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昔は「Trados さん、頑張って!」とお祈りしながら訳文生成していませんでしたか? 今も、たまにそんな気分になるときがあります。Trados って本当にわからないことばかりです。特に、日本語の情報は少ないですよね。いくら翻訳者とはいえ、日本語の情報が欲しいのです。Trados ユーザーの方々といろいろ情報交換できたらと思っています。




2018年07月18日

パッケージの中身を見たい!!

翻訳会社さんと Trados のファイルをやり取りする場合には「パッケージ」を使うことが多いと思います。翻訳会社さんからは「.sdlppx」という拡張子のパッケージ ファイルが送られてきて、翻訳者は「.sdlrpx」という拡張子の返却パッケージを作って返送します。

パッケージは、各種のファイルをひとまとめにできるのでデータの受け渡しにはとても便利です。ただ、中に格納されているファイルに直接アクセスできないという点に少し不便さを感じることがあります。たとえば、翻訳作業の途中では、変な一括置換をしてしまったので一部のファイルだけ元に戻したいとか、プロジェクトの設定を変えてはみたけれども最初の設定をもう一度見たいとかいうように、元の状態のファイルにアクセスしたくなることがたまにあります。また、翻訳作業の完了後は、返却パッケージに正しいファイルを格納したかどうか不安になってパッケージの中を確認したくなることがしばしばです。

今回は、このような場合の手だてとして、パッケージの中のファイルや設定を確認する方法を 3 つ紹介したいと思います。1 つ目は、強制的に解凍する方法、2 つ目は、SDL AppStore で提供されているツールを使用する方法、そして最後はパッケージを別プロジェクトとして開き直す方法です。


パッケージを強制的に解凍する


パッケージ ファイルは、実は、単なる zip ファイルのようです。ですので、一般的な zip ツールで解凍できます。私は自分ではこの事実にまったく気付かなかったのですが、つい最近になって、あるコーディネーターさんに「普通に解凍できますよ」と教えられ、かなり、かなり、驚きました!

パッケージ ファイルの拡張子を「.zip」に変更すれば、エクスプローラー付属の解凍ツールでそのまま解凍できます。翻訳会社さんから送られてきたままのオリジナルな状態のバイリンガル ファイルやメモリを見たいというケースでは、この方法が手早くて便利です。

ただ、日本語の文字を含むファイル名は文字化けしてしまう場合があります。ファイルの中身そのものに影響はないようですが、ファイル名が文字化けして各ファイルを識別できなくなるので、名前に日本語を含むファイルが複数存在する場合は厳しいかもしれません。ファイル名が半角英数字のみで構成されている場合は問題なく解凍できると思います。


SDL AppStore で提供されている PackageReader を使う


SDL AppStore に PackageReader というツールが無料で提供されています。これは、パッケージの中身を参照するためのツールで、簡単に使用できてとても便利です。

このツールは、Trados の中に組み込まれるプラグインではなく、Trados の外側で独立して動くアプリケーションです。AppStore のページで [ダウンロード] ボタンをクリックすると zip ファイルがダウンロードされてきます。その中の exe ファイルを実行してインストールを開始します。インストール時にファイルの関連付けが自動的に行われるので、インストール後はエクスプローラー上で右クリックするだけで簡単に使用できます。


24_2.png


パッケージ ファイルを右クリックして [プログラムから開く] > [PackageReader] と選択すると、以下のような画面が表示され、パッケージ内のバイリンガル ファイル、メモリ、用語集を一覧表示できます。さらに、バイリンガル ファイルについては、虫眼鏡アイコンをクリックしてファイルの中身を参照することもできます。


24_3.png


私は、返却パッケージの中身を確認したいときにこの PackageReader をよく使います。返却パッケージを作成した後、PackageReader でパッケージを開き、格納したファイルに過不足がないかを確認します。

ただ、このツールは、パッケージに含まれているファイルを一覧表示してくれるだけで、特定のファイルを取り出したり、プロジェクトの設定内容を確認したりすることはできません。特定のファイルを取り出したいときは、最初に説明した強制的に解凍する方法を採る必要があります。また、ファイル名に日本語が含まれる場合や、プロジェクトの設定内容を見たい場合は、さらに別の方法が必要になります。


パッケージを別プロジェクトとして開き直す


さて、「さらに別の方法」とは「別プロジェクトとして開き直す」です。パッケージは、いったん開いてプロジェクトを作成してしまうと、その後で単純にもう一度開いても、プロジェクトの保存先を指定できず、別プロジェクトとして開き直すことはできません。別プロジェクトとして開き直すには、既存のプロジェクトをいったん「削除」する必要があります。


24_4.png


上の図のように、プロジェクトを右クリックして [リストから削除] を選択します。[リストから削除] を実行してもプロジェクト自体は削除されないのでご安心ください。(この UI の文言は信用して大丈夫です。文字どおり、リストから削除されるだけで、実際のファイルは削除されません。)

プロジェクトが一覧に表示されていないことを確認したら、パッケージを改めて開きます。今度は、プロジェクトの保存先を指定できるので、既存のプロジェクトとは別のフォルダーを指定してプロジェクトを作成します。これで、別プロジェクトとして開くことができます。

元のプロジェクトに戻したいときは、[リストから削除] を再度実行して、後から作ったプロジェクトをリストから削除します。その後で、元のプロジェクトの保存先にあるプロジェクト ファイル (.sdlproj) からプロジェクトを開きます。これで、元のプロジェクトに戻ることができます。

残念ながら、元のプロジェクトと後から作ったプロジェクトを同時にリストに表示することはできなそうです。(私が試してみた限りでは、できませんでした。) ファイル自体は保存先に残しておけるので、リストに表示するプロジェクトを必要に応じて切り替える操作が必要になります。


今回は、以上です。いろいろ書きましたが、まとめると、まずは zip ツールで解凍してみる、だめなら [リストから削除] をしてからパッケージを開き直す、中身を一覧表示したいだけなら PackageReader が便利、という感じでしょうか。私は、「パッケージ」というものが登場して以降、自分なりにここまで理解するのに相当な時間がかかりました ()。何かほかにもっと便利な方法があるのでは?と思いながら、今も Trados との格闘は続いています。皆さま、何かご存じでしたら、ぜひともご教示ください。







2018年07月06日

カウント表をよく確認しよう ― その A

前回に引き続き、カウント表の確認ポイントです。まだまだ、難解というか不可解というか、いろいろな設定があるので、注意しながら見ていきたいと思います。

確認ポイント 4 ― ロックされた分節を別に分類して報告する


23-1.png

4 つ目は「ロックされた分節」です。私のこれまでの経験では、この設定が間違っていることが一番多いように思います。

通常、この設定は「はい」で、ロックされた分節を別にカウントします。実際の仕事では、「ロックされている分節は作業対象外で!」と指示されることが多く、ロックとしてカウントされた部分は 0 円となります。まあ、ロックされているので明確ですし、作業対象外と言われればその指示に従うしかありません。

ただ、Trados のデフォルト設定は「いいえ」のようなんです。なので、間違えてロック部分もカウントに含まれていることがたまにあります。カウント数が増えるので、間違っていたらラッキー!なんて考えてはいけません。この設定が間違っていた場合、翻訳会社さんは必ず訂正してきます。たとえ発注書が発行された後でも、あるいは作業を開始した後でも訂正してきますよー。(私も何回かそんなことがありました。)

ロックされているので作業はしないですし、料金が支払われないのは当然ですが、作業の直前や作業の開始後の訂正は翻訳者としてはとても困ります。たとえば、翻訳会社さんから「当初の打診の時点では 10,000 ワードとお伝えしていましたが、実際にファイルを見てロック部分を除外してみたら 5,000 ワードでした」と言われると、10,000 ワード分の時間を確保していたのに!!余った時間はどうすれば??という事態になります。

この設定では、もう 1 つ注意点があります。


23-2.png


前回の記事で紹介した設定も含め、ファイルの解析のオプションは [プロジェクトの設定] -> [言語ペア] -> [一括処理] -> [ファイルの解析] から設定できます。この設定画面には、ロックされた分節に関するオプションが 2 つあります。

  @ ロックされた分節を別に分類して報告する
  A ロックされた分節を解析対象から除外する


@ の「別に分類して報告する」を選択すると、解析レポートに「ロック済み」という欄が増え、そこにカウント数が表示されます。そして、レポート上部のオプションの一覧には「ロックされた分節を別に分類して報告する: はい」と表示されます。

A の「解析対象から除外する」を選択すると、解析レポートではロックされた分節のカウント数は除外され、どこにも表示されません。そして、レポート上部のオプションの一覧にも、このオプションについての表示はありません。本当に、すべてから除外されるんです! 「ロックされた分節を別に分類して報告する」の表示は、A の設定に関係なく、@ が選択されていない限り「いいえ」になります。

つまり、A の「解析対象から除外する」が選択されていても、解析レポート上ではそのことがわかりません。この「解析対象から除外する」のオプションは最近追加されたのでしょうか。私がこのオプションに気づいたのは最近です。解析レポートで「ロックされた分節を別に分類して報告する: いいえ」となっていても、翻訳会社さんに連絡する前に、一応「解析対象から除外する」オプションを確認してみましょう。


確認ポイント 5 ― 単語単位のトークン化を使用する


23-3.png

さて、最後のポイントは「単語単位のトークン化」です。これは、SDL Trados 2017 SR1 以降で、原文が日本語か中国語のときに関係してきます。原文が英語のときは気にする必要がないので、解析表にこのオプションは表示されてきません。

この設定は、単語ベースで解析するか、文字ベースで解析するかの選択ですが、詳細については、SDL のこちらのブログが参考になります。このブログの最後に「以前の解析方法(文字ベース)と新しい解析方法をユーザーが選択できるような仕組みを開発中です」とありますが、これで開発されたのがこの設定だと思います。

通常、これは「いいえ」です。原文が日本語の場合、料金は一般的に文字単価で計算されるので、当然ながら解析も文字ベースであるべきです。単語ベースで一致率を計算して、そこに文字単価を適用するとおかしなことになります。

ただ、上記のブログにもあるように、この設定は初期の SR 1 にはありませんでした。翻訳会社さんの使っている Trados のバージョンによってはこの設定がなく、単語ベースの解析が行われている可能性があります。(が、なかなか、翻訳者としてはそこまで確認しにくいですね〜)

自分でカウントする場合、この設定は「プロジェクトの設定」から行います。[プロジェクトの設定] の最初の画面 [プロジェクト] で、[原文がアジア言語の場合に単語単位のトークン化を使用する] チェックボックスをオフにします。(デフォルトでオフのようです。)


23-4.png


この設定が、解析結果だけでなくプロジェクト全体に何か影響するのかはちょっと不明です。これをオフにすると、解析レポートの「単語単位のトークン化を使用する」は「いいえ」になります。その状態でも、upLift の機能であるフラグメント一致などは有効に機能する気がします。

なお、プロジェクトの設定やファイルの大きさによるかもしれませんが、「単語単位のトークン化を使用する」がオンになっているとファイルの解析にかかる時間が異常に長くなることがあります。ファイルの解析は、もともと少し時間のかかるタスクですが、この時間がさらに長くなります。(私は、20 分以上かかったことがあり、失敗したぁと思いました。)

※※※ 追記 2018/11/21 ※※※
この設定をオンにすると処理時間が長くなるのかと思っていたのですが、これをオンにしなくても処理時間は長くなることがあります。フラグメント一致のカウント数は料金に関係しないので、この機能なしでカウントできればいいのですが、、、
※※※※※※※※※※※※※※※


あまり確認しないポイント ― 各種ペナルティ


23-5.png

最後に、私があえてあまり気にしないようにしているポイントを挙げておきます。それは、上記の図に赤枠で示した各種のペナルティです。

数字がうまく変換されないとか、書式が違ったら文のスタイルも違ってくるとか、タグが挿入されてこないとか、複数の選択肢があったら困るとか、翻訳者としてはいろいろ主張したいところではありますが、正直に言って、私は最近あきらめぎみです。それぞれについて細かく調べて理路整然と翻訳会社さんに異議を申し立てるのは簡単ではありません。

ただ、翻訳会社さんも深く検討したうえでこのペナルティを決定しているとは限らないと思います。Trados のデフォルト設定は、上記のとおり、上の 3 つが 1% で、下の 2 つが 0% です。デフォルト設定のままの場合もありますが、設定が変えられている場合もかなりの頻度であります。どちらにしても、私は、これまで、これこれこういう理由でこのペナルティを設定しています、というような説明を翻訳会社さんから受けたことはありません。同じコーディネーターさんでも、デフォルト設定のままだったり、設定が変更されていたりといろいろです。(もちろん、それぞれのファイルを検討したうえで最適な設定にしている、という可能性もなくはないですが。)

結局、私は、コンテキスト マッチや 100% マッチが作業対象である場合は、ペナルティを深く考えないようにしています。100% でも 99% でも作業することに変わりはないので、多少のレートの差はあきらめます。

もし、コンテキスト マッチや 100% マッチが作業対象に含まれない場合は、ここのペナルティをどうこうするのではなく、とにかく作業対象外の部分を事前にロックしてくれるように翻訳会社さんにお願いします。ロックされていれば明確なので、それを信じて作業します。


以上です。前回の記事から引き続きカウント表について説明してきました。カウントは毎回毎回のことなので、重要とはわかっていても、ついつい確認を怠ってしまうことがあります。翻訳会社さんへの連絡は、遅くなればなるほど行いにくくなるものです。作業ファイルを受け取ったら、なるべくすぐに確認することをお勧めします。(私も、そうしたいと常々思ってはいます。)







2018年06月27日

カウント表をよく確認しよう ― その @

前回の文字数の話に引き続き、カウントの話題を取り上げたいと思います。今回は、前回の記事より少し大きな視点で考えます。

文字数やワード数のカウント方法は、細かく見ていくときりがありません。前回のタグはもちろんですが、数字、英単語、URL、ハイフンやアポストロフィ、特殊記号などを細かく調べていくと、翻訳会社さんから提示された数字に対していろいろ疑問が浮かんでくるかもしれません。ただ、設定で変えられなかったり、一般的とされているルールがあったりで、翻訳者の主張をとおすのはなかなか難しいのが現実です。

私も、たいていは翻訳会社から提示されてくるカウント数をそのまま信じてしまいますが、それでも、一応確認すべきポイントはあります。今回の記事では、「まあ細かい設定は翻訳会社さんを信じるけど、それでも確認しておきたいこと」を自分の備忘録も兼ねて紹介したいと思います。


Trados 生成の解析レポートを入手する


まずは、以下のような Trados 生成の解析レポートを入手します。

22-1.png

解析レポートは翻訳会社さんから提供されることが多いですが、会社さんによっては、独自の形式のカウント表を使っていて、Trados 生成の解析レポートは提供してくれないことがあります。上記の図の赤線で囲んでいる部分を確認したいので、カウント値だけを抽出した独自作成の表などではなく、Trados で生成された解析レポートを入手します。

翻訳会社から提供されない場合は、自分でカウントします。プロジェクトを右クリックして [一括タスク] -> [ファイルの解析] と選択し、タスクを実行してレポートを作成します。プロジェクトやメモリの設定を変えてしまうとカウント値に影響することがあるので、パッケージを開いたら、まずそのままの設定で [ファイルの解析] を実行します。


確認ポイント 1 ― 翻訳ソース


22-2.png

最初のポイントは「翻訳ソース」です。聞き慣れない言葉になっていますが、何のことはない翻訳メモリのことです。一致率の基準となるものなので必ず確認します。作業指示書などに記載されているメモリと、実際に Trados に設定されているメモリと、そしてカウント表のメモリがすべて一致していることを確認します。

多数のメモリがある場合などは、翻訳会社さんもたまに間違えてくることがあります。実際に作業で使うメモリでカウントされていることを確認します。


確認ポイント 2 ― ファイル間の繰り返しを報告する


22-3.png

2 つ目は「ファイル間の繰り返し」です。これは、複数のファイルを含むプロジェクトで、同じ文が別のファイルにある場合でも繰り返しとみなすかどうかの設定です。通常は「はい」で、別のファイルでも繰り返しとしてカウントします。

このとき注意したいのがファイル数です。大きなプロジェクトの場合、翻訳会社さんは 1 つのプロジェクトから複数のパッケージを作って何人かの翻訳者さんに配布することがあります。自分に割り当てられたファイルの中での繰り返しは「繰り返し」としてカウントされて問題ありませんが、ほかの翻訳者さんに割り当てられたファイルとの繰り返しはそうはいきません。なので、ファイル数が自分に割り当てられているファイル数と一致しているかを確認します。

翻訳会社さん作成のカウント表しか提供されない場合は、「繰り返し」のカウント数が、Trados 生成のレポート上の値と一致しているかを確認します。プロジェクト全体でカウントされていると、ほかの翻訳者さんのファイルとの繰り返しも含まれることになってしまうので、念のため確認しましょう。


確認ポイント 3 ― 内部あいまい一致の活用効果を報告する


22-4.png

3 つ目は「内部あいまい一致」です。これは、新規翻訳するけれども似たような文が繰り返し登場するような文書で、その「似たような文」をメモリとの一致と同じように「あいまい一致」としてカウントするというものです。

たとえば、新規翻訳する部分に「Click the Save button.」と「Click the OK button.」という文があると、後から登場した文が「内部あいまい一致」となり、メモリとの一致と同じように一致率が計算されます。

通常、この設定は「いいえ」です。当然です。これから自分で訳すのですから、新規翻訳としての料金をもらいます。既訳として提供されるメモリとの一致で料金が割り引かれるのは仕方ないとしても、既訳でもないのに料金が割り引かれるのはちょっと納得できません。

私は、これまでの仕事でこの設定が「はい」になっていたことが数回ありました。ほとんどの場合が単なる設定ミスで、翻訳会社さんに確認したらすぐに訂正してもらえました。まあ、内部あいまい一致がどれくらいあるのかはちょっと気になるので、「はい」にしてカウントしてみたくなる気持ちはわかります。

ただ、意図的にこの設定が「はい」にされていることもありました。少し前に、内部あいまい一致が適用されたカウント表が送られてきたので確認したところ、「今回はこの設定でお願いします」との返答でした。さすがに、「事前に何の断りもなくいきなりこの設定を適用してくるのはあんまりじゃありませんか?」と (やんわり) 抗議させていただきました。結果として、カウントし直してもらえましたが、あまりいい気分ではないですね〜。

「内部あいまい一致」を適用すると、カウント数は少なくなる可能性が高いので、こっそり「はい」に設定されていないか、念のため確認することをお勧めします。


さて、今回はここまでです。記事を書いてみたら予想以上に長くなってしまったので、後半は次回にさせていただきます。最近、ブログの更新頻度が低くなってきてしまっていますが、頑張ります! お楽しみに!!



  


2018年06月03日

SDL Trados Studio 2019 の新機能 ― 個人翻訳者の視点から


前回は文字数の細かいお話でした。そのときは次回も文字数のお話にしようと思っていたのですが、最近、Trados の新バージョン 2019 の紹介があったので、今回はこの新バージョンについてちょっと書いてみたいと思います。

SDL の公式ブログに紹介記事がありました。

SDL Trados Studio 2019の新機能
https://blog.sdltrados.com/jp/whats-new-trados-studio-2019/


21.png



この公式ブログをざっと読んだところでは、「翻訳会社さんからお仕事をもらう個人翻訳者にとって特に大きな新機能はない」という印象でしたが、どうでしょう?? こんな解釈でいいのかなぁ。以下、この公式ブログに書かれていた各項目について、個人翻訳者として思ったことを書いてみました。


Tradosビギナーの強力な味方 ― Walk Me
各機能への迅速なアクセス ― Tell Me

「Walk Me」は主に初心者向け、「Tell Me」は機能や設定を簡単に見つけられる、ということです。いろいろとわかりやすくなるのは喜ばしいです。

公式ブログに掲載されていたスクリーンショットでは、検索ボックスに英語を入力して機能を検索しています。これは、まだベータ版だからですよね、きっと。記事の冒頭にも「一部日本語化されていない」と注意書きがありますし。正式版では日本語で検索できますよね?? そうでないと、私は困ります。


新しいプロジェクト作成ウィザード

「Metro Map」というストリームラインによってわかりやすくなるそうです。よく通販サイトなどで、「商品の選択 -> 確認 -> お支払い」とステップの一覧が表示されることがありますが、それと同じです。

私は翻訳会社さんからパッケージを受け取って作業することが多く、自分で新しいプロジェクトを作成することはあまりありませんが、Metro Map はプロジェクトの新規作成ウィザード以外にも使われているようなので、いろいろわかりやすくなっていると嬉しいです。


プロジェクトファイルの追加や変更にも柔軟に対処


プロジェクトを作成した後でファイルを追加したり更新したりすることが簡単になったそうです。これは、個人の翻訳者でもちょっと気になります。パッケージを受け取って作業を始めてしまった後はどうなるのでしょう??

作業を開始してしまったファイルの更新はとても困ります。メモリはあるとしても、訳し分けなどをしている可能性があるので、単純に一括翻訳するわけにはいかず、いつも面倒な思いをしています。

作業を開始したバイリンガル ファイルを、変更になった部分だけ更新してくれる、というのであればとても便利そうに思えます。でも、本当にそんなことできるのでしょうか? パッケージを受け取った側でファイルの更新作業をしなければならないとなると、ファイルが複数ある場合などは手間がかかりそうですし、更新部分のワード数がどのようにカウントされるのかもかなり気になります。まあ、ちょっと期待??してみます。


検証機能の設定が訳文言語ごとに可能に

すみません、私は英語と日本語のみなので、あまり関係がないです。


翻訳メモリの内容がより見やすく

「翻訳メモリ」ビューで、1 ページに表示される個数を変更できるようになり、存在するページ数も表示されるようになったそうです。細かい機能ですがちょっと嬉しいです。メモリを編集していると、いったいどれだけメモリがあるのかわからず、うんざりしてしまうこともあったので、こうした機能はいいかもしれないです。


Visioファイルに対応

Visio ファイルに「対応」したそうです。これって、Visio が入っていない環境でも訳文生成やプレビューができる、ということではないですよね? 残念ながら、私は Visio を持っていません。フローチャートばかりの Visio ファイルを、プレビューできないけどバイリンガル ファイルで訳してね、という依頼がきたら、正直言ってお断りしたくなります。


公式ブログで紹介されていた機能は以上です。2017 のときの upLift テクノロジーのような大きな新機能はなさそうなので、アップグレードするかどうかは翻訳会社さんの状況によるでしょうか。2019 で作ったバイリンガル ファイルが 2017 ではプレビューや訳文生成できない、という事態にだけはなって欲しくないです。それって、個人翻訳者にとっては「下位互換がない」のとほぼ同じです。

今回は以上です。 しばらくは、期待も込めて、経過観察してみようかと思います。





2018年05月08日

Trados の設定を変えるには − [ファイル] と [プロジェクトの設定]

Trados Studio になって「プロジェクト」という概念が導入されたとき、いろいろ設定が増え、私はかなり混乱した覚えがあります。

Trados の設定は大きく 2 か所に分かれます。

  1. メニュー バーの [ファイル]
  2. 各プロジェクトの [プロジェクトの設定]

19-0.png

簡単に言うと、[ファイル] は全プロジェクトに共通する Trados 全体の設定、[プロジェクトの設定] は、その名前のとおり、プロジェクトごとの設定です。パッケージを受け取って作業する個人翻訳者の場合、何か設定を変えたいと思ったら、まず [プロジェクトの設定] を探す、そこに希望の項目がなければ [ファイル] の設定を探す、という感じになると思います。

1 つ目の [ファイル] の設定は、メニュー バーの [ファイル] をクリックして設定します。[ファイル] をクリックすると以下のような画面が表示されます。[ファイル] から表示されるこの設定画面を Office では Backstage ビューと呼びますが (この呼び名、あまり浸透してないですけど)、ここでは Trados 環境全体の設定を行います。どのプロジェクトにも共通のエディタの動作設定や、プロジェクトを新規作成するときのデフォルト設定、と考えておけばよいかと思います。

19-1.png


2 つ目の [プロジェクトの設定] は、いずれかのプロジェクトを選択してから、リボン上の [プロジェクトの設定] をクリックします。

この設定は、選択したプロジェクトのみに適用され、[ファイル] からの設定を上書きします。既に作成されている特定のプロジェクトの設定を変更するときは、[ファイル] ではなく、こちらの [プロジェクトの設定] を使用します。

重複する設定は [プロジェクトの設定] から


[ファイル] の設定から [オプション] を選択すると、下の図の左側のようなメニューが表示されます。右側は、[プロジェクトの設定] からのメニューです。


19-2.png

ご覧のとおり、この 2 つはとてもよく似ており、重複している設定がいくつかあります。重複しているのは、「ファイルの種類」、「埋め込みコンテンツ プロセッサ」、「検証」、「言語ペア」です。この中で、パッケージを受け取って作業する個人翻訳者が気を付ける設定は「検証」と「言語ペア」の 2 つくらいだと思いますが、これらの設定を変えたいときは、[ファイル] ではなく、必ず [プロジェクトの設定] を使用します。

たとえば、パッケージを開いた後で、検証やメモリの設定を変えたいと思ったら、[プロジェクトの設定] を使用します。パッケージを開いた後に [ファイル] から設定を変えても、その変更はプロジェクトには適用されません。[ファイル] は、あくまで、プロジェクトを新規作成するときに使用されるデフォルト設定と考えてください。自分でプロジェクトを作成しない限り、[ファイル] の設定は意味がありません。


重複しない設定は [ファイル] から


さて、重複していない設定ももちろんあります。上の図のとおり、[ファイル > オプション] の方がメニューが多く、エディタの動作、AutoSuggest、ショートカット キーなどは [ファイル > オプション] からしか設定できません。

これらの設定は、すべてのプロジェクトに共通して使用されます。言い換えると、エディタの動作や AutoSuggest の設定はプロジェクトごとには変えられない、ということになります。AutoSuggest は、プロジェクトごと変えられた方が便利な気もするのですが、そのようなことはできません。


メモリに登録されるユーザー名は例外


ユーザー名に関する記事でも取り上げましたが、メモリに登録されるユーザー名は要注意です。これは、[ファイル] と [プロジェクトの設定] の両方から設定できますが、[プロジェクトの設定] の方が優先ということはありません。どちらか一方で設定を変えると、もう一方の設定も自動的に変わります。

19ー5.png

この設定に注意が必要になるのは、プロジェクトごとに異なるサーバー TM に接続する場合です。サーバー TM 自体の設定は [プロジェクトの設定] からプロジェクトごとに行うことができますが、メモリに登録されるユーザー名はプロジェクトごとに設定しておくことができません。その都度、手動で変える必要があります。


[プロジェクトの設定] はパッケージを開くたびに上書きされる


パッケージを受け取って作業していると、ときどき「ファイルが追加になったので追加のパッケージを送ります」と言われ、作業の途中で追加のパッケージを開かなくてはならないことがあります。パッケージに含まれているプロジェクトの名前が同じ場合、パッケージを開くと同名の既存プロジェクトを上書きしようとします。このとき、バイリンガル ファイルについては「上書きしますか」というような確認メッセージがありますが、メモリ、用語集、各種設定は問答無用で上書きされます。

つまり、[プロジェクトの設定] からせっかく自分の好みに合わせて設定を変えていても、追加のパッケージを開くと、自分の設定はすべて上書きされてしまいます。検証の設定をエクスポートする、メモリをどこかに退避するなど、ある程度の対策はできますが、どうしても上書きされてしまうものもあります。もっとも、翻訳会社さんは使って欲しいメモリや設定をパッケージに含めてきているので、一応それには従う必要があり、「上書きする」という仕様は当然と言えなくもありません。仕方ないので、追加のパッケージを開いたら、必要に応じて、もう一度設定し直します。

なお、追加のパッケージを開いても [ファイル] からの設定には影響がありません。エディタの動作や AutoSuggest の設定は、パッケージによって上書きされる心配は無用です。


今回は、以上です。いろいろなところに、いろいろな設定があって、私はかなり混乱しましたが、まず [プロジェクトの設定]、その後で [ファイル] という順番で見ていけばいいかと思います。


2018年04月30日

提供された訳文と自分の訳文を区別する ー A どのメモリの訳文かを表示する

前回の続きで、提供された訳文と自分の訳文を区別する方法を説明したいと思います。

  1. 提供されたメモリは更新せず、自分の訳文は別のメモリに保存する。
  2. ヒットしてきた訳文が、どのメモリのものなのかひと目でわかるようにする。


前回の記事では「1. 提供されたメモリは更新せず、自分の訳文は別のメモリに保存する」方法を説明し、自分の訳文用のメモリを作成しました。さて、このような設定にしてメモリが複数存在する状態になると、今度は、翻訳作業中に訳文がヒットしてきたときに、いったいどのメモリからヒットしてきているのかを知りたくなります。

これを実現するために、私はメモリのフィールドを使用します。

17ー1.png

[翻訳結果] ウィンドウの右端に何やら文字が表示されていることがあると思います。これがメモリに設定されている「フィールド」です。フィールドは訳文と一緒に一覧されるので、複数の訳文がヒットしたときにとても便利です。上記の例では、自分のメモリに「自分の訳文」と表示されるように設定してあり、3 番目の訳文が「自分の訳文」です。

[翻訳結果] ウィンドウでは、訳文の 1 つを選択すると、ウィンドウの下部に選択した訳文のメモリ名が表示されます。ただ、これは訳文を選択しないと表示されないので、訳文が複数ヒットしてきた場合はそれぞれ選択する必要があり、少し不便です。

では、フィールドの設定方法を説明します。ステップは、次の 2 つです。(ちょっと面倒ですが、慣れればきっと大丈夫です。)

  1. フィールドを追加する。
  2. メモリに訳文が登録されるときにフィールドの値が更新されるようにする。


1. フィールドを追加する

まずは、メモリにフィールドを追加します。ここでは、自分のメモリに「MemoryType」という名前のフィールドを追加します。

[プロジェクトの設定] の [翻訳メモリと自動翻訳] の画面で、対象のメモリを選択し、[設定] をクリックします。選択したメモリの設定画面が開くので、左側のメニューで [フィールドと設定] を選択します。ここで、フィールドを設定します。


17-2.png


名前
フィールドの名前です。[翻訳結果] ウィンドウに表示されるので短い名前にすることをお勧めします。今回は、「MemoryType」としました。

種類
フィールドに設定する値の種類を選択します。今回は、[テキスト] を選択します。これで、文字列の値を設定できます。

属性値リスト
これは、 [種類] で [リスト] を選択したときに設定します。今回は無視します。

複数の値を許可する
フィールドに複数の値を設定できるようにするかどうかです。今回は無視します。

これで、フィールドが追加できました。

2. メモリに訳文が登録されるときにフィールドの値が更新されるようにする

フィールドを追加したら、メモリに訳文が登録されるときにそのフィールドの値が更新されるように設定します。ここでは、先ほど追加した「MemoyType」フィールドに「自分の訳文」という文字列が入力されるように設定します。

17-3.png


[プロジェクトの設定] の [翻訳メモリと自動翻訳] で、今度は [更新] を選択します。[フィールドの値] 画面が表示され、そこに先ほど追加したフィールドが自動的に表示されているはずです。[] 欄に設定したい文字列を入力します。 今回は、「自分の訳文」としました。

もし、追加したはずのフィールドが表示されてこない場合は、メモリの設定画面に戻り、以下のようにメモリの [更新] 列にチェックが入っていることを確認してください。メモリを更新する設定になっていないとフィールドは表示されてきません。

17-2.png


設定は以上です。これで、訳文を入力してその訳文がメモリに登録されると、「MemoryType」フィールドに「自分の訳文」という値が入力されます。

※※ すみません、以下の情報が間違っていたので、訂正させて頂きました。
※※ 以前の説明は「翻訳メモリビュー」の設定でした。「エディタ」の設定は以下のようになります。
※※ 混乱を招き、申し訳ございません。(2018/9/6)

さて、フィールドをちゃんと設定したのに [翻訳結果] ウィンドウにフィールドが表示されてこない!という場合は、フィールドが表示される設定になっているかどうかを確認します。これは、以下から確認できます。(今度は、[プロジェクトの設定] ではなく、[ファイル] です。)

[ファイル] -> [オプション] -> [エディタ] の
[翻訳結果ウィンドウ] と [訳語検索ウィンドウ] です。

それぞれのウィンドウについて、表示するかどうかと、表示する個数を設定できます。


fieldPNG.PNG


デフォルトで 3 つのフィールドを表示する設定になっています。あまりたくさん表示すると、訳文自体を表示するスペースが狭くなってしまいます。適当に調節してください。


今回は、以上です。少し複雑だったでしょうか。
私は、このフィールドの機能をなかなか理解できなかったのですが、翻訳会社さんに教えていただき、やっとなんとなくわかりました。個人で作業しているときはあまり必要のない機能ですが、種類の違うメモリが複数あってそれぞれを区別しなければならないときなどには便利です。



  








2018年04月28日

提供された訳文と自分の訳文を区別する ー @ メモリを分ける

翻訳会社さんからのお仕事では、既訳のメモリを提供され、料金はそのメモリとのマッチ率で割り引かれる、ということが多いと思います。そのような場合、私がとにかく気を付けているのは「提供された訳文と自分の訳文を区別しておく」ことです。

具体的には、次の 2 つのことを行います。

  1. 提供されたメモリは更新せず、自分の訳文は別のメモリに保存する。
  2. ヒットしてきた訳文が、どのメモリのものなのかひと目でわかるようにする。


この記事では、1 つ目の「提供されたメモリは更新せず、自分の訳文は別のメモリに保存する」方法を紹介します。2 つ目については、また次の記事で取り上げたいと思います。


まず、翻訳会社さんからメモリを提供された場合、そのメモリは更新せず、そのままとっておく方が安全です。後になってから、もともとの訳文を見たいと思うことはよくあるので、自分の訳文で更新してしまうのは避けたいところです。

じゃあ、自分の訳文はどうするかというと、別のメモリを作成してそこに保存するようにします。

     注記: 一部の翻訳会社さんのパッケージには「プロジェクト用メモリ」が設定されている場合があります。プロジェクト用メモリは、まさに、「自分の訳文をメインメモリとは別に保存する」ということをやってくれるのだと思いますが、私は、この「プロジェクト用メモリ」の動きがどうも理解できず、、、 結局、「プロジェクト用メモリ」が設定されていても、新たにメモリを作り、自分の訳文はそちらに保存するようにしています。


では、手順を説明しましょう。

1. 新しいメモリを作成する


17-1.png

まず、自分のメモリを保存するための新しいメモリを作成します。[プロジェクトの設定] -> [言語ペア] -> [翻訳メモリと自動翻訳] と選択して、メモリの設定画面を表示します。 [作成] -> [翻訳メモリの作成] をクリックして、表示された画面の指示に従ってメモリを作成します。いろいろ設定はありますが、とりあえず、画面の指示に従ってそのまま作成します。

新しく作成したメモリは、リストの最後に表示されます。このリストの順序はメモリの検索順序に影響します。一番上にあるメモリが最初に検索されるので、提供されたメモリを上に、自分のメモリは下に置いておくのがいいと思います。


2. 更新するメモリを設定する


メモリを作成したら、[更新] 列で、作成した自分のメモリだけをチェックし、ほかのメモリはチェックを外します。

17-2.png

これで、エディタで入力した訳文は「自分のメモリ.sdltm」だけに登録され、提供されたメモリには何の変更も加えられないことになります。

翻訳会社さんによっては、この状態まで設定したうえでパッケージを送ってきてくれることがあります。その場合、自分でメモリを作成する必要はないので、すぐに作業を開始できます。(助かります!)

また、翻訳会社さんからのパッケージでは、たまに、どのメモリにも [更新] のチェックが入っていないことがあります。翻訳会社さんはバイリンガル ファイルさえあればメモリはいらないので、「いずれのメモリも更新しない」という設定にしてくるのもわからなくはありません。ただ、作業を進めてしまってから、訳文がメモリに登録されていないことに気づくとちょっと悲しいので、更新されるメモリが設定されているどうかを作業前に確認しておくことをお勧めします。


3. ペナルティを設定する


[更新] のチェックさえ設定すれば作業を開始できますが、必要に応じて [ペナルティ] を設定しておくと便利です。このペナルティは、メモリのマッチ率を差し引くペナルティです。メモリごとに設定できるので、「特定メモリからのヒットについてはマッチ率を下げる」ということができます。

17-3.png

私は、自分のメモリにはペナルティ「1」を設定することが多いです。このようにしておくと、自分のメモリからのヒットがエディタ上で 100% マッチやコンテキスト マッチとなることを避けられます。

100% マッチやコンテキスト マッチは「作業対象外で!」と指示されることがあると思いますが、エディタ上で自分のメモリからのヒットが「100%」や「CM」と表示されてしまうと、どこが作業対象外だったのかわからなくなってしまいます。また、「作業対象外」でないとしても、提供されたメモリとの 100% マッチと、自分の訳文との 100% マッチでは、まったく意味が違ってきます。提供されたメモリとの 100% マッチなら、まあ軽く見直す感じですが、自分の訳文のときはそうはいかないですよね。

作業対象外の分節については、あらかじめロックしてきてくれる翻訳会社さんもありますが、なかなかそんな会社さんばかりではありません。Trados のデフォルト設定では、完全一致はロックがかかりますが、100% マッチとコンテキスト マッチはロックがかかりません。そのためか、「100% マッチとコンテキスト マッチは作業対象外だけどロックされていない」という状態のパッケージを受け取ることがたまにあります。(翻訳者としては、この状態はとても困ります。)

安全のため、ロックを使用する方が私は好きですが、ロックはマッチ率以外の条件で使用されることもあり、パッケージを受け取った翻訳者が勝手にロックをかけるわけにはいかない場合もあります。そのようなときでも、このペナルティを設定しておけば、自分の作業中に 100% マッチやコンテキスト マッチが新たに発生することがないので安心して作業できます。


今回は、以上です。メモリの作成は慣れてしまえばとても簡単です。ちょっとひと手間ではありますが、あとあとのことを考えると、やはり自分用のメモリを作成して作業するのが安全かと思います。

次回は、2 つ目の「ヒットしてきた訳文が、どのメモリのものなのかひと目でわかるようにする」方法を紹介したいと思います。これも、設定の手間はかかりますが、私はとても便利に感じています!











2018年04月22日

Trados の正規表現は .NET です

Trados では、検索、フィルタ、QA Checker など、正規表現を使うことがよくあります。私は、どなたかが書いてくれたものを拝借することが多いのですが、最近になってようやくヘルプを調べて、.NET だということを知りました。

14.png


.NET なんですね。Perl でも、Java でもないですよ。ましてや、秀丸なんかでも当然ありません。

ちなみに、参照先として記載されている「正規表現」のリンクをクリックしても、.NET の説明のページにジャンプできるわけではありません。リンク先は、http://www.regular-expressions.info/reference.html で、正規表現全般を説明するページです。確かに、少し下にスクロールすると .NET 構文へのリンクもあるにはありますが、、、


私は、.NET 構文のリファレンスとして以下のページを使っています。

正規表現言語 - クイック リファレンス
https://docs.microsoft.com/ja-jp/dotnet/standard/base-types/regular-expression-language-quick-reference

これは、マイクロソフトの日本語ページです。マニュアル翻訳者として見るとツッコミどころ満載のページではありますが、タイトルのとおり、「クイック リファレンス」としては役立ちます。

正規表現が初めてという方は、このページを見ても何がなんだかよくわからないと思います。ただ、正規表現を一応理解したうえで、「あの表現、どうやって書くんだっけ?」と調べる用途には使えます。

私は、.NET 構文だとわかったところで、正規表現をすらすらと書けるわけではないのですが、まあなんとか頑張りたいと思います。



 


2018年04月19日

意外と使える「印刷プレビュー」

Trados で作業する場合、私は、翻訳後のチェック作業として、なんとか Trados のエディタ以外で訳文を表示して読み返すようにしています。よく使うのは、訳文生成やプレビューの機能ですが、これらの機能は、ファイルの種類やバージョン、その他よくわからないエラーなどの都合で、使えないことがよくあります。

で、最近になって存在を知ったのが「印刷プレビュー」です。これは、エディタの画面を印刷するときのイメージをブラウザーでプレビューするという機能です。「印刷プレビュー」という名前ではありますが、意外といろいろな機能が揃っていて便利です! エディタの画面の印刷イメージなので、レイアウトの再現性はほとんどありませんが、「Trados のエディタ以外で訳文を表示する」という目的は果たせます。

以下の方法で表示できます。
メニュー選択:[ファイル] -> [印刷 & 表示] -> [印刷プレビュー]
ショートカットキー:Ctrl+P

13-1.png

たとえば、こんな感じで表示されます。

原文の Word 文書
13キャプチャ.PNG



ブラウザーに表示された「印刷プレビュー」
  13-3.png

どうですか?? 意外ときれいに表示されると思いませんか?
Word の場合は、文字のサイズや色、書式設定 (下線と太字は ○、斜体は ×) などがある程度再現されます。

さらに、右上端の [オプション] を開くと、以下のような設定ができます。

  13-4.png

[訳文の出所の表示]
このチェックを外すと、カラーキーで設定されている色が表示されなくなります。より原文に近い表示になるので、マッチ率が関係ないときはチェックを外します。チェックを外してもロックされている分節はグレー背景のままです。

[テキストのみ表示] と [タグの表示]
タグを表示するかどうかの設定です。一部の書式設定タグは、書式としては再現されませんが、[タグの表示] を選択すればタグとして表示されるので、それで確認することもできます。

[カラーキー]
マッチ率によってカラーリングされます。ここにはリストされていませんが、100% マッチもコンテキストマッチと同じ緑色で表示されます。また、100% マッチやコンテキストマッチでも、編集を加えた分節は、インタラクティブ翻訳 (?) として黒色で表示されます。

なんだか、とても「印刷プレビュー」とは思えない充実ぶりです。

メリット

速い − 訳文生成などはしないので、とにかくすぐに表示されます。
・ファイルの種類を選ばない − エラーなどで訳文生成できないファイルでも表示されます。
分節ごとではなく、パラグラフごとに表示される − これは、訳文をチェックする段階ではかなり重要です。エディタでは分節ごとに枠線が入るので、どうしても分節単位で訳文を読んでしまいますが、枠線がなくなるだけで、なんとなく全体を通して読めるようになります。

デメリット

表、図など、レイアウトはほとんど再現されない − 表は再現されません。PowerPoint などの場合は、ちょっと厳しいかもしれないです。
毎回、新しく表示され、カーソルが先頭に戻る − エディタでどこを編集していたかにかかわらず、プレビューは必ずカーソルが先頭にある状態で表示されます。大きい文書のときは該当箇所を探すのにひと手間かかります。
変更履歴は履歴付きで表示される − 履歴付きの状態で表示されます。変更後のテキストだけを表示することはできません。

以上です。最近まで、私はこんな機能があることを知らず 、、 見つけたときはちょっとびっくりしました。Trados では、訳文生成やプレビューができない!ということがよくあるので、そんなときの最終手段として「印刷プレビュー」は役立ちそうです。



2018年04月01日

Trados のエディタが落ちる!

最近、Trados のエディタがよく落ちます。
何やら、いつのまにかエディタの画面がなくなっていることがたびたびあり、困ったなぁと思っていました。

で、ようやく、1 つの傾向に気づきました。
外部プログラムで表示したプレビューの画面を手動で閉じると Trados のエディタが落ちる!


エディタがよく落ちるのは、office 文書のときです。特に、PowerPoint が最悪な気がします。Word のときも落ちる気がしますが、PowerPoint よりはいいかもしれないです。Excel はあまり落ちない気がします。

Trados のプレビュー機能には、Trados 内のプレビュー画面に訳文を表示する方法と、Word や PowerPoint など原文のプログラムを使って完全に別画面で訳文を表示する方法の 2 種類があります。

Trados 内でプレビュー画面を表示しているとエディタ全体の動きが不安定になるような感じがするので、私は、もっぱら、別画面でプレビューしています。


原文のプログラムを使って別画面で訳文をプレビューする手順は、以下のとおり。

マウス操作なら、[ファイル] > [印刷 & 表示] > [表示方法] > [訳文の XXX]

キーボード操作なら、Ctrl+Shit+P


この方法で表示された PowerPoint などの画面を、右上端の [x] をクリックして閉じると、Trados のエディタがエラーで落ちてしまうのです。
表示されるエラーは、Trados でよくあるこんな感じです。

12-1.png

訳文を入力して、Ctrl+Shit+P でプレビューして、さてさてもう一度エディタに戻ろうと思うと、エディタがない! ということになります。

対処方法は、以下に気を付ける以外、今のところ思いつきません。

1. エディタ上で保存してから、プレビューする。
2. プレビューの画面を手動で閉じない。

実は、プレビューで表示された画面は自ら手動で閉じる必要はありません。前の画面を開いたまま、再度 Ctrl+Shit+P を押すと、自動で前のプレビューを閉じて新しいプレビューを表示してくれます。(起動しなおしているようなので、時間はかかります。)

最近、プレビューの前に保存する癖がついてきましたが、うっかりすることもたまにあり、泣きたくなります。