アフィリエイト広告を利用しています
最新記事
にほんブログ村 英語ブログ 英語 通訳・翻訳へ
にほんブログ村
 
翻訳ランキング
  翻訳ブログランキング参加中
翻訳ブログ人気ランキング


タグ
検索
ご意見・ご感想

ご意見、ご感想、ご質問をお待ちしております。
こちらから、どうぞお気軽に!

記事一覧
◆パッケージについて
 作業前に内容を確認する
 作業前に設定を変更する
 メモリをアップグレードする (2017 SR1)
 格納されているファイルにアクセスする

◆Trados の機能
 表示フィルタ・高度な表示フィルタ
   2021 の表示フィルタ
   タグの中の検索
   プラグイン
   プラグイン for 2019
   変更履歴
   すべてのコンテンツ
 検証機能
   全般の設定
   QA Checker
 QuickInsert
 印刷プレビュー
 メモリのフィールド
 ファイルの解析 @
 ファイルの解析 A
 AutoSggest
   ATOK との競合
   プラグイン
 ショートカット キー
   設定方法
   便利なキー
   高度な表示フィルタ
 変更履歴
 繰り返しの自動反映
 upLIFT テクノロジー
   フラグメント一致
   あいまい一致の自動修正
   単語数のカウント
 自動置換 > 単位
 ジャンプ
 用語認識
 MultiTerm
 変数リスト

◆Trados のバージョン・エディション
 2021 SR2 CU9
 2021 の新機能
 プラグインとアプリの 2021 対応 (2020/08)
 2017 SR1 の最近のバグ (2020/05)
 プラグインとアプリの 2019 対応 (2019/02)
 2019 の新機能
 Starter エディション
 2017 SR1 の新機能
 メモリのアップグレード (2017 SR1)

◆プラグインとアプリ
 2024 対応 (2024/08)
 フィルタで繰り返しを除外
 原文の英数字を訳文にコピー
 パッケージの中身を一覧表示
 コメントを Excel にエクスポート
 選択箇所の検索結果を別画面で一覧表示
 メモリをアップグレード
 用語集を変換
 コメントや変更履歴のユーザー名を変更
 sdlxliff ファイルを Excel にエクスポート
 Community Advanced Display Filter for 2019
 Community Advanced Display Filter
 Regex Match AutoSuggest Provider
 PackageReader
 Comment View Plugin
 SegmentSearcher
 TM Lifting
 Glossary Converter
 SDL Batch Anonymizer
 Export to Excel

◆トラブルシューティング
 QuickInsert の設定が表示されない
 QuickInsert が動かない
 訳文生成できない
   分節の結合
   コメント
   表示フィルタのハイライト
   ハイパーリンク タグ
 メモリがヒットしてこない
   完全一致が登録されていない
   検索オプション
   言語ペア
   サーバー TM
   Trados のバージョン
   空メモリから作業を始めた場合
   単語単位のトークン化
 「TM はアップグレードが必要」が消えない
 検証の除外設定が効かない
 エディタの動きが遅い
 エディタが落ちる
 ファイルの解析が終わらない
 エディタ上のフォントが変わらない
 用語が認識されない
 同じ用語が何回も表示される
 パッケージを正常に開けない

◆翻訳作業に役立つ Tips
 タグの中の文字を検索する
 複数の分節に分かれている場合の処理
 メモリに登録されるユーザー名を変える
 自分の訳文用のメモリを作る
 Trados の設定を変える
 パッケージを別プロジェクトとして開き直す
 訳文を表示する方法
   印刷プレビュー
   訳文のみで保存
   訳文の表示
 単語数・文字数のカウント
   解析レポート @
   解析レポート A
   単語単位のトークン化
 ショートカット キーを設定する
   設定方法
   便利なキー
 変更履歴を記録する
 繰り返しを自動入力する
 エディタ上のフォントを変える
 1 つの原文に複数の訳文を登録する
 単位記号の前にスペースを入れる
 英日と日英で同じメモリを使う

◆Trados 以外のツール
 CAT ツール
   Memsource
   memoQ
 その他のツール
   ATOK
   Xbench
    変更履歴
    使い方【前編】
    使い方【後編】
   QA Distiller
   AutoHotKey
   WinMerge
   Visual Studio Code
   Vale
最新コメント
プロフィール
さくらさんの画像

昔は「Trados さん、頑張って!」とお祈りしながら訳文生成していませんでしたか? 今も、たまにそんな気分になるときがあります。Trados って本当にわからないことばかりです。特に、日本語の情報は少ないですよね。いくら翻訳者とはいえ、日本語の情報が欲しいのです。Trados ユーザーの方々といろいろ情報交換できたらと思っています。




2021年11月25日

2021 で新しくなった表示フィルタ

すっかり更新が滞っておりました。未確定案件が立て続けに失注になったり、その反動で今度は案件を多く受け過ぎたり、Trados のサーバー メモリに接続できなくて困ったり、まったく CAT ツールを使わない会社さんから PowerPoint の翻訳を頼まれたり、といろいろしていたら 1 か月以上たってしまいました。

今回は、昔からある表示フィルタについて Trados Studio 2021 での現状を紹介します。表示フィルタは、2019 で便利になったものの、かなり複雑なことになっていました。これが 2021 で少しすっきりしたので、改めて表示フィルタの機能をまとめてみたいと思います。


表示フィルタは 2 つある


2021 には 2 種類の表示フィルタがあります。(2019 では 3 種類でしたが、これが 2 つにまとめられました。)

 ・[レビュー] タブ > 表示フィルタ

 ・[表示] タブ > 高度な表示フィルタ 2.0


「表示フィルタ」は、分節のステータスや特定の語句など、条件を 1 つだけ指定して使う簡易的なフィルタです。これに対して「高度な表示フィルタ 2.0」は、その名前のとおり、高度な機能が満載のかなり複雑なフィルタです。たくさんの機能があるので、この記事では私がよく使うものを少しだけ紹介したいと思います。


「表示フィルタ」は正規表現で指定する


さて、まずは高度ではない「表示フィルタ」です。先ほど簡易的なフィルタと紹介しましたが、実は語句を入力するときに正規表現を使う必要のある、翻訳者にとってはなかなか要求の厳しいフィルタです。

たとえば、半角丸括弧で囲まれた (英語) を検索しようとして (英語) と入力すると、半角丸括弧は正規表現の式と見なされ、英語 がヒットしてきます。


86_image5.png


文字どおりの (英語) を検索するには、丸括弧をエスケープする必要があるので、丸括弧の前に円マーク \ を付けて \(英語\) と入力します。


86_image6.png


私は正規表現はあまり得意ではありませんが、この「円マーク \ を付ける」という操作だけはよく使います。括弧や、ピリオド、アスタリスクなど、正規表現の式っぽい文字の前には \ マークを付けます。(Trados では、なぜか正規表現を使わなければならないことがあり、QA Checker の単語リストもそうです。)

正規表現が面倒な場合は「高度な表示フィルタ 2.0」を使います。こちらでは、正規表現かそうでないかを指定できるので、文字どおりの検索も簡単に行えます。


高度な表示フィルタ 2.0 のショートカット キーを設定する


では、次に「高度な表示フィルタ 2.0」です。高度な表示フィルタはショートカット キーを設定して使うと便利です。右クリックのメニューとして 4 つのコマンドが用意されていますが、これにショートカット キーを割り当てられます。


設定の場所: [ファイル] > [オプション] > [ショートカット キー] > [高度な表示フィルタ 2.0]
86_image7.png


「原文フィルタ」と「訳文フィルタ」は、分節全体が同じものを検索できます。原文または訳文の「繰り返し」を抽出するようなイメージです。「選択フィルタ」は、カーソルで選択した文字列で検索をします。文字列の選択は原文側でも訳文側でも行うことができ、両方で選択すれば、原文と訳文の両方を条件に検索がされます。私は、「選択フィルタ」のショートカット キーとして Ctrl+Shift+F を割り当てています。これで、Memsource とほぼ同じ操作感を得られます。とても便利です!


高度な表示フィルタ 2.0 ― コンテンツ


ここからは、高度な表示フィルタの機能をタブごとに見ていきたいと思います。まず、文字列でフィルタをかけたい場合は [コンテンツ] タブを使います。ショートカット キーに設定した「選択フィルタ」は、選択した文字列をこのタブに設定しているだけです。


86_image8.png


ここに [正規表現] のオプションがあります。高度な表示フィルタでは、このオプションを選択しない限り、設定した文字列が正規表現として扱われることはないので、半角丸括弧なども安心して検索できます。

さらに [タグ コンテンツを検索] オプションを使うと、タグの中の文字を検索できます。たとえば、<bold> タグの中の「bold」という文字でフィルタをかけられます。以前の高度な表示フィルタにはこのオプションがなく、タグの中の文字も含めてすべて一緒に検索することしかできませんでした。このオプションができてから、タグを無視したり、タグの中だけを検索したりすることが可能になりました。


高度な表示フィルタ 2.0 ― 属性のフィルタ


分節のステータスなどでフィルタをかけたいときは [属性のフィルタ] タブを使います。高度ではない「表示フィルタ」にも同様の項目がありますが、「高度な表示フィルタ」の方がかなり高度です。高度過ぎるので、正直なところ細かいことはよくわかりませんが、私は「Interactive」と「固有の出現」が便利だと思っています。


86_image9.png


Interactive ― 自分で編集した分節だけを表示する

「Interactive」は、自分で対話型に編集した分節という意味だと思います (この条件だけ英語のままで、よくわからないのですが、私はそう解釈しています)。つまり、新規に自分で訳文を入力した分節と、メモリからの訳文に何らかの変更を加えた分節です。おそらく、エディターの中央のステータス欄でアイコンが白くなっている分節です。「元データ」と「以前の元データ」の両方にこの条件がありますが、普通は「元データ」の条件を使って大丈夫です。(これも私の解釈ですが、「元データ」が単純に考えて現在のステータスを表していて、「以前の元データ」は、現在の編集を行う前の過去のステータスを表しているようです。)

86_image12.png

ただ、属性の条件では、どのメモリからの一致かは考慮されません。また、いったん訳文を確定してメモリに登録して、それを編集して、また確定して、などと繰り返しているとステータスはよくわからない状態になります。ですので、自分が編集した分節だけを見直ししようというときに 「Interactive」を使うのは便利ですが、これに完全に頼るのは少し危険です。


固有の出現 ― 重複している分節を非表示にする

「固有の出現」は、繰り返しの初回の分節と、繰り返しではない通常の分節を表示してくれます。(以前の記事「■プラグイン■ フィルタで繰り返しを除外する」でも紹介しているので、参考にしてください。) 繰り返しの分節を非表示にできるので、これも見直しを行うときなどに便利です。「固有の出現」でフィルタをかけてから全体をコピーして、それを Word に貼り付けて文章校正を行えば、繰り返しの分節に対してエラーが何回も出てくるようなことを避けられます。ただ、上記の記事でも説明していますが、訳し分けをしているかどうかはこのフィルタでは考慮されないので、やはりフィルタを 100% 信じるのは危険です。


高度な表示フィルタ 2.0 ― 文書構造


高度な機能はまだまだ続きます。[文書構造] タブでは、エディターの右端に表示されている文書構造でフィルタをかけられます。ハイバーリンクのアドレスだけ、Excel のワークシート名だけ、きちんと構造化されている文書だったら見出しの特定のレベルだけなど、けっこう便利な使い方ができます。


86_image13.png


ただ、文書の構造はさまざまですし、場合によってはかなり複雑な設定になっています。たとえば、私が最近苦戦したのは PowerPoint のセクションです。セクション名はプレビューしても見落としやすいので、フィルタをかけて一括でチェックしたいと思っていました。

大きな PowerPoint ファイルでは、スライドがいくつかのセクションに分かれていることがあり、たいていは、このセクション名も翻訳する必要があります。


86_image16.png


Trados のエディターで右端の文書構造欄をクリックすると、文書構造の詳細が表示されます。エディター上には「S」や「TB+」など 1 つの構造しか表示されていませんが、クリックして詳細を表示してみると複数の構造が階層的に設定されていることがわかります。 分節 24 と 25 の両方に「セクション名」があるので、単純に「セクション名」でフィルタをかけてもセクション名の分節だけを抽出することはできません。


86_image23.png


「セクション名」を選択して [フィルタの適用] をしても、セクション名だけを抽出することはできない
86_image26.png



「文書スライド」を選択して [反転] をすると、文書スライドが除外され、結果的にセクション名が抽出される
86_image29.png



文書スライドとセクション名はコードが同じ 「S」であることも私が混乱した原因でした。最初はコードが同じだからフィルタがうまく機能しないのではないかと思っていましたが、それは問題ではないようでした。結局、条件を否定する [反転] を使いましたが、どうもすっきり理解はできません。

ここに挙げた以外にもまだタブはあります。また、複数のタブで条件を指定してフィルタをかけることもできます。複数の条件を指定して [反転] するなど、考えれば考えるほど複雑になっていくので、私は適当なところであきらめています。


高度な表示フィルタは変更履歴をサポートしない


高度な表示フィルタはいろいろ高度ですが、変更履歴には対応していません。変更履歴を残して作業しているときに、変更後の訳文に対してフィルタをかけることができません。高度ではない方の「表示フィルタ」は、変更履歴を残していても、変更後の訳文に対してフィルタをかけることができます。

高度な表示フィルタの場合、変更履歴はタグ内の文字として認識されるらしく、[タグ コンテンツを検索] オプションを使えば変更した文字列を検索することはできます。ただ、追加した文字列も削除した文字列も全部まとめて検索されるので、あまり意味がありません。

これについては、RWS Community の Ideas に要望を投稿しています。レビュー作業でも高度な表示フィルタを使いたいという方、ぜひ賛同の投票をお願い致します。


高度なジャンプ機能も欲しい


前回の表示フィルタ紹介記事でも書きましたが、表示フィルタはどんなに機能を高度にしても、翻訳者にとってはそもそも使いにくい機能です。フィルタをかけて分節を非表示にしてしまうと、作業対象の分節の前後が見えないので、結局、フィルタを解除して前後を表示してから作業することが多くなります。

フィルタをかけて非表示にしてしまおうという考え方は、特定の条件で一括処理を行いたいコーディネーターさんの考え方のように思います。1 つ 1 つの分節を作業していく翻訳者には、ジャンプ機能 (Ctrl+G) の方が便利です。全体を表示したまま、希望の分節にジャンプできる方が、前後の分節を見ながら作業できるので効率的です。ジャンプ機能の高度化も切に願っています。


かなり長くなりました。「高度な表示フィルタ 2.0」には、ここで紹介した以外にもまだまだ機能がたくさんあります。また、何か便利な使い方を見つけたら、紹介したいと思います。






  




2021年10月11日

【後編】Xbench を便利に使う

前回の前編に続いて、後編では Xbench の具体的な使い方を紹介したいと思います。先日から翻訳祭がオンラインで開催されていますが、その中のあるセッションで「万人に使いやすいツールはない」「自分で練習しなければうまく使えるようにはならない」という話がありました。Trados と Xbench はまさにそんな感じのツールです。想定ユーザーが幅広く、機能も設定も数え切れないほどあります。すべてを把握することはとても無理なので、私は自分が使いたい機能を使いたいときだけ使っています。実際に使ってみて便利な機能があれば、それをさらに便利に使うことはできないかと考えて周辺を調べていきます。

上記のセッションでも言われていましたが、ツールは使う目的も使い方も人それぞれです。ある人が「これは便利」と言っていても、それが自分の目的には合わないこともあります。私のこのブログ全体は個人翻訳者を想定していますが、今回の Xbench の観点からもう少し細かく状況を説明するとこんな感じです。


  • Trados と Xbench の組み合わせが多い (= 他の CAT ツールの使用頻度は低い)

  • 言語方向は主に、日本語 -> 英語

  • Xbench は無料版で済ませたい

  • 翻訳会社からパッケージを受け取る (= 原文や設定を勝手には変えられない)

  • メモリや用語集が支給される (= 絶対に見落とせない資料がある)

  • Xbench の主目的は検索 (= QA 機能は補助的にしか使わない)


以下には、こんな状況の私が便利だと思っていることを紹介したいと思います。ぜひぜひ、ご自身でいろいろと試してみてください。



まずは大前提 ― Trados で分節を確定し、Xbench でファイルを更新する


Trados と Xbench を組み合わせて使う場合、まずは、Trados 上で分節を確定する必要があります。Xbench では確定済みの分節しか検索や QA の対象になりません。Trados 上で訳文を入力していても、ステータスが未確定だと Xbench では Untranslated となり、訳文が認識されません。

Trados で分節を確定してファイルを保存したら、その後、Xbench に移動してファイルの更新をします。これで初めて、最新のファイルに対して検索や QA が行えるようになります。更新をするには、[View] > [Refresh] (F5 キー) か、上部に並んでいるボタンの [Reload] ボタン (Shift+F5 キー) を使います。[Refresh] は、Trados で翻訳中のファイル (Ongoing Translation に設定しているファイル) のみを更新する場合に使います。[Reload] は、用語集なども含めてすべて更新したい場合に使います。特定の時間間隔で自動更新を行うオプションもありますが、私は、更新したいときに手動で更新しています。


85_image5.png



要注意! ― 結合した分節の訳文は認識されない


Trados 上で分節を結合することがあると思います。これは、翻訳作業では便利ですが、Xbench を使うときは問題になります。Trados で結合した分節は、Xbench でステータスがうまく認識されないらしく、上記と同じ Untranslated になってしまい検索や QA の対象になりません。数個の結合なら無視してもいいかもしれませんが、大量にあるとその分節は QA がされないことになるので問題です。(これが、有料版の V3 だったら改善されているといったことはないですかね? もしそうなら、購入を検討してもいいかもしれないです。あくまで、検討ですが ...)



検索のための設定 ― 優先度と順序


Trados で分節を確定して Xbench で更新をしたらいよいよ検索です。でも、まだ少し注意したい設定があります。Xbench では大量のデータでも検索結果がすぐに返ってきますが、その仕組みを理解しておかないと検索漏れにつながります。


85_image7.png


Xbench のプロジェクトでは、上図のように Priority として High、Medium、Low の 3 つのレベルを指定できます。さらに、その優先度の各レベルの中で順序 (Order) を指定できます。検索結果は、この Priority と Order の順番で上から順に表示されます。

私は、たいてい、以下のような設定にしています。

  • High: 翻訳会社から提供されたメモリと用語集 (= 絶対に見逃したくない資料)

  • Medium: 翻訳中のファイル (= 自分の現在の訳文)

  • Low: その他 (= 任意で参考にする資料。過去の訳文、類似文書のメモリなど)

Priority を分けておくと、下図のように色も変わるので見落とす心配がありません。既定で、緑色が High です。


85_image9.png


検索結果の画面では、上図のように、右下隅に [Click here to show all matches] というメッセージが表示されていないかに注意する必要があります。



検索のための設定 ― レベルごとの表示数


実際に検索を行うと、右下隅に [Click here to show all matches] と表示されることがあります。このメッセージは、この検索結果に表示されていないマッチがあることを意味しています。

大量のデータを検索すると、当然ながら検索結果も大量になりがちです。Xbench では、それを避けるために Priority のレベルごとに検索結果の表示数を設定できます。既定では (おそらく) 25 行です。High がもちろん優先ですが、High の結果を 25 行表示したら、それ以上マッチがあってもそれは表示せず、Medium を表示します。Medium も 25 行まで表示して、その後は Low を表示します。こうすることによって、どんなに大量のマッチがあっても、検索結果の最初の画面で High から Low まですべてのレベルのマッチを一覧できるようにしています。

レベルごとの表示数の設定は、[Tools] > [Settings] と選択して [Layout & Hotkeys] タブで行います。


85_image11.png


検索結果ですべてのマッチを表示したいときは、一覧の右下隅に表示されている [Click here to show all matches] をクリックするか、下図のように一覧上で右クリックして [Zoom to 〜] を選択します。


85_image12.png


Zoom を使うと、特定の優先度レベルやファイルに絞ってすべてのマッチを表示できます。



検索のための設定 ― 検索結果に表示する列数


用語集などでは、原語と訳語のほかにコメントが含まれていて、検索結果でコメントまで参照したいときがあります。たまに「使用禁止」なんてコメントが入っていることもあるので注意が必要です。そうしたコメントなどのために、検索結果の画面に [Source] と [Target] 以外の列を追加で表示できます。


85_image14.png


あまり見やすい表示にはなりませんが、表示する列数を増やすことで追加情報を表示できます。設定は、[Project] > [Properties] と選択して [Settings] タブで行います。[Columns in list] に、[Source] と [Target] を含めて何列表示するかを設定します。私は、たいてい 4 列くらいにしています。


85_image17.png


列数を増やせばいろいろ表示できますが、すべてを表示できるわけではありません。用語集の構造によっては、コメントを表示できないことや、表示できても読みにくいことがあります。必要であれば、右端に検索元のファイル名が表示されているので、それを頼りにオリジナルのファイルを参照します。



自動置換 (Automatic Substitution)


私が Xbench で便利だと思っている機能のひとつに自動置換 (Automatic Substitution) があります。これは、検索結果が 1 つしかないときに Xbench の画面を表示せず、エディター上で用語を直接置き換えてくれる機能です。たとえば、「このサービスは、以下の言語でご利用いただけます」という文の後ろに言語名がずらずらと並んでいることがあったりしませんか。そうした場合は、言語名の用語集を Xbench に登録し、Automatic Substitution を使ってひたすら置換していきます。訳語が決まっている UI も Automatic Substitution がとても便利です。UI が用語集としてちゃんと提供されているときは、もう Xbench 様々です。対象の用語を選択して、Automatic Substitution のホットキーである Ctrl+Alt+PageDown を押せば一発で入力完了です。


85_image23.png


Automatic Substitution のホットキーは、レベルごとの表示数の設定と同じ、[Tools] > [Settings] の [Layout & Hotkeys] タブで行います。このタブでは、Automatic Substitution 以外にも、原語検索と訳語検索のホットキーやそのアクションの詳細を設定できます。(すみません、[Transfer Method] の詳細はよくわからないのですが、私は以下のような設定にしています。)


85_image24.png



QA 機能 ― 実行前の確認


さて、最後に QA 機能も少しだけ紹介します。前編にも書いていますが、私は翻訳チェックの用途には Trados の検証機能を主に使い、Xbench は補完として使っています。Trados の検証機能では不便なところを Xbench で補う形です。

QA 機能を使う前に、まずは、チェック対象のファイルを Ongoing Translation に設定していることを確認します。QA 機能は Ongoing Translation のファイルのみ対象とします。また、この記事の最初に説明しましたが、Trados 上で分節を確定済みにしていること、そして、Xbench で最新のファイルに更新していることも確認してください。



QA 機能 ― 訳揺れのチェック


まず、私がよく使うチェックは [Basic] の [Inconsistency in Source]と [Inconsistency in Target] です。(ちなみに、オプションの [Exclude ICE Segments] を選択すると、Trados 上でロックされているセグメントを除外できます。)


85_image26.png


Trados でも同様のチェックはできますが、結果の表示は Xbench の方が断然わかりやすいので、私は Xbench を使っています。



QA 機能 ― 数字のチェック


[Content] の [Numeric Mismatch] もよく使います。これも、Trados でできないわけではありませんが、Xbench では原文と訳文が上下に表示されるので数字の比較がしやすいです。


85_image28.png


数字のチェックは、Trados や他の CAT ツールと同様、10月と October はエラーになりますし、全角の数字にも対応していません。なので誤検出も多く発生しますが、数字のミスは致命的になるので、安全のために私は Trados と Xbench の両方でチェックすることが多いです。


今回は以上です。Xbench には、ここで紹介した以外にもまだまだたくさんの機能があります。検索の Power Search は便利ですし、TMX 形式への変換もできますし、ブラウザーの代わりにもなります。自分なりに便利な使い方を見つけられると楽しいと思います。





  




2021年09月13日

【前編】Xbench を便利に使う

今回は、このブログでも何回か登場している Xbench を取り上げたいと思います。このツールはとても便利ですが、私は設定に毎回かなりの手間をかけて使っています。なんとかスムーズに使える方法はないかと考えてはいるのですが、あまり良い方法が思いつきません。ここでは、Trados と Xbench で私がどんな面倒なことをしているかを披露しますので、何かアドバイスがありましたら、ぜひぜひお知らせください。

Xbench とは?


Xbench は、さまざまな翻訳ファイルの検索とチェックを便利に行えるツールです。バージョン 2.9 が無料で提供され、バージョン 3.0 からは有料 (年間 99 ユーロのサブスクリプション) です。このツールは既にいろいろなところで取り上げられているので、概要などについては以下のサイトを参考にしてください。


翻訳を効率的に行う秘訣〜Xbench編〜 | 翻訳会社川村インターナショナル

Xbench の概要がまとめられています。Xbench ってなに? という方は、まずこちらを参照してください。


※※※※※ 最近の参考サイトを追加しておきます 2022/05/10 ※※※※※※※※※※※※※※※
Xbench の基本的な説明については、以下のサイトなども参考にしてください。

Xbench という翻訳作業を効率化するソフトウェアについて | 翻訳メシ
Xbench の概要がとてもわかりやすくまとめられています。

プロ翻訳者必携!Xbenchの活用方法について | ストラテ

※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※


フクログ フリーランスで翻訳&ライティング

Xbench の購入方法から詳しく説明されています。主に、有料版 (V3.0) についての説明です。


Xbenchのつぼの記事一覧 | つぼログ。 | 横浜で翻訳業務を行うシーブレインスタッフによる技術情報ブログ

初期設定から各種機能までいろいろ紹介されています。ただ、少し日付が古いので無料版 (V2.9) に該当する内容も含まれています。


無料版 (V2.9) と有料版 (V3.0)


Xbench は以前は無料で使えるツールでした。その無料で使えていたバージョンが 2.9 で、その後の新しいバージョンは有料になっています。私は、無料のバージョン (V2.9) を使い続けています。この V2.9 を使用していることが、手間が増える原因のひとつだとわかってはいるのですが、私は数か月単位でオンサイト勤務になることもあり、なかなか購入には踏み切れません。私が感じている V2.9 の問題点としては、以下のようなものがあります。

 ・正規表現が日本語に対して機能しない
 ・QA の CamelCase Mismatch と ALLUPPERCASE Mismatch を有効にできない
 ・Memsource や memoQ のファイルに対応していない
 ・Xbench の QA 結果から Trados の該当箇所に直接飛ぶことができない

Memsource や memoQ については、xliff ファイルとして読み込むことはできるのですが、私が試した限り、あまりうまく機能しません。

また、V2.9 は Trados のプラグインにも制限があります。Trados では Xbench 向けに ApSIC Xbench PluginXbench 2.9 Plugin という 2 つのプラグインが提供されていますが、前者は V3.0 以上でないと使えません。後者はその名前のとおり V2.9 で使用できますが、機能は前者に比べると限られているように見えます。(私は後者のプラグインを使用しているので、これについては後で説明します。)


Xbench を使う目的 ― 主に検索に使う


Xbench を使用する目的は、上記に挙げたサイトでも説明されているとおり、主に検索とチェックです。私は、どちらかといえば、検索に使用することの方が多いです。Trados はメモリや用語ベースの検索機能が貧弱ですが、Xbench を使えば、翻訳中のファイル、メモリ、用語ベースを一気に検索できます。

チェック機能も便利ですが、私は Trados の検証機能をメインに使い、Xbench は補助的に使っています。Trados も Xbench も自作の検証ルールを登録できますが、ルールが 2 つのツールに分散してしまうと不便なので、私はルールの登録は Trados だけにしています。

検索とチェックの具体的な方法は後編で説明することとして、まずは、そのための準備の方法を説明したいと思います。この準備がなかなか面倒です。


Xbench の設定方法 ― 使うまでの準備


Xbench を使うには、まず「プロジェクト」を作成し、使用するファイルをそこに登録する必要があります。今回の前編では、このプロジェクトの設定を完了するところまでを説明します。


前提条件

・Xbench 2.9 (無料版)
・Trados Studio 2021 SR1


使用するプラグインとアプリ

Xbench 2.9 Plugin (プロジェクトの作成と、翻訳ファイルの登録に使用)
SDLTMExport (メモリの変換に使用)
Glossary Converter (用語ベースの変換に使用)

上記の 3 つを事前にインストールします。Trados 2021 の場合は、[ようこそ] > [RWS AppStore] から簡単にインストールできます。Xbench 2.9 Plugin はプラグインなので、Trados 内に組み込まれます。SDLTMExport と Glossary Converter はアプリなので、Trados とは別の独立したアプリケーションとしてインストールされます。

Glossary Converter については、RWS 公式のブログ「Glossary Converter – Excelから用語ベースおよびTMXへの変換」も参照してください。インストール方法などから説明されています。また、私の以前の記事「マイクロソフトの用語集を使いたい 【前編】【後編】」でも説明しています。


準備の手順

準備の主な手順は、以下のようになります。プロジェクトを作成してから、翻訳ファイル、メモリ、用語ベースの 3 つを準備します。

 1. プロジェクトを作成して、翻訳ファイルを登録する
 2. メモリをテキスト形式に変換して登録する
 3. 用語ベースをテキスト形式に変換して登録する

では、手順を順番に見ていきましょう。


1. プロジェクトを作成して、翻訳ファイルを登録する


まずは、Xbench のプロジェクトを作成します。この操作に Xbench 2.9 Plugin を使用します。このプラグインはプロジェクトの作成と翻訳ファイル (sdlxliff ファイル) の登録までを自動で行ってくれます。



(1) Trados 上で、作業対象のプロジェクトを選択し、[アドイン] > [Check with Xbench 2.9] をクリックします。


84_1.png



(2) Xbench のプロジェクトが自動的に作成されます。

プラグインのアイコンをクリックするだけでプロジェクトが自動的に作成されます。もし、ファイルの種類を選択するような画面が表示されたら、[Trados Studio File] を選択します。


84_1_2.png


Trados のプロジェクト ファイル (.sdlproj) と同じ場所に、<Trados のプロジェクト名>.xbp というファイルが作成されます。この xbp ファイルが Xbench のプロジェクト ファイルです。ここに、Xbench のさまざまな設定をしていきます。



(3) 翻訳ファイル (sdlxliff) が登録されていることを確認します。

Xbench で、[Project] > [Properties] と選択します。ここに、そのプロジェクトに登録されているファイルが一覧されます。Trados のプロジェクト内の sdlxliff ファイルが登録済みになっているはずです。


84_1_3.png


これで、Xbench のプロジェクトの作成と、翻訳ファイルの登録は完了です。



2. メモリをテキスト形式に変換して登録する


次にメモリを登録します。メモリは、sdltm ファイルのままでは登録できないので、テキスト形式の tmx ファイルに変換します。



(1) SDLTMExport を使ってメモリをテキスト形式 (tmx) に変換します。

SDLTMExport を起動すると、下図のような画面が表示されます。ここに sdltm ファイルをドラッグ & ドロップして、[Export] をクリックします。これで、元の sdltm ファイルと同じ場所に tmx ファイルが作成されます。複数のファイルを同時にドラッグ & ドロップすることもできます。


84_2.png



(2) 変換したメモリを Xbench のプロジェクトに登録します。

Xbench で [Project] > [Properties] と選択して、[Add] をクリックします。下図の画面が表示されるので、[TMX Memory] を選択して [Next] をクリックします。


84_3.png


下図の画面が表示されたら、変換した tmx ファイルを指定します。 [Add File] は、ファイルを 1 つずつ登録します。[Add Folder] は、複数のファイルをフォルダー単位で一括登録します。


84_4.png


[Add Folder] を使って登録すると、優先度などをそのフォルダー単位でしか設定できなくなります。ファイルごとに優先度などを変えたいときは、[Add File] を使って 1 つ 1 つ指定してください。参照したいメモリをすべて登録したら、完了です。



3. 用語ベースをテキスト形式に変換して登録する


最後に用語ベースを登録します。用語ベースも sdltb ファイルのままでは登録できないので、まずテキスト形式に変換します。用語集のテキスト形式として使用できるものはいくつかあり、カンマ区切りやタブ区切り、MultiTerm の XML 形式、TBX 形式などがあります。

Excel ファイルとして用語集が提供されているときは、カンマ区切りかタブ区切りに変換するのが便利です。ただ、この場合は、「英語」や「日本語」といった言語の属性がなくなり、単純に 1 列目が原語、2 列目が訳語となります。

Trados の用語ベース (sdltb) は、言語などの属性がせっかくあるので、MultiTerm の XML 形式か、TBX 形式に変換します。どちらでも大差ないですが、私は TBX 形式をよく使います。なぜなら、私の経験上、Glossary Converter で作成される XML ファイルは Xbench でうまく処理されないことが多いからです (理由はよくわかりません)。

XML 形式に変換するときは、Glossary Converter ではなく、Trados に付属の Multiterm Convert を使います。Multiterm Convert で作成した XML ファイルは Xbench で正常に処理できます。ただ、Multiterm Convert ではドラッグ & ドロップで一括変換といったことはできないので、Glossary Converter に比べると手間がかかります。


※※※※※ 追記 2023/07/03 ※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
すみません、実は、原語の訳語の組み合わせが 1 対 1 になっていない用語ベースの場合、Glossary Converter で変換した TBX ファイルは Xbench (無料版) で正常に検索できないことに、今さらですが気付きました。詳しくは、こちらの記事「Xbench と TBX ファイル」を参照してください。ホント今さらで、すみません。
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※


では、具体的な手順を見ていきます。メモリと同様、変換して、登録しますが、用語ベースの場合は、その後で少し設定が必要です。



(1) Glossary Converter を使って用語ベースをテキスト形式 (tbx) に変換します。

Glossary Converter を起動したら [settings] をクリックして、[General] タブの [TBX (Term Base eXchange)] を選択します。([TBX (Term Base eXchange V3)] というオプションもありますが、すみません、これは新しいオプションのようで、私は使ったことがありません。)


84_5.png


上記の設定をしたら、変換したい用語ベース (sdltb) ファイルをドラッグ & ドロップします。複数のファイルをまとめてドラッグ & ドロップしても大丈夫です。



(2) 変換した用語ベースを Xbench のプロジェクトに登録します。

Xbench で [Project] > [Properties] と選択して、[Add] をクリックします。下図の画面が表示されるので、今度は [TBX/MSRTIF Glossary] を選択して [Next] をクリックします。


84_6.png


用語ベースの場合は、[Add File] のみ有効で、[Add Folder] は使用できません。フォルダー単位ではなく、ファイル単位で 1 つ 1 つ追加する必要があります。(ただ、メモリの場合も同様ですが、[Add File] のファイル選択画面で複数のファイルを一気に選択することはできます。)



(3) 原語と訳語の設定をします。

ファイルを追加して、画面の指示に従って操作していくと、Special Settings についてのプロンプトが表示されるので、そこで言語の設定をします。以下のような画面です。


84_7.png


[Source] と [Target] に表示される言語の名前は、各用語ベースで設定されているものです。上図に表示されている「en-US」に限らず、「English」や「英語」だったり、「Source」や「原語」だったりと、用語ベースによってさまざまです。Xbench の検索で用語ベースがヒットしてこないときは、この言語の設定が間違っていることがよくあります。



(4) Key Terms に指定します。

用語集は、検索結果でメモリや翻訳ファイルと区別したいことが多いので「Key Terms」として指定します。


84_8.png


Key Terms として設定しておくと、星マークが付き、検索結果でも他と区別されるので便利です。ちなみに、この画面の [Properties] ボタンをクリックすると、上記の言語の設定画面を再表示できます。

これで、プロジェクトの設定はひとまず完了です。最後に保存ボタンをクリックしてプロジェクトを保存します。細かい設定はまだありますが、それは後編で触れたいと思います。


今回は以上です。ずいぶん長い記事になってしまいました。新しい仕事が始まるたびにこの設定をするのは相当な手間ですが、それでも Xbench は便利です。後編は、もう少しお待ちくださいませ。