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老海賊 ハーレーを駆る

 届きましたあ !!
 まあ、何というか、手に入るまでは焼きもきしますよね。
 それが手に入った途端、まだ音を一切聴いていないうちから漂ってくる、この「ほっ」とした感はなんでしょう。
 この感覚、実はしばしば経験しています。
 ここで、その安堵感に身を任せていると、そのうち、もう聴き終えたかのような錯覚まで起こったりします。
 怖いですね。
 年を重ねるとは、こういうことでしょうか?


doctor's order7.jpg

Kickstart Your Mojo
Johnny Spence & Doctor's Order

1. Kickstart Your Mojo (Johnny Spence)
2. Keep My Motor Running (Ken Beal, Bruce Channel)
3. Get Me To The Doctor (Johnny Spence)
4. Up Jumped The Devil (Ronnie Dawson, James Barnaby Koumis)
5. Blues About You Baby (Delbert McClinton, Al Anderson)
6. Voodoo Thing (Colin James)
7. Restless (Wadmore, Kidd, Dale)
8. Going Back Home (Mick Green, Wilko Johnson)
9. Rockin' My Life Away (Mack Vickery)
10. Crazy Personality (Johnny Spence)
11. Roll On (Wall, Ball)
12. Let It Rock (Chuck Berry)

 今回のアルバムは、Johnny Spence & Doctor's Order名義での3枚目で、先月末に目出度くリリースされました。

 さて、私は、彼らを一貫して4人組のバンドだと認識していますが、一部では、Johnny Spenceとそのバック・バンドと見ている方もいるようです。
 ラインナップは、以下の通りです。

Johnny "The Pirates" Spence : vocals
Grande-Archie" Hämäläinen : guitar
Teddy Bear Nättilä : bass
Mighty Man Oikarinen : drums

 今回改めて、過去作を含めて聴き返したところ、なるほど、一部の方の考え方も分からなくはない、と思いました。
 Johnny Spence不参加のDoctor's Order単独盤とでは、聴いた印象が少し違うからです。

 その大きな違いは、何よりも、トリオ盤では、収録曲の多くがメンバーのオリジナルで占められていることです。
 そのスタイルの多くは、Wilko直系の、魅力的なフックを持つサイド・プレイを中心に、加えてサイド、リードが混然とした、アイデア溢れるギター・ブレイで構成されています。

 対して、4人組盤ではカバー曲が大半なのです。
 いきおい、アルバムの印象は変わってきます。

 これらカバーの選曲を、Spence主導と見れば、一部の方が持たれる認識も、自然なものと言えなくもないです。
 Wilko直系の曲は、あくまで全体の一部で、トリオ盤と比較すれば、若干しつこさが薄まっている気がします。
 とは言え、普通のバンドに比べれば、まだまだ濃厚です。
 
 トリオ盤では、耳に残る魅力的なビート曲が目立ち、わくわく度が高い気がします。
 しかし、昔から止むことのない、「ドカドカうるさい」、「同じような曲ばかり」という意見にも納得できます。

 一方で、4人組盤では、曲の構成がバラエティに富み、自然と聴きとおせます。
 しかし、くだんの「ドカドカうるさい曲」が希少になると、むしろ新鮮に思え、愛おしくなって、思わず「このタイプの曲をもっと」とおねだりしたくなるのでした。
 人間って、めんどくさいですね。

 さて、今作のラインナップです
 トリオ盤と違って、なかなかに興味深い構成です。
 なかでも、今の私の趣味と気分で、以下の曲に注目です。
 意識してSpenceが書いた曲は外しました。 

2. Keep My Motor Running (Ken Beal, Bruce Channel)
5. Blues About You Baby (Delbert McClinton, Al Anderson)
6. Voodoo Thing (Colin James)
7. Restless (Wadmore, Kidd, Dale)
8. Going Back Home (Mick Green, Wilko Johnson)
9. Rockin' My Life Away (Mack Vickery)

doctor's order8.jpg

 
 これを、仮に次のように分類します。

海賊セット
7. Restless (Wadmore, Kidd, Dale)
8. Going Back Home (Mick Green, Wilko Johnson)

55年組セット
2. Keep My Motor Running (Ken Beal, Bruce Channel)
9. Rockin' My Life Away (Mack Vickery)

ブルース・ロック・セット
5. Blues About You Baby (Delbert McClinton, Al Anderson)
6. Voodoo Thing (Colin James)

 以上です。

 まずは、海賊セットから
7. Restless (Wadmore, Kidd, Dale)
8. Going Back Home (Mick Green, Wilko Johnson)

 この2曲は、どちらもパイレーツのレパートリーです。
 ただし、同じパイレーツでも、別のバンドというべきで、セット扱いは強引かもません。

 "Restless"は、Johnny Kidd & The Pirates時代のレパートリーで、作者にKiddの名前があります。
 Johnny Spenceは、Kidd時代の第二期(多分)からのメンバーで、原曲の録音時は加入前ではないかと思いますが、加入後のライヴでよく演奏した可能性はあるでしょう。
 ちなみに、ジェリー・リー・ルイスに同名曲がありますが、別の曲です。

 "Going Back Home"は、作者名クレジットのとおり、Mick GreenとWilko Johnsonの共作曲で、お互いに、自身が所属するバンドで吹き込んでいます。
 しかし、私などは、ほとんどWilkoの曲という認識しかありません。
 それだけ、Wilkoらしさの感じられる作品です。
 本盤でも、この曲のイントロが始まると、期待で目が覚めるような、新鮮な気分になります。

 ちなみに、この曲は、Wilko JohnsonがRoger Daltreyと組んで作り、本年リリースしたアルバム、"Going Back Home"のタイトル曲として、当該CDの1曲目を飾っています。
 Dr. Feelgood盤、The Pirates盤、Wilko+Roger盤、そして本盤と、このあたりの録音は、一挙に聴き比べしたい気もします。
 
 ちなみついでに余談をひとつ
 Johnny Spence & Doctor's Order名義の過去2作では、Johnny Kidd & The Pirates時代のレパートリーを他にも吹き込んでいます。
 09年のアルバム、"Full Throttle No Brakes"では、"Big Blon' Baby"(60年)と"Doctor Feelgood"(64年)を、11年のアルバム、"Hot And Rockin"では、"'A Shot Of Rhythm & Blues"(62年)と"Whole Lotta Woman"(64年)を録音しています。

 次に、55年組セットです。
2. Keep My Motor Running (Ken Beal, Bruce Channel)
9. Rockin' My Life Away (Mack Vickery)

 この2曲は、"Class Of 55"という、50sレジェンドの同窓会的アルバムで演奏されていた曲です。
 本盤とその盤との関係は不明で、むしろ、全く無関係の可能性が高いですが、私の勝手な分類におつきあい下さい。

 "Class Of 55"は、Johnny Cash、Carl Perkins、Jerry Lee Lewis、Roy Orbisonという、Sun Record出身の4人によるコンサートの実況盤で、ロックンロールの創成期(及び亡きElvis)を懐かしむ感傷的アルバムでした。
 かの盤は、ゴスペルやセイクレッド・ソング満載になるかと思いきや、Bruce Channel("Hey Baby"の人)や、ロカビリアンのMack Vickery(本人盤よりもJerry Lee盤の方が有名)が作者に名を連ねる、この2曲がひっそり入っていたのでした。
 
 "Keep My Motor Running"は、カバーではありますが、Doctor's Orderらしさの出た、まるでオリジナルかのような、かっこいいビート曲に仕上がっていると思います。

 "Rockin' My Life Away"は、Doctor's Orderの過去作、"The Real Thing"(02年)、"Live How Sweet It Is"(04年)でもやっていた曲ですが、残念ながら両作ともに入手困難で、私は未聴です。
 本盤での演奏は、ぐんぐん突き進むようなロックンロールで、ゲストのピアノとギターのアンサンブルが気持ちいいです。
 
 次に、ブルース・ロック・セットです。
5. Blues About You Baby (Delbert McClinton, Al Anderson)
6. Voodoo Thing (Colin James)

 やはり、カバーものは、こういう「へーっ、彼らって、こういうのも趣味なんだ!?」なんて、勝手に盛り上がる材料をくれるのがいいです。

 "Blues About You Baby"は、テキサスのハスキー・ボーカリストにして、Bruce Channelの"Hey Baby"でハーモニカを吹き、Beatlesの"Love Me Do"(のイントロ)にも影響を与えたベテラン、Delbert McClintonの作品です。
 しかも、Al Andersonという何とも気になる名前の人との共作です。
 これって、元NRBQのあの人と考えていいんでしょうか?

 ちなみに、収録しているDelbert McClintonのアルバムは、02年にNew Roseからリリースされた、"Room To Breathe"です。
 "Room To Breathe"では、もう1曲Al Andersonとの共作があり、興味深いですが、両曲ともに演奏への参加クレジットはありません。
 Al Andersonって、他人へ作品提供したり、共作したりするような人でしたっけ?
 それとも、同名の別人かな?

 "Voodoo Thing"は、カナダのブルージーなロッカー、Colin Jamesのカバーです。
 この曲のチョイスは誰ですかね。
 Colin Jamesは、ポップさと渋いブルース志向が同居した人で、既にベテランですが、近年はブライアン・セッツァーみたいな(?)スイング・バンドをやっていて、興味を持たずにはいられません。

 最後に、Johnny Spenceの作品から1曲、紹介します。
 2曲目の"Get Me To The Doctor"は、Piratesより、Doctor's Orderに向いた曲で、軽快な曲調ながらもヘヴィにロールする、「医師の指示」ファンへのおすすめの1曲です。

 やはり私は、本盤は、Johnny Spence主体のプロジェクトではなく、あくまでJohnny Spence & Doctor's Orderという4人組バンドの作品だと思います。



Going Back Home
by Johnny Spence & Doctor's Order



Going Back Home
by Wilko Johnson、Roger Daltrey





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「心の声」が叫んでる


ブギウギ マエストロ 

 先だって、ダブリ買いの未着分、Doctor's OrderのCDが届きました。
 何とも切ないです。
 封を開けずにそっと保管しておきました。

 一方、同じDoctor's Orderの先月末に発売された(はずの)最新作は、未だ届きません。
 ただ、ショップのサイトのステータスが変わり、処理済、カード請求済となったため、その通りなら配送中ということになります。
 ショップからの発送通知は来ていませんが…。

 さて、気を取りなおしましょう。
 今回は、スウェーデンのロックンロール・バンド、The Refreshmentsの鍵盤奏者、Johan Blohm先生の最新ソロ作(13年)を聴きました。

johan blohm1.jpg

Reborn man
Johan Blohm

1. Hot Mess (Rick King)
2. There Won't Be Anymore (Charlie Rich)
3. Big Big City (Moon Mullican)
4. If I Could Change You (Carl Mann, Kelton Herston)
5. Reborn Man (Joakim Arnell)  
6. She's Not Really Cheatin’ (R. Chaffer) 
7. Bad Case of a Broken Heart (R. Daniels, M. Daniel)
8. Cold Day Light (Joakim Arnell)
9. Paradise Coast (Joakim Arnell)
10. Where Ever I Turn (Eva Eastwood) duet with Eva Eastwood
11. Little Ol' Wine Drinker Me (Hank Mills, Dick Jennings)
Bonus Tracks
12. Rocket 88 (Jackie Brenstoan n)
13. Bada Bing Boogie (Johan Blohm)


 はっきり確認してはいないんですが、多分ソロ2作目なんじゃないかと思います。
 そこで、前作がどんな感じだったか、確認しようとしたところ、何ともデジャブっぽいことが起こってしまいました。
 持っているはずの前作が見当たらないのです。(まただ !!)
 ジャケ写には、猛烈に記憶があります。
 しかし見当たらないのです。
切ない出来事は尽きないのでした。

 さて、気を取り直して、本作の参加メンバーを紹介します。
 次のとおりです。 

Johan "JB" Blohm : vocals & Piano
Jonas Goransson : guitars
Ulf Holmberg : guitars (2,4,7)  
Robin Olsson : guitar (1)
Joakim Arnell : bass, acoustic guitars and backup vocals
Goran Holmberg : bass (2)
Mats Forsberg : drums
Linda Gail Lewis and Eva Eastwood :backup vocals
J.T. Holmstrom : saxophones on Rocket 88

 このメンツを見て、1曲目の"Hot Mess"を聴いたあと、私は、「これって、Johan Blohmがメインでリード・ボーカルを取っているRefreshmentsの新作に過ぎないんじゃないの?」…と思わずつぶやきました。

 上記リストのうち、ギターのJonas Goransson、ベースのJoakim Arnell、ドラムスのMats Forsbergが、Refreshmentsのメンバーで、ここにJohan本人が加って勢揃いというわけです。
 ついでに言えば、今回サックスで1曲参加した、J.T. Holmstromは、Mikael Finell(sax)脱退後の作品(13年作)でゲスト参加していた人です。

 サウンドから曲のスタイルまで、Refreshmentsそのものと思えた冒頭の1曲でしたが、どうやら私の早合点でした。
 その後の展開が違っていたのです。

 おそらくは、というか当然かも知れませんが、その後は、Johanの嗜好が現れた曲調、スタイルの曲が続いていくのでした。
 結果的に、Refreshmentsを即座に連想する曲は、最初の1曲だけでした。
 (こうなると、なおさら前作が気になります。)

johan blohm3.jpg


 さて、カバー曲を見れば(聴けば)、本人の趣味嗜好の傾向が推察できます。
 まずは、無心で次のリストをご覧ください。

2. There Won't Be Anymore (Charlie Rich)
3. Big Big City (Moon Mullican)
4. If I Could Change You (Carl Mann, Kelton Herston)
6. She's Not Really Cheatin’ (R. Chaffer)
12. Rocket 88 (Jackie Brenstoan)

 他にもカバーがありそうですが、私の知らない人はオミットします。
 
 上から順に
2. チャーリー・リッチ
3. ムーン・マリカン
4. カール・マン
6. モウ・バンディ
12. ジャッキー・ブレンストン
 のカバーです。

 このうち、私が最も親しんできた曲は、"Rocket 88"です。
 これは、まず曲がいいですね。
 私は、ブルース・ハーピストのJames Cotton盤をよく聴いた記憶があります。
 ジャッキー・ブレンストンは、この曲のみというイメージですが、バックを務めたアイク・ターナーはその後有名人になりました。
 これはサンで録音され、チェスで出されたものですね。

 チャーリー・リッチの曲は、サンが初出で、その後RCA(?)あたりで再録音している曲だと思います。
 本盤のアレンジは、おそらくRCA盤がお手本だと思います。
 サン盤は、ミディアム・スローのブルージーな3連メランコリー・アレンジでした。
 こちらは、明るいエイト・ビートです。

 ムーン・マリカンの曲は、おそらくキングですね。
 ヒルビリー・ブギ・ピアニストで、Nick Loweが"Seven Nights To Rock"をやっていました。
 私は、"I'll Sail My Ship Alone"あたりが好きでした。
 Merrill Mooreと並んで、Jerry Lee Lewisの師匠(先輩?)的な人です。
 ここでは、ピアノは目立たず、ギターのトワンギーなプレイが耳に残ります。

 サンのピアノマン、カール・マンは、モナリザの人ですね。
 ロックンロール(ロカビリー)版「モナリザ」です。
 今回の曲は初めて聴きました。

 そして、モウ・バンディは、ここまでの流れのピアニストつながりを切ってしまいますが、手ぶらかギターの人だと思います。
 曲は、コロンビアからのヒットらしく、やはり初めて聴きましたが、ミディアム・テンポの良い曲です。
 この曲のみ(多分)、メンツ一覧にはありませんが、スチール・ギターっぽい音が聴こえます。

 さて、こうやってカバー曲を聴いていくと、いかにもピアニストのソロ・アルバムという感じで良いですね。
 Refreshmentsのパブリック・イメージとは違い、ミディアムの歌もの+ピアノ・ブギという感じで、黒人白人の別なく、良い曲をチョイスした、思いのほか美味しいアルバムでした。

 あわせて、1曲目やその他のJoakim Arnellの作品が、従来のRefreshmentsファン向けの欲求に応えています。
 ちなみに、Joakim作品では、アルバム・タイトル曲の"Reborn Man"が、"Mystery Train"に似たリフ・パターンを持つ曲で、唐突かもしれませんが、私はサン・レコードへの敬意みたいなものを感じました。
 なぜなら、これは推察ですが、本盤のボートラである"Rocket 88"が、他の曲と違い、Sun Studioで録音されているからです。
 時期的にいって、Refreshmentsの13年作、"Let It Rock - Chuck Berry Tribute"が、サン・スタジオで録音された際のアウトテイクの可能性が高いです。 

 個人的な結論を言わせてください。
 本作は、Refreshmentsのピアニストのソロ作として、盲信的な既存のファンの期待にも配慮しつつ、一方で、「また金太郎飴的なアルバムなのかな」と予断を持って聴いた普通のファンの予想をも裏切る、中々のバラエティに富んだ好盤になっていると思います。
 若干点数が甘いかもしれませんが、予断を持って聴いてしまった、私の今の素直な感想です。
 
 PS
 10曲目の"Where Ever I Turn"でデュエットしている、Eva Eastwoodは、レーベル・メイトの女性シンガーで、多くは知らないのですが、60年代アメリカン・ポップス風の曲を得意としているシンガーです。
 私は、かってに北欧のコニー・フランシスなんて呼んでいます。



本盤のプロモ動画をどうぞ。




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ロック、スウェディッシュ・ロール

 当ブログを再開してから、なぜかスカンジナビア半島関連のバンドをよく取り上げています。
 ですが、他意はありません。
 まったくその通りなのですが、結果的に今回もまた、スウェーデンのバンドをチョイスしちゃいました。
 かなり以前に、一度取り上げた、こちらのバンドです。


simon crashly8.jpg

It's Only Rock'n'Roll
Simon Crashly
and the Roadmasters

1. Letter To My Baby (Sten Asberg, Peter Nilsson, Christer Nordahl, Anders Larsson)
2. Hey Pretty Baby (Sten Asberg, Peter Nilsson, Christer Nordahl, Anders Larsson)
3. You Broke Another Heart (Sten Asberg, Peter Nilsson, Christer Nordahl, Anders Larsson)
4. I'll Keep On Lovin You (Billy Barton)
5. Hurricane (Steve Bloomfield)
6. Mary Ann (Sten Asberg, Peter Nilsson, Christer Nordahl, Anders Larsson)
7. Don't You Lie To Me (Hudson Whittaker)
8. You Went Away And Left Me (Sten Asberg, Peter Nilsson, Christer Nordahl, Anders Larsson)
9. Deep In The Heart of Texas (Geraint Watkins)
10. House of Blue Lights (Freddie Slack, Don Raye)
11. Jill (Sten Asberg)  
12. Susie's House (Danny Wolfe)
13. True Love (Kim Wilson)

 本作は、本年14年にリリースされたもので、彼らの最新作になります。
 まずは、いつものとおり、バンドのメンバー構成をおさらいします。
 
Sten Asberg : guitar, vocals
Christer Nordahl : double bass
Anders Larsson : piano
Peter Nilsson : drums, backup vocals

 ギター1本で、ピアノが加わった4人編成のバンドです。
 ベースがコントラバスで、ネオロカをイメージします。
 実際、バンド結成時は、ロカビリー・バンドだったんだろうと思われます。
 ギター、リード・ボーカルのSten Asbergが、バンド名にあるSimon Crashlyだと思われます。
 (ステージ名の由来は不明です。)

 今作でやっているスタイルは、乱暴にざっくりと書いてしまうと、ロカビリーとビート・バンドです。
 もう少し言えば、ネオ・ロカビリーとロックパイルのようなロックンロールに大別できます。
 このへんは、個人の印象ですので、異論はあるかと思います。

 以前に取り上げた過去作では、ロックパイルのことを歌った曲、"Tribute To Rockpile"をやっていた嬉しいバンドです。

 RockpileやDr. Feelgoodって、北欧ツアーとかやって、大いに受け入れられたんでしょうね。
 地元のバンドに影響を与えて、しっかりと芽吹いているように感じます。

 卵が先かニワトリが先かなんて話じゃないですが、R&Bを好む下地があったのも確かでしょう。
 スウェーデンって、昔から米国の古い音楽が好まれていて、例えば、本国はもちろん(?)、英国でも手を付けていなかった頃から、スウェーデンでは、ジャンプ・ブルースのリイシューがいち早く出ていて、私はお世話になったものでした。

 また、スウェーデンとフィンランドは、文化交流が密になる歴史的必然があったため、フィンランドも似たような状況となったのでは、と推察します。
 なぜ、ここでフィンランドのことを持ち出したかと言いますと、Doctor's Orderのことが頭に浮かんだからです。
 その点、同じ隣国でも、デンマークやノルウェーはどうなんでしょう? 
 日本への情報が少ないこともありますが、「?」ですね。

 (ところで、唐突かつ全くの余談ですが、最近、マルティン・ベック・シリーズ(スウェーデンを代表する警察小説)の一部が、電子書籍化されました。 
 当該の紙の本が書店から消えて久しい中、古くからのファンとしては、大変嬉しいです。
 紙の本と電子書籍の関係は、かつてのLPとCDというより、もはやCDと音楽ダウンロードとの関係に似て、興味深いです。)

 閑話休題
 
 さて、何曲か気になった曲をご紹介します。
 
 冒頭の2曲は、ロカビリー系の曲です。
 いずれもオリジナルですが、2曲目の"Hey Pretty Baby"は、イントロこそRockpile風で始まりますが、スラッピングもオン気味の、ネオロカ風味で進行するゴキゲンなナンバーになっています。

 対して、3曲目の"You Broke Another Heart"、8曲目の"You Went Away And Left Me"あたりは、ロックパイル系のロックンロールです。
 乾いたサウンドにのせた、軽めのビート・バンド・スタイルが良いです。
 
 そして、しばしば、サウンドの方向性まで決定するかのような、躍動的なピアノのプレイにも心が惹かれます。

 10曲目の"House Of Blue Lights"では、ギターよりも、よく転がるピアノの古いスタイルが目立っていて、ブギの楽しさ満載という感じです。
 こちらは、カバー曲でしたが、本作には、他にもカバーがあります。
 
 中でも注目は、5曲目の"Hurricane"です。
 作者名でピンときた人は、私のお友達です。
 ネオ・ロカビリーの少し前、ロックンロール、ロカビリー・リバイバル期のバンド、Matchboxの中心メンバー、Steve Bloomfieldが書いた曲で、もちろんマッチボックスがやっていた曲です。 

 曲としては、ヴィンテージ・ロカビリーのフォーマットから外れてはいますが、よく聴けば、ポール・バーリソンお得意の、Honey Hush風のギター・リックがしっかり入っている曲です。
 これは、曲そのものの仕上がりよりも、その選曲センスに萌えました。
 こういう1曲があるだけで、本盤への私の愛着はいや増すのでした。

 7曲目の"Don't You Lie To Me"は、古いブルースのカバーです。
 多くの人がやっている曲で、R&B、ロックンロールでは、Fats Domino、Chuck Berryの名前をあげたいです。
 作者のハドソン・ウィッテイカーは、タンパ・レッドのことですね。
 このバンドは、オリジナル曲に有名曲と同じタイトルを付けるくせがあるため、普通にカバーというだけで軽い驚きだったりします。

 9曲目の"Deep In The Heart of Texas"は、伝承曲の方ではなく、何とGerant Watkinsの作品で、Rockpile解散後のDave Edmundsが、"DE7th"でやっていた曲です。
 つべを検索すると、Refreshmentsのメンバーをバックに、この曲を歌うワトキンス本人の動画があって驚きました。
 パブ・ロック勢と北欧って、思っていた以上につながりがあるんですね。
 
 そして、ラストの"True Love"は、Kim Wilsonが書いた曲で、T-Birdsが、あのアルバム出世作"Tuff Enuff"でやっていた曲です。
 渋い選曲だと言いたいです。 
 はっきりいって、どんな曲だったのか覚えていませんでしたが、この機会にT-Birdsのオリジナルと併せて聴きました。
 同盤でのDave Edmundsのプロデュースは、平凡な曲に魔法を掛け、魅力的にしていると改めて感じます。

 本盤は、ベテランらしく気負いのない、余裕さえ感じさせるサウンドが、安心して聴ける作品だと思います。



Hey Pretty Babyです。




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ロックパイルが北欧に残した芽

ハラペーニョ 聖者にはならない

 今回は、ここ最近の流れをひと区切りしたいと思います。
 すなわち、「最近、ダブリ買いしてしまったCD」シリーズの、ひとまず最終回です。
 アイテムは、Louie Ortegaの2ndアルバム、97年作の"In My Heart"です。


louie ortega2.jpg

In My Heart
Louie Ortega
and the Wild Jalapenos

1. Today (Louie Ortega)
2. My Lucky Stars (Louie Ortega)
3. She's An Angel (Louie Ortega)
4. Never Be A Saint (Louie Ortega)
5. Georgie Baker (Louie Ortega)
6. I Believe In You (Louie Ortega)
7. Amor De Mi Vida (Louie Ortega, Max Baca)
8. Set Me Free (Louie Ortega)
9. Heaven On Earth (Louie Ortega)
10. Destiny (Louie Ortega)
11. Mi Casa Es Su Casa (Louie Ortega)
12. Llevame (Louie Ortega)
13. In My Heart (Louie Ortega)
Bonus Track
14. Ring Of Fire (J. Carter, M. Kilgore)
15. Llevame Jam (Louie Ortega)

 本作がリリースされた97年は、Louie Ortegaにとって、彼の音楽人生に深く関わり、大きな影響を与えた盟友Doug Sahmが、静かに天に召された時より、遡ること2年前のことです。
 Doug Sahmのアルバムの歴史で言いますと、Texas Tornados名義のラスト作、"4Aces"が96年で、Sir Douglas Quintet名義のラスト作、"Get A Life"(別題"SDQ 98")が98年ですので、その2枚の間に出された作品ということになります。

 とりあえず、本作の参加メンバー、担当楽器等をご紹介します。
 以下のとおりです。

Louie Ortega : Vocals, Electric Guitars, Acoustic Guitars, Bajo Sexto
Frank Paredes : Bass Guitar, Background Vocals
Don "Spike" Burr : Bass Guitar, Background Vocals
Bill Flores : Dobro, Accordion, Saxophone,
Rich Burr : Drums, Percussion
Jim Calire : Piano, Hammond Organ
Produced by Louie Ortega

 まず、ひとこと、結論から先に述べさせてください。

 本作は、粒よりの曲を取りそろえた、優れたアルバムだと思います。
 また、アクースティック系の楽器の響きが耳にやさしく、繰り返し聴きかえせるアルバムでもあります。

 ほとんど自作で占められた本作は、Ortegaの非凡なソング・ライティングの冴えを感じさせるアルバムになっています。
 ただ、おそらくは、長い期間の中で書き溜めた作品を吐き出したものだと思われ、はっきりわかるものだけでも、トラック1の"Today"、トラック4の"Never Be A Saint"、トラック5の"Georgie Baker"の3曲は、本作が初の録音ではなく、過去に発表した曲の新録音となっています。

 まず"Today"ですが、本作では題名がえらく短縮していますが、これは元は、"Tomorrow Just Might Change"の名前で、70年代に出されたシングルの新録音です。
 「今日は今日、明日は変わるかもしれない」と、歌われる曲で、メロディの美しさにのみ耳がいきがちですが、実は若干の説法くささ、もっと言えば宗教臭も漂う作品です。

 これは、トラック4の"Never Be A Saint"にも共通するスタイルかも知れず、Louieがやはり、伸びやかな声で、「聖者にはならない」と歌っています。
 "Never Be A Saint"は、元は84年にスウェーデンのレーベルSonetからリリースされた、Sir Douglas Quintetのアルバム、"Rio Medina"で披露された曲でした。
 "Rio Medina"は、未だにCD化されていませんが、そのバージョンは、Sonet音源から選曲した編集盤CD、"Scandinavian Years"で聴くことができます。
 
 そして、"Georgie Baker"です。
 この曲は、元は"Tomorrow Just Might Change"の裏面として、70年代に出されたもので、その際は"Little Georgie Baker"という表記が使われていたものです。
 80年代には、やはり、現在も未CD化のSir Douglas Quintetのアルバム、"Midnight Sun"(83年リリース、"Rio Medina"のひとつ前のアルバム)でQuintet盤が録音され、本作収録曲は、Louieにとって3度目の吹き込みになります。
 ところで、Georgieという名前は、Georgeの女性名ですかね?

 さて、ここで落穂拾い的なことをひとこと、ふたこと。
 
 トラック7の"Amor De Mi Vida"には、共作者としてMax Bacaの名前が記されていて興味深いです。
 Max Bacaは、ルーツ系チカーノ・バンド、Los Texmaniacsのメンバーで、マルチ・プレイヤーだと思いますが、主としてバホ・セストをプレイしている人です。
 最近では、完全なコンフント・スタイルで、フラーコ・ヒメネスとの共作アルバムを出しています。
 Ortegaとの接点は、あっても不思議ではありませんが、本作ではコンポーザーとしてのクレジットだけですので、共作するきっかけとなったような、共演盤があるのなら、ぜひ聴いてみたいです。
 
 そして、本作は、ジャケット表記では13曲入りとなっていますが、CDプレイヤーにディスクを入れると、トラック数が15と表示されます。
 13曲目が終了すると、しばしの無音のあと、2曲のシークレット・トラックが演奏されるのです。
 
 14曲目は、ジョニー・キャッシュとジューン・カーターのデュエット曲、"Ring Of Fire"のカバーです。
 原曲からして、メキシカン・トランペットの響きが印象的なボーダー・ソングですので、おそらくは、チカーノ・コミュニティで人気がある曲なんだと思います。
 (そういえば、Louie & The Lovers(60年代末〜70年代初期のLouieのバンド)には、マーティ・ロビンスのカウボーイ・ソング、「エルパソ」のカバーもありました。)
 
 ラストの15曲目は、12曲目のアウトテイクのような演目で、インスト・ナンバーです。

 近年のLouie Ortegaは、Shawn Sahm率いる新生Texas Tornadosのメンツであるとともに、どうもレコーディングこそ未だないようですが、Louie & The Loversの名前で、自らのバンドを組んで活動しているようなので、他人作のゲストばかりじゃなく、リーダー・アルバムを出してほしい、ファンとしては、そう切に願います。




Sir Douglas Quintetがスウェーデンのテレビに出演した際の映像です。
6分40秒あたりから、Ortegaが"Little Georgie Baker"を歌っています。


1. Every Breath You Take (ポリスの最高にイナたいカバー)
2. Everybody Gets Lonely Sometime(3分15秒〜)
3. Little Georgie Baker(6分40秒〜)



関連記事はこちら

Sir Douglas Quintet
オールドウェイヴ ボーダーウェイヴ
至宝の五重奏団、彼方へ
魔法使いはヒップスター
白夜の国から
ストックホルムで会おう
ビニール・オンリーのクインテット

Texas Tornados
ラレードのバラ
彗星はアメリカの心に沈む
この人だれ? プラス1

Last Real Texas Blues Band
ストックホルムの贈り物

Los Texmaniacs
テックス・マニアのうたげ
ごきげんメックス・テックス
テキサス熱中時代
フェリース・ナビダ
オーガストとマクシミリアン
 

ママのホーム・オブ・ブルース

 今回も前回の流れを受け、「最近、ダブリ買いをしてしまったCD」を取り上げます。
 こうしてテーマを決めてのぞめば、「CDのチョイスにさほど悩まなくていい」ということもあります。
 でも、それだけでなく、結果的にダブリ買いをしてしまったということは、その音楽に強い関心があるということでもあり、取り上げる価値は充分以上にあるのでした。

angela strehli1.jpg

Deja Blue
Angela Strehli

1. Cut You Loose (M. London)
2. A Stand By Your Woman Man (Angela Strehli)
3. Deja Blue (Angela Strehli, Mike Schermer, Joe Kubek)
4. A Man I Can Love (angela Strehli)
5. Boogie Like You Wanna (Charlie Bradix)
6. Give Me Love (Angela Srehli)
7. Still A Fool (Angela Strehli) with Lou Ann Barton, Marcia Ball (vocals)
8. Close Together (Jimmy Reed)
9. Hey, Miss Tonya (Angela Strehli)
10. Too Late (Tarheel Slim & Little Anne) with Doug Sahm (vocals)
11. Where The Sun Never Goes Down (Willie Mae Williams)

 
 今回は、テキサスのブルース・ウーマン、Angela Strehliの98年作、"Deja Blue"です。

 本作には、Doug Sahmが2曲でゲスト参加しています。
 トラック8の"Close Together"では、Dougはギターを弾き、いつものDoug Sahmシンジケートのメンツたち、Jack Barber(bass)、George Rains(drums)のほか、ブルース・クラブ・アントンズのハウス・ミュージシャンで、Dougとも親交の深いDerek O'Brien(gt)が録音に参加しています。

 そしてもう1曲が、トラック10の"Too Late" (元曲の表記は"It's Too Late")で、ほとんどDougメインという感じでAngelaとデュエットしています。
 録音メンツでは、"Close Togethr"の面々に加え、あのGene Taylor(p)が加わっています。

 Doug亡きあと、未発表音源の発掘に期待し続ける日々ですが、こういったゲスト参加での限られた既発音源、とりわけボーカル参加曲は、やはり貴重です。
 (Dougは99年に天に召されたので、本曲の録音時期は不明ですが、晩年の収録と言っていいと思います。)

 というわけで、私がこの盤に愛着を持ち、よく確かめずにふらふらとダブリ買いしてしまった理由は、Doug Sahm参加盤で、しかも彼の声が聴けるからです。
 (まあ、だからこそ「きっと持っているはず、もっとよく探せ」、と今は自分自身に言いたいです。) 

 さて、くだんの"Too Late"のオリジナルは、Tarheel SlimとLittle Anneによるデュエツト曲で、Fireのレーベル・コンピなどで比較的容易に聴くことができます。
 今は、さわりだけなら、アマゾンのMP3で手軽に試聴出来るので便利ですね。
 余談ですが、私は、ターヒールという名前の響きが、以前から好きです。
 名前だけ聞いていると、あたかも戦前のブルースマンかのようなイメージを持ってしまいます。

 この男女デュエット曲、Doug、Angelaのどちらが選曲したのでしょう。
 Angelaの声はLittle Annほどの個性を感じませんが、私にとっては、Dougの声が聴けるだけで幸せです。
 今夜は、この盤のこのトラックを繰り返して聴いて、しばしば不定期に発症する、Doug Sahm欠乏症の頓服としたいです。
 薬効は、レア曲であるほど効き目が強いのでした。

angela strehli2.jpg


 さて、これで終わりでもいいのですが、その他の曲についても軽く触れたいと思います。

 まず、基本のバンドですが、バンマスのギター、Mike Schermerが地味ながら好プレイで全体の演奏をリードしています。
 マイク・シャーマーさんは、マイティ・マイクの二つ名を持つ、スタジオのエースで、多くのブルース、ソウル系のミュージシャンの録音でギターを弾いてる人です。
 また、自身のバンドを率い、メイン・アーティストのツアー・サポートをしたりもしています。

 私がまず注目したのは、"Cut You Loose"、"A Stand By Your Woman Man"、そしてアルバム・タイトル曲"Deja Blue"へと続く冒頭の3曲でした。

 "Cut You Loose"は、かっこいいテキサス・シャッフルで、線の細いレイ・ヴォーンなんて言葉が浮かびます。
 曲は、Ricky Allenというよく知らない人がオリジナルのようですが、作者のMel Londonは、マディ、ウルフ、エルモアなど、そうそうたる偉人に曲を書いている人です。
 マディの"Manish Boy"には、作者として、エラス・マクダニエル(ボ・ディドリー)、マディに加え、なぜか(?)このMel Londonの名前がクレジットされています。
 Londonの作品で、今の気分で私が好きなのは、Junior Wellsの"Messin with The Kid"です。

 そして、シャッフル・ブルースの後を受けるのが、ブルージー・バラードの"A Stand By Your Woman Man"です。
 がらっと曲調の変わる、このアルバムの流れが良いです。
 曲は、Angelaのオリジナルですが、タイトルが有名なタミー・ワイネットのカントリー・ヒット、"Stand By Your Man"を連想せずにはいられません。

 そんな中、真っ先に注目してしまうのは伴奏のアレンジで、とりわけ出だしのギターの退廃的なトーンに耳が惹きつけられます。
 これは、私の耳には、まるでAl Greenの"Love And Happiness"のイントロのデフォルメみたいに聴こえます。
 (私のまぶたの裏には、スロウにチークする男女の姿が映っています。)
 
 そして、"Deja Blue"です。
 再びレイ・ヴォーンを連想せずにはいられないファスト・ナンバーです。
 ここでは、マイティ・マイクがかなり弾きまくっていて本領発揮という感じです。

 その他、マイクのオブリガードを中心としたプレイが、メインのアンジェラを盛り立てていて、派手さこそありませんが、気持ちいい響きのブルース、ソウル風味の曲が楽しめる好盤だと思います。
 
 ちなみに、トラック7の"Still A Fool"には、Marcia Ball、Lou An Bartonの二人がボーカルで参加していて、特にルー・アンの声が、相変わらず魅力的です。



A Stand By Your Woman Manをどうぞ
(ただし、ライヴ音源です)




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マイティ・マイク
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おまけ
曲に歴史あり、ケパソ物語

進撃の赤い鼻

 今回は、前回に言及しました、「ここ最近で、ダブリ買いしてしまったCD」を取り上げたいと思います。

 今回の主人公、Doctor's Orderは、00年に自主レーベルからCDデビューしたフィンランドのバンドで、The Pirates、Dr.Feelgood直系のグッド・ロッキンなビート・バンドです。

 彼らの最新作が、この9月26日に発売とのことで、予習のつもりで直近作を聴こうとしたところ、持っていたはずのアルバムが見当たりません。
 「ジャケット写真に見覚えがあるんだけどなあ…、勘違いかな」とつぶやきながらもオーダーしたところ、ある日、ポロリと現物が出てきて、ダブリが発覚したのでした。

 今回発覚したダブリ3枚のうち、唯一未だ到着していないCDです。
 誤ってダブリ・オーダーしてしまったCDの到着を待つのって、何とも切ないんですよね。
 (もっと言えば、気持ちとしては待ってなどいないし、むしろ忘れたいし…。)

 最新作はといえば、発売前に予約オーダーしたのですが、どうもバックオーダーになっているようで、本日現在、まだ発送されていません。

doctor's order6.jpg

Mean Business
Doctor's Order

1. Serious (Hamalainen, Nattila, Oikarinen)
2. And The Show Goes On (Hamalainen, Nattila, Oikarinen)
3. If You Don´t Shut Up (I'll Find Somebody Who Will) (Hamalainen, Nattila)
4. Gonna Bop Till I Drop (Raymond Dorset) / featuring Mungo Jerry
5. Just Me, Myself And I (Nattila)
6. Stop Sneakin' Around (B. Night) / featuring Pete Gage
7. We Do Mean Business (Hamalainen, Nattila, Oikarinen)
8. Tore Down (Freddy King) / featuring Johnny Spence
9. Great Mick Green (Nattila)
10. Legato Grande (Hamalainen)
11. Had Enuff (Hamalainen, Nattila)
Bonus Tracks
Live At International Gastro Blues Festival 2012

12. So It Is (Hamalainen)
13. Big Bad Doc (Hamalainen, Nattila)
14. Los Mas Rapidos (Hamalainen, Nattila)
15. Great Balls Of Fire / Balinka / Whole Lotta Shakin' (Blackwell, Hammer / Rio / Williams)
16. How Do You Sleep At Night (Hamalainen, Nattila, Vaatainen)
17. When The Shit Hits The Fan (Nattila)

 本作は、ダブリでしたが、どうも未聴だったようです。(…と思います。)

 本作は、13年にリリースされたもので、11曲の新曲に、12年にハンガリーで行われたブルース・フェスでのライヴ音源6曲を加えた内容になっています。
 自主レーベル発のアルバムと、Goofin Recordsからの最初の2枚は、既に入手困難で持っていないので、ライヴ音源でも初期の曲が聴けるのはうれしいです。

 さて、バンドの編成をおさらいしましょう。
 メンツは以下の通りで、トリオ編成の3ピース・ギター・バンドです。

Grande-Archie Hamalainen : guitar
Teddy Bear Nattila : bass and vocals
Mighty Man Oikarinen : drums and backing vocals

 近作の2枚は、ここに(元?)The PiratesのJohnny Spenceが加わり4人組として、Johnny Spence & Doctor's Order名義でリリースしており、最新作もこの編成です。

 トリオ編成と人数が少ないため、多分意識してヘヴィなサウンドを出していて、重戦車のようなたたずまいを感じさせる、ハード・ロッキン・ビート・バンドとでも呼びたいサウンドです。

 金太郎飴のような、Mick Green、Wilko Johnson直系のビート・サウンドで、同じような曲が「これでもか、これでもか」、「まだまだいくぞ」という感じで迫ってきます。
 それで飽きてしまうかと言えば、そんなことは全くなく、むしろ常習性たっぷりの危険な香りに酔わされます。

 今作の聴きどころの一つは、ゲスト・ボーカリストが参加した曲です。
 まあ、今作ではゲスト扱いのJohnny Spence参加曲はともかく、まずは残りの2人のゲスト曲に注目です。

 ほとんど2パターンくらいしかないんじゃないか、と極論したくなるようなビート曲の嵐の中で、トラック4の"Gonna Bop Till I Drop"では、Mungo Jerry主導でロカビリーをやっています。
 これが新鮮なのです。

 もともとJohnny Spenceのバックボーンには、Johnny Burnette TrioのPaul Burlisonのサウンドがある(?…と思う)ので、Spenceと組んでいる限りこの手の音が出ても珍しくないんですが、本作では「ゴリゴリ・サウンド」ばかり(?)の中で、明らかに風合いの違う音がアクセントになっています。
 私は、マンゴ・ジェリーを知らないのですが、歌い方もマンブル多用で、ロカビリー系の人なんですかね。
 この曲の作者、Raymond Dorsetは、ジェリーの本名らしいです。

 そして、トラック6の"Stop Sneakin' Around"は、Pete Gageがボーカルをとるファスト・ブルースです。
 ご存じのとおり、ピート・ゲイジは、リー・ブリローの後を受け、Dr.Feelgoodの二代目リード・ボーカルを務めた人です。(と言っても、98年の"On The Road Again"1作だけですが…。)

 この人は、ブルース、R&B志向のピアノ・ロッカー(?)ですが、今回はボーカルのみの参加です。
 ここでは、しわがれ声でブルース・ロックを激渋に決めています。
 ギターのバッキング・リフがピタリとはまっていて、かっこいいです。
 ピート・ゲイジのソロ・アルバム、10年リリースの"Tough Talk"は、フィンランドで録音され、Doctor's Orderが全面バックアップしたほか、Gypie Mayoも多数の曲でギターを弾いた、この手の音楽好きなら必聴といいたいアルバムでした。

 そして、Johnny Spenceが歌うトラック8の"Tore Down"は、Freddy Kingの歌ものの代表作のひとつで、選曲こそ若干新鮮さに乏しいですが、ここでのSpenceは性急さを抑えたアレンジにのせ、余裕のある歌い方をみせていて、彼の別の魅力を引き出しています。

 そして、この曲に触れましょう。
 トラック9の"Great Mick Green"です。
 歌詞の全貌が知りたいと思わずにはいられないナンバーです。

 ウィルコの師匠、なんて言われることも多いグリーン先生、当然Doctor's Orderにとっても憧れの人だったのでしょう。
 彼らの07年のミニ・アルバム、"Cutthroat And Dangerous"では、先生が全面参加し、Doctor's Order with Mick Greenの名義で出されたのでした。
 先生お得意の"Drinkin' Wine Spo-Dee-O-Dee"でのプレイが痛快丸かじりでした。
 ここでは、先生の思い出を懐かしむとともに、その功績を称えています。

 最後に、ハンガリーでのライヴ音源について少しだけ触れます。
 基本的に、ただただかっこいい、そして貫禄さえただようプレイと言ってしまいましょう。

 ちなみに、トラック15の"Great Balls Of Fire / Balinka / Whole Lotta Shakin'"で演奏される50sメドレーですが、ジェリー・リーの代表作2曲に挟まれた"Balinka"という聞きなれないタイトルの曲があります。
 これは聴けばすぐ分かるとおり、Champsのあの曲です。
 「テキーラ!!」と叫ぶ箇所で「バリンカ!!」とのたまっています。
 これって、北欧の強いお酒の名称なのかな?
 それとも全く別の掛け声?


Great Mick Green
by Doctor's Order


曲中に、Mick Greenの、というか
Paul Burlisonの得意フレーズが出てきます。
(1分40秒あたり)


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Pete Gage
タフでなければ 優しくなれない

ベリー・ソングの詰め合わせ

 ショックなことがありました。
 記憶力の低下です。
 なんとなく自覚はありましたが、具体的な例を眼前に突きつけられると、やはり愕然としてしまいます。
 
 あるアルバムを探すため、久しぶりにCDの棚を触り、さらに未整理のまま平積みになっている「山」を探ったところ、目的のものも無事見つけたのですが、思いもよらないCDを発見することになったのです。

 それは、少し前、あるCDを探してもなかったため、「持っていると思っていたけど、よくある勘違いかな?」と得心してオーダーしたのですが、何とひょっこり出てきたのです。
 しかも、しかも、それだけでなく他にも同様のCDが出てきて、計3種類のダブリを発見したのでした。

 これらは、いずれも同様の理由で最近オーダーしたCDと同じものです。(うち1枚は、未だ到着していません。涙。)
 ショックなのは、無駄な出費をしてしまったことよりも、気づかずに再度買ってしまったCDを手に取ったとき、ブックレットの中身などが記憶になくて、やはり未入手だったのだな、と納得していたことです。
 うーん、少し落ち込んでいます。
 
 今回は、前回の記事を書いたとき手元になく、記憶違いで誤った内容を書いてしまったCDを取り上げます。
 (前回記事の誤りは、同記事に赤字で訂正を追記しました。)
 本CDは、上記の「山」を探ったところ出てきたCDのうちの1枚です。

refreshments3.jpg

Let It Rock
The Chuck Berry Tribute


1. You Can't Beat A Chuck Berry Song (Joakim Arnell)
2. My Mustang Ford (Chuck Berry)
3. Memphis Tennesse (Chuck Berry)
4. Sweet Little Sixteen (Chuck Berry)
5. Come On (Chuck Berry)
6. It Wasn't Me (Chuck Berry)
7. Wee Wee Hours (Chuck Berry)
8. Nadine (Chuck Berry)
9. Havana Moon (Chuck Berry)
10. You Never Can Tell (Chuck Berry)
11. You Can't Catch Me (Chuck Berry)
12. No Money Down (Chuck Berry)
13. Carol (Chuck Berry)
14. Vacation Time (Chuck Berry)
15. Southern Belle (Jokim Arnell)

 本作は、13年にリリースされた、The Refreshmentsのひとつ前のアルバムです。
 タイトルどおり、Chuck Berryのカバー集になっていて、冒頭と末尾に1曲づつオリジナル曲を配置した仕様になっています。

 初期の曲を中心に有名曲がほとんどですね。
 私がピンとこなかったのは、1曲のみ、14曲目の"Vacation Time"だけです。
 これは、どの頃の作品でしょう?
 チェス録音は、別テイク、未発表曲を含めてほとんど聴いているはずなのですが…。
 マーキュリー時代でしょうか。
 でも、あの時代は、ほとんどチェス録音の再録ばかりだったような気がするのですが…。

 でも、ふと先ごろの出来事が頭をよぎります。
 記憶力の不確かさを痛感したばかりじゃなかったのか!!
 思わず、自信を失ってしまうのでした。 

 気を取り直していきましょう。
 本作の録音メンバーは、以下の通りです。

Joakim Arnell : Bass, Lead Vocals & Backup Vocals
Mats Forsberg : Drums, Percussio
Johan "JB" Blohm : Piano, Lead Vocals
Jonas Goransson : Electric Guitar

add.Musician
J.T.Holmstorm : Saxophone

 常駐のサックス奏者が脱退したわけですが、やはり、彼らにはホーンが必要なんでしょうか?
 サックス奏者をゲストで呼んでいます。
 Berryの作品で、すぐにサックスをイメージ出来るのは、"Nadine"くらいですけどね。

 さて、ベリーのナンバーは、ほとんど目立ったアレンジなどせず、王道のビート・バンド・スタイルでやっています。
 わずかに、"Come On"くらいが、一聴して少しフェイクしていると感じる程度でしょうか。

 前回の記事でも、マイナスっぽい表現を使いましたが、あえて言ってしまえば、全体的に冒険のない演奏です。
 しかし、繰り返し飽きずに聴ける音楽ではあります。
 つまり、予想を裏切るような、痺れるような刺激こそないけれど、期待しているものを期待どおりに、これでもかと提供できている、そんな「水戸黄門」的な、かつ「金太郎飴」的なアルバムだと言えるのかも知れません。

 冒頭のオリジナル曲の歌詞が、ベリーの人生をダイジェストしたような内容になっていて、興味深いです。
 ベリーには、"Bio"という自伝的ソングがありましたが、こちらは、同趣旨ながら、ファン目線で書かれた、「憧憬」と「敬意」に溢れた作品だと思います。

 なお、本作の基本トラックは、スウェーデンではなく、わざわざ米国のスタジオを借りて録音されています。
 それは、イリノイ州シカゴのどこかではなく、テネシー州メンフィスのサン・スタジオで録音され、その後、スウェーデンのスタジオで完成されました。



本作のプロモ動画です。




You Can't Beat A Chuck Berry Song (歌詞つき)





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次の四半世紀もロッキン!
生鮮! 懐メロジュークボックス

Billy Bremner
スカンジナビアからロッキン

Chuck Berry
神様、降臨
トーキョー・セッション

次の四半世紀もロッキン!

 
 <赤字追記あり>
 お久しぶりです。
 長らく放置していましたが、本日から、再びマイペースで更新していきたいと思います。

refreshments2.jpg

Wow Factor
The Refreshments

1. Wow Factor (J.Arnell)  
2. Clarksdale Blues (J.Arnell)
3. My Heart's In Tennessee (J.Arnell) 
4. Hallelujah (J.Arnell)  
5. Riverboat Queen (J.Arnell)
6. My One Love (J.Arnell)  
7. Spring (J.Arnell)
8. House of Blue Lights (D.Raye, F.Slack)
9. Without a Dream (J.Arnell)  
10. American Love (J.Arnell, A.M.Dolan)
11. Dark Moon ( N.Miller)
12. 3 Chords 12 Bars (J.Arnell)

 今回は、本年6月にリリースされた、スウェーデンのロックンロール・バンド、The Refreshmentsの最新作を聴きました。
 本作は、数え方にもよりますが、2作のクリスマス・アルバムを含めると、通算16枚目のオリジナル・アルバムになります。

 また、彼らのオフィシャル・サイトでは、本作を25周年アニバーサリーと謳っています。
 1stのリリースが95年ですから計算が合いませんが、どうやら、Refreshmentsの名称を使って吹き込んだ最初のデモ録音から、数えて25年らしいです。

 さて、本作のメンバーは次のとおりです。

Joakim Arnell : bass, lead vocal, backup vocal
Mats Forsberg : drums, percussion
Jonas Göransson : guitars, buckup vocal
Johan Blohm : piano, lead vocal
 
 例によって、おさらいをしておきましょう。
 Refreshmentsは、95年に、アルバム"Both Rock'n'Roll"でデビューしたスウェーデンのバンドです。
 (同名のアメリカのバンドがいるので注意しましょう。)

 そのデビュー時から、Rockpileのリード・ギタリスト、Billy Bremnerが関わっていたことが大きな意義を持っていたバンドで、Rockpileの影響を強く感じさせるテイストが特徴です。
 Billy Bremnerは、最初の4作をプロテュースしたほか、2ndと3rdでは正式にメンバーの一員として参加してギターを弾き、いくつかの自作曲を提供もしました。

 既述のとおり、音楽性はRockpileとの共通性が顕著ですが、Billyが参加していない場合は、ギターが1本のため、代わりに常駐するピアノとサックスのサウンドが本バンドの個性を特徴づけています。
 
 さて、本作です。
 とりあえず結論を先に言いますと、中身は「いつもどおり」です。

 よくよく聴けば、今作は、ミディアム・スローやバラード調の曲がやや多めなのですが、すべてが些細なことに思えるくらいパブリック・イメージが強烈なため、1枚を聴きとおすと、ほとんど変化球らしいものもなく、たんたんとRockpile系のロックンロールを演奏していた、とそう感じてしまうのでした。

 また、リード・ボーカルのJoakim Arnellの声が、歌い方も含めて、Dave EdmundsそしてBilly Bremnerを連想させるものがあり、Joakinへの影響を含めて、改めて、DaveとBillyの歌い方って似てたんだなとしみじみ思い返したところです。
(数曲のみリードをとっているもう一人の声は、ピアノのJohan Blohmです。)

 ところで、アルバムのジャケ写があまりいけてなく、素人が撮った集合スナップみたいに見えてしまうのが悲しいです。
 そして、人数がさびしいことに気づきます。

 どうやら、前作のChuck Berryトリビュート・アルバムを最後(?)にサックスのMicke Finellが脱退したようで、4人編成のバンドになっています。
 <追記> 間違いでした。"Let It Rock - Chuck Berry Tribute"(2013)の時点で既に4人編成になっていました。 

 (Micke Finellは、近年、ソロでインスト・アルバムをリリース(MP3のみ?)したほか、懐かしのロックンロール・リバイバル・バンドのBoppers(まだ現役なのか!)のメンツと共作アルバムを出したらしいです。…昔々、スウェーデンのポップ・ミュージックといえば、アバかボッパーズだったよねぇ、再びしみじみ)

 以前にも別の場で書きましたが、ごきげんな音楽ではありますが、正直なところ、若干スリルに欠けるタイプの音楽ではあります。

 一部のブルースのような、緊張感ただよう、「ながら」では聞き流せない、真摯に正対せずにはいられない音楽ではありません。
 また、キャッチーな魅力に満ちあふれ、思わず身を乗り出してしまうような、わくわく感たっぷりの音楽でもありません。
 言うなれば、何か別のことをしながらも、BGMとして素直に気持ちよく聴ける音楽です。

 では、私にとって好きか嫌いかといえば、もちろん大好きな音楽なのでした。


本作のプロモーション動画をどうぞ。1stシングルは"Hallelujah"です。


…うーん、こうしてつべの動画で聴くと、CDで聴くよりも、わくわくするのはなぜかなあ…

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チカーノ・ソウル・パーティ

 今回は、こちらを聴きました。
 チカーノ・ウエストサイド・ソウルのなかなかの逸品ではないかと思う1枚です。
 Rocky Gil & The Bishops、ほとんど経歴を知らないのですが、ソフトは、テキサスのぽんこつレーベル、Golden Eagle発のCDで、03年リリースとクレジットされています。


Soul Party
Rocky Gil & The Bishops
 
1. Soul Party
2. Goodnight My Love
3. Me & You
4. Oh Dragon
5. Ob-La-Di,Ob-La-Da
6. After Party
7. Oily
8. Looking For A Lover
9. I'm Sorry   
10. Love At A Common Man
11. Love Can Make You Happy
12. It's Not The End

 この会社の通例どおり、全くクレジットのたぐいはありません。
 表ジャケットはペラ1枚で、一応紙質は厚めですが、裏は白紙、カラーコピーもしくは家庭用プリンタからの印刷かも、と思わせるような低レペルのものです。

 このように体裁は最低ですが、内容はかっこいいです。
 この感じ、何と言えばよいのでしょうか?

 いくつかのファンキー・ソウルとスイート・ソウルで構成されたアルバムで、ブレイク・ビーツ・ネタっぽい曲も含まれています。
 音の雰囲気的には70年代ぽく感じられます。

 アルバム・タイトルの"Soul Party"は、ベタに例えるなら、アーチー・ベル&ドレルズの"Tighten Up"みたいな感じでしょうか(そこまでクールではないかな?)。
 ギターのカッティングとファストでファットなベース、ドラムのビートが気持ちいいナンバーです。
 この曲が本盤の代表曲でしょう。
 同じくファンキー・ソウル系では、"Oh Dragon"、"After Party"("Soul Party"のインスト版?)も良いです。

 一方、バラードでは、ジェシー・ベルヴィンの"Goodnight My Love"のカバーのほか、とりわけ"Me & You"が聴きものです。
 "Goodnight My Love"は、曲の良さを再認識させてくれると同時に、Rocky Gilが歌える人だと感じさせてくれます。

 そして、"Me & You"は、フィリー・ソウルのような大甘の側面と、古いDoo Wopを思わせるような、スタイリッシュでダンディな側面を合わせ持った大変魅力的な仕上がりになっていて、ここでもRockyのよく伸びる声に聴きほれます。
 天まで昇るような緊張感の高いハイ・テナーが素晴らしいです。

 また、Rocky Gilのボーカルは、曲によってはスモーキー・ロビンソンを連想させたりもします。
 "Love Can Make You Happy"がそんな雰囲気の仕上がりになっています。
 私は、オリジナルのMercy(白人バンド?、68年のヒット)盤よりも好きです。
 この曲では、バックに寄せては返す波の音、海鳥のさえずり等のSEが配されています。 
 
 "Looking For A Lover"は、ファンキーかつスイートなナンバーで、やはりボーカルの構成力の高さを感じます。

 "I'm Sorry"は、一貫してスイートなバラードで、リードに寄りそう女性コーラスのリフレインが大変効果を発揮していて好きです。

 ラストの"It's Not The End"は、ボーカル、演奏ともにキラキラ弾けるような、溌剌としたノーザン・ダンサーで、60年代のデトロイトっぽい雰囲気の曲です。
 私は、リーヴァイ・スタッブスに似合うかもなんて思いました。

 全体として、アップ、スローともに優れた演奏を併せて収録した好アルバムだと感じました。
 見つけたら、「買い」だと思います。

 追記
 本アーティストは、Huey P Meaux関連の人のようです。
 Crazy Cajunのディスコグラフィーによれば、本盤の元は、78年の同名LP(Crazy Cajun 1018)のようです。
 アルバム・タイトル、収録曲、曲順ともに同じなので間違いないでしょう。
 Crazy Cajunでは、この1枚のみのようです。
 ジャケットは、元のLPからレタリングを少し変えていて、元のほうが良いです。


(Crazy Cajun 1018)
 

 …と終るところでしたが、念のためHuey P Meauxのもうひとつの代表レーベル、Tear Dropを調べたところ、どうやらCrazy Cajun盤は、Tear Drop盤の再発盤のようです。

 Tear Dropのディスコグラフィーによれば、Rocky Gil & The Bishopsは、Tear Dropに3枚のLPがあり、これはSunny & The Sunlinersの6枚、Rudy Gonzales Y Sus Reno Bopsの4枚に次ぐ枚数です。
 以下のとおりです。

The Two Sides Of Rocky Gil & The Bishops (Tear Drop 2012)
El Fantastico (Tear Drop 2016)
Soul Party (Taer Drop 2022) 本盤の元盤だと思われます。

 いずれも、Golden EagleでCD化されてます。
 "Two Sides Of …"は、LPのA面がスペイン語によるラテン曲、B面が英語のソウル・カバー曲になっています。
 "El Fantastico"は、全曲スペイン語のラテン曲で構成したアルバムです。

 問題のTear Drop盤"Soul Party"ですが、オークション・サイト等で調べたところ、ジャケ写は違いますが、アルバム・タイトル、収録曲、曲順ともに同じです。


(Taer Drop 2022)


 当初のリリースは、68年か69年だと思います。
 ちなみに、アーチー・ベル&ドレルズは、テキサス州ヒューストン出身のボーカル・グループで、LP、"Tighten Up"は68年にリリースをされています。


Soul Party
by
Rocky Gil & The Bishops



It's Not The End
by
Rocky Gil & The Bishops





おいらのいい人 完熟トマト

 今回は、このバンドを聴きました。
 その名もラッキー・トンブリン・バンドです。
 7人編成のバンドですが、バンマスのLucky Tomblinは、ボーカルのみで楽器の担当がありません。
 本名は不明です。

 この人は、その辺にいそうな小柄な初老のおじさん(おじいさん?)なんですが、ただ、バンドのメンツには、なかなかのくせ者が含まれていて、それらを束ねていることから、謎のフィクサーぽい雰囲気を漂わせている人です。


 
Red Hot From Blue Rock
The Lucky Tomblin Band

1. Honky Tonk Song (Mel Tillis, Buck Peddy)
2. End of the Road (Jerry Lee Lewis)
3. Setting the Woods on Fire (Rose Nelson)
4. Howlin at the Moon (Hank Williams)
5. Don't Forget to Dip the Girl (Sarah Brown, Rosie Flores)
6. Sundown Blues (Moon Mullican)
7. I'll Keep on Loving You (Floyd Tillman)
8. Good Lookin' No Good (Sarah Brown)
9. A Fool Such As I (Bill Trader)
10. Party Doll (Jimmy Bowen, Buddy knox)
11. Play One More Song (Earl Poole Ball, Jo-El Sonnier)
12. Time Changes Everything (Tommy Duncan)
13. Red Hot (Billy Emerson)

 まずは、フィクサーっぽい話題から。
 Lucky Tomblinは、オースティンのブルース・クラブ、アントンズのドキュメンタリー・ビデオ、「ホーム・オブ・ブルース」のプロデューサーです。
 最後のスタッフ・ロールのところで、「プロデューサー」「エクスキューティブ・プロデューサー」として二度も名前が出てきます。

 本編には出演していないと思いますが、やはりオースティンの音楽シーンの影の顔役なんじゃないでしょうか。
 少なくとも、単なるビデオ製作の出資者ではないでしょう。
 
 The Lucky Tomblin Band名義では、現在までに4枚のアルバムをリリースしています。
 以下のとおりです。

03年 Lucky Tomblin Band
06年 In a Honky-Tonk Mood
07年 Red Hot From Blue Rock (本盤)
10年 Honky Tonk Merry Go Round

 メンバーは、結成当初から基本的に変わらず、以下のような編成です。

Lucky Tomblin : lead vocals
John Reed : lead guitar、vocals
Redd Volkaert : lead guitar、vocals
Bobby Arnold : guitar、vocals
Sarah Brown : bass、vocals
Jon Hahn : drums
Earl Poole Ball : piano、vocals



 03年の1stのみ、この7人に加えて、Asleep At The Wheelの元メンバー、女性スチール・ギターリストのCindy Cashdollerが参加していました。
 シンディの参加から、およその察しがつかれたかと思いますが、見かけはカントリー系のバンドです。
 やっているレパートリーも、特段予想を裏切ることなく、本盤を例にとれば、ホンキートンク、ウエスタン・スイングなどを嬉々としてやっています。

 しかし、単純にそれだけで語るべきバンドではありません。
 メンツを再度ご覧ください。

 女性ベーシストのSarah Brownは、テキサスの音楽シーンでは、比較的有名な女性ではないでしょうか。
 先ほどのアントンズのドキュメンタリーにも出演していて、そこでは、クラブのオーナー、クリフォード・アントンの人柄やブルースについて語るシーンが収録されていました。

 サラは、ドクター・ジョンがプロデュースしたアントンズ発の女性ボーカル・ユニット(アンジェラ、ルー・アン、マーシャ)のツアー・バンドのメンバーでもありました。
 (加えて、実質的な4人目のボーカリストでもあったようです。)
 また、私は未聴ですが、ソロ・アルバムもあるようです。
 
 さて、このバンドには、リード・ギターが二人います。
 まず、John Reedですが、しばしばJohn X Reedとクレジットされる人で、テレキャスのマスターです。
 世に知られるキャリアの初めは、テキサスのルーツ・ロック・バンド、Freda & The Firedogsのリード・ギターリストとしてでした。
  (あのFlatlandersのオリメンだったという話もあります。)
 Freda & The Firedogsからは、Marcia Ball、Bobby Earl Smithらが後にソロ・アーテストとしてデビューしました。

 Firedogsの解散後は、一時Doug Sahmと活動を共にしたり、Texana Damesという女性ファミリー・バンドでリードを弾いたりしていました。
 Doug Sahmとは、アルマディロ・ヘッドクォーターズでのライヴで共演しほか、覆面バンド、Texas Mavericksでは、Johnny Xの変名(?)でリード・ギターを弾きました。
 また、Joe King Carrasco、Alvin Crowのバンドへもゲスト参加したことがあったと思います。 
 
 もう一人のリード・ギター、Redd Volkaertについては、あまりキャリアを知らないのですが、多分ウエスタン・スイング系の音楽を好むテレキャス・マスターだと思います。
 John Reedが比較的痩身なのに対して、かなり恰幅のいい体型をオーバーオールに包んだおじさんです。

 本盤での演奏は、テキサス・ブレイボーイズ出身と言われれば信じそうなスタイルの人です。
 しかし、やはりこの人もまた、バックボーンはカントリーだけではなく、様々なスタイルを弾きこなすゴキゲンな人なのでした。
 ソロ・アルバムが数枚ある人ですが、私がこの人の存在を知ったのは、Bill Kirchenの(1回きり?の)プロジェクト、TwangBangersの参加メンバーとしてでした。
 (ちなみに、02年リリースのTwangBangersの唯一のアルバムには、Very Special Thanks to Dave Alvinという謝辞が記されています。)


26 Days On The Road : TwangBangers


(この盤収録の"Hot Rod Lincoln"は、クリス・スペディングのギター・ジャンボリーのビル・カーチェン版で、しかもギターだけでなくベースの物まねも登場します。)



 さて、他のメンバーについてはよく知らないのですが、きっとそれなりのキャリアを持った職人たちなのだろうと想像します。
 
 そして、興味深いのは、リード・ボーカルをとれる人が何人もいることです。
 (あるいは、歌いたい人と言うべきかも知れませんが…。)

 収録曲をリード・ボーカルで分けると以下のようになります。

Lucky Tomblin (band leader)
1. Honky Tonk Song (Mel Tillis, Buck Peddy)
4. Howlin at the Moon (Hank Williams)
9. A Fool Such As I (Bill Trader)
13. Red Hot (Billy Emerson)

Earl Poole Ball (piano)
2. End of the Road (Jerry Lee Lewis)
11. Play One More Song (Earl Poole Ball, Jo-El Sonnier)

Redd Volkaert (lead guitar)
3. Setting the Woods on Fire (Rose Nelson)
12. Time Changes Everything (Tommy Duncan)

Sarah Brown (bass)
5. Don't Forget to Dip the Girl (Sarah Brown, Rosie Flores)
8. Good Lookin' No Good (Sarah Brown)

John Reed (lead guitar)
6. Sundown Blues (Moon Mullican)
10. Party Doll (Jimmy Bowen, Buddy knox)

Bobby Arnold( rhythm guitar)
7. I'll Keep on Loving You (Floyd Tillman)

 うーん、この割り振りは民主的とでもいうべきでしょうか。
 ドラマー以外は、すべてリード・ボーカルをとる機会を得ているわけです。

 本盤では、ホンキートンク系のレパーリーを多くやっているため、全体的に受ける印象はカントリーっぽいです。
 Lucky Tomblinがリードをとった"Red Hot"は、Billy "The Kid" Emerson〜Billy Lee RileyのブルージーR&Bですが、黒っぽさはあまりないアレンジで、ほんわかロッキン・サウンドに料理しています。

 リード・ボーカル陣は、濃淡こそあれ、それぞれ黒っぽさを持っている人たちなのですが、本盤では、ほとんどその片鱗を見せていません。
 あえていうならSarah Brown、Earl Poole Ballあたりが小出しにしているでしょうか。
 さらに言えば、Earl Poole Ballからはモダンさを、John Reedの声からは若干線が細い印象を受けます。
 そして、本盤でのRedd Volkaertは、ウエスタン・スイング大好きおじさんになりきっています。

 本盤に限って言えば、カントリー・ロック、ルーツ・ロックなど、いずれも本バンドを例える表現として外れてはいないと思います。
 でも、私が彼らの音楽性から、自然に思い浮かんだ言葉は、グッドタイム・ミュージックでした。
 総じて弦楽器と鍵盤のアンサンブルが素晴らしく、とてもリラクゼーション効果の高い音楽だと思います。
 
 本盤は、様々な魅力を持ったメンバーが、絶妙なコンビネーションを披露している好アルバムです。
 さらに聴きこんでいきたい、そんな風に思わせるバンドです。
 (なお、本盤には、アルバム制作のメイキング映像を収録したDVDが同梱されています。)

 (トリビアの追加)
 Lucky Tomblinは、本バンドを結成するほんの少し前に、Doug Sahm人脈のホーン陣(ロッキー・モラレスをはじめとする後のWestside Hornsの面々)と一緒にバンドを組んで活動していたことがあります。


End Of The Line
by
Lucky Tomblin Band (lead vocals : Redd Volkeart)


Bob Willsのナンバーです


Jessica
by
Redd Volkeart


Allman Brothersのあの曲をやっています
上のBob Willsを演奏しているのと同じ人なんですよね これが



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