け取っている限り、問題なく作業できるようです。


アプリを使えば、メモリのアップグレードもできる


上記の比較表では「メモリのアップグレードができない」ことになっています。翻訳会社の使っている Trados のバージョンによっては翻訳者側でアップグレードが必要になるので、これは致命的かなと思っていました。(メモリのアップグレードについては、こちらの記事「メモリを 2017 SR1 用にアップグレードする」をご参照ください。)

ところが、コミュニティに質問したところ、Trados 本体ではアップグレードできないが、アプリを使えば可能、ということでした。使用するアプリは TM Lifting です。すみません、私はこのアプリを試していませんが、SDL の方の推奨ですし、SDL Community Developers さん提供のアプリなので、きっと大丈夫でしょう!?


※※※ 追記 2019/01/16 ※※※
この記事を書いていたときはまったく気付いていなかったのですが、SDL の公式ブログに既にぴったりな記事がありました。2017年の日付なので、相当前からあったということですね。見落としてましたぁ。すみません (_ _)

SDL Trados Studio Starterライセンスと翻訳メモリの互換性
https://jp.blog.sdltrados.com/upgrade-translation-memories-uplift-trados-starter/


詳しい手順も書かれているので、参考にしてください。
※※※※※※※※※※※※※※



訳文の生成やファイルの解析もできる


上記の比較表の表記では、「完全一括タスク機能」が「」となっています。これに私は悩みましたぁ (;。;) 「完全一括タスク」という機能でもあるのかと思ったら、そうではなく、「たくさんある一括タスクのうち、いくつかは実行できない」という部分否定でした。ちなみに英語では「Full batch task functionality」となっているので、「Batch task functionality が full ではない」ということでした。

で、これもコミュニティに確認したら、かなり多くの一括タスクが実行できることがわかりました。私が翻訳者としてどうしても欲しいと思っていたのは、訳文を確認するための「訳文の生成」と、ワード数を確認するための「ファイルの解析」だったのですが、この 2 つは実行可能とのことでした。このほかにも、「ファイルのエクスポート」や「外部レビュー用にエクスポート」も実行できるので、そんなに困ることはなさそうです。


パッケージにメモリを追加することはできない


Starter エディションで最も問題となるのは、この点かなと思います。パッケージを受け取って作成したプロジェクトに自分でメモリを追加することはできないそうです。更新用のメモリがきちんと設定してあるパッケージだったら問題ありませんが、そんな翻訳会社さんばかりではありません。自分の訳文の保存用にメモリを追加できないのは、少々やりにくい気がします。 (自分の訳文の保存についての詳細は、こちらの記事「提供された訳文と自分の訳文を区別する ー @ メモリを分ける」をご参照ください。)

また、たまにですが、作業を始めた後で「やっぱり、このメモリも参照して」とメモリだけ渡されることがあります。そのような場合も、自分でメモリを追加できないと困ることになりそうです。


以上です。今回調べたところでは、Starter エディションの機能は私の予想以上でした。ただ、本来の便利な機能はやはり制限されているので、「Starter」という名前ではありますが、これから始めようと考えている人には向かないかなぁと思います。逆に「もう今回限りしか使わない」という人だったらいいのかもと思いました。



   



この前には 2019 の SR1 も出たし、最近 SDL からの日本語での情報発信も増えてる感じだし、いろいろ試してみたいとは思いつつ、自分の Trados は恐ろしく遅くなるし、よく落ちるし、しかも、このところの仕事は変なファイルで割に合わないものばかりだし、なんだかいろいろ行き詰まってます (T-T)

2018年11月17日

【後編】フラグメント一致に関する設定

前編に引き続き、フラグメント一致 (upLIFT テクノロジー) に関する設定をまとめていきたいと思います。今回の後編では、[ファイル] > [オプション] から行う設定と、メモリの設定を紹介します。

どちらも、デフォルトのままでそれなりに機能するので、あまり興味のない方は今回の記事は読み飛ばしてください。

33_1_1_1_1_1_2.PNG


[ファイル] > [オプション] の設定:
[エディタ] > [フラグメント一致ウィンドウ]


エディタで作業しているときに、「フラグメント一致ウィンドウ」を自動で前面に持ってくるかどうかの設定です。デフォルトでオンです。

32-4.png


デフォルトのレイアウトでは、下図のように「フラグメント一致ウィンドウ」はタブになっており、「翻訳結果」や「訳語検索」のウィンドウに隠れています。このために、前面に持ってくるかどうかの設定が用意されているようです。


33_2.PNG


エディタのレイアウトは変更できるので、この設定にかかわらず、下図のように「フラグメント一致ウィンドウ」を独立した 1 つのウィンドウとして常に表示されるところに移動しておくと便利です。


33_3.PNG


設定の名称に「TM の検索結果が 0 件の場合に」とあるように、通常のあいまい一致がヒットしてくると、この設定をオンにしていても「フラグメント一致ウィンドウ」は前面に出てきてくれず、フラグメント一致をすぐに見ることはできません。常に表示されるところにウィンドウを移動しておけば、あいまい一致がヒットしてもフラグメント一致を見ることができます。

なお、あいまい一致ではなく、100% 一致がヒットした場合は、フラグメント一致の検索自体が行われません。100% 一致があってもフラグメント一致は表示して欲しいなぁと私は思うのですが、そういう仕様ではないようです。


[ファイル] > [オプション] の設定:
[AutoSuggest] > [AutoSuggest のプロバイダ]


AutoSuggest にフラグメント一致の検索結果を表示するかどうかの設定です。デフォルトでオンです。フラグメント一致の検索結果は AutoSuggest から使用するのが最も便利だと思いますので、オンにしておくことをお勧めします。


32-2.png


プロバイダの選択肢には [翻訳メモリと自動翻訳] もあります。これはフラグメント一致の登場より前からありますが、これをオンにすると表示される候補がかなり多くなります。私は、[フラグメント一致] をオンにし、[翻訳メモリと自動翻訳] はオフにしています。


メモリの設定:
対象メモリの [設定] > [フラグメント整合]


以下はメモリの設定ですが、おそらく、ほとんど気にする必要はありません。というか、難しすぎてよくわかりません (^_^;)


32-1.png


プロジェクトの設定から、[言語ペア] > [翻訳メモリと自動翻訳] で対象の翻訳メモリを選択し、[設定] をクリックします。左の一覧から [フラグメント整合] を選択すると、右側でいろいろ細かい設定ができます。

私は、一番上の [フラグメント整合ステータス] という項目が、フラグメント一致の機能自体の有効無効を切り替える設定なのでは?と思ったのですが、そういうわけではありませんでした。ここが「オフ」でもフラグメント一致は有効に機能します。この設定は、UI の文言に「以前に翻訳した分節」とあるように、既にメモリに入っているデータをどうするかの設定のようです。

・新規のメモリや小さいメモリのときは「オフ」に設定されていて、「オン」はグレーアウトされている。
   ↓
つまり、変更できない。

・大きいメモリのときは「オン」に設定されているが、「オフ」に変更することも可能。
   ↓
「オフ」にすると、メモリが変更され、変更後のメモリにはアップグレードが必要という警告マークが表示されてしまう。
   ↓
そのままだと検索でヒットしないので、メモリをアップグレードする。
   ↓
アップグレードが終わると、この設定は自動的に「オン」に戻る。
   ↓
つまり、結局は変更できない。

実は、フラグメント一致の機能そのものの有効無効を切り替える設定があるのではないかと思って探していたのですが、そのような設定は見あたりませんでした。バージョン 2017 (日本語原語の場合は 2017 SR1) のメモリであれば、フラグメント一致は必ず有効になり、これを無効にすることはできないようです。

今回は以上です。いろいろ書きましたが、結局のところ、あまりデフォルトの設定を変える必要はないのかもしれません。(なんか、最後にこんなまとめですみません。) 私は、日⇒英の場合、AutoSuggest を有効にして、そこからフラグメント一致の結果を使うようにしています。英⇒日のときは、AutoSuggest を無効にすることが多いので、検索結果を入力するのは少し面倒です。まあ、毎回毎回、訳語検索するよりはいいかなぁ、という程度です。



     



2018年10月23日

【前編】フラグメント一致に関する設定

SDL Trados Studio 2017 から「フラグメント一致」という言葉をよく聞くようになったと思います。私にとってはまだまだ不慣れな機能なので、今回はこれに関する各種設定を自分の備忘録も兼ねてまとめてみました。(後編の記事はこちらへ)

「フラグメント一致」は「upLIFT テクノロジー」によって実現される機能の 1 つです。upLIFT テクノロジーでは、フラグメント一致だけでなく「あいまい一致の自動修正」という機能も実現されています。upLIFT テクノロジーとは、簡単に言えば、分節の中の単語 (フラグメント) レベルで一致を見つけてくれるテクノロジーのようです。この記事のタイトルはわかりやくするため「フラグメント一致」としましたが、記事の内容は、フラグメント一致に限らず、upLIFT テクノロジーが関係する各種設定ということで進めたいと思います。

upLift テクノロジーについては、以前の記事「「2017 SR1 アップグレード セミナー」に参加してみました」で少し紹介しました。詳細については、SDL の公式ブログ「SDL Trados Studio 2017 SR1におけるupLIFTの日本語対応と解析結果の差異について」が参考になります。

注記:今回の説明に使っている Trados は、バージョン 2017 SR1 (正確には、2017 SR1 14.1.10012.29730) です。最新の 2019 では一部変わっているところがあるようです。


upLIFT テクノロジーが関係する機能の設定を以下の表にまとめました (私が見つけられた限りです。ほかにもありましたら、ぜひご意見ください)。今回の前編の記事では「プロジェクトの設定」を取り上げます。そのほかの設定は、次回の後編で紹介したいと思います。


33_1_1_1_1_1_2.PNG


プロジェクトの設定:
[言語ペア] > [翻訳メモリと自動翻訳] > [検索] > [upLIFT 用のフラグメント一致のオプション]


32-8.png


ここが、フラグメント一致の検索動作そのものに影響を与えるメインの設定です。[TU 全体] はチェックボックスになっていないので、有効無効を切り替えることはできません。つまり、「フラグメント一致」の機能そのものを無効にする設定はないようです。(私が探した限り、ありませんでした。)

[TU のフラグメント] は、分節全体ではなく、その中の一部だけ一致したものを表示するかどうかです。これは、デフォルトではオフですが、オンにした方がヒットが多くなります。また、単語数は、以前に SDL のセミナーで、日本語原文のときは「2」に設定するとよいと説明されました。

まず、[TU のフラグメント] チェックボックスをオンにすると、下図の右側のように赤色のマークの付いたヒットが表示されるようになります。これが「TU のフラグメント」です。一番上に表示されている青色のマークは、「スペース」という文字列だけの分節があることを意味しており「TU 全体」として表示されています。


32-6.png


さらに、単語数を変えると下図のようになります (ここでは、[一致の最小単語数] と [一致に含める最小重要単語数] の両方に同じ値を設定しました)。単語数を少なくした方がヒットが多くなります。「2」にすると、少し多すぎるようにも思えますが、「設定」という 2 文字の単語の訳語が表示されてきます。日本語の場合、漢字 2 文字の単語はよくあるのでちょっと便利かもしれません。


32-7.png


「単語数」の設定なのに文字数になってる??という疑問が湧いてはきますが、あまり深く考えないことにします。まずは「2」に設定してみる、ヒットが多すぎるようだったら「3」にしてみる、という感じで私は使っています。


プロジェクトの設定:
[言語ペア] > [一致の修正] > [Match Repair の使用] と [Match Repair ソース]


[Match Repair の使用] では、「あいまい一致の自動修正」の有効無効を切り替えます。デフォルトで [エディタ] のみオンになっています。つまり、エディタで普通に作業するときに、この機能が有効ということです。これが有効の場合、メモリの検索結果に、自動で修正が加えられた訳文が表示されてきます。修正が加えられているかどうかは、一致率のところに 32_900.png のようにスパナのアイコンがあることでわかります。

32-5.png

この「あいまい一致の自動修正」ですが、エディタで有効にしていると、エディタの動きが著しく遅くなることがあります。私の経験では、メモリがたまってきて自動修正がうまく機能するようになってきたかなぁ、とちょうど思う頃から検索結果がなかなか返ってこなくなり、耐えられなくなることが多いです。そのような場合は、以前の記事「Trados のエディタの動きが遅い!」でも紹介しましたが、この機能をオフにします。

同じページの下部には、[Match Repair ソース] という設定※2もあります。これは、修正の参考にするソースという意味だと思われます。翻訳メモリで機械翻訳を使用するように設定している場合に限り、有効無効を切り替えられます。私は、機械翻訳を使って仕事をすることがあまりないのですが、もし使える環境なら有効にした方がいいのかもしれないです。

※2 バージョン 2019 では、この設定のオプションが増えており、用語集についても有効無効を切り替えられるようです。


プロジェクトの設定:
[プロジェクト] > [原文がアジア言語の場合に単語単位のトークン化を使用する]


32-10.png


これは、文字数のカウント方法に関する設定で、メモリとの一致率に影響がでてきます。プロジェクトの設定の一番上にある [プロジェクト] から設定します。オフ (= 使用しない) にすると、upLIFT テクノロジーが有効であっても文字単位で一致率が計算されます。原語が日本語などのアジア言語のときにのみ考慮する必要のある設定で、原語が英語のときは無視できると思います。詳細は、SDL の公式ブログ「SDL Trados Studio 2017 SR1におけるupLIFTの日本語対応と解析結果の差異について」を参照してください。日英翻訳のとき、料金が文字ベースなら、ここはオフになっているべきです。

この設定は、以前に SDL のセミナーで「カウントに影響する」と説明された記憶があるので私はそのように理解していますが、UI の文言には「カウント」や「解析」といった言葉は一切入っておらず、カウントに影響するだけなのか、検索機能そのものに影響があるのか、実際にはよくわかりません。ただ、これまでの私の経験では、ここがオフでも、エディタでは普通に upLIFT テクノロジーが機能するように思います。


前編の今回は以上です。残りの設定は次の後編の記事で説明したいと思います。といっても、実は、デフォルトから変更する必要のある設定は、最初に説明した検索オプションの [TU のフラグメント] くらいです。後は、あまり気にせず、デフォルトのままでなんとなく適当に動くような気がします。




2018年10月14日

変更履歴は本当に必要?

私は翻訳作業がメインですが、レビューの仕事もたまに引き受けます。お値段的にはあまり魅力的な仕事ではないのですが、勉強だと思って作業しています。


31-0.png


さて、このレビュー作業のときは、たいていの翻訳会社が「変更履歴を残してください」と指示してきます。変更履歴を有効にする操作は簡単で、リボン上の [変更履歴の記録] をクリックするだけです。このボタンが上図のようにハイライトされている状態であれば、変更履歴が記録されます。バイリンガル ファイルを開くときに「翻訳用」ではなく「レビュー用」に開けばデフォルトで有効になります。また、パッケージがレビュー用にきちんと設定されていれば、おそらく、デフォルトで有効になると思います。

デフォルトで有効になるという Trados の動作からしても、変更履歴の使用はかなり一般的になっているようです。ただ、変更履歴を残すといろいろな機能やツールが使えなくなるので、私はいつも困ったなぁと思っていました。そんな中、ある翻訳会社さんが

  変更した箇所は後でツールで確認できるので、変更履歴を残さなくて結構です。

と言ってきてくれたのです。なんとすばらしい!! 変更履歴なしの方が断然作業しやすいのでとても助かりました。

具体的には、以下のような機能やツールが変更履歴に対応していません。ある程度の量のある文書では欠かせないものばかりです。

Trados 本体の機能


1) 複数の分節のコピー


31-1.png


上図のように、複数の分節をバーッと選択してコピーすると、変更履歴が認識されず、削除した文字列も含めてコピーされてしまいます。Trados のエディタではこれが最大の問題かもしれません。全体の訳文を一気にコピーして Word などの外部ツールに貼り付けるという操作ができないので、Trados 以外のツールでチェックをしたい場合に困ります。ちなみに、1 つの分節だけを選択してコピーすると、変更履歴は正常に認識され、変更後の文字列だけがコピーされてきます。


2) 用語集への登録 (Ctrl+F2 または Ctrl+Shift+F2)

原文と訳文でそれぞれ単語を選択してワンアクションで用語集に登録できる機能です。変更履歴は認識されず、削除した文字列も含めて登録されてしまいます。

レビューの段階で用語集への登録が必要になることあまりないのですが、この機能の使用が便利なケースがたまにあります。それは「不明 UI をリストアップしてください」などと指示されるケースです。こうした場合、コメント機能 (後述します) も便利ですが、ファイル名や分節番号などの付加情報が必要なければ、原語と訳語のペアをワンアクションで登録できる用語集の方が便利です。作業中はひたすら用語集に登録していき、作業後に、用語集を Excel に変換して納品します (用語集の変換については、また別の機会に)。

こうしたリストアップの作業、本来は翻訳の段階でやってくるべきかと思うのですが、翻訳者に指示しなかったのか、翻訳者が指示どおりに作業しなかったのか、どういう理由かはわかりませんが、レビュアーに回ってくることが少なくありません。(割に合いません!!)


3) 高度な表示フィルタ

5-1.png

これも、変更履歴は認識されず、削除した文字列も含めた文字列が検索対象となります。「高度な表示フィルタ」は、以前の記事で紹介した「タグの中の文字も検索できる」という動作から考えても、入力されている文字をそのまま検索しているようです。

なお、リボンの [レビュー] タブには「高度」ではない通常の「表示フィルタ」もあります。こちらは、変更履歴に対応しており、変更後の文字列で検索を行います。


4) 印刷プレビュー

31-3.png

変更履歴付きでしか表示できません。変更履歴であることは認識されているので、完全に対応していないわけではないのですが、やはり、変更後の最終版の表示が欲しいところです。



Trados のプラグイン


1) Comment View Plugin

コメントを Excel ファイルにエクスポートしてくれるプラグインです。とても便利なので私はよく使っていますが、変更履歴が認識されず、削除した文字列も含めてそのままの文字列が書き出されてしまいます。

上述の用語集と異なり、コメント機能ではファイル名と分節番号が自動的に記録されるので、翻訳会社さんに申し送り事項をまとめて提出するときなどはこの機能が便利です。が、使えないんですよね (>_<)


2) SegmentSearcher

検索機能のプラグインのひとつで、エディタ上で文字列を選択してショートカット キー (Alt+F10) を押すと、検索結果を別ウィンドウに一覧表示してくれます。別ウィンドウが表示されるので、エディタ上のカーソルは編集中の分節から移動することがなく、この単語は前にどう訳したかな?と思って調べるときにとても便利です。これも変更履歴を認識せず、削除した文字列も含めて検索されてしまいます。


外部ツール


1) Xbench

私の場合、この影響が最も大きいです。検索やチェックに多くの方が使っていると思います。最新バージョンは有料ですが V2.9 までは無料ということもあり、私はかなりお世話になっています (詳しい使い方などは、また別記事で紹介したいと思います)。ある程度のボリューム以上のプロジェクトでは、こうしたツールの使用が欠かせません。

どうしても Xbench を使いたいときは、変更履歴付きの sdlxliff ファイルをどこか別の場所にコピーした後で、変更履歴をすべて適用してしまいます。この変更履歴を適用した sdlxliff ファイルを Xbench に読み込み、Trados の方は、コピーしておいた変更履歴付きの sdlxliff ファイルに戻します。


2) QA Distiller

これもチェック ツールです。ある翻訳会社さんから指定されて使っていました。ただ、変更履歴付きでという指示がありながら、このツールでチェックをしてくださいと言われたことがあり、それはできませんが... と伝えると、変更履歴は残さなくてよいという指示に変わりました。やっぱり、ツールでのチェックの方が重要ですよね。


今回は以上です。変更履歴自体はとても便利な機能です。Trados も、メモリへの登録や検証機能など、メインの機能はほとんど対応しています。ただ、ただ、全体的にもう少しなんですね。外部ツールなどにも影響しないようになれば、完璧なんですが。難しいでしょうかねぇ。





2018年09月29日

ショートカット キーの設定

Trados では、いろいろなショートカット キーを設定できますが、この設定がなかなか一筋縄ではいきません。設定できなかったり、設定しても機能しなかったり、設定していないのに機能したり、とかなり不可解な動きをします。今回は、私が遭遇して少し困ってしまった現象を例に、ショートカット キーの設定方法を紹介したいと思います。

さて、その困った現象とは CapsLock キーです。最近、ATOK を使い始めたのですが、以前の記事で紹介したように、入力文字種を「半角英字」に変更するために CapsLock キーを単独で使う機会が増えました。で、Trados のエディタで

CapsLock キーを押すと「返却パッケージの作成」ダイアログボックスが表示されてくる

のです。ATOK の導入以前は CapsLock キーを単独で使うことがあまりなかったので、これまでこの現象に気付かなかったのだと思います。

(注記)
今回の現象は、Trados を古いバージョンからアップグレードし続けてきたことが原因なのかもしれません。バージョン 2017 を新規インストールした PC ではこんな現象は発生していないような気がします (すみません、ちょっといろいろ試していたら、記憶があいまいになってしまい確信はないのですが)。


いきなりダイアログボックスが表示されるという現象が何回か続いた後に、これは CapsLock キーが原因かもしれないと思い Google で検索してみました。すると、proz.com にぴったりな情報がありました!


30-1.png


何も設定されていないけど動くので、解決方法としては「使わないキーを設定する」ということのようです。まあ、Trados ならそんなこともあるよねぇとちょっと妙な納得をして、早速、ショートカット キーの設定画面を開きました。

ショートカット キーは、以下のように、[ファイル] > [オプション] の [ショートカット キー] で設定します。正直に言って、たくさんありすぎて、目的のものを探すのはひと苦労です。


30-2.PNG


根気よく探すしかありませんが、一応、以下の操作が可能です。

  • @ 場所を選ぶ

  • A アクション名で並べ変える

  • B 設定されているショートカット キーで並べ変える

左側に表示される「@ 場所」の一覧では、プロジェクト ビュー、ファイル ビュー、エディタ ビューなど、ショートカット キーを使う画面を選択できます。一番上の「ショートカット キー」を選択すると、すべてのショートカット キーが表示されます。

「A アクション名」と「B ショートカット キー」は、表の項目名をクリックすると並べ替えられます。「A アクション名」の並び順は、記号 > 数字 > ローマ字のアルファベット順 > カタカナとひらがなのあいうえお順 > 漢字の読み方のあいうえお順、という感じです。アクション名自体がわかりにくいので、並べ替えても探すのは難しいです。

  • C アクション名のヒントを表示

アクション名にマウス ポインターを合わせると、ヒントが表示されます。たとえば、下図のように、アクション名は単に「次へ」となっていても、ヒントには「次のコメントに移動」と表示されます。これで、アクションの内容がわかる場合もあります。


30-3.PNG


今回の proz.com の回答では親切に「プロジェクト」と書いてくれているので、左側の場所の一覧から「プロジェクト」を選択します。選択すると、右側に「返却パッケージの作成」というアクションが表示されるので、そこにショートカット キーを設定します。


30-4.PNG


これで今回の私の問題は解決したのですが、どうもすっきりしません。なぜこのショートカット キーが「プロジェクト」の中に??という疑問が残ります。私が CapsLock キーを押したのは、プロジェクト ビューではなく、エディタ ビューです。でも、「エディタ」の中には「返却パッケージの作成」アクションはありません。さらに、実は「返却パッケージの作成」アクションは「ファイル」の中にもあります。なので、全部を一覧表示する「ショートカット キー」の中には「返却パッケージの作成」アクションが 2 つあります。


30-5.PNG


2 つあることで、プロジェクト ビューとファイル ビューで別々のショートカット キーを設定できるという効果があります。このため、自分でショートカット キーを設定するときは、まずどこで使うのかを選択し、その後でアクションを探す必要があることになります。といっても、今回のように、「プロジェクト」のアクションが「エディタ」で動くということはあるようですが...


今回は、以上です。改めて記事にしてみると皆さんにとってそんなに有用な情報ではないような気もしてきました。ショートカット キーの設定が複雑なのは Trados に限った話でもありませんし。ただ、私がこの CapsLock キーの現象に遭遇したのは少し仕事が詰まっている時期で、かなりのストレスだったので、半分は愚痴のようなものですが記事にしてしまいました。最後までお付き合いくださり、ありがとうございました。



2018年09月21日

サーバー TM を使うときの注意点

最近、サーバー TM を使う案件が増えてきました。サーバー TM が登場してきた当初は、作業途中の訳文を登録することに抵抗があったり、信用できないメモリがあっても混乱するだけでは?と懐疑的だったりしたのですが、今ではだいぶ慣れてきてしまいました。自分の訳文はとりあえずでも登録しますし、ほかの人の訳文がヒットしてきたらラッキーと思って参考にします。(あくまで、参考ね。流用じゃないですよ。)

今回は、そんなサーバー TM を使うときの注意点を紹介したいと思います。

「100% 一致が見つかった場合でもあいまい一致を検索する」が効かない


以前の記事でパッケージを受け取ったときに変える設定として、翻訳メモリの検索オプションの「100% 一致が見つかった場合でもあいまい一致を検索する」を紹介しました。これはデフォルトでオフなので、私はパッケージを受け取った後、必ずオンに変更しています。設定は、[プロジェクトの設定] から以下のように行います。

[プロジェクトの設定] -> [言語ペア] -> [すべての言語ペア] -> [翻訳メモリと自動翻訳] -> [検索]

29_1.png


これをオンにしておくと、100% 一致があっても、ほかにあいまい一致があれば、そのあいまい一致も一緒に検索結果に表示されてきます。逆にこれがオフの場合、100% 一致が 1 つでも見つかると、ほかにどんなに 99% 一致があってもそれは検索結果に表示されてきません。この動作がなぜ困るかというと、自分が登録した訳文は、当然ながら必ず 100% 一致になるからです。つまり、自分がいったん訳文を登録してしまうと、ほかに似たような文がメモリにあってもそれは表示されてこないことになります。

多くの人が訳文を入力するサーバー TM では、このオプションがとても重要だと思うのですが、なんとこのオプションがサーバー TM には効かないのです! 上記の設定でチェックボックスをオンにしても、サーバー TM からはあいまい一致が表示されてきません。(ローカルのファイル共有タイプの TM からはあいまい一致が表示されてきます。)

一応、SDL の方でもこの問題は認識しているらしく、修正される予定ではあるようです。(コミュニティのこちらの質問を参照してください。)

ただ、これは、私たちの使っている Trados Studio の問題ではなく、サーバー側の GroupShare の問題らしいので、翻訳会社さんが GroupShare を更新してくれない限り修正はされないことになりそうです。(いつになることやら・・・)


TM に登録されるユーザー名


TM に登録されるユーザー名については、以前の記事「Trados で使われるユーザー名」と「Trados の設定を変えるには − [ファイル] と [プロジェクトの設定]」で取り上げました。

ローカル TM の場合、ユーザー名は特に気にしなくてもよいのですが、サーバー TM の場合は自分のユーザー名がほかの人に公開されてしまうので注意が必要です。翻訳会社によっては、使用するユーザー名を指定してくることがありますが、特に何も指示されないケースも多いので自分で気を付ける必要があります。

ユーザー名は、以下の 2 か所のいずれかで設定します。どちらで設定しても効果は同じです。

[ファイル] -> [設定] -> [ユーザー] の [TM ユーザー ID]

[プロジェクトの設定] -> [言語ペア] -> [すべての言語ペア] -> [一括処理] -> [翻訳メモリの更新] の
  [TM ユーザー ID]

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[プロジェクトの設定] で設定しても、プロジェクトごとの設定ではないので要注意です。同時期に複数のプロジェクトで作業していて、それぞれ違うサーバー TM に接続する場合は、毎回、手動でユーザー名を切り替える必要があります。切り替えを忘れると、他社さん用のユーザー名で訳文を登録してしまうことになり、とても困ります。私は、やってしまったことがあります (;。;)


サーバー TM はエクスポートできない


サーバー TM は、サーバー上にあるだけでローカルにエクスポートすることができません。おそらく、サーバー側で権限の設定があるのだと思いますが、エクスポートできないと、Xbench など Trados 以外のツールで検索することができません。Trados の検索機能だけでは少し不便なので、私は、普段 Xbench (無料版の 2.9) を使っていますが、そうしたことができなくなります。

このことは翻訳会社さんでも認識しているようで、たいてい、参照用の TM はファイル共有タイプで提供され、新たに訳文を入力する TM だけがサーバー TM として提供されます。MemoQ、Translation Workspace、Memsource など、ほかの CAT ツールはサーバー TM しかないケースが多いので、一部がローカルで使用できるだけでもよしとするしかないようです。


翻訳メモリ ビューで開くことはできる


どうしてもサーバー TM を検索したい場合は「翻訳メモリ ビュー」を使います。ここでは、サーバー TM もファイル共有タイプと同じように検索できます。


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たとえば、ユーザー名を間違えて登録してしまった場合は、フィルターを使って自分のユーザー名を条件に検索することができます (詳しい操作は、また次回の機会に)。ただし、訳文の編集や削除はできません。これも、サーバー側で権限の設定があるのかもしれませんが、これまでの私の経験では、検索しか実行できませんでした。


今回は以上です。サーバー TM は便利なのかどうか、個人翻訳者としてはどうも判断しにくいところではありますが、最近は、何であっても「ない」よりは「ある」方がいいかなぁ、と思っています。




2018年09月11日

ATOK の半角英字と AutoSuggest

最近、ATOK を導入しました。ずっと Windows (または Office) に付属の IME を使っていたのですが、月額約 300 円という手軽さと辞書機能に引かれてついに導入してしまいました。現在使っているのは以下の 2 つです。




しばらく使ってみて、特に必要なければやめればいいかなぁ、と思っていたのですが、この辞書を購入した時点で「やめる」という選択肢はほぼなくなってしまったことに後から気付きました。ATOK 自体は月額契約でも、辞書は通常どおりの購入なんですよね。

で、しばらく使ってみてどうだったかというと、ATOK にして良かった!と思います。この辞書もかなり便利です。


さてさて、本題の Trados の話題に入りたいと思います。ATOK には、英語を入力するときに英語の入力候補を表示してくれる機能があります。この機能を日英翻訳のときに Trados で使ったら便利なのでは?と思ったのです。結果から言ってしまうと、あまり便利ではありませんでした。ATOK の入力候補の表示は Trados の AutoSuggest 機能と競合してしまうんですねぇ。

ATOK で英語の入力候補を表示させたいときは「入力文字種」を「半角英字」にします。日本語入力をオンにした状態で CapsLock キーを押すと下図のような表示が現れ、ローマ字を入力できるようになります。このモードでは、入力した文字が英語と認識され、英単語などが入力候補に表示されてきます。

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ATOK の「半角英字」は、変換をオフにした直接入力と異なり、変換がオンの状態なので、ローマ字でも入力してから確定する必要があります。つまり、日本語を入力するときと同じ動きになります。

Trados の AutoSuggest は、日本語入力の場合、変換を確定するタイミングと候補を表示してくるタイミングがどうもかみ合わず、あまり使い勝手がよくありません。ATOK の「半角英字」を使うと、英語を入力しても日本語入力と同じ動きになるので、AutoSuggest からの入力候補がタイミングよく表示されてきません。まあ、ATOK の動きを考えてみれば当然の現象です。(でも、やってみるまで気付かなかったぁ。)


AutoSuggest 機能は、Trados に限った機能ではなく、ほかの CAT ツールでもたいてい同じような機能が実装されています。実は、これを最初に試してみたのは Memsource だったのですが、やはりうまく動きませんでした。

ATOK には学習機能があるので、「半角英字」のまましばらく頑張って入力を続けると英文を覚えて候補に表示してきてくれます。ただ、実際にやってみたところでは、学習を待つより、AutoSuggest を使った方が便利かなぁと思いました。ATOK でも一般的な単語は表示してきてくれるのですが、やはり、メモリや用語集からもってきた単語の方が使える可能性が高いです。AutoSuggest 機能のない Word での上書き翻訳などだったら便利かもしれないです。


Trados の AutoSuggest は以下から設定できます。
[ファイル] > [オプション] と選択して、[AutoSuggest] です。

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AutoSuggest 自体の有効無効は、一番上の [AutoSuggest を有効にする] で切り替えます。主に日本語を入力するときはあまり有効に機能しないので、私はこのチェックボックスをオフにします。

プロバイダの選択では、[翻訳メモリと自動翻訳] はオフにしています。これをオンにすると候補が多くなりすぎます。この代わりに [フラグメント一致] をオンにするとちょうどいいような気がします。

一番下の [RegexMatchAutoSuggestProvider] は、正規表現を使って AutoSuggest を表示できるプラグインです。詳しくは、こちらの記事「■プラグイン■ 原文にある英数字を訳文にコピーする (日⇒英の場合)」と、SDL AppStore の Regex Match AutoSuggest Provider をご覧ください。


今回は以上です。日本語の漢字も相当忘れていますが、AutoSuggest のような機能が出てきてから英語のスペルもかなり怪しくなってきています。「指が覚えている」なんて単語が少なくなってきてしまったような気がします。








2018年09月05日

Trados の情報はどこで見つける?


Trados に関する情報、皆さんはどこで見つけていますか? 今回は、私が参考にしているサイトなどを紹介したいと思います。

何か特定のエラーについて調べたいときは、エラー メッセージ (日本語ではなくて、英語ね) を Google で検索するか、SDL のナレッジベース を探してみます。

特定のエラーではなく、なんとなく便利な方法はないかなあ、と思っているときは、以下のサイトがお勧めです。どちらも、Trados について Google で検索するとすぐにヒットしてくるので、この業界ではかなり有名ですね。




さてさて、これ以外に私が参考にしているサイトは、以下のような感じです。



SDL Trados の公式ブログ ― 「土田さん」による日本語の記事

公式ブログでお勧めなのは、「土田さん」による日本語の記事です。それ以外の記事は、営業的な要素が強く、個人翻訳者の日々の作業にはあまり役立ちません。

さて、この日本語の記事ですが、単純に SDL 社のウェブサイトにアクセスして、目につくメニューからブログのページに移動しても表示されてこないことが多いです。表示言語を日本語にしたり、あちこち行ったり来たりしていると、そのうちに表示されてきます。

面倒なので、こちらのリンク https://blog.sdltrados.com/jp/ に直接アクセスすることをお勧めします。


SDL コミュニティ ― Translation Productivity の SDL Trados Studio

SDL コミュニティにはいろいろ情報がありそうなのですが、あまりに雑多なので、有効な情報を見つけるのはなかなか難しいかもしれません。

そんな中でもお勧めなのは Translation Productivity グループの SDL Trados Studio フォーラムです。ここは、以前に SDL 社の何かのセミナーで紹介してもらったのですが、とりあえず、SDL Trados Studio に関することなら何でも質問してよいようです。しかも「日本語で OK!」とのことでした。

SDL コミュニティは、各グループの中にいくつかのフォーラムがあるという構成ですが、Trados Studio やその周辺ツールの使い方などなら「Translation Productivity」グループが役立ちます。全体的には英語での書き込みが多いですが、日本語のものもいくつかあります。で、ここでも回答をくださっているのは、上記のブログの「土田さん」が多いです。感謝です!

コミュニティは、閲覧は自由ですが、書き込みを行うには少し手続きが必要です。
 SDL アカウントを作って、
 SDL コミュニティに Sign in し、
 対象のグループに Join します。

SDL アカウントは、製品を購入するときに使ったものがあればそれをそのまま使えます。購入していない場合は新しく作ることもできます。アカウントさえあれば、製品を購入していなくても、コミュニティへの参加は可能なようです。

さて、Translation Productivity グループの SDL Trados Studio フォーラムにたどり着くのもなかなか面倒です。以下のように移動するか、こちらのリンク https://community.sdl.com/product-groups/translationproductivity/f/90 をどうぞ。

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翻訳支援ツールマスター講座 ― スタッフブログ「いただいたご質問とご相談」

こちらは、各種翻訳支援ツールの通信講座を提供している会社のサイトです。この講座をお勧めするわけではないのですが、 「いただいたご質問とご相談」というブログ記事がときおりアップされます。営業的な内容もありますが、役立つ情報もあります。

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multifarious

英語のサイト (https://multifarious.filkin.com/) です。ひとつひとつの記事が長く、初心者にとっては少し難易度高めです。頑張って読みましょう!!

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SDL Trados Studio The Manual

こちらも英語のサイト (http://tradosstudiomanual.com/?page_id=18) です。トップのメニューから「Blog」を選ぶとブログ記事が表示されます。いろいろ細かい情報があり参考になります。ただ、あまり頻繁には更新されないようです。

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今回は以上です。私のブログの記事も、いくつかは上記で紹介したサイトを参考にしています。単純に検索しても雑多なサイトがヒットしてくるだけなので、有用な情報にたどり着くのはなかなか難しいです。




2018年08月07日

「訳文の表示」を使ってみる

前回に引き続き、訳文を確認する方法を考えてみます。今回は「訳文の表示」です。


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「訳文の表示」は、[ファイル] > [印刷 & 表示] > [表示方法] > [訳文の <外部プログラム名>] と選択するか、ショートカット キーの Ctrl+Shift+P を使うことで実行できます。<外部プログラム名> には、Word や PowerPoint といった本来のプログラムの名前が表示されます。HTML ファイルの場合は「Web ブラウザ」と表示されます。

「訳文の表示」は、簡単に言うと、訳文を Trados ではなく本来のプログラムで表示してくれる機能です。「表示」という名前のとおり、訳文ファイルの「生成」よりは、表示するだけの「プレビュー」に近い機能です。手軽に使用できて比較的完成形に近い表示を得られるので、訳文を確認する方法としては最も出番の多い機能かと思います。


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私のこれまでの経験から言うと、

  HTMLファイル以外なら「訳文の表示」がかなり便利

です。スタイルシートを適用する HTML ファイルを除いて、ほとんどの文書に便利に機能します。HTML ファイルの場合はスタイルシートが適用されないので完成形に近いとは言えませんが (スタイルシートを適用する HTML ファイルについては、前の記事 「訳文のみで保存」を使ってみる をご覧ください)、Office 文書であれば完成形とほぼ変わらない*1 表示を見ることができます。私は、レイアウトを確認する必要のある Word、PowerPoint、Excel などのときに C「訳文の表示」をよく使います。その理由を以下に説明したいと思います。

ワンアクションで訳文を表示できる

C「訳文の表示」では、ショーカット キー Ctrl+Shift+P を押すだけで自動的に Office などの外部プログラムが立ち上がり訳文が表示されます。もちろん、バイリンガル ファイルを開いたままの状態で実行できます。

@〜B の機能は、訳文ファイルを生成することが主目的であり、訳文を見るには、生成して表示するという 2 段階のアクションが必要になります。また、既存のファイルを開いたままだと Trados からファイルを上書きできないので、ファイルを閉じておくという操作も必要になります。これに対して C「訳文の表示」は、前回に表示したファイルを開いていても、そのまま実行できます。Trados が自動でファイルを開き直すか、別ファイルとして新しい訳文を開いてくれます。


外部プログラムで自由に操作できる

C「訳文の表示」では、ファイルが外部プログラムで表示されるので、フォントを変える、レイアウトを調整する、といった操作を自由に行うことができます。

訳文を表示するという点でほぼ同じ機能を持つ D「プレビュー」では、訳文が Trados 内のプレビュー ウィンドウに表示されるため、フォントやレイアウトの調整などはほとんどできません。原文のフォントやレイアウトのままでは読みにくいこともあるので、こうした操作は自由にできる方が便利です。


Trados のエディタに影響しない

繰り返しになりますが、C「訳文の表示」では、Trados から独立した外部プログラムで訳文が表示されます。このため、Trados のエディタに影響が及ぶことがありません。この点が D「プレビュー」と大きく異なります。

D「プレビュー」は、基本的には Trados のプレビュー ウィンドウに訳文が表示されます。分節を確定するごとに表示が更新される「リアルタイム プレビュー」なども可能で、プレビューの表示と Trados のエディタがかなり密接に連動しています。しかし、このために、Trados のエディタでは動きが遅くなったり、カーソルが勝手に動いたり (あるいは、消えたり) といったことがしばしば起こります。

C「訳文の表示」で表示されるファイルは Trados のエディタとの連動がないので、Trados のエディタの動きが不安定になる心配がありません。*2


Trados のエディタと連動しない

さて、「連動しない」のは安定性の面からすると良いことですが、やはり、使い勝手の面から考えると少々不便です。

Trados のエディタでどこを編集していても、C「訳文の表示」で表示されるファイルは先頭(または、原文でのカーソルの位置)に戻ります。大きなファイルの場合は、編集していた箇所を探すのにひと手間かかります。もちろん、リアルタイム プレビューなどの機能もないので、表示を更新したいときは再度 Ctrl+Shift+P を押す必要があります。そして、Ctrl+Shift+P を押すと、前のファイルを閉じて新しいファイルを作り直す、という処理が行われるようでかなり時間がかかります。


「訳文生成」ができないときは使えない

C「訳文の表示」は、最初に述べたとおり、Office 文書にとても便利なのですが、Office 文書の場合は「訳文生成」ができないケースがたまに (頻繁に?) あります。Trados や Office のバージョン、ファイルの特性など何かしらの理由はあるのでしょうが、とにかく「訳文生成」できないファイルは C「訳文の表示」でも訳文を表示できません。その場合は D「プレビュー」もできない可能性が高いので、あきらめて E「印刷プレビュー」を使うか、脳内でレイアウトを再現するか、ということになります。



今回は以上ですが、私が Office 文書を訳しているときは、たいてい以下のようなことを繰り返しています。

 D「プレビュー」を使ってみる
  ↓
 エディタの動きがおかしくなる
  ↓
 C「訳文の表示」を使う
  ↓
 いちいち更新するのが面倒になる
  ↓
 また D「プレビュー」を使ってみる
  ↓
 やっぱりエディタが動かない …

小さいファイルのときはそうでもないですが、大きなファイルになると、C「訳文の表示」と D「プレビュー」のどちらを使ってもうまく行かない!ということが多いです (私の環境が悪いのでしょうかね〜)。


注記 *1: 「訳文の生成」、「エクスポート」、「訳文のみで保存」は、いずれを使ってもほぼ同じ訳文ファイルが生成されます。「訳文の表示」と「プレレビュー」も、ファイルは生成されませんが、ほぼ同じ訳文が表示されると思います。ただ、厳密には違う点があるかもしれません。最近になってからは詳しくは検証していないのですが、少し前には、確定していない空白分節の処理や、各種スペースと改行文字の処理などに違いがあったような記憶があります。

注記 *2: 「心配ありません」としましたが、実は、Trados 自体が落ちてしまうことがあります。詳しくは、Trados のエディタが落ちる! をご覧ください。ただ、これはかなり限られた条件で起きる現象だったようで、私自身、最近はこの現象に遭遇していません。何かの update で直ったのか、原文ファイルに問題があったのか、原因はよくわかりません。心配な方は「バイリンガル ファイルを保存してから訳文を表示する」ことをお勧めします。(私も、一応、そうしています。)




2018年07月26日

「訳文のみで保存」を使ってみる

Trados で訳文を表示する方法として、以前に印刷プレビューについてを書きましたが、今回は「訳文のみで保存」に注目したいと思います。


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Trados には、下の図に示すように、訳文を表示する方法がいくつかあります。ツールを使っているから品質が悪いなどと言われないようにするためにも、できるだけ完成形に近い形で訳文全体を確認することが大切です。


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B「訳文のみで保存」は、[ファイル] > [別名 (訳文のみ) で保存] と選択するか、ショートカット キーの Shift+F12 を使うことで実行できます。機能的には @「訳文の生成」や A「エクスポート」とほぼ同じで*1、バイリンガル ファイルから訳文ファイルが生成されます。一時的な内部ファイルが生成される C「訳文の表示」以下の方法と異なり、B「訳文のみで保存」では、「保存」という名前のとおり、Trados の外に通常のファイルとして訳文が保存されます。

私のこれまでの経験から言うと、

「訳文のみで保存」は、階層構造になっていない少数の HTML ファイルをさっと表示したいときに最適

です。いろいろ試してみたのですが、私は、スタイルシートを適用してブラウザーで表示する HTML ファイルに「訳文のみで保存」をよく使います。その理由を、以下に説明したいと思います。

エディタ内のバイリンガル ファイルを閉じる必要がない

上図に挙げた方法のうち、バイリンガル ファイルを開いたままの状態で実行できるのは、B「訳文のみ保存」と、それ以下の C〜E です。つまり、B「訳文のみで保存」は、バイリンガル ファイルを開いたままの状態で実行できる方法の中では、最も完成形に近い表示を見ることができます。

翻訳作業の途中でさっと訳文を見たいときは、バイリンガル ファイルを閉じずに表示できる方法が便利です。

スタイルシートや画像ファイルを適用できる

B「訳文のみで保存」のもう 1 つの特徴は、独立した外部ファイルとして訳文ファイルを生成できることです。バイリンガル ファイルを閉じずに実行できる方法の中でこれが可能なのは B「訳文のみで保存」だけです。外部ファイルとして訳文を保存することで、HTML ファイルの場合、スタイルシートの適用や画像の表示が可能になります。

HTML ファイルの翻訳では、翻訳会社さんから提供される原文構造に、翻訳対象の HTML ファイルだけではなく、スタイルシート、画像、スクリプトなどが含まれていることがあります。その場合は、それらのファイルをそのまま訳文フォルダーにコピーして、訳文でもスタイルシートや画像のリンクが機能するようにするのがお勧めです。

たとえば、下の図のように、翻訳対象の HTML ファイルを含むフォルダー「Chapter1」と「Chapter2」のほかに、スタイルシートの「css」、画像の「images」、スクリプトの「scripts」があるとします。このような場合は、翻訳対象外の各フォルダーを Trados プロジェクトの訳文フォルダー (日英の場合なら「en-US」フォルダー) に階層構造を維持するように気を付けてコピーします。これで、訳文にもスタイルシートが適用され、画像も表示されるようになります。

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Trados のプロジェクト フォルダーに余計なファイルを入れて大丈夫なの?と不安に思うかもしれませんが、まったく問題ありません。Trados はバイリンガル ファイルを使うだけなので、ほかに何か入っていても特に影響はありません。返却パッケージを作っても、余計なファイルが含まれるようなことはありません。

C〜E の方法では、残念ながら独立した訳文ファイルが生成されません。そのため、スタイルシートなどの適用ができません。C「訳文の表示」では、外部プログラム (ブラウザー) で表示できるファイルが生成されますが、あくまで Trados 内の一時ファイルという位置付けのようで、保存場所のパスが一定ではないため、スタイルシートなどを前もってコピーしておくという上記のような細工ができません。スタイルシートなどを適用するには、やはり @〜B のいずれかで、Trados の外に訳文ファイルを生成する必要があります。

生成された訳文ファイルを閉じる必要がない

B「訳文のみで保存」で生成されるファイルは、上に述べたとおり Trados から独立した通常のファイルなので、基本的には既存のファイルがあったら保存を行う前にそのファイルを閉じておく必要があります。たとえば、Word や Excel でファイルを開いたままだと Trados からはそのファイルを上書きできません。

しかし、HTML ファイルならその煩わしさがありません。ブラウザーでファイルを表示していても、ソースの HTML ファイルはそのまま上書きすることができますよね!これはブラウザーで表示する HTML ファイルならではの利点です。

HTML ファイルの翻訳では、Trados のエディタで訳文を入力して、Shift+F12 で「訳文のみで保存」を実行、ブラウザーに切り替えて F5 で更新、これで最新の訳文を確認できます。この方法はかなり便利です。

保存先と上書きしてよいかを毎回尋ねられる

さて、ここまでなら B「訳文のみで保存」が完璧に思えますが、そこは Trados です。そうは問屋が卸しません。

HTML ファイルのプロジェクトでは小さなファイルが数十個以上も含まれることが珍しくありません。そんなときに便利なのは、複数のファイルを一気に開く機能ですよね (私はこの機能をよく使います)。 あまりたくさん開くとエディタの反応が悪くなる気がするので、恐る恐るではありますが、できるだけたくさんのファイルを一気に開くようにしています。こうして複数のファイルを開いている状態で B「訳文のみで保存」を実行すると 1 つ 1 つのファイルについて保存先を尋ねられます。既存のファイルがある場合には上書きの確認もしてきます。

10 ファイルもあるともう限界です。B「訳文のみで保存」はエディタ内でカーソルがどこにあっても最初のファイルからすべて保存しようとするので、すべてのファイルについてダイアログボックスが表示されます。デフォルトそのままで OK だとしても、そうたくさんは耐えられません。

すべて同じ場所に保存しようとする

複数のファイルを開いているときの問題はもう 1 つあります。それは、階層構造になっているファイルを開いている場合です。HTML ファイルのプロジェクトでは、いくつかのフォルダーにファイルが分かれていることがよくありますが、B「訳文のみで保存」のデフォルトの保存先は、エディタ内に開かれている最初のファイルのパスです。別のフォルダーにあるファイルを保存する場合でも、とにかく最初のファイルのパスがデフォルトの保存先として表示されてきます。手動でパスを変えればいいのですが、もちろん、そんな面倒なことはできません。

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エディタに複数のファイルを開くときにフォルダーごとに開くことでこの問題は解決できますが、フォルダーがたくさんあるともうお手上げです。


今回は以上です。いろいろ書いていたら長文になってしまいました。簡単にまとめると、「訳文のみで保存」は
 ・ブラウザーで表示する HTML ファイルに便利、
 ・ただし複数ファイルをまとめて開いているときには使えない、
という感じです。次回は、office 文書に便利な「訳文の表示」を取り上げたいと思います。

注記 *1: 「訳文の生成」、「エクスポート」、「訳文のみで保存」は、いずれを使ってもほぼ同じ訳文ファイルが生成されます。ただ、厳密には違う点があるかもしれません。最近になってからは詳しくは検証していないのですが、少し前には、確定していない空白分節の処理や、各種スペースと改行文字の処理などに違いがあったような記憶があります。(すみません、そのあたりの細かいことはすっかり翻訳会社さんにお任せです。)