アフィリエイト広告を利用しています
ファン
検索
<< 2024年11月 >>
          1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
最新記事
写真ギャラリー
最新コメント
気分がいいんだ by トバ (11/12)
気分がいいんだ by よし (11/12)
美味しいジュース by トバ (11/03)
美味しいジュース by よし (11/03)
美味しいジュース by トバ (10/31)
タグクラウド
カテゴリーアーカイブ
プロフィール
toba2016さんの画像
toba2016
安全地帯・玉置浩二の音楽を語るブログ、管理人のトバです。安全地帯・玉置浩二の音楽こそが至高!と信じ続けて四十年くらい経ちました。よくそんなに信じられるものだと、自分でも驚きです。
プロフィール

2021年01月30日

情熱


安全地帯VII 夢の都』二曲目、「情熱」です。記念すべき20枚目のシングル(10枚目は何だっけ?と調べてみたら「碧い瞳のエリス」でした)にして、アルバムからのシングルカットであり、このアルバム収録曲唯一のシングルとなりました。カップリングは「Seaside Go Go」ですね。

「I Love Youからはじめよう」と同じく、「どーだい」の記事で「どーだいほど好きではないが似た曲」として紹介してしまった曲ですので、非常に気まずい記事執筆になります(笑)。あー、やめときゃよかたなー、あんときは「どーだい」の記事が書けるのがうれしくて、後先考えてなかったんだよなー。「どーだい」がいちアルバム曲であるのに対して、「I Love Youからはじめよう」も「情熱」もシングル曲なのですから、当然知名度だってかなり違うのでして、わたくし、多くの人を微妙に敵に回すようなオロカなマネをしてしまったわけです。ううう。

エレキギターバリバリの、爽快ハードロック、「I Love Youからはじめよう」と同じくキーはG【追記:情熱はB、I LOVE YOUからはじめようはAですね、コメントいただいて気付きました】、ブラス入りのイントロで景気よく始まるところも、「I Love Youからはじめよう」と同じです。これは「I Love Youからはじめよう」ファンなら狂喜できる再来ぶりです。JUDAS PRIESTの「EXCITER」が好きだった人が「PAINKILLER」を聴いたときの感激に近いでしょう(往年のヘビメタファンでないとわからない、説明する気があるのかあやしい喩え!)。

「I Love Youからはじめよう」をなぞるように、「ブシュウー!」とギターのスライド音が入ったかと思ったら一気にブラスがファンファーレのように鳴り響き、ギターは大胆に全音符のパワーコード、ベースも全音符中心で力強くシンプルに押してきます。よーく聴くと、なにかシンセが「キロキロカラコロコロカラ……」と入っているのですが、これはサビにも入ってますね。当時は気になりませんでしたが、五人以外の音をなるべく入れないように作成されたこのアルバムにおいて、どこまで「I Love Youからはじめよう」的なゴージャスさを残すべきか?と悩んだ末のアレンジではなかったかと思うのです。おそらく、ライブでやるならサポートメンバーに弾いてもらうに決まってるんですけど、おそらくレコーディング時はみずから打ち込んだコンピュータ・プログラムの音だったに違いないのです。

80年代安全地帯を知っている当時のリスナーなら、この程度の装飾音がないとガマンできなくなるというか、何か物足りない感じを受けただろうと思います。実際、わたくしは当時、80年代安全地帯のあのゴージャスな布陣でなかったにもかかわらず、最初は不自然さをあまり感じませんでした。徐々に、従来に比べてかなり肉をそぎ落とした骨太なアルバムだったと気がついていくのですが、そういう仕掛けがわたくしにとってショックアブソーバー的に機能していたものと思われます。

曲はロックとしてもっともシンプルな八分の刻みで進められていきます。安全地帯十八番の、裏箔に入れた「ブシュウー!」というギターとドラムの音がアクセントとなり、どこにも迷うところなくただただ前に進んでゆきます。なんというか、迷うところがなさすぎて、拍子抜けな気がするほどスッキリストレートなロックです。今後の安全地帯が、どんなバンドとして進んでゆくのか、世に宣言したのではないかと私には思えます。おれたちはこういう曲をやっていくよ!こういうバンドなんだよ!いままでの安全地帯は何かおかしかったんだよ!……書いていて悲しくなってきました(笑)。もちろん、過去と決別すると安全地帯が宣言したわけではないですから、わたくしの被害妄想なんですけども、この曲のあまりの清々しさが、そう言っているように思えてしまうのです。一回、半年とか静養して人生をよく見つめ直したほうがいいかもしれません、わたくし(笑)。

間奏もギターソロなく、ほぼイントロを繰り返す形になっています。イントロと違うところは、次にAメロが来ずに、いきなりサビに突入するところでしょう。なんと違和感のない!これは軽く裏切られて心地いいです。そしてサビを繰り返し、後奏もまたイントロのほぼ繰り返しとなっています。しかししかし、安全地帯のパターンとして「Tender Youth〜Tender Youth〜」という声が遠くなっていくようなフェイドアウトでなく、「ジャッジャーン!」とキメで一気に終える形になっています。おおーこれはわたしがフェードアウト嫌いなのを差し引いたとしても格好いい!そうそうそうこういうのでいいんだよ、なんて当時はぜんぜん思えませんでしたし、いまだってそんな偉そうなこと言うべきでないんです(言いたいけど!)。「一気に来たねえ〜」とは思わず、この潔い終わり方の爽やかさが終わり方の演出によるものだとも気づかず、ただ浸っていたのでした。

さてこの曲、「I Love Youからはじめよう」がバンド崩壊をくいとめようとする松井さんからメンバーへのラブソングだったという壮大な仮説(ほぼホラ話)をでっち上げたわたくしとしては、再び始動したバンドへの応援歌だと解釈したいところです。

いつか追いかけた夢はもちろんミュージシャンとして成功する夢で、それは叶ってしまった後に一度壊れ、またまぶしい光をもってメンバーを立ち上がらせたわけです。まだはじまったばかりなんだ!と、すでにデビューから八年を経過しているバンドでしたが、結果としてデビューしてから令和三年現在で40年近く続いてますので、ほんとに当時ははじまったばかりだったといってもいいでしょう。でも、当時はバンドというものがそんなに長く続くものだとは誰も思っていませんでしたから、松井さんエスパーか!と思わざるを得ません。

まだまだやれるよな?この五人なら、きっとできるよな?そう胸に問いかけた激しさは、バンド再開とその後の活動により、もうとめられないほどの勢いがあったと実証されました。だって「この道は何処へ」だけ作るはずだったのが、アルバムつくってシングルカット出してツアーまでいってますもんね。サポートメンバーを使わず、どこまでも五人の意思を純粋に反映した活動には、これまでとは違う勢い、従来の、大勢の人間の思惑にどこか引きずられてゆくような不快感を排した、そんな爽快で身軽な五人のエネルギーがあふれていたのでしょう。

しかし松井さんは「Tender Youth」と玉置さんに叫ばせます。プレスリーの「Love Me Tender」なら「やさしく」って訳すでしょうけど、「やさしい若者」じゃ意味が通りませんよね。ここは「こわれやすい」とか「傷つきやすい」とか、そういう意味だと考えるべきでしょう。こわれそうな、傷つきやすい若者たち!そう、松井さんは、安全地帯の結束がどれほど固くとも、一回壊れた過程を誰よりも近くで見ていたのですから、この再集結も盤石のものだとはきっと思えなかったのです。なにかあればこわれてしまうものなんだ……!その脆さゆえの尊さといったら!抱きしめる腕、つたえあう声、これらは、松井さんがメンバーたちに「もっとほしい」と願ったものなのです!

あー、やっぱりわたくし、なんだか自分がおかしいんじゃないのかと思えてきました(笑)。ふつうに若者への応援歌だ、この曲を聴くと元気をもらえるんですよねーとか言っておけばいいじゃないですか、でもできないんですから、困ったものです。真相を知る人からのツッコミ一発で終わる妄想を垂れ流し続けてはや五年目、そろそろエスカレートも限界まで来たのかもしれません。

安全地帯7〜夢の都 [ 安全地帯 ]

価格:1,533円
(2021/4/17 16:48時点)
感想(0件)


Listen on Apple Music
【このカテゴリーの最新記事】

2021年01月17日

きみは眠る


安全地帯VII 夢の都』一曲目、「きみは眠る」です。

不穏なダラブッカの響きから始まるこの曲は、これまた不穏なシンセにのせて玉置さんが「最後までニュースが嘘をつく……」などと世界の破滅の中きみを愛する的なことをささやき、政治的ニオイを感じさせる強烈なラブソングになっています。

重いリズムのドラムとベース、「ギャリリッリ!ギャリ!」と強烈な刻みを入れつつ「ウィーオオー!」とハーモニクスを効かせるフックだらけのギター、なんだこりゃ、シリアスな気合入りすぎ!安全地帯どうしちゃったの!と思わず心配になります。

ズドン!ズドドン!と、リバーブ処理された田中さんのドラムが重く響き、一気にサビに突入します。「ここにはもう誰もいない」と叫ぶ玉置さん、合いの手を入れるようにシンセが入り、四拍目の裏にギターが「ギャーン!」とピンポイントでアクセントを入れます。な!なんだ!この異常な格好良さ!そして「乾いた胸のなか〜」とちょっとメロウな歌メロの裏で響き渡るアルペジオ、メロウなまましばらく行くかと思いきや突如四拍めの裏で例の「ギャイーン!」武沢トーンの「シャリーン!」が響き、玉置さんが「亡命者(たびびと)」と吐き捨て、急にサビは終わります。うーむ!もう一番が終わってしまった。なんという急展開!その急展開のなんという格好良さ!ここでもう、このアルバムにはノックアウトされること確定です。従来の安全地帯にあった、じっくり歌を効かせる的な良さでなく、バンドサウンドとしてのスリリングな良さに、完全に打ちのめされます。「微笑みに乾杯」までとは何かが違う、と誰もが理解する見事な一曲目です。ただ、かつて「きゃーたまきさーん」と黄色い声を上げていたリスナーたちは完全に置いてけぼりになるか、頑張ってこの格好良さに目覚めなくてはならないわけですから、リスナーたちに試練を突き付けた曲でもあるでしょう。

曲はもういちどこの格好良い展開を繰り返し、間奏に入ります。不穏なシンセのほかは、「乱反射」で聴かせたような遠くから響いてくるギターが鳴るばかりです。そして、サビの二連発!ただ二連発するのではなく、間に「ダーンダーン、ダッダダーダン!」と悶絶もののキメを入れてきます。ここの歪んだギターが痺れる格好良さで、わたくしここだけ何度もリピートして聴いていた時期がございます(笑)。いやマジで、ここだけのためにこの曲をバンドでコピーしたいくらいですが、もちろん同志がいるわけもなく、ひとりさみしくDAWを相手に悦に入るくらいしかできませんけども。悲しいことに、そして不思議なことに、こういうのが好きなロッカーは安全地帯好きじゃないんですよ。その両方を兼ね備える人というのは、サッカーと囲碁の両方が好きな人よりも稀だと思わなくてはなりません。サッカー観戦でセットプレーの妙を楽しむくらいサッカーに精通しつつ、「おお!このカカリがいまになって生きてきたか、痺れるぜ……!」とか新聞の棋譜を見て言っている人なみに珍しいわけです。

曲はダラブッカの響きに乗せて不穏なシンセが流れ、「ドオーン……ドオーンドオーン……」と一分近くも余韻を楽しませます。いや、普通に考えたらなげえよ!(笑)、でも、スリリングな急展開で攪拌されまくった脳を、次の「情熱」「Lonely Far」に向けて整える時間だと思うべきでしょう。この曲は臨済宗の修行のようなもので、完全に無になったアタマを現世の感覚に少しずつ戻す禅問答のような、いわば整理体操のようなものが必要なのです。

歌詞も、禅修行のように非常に無常感にあふれています。「ここにはもう誰もいない」じゃあお前は何でいるんだよ、「これからもう誰でもない」えー何それ、誰かではあるんじゃないの?「どこから来たのかも忘れた」「どこまで行くのかも知らずに」って、自分がどうなっているのかまったく気にかける余裕もないってこと?と、少し考えだすと寝込んでしまうような大惨事が起こったことを示唆しています。それこそ、核ミサイルの爆発からギリギリ助かったけども、死の灰やら汚染物からの放射線やらなんて気にしている暇もなく逃げるしかない(亡命者、漂流者になるしかない)、くらいのギリギリな状況なのでしょう。最後まで嘘をついたニュースは、「みなさん今日も国際情勢には何事もございませんので国内の美味しいラーメン屋さん開店のお知らせをお送りします」くらいのタイミングでドカーンといった、電話はあたりまえにすぐ不通になって、あたりは地上から噴き上げられたチリで真っ暗(とぎれない夜)、グラスなんかもちろんすべて壊れている……ああおそろしい、少年のころの恐怖をちょっと思いだしましたよ(笑)。

その一方で、錆びたラジオが古い曲なんて流していますから、案外なんともないのかもしれません(笑)。核爆発があると基本電化製品は使えなくなるはずですから、たとえカセットテープでも再生できないでしょう。なんだ、じゃあこれはただの恋愛ソングか?怯えて損した、などと、ムダな解釈がグルグル回るように作られている歌詞です。きっと、大惨事ソングと恋愛ソングの、どちらでもあり、どちらでもないのでしょう。どちらかでなくてはならないなんて縛りはないんですから。こういう、大惨事やその中での恋愛、あるいは大惨事を思わせる恋愛の悲愴さ、そういったものをイメージさせることで十分な、抽象芸術のような作品なのでしょう。

「どこまで行くのかも知らずにきみは眠り続ければいい……」

これは、たとえばなにかから避難するときに、それでも愛するものを傷つけないまま守りたいという、切実な気持ちです。『ライフ イズ ビューティフル』で息子に嘘をつきとおした父親のように愛するものを守りたいものだなあ、というヒロイズムをチクチクと刺激してくれるのです。これは、ほんとうに愛するものをもたないとわからない、いや、「もつ」わけではないんですけど、なんていうのかな、「いる」だとちょっと違うんですよね感覚的に。ともかく、そういう気持ちが自分の中に少しもなかったくせにあるような気がしていただけの少年〜青年時代には、とうてい理解できなかった気持ちが、30年のときを経て理解できたような気がします。松井さんだって当時は30そこそこだったはずなんですけどね。

そんなわけでこの曲は、時を経て何度も楽しめるヘヴィーな曲だといえるでしょう!10年後にはどんなふうに聴こえるのか、いまから楽しみです。

安全地帯7〜夢の都 [ 安全地帯 ]

価格:1,533円
(2021/4/17 16:48時点)
感想(0件)


Listen on Apple Music

2021年01月16日

『安全地帯VII 夢の都』


『安全地帯VII 夢の都』、安全地帯七枚目のオリジナルアルバムです。1990年7月下旬、北海道でもかなり熱い季節でした。それなのに冠雪をたたえた大雪山をバックに、青空のジャケット……いえ、当時はとても珍しい、箱仕様でした、青い箱がズラッと、レコード屋さんやレンタルCD屋さんに並びました。

ここでちょっと補足を入れておきますと、大雪山は標高2000m超の、北海道で一番高い旭岳を擁する大山系で、夏でもスキーができます。ですから夏に冠雪があるのもそんなに不自然でないといえばないんですけど、この写真のように麓からみてわかるくらい雪が残っていたかは、旭川によく出入りしていたわたくしにも、ちょっと記憶がありません。まあ、ふつうに春以降の写真だと思います。

レコード屋さんでは、とうとう安全地帯が復活した!という扱いでした。そのわりにセールスは、Wikipediaによれば26万枚程度、40万枚以上を売り上げた前作やベストよりも振るわない結果になってしまいました。それでも平成初期の基準でみると大ヒットですけども。

ちなみに、平成末期〜令和初期の現在と昭和末期〜平成初期のレコード・CDの総売り上げ(業界全体)はそんなに変わらないようです。平成中期が異常だっただけで、いまぐらいが普通なのかもしれません。もし現在、26万枚を売り上げるアルバムが登場したらすごいじゃないですか。オリコンのホームページによると、2020年に26万枚ですと、すとぷりStrawberry Prince推定累積売上数:266,132、Official髭男dism推定累積売上数:255,028 Traveler、の二枚に相当するようです。わたしからすると、すみません、よく知らないですけどって感じですけど(笑)、わたくしより世情に詳しい人ならけっこうなヒットだったとわかるでしょう。ちなみに、彼らのアルバムは秋に出てまだ半年くらいしか経ってないですから、まだもう少し売れると思います。

さて平成初期に戻りまして、1990年、バブル最高潮期とされた当時、街は元気でした。地下鉄駅とバスターミナルが一体となった駅舎はひっきりなしに道行く人を吸い込み、逆に頻繁に帰ってきた人たちを大量に吐き出し、その行き交う人々で溢れかえっていました。用もないのに幅をきかせるためだけにつるんで歩く不良少年たち、買い物に訪れる近隣住民たち、外食のためにオシャレしてきた家族たち、いろんな人々がいろいろな人生模様を見せながら、街を行き交っていました。わたしは、地下鉄駅とJR(当時はもう国鉄じゃなかったんです)駅の間をウロウロし、掘り出し物を求め楽器屋、レコード屋、本屋をハシゴする日々でした。元気ですね。

そんなとき、安全地帯が復活した!前年の、もしかしたら当年初期だったかもしれませんが、北海道新聞夕刊にユニバーシアードのテーマ曲をつくるために安全地帯が再集結した、という記事が大きく載りました。その記事には一曲(当時は曲名が決まっていなかったんですが、「この道は何処へ」でした)のことしか載っておらず、まさかアルバムやシングルまで出してくれるなんて思っていなかったのです。そうなってくれたらいいなあ、くらいで。ですが、安全地帯はそのままアルバムのレコーディングに取り掛かってくれました。「行かないで」とかですっかり超ブルーになっていたわたくしの、当時のよろこび具合といったら、ご想像いただけるでしょうか。

最初に田中に電話したら「ほんと?やろうよ!」、そしてみんなと一緒になったらアルバムも作ろうってことになったんだよね、とアルバム発売後の雑誌でインタビューに答えていた玉置さんの言葉は、よろこびにあふれていました。

『幸せになるために生まれてきたんだから』によると、かならず五人全員が一緒にスタジオ入りしてレコーディングを行った、外部ミュージシャンを入れずに極力五人だけで「バンドっぽく」音を作った、等々、いかにこのアルバムがそれ以前の安全地帯のそれと異なって画期的であったかがわかります。なんと玉置さんの盟友Bananaすらいないのです。ほとんど五人のメンバーと松井さんだけで作られた世界だといっていいでしょう。ストリングスのアレンジに星さんが入ってますけど、プロデュースは大きく「安全地帯」、共同プロデュースに星さん金子さんの名前が小さく載っています。エグゼクティブ・プロデューサーとして多賀さんが少し大きく記されていますが、この人は現場に顔を出したかどうかもあやしい程度でしょう。

なにより、「玉置浩二 Vocals & A.Guitar」と記されたのが、なんだかわたくしには嬉しかったです。わたしの覚えている限り、玉置さんのギターがクレジットされたのはこれが初めてなのです。

そんな五人だけのアルバム『夢の都』、いきなり「誰が叩いたんだよ」と思わせるダラブッカの音色とともに始まります。

1.「きみは眠る:ダラブッカで始まる不穏な曲です。ハードでありながらポップ、ポップでありながら強烈なメッセージ性、これは「遠くへ」からつづく世紀末ソングの系譜上にあります。
2.「情熱:のちにシングルカットされた爽快なロックです。「どーだい」「I Love Youからはじめよう」の路線を継承した曲といっていいでしょう。
3.「Lonely Far:「みんなSNSを楽しみすぎて〜」等、時代に合わせて歌い替えられます。世界では大変なことが起こっているのに僕たちは無力だという、「Shade Mind」を受け継ぐ曲といっていいでしょう。エレキギターがバリッバリのハードな曲です。
4.「Seaside Go Go:チャックベリーかよ!と思わせる、これもエレキギターバリッバリの勢いで駆け抜けていくロックンロールソングです。
5.「ともだち:うって変わってバラードです。従来の安全地帯ファンはようやく一息つけます。恋人とのラブソングでないのがニクイですね。
6.「あの夏を追いかけて:これはなんというか……すごくいいメロディーなんですが、ド直球すぎて形容しにくい曲です。しいていえば「情熱」と同じく爽快なロック、ですかね。
7.「…もしも:やっと恋人とのラブソングらしき暗いバラードです(笑)。さすが安全地帯!と唸らされるんですが、従来の暗いバラードにあったコマーシャル性が低めで、言及されることの稀な、隠れた名曲でしょう。
8.「Big Starの悲劇:あまりにかつての安全地帯らしい緻密さ繊細さが感じられず、一瞬狂ったのかと思いました(笑)。しかし異常にノリがよく、こんな曲もやるんだ……と驚かされるニュー・ロックンロールです。
9.「プラトニック>DANCE:これも「大丈夫かよ!」と思わず心配になった異次元ソングです。どのあたりに感動するのかわかりませんでしたが、何度も聴いているとこれがフォーマットになって、この曲の楽しさがわかってゆきます。
10.「この道は何処へ:きたきたきたー、これぞ安全地帯!と誰もが喜んだと思われる、壮麗なバラードです。これぞ安全地帯!なのに、出逢いとか熱愛とか抱擁とか不倫とか横恋慕とか、そういう要素がまるでありません(笑)。もうそういうのはいいや、だったんでしょうね。ユニバーシアードのテーマソング、安全地帯復活のきっかけとなった曲です。
11.「夢の都:ゆめーゆめーゆめーと、松井さん歌詞サボったんじゃないの?と最初は思いましたが、この繰り返しに必然性があったんだ……と気づかされる、せつない望郷ソングです。

全11曲!安全地帯のアルバムはたいてい10曲ですから、なんだか新しい時代が始まったという気が少しだけしたものです。まあ、『Remember to Remenber』も11曲ですし、『安全地帯V』なんて36曲ですから、べつに10曲と決まったわけでもなかったんですけど、すこし特別感があったものです。

かつでの安全地帯がまとっていたイメージである夜の街でなく、危ないアフェアーでもなく、右曲がりのダンディーでもありません(笑)。なぜこのようなアルバムになったか?『安全地帯VI 月に濡れたふたり』から十数万単位で売り上げを落とした、それは失ったリスナーの数でもあるんですが、このアルバムで安全地帯は何を成そうとしていたのか、次回から一曲ずつご紹介していく中で、そういったことをゆっくり考えていきたいと思います。

安全地帯7〜夢の都 [ 安全地帯 ]

価格:1,533円
(2021/4/17 16:48時点)
感想(0件)


Listen on Apple Music

2021年01月11日

微笑みに乾杯


I Love Youからはじめよう―安全地帯BEST』十二曲目、「微笑みに乾杯」です。

活動休止前ラストシングルであり、アルバム『安全地帯VI 月に濡れたふたり』後の新曲でもあるため、ベストアルバム(とベスト的なもの)以外に収録がない曲です。

MIASSツアーのDVDには、楽屋で玉置さんがホニャホニャ英語的な弾き語りをして、Bananaがそれに声を重ねるシーンが収録されています。このようにMIASSツアーの最中に生まれ、ツアーの合間を縫って寝られ、ツアー終了後まもなくレコーディングされたのでしょう。慌ただしく送り出されたこの曲は、あやうく安全地帯ラストシングルになるかもしれない重責を担う運命を背負っていました。まあ、慌ただしくって言ったって、当時の安全地帯の曲はどれだってハードスケジュールの中で慌ただしくリリースされていたんですけども。

その危うくラストシングルになりかけたこの曲、たとえラストシングルだったとしても、それにふさわしい終局感をまとった名バラードになっています。

シャンシャシャンシャシャンシャシャンシャ……となにやら高音の鍵盤で始まったリズムにストリングスが重ねられ、そしてズシーンとしたベース、カツカツというリムを中心としたドラム……これは「Too Late Too Late」で聴くことのできたパターンですが、それに重ねられたホニャホニャとしたシンセで、序盤は曲の大きな部分が占められています。

ギターはかなり控えめ……もちろん、当ブログがこれまで散々に主張してきましたように、安全地帯は出しゃばりなことをせず、ときには出番のまるでないことすらあるくらい、曲の完成度優先でアレンジをし、演奏をするわけですから、ギターがどれだけ控えめであろうとけっして不自然なことではありません。しかし……

わたくしには、これが安全地帯の崩壊を示していたように思われて仕方ありません。もちろん、Bメロで、サビで、そして間奏で、ギタリストのお二人は完璧な仕事をなさいます。完璧に過不足ありません。しかし、それだけなのです……!完全崩壊したバンドなのに一念発起して『アビー・ロード』をレコーディングしたビートルズのように渾身のプレーをなさったのはよくわかります。武沢トーンが「シャーン!」と響き渡り、矢萩さんのギュイーン!も咆哮を上げています。しかしもう、安全地帯IIやIIIあるいはIVのように、ギターこそが主役であってギターがなければ成り立たないサウンドではありません。これはギタリストのお二人の問題ではなく、安全地帯というバンドの生産体制の問題です。玉置さんがそうしたのには違いありませんが、玉置さんだってしたくてそうしたわけでもありません。すべては、世の中が求めたことに全力で応えようとした結果です。応え続けた結果、安全地帯が安全地帯であり続けることが限界に達したというべきでしょう。

渋い出番しかないギタリストとは裏腹に、リズム隊のおふたりは玉置さんの歌を支え続けます。そりゃ、この二人が出番なかったら曲終わりますから当然ですが、このお二人はフル出場で玉置さんを孤軍奮闘にさせまいと踏みこたえるのです。まるで真田幸村を最後まで支える三好清海入道と伊三入道のようです。どうもわたしは豊臣派びいきでいけません、かと思えば幕末は徳川・松平びいきですから、要するに負けるほうが好きなんですね。

あの青い空は、北海道でかつて見た、夢を追った日々を覆う天の青、東京に来てからの恋人との日々、仲間との日々、それらはときにやさしく、ときに悲しい思い出を残した。それももう、間もなく終わるという予感に包まれていま、最後かもしれないレコーディングに臨もうとしている……思い出よりも輝いていたい、だから涙を拭いてきみに微笑むんだ……松井さん、絶対わざとでしょ!(笑)……こんな歌詞……過剰な思わせぶりにわたしがこの後感情移入で二年ばかり苦しんだのはぜんぜんいいとしても、これじゃメンバーがかわいそうじゃないですか……もちろん玉置さんが歌っているんですけども、これは玉置さんだけでなく、メンバー全員の物語なのです。全員が、涙を拭いて明日のために、そしてそれぞれの「きみ」のために微笑むのです。まるで乾杯をするように、全員で、一斉にです。

まださよならが聞こえない「僕」は、もちろん玉置さんであり、メンバーであり、そして松井さん自身なのでしょう。安全地帯はここでいったんお休みになりますが、玉置さんソロをはじめ、松井さんはこの後もメンバーたちとの交流を続けてゆきます。だからさよならなんて変なんですけど、それでも、バンドとしてのさよならはあってしかるべきだったのに、それがなかった……さびしい……いやもちろん、バンドとしてのさよならなんてしてたら、マジでここで終わったかもしれないからあぶないところだったんですけど(笑)、チームの一員であった松井さんからすれば、何ともいえない寂しさを感じさせられる状況だったことでしょう。でも、松井さんは「夢をなくしてはいないから」「歩いてゆこう」と、前を向きます。そして寂しい過去に「もうふりむかない」と決別し、メンバーたちとの未来を信じ、立ち去るのです。

「このまま ずっと ずっと」

これまで伴走してくれた人たちとは、ここでお別れだよ。でもこのままずっと進むと、分かれたはずの道たちも一つ二つと交わることもある、だからふりかえらず、歩いていこう、次にきみが出会う人は、きっと楽しい人だ、きっとやさしい人だ、きっときみの人生を豊かにしてくれる人だ、だからおそれず進むんだ……

これがわたしが、いままでにいちばんつらいお別れ(恋愛以外で)をしなくてはならなかったときに、自然と口に出たことばです。いささか感傷的に過ぎて多分にキザでした。そしてべつにわたしに似合ってもいません(笑)。ですが、この気持ちはいまでもすこしも変わっていないのです。この「微笑みに乾杯」がわたしに、しっかりとお別れの仕方を教えてくれたからかもしれません。

別れの予感とバンド終焉の雰囲気満点の中、フルメンバー+シンセで怒涛の間奏があり、その後、ストリングスと軽いドラムだけをバックに「もう涙ふいて歩いてゆこう」と玉置さんが絶叫します。そしてすぐにドドドド……とフルメンバーに戻って、サビを一回だけ繰り返し、そしてフェイドアウトしていきます。よりによってこの曲でフェイドアウト……いや、いいんですけど。また始まったのを、わたしは知っているから。

単に終わりそうな恋愛の曲、として聴くこともできるこの曲(そして、そう聴くほうがずっと自然な曲)は、バンドの崩壊をリアルタイムで演出した曲だ、とわたくしは信じているわけですが、たぶんわたしのアタマがおかしいだけなんでしょう。いいじゃないですか、世の中ひとりくらいこんな聴き方をして勝手に泣いていても。

I Love You からはじめよう/安全地帯BEST [ 安全地帯 ]

価格:2,950円
(2021/4/17 16:58時点)
感想(0件)


Listen on Apple Music

2021年01月10日

熱視線


I Love Youからはじめよう―安全地帯BEST』三曲目、「熱視線」です。

1985年1月リリース、前作「恋の予感」からわずか三か月、アルバム『安全地帯III 抱きしめたい』からは二ヶ月弱です。アルバムからのシングルカットではなく、新曲をリリースしてきました。まあー、アルバムにはシングルカットすべき曲はないように思いますし(いい曲だらけですが、いかんせん渋すぎる)、作戦的には新機軸に移行するのを表明するタイミングとしては絶好だったといえます。

そこから五か月後の6月、次作「悲しみにさよなら」が大ヒット、11月にも「碧い瞳のエリス」もヒット、ヒットしたからというわけではもちろんないんでしょうけど、これにより安全地帯の作風が「熱視線」の基軸からはズレていったように思われます。そうしてこの「熱視線」は、アルバムとアルバムの狭間に取り残されたヒット曲、という位置づけになってしまい、このベストアルバムまで収録されることがなかったわけです。

わたしたちは後からの歴史を見ているわけですからよくわかりますが、この「熱視線」は『安全地帯III』にも『安全地帯IV』にも収録できないように思えます。しいていえば『安全地帯IV』の「こしゃくなTEL」と入れ替えるか、その前後に入れるか……うん、イマイチですね。『安全地帯IV』の完成度を下げるだけのように思われます。これは曲の良しあしとは別のことです。

さて、曲ですが、『安全地帯III』が纏っていた暗さ、シリアスさを打ち破るかのように、明るく、軽快な曲調です。

シンセドラムらしき音色を混ぜたドラムでバシバシとリズムを取り、クリーン気味クランチトーンのギターが細かく短音リフをしばし繰り返したのち一気に曲調を変え、ズムズムと響くベースとドラムに乗せたオーバードライブギターのハモりで、ビープ音のようにわたしたちの胸に警報を与えます。これは危険!前フリなく一気に恋人との距離がゼロになったような切迫感を演出します。

玉置さんのボーカルも最初からトップギアっぽく切迫しています。じわじわと攻めるぜ〜感は微塵もありません。「これっきりなんて決して言わせない……」「これ」って何ですかいきなり!これは曲の前にひと仕事あったわけですが、あまりに速い展開、というかもう展開した後なので、一瞬追いつくのが遅れます。

歌詞が「これっきり」「じれったい」「戻っては」「からっ風」と、すべて促音を同じ位置に用いた言葉を精密にあて、スピード感を演出します。やたら細かい譜割で口数の多い情報量で押し切ろうとするかのような90年代以降のJ-POPとは完全に一線を画すこの職人技!痺れますね〜。

ドコドコッ!……ドコドコッ!……と隙間を大きく空けたベースに、これまた隙間を空け気味のギターが軽快なリズムで舞い、玉置さんのボーカルを浮き立たせます。田中さんのドラムも音色は派手ですが、つとめて無機質に曲を進めてゆく意思を示しているように思われます。

Bメロ、一気にスピードを上げます。いや実際には上がってないんですけど(笑)、リズムを変えてスピードが上がったように聴こえさせるわけです。スッタカスッタカタカタカ!と駆け抜けるドラム、「ボッボッボッボーボッボッ!」と音数を増やすベース、「ピコピコピコピコ〜」と高速下降フレーズを、おそらく矢萩さん武沢さんのお二人が交互に、左右から繰り出すギター、急転直下!と思いきや、一気に上昇フレーズを入れ、まるでスキーのジャンプ台を滑ったかのような感覚に人を誘います。いや、滑ったことないですけど(笑)。そして「ジャッ!ジャッ!ジャッ!」と強烈なキメでK点越えの大ジャンプをかまし、曲はサビになだれ込みます。アレンジとしてはイントロ後半と同じ、スピード感あるスッタカタッタータッタ!スッタカタッタータッタ!という、ダッシュアンドストップをひたすら繰り返す、ハードなトレーニングのような展開になっていてリスナーに息もつかせません。Jリーグ開幕時に誰もが味わった、常に状況が動いていてうっかり目を離すともう点が決まっている、という、CM混じりの野球ナイター中継に慣れ切った観戦様式をぶち壊された感覚に似ています。とにかく油断できないのです。昭和末期、こんなスピード感ある曲はほかに聴いた記憶がありません。次こう来るだろうなーという予定調和によって生まれていたスキを許さない、情け容赦ない展開です。

曲はまたイントロの後半と同じ短い間奏をはさみ、二番に入ります。わたしたちはもう何度も聴いて覚えていますが、初聴ならもう一番なんて覚えていません(笑)。それくらいガクンガクンと頭を揺さぶられています。

サビを終え、曲は間奏に入ります。「キーン……キュワーン〜オオオ〜〜〜〜」というギターの音、アームを使った感じですのでもちろん矢萩さんでしょう、人をやけに不安にさせる効果抜群です。そのままギターソロになだれ込むかと思いきや、何か鍵盤らしき音と「アーア」というコーラスの掛け合い、なんじゃいこれは、身を投げた燃える恋を表現しているのか?熱い視線がつらぬかれた揺れる瞳なのか?とかれなかった乱れ髪なのか?もう心は千々に乱れるばかりです。

曲はBメロ、サビ二回と進み、フェイドアウトしていきます。ライブバージョンですとイントロのフレーズに戻り、カッコよくキメをいれて終わるんですが、わたしはフェイドアウトを良しとしない人間ですので、もちろんライブバージョンが好きですけども、これは好きずきでしょう。次の「悲しみにさよなら」への序章としてはフェイドアウトがいいような気もしますが、当然この曲リリース時には「悲しにさよなら」はまだなかったわけでして、レコード針が中央でグルグル回っておしまいです。

さて、歌詞ですが……なんという物語の感じられない歌詞!歌の初めから最後まで数分の時間があったのに、事態は一ミリも進行していません、あ、いや、松井さんの歌詞はそういうのばっかりなんですが、この曲は特にその傾向が強いように思います。三回ある「踊ろう……」という玉置さんの魅惑的なビブラートは、きっとすべて同じ「踊ろう」であって、三回踊ったわけじゃないんですね。ワンシーンを三通りの言い方で表現していて、すべて同じ瞬間なのです。

下手な嘘をついて戻っては来ないそぶりで背を向けた彼女をひきとめ、じれったいほどの接吻をし、すべてを失くしてもよいという覚悟で消えそうなひとときの夢をみつつ、踊り、抱きしめ、これっきりだなんて言わせない勢いを保ち、これ以上ない熱い視線で彼女の瞳を射る……とまあ、こんなお話、実時間にすると20秒くらいですかね、それを三通りで表現し四分くらいの歌にしてみました、という趣向なわけです。まるで濃縮還元ジュースみたいな話です。原液は濃いんですね、とにかく。濃すぎて飲めません、飲んだらむせます。まあ、そりゃ、他人の色恋感情なんて、モロに共感しちゃったらむせますよ。それだけこの歌はリアルなんです。

そしてこのイントロ、AメロBメロ、サビ、間奏、これだけコロコロ曲調が変わられると、当時のリスナーはかなり忙しい感覚に襲われたというのは上に書いた通りなんですが、新しい時代のロックを示されたようにさえ思われる、まさに画期的なアレンジでした。詞の濃厚さ、展開の速さ複雑さ、それをなんなくさらっと行う演奏の巧さ、そして、これほど奇抜な曲なのに「恋の予感」と入れ違いにオリコン上位に食い込むキャッチーさ、メロディーのよさ……これはまさに傑作です。傑作すぎて特徴が際立ちすぎ、どのアルバムにも入れられなかった、というのが正当な評価でしょう。なんで「熱視線」どのアルバムにも入ってないの?とは思わなかったですね、当時のわたしも。その孤高の立ち位置が自然すぎました。それにライブアルバムで聴けましたから、そんなに寂しくなかったですよ、当時も。安全地帯がこの曲を大切にしているのは伝わってきましたから。

I Love You からはじめよう/安全地帯BEST [ 安全地帯 ]

価格:2,950円
(2021/4/17 16:58時点)
感想(0件)


Listen on Apple Music

2021年01月09日

『I Love Youからはじめよう―安全地帯BEST』

I Love You からはじめよう/安全地帯BEST [ 安全地帯 ]

価格:2,950円
(2021/4/17 16:58時点)
感想(0件)



安全地帯の初ベストアルバム『I Love Youからはじめよう―安全地帯BEST』です。

1988年春に『安全地帯VI 月に濡れたふたり』、同年夏にシングル「微笑みに乾杯」をリリースした安全地帯は活動の休止を宣言し、秋に香港で最後の公演を行い、そして冬12月にこのベストアルバムをリリースします。

Wikipediaによりますと、セールスは36.2万枚、これは昭和末期〜平成初期としてはもちろん大ヒットですけども、これまでのアルバムに比べて特に売れたって程の数字ではありません。安全地帯のファンは、これに収録されているような曲の音源はすでに持っていたから、急いで買うようなものでもなかった、というのが当時のわたくしの印象ですけども、それにしてもすこし寂しさを感じさせる数字ではあります。その一方でレンタルは好調だったようで、どこのレンタルCD店でもズラリと並べられていました。これじゃないの?売り上げがイマイチ上がらなかった原因は?と思わなくもないんですけど、べつに責めるようなことでもないでしょう。

内容は、オリコンチャート上位を賑わせた曲ばかりです。とりわけ「熱視線」「微笑みに乾杯」はアルバム未収録でしたから、アルバムだけのコレクターだった人にはそこそこ強力な魅力があったといえます。

さて、当時のファンとしての感想ですが……

安全地帯がデビューして五年、オリジナルアルバムは6枚(『オリジナルサウンド・トラック プルシアンブルーの肖像』を入れると7枚)、シングルは19枚、けっこうな音源数があり、活動休止宣言で一区切りついてましたし、「微笑みに乾杯」が見事な「何かが終わった」感を醸し出していましたから、ベストアルバムが出ることは自然な状況には思えました。しかし、わたくしには、これが安全地帯最後のアルバムになってしまうのではないかという謎の危機感があり、辛く感じられたのです。

「ワインレッドの心」から始まるのも、とても自然に感じられた一方で、それ以前の活動がなかったこと扱いにされているような謎の被害妄想(笑)にも憑りつかれましたし、アルバムのタイトルナンバーであった「月に濡れたふたり」が収録されていないのも不思議に思われました。これは何かウラがある……!たぶんないんですけども(笑)、そういうへんな勘繰りも働いてしまって、なんというかこう、素直にこれがBESTだ!と思えない依怙地さを発揮していました。たんに安全地帯が終わってしまいそうで、さみしかったんだと思います。

あとから知りましたが、メンバーもこれで終わってしまうのか復活があるのか、ハッキリはわかっていなかったようで、のちに玉置さんが田中さんに電話をかけて「やろうよ」と再始動を呼び掛けたら、田中さんが喜んだというエピソードを雑誌で読んだ記憶があります。ですから、この当時安全地帯がこの先再始動するという保証はなく、終わってしまいそうな雰囲気はたしかにあったのです。

なお、そういうとき最初に玉置さんから電話がかかってくるのはたいてい田中さんだそうです。愛想がいいとか頼みを断らないとかいろんな理由があるんでしょうけど、きっと電話かけやすいんでしょうね。

さて、一曲ずつの解説ですが……すでに言及した曲ばかりですので、これまでのアルバム紹介とはやり方を変えまして、曲ごとに過去の記事へのリンクを貼ることにしたいと思います。

1.ワインレッドの心:安全地帯出世作にして最大のヒット曲です
2.恋の予感:陽水さん作詞三部作のラストです。
3.熱視線:ノリのよい曲なんですが妙に複雑でノリきれない安全地帯らしいロック曲です。
4.悲しみにさよなら:安全地帯人気を不動のものにした第二大ヒット曲です。
5.碧い瞳のエリス:重厚壮麗なポップバラードです。
6.プルシアンブルーの肖像:映画テーマ曲で哀愁ただようハードロック曲です。
7.夏の終りのハーモニー:陽水さんとのコラボレーション・共演曲です。
8.Friend:ひたすら切ない悲恋バラードです。
9.好きさ:ド直球の告白ロック曲です。
10.じれったい:これまた複雑で(当時の若者には)ノリきれないロック曲です。
11.I Love Youからはじめよう:メンバーの再結束を願う悲愴な王道ハードロック曲です。
12.微笑みに乾杯:タイトルとは裏腹にもうお別れ間近を予感させる悲しいラブソングです。

全12曲、どれもヒット曲ですから、きっと安全地帯が初めての人や現代の若い人が聴いても楽しめると思います。

ただ……わたくしにはちょっと辛い思い出のあるアルバムでもあります。安全地帯が終わってしまう危機感のあったときに、置き土産のようにリリースされたアルバムですから。そして何より、わたくしにとってほとんど初のベストアルバムだったのです。いや、もちろんビートルズとかサイモン&ガーファンクルとかカーペンターズとか、そういうレジェンド的な人たちのベストアルバムは聴いてましたけど、自分がリアルタイムで聴いていたアーティストが活動を休止し、ビートルズとかのいる「あちら側」になってしまうさみしさを味わった初の体験だったからです。二年後に裏切られますけど(笑)、それは当時のわたしにはわからなかったのです。ですから、強烈なさみしさの記憶とともに、このアルバムはラックに収められていたのです。

次回以降、これがアルバム初収録となった「熱視線」「微笑みに乾杯」を解説してゆきたいと思います。

I Love You からはじめよう/安全地帯BEST [ 安全地帯 ]

価格:2,950円
(2021/4/17 16:58時点)
感想(0件)


2021年01月01日

Too Late Too Late


安全地帯VI 月に濡れたふたり』十曲目、つまりラストの曲、「Too Late Too Late」です。

この曲はシングル「I Love Youからはじめよう」カップリングであり、テクニクス(松下)のオーディオCMでレイ・チャールズが歌った曲でもあります。

レイ・チャールズに歌ってもらうんだから、バブルって金ありますよねー、と、ちょっと感心します。あのころ、オーディオ(CDコンポ)はバカ売れで、どの家電量販店でもエース級の扱いでデーン!と並んでいましたから、松下もここが攻めどころと判断したのでしょう。あれすげえー場所とるんですけど、喜んで置いてましたね、当時は。レベッカのCMによるソニーの「リバティ」、明菜ちゃんのCMによるパイオニアの「プライベート」、ケンウッドの「ロキシー」など目白押しだったのです。オーディオコーナーでは、中高生が買ってもらえるような数万円のものから20万円クラスの重厚なやつまで、誇らしげにグライコがピコピコ上下してました。そんなわけで、歌ったのはレイ・チャールズでしたが、安全地帯もそのブームをちょっと後押しした、そんな時代だったのです。

さて曲は加工したドラムで「ガコッ!シュコーッ!ガコッ!シュコーッ!」と始まります。ボーカルが入り、エレピが続きベースがうなりを上げます。こういうときの六土さん、音大きいですし、ハリのあるちょっとゲイン強めの音をお使いになることが多いように思うのですが、ふしぎとうるさくなくて、曲を盛り上げるんですよね。わたくしならもっと腰の弱い、オケに溶けそうな音を使うと思うんですが、それは弱気でダメなほうを選んでしまっているということを教えていただいているかのように思えます。

アレンジはいたってシンプル、Aメロはほぼこのまま進み、サビでようやくギターがシャリーンと鳴り始めます。よくよく聴けばこのギターもオケに溶けることをねらった弱気な音でなく、しっかりとハリのある鋭い音です。わたくしいままで何曲も「この曲はギターがまるで聴こえませんでした」と書いてきたのですが、それらの曲にも、こんな音が鳴っていました……そう、これが安全地帯のクリーントーンだったのです……!『月に濡れたふたり』の時代で、デジタルレコーディング技術が高まるまで音像として明瞭さが足りなくてわからなかったのか、ブログを書いてきてわたしの耳がちょっと鍛えられたのかはわかりませんが、最近気づきました。これか、これが安全地帯のクリーントーンなのか、と。ただたんに、このアルバムだけセッティングが若干違うとか強く弾いているとかミックスのとき多めに混ぜたとかとかのほうがありそうな話ではあるんですが。

歌はサビのメロディーを繰り返すシンセで奏でられた間奏を経て二番に入り、AメロBメロストリングスがオブリに入る以外はとくに変化なく続きます。そして歌詞カード上では、次のサビで終わりなのですが……

サビの後、思わぬベースソロが入ります。なぜベース……ベースソロが、こんなにもここに似つかわしいなんて!これを聴かされると、どんなギターソロもここには入れてはいけないことがわかります。どんなに泣きのフレーズでも、ギターやピアノではダメなのです。ここはこのベースソロでなくてはなりません。六土さん!泣けます!30年以上前に初めて聴いて、ここで泣けるようになったのはここ10年ですけども!ここまで曲を強くトーンでリードしてきたベース、それは最年長として安全地帯のサウンドを支えてきた六土さんのベースだからこそ出せる説得力なのでしょう。

そして歌詞カードになかったサビが、玉置さんの悲痛なボーカルで歌われます。遠すぎてもう逢えない……さよならもまだとどかない……それはひとえに遅すぎたからなのです。何が遅すぎたのでしょうか?

間奏の主旋律を奏でる音色は「星空におちた涙」のそれですから、九ちゃんに何かを伝えることがもうできない、と歌っているのでしょうか?とてもありそうです。

それともふつうに、失ってしまった恋人とよりを戻したり自分の非を認めてお互い気分スッキリになったりすることでしょうか?これもありそうではあります。

わたくし、前者の九ちゃん説を採りたいのですが、それですと二番の歌詞内容とちょっと辻褄が合わないなあ、なんて思うわけです。だって九ちゃんと「あの夏の日」を過ごしたなんてありそうにないですもん。恋人とテレビを見ていたら123便のニュースをみてしまったあの夏の日、とかならなんとか辻褄が合いますけども。それで「想いだせる涙」を心に返す……よくわからないですね(笑)。ムリヤリ解釈するなら、123便のニュースで流した涙を思いだせるのなら、いままたリアルに思いだそう、九ちゃんのことをずっとずっと忘れないでいよう、それが「心に返す」ということだ、くらいでしょうか。

恋人系の解釈ですと、「あの夏の日」は二人の修羅場で、泣いてしまうくらいスーパーブルーだったわけなんですが、その涙を思いだし、戒めか何かとして心にリアルに刻んでいこう……という、あまりToo Lateでない、取り返しのつかないことが起こったとは思えないような、何か前向きさを感じる歌詞になってしまうように思います。

もちろんどちらの解釈もアリといえばありだし、ナシといえばなしでしょう。しょせんはわたくしの妄想にすぎません。松井さんと安全地帯によって、ぜんぜん違う世界が描かれている可能性のほうが高めでしょう。

ですから、最近いただいたコメントで、あまり歌詞に深入りせず、雰囲気をとらえるという原点に少しだけ戻りたいと思います。

「いまも耳に消えない声」……声って、思いだせますか。わたしは、思いだせます。松井さんはしばしば「匂い」で思いださせるというレトリックをお使いになりますし、ちょうど昨日一昨日(2020年12月30-31日)にTVで流れた新人歌手による「ドルチェ&ガッバーナ」の匂いが恋人との日々を思いださせるという歌が示すように、匂いのほうが過ぎ去った日々を思い出させる効果は一般に高いように思われるのです。

しかし、それでもわたしは声なんです。匂いは、もう一度かがなければ思いだせません。これはもちろん人によるんでしょう。わたくし香水なんてアラミスとかしかしらないおじさんですけども、きつい香水でもすぐに忘れて、その匂いをかがない限り思いだすことができません。たぶん嗅覚の記憶が弱いんだと思うんですが……みなさんはいかがでしょうか?香水の香りは個人の体臭生活臭と混ざってますから人それぞれになるんですが、それで、たとえ同じ香水でも別の人がつけてたらわからなくなってしまうくらい、わたくし鼻が鈍いんだと思います。

声は、もちろんいままでに私の横で歌ってくれたシンガーたちの声は克明に覚えています。恋人の声ならなおさら覚えています。そして、幼少のころの、わたしを呼ぶ父母や兄弟たちの声でさえも……すべて脳内再生できます。級友とかの声は見事に忘れていますが(笑)、大事な人たちの声は、心にこびりついて離れません。

わたくし定期的に姿を消しますから(笑)、別れた恋人と時を経て再開したなんてドラマは人生においてほぼ経験がございません。でもぜんぜん縁もゆかりもない都会の人ごみの中でうっかりすれ違ったと、確信したことはあります。あの声だ!……と。声がしたほうを眺めてみても姿はありませんでしたが、なくてよかったのです。だって自分の耳が確かかどうかがわかるだけのために、わざわざ藪をつつくことはないでしょう。でも少しだけ思ったのです。もう一度、あの声で歌ってほしかったな、呼んでほしかったなと。少しだけですよ。きっと歌ってもくれないし、呼んでもくれないに決まってますけど。だから電話番号を書いた手帳をまだ捨てていないはずだと知っていても、探さないし、かけないのです。いまかけたら、三年ぶりのLINEどころじゃないですよ!20年超ぶりの電話、しかも実家のイエ電ですよ!もう悪い予感しかしません(笑)。だって一人暮らしの番号なんていま生きてるわけないし、当時は携帯なんてなかったし。

アホな妄想を垂れ流して、曲の解説が終わってませんでした。曲はシンセによる主旋律をもう一度だけ繰り返し……ベースにご注目を……トーン……ドーン……ひときわ強くドゥオーン!と鳴って、「ドン・ドーン……」と終ります。そう、この曲は、あくまでワタクシ的にはですが、ベースが主役なのです。ストリングスが美しいですのでそちらに耳が行きがちかもしれませんが、この曲を支配しているのはベースです。こんなにドゥオーン!とやられたらここで終わるしかありません(笑)。

恋人にももちろん匂いはありましたし、かげば(かぎません)思いだせることもあるんでしょうけど、わたしは声で記憶の底にあるすべてを思いだします。匂いではなく声、ストリングスではなくベースなのです(なんとムリヤリな!)。多くの人は匂い派で、それにもかかわらず「消えない声」はよほどの思い入れがあったから声を覚えている、という解釈のほうが想いが強そうでいいかもしれません。ああ、また自分の奇怪な一面を晒しただけだった(笑)。

さて、『安全地帯VI 月に濡れたふたり』の解説はここまでになります。年内で行けるかなーと思ってましたが、年を越しちゃいました。2016−2017ころはもっとペースが早かったのでそれに比べればぜんぜん遅筆ではありますが、またコツコツと書いてまいります。次は『安全地帯BEST I Love Youからはじめよう』になります。ベストアルバムですから、これまでに記事を書いていない曲「熱視線」「微笑に乾杯」だけにはなりますが……何卒よろしくご愛顧ください!

安全地帯6〜月に濡れたふたり [ 安全地帯 ]

価格:1,284円
(2021/4/17 17:01時点)
感想(1件)


Listen on Apple Music

2020年12月31日

月に濡れたふたり


安全地帯VI 月に濡れたふたり』九曲目、「月に濡れたふたり」です。

どんな曲でも作れる玉置さんと、どんな曲でも演奏できそうな安全地帯によるボサ・ノバふうポップスですね。レコード会社側もすでに彼らにはほとんど全幅の信頼を置いていたのでしょう。こんな風変わりな曲でも売れないということは安全地帯にはすでにない、と踏んでいなければ、こんな大胆な変化は起こせません。ましてや先行シングルにするなど……アルバムリリース一か月前の1988年3月にこのシングルは発売され、JTのメンソールたばこMIASSのコマーシャルソングになったのでした。

そういやそんなタバコがありましたね、サムタイムMIASS!MIASSツアーのMIASSとしか思ってなかったけど、よくよく考えたらMIASSは商品名なわけです。いわゆるネーミングライツってやつですね。ツアートラックにでかでかとMIASSと書いてましたもんね。同じように、安全地帯IVのツアーが大王製紙エリスツアーとかになっていてもおかしくなかったわけですが、どうもそうではなかったようです。

当時は……わたくし中学生でしたもので自分で買っていたというわけではないのですが、タバコは学校の職員室でモウモウと煙を上げており(全国のどんなオフィスでも同様でした)、いろいろなタバコが机の上に置いてあったものです。インテリのタバコといわれた「セブンスター」とかブルーカラーのタバコといわれた「ハイライト」とかは今でもありますが、珍しいところでは「ジタン」とか両切り「ゴロワーズ」といった百花繚乱なパッケージが机上を彩っていたものです。MIASSなんておつかいの自販機では見たことありましたけども、そうしたオフィスでは見たことがありませんでした。当時飛ぶ鳥を落とす勢いの安全地帯とタイアップしたにもかかわらず、あまり知名度は上がらなかったのでしょう、1995年に販売が終了されています。そのころは自分でタバコ買える年齢になってましたけど、90年代にはもう見た記憶がありません。なお、YouTUBEではいまでも玉置さんの出演なさったこのCMをみることができますし、「MIASS JT video clip」というやや長尺のビデオクリップもみることができます。

さて、この曲、風の切るようなストリングスで始まり、なにやらラテンアメリカを思わせる打楽器と低く抑えたドラムでリズムが続きます。エレピで印象的なリフが始まり、ベースが思い思い音でズーン、ズーンと何かけだるいムードを演出します。そこにシャリーンと潜むアコギの音がまた、バリバリ弾く曲じゃないんだぜといわんばかりに、静かな存在感を発揮しています。

歌に入り、ボーカルとギターの掛け合いで曲は進みます。私事になりますが、わたくしこのような歌とギターの掛け合いは、この曲で初めて意識したと思います。安全地帯の曲には過去に同様のものがもっといくらでもあるはずなんですが、なにしろ耳と心がけがよろしくないもので、気づかなかったんです。

また、このような曲調をボサノバ調ということも知りませんでした。オトナになってから、音楽知ってるふりしたくていろいろなものに手を出し始めて、はじめて「イパネマの娘」とかを聴いて、あ!これ!「月に濡れたふたり」じゃん!そうかー、あれはボサノバ調だったのか……などと衝撃を受けたわけです。そこでわたくし、心がけが悪いうえに、なにしろ音楽知ってるふりしたいものですから、この曲のことを語るときにはボサノバ調を80年代のメジャーシーンにやってるんだから、安全地帯ってのはすごかったよネ……などと訳知りふうに話す誘惑にかられ!その機会を!虎視眈々と!伺っているわけです!リアルの世界でこんな態度とる人がいたら、それはわたしか、もしくはわたくしと同じような誘惑にかられてしまったちょっと気の毒な人ですので、どうかひらにお許しください(笑)。

さて曲は、泣きのストリングスを加え継ぎ目なく短いBメロに進みます。軽いキメを入れてすぐサビ、前奏に用いられたエレピによるリフに、高音のストリングスを加えた形になります。

曲は淡々と二番に進みます。ストリングスをオブリに入れたくらいで、とくに変化はありません。

そして間奏も、矢萩さんと思しき甘いトーンのギターソロが入ります。これが身も心も焦がす……感じじゃなく、情熱的なんだけどどこか冷めたような……「ワインレッドの心」に冷や水を浴びせたような感じといえばいいでしょうか、なにか悲し気なソロなんです。強く抱きしめても届かない思いと、今以上それ以上愛されるんだよ君は、とでは、そりゃ曲想が変わりますし間奏もそれに応じて変えて当たり前ですが、ほんとうに見事です!わたしだとどんな曲想だろうと引き出しはこれっきゃないさと同じようなソロを弾くに決まってますから、尊敬するほかありません。街が破壊される恐怖を演出するヘビメタとラブソングのバラードとではさすがのわたしでも頭をひねっていくらかは変えますけども(笑)、こんな、なんというか、どれもラブソングじゃん!というバンドの曲でこれほどの違いを表現できるとは……冷静に考えて脱帽ものです。アマチュアは案外そういうことが全然できないのにギター弾ける顔していがちなものです(ズバリ、アチキです)。

さて歌詞なのですが……簡単にいうと、恋愛に暗雲が立ち込めてきた様子です。

言えない胸のささやきは、「あれ?なんか変だぞ。君もしかして……冷めた?」なんですよね、無理やりことばに直すと。もちろんそれを口に出すと、一気に破局が来るのは目に見えてますので、なんとかやり過ごすべきか?でも、自分の心にちょっとだけウソをつくことなんですよ、それは。だってラブラブでいたいじゃないですか!ラブラブでなくなってきたのに、それに気づいているのに、このまま乗り切ろうと少しは思ってしまうわけです。古今東西、とことん、弱いですねー惚れた側だと(鼻ホジホジ)。

彼女は遠い瞳をして、ためいきをつきます。これは訊けん!いや危険!自分は惚れた側、あるいはまだ惚れている度の高い側ですし、ウソをつくのはイヤなので、傷つくこと、すべてをなくすことさえ覚悟で思いを届けようと、いろいろな手に打って出ます。もちろん言葉にすることもあるでしょうし、行動、態度に表すこともあるでしょう。

彼女はどのような態度をとったのか?実はそれはわからないんです。涙よりもはやく、つまり泣いちゃうような修羅場の前までしか書かれていないのです。まさに一瞬、刹那、ジャケットや歌詞カードの裏に描かれた三日月は夕方から晩の早いうちにしか空にいませんので、その月の空にあるうちに、冷や水を浴びせられて「濡れた」格好になってしまっているふたりの、月が沈むまでくらいの短いストーリー、一場面が描かれた歌なのです。

こうなると、以前のラブラブな二人にはもう戻れません。わたくし自分一人の人生しか生きていませんから、他人様のことはもちろんわからないんですが、おもに観察等にもとづく経験則でいうと、ここから逆転する可能性は、まあー打率一割もないでしょう。なつかしい昨日に戻る事すらムリです。月に濡れてしまったふたりは、もう濡れていなかったふたりには戻らないのです……ああ、なぜかわたくし、寝込みたくなってきました(笑)。

たしかないまは、いくらほしくても、きっと手に入らないんです。彼女はそこにいるのに……彼女が欲しいんじゃない、いやほしいのかもしれませんけど(笑)、本当にほしいのは昨日までの何にも心配のなかった、月に濡れていなかったふたりという状態なのです。

曲は最終盤に移調し、「夢のように消えていかないで……」「wow....wow...」と切なさ爆発のボーカルが、悲しいまでに淡々と続けられる演奏に乗せて発せられ、そして演奏もフェードアウトしていきます。

君との日々は、夢のようだったよ、ありがとう、とわたしは(何も恋愛のそれとは限らず)別れのときに、何度か言ったことがあります。もちろん向こうは「いま言う?」って顔をしていることもありますし、ニコニコと照れた顔をしていることもありますし、こちらが拍子抜けするくらい無表情なこともあります。それでいいんです。どんなに月に濡らされたって、その前までは濡れていなかったし、濡れる前の日々がたしかにあったんですから。そもそも濡れる前に別れることもありますし、別れた後で濡れてたことに気づいたりもしますけども。

さて、大晦日に更新するのは何年ぶりでしょう。2016年だと思うのですが『安全地帯IV』の何かを書いていたときにご挨拶を書いた記憶がございます。せっかくですんで、ご挨拶させていただきます。

2020年もありがとうございました!なかなか進まないブログですし、ときに一年とか休むこともありますが、今年のようにとつぜん復活するようなこともありますし、いつかは完全制覇を目指しコツコツと書いていきたいと思いますので、どうぞ2021年(とそれ以降)もよろしくお願い申し上げます。

トバ

安全地帯6〜月に濡れたふたり [ 安全地帯 ]

価格:1,284円
(2021/4/17 17:01時点)
感想(1件)


Listen on Apple Music

2020年12月13日

Shade Mind


安全地帯VI 月に濡れたふたり』八曲目、「Shade Mind」です。

Shade Mind、影をつくる心ってことですかね。Shade Treeで日影をつくる木ですので、当然のことながら木は太陽の光をガンガン受けています。自らは様々な心労にさらされつつ、何かのために影をつくってそこに安らぎの場を与える、防波堤のような心……ああ、なんだか身につまされてきました(笑)。ああ、わたくしが誰かのためにそういう自己犠牲をしているからってわけじゃないですよ、知らず知らずに誰かにそういう役割を負わせてしまっているんじゃないかと、つい心配になるのです。オトナって大変ですねえ。

この曲、なんだかわからない「パン、ポンポ、ポンポン」の繰り返しに、ラジオチューニング中のノイズにも似た音が重なることで始まります。ラジオをチューニングするという動作自体がそもそも現代の若者にはなんのこっちゃでしょう。むかしはラジオの周波数を手回しのダイヤルで行っていると、何かの電波を受信したりそれが消えたりする過程でこんな感じの音が出ていたのです。それもこの『月に濡れたふたり』が出た1988年にはほとんど自動サーチとチャンネル記憶ボタンでラジオを聴くことができるようになっていましたから、この話が分かる人はそれだけでわたしの仲間です(笑)。それがだんだん周波数が合う感じになってきて、とても安全地帯らしいギターの音が絡み(この感じ、のちの『夢の都』に通じるものがあります)、オーケストラヒットの音が「ジャン!……ジャジャジャン!」といったん遠くなりまたピタッと放送バンドに合う感じが演出されているように思われます。そして一瞬のブレイクの後、ドカッと曲が始まるのですがそれがまたラジオを一生懸命合わせようとしていてピタッと合わせられずいたところに入って「ああよかった、間に合った!」という気分にさせられます。書いていて気づきましたが、これは戦争中にアンネ・フランクたちがノルマンディー上陸以降の連合国軍の動向を、外に音が漏れないように息をひそめてラジオで聴いていた感覚かもしれません。なにせ「アフリカのニュースが……」ですから。

曲はブラスでリードを取り、ためにためた感じのドラムに、安全地帯史上有数のボッキボキで異常にかっこいいベース、ギターがひたすらアオリのフレーズ、「ギャイン!」という開放弦を混ぜた生々しいフレーズを新品の弦を惜しみなく弾いたような音で聴かせてくれる、ただただカッコいい安全地帯のサウンドを聴かせてくれます。さすが安全地帯渋くてシビレるぜ!「悲しきコヨーテ」もそうでしたが、ワチャワチャしてなんだかわかんないのにこれでちゃんとアンサンブルできているのがすごいです。「I LOVE YOUからはじめよう」のような、ギターはディストーションを効かせたパワーコード、ベースはルート弾きで八分、ドラムはズシズシとエイトビート、のような王道ハードロックでないのにここまでヘヴィな感じを出せる、新しいタイプのロックといってもいいでしょう。当時、このものすごさにどれだけの人が気づいたことか……わたくし無念ながら気づいておりませんでした。

さてまだ歌に入っておりませんでした。かつての「合言葉」のように、六土さんのベースが二小節を使ってボキボキとフレーズを弾き、それに田中さんのドラムがためてスネアをズシン!ズシン!と一小節に二発ずつ炸裂させてリズムを作ります。武沢さんがシャリーン!シャリリン!と惜しげもなく武沢トーンでカッティングを響かせ、そこに矢萩さんが細かい譜割の短音フレーズでアオリを入れます。

ほとんど同じ調子でブラスをアオリに加え途切れなくBメロ、そしてこれまた途切れなくサビへと突入します。安全地帯の曲がこういうABサビと分けて話すのがナンセンスに近い、一体的なつくりをしているということは当ブログでもすでに何度か言及されていますけども、この曲はまさにその究極形の様相を呈しています。

そして、ブラスがサビのボーカルラインをなぞり、その後派手なトリルで矢萩さんによるものと思われるソロが入ります。トリルの後、おそらくギタリスト二人でハモることを想定したツインのフレーズになります。音がよく似ているので、レコーディングでは矢萩さんが二本とも(もしくは武沢さんが二本とも)入れたんじゃないかな?とは思いますけども、実際のところはわかりません。こういうハードでスピードのあるツインソロ、安全地帯では時々しか聴かれないんですけども、聴くとなぜか強烈に安全地帯だ!と思わされます。

そして曲はサビを繰り返し、ダラブッカ的な打楽器のスピーディーな連打とともに周波数が外れてゆくかのように終わります。ここで言及するのはおかしいですが、サビにはコーラスにAMAZONSさんが参加していますね。こんなに豪華な編成、編曲なのに、なんだかあっというまに終わってしまう印象のある曲です。

歌詞は、「アフリカのニュース」という、いまとなってはもう懐かしい話題で、若い人にはなんだかわからないんじゃないかと思わせる国際情勢を歌っています。1988年は、ソマリア内戦が始まった年だったのです……。1980年代後半、イラン・イラク戦争がようやく終わりそうだったものの、フィリピンでは革命が起こり、そしてこのソマリア内戦が始まり……と、まだまだ世界中戦争だらけという雰囲気でした。日本はソ連の核ミサイルが飛んでくるんじゃないかと少しヒヤヒヤしつつも、基本的には平和と繁栄を享受していましたから、世界には子どもが戦争と飢えで死んでいるところがあるんだ!という啓発活動的な報道は思い出したようにしばしば流されていたものです。

ぼくは、ぼくたちは、「みてるだけ」です。ユニセフとかに定期的に寄付をしてステッカーを受け取っている人ももちろんいましたけれども、わたくし含む多くの人は気にしないで生活していました。ニュース映像や新聞記事を見ると「気の毒だねー」とは思うんですけども、だからといって何をするわけでもなく、そのときだけ「みてるだけ」でした。だって、ピンとこないじゃないですか。現代になって、これだけ世界の情報が瞬時にかつリアルに伝わる時代になっても「ぼく」は、そりゃかわいそうだとは思うけど……と他人事なのです。はたして、世界の裏側の人に手を差し伸べる倫理的義務はあるのか?そもそも人類の共感・共苦能力はそこまで拡大することができるのか?きみは生き延びることができるか?(ガンダム)松井さんは、そんな人の悲しい限界を、玉置さんの声に乗せて日本の安全地帯リスナーに示したのです。「ウチら」の範囲しか見えない人を、わたしたちは今と自分しか見えない者だとしばしば軽蔑します。しかし、それとて五十歩百歩なのかもしれないのです……。

「遠くへ」から始まり、この「Shade Mind」を経て、「きみは眠る」「1991年からの警告」へと続くこの政治的ラブソングとでもよぶべき系譜は、安全地帯の曲の中ではたしかに異彩を放っています。ですが、そのどれもが超絶いい曲というか、とても魅力ある曲で、「なにこれ!こんなの安全地帯に似合わない!」ととばし聴きすることを許さない力を持っています。

目の前にあるグラスの水、これはもがいて消えた子どもが欲しくて仕方なかったものかもしれません。天使と見まごうほどの愛らしい子どもの笑顔も、一緒にいる恋人の笑顔も、消えていきます。その深刻さに誰もが胸を痛めるからです。でも、何もできません。その無力感は、わたしたちがいつまでもそれに囚われていると普段の生活ができなくなってしまうほど強烈なものです。ですから、ふだんは積極的に、忘れていたのです。わざわざ顔を近づけて覗き込もうとせずに、わたしたちは残酷にやり過ごしていたのです。

その強烈な悲しみと、それに対してわたしたちが抱く感情、それらを防波堤のように受け止め、普段の生活に持ち込まないようにする残酷な決意こそが「Shade Mind」なのではないでしょうか。それは、強烈な日光から守って影をつくるShade Treeのように、わたしたちの日常生活を守っていた……でもそれは、影から一歩出れば容赦なく降り注ぐ悲しみを、ごくごく限られた範囲で防いでいるだけなのです。

ごくごく一部の人は、この影から出て、正面からこの悲しみを受け止めて進みます。わたしたちはその尊い姿をみて笑うことは、許されないことでしょう……いかんいかん、たまーにわたくしマジになったような気がして自分でも何を書いているのかよくわからなくなるんですけども、当ブログを以前からお読みくださっている方ならご存知でしょう。いまちょっとそんな感じになりかけました。でも何かいいこと書いているような気がしてましたので、これでスミマセンと言っちゃいけない気がします。ですから、お許しください!

安全地帯6〜月に濡れたふたり [ 安全地帯 ]

価格:1,284円
(2021/4/17 17:01時点)
感想(1件)


Listen on Apple Music

2020年12月04日

No Problem


安全地帯VI –月に濡れたふたり』七曲目、「No Problem」です。

ジャズのダンス曲、あ、いや、わたくしジャズあんまりわからないもので、こうとしか言えないんですけども、ジャズでダンスするってことがあるのであれば、80年代後半のギラギラ日本ではこんな感じの曲になるでしょう。どうもわたくしのようなハードボイルド馬鹿は、マーロウとかの時代にあこがれ、そのくせ雰囲気しかわからずジャズってこういうものだよなーという先入観をバリバリ持ったままそれを直さないのがハードボイルドだと思い込む癖がございまして(世間のハードボイルド好きを敵に回す発言)、バーボンとかブランデーとかを楽しみながら仕事の疲れを癒してくれるリズム&メロディーに耳を委ね、ジッポーで着けた煙草の煙が天井に上ってゆくのをぼんやりと眺める……ジャズとはそんな音楽だと信じ込むアホウです(しかも「枯葉」しか知らない)。

基本ベースでボボン!ボンボンボンボン!夜の快楽へと浮き立つ不穏な感情を表現するようなリズムを軽快に刻み、ドラムはときおりチャリン!チリン!という不思議なシンバル(シンセパッドかもわかりませんが)を交えながらハイペースで高鳴る脈動のようなハイハットを細かく刻みます。そして路地の向こうの灯りからソフト帽をかぶったマーロウが出てきそうなタイミングで何やら金管の低いメロディーが流れてきます。これは絶対葉巻の煙が先に見えていて、誰だ?と思ったところで「……お休みを言うのは少しの間死ぬことなのさ」とか言いながら出てくるに違いないやつです。

ですが、ここで出てきたのは色気たっぷりの玉置さんボーカルです。「言わんこっちゃない……」とこれまたキザなセリフで、ちっともマーロウに負けていません。マーロウは犯人を追いますが、玉置さんは女性を追っているところがずいぶん違いますけども(笑)。

この箇所、ぜんぶ「〜ない」で語感の調子を統一していますが、そこは松井さん、調子は同じなのにどんどん男女の緊張感を高める演出は忘れません。たったのいちパラグラフでベッドまでなだれ込んでいます。さっきまでブリック&モルタルの街角にいたのに!すごい手練れです。

第二パラグラフでは、ホンキートンクな感じのピアノ、ギターの「チャッ!チャッ!チャッチャー!」というアオリが入り、さらに気分を盛り上げます。呼応するかのように松井さんも「汗」「ここだけのこと」「噂」と色っぽいワードを次々に炸裂させ、ヤレヤレ……男と女はいつだってこうなのさ……そう、寝る場所を探してさまようものなんだ……とかなんとか、気づいたら周りがカップルだらけになっていて花火大会に自分だけ誘われなかったことを悟った夏休み明けの高校生のような態度をとらせに来ます(笑)。

曲はサビに入り、チンチンチンチン!と、なんていうんでしょう?中国のお祭りで鳴っていそうな小さいシンバルが抜き差しならない真っ最中感を演出し、ドラムもバスドラとスネアを入れ、80年代シンセ(笑)とホーンのアオリを入れ本格稼働!という雰囲気を盛り上げます。いや、いやらしい意味でなく、サビってそういうものですけど。歌詞は歌詞で「心配好き」と「楽観主義」という対立するような性向がひとりの人間のうちに同居している複雑さを見事に表現します。ここでの「Dancin' Boogie」は意味よくわかんないですけど(笑)、ともかくイ段の語尾ですべて色っぽくまとめてきます。

歌は二番に入りますが、アレンジのパターンは同じで、歌でひたすら盛り上げてきます。ぜんぜん言及していませんでしたが、玉置さんのボーカルが異常に色っぽいので成り立つ曲であることは言うまでもないレベルで明らかでしょう。もちろん松井さんもわかってて色っぽい言葉を吐かせているんですけども、それにしたって、ねえ、過去最高級に反則モノの色っぽさですよこれは。「心配好き」と「楽観主義」のような相反しつつ同居する性質の組み合わせをこれでもかと連発しつつ、不安定な男女の関係が不安定な心のバランスによってかろうじて成り立っていることをウリウリと見せつけてくるのです。「主義!」「的!」「好き!」「ブギ!(笑)」と連発する玉置さんの息遣いが、ああ、なんて……いやらしいんだ!(笑)。これはノックダウンされるご婦人が続出すること必至です。『安全地帯IV』や『安全地帯V』までの、物語で悶絶させてきたこのエロ歌ゴールデンコンビは、ここにきて完全に新しい境地に歩みだしたといえるでしょう。

腰が浮かれているのに身分など忘れたお嬢さん、はしたないのにさみしがりや、感傷的なのは「そういう時期」で片付けられ、のぼせているのに客観的に自分を見る目を捨てられず、健康的なのにそれはどうにかこうにか保っているもの……うん、これは狂ってますね、恋に(笑)。起伏・振幅の激しい感情をひとりの人間の中に閉じ込めている若い男女は、それをさらけ出すしかない局面にいつも出会いながら、恋を深めていきます。傍からみるととても危ういものですし、やめとけばいいのにと思わなくもないんですが、それでも逢いたくて、逢って、そして傷ついていくんです。うん、わかる……わかるぞ……!わたしも若いとき……すみません、わかりません、わたくし嘘をついておりました!(笑)。というか、ここまで極端な恋愛模様を直接経験することは大多数の人にはないことで、みんな何かしらそういう要素を多少なりとも含んではいたような気がする、という程度でしょうね。

「愛してる!カモンベイビー!」「愛して!もっともっとー!」と、歌詞カードにないセリフを叫ぶ玉置さんは、ほんとうに自由そうで、それでいて恋の鎖から逃れようともがく獣のような息苦しささえも演じます。このセリフ、たぶん玉置さんがどこかのタイミングで、その場のノリ的に入れたんでしょうね。松井さんのつくりあげた世界からさえもときおり逃げて、歌詞の世界を歌う歌手なのに歌手でない玉置浩二本人の叫びをあげているかのような、そんな錯覚さえおぼえてしまうのです。

MIASSツアーのDVDでは、ボディコンスーツに身を包んだダンサーさんが軽快なステップを踏みながら玉置さんと絡み、コーラスを入れます。これは本当に見事な映像で、この曲はこんなに魅力ある曲だったのか!とわたくし最初はクギ付けになってしまいました。この曲が過去の安全地帯のつくっていた物語とイメージが違うからと、跳ばしてしまうのはもったいないとわたくしに気づかせてくれた映像です。

安全地帯6〜月に濡れたふたり [ 安全地帯 ]

価格:1,284円
(2021/4/17 17:01時点)
感想(1件)


Listen on Apple Music