この Technical Writing Courses は 2 つのコースで構成されています。
One がテクニカル ライティングそのものの細かい事項で、Two はドキュメント全体についてや、テキスト以外の要素 (図やサンプルコード) についてなど、ライティングの補足事項のような感じです。
今回の記事では、日英翻訳に役立ちそうなことで、私が知らなかったことを中心にごくごく一部だけを紹介したいと思います。このライティング コースには基本的なことも含めて多くのことが書かれています。全体の内容についてはコース自体の Summary (One、Two) を参照してください。当然ながら、とてもよくまとまっています。
略語 Acronyms
Technical Writing One > Words > Use acronyms properly- フルスペルを先に書き、「フルスペル (略語)」の形にする。
- フルスペルと略語を混ぜて使わない。一度略語を使ったら、その後はずっと略語にする。
日本語では「略語 (フルスペル)」と略語が先になっていることが多いです。略語がどれくらい浸透しているかにもよりますが、たぶん、日本語を読む人は英語のフルスペルをあまり気にしないからかと思います。また、文章の中で略語が続いたからたまにフルスペルに戻そう、といった気遣いは不要なようです。
代名詞 Pronouns
Technical Writing One > Words > Disambiguate pronouns- 本来の名詞よりも先に代名詞を使わない。
- 本来の名詞との間の語数が 5 語を超える場合は代名詞を使わない。
代名詞の使い方については、Google のこのコースに限らずいろいろなところで説明されていると思います。代名詞を先に使わないというルールは、語順の入れ替えが発生する翻訳ならではの注意点かと思っていましたが、最初から英語を書く人も注意が必要なようです。また、5 語という基準は私は初めて知りました。
箇条書き Lists
Technical Writing One > Lists and tables > Punctuate items appropriately- 文のときは、大文字で始め、ピリオドを付ける。
- そうでないときは、小文字で始め、ピリオドは付けない。
箇条書きの各項目は、名詞句でも大文字で始めてしまっていたような ( ̄0 ̄) ピリオドは、翻訳の場合でも、原文に従うのではなく、このルールを適用することが多いと思います。
表 Tables
Technical Writing One > Lists and tables > Create useful tables- 各列に、意味のある見出しを付ける。
- 表の 1 マスには、2 文まで。それを超える場合は、構成を考え直す。
表が複数ある場合、それぞれ内容が違うのに列の見出しはどの表も同じということが多々あります。たとえば、日本語の原文では「項目」や「内容」といった見出しがすごく多い気がします。 で、その下に文字がびっしりと並んでいたりすると、もう読む気がなくなります。
段落 Paragraphs
Technical Writing One > Paragraphs > Don't make paragraphs too long or too short- 1 段落は、長すぎても短すぎてもいけない。3 〜 5文程度。7 文を超えることは避ける。
- 1 文のみの段落がたくさんあるのもよくない。
翻訳では、原文を切ったりつなげたりして、文の数が変わることがよくあります。日本語は 2 文だったのに、英訳したら 1 文になってしまった、なんてことは避けた方がいいんですかね。どうだろう。まあ、つなげることはあまりないので、細かく切りすぎて 7 文を超えないかを注意した方がよさそうです。
ソースコード内のコメント Comments
Technical Writing Two > Creating sample code > Commented- 短い方がよいが、短さより、明確さを重視する。
- わかりきっていることを書かない。
コメントが短すぎて暗号のようだったり、ソースコードとまったく同じだったり、そんなことがよくあります。また、英訳すると同じになってしまうケースもちょっと困ります。たとえば、
Create
という命令に「作成」というコメントが付いている場合、英語のコメントを付けても意味がないですが、訳者の判断でコメントを消すわけにもいかず、悩ましいです。おすすめ作図ツール Illustration tools
Technical Writing Two > Illustrating > Illustration tools翻訳者として使うことはあまりありませんが、いつも Word と Excel ばかりなので、いろいろ試してみるのもよさそうです。
気になった英語表現
このライティング コースは主にソフトウェア開発者向けなので IT 分野の翻訳で頻出する表現がたくさんありました。例文もプログラミング関連のものが多いです。そんな中で私が気になった表現を 2 つだけ紹介します。
- the curse of knowledge
「知識の呪い」と訳されることが多いです。自分がよくわかっている内容は、わからない人の気持ちがわからず、返ってうまく説明できない、というときに使われる言葉です。私は、最初、curse を course と見間違えてしまいました。curse なんて IT 分野ではめったに登場してこないです (;。;)
- code (他動詞)
If there is more than one way to code the task, code it in the manner ...
code はたいていは名詞で、動詞でも自動詞として使われることが多いと思います。他動詞では、implement と同じく「〜を実装する」という意味のようです。
今回は以上です。翻訳では原文があるので全部を適用するのはなかなか難しいですが、英語ネイティブでない英訳者は、こうしたちょっと名の通ったガイドラインを知っておくと何かのときの備えとしていいかもしれないです。ここにこう書いてありますよって、自分の主張の根拠に使えそうです。