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2018年10月23日
【前編】フラグメント一致に関する設定
SDL Trados Studio 2017 から「フラグメント一致」という言葉をよく聞くようになったと思います。私にとってはまだまだ不慣れな機能なので、今回はこれに関する各種設定を自分の備忘録も兼ねてまとめてみました。(後編の記事はこちらへ)
「フラグメント一致」は「upLIFT テクノロジー」によって実現される機能の 1 つです。upLIFT テクノロジーでは、フラグメント一致だけでなく「あいまい一致の自動修正」という機能も実現されています。upLIFT テクノロジーとは、簡単に言えば、分節の中の単語 (フラグメント) レベルで一致を見つけてくれるテクノロジーのようです。この記事のタイトルはわかりやくするため「フラグメント一致」としましたが、記事の内容は、フラグメント一致に限らず、upLIFT テクノロジーが関係する各種設定ということで進めたいと思います。
upLift テクノロジーについては、以前の記事「「2017 SR1 アップグレード セミナー」に参加してみました」で少し紹介しました。詳細については、SDL の公式ブログ「SDL Trados Studio 2017 SR1におけるupLIFTの日本語対応と解析結果の差異について」が参考になります。
upLIFT テクノロジーが関係する機能の設定を以下の表にまとめました (私が見つけられた限りです。ほかにもありましたら、ぜひご意見ください)。今回の前編の記事では「プロジェクトの設定」を取り上げます。そのほかの設定は、次回の後編で紹介したいと思います。


ここが、フラグメント一致の検索動作そのものに影響を与えるメインの設定です。[TU 全体] はチェックボックスになっていないので、有効無効を切り替えることはできません。つまり、「フラグメント一致」の機能そのものを無効にする設定はないようです。(私が探した限り、ありませんでした。)
[TU のフラグメント] は、分節全体ではなく、その中の一部だけ一致したものを表示するかどうかです。これは、デフォルトではオフですが、オンにした方がヒットが多くなります。また、単語数は、以前に SDL のセミナーで、日本語原文のときは「2」に設定するとよいと説明されました。
まず、[TU のフラグメント] チェックボックスをオンにすると、下図の右側のように赤色のマークの付いたヒットが表示されるようになります。これが「TU のフラグメント」です。一番上に表示されている青色のマークは、「スペース」という文字列だけの分節があることを意味しており「TU 全体」として表示されています。

さらに、単語数を変えると下図のようになります (ここでは、[一致の最小単語数] と [一致に含める最小重要単語数] の両方に同じ値を設定しました)。単語数を少なくした方がヒットが多くなります。「2」にすると、少し多すぎるようにも思えますが、「設定」という 2 文字の単語の訳語が表示されてきます。日本語の場合、漢字 2 文字の単語はよくあるのでちょっと便利かもしれません。

「単語数」の設定なのに文字数になってる??という疑問が湧いてはきますが、あまり深く考えないことにします。まずは「2」に設定してみる、ヒットが多すぎるようだったら「3」にしてみる、という感じで私は使っています。
[Match Repair の使用] では、「あいまい一致の自動修正」の有効無効を切り替えます。デフォルトで [エディタ] のみオンになっています。つまり、エディタで普通に作業するときに、この機能が有効ということです。これが有効の場合、メモリの検索結果に、自動で修正が加えられた訳文が表示されてきます。修正が加えられているかどうかは、一致率のところに
のようにスパナのアイコンがあることでわかります。

この「あいまい一致の自動修正」ですが、エディタで有効にしていると、エディタの動きが著しく遅くなることがあります。私の経験では、メモリがたまってきて自動修正がうまく機能するようになってきたかなぁ、とちょうど思う頃から検索結果がなかなか返ってこなくなり、耐えられなくなることが多いです。そのような場合は、以前の記事「Trados のエディタの動きが遅い!」でも紹介しましたが、この機能をオフにします。
同じページの下部には、[Match Repair ソース] という設定※2もあります。これは、修正の参考にするソースという意味だと思われます。翻訳メモリで機械翻訳を使用するように設定している場合に限り、有効無効を切り替えられます。私は、機械翻訳を使って仕事をすることがあまりないのですが、もし使える環境なら有効にした方がいいのかもしれないです。
※2 バージョン 2019 では、この設定のオプションが増えており、用語集についても有効無効を切り替えられるようです。

これは、文字数のカウント方法に関する設定で、メモリとの一致率に影響がでてきます。プロジェクトの設定の一番上にある [プロジェクト] から設定します。オフ (= 使用しない) にすると、upLIFT テクノロジーが有効であっても文字単位で一致率が計算されます。原語が日本語などのアジア言語のときにのみ考慮する必要のある設定で、原語が英語のときは無視できると思います。詳細は、SDL の公式ブログ「SDL Trados Studio 2017 SR1におけるupLIFTの日本語対応と解析結果の差異について」を参照してください。日英翻訳のとき、料金が文字ベースなら、ここはオフになっているべきです。
この設定は、以前に SDL のセミナーで「カウントに影響する」と説明された記憶があるので私はそのように理解していますが、UI の文言には「カウント」や「解析」といった言葉は一切入っておらず、カウントに影響するだけなのか、検索機能そのものに影響があるのか、実際にはよくわかりません。ただ、これまでの私の経験では、ここがオフでも、エディタでは普通に upLIFT テクノロジーが機能するように思います。
前編の今回は以上です。残りの設定は次の後編の記事で説明したいと思います。といっても、実は、デフォルトから変更する必要のある設定は、最初に説明した検索オプションの [TU のフラグメント] くらいです。後は、あまり気にせず、デフォルトのままでなんとなく適当に動くような気がします。
「フラグメント一致」は「upLIFT テクノロジー」によって実現される機能の 1 つです。upLIFT テクノロジーでは、フラグメント一致だけでなく「あいまい一致の自動修正」という機能も実現されています。upLIFT テクノロジーとは、簡単に言えば、分節の中の単語 (フラグメント) レベルで一致を見つけてくれるテクノロジーのようです。この記事のタイトルはわかりやくするため「フラグメント一致」としましたが、記事の内容は、フラグメント一致に限らず、upLIFT テクノロジーが関係する各種設定ということで進めたいと思います。
upLift テクノロジーについては、以前の記事「「2017 SR1 アップグレード セミナー」に参加してみました」で少し紹介しました。詳細については、SDL の公式ブログ「SDL Trados Studio 2017 SR1におけるupLIFTの日本語対応と解析結果の差異について」が参考になります。
注記:今回の説明に使っている Trados は、バージョン 2017 SR1 (正確には、2017 SR1 14.1.10012.29730) です。最新の 2019 では一部変わっているところがあるようです。 |
upLIFT テクノロジーが関係する機能の設定を以下の表にまとめました (私が見つけられた限りです。ほかにもありましたら、ぜひご意見ください)。今回の前編の記事では「プロジェクトの設定」を取り上げます。そのほかの設定は、次回の後編で紹介したいと思います。
プロジェクトの設定:
[言語ペア] > [翻訳メモリと自動翻訳] > [検索] > [upLIFT 用のフラグメント一致のオプション]
[言語ペア] > [翻訳メモリと自動翻訳] > [検索] > [upLIFT 用のフラグメント一致のオプション]

ここが、フラグメント一致の検索動作そのものに影響を与えるメインの設定です。[TU 全体] はチェックボックスになっていないので、有効無効を切り替えることはできません。つまり、「フラグメント一致」の機能そのものを無効にする設定はないようです。(私が探した限り、ありませんでした。)
[TU のフラグメント] は、分節全体ではなく、その中の一部だけ一致したものを表示するかどうかです。これは、デフォルトではオフですが、オンにした方がヒットが多くなります。また、単語数は、以前に SDL のセミナーで、日本語原文のときは「2」に設定するとよいと説明されました。
まず、[TU のフラグメント] チェックボックスをオンにすると、下図の右側のように赤色のマークの付いたヒットが表示されるようになります。これが「TU のフラグメント」です。一番上に表示されている青色のマークは、「スペース」という文字列だけの分節があることを意味しており「TU 全体」として表示されています。

さらに、単語数を変えると下図のようになります (ここでは、[一致の最小単語数] と [一致に含める最小重要単語数] の両方に同じ値を設定しました)。単語数を少なくした方がヒットが多くなります。「2」にすると、少し多すぎるようにも思えますが、「設定」という 2 文字の単語の訳語が表示されてきます。日本語の場合、漢字 2 文字の単語はよくあるのでちょっと便利かもしれません。

「単語数」の設定なのに文字数になってる??という疑問が湧いてはきますが、あまり深く考えないことにします。まずは「2」に設定してみる、ヒットが多すぎるようだったら「3」にしてみる、という感じで私は使っています。
プロジェクトの設定:
[言語ペア] > [一致の修正] > [Match Repair の使用] と [Match Repair ソース]
[言語ペア] > [一致の修正] > [Match Repair の使用] と [Match Repair ソース]
[Match Repair の使用] では、「あいまい一致の自動修正」の有効無効を切り替えます。デフォルトで [エディタ] のみオンになっています。つまり、エディタで普通に作業するときに、この機能が有効ということです。これが有効の場合、メモリの検索結果に、自動で修正が加えられた訳文が表示されてきます。修正が加えられているかどうかは、一致率のところに


この「あいまい一致の自動修正」ですが、エディタで有効にしていると、エディタの動きが著しく遅くなることがあります。私の経験では、メモリがたまってきて自動修正がうまく機能するようになってきたかなぁ、とちょうど思う頃から検索結果がなかなか返ってこなくなり、耐えられなくなることが多いです。そのような場合は、以前の記事「Trados のエディタの動きが遅い!」でも紹介しましたが、この機能をオフにします。
同じページの下部には、[Match Repair ソース] という設定※2もあります。これは、修正の参考にするソースという意味だと思われます。翻訳メモリで機械翻訳を使用するように設定している場合に限り、有効無効を切り替えられます。私は、機械翻訳を使って仕事をすることがあまりないのですが、もし使える環境なら有効にした方がいいのかもしれないです。
※2 バージョン 2019 では、この設定のオプションが増えており、用語集についても有効無効を切り替えられるようです。
プロジェクトの設定:
[プロジェクト] > [原文がアジア言語の場合に単語単位のトークン化を使用する]
[プロジェクト] > [原文がアジア言語の場合に単語単位のトークン化を使用する]

これは、文字数のカウント方法に関する設定で、メモリとの一致率に影響がでてきます。プロジェクトの設定の一番上にある [プロジェクト] から設定します。オフ (= 使用しない) にすると、upLIFT テクノロジーが有効であっても文字単位で一致率が計算されます。原語が日本語などのアジア言語のときにのみ考慮する必要のある設定で、原語が英語のときは無視できると思います。詳細は、SDL の公式ブログ「SDL Trados Studio 2017 SR1におけるupLIFTの日本語対応と解析結果の差異について」を参照してください。日英翻訳のとき、料金が文字ベースなら、ここはオフになっているべきです。
この設定は、以前に SDL のセミナーで「カウントに影響する」と説明された記憶があるので私はそのように理解していますが、UI の文言には「カウント」や「解析」といった言葉は一切入っておらず、カウントに影響するだけなのか、検索機能そのものに影響があるのか、実際にはよくわかりません。ただ、これまでの私の経験では、ここがオフでも、エディタでは普通に upLIFT テクノロジーが機能するように思います。
前編の今回は以上です。残りの設定は次の後編の記事で説明したいと思います。といっても、実は、デフォルトから変更する必要のある設定は、最初に説明した検索オプションの [TU のフラグメント] くらいです。後は、あまり気にせず、デフォルトのままでなんとなく適当に動くような気がします。
タグ:2017 SR1 フラグメント一致 upLIFT テクノロジー TU のフラグメント 一致の修正 Match Repair の使用 原文がアジア言語の場合に単語単位のトークン化を使用する 文字数 カウント あいまい一致の自動修正
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2018年10月14日
変更履歴は本当に必要?
私は翻訳作業がメインですが、レビューの仕事もたまに引き受けます。お値段的にはあまり魅力的な仕事ではないのですが、勉強だと思って作業しています。

さて、このレビュー作業のときは、たいていの翻訳会社が「変更履歴を残してください」と指示してきます。変更履歴を有効にする操作は簡単で、リボン上の [変更履歴の記録] をクリックするだけです。このボタンが上図のようにハイライトされている状態であれば、変更履歴が記録されます。バイリンガル ファイルを開くときに「翻訳用」ではなく「レビュー用」に開けばデフォルトで有効になります。また、パッケージがレビュー用にきちんと設定されていれば、おそらく、デフォルトで有効になると思います。
デフォルトで有効になるという Trados の動作からしても、変更履歴の使用はかなり一般的になっているようです。ただ、変更履歴を残すといろいろな機能やツールが使えなくなるので、私はいつも困ったなぁと思っていました。そんな中、ある翻訳会社さんが
変更した箇所は後でツールで確認できるので、変更履歴を残さなくて結構です。
と言ってきてくれたのです。なんとすばらしい!! 変更履歴なしの方が断然作業しやすいのでとても助かりました。
具体的には、以下のような機能やツールが変更履歴に対応していません。ある程度の量のある文書では欠かせないものばかりです。
1) 複数の分節のコピー

上図のように、複数の分節をバーッと選択してコピーすると、変更履歴が認識されず、削除した文字列も含めてコピーされてしまいます。Trados のエディタではこれが最大の問題かもしれません。全体の訳文を一気にコピーして Word などの外部ツールに貼り付けるという操作ができないので、Trados 以外のツールでチェックをしたい場合に困ります。ちなみに、1 つの分節だけを選択してコピーすると、変更履歴は正常に認識され、変更後の文字列だけがコピーされてきます。
2) 用語集への登録 (Ctrl+F2 または Ctrl+Shift+F2)
原文と訳文でそれぞれ単語を選択してワンアクションで用語集に登録できる機能です。変更履歴は認識されず、削除した文字列も含めて登録されてしまいます。
レビューの段階で用語集への登録が必要になることあまりないのですが、この機能の使用が便利なケースがたまにあります。それは「不明 UI をリストアップしてください」などと指示されるケースです。こうした場合、コメント機能 (後述します) も便利ですが、ファイル名や分節番号などの付加情報が必要なければ、原語と訳語のペアをワンアクションで登録できる用語集の方が便利です。作業中はひたすら用語集に登録していき、作業後に、用語集を Excel に変換して納品します (用語集の変換については、また別の機会に)。
こうしたリストアップの作業、本来は翻訳の段階でやってくるべきかと思うのですが、翻訳者に指示しなかったのか、翻訳者が指示どおりに作業しなかったのか、どういう理由かはわかりませんが、レビュアーに回ってくることが少なくありません。(割に合いません!!)
3) 高度な表示フィルタ

これも、変更履歴は認識されず、削除した文字列も含めた文字列が検索対象となります。「高度な表示フィルタ」は、以前の記事で紹介した「タグの中の文字も検索できる」という動作から考えても、入力されている文字をそのまま検索しているようです。
なお、リボンの [レビュー] タブには「高度」ではない通常の「表示フィルタ」もあります。こちらは、変更履歴に対応しており、変更後の文字列で検索を行います。
4) 印刷プレビュー

変更履歴付きでしか表示できません。変更履歴であることは認識されているので、完全に対応していないわけではないのですが、やはり、変更後の最終版の表示が欲しいところです。
1) Comment View Plugin
コメントを Excel ファイルにエクスポートしてくれるプラグインです。とても便利なので私はよく使っていますが、変更履歴が認識されず、削除した文字列も含めてそのままの文字列が書き出されてしまいます。
上述の用語集と異なり、コメント機能ではファイル名と分節番号が自動的に記録されるので、翻訳会社さんに申し送り事項をまとめて提出するときなどはこの機能が便利です。が、使えないんですよね (>_<)
2) SegmentSearcher
検索機能のプラグインのひとつで、エディタ上で文字列を選択してショートカット キー (Alt+F10) を押すと、検索結果を別ウィンドウに一覧表示してくれます。別ウィンドウが表示されるので、エディタ上のカーソルは編集中の分節から移動することがなく、この単語は前にどう訳したかな?と思って調べるときにとても便利です。これも変更履歴を認識せず、削除した文字列も含めて検索されてしまいます。
1) Xbench
私の場合、この影響が最も大きいです。検索やチェックに多くの方が使っていると思います。最新バージョンは有料ですが V2.9 までは無料ということもあり、私はかなりお世話になっています (詳しい使い方などは、また別記事で紹介したいと思います)。ある程度のボリューム以上のプロジェクトでは、こうしたツールの使用が欠かせません。
どうしても Xbench を使いたいときは、変更履歴付きの sdlxliff ファイルをどこか別の場所にコピーした後で、変更履歴をすべて適用してしまいます。この変更履歴を適用した sdlxliff ファイルを Xbench に読み込み、Trados の方は、コピーしておいた変更履歴付きの sdlxliff ファイルに戻します。
2) QA Distiller
これもチェック ツールです。ある翻訳会社さんから指定されて使っていました。ただ、変更履歴付きでという指示がありながら、このツールでチェックをしてくださいと言われたことがあり、それはできませんが... と伝えると、変更履歴は残さなくてよいという指示に変わりました。やっぱり、ツールでのチェックの方が重要ですよね。
今回は以上です。変更履歴自体はとても便利な機能です。Trados も、メモリへの登録や検証機能など、メインの機能はほとんど対応しています。ただ、ただ、全体的にもう少しなんですね。外部ツールなどにも影響しないようになれば、完璧なんですが。難しいでしょうかねぇ。


さて、このレビュー作業のときは、たいていの翻訳会社が「変更履歴を残してください」と指示してきます。変更履歴を有効にする操作は簡単で、リボン上の [変更履歴の記録] をクリックするだけです。このボタンが上図のようにハイライトされている状態であれば、変更履歴が記録されます。バイリンガル ファイルを開くときに「翻訳用」ではなく「レビュー用」に開けばデフォルトで有効になります。また、パッケージがレビュー用にきちんと設定されていれば、おそらく、デフォルトで有効になると思います。
デフォルトで有効になるという Trados の動作からしても、変更履歴の使用はかなり一般的になっているようです。ただ、変更履歴を残すといろいろな機能やツールが使えなくなるので、私はいつも困ったなぁと思っていました。そんな中、ある翻訳会社さんが
変更した箇所は後でツールで確認できるので、変更履歴を残さなくて結構です。
と言ってきてくれたのです。なんとすばらしい!! 変更履歴なしの方が断然作業しやすいのでとても助かりました。
具体的には、以下のような機能やツールが変更履歴に対応していません。ある程度の量のある文書では欠かせないものばかりです。
Trados 本体の機能
1) 複数の分節のコピー

上図のように、複数の分節をバーッと選択してコピーすると、変更履歴が認識されず、削除した文字列も含めてコピーされてしまいます。Trados のエディタではこれが最大の問題かもしれません。全体の訳文を一気にコピーして Word などの外部ツールに貼り付けるという操作ができないので、Trados 以外のツールでチェックをしたい場合に困ります。ちなみに、1 つの分節だけを選択してコピーすると、変更履歴は正常に認識され、変更後の文字列だけがコピーされてきます。
2) 用語集への登録 (Ctrl+F2 または Ctrl+Shift+F2)
原文と訳文でそれぞれ単語を選択してワンアクションで用語集に登録できる機能です。変更履歴は認識されず、削除した文字列も含めて登録されてしまいます。
レビューの段階で用語集への登録が必要になることあまりないのですが、この機能の使用が便利なケースがたまにあります。それは「不明 UI をリストアップしてください」などと指示されるケースです。こうした場合、コメント機能 (後述します) も便利ですが、ファイル名や分節番号などの付加情報が必要なければ、原語と訳語のペアをワンアクションで登録できる用語集の方が便利です。作業中はひたすら用語集に登録していき、作業後に、用語集を Excel に変換して納品します (用語集の変換については、また別の機会に)。
こうしたリストアップの作業、本来は翻訳の段階でやってくるべきかと思うのですが、翻訳者に指示しなかったのか、翻訳者が指示どおりに作業しなかったのか、どういう理由かはわかりませんが、レビュアーに回ってくることが少なくありません。(割に合いません!!)
3) 高度な表示フィルタ

これも、変更履歴は認識されず、削除した文字列も含めた文字列が検索対象となります。「高度な表示フィルタ」は、以前の記事で紹介した「タグの中の文字も検索できる」という動作から考えても、入力されている文字をそのまま検索しているようです。
なお、リボンの [レビュー] タブには「高度」ではない通常の「表示フィルタ」もあります。こちらは、変更履歴に対応しており、変更後の文字列で検索を行います。
4) 印刷プレビュー

変更履歴付きでしか表示できません。変更履歴であることは認識されているので、完全に対応していないわけではないのですが、やはり、変更後の最終版の表示が欲しいところです。
Trados のプラグイン
1) Comment View Plugin
コメントを Excel ファイルにエクスポートしてくれるプラグインです。とても便利なので私はよく使っていますが、変更履歴が認識されず、削除した文字列も含めてそのままの文字列が書き出されてしまいます。
上述の用語集と異なり、コメント機能ではファイル名と分節番号が自動的に記録されるので、翻訳会社さんに申し送り事項をまとめて提出するときなどはこの機能が便利です。が、使えないんですよね (>_<)
2) SegmentSearcher
検索機能のプラグインのひとつで、エディタ上で文字列を選択してショートカット キー (Alt+F10) を押すと、検索結果を別ウィンドウに一覧表示してくれます。別ウィンドウが表示されるので、エディタ上のカーソルは編集中の分節から移動することがなく、この単語は前にどう訳したかな?と思って調べるときにとても便利です。これも変更履歴を認識せず、削除した文字列も含めて検索されてしまいます。
外部ツール
1) Xbench
私の場合、この影響が最も大きいです。検索やチェックに多くの方が使っていると思います。最新バージョンは有料ですが V2.9 までは無料ということもあり、私はかなりお世話になっています (詳しい使い方などは、また別記事で紹介したいと思います)。ある程度のボリューム以上のプロジェクトでは、こうしたツールの使用が欠かせません。
どうしても Xbench を使いたいときは、変更履歴付きの sdlxliff ファイルをどこか別の場所にコピーした後で、変更履歴をすべて適用してしまいます。この変更履歴を適用した sdlxliff ファイルを Xbench に読み込み、Trados の方は、コピーしておいた変更履歴付きの sdlxliff ファイルに戻します。
2) QA Distiller
これもチェック ツールです。ある翻訳会社さんから指定されて使っていました。ただ、変更履歴付きでという指示がありながら、このツールでチェックをしてくださいと言われたことがあり、それはできませんが... と伝えると、変更履歴は残さなくてよいという指示に変わりました。やっぱり、ツールでのチェックの方が重要ですよね。
今回は以上です。変更履歴自体はとても便利な機能です。Trados も、メモリへの登録や検証機能など、メインの機能はほとんど対応しています。ただ、ただ、全体的にもう少しなんですね。外部ツールなどにも影響しないようになれば、完璧なんですが。難しいでしょうかねぇ。

タグ:プラグイン コメント 用語集 変更履歴 変更履歴の記録 表示フィルタ SegmentSearcher 高度な表示フィルタ Comment View Plugin QA Distiller クイック追加 新しい用語の追加 Xbench 印刷プレビュー
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2018年09月29日
ショートカット キーの設定
Trados では、いろいろなショートカット キーを設定できますが、この設定がなかなか一筋縄ではいきません。設定できなかったり、設定しても機能しなかったり、設定していないのに機能したり、とかなり不可解な動きをします。今回は、私が遭遇して少し困ってしまった現象を例に、ショートカット キーの設定方法を紹介したいと思います。
さて、その困った現象とは CapsLock キーです。最近、ATOK を使い始めたのですが、以前の記事で紹介したように、入力文字種を「半角英字」に変更するために CapsLock キーを単独で使う機会が増えました。で、Trados のエディタで
CapsLock キーを押すと「返却パッケージの作成」ダイアログボックスが表示されてくる
のです。ATOK の導入以前は CapsLock キーを単独で使うことがあまりなかったので、これまでこの現象に気付かなかったのだと思います。
いきなりダイアログボックスが表示されるという現象が何回か続いた後に、これは CapsLock キーが原因かもしれないと思い Google で検索してみました。すると、proz.com にぴったりな情報がありました!

何も設定されていないけど動くので、解決方法としては「使わないキーを設定する」ということのようです。まあ、Trados ならそんなこともあるよねぇとちょっと妙な納得をして、早速、ショートカット キーの設定画面を開きました。
ショートカット キーは、以下のように、[ファイル] > [オプション] の [ショートカット キー] で設定します。正直に言って、たくさんありすぎて、目的のものを探すのはひと苦労です。

根気よく探すしかありませんが、一応、以下の操作が可能です。
左側に表示される「@ 場所」の一覧では、プロジェクト ビュー、ファイル ビュー、エディタ ビューなど、ショートカット キーを使う画面を選択できます。一番上の「ショートカット キー」を選択すると、すべてのショートカット キーが表示されます。
「A アクション名」と「B ショートカット キー」は、表の項目名をクリックすると並べ替えられます。「A アクション名」の並び順は、記号 > 数字 > ローマ字のアルファベット順 > カタカナとひらがなのあいうえお順 > 漢字の読み方のあいうえお順、という感じです。アクション名自体がわかりにくいので、並べ替えても探すのは難しいです。
アクション名にマウス ポインターを合わせると、ヒントが表示されます。たとえば、下図のように、アクション名は単に「次へ」となっていても、ヒントには「次のコメントに移動」と表示されます。これで、アクションの内容がわかる場合もあります。

今回の proz.com の回答では親切に「プロジェクト」と書いてくれているので、左側の場所の一覧から「プロジェクト」を選択します。選択すると、右側に「返却パッケージの作成」というアクションが表示されるので、そこにショートカット キーを設定します。

これで今回の私の問題は解決したのですが、どうもすっきりしません。なぜこのショートカット キーが「プロジェクト」の中に??という疑問が残ります。私が CapsLock キーを押したのは、プロジェクト ビューではなく、エディタ ビューです。でも、「エディタ」の中には「返却パッケージの作成」アクションはありません。さらに、実は「返却パッケージの作成」アクションは「ファイル」の中にもあります。なので、全部を一覧表示する「ショートカット キー」の中には「返却パッケージの作成」アクションが 2 つあります。

2 つあることで、プロジェクト ビューとファイル ビューで別々のショートカット キーを設定できるという効果があります。このため、自分でショートカット キーを設定するときは、まずどこで使うのかを選択し、その後でアクションを探す必要があることになります。といっても、今回のように、「プロジェクト」のアクションが「エディタ」で動くということはあるようですが...
今回は、以上です。改めて記事にしてみると皆さんにとってそんなに有用な情報ではないような気もしてきました。ショートカット キーの設定が複雑なのは Trados に限った話でもありませんし。ただ、私がこの CapsLock キーの現象に遭遇したのは少し仕事が詰まっている時期で、かなりのストレスだったので、半分は愚痴のようなものですが記事にしてしまいました。最後までお付き合いくださり、ありがとうございました。
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さて、その困った現象とは CapsLock キーです。最近、ATOK を使い始めたのですが、以前の記事で紹介したように、入力文字種を「半角英字」に変更するために CapsLock キーを単独で使う機会が増えました。で、Trados のエディタで
CapsLock キーを押すと「返却パッケージの作成」ダイアログボックスが表示されてくる
のです。ATOK の導入以前は CapsLock キーを単独で使うことがあまりなかったので、これまでこの現象に気付かなかったのだと思います。
(注記) | |
今回の現象は、Trados を古いバージョンからアップグレードし続けてきたことが原因なのかもしれません。バージョン 2017 を新規インストールした PC ではこんな現象は発生していないような気がします (すみません、ちょっといろいろ試していたら、記憶があいまいになってしまい確信はないのですが)。 |
いきなりダイアログボックスが表示されるという現象が何回か続いた後に、これは CapsLock キーが原因かもしれないと思い Google で検索してみました。すると、proz.com にぴったりな情報がありました!

何も設定されていないけど動くので、解決方法としては「使わないキーを設定する」ということのようです。まあ、Trados ならそんなこともあるよねぇとちょっと妙な納得をして、早速、ショートカット キーの設定画面を開きました。
ショートカット キーは、以下のように、[ファイル] > [オプション] の [ショートカット キー] で設定します。正直に言って、たくさんありすぎて、目的のものを探すのはひと苦労です。
根気よく探すしかありませんが、一応、以下の操作が可能です。
- @ 場所を選ぶ
- A アクション名で並べ変える
- B 設定されているショートカット キーで並べ変える
左側に表示される「@ 場所」の一覧では、プロジェクト ビュー、ファイル ビュー、エディタ ビューなど、ショートカット キーを使う画面を選択できます。一番上の「ショートカット キー」を選択すると、すべてのショートカット キーが表示されます。
「A アクション名」と「B ショートカット キー」は、表の項目名をクリックすると並べ替えられます。「A アクション名」の並び順は、記号 > 数字 > ローマ字のアルファベット順 > カタカナとひらがなのあいうえお順 > 漢字の読み方のあいうえお順、という感じです。アクション名自体がわかりにくいので、並べ替えても探すのは難しいです。
- C アクション名のヒントを表示
アクション名にマウス ポインターを合わせると、ヒントが表示されます。たとえば、下図のように、アクション名は単に「次へ」となっていても、ヒントには「次のコメントに移動」と表示されます。これで、アクションの内容がわかる場合もあります。
今回の proz.com の回答では親切に「プロジェクト」と書いてくれているので、左側の場所の一覧から「プロジェクト」を選択します。選択すると、右側に「返却パッケージの作成」というアクションが表示されるので、そこにショートカット キーを設定します。
これで今回の私の問題は解決したのですが、どうもすっきりしません。なぜこのショートカット キーが「プロジェクト」の中に??という疑問が残ります。私が CapsLock キーを押したのは、プロジェクト ビューではなく、エディタ ビューです。でも、「エディタ」の中には「返却パッケージの作成」アクションはありません。さらに、実は「返却パッケージの作成」アクションは「ファイル」の中にもあります。なので、全部を一覧表示する「ショートカット キー」の中には「返却パッケージの作成」アクションが 2 つあります。
2 つあることで、プロジェクト ビューとファイル ビューで別々のショートカット キーを設定できるという効果があります。このため、自分でショートカット キーを設定するときは、まずどこで使うのかを選択し、その後でアクションを探す必要があることになります。といっても、今回のように、「プロジェクト」のアクションが「エディタ」で動くということはあるようですが...
今回は、以上です。改めて記事にしてみると皆さんにとってそんなに有用な情報ではないような気もしてきました。ショートカット キーの設定が複雑なのは Trados に限った話でもありませんし。ただ、私がこの CapsLock キーの現象に遭遇したのは少し仕事が詰まっている時期で、かなりのストレスだったので、半分は愚痴のようなものですが記事にしてしまいました。最後までお付き合いくださり、ありがとうございました。
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