『安全地帯VII 夢の都』四曲目、「Seaside Go Go」です。
最近、「考察が深い」というコメントを立て続けにいただいたもので、すっかりその気になっているわたくし、この曲はどうしてくれようとか余計なことを考えております(笑)。
この曲はズバリ環境問題!海洋汚染です!海洋が汚染され海岸ももちろん汚染されてますから、湾岸戦争の影響でで油にまみれた海鳥の写真が世界に衝撃を与えた記憶も生々しくよみがえるように白い砂も黒く染まっています。誰も泳ぎになど行きません。当然、渚の恋も発生しません。それなのに太陽はぎらぎらと……どこでバカンスしろ、どこで恋をしろというんだ、あの思い出のSeasideはGoしてしまったんだ……あっ!解説が終わってしまった!(笑)やはり思慮深い真似をしようとしてもムリがあるようです。
さてこの曲、左右から歪んだギターのリフが聴こえてきます。前曲の「Lonely Far」と同じく、オールドのロックンロール風味です。余談ですが、ずっと昔のこと、バリバリのヘビメタ・ハードロック少年だったわたくし、とある軽音サークルによく考えず入ってみたらロックンロール風味のジャムを楽しむようなところでして、先輩たちはクラプトンの「CROSSROAD」みたいなことを延々とやっていました。これはまずいところに入ってしまったかもしれないと思いましたが、いちおう安全地帯のこういう曲、「Seaside Go Go」みたいな素地があったからこそ、その場で逃げ出さなかったといってもいいくらいです(笑)。
でもまあー、当たり前ですが、スリーコードを延々と繰り返すジャムと違って、この「Seaside Go Go」はもっと複雑でドラマチックです。まず左右からギターが掛け合いで重ねられていき、ピタッと止まってなにやら人の声が流れます。これ、たぶんですがテープ逆回転ですよね。「こんな感じでいいんじゃない?」「そうだねもう一回やってみようか」みたいなことだと思います。これは例のCROSSROADサークルでもよくあったことで、非常にスタジオっぽさ、ジャムっぽさを感じます。
ですが、サビというかなんというか、「赤い唇の〜」の箇所はジャムではほとんど出てきません。こんなふうに進行させられるジャムは、それこそ安全地帯レベルでないとできません。その日サークルに出てきた即興メンバーだと不可能といってもいいでしょう。何回か仕掛けてみるんですけど、まわりがスリーコードを繰り返すばかりで乗ってきません。こういうのは全員の気分がピタッと合わないと展開できないんですよ。IV→Vだけで満足してしまいます。もしこんな展開がジャムできたら、終わったときに「うおー!」とハイタッチするレベルで狂喜することでしょう。まあ、CROSSROADが途中でいとしのレイラに変わってまたCROSSROADに戻るくらい起こらないでことですけど(笑)。
ギターは思ったよりもギャンギャン弾かず、クランチ気味の、ほとんどクリーンじゃないかと思うようなトーンで、五度コードに小指で六度を混ぜてリズムを取るくらいのベーシックなロックンロール+裏拍刻み+アルファを二人で手分けしている、ったってビシッと合わせるには修練が要されますけど、堅実に彩を加えています。展開後、「赤い唇の〜」では、おそらく矢萩さんが歪みを入れて、「キョッ!ツキョー!キョッ!ツキョー!」と鋭いリズムを取ります。そうだー、クリーンと歪みってこういうふうにメリハリつけるもんだよなーと、まるで教科書のようなトーンコントロールにハッとさせられ、終始ギャンギャンの自分を戒めることになります。
そのぶんベースがブインブインと派手です。ボーカルが玉置さんでなかったらこんなベース弾けませんよ、ボーカル死ぬからベース押さえて!とディレクターに怒られるくらいブイブイいってます。六土さん、ノってますねー!サビというかBメロというか、「赤い唇の〜」の箇所なんてグリグリとこちらの背中を突き上げてきます。ベースによくあるスケールグルグル弾きですけど、この曲にこれほど似つかわしいベースもありません。
田中さんのドラムは……加工のすごく少ない、生々しい音です。スネアがきれいに揃いすぎるんで少なくともスネアだけは何か処理してるとは思うんですけど、田中さんならマイク一発だけでこの音を出しかねないので油断はなりません。ズッタツタ、パン!ズッタツタ、パン!……と、正確無比なドラミングでこの軽快な曲を支えます。
また、「恋が逃げてゆく〜」の直後に奏でられる、なんでしょうねこの音?管楽器かと思いますけど、クレジットに管楽器ないですんで、シンセか、ギターシンセでしょうね。『月に濡れたふたり』以前だったら、派手にホーンセクション入れているところですが、こういうところに新生安全地帯のこだわりがあふれていることがわかります。
そして玉置さんのシャウトで始まる間奏に官能のギターソロ!このシャリっとした音は武沢さんだと思うんですけど……ハッキリとはわかりません。短音弾きでなく複数弦を使った高速フレーズを主に、リズムとノリを最優先したような、見事なロックロールのソロ、というか、ロックンロール系の人こんなに細かく弾ける人いるのってくらいのテクです。うーむさすが安全地帯!
そして曲はどちらがサビともつかぬBメロAメロを繰り返し、「どうする〜」だけ繰り返して唐突にアウトロに突入し、すぐ終わります。オールディーズ風です。でも安全地帯がやると全然オールディーじゃありません。発売当時はなんじゃこの古臭い終わり方は!と思いましたが、それはわたくしがボンヤリ聴いていたからであって、シャリシャリっとした武沢トーンのフレーズに、芯を入れるように矢萩ソロ、ふたりがピッタリと息を合わせたフレーズを決め、玉置さんがシャウトしてズダーン!と終わるのです。これは、ビルヘイリーと彼のコメッツでもすぐにはできないんじゃないかと思われるテクニカルな、まさに新時代のロックンロールです。
さて歌詞ですが……冒頭で浅慮なことを書きちらかしてほとんど終わってしまったので(笑)、ちょっとだけ付け加えるような感じになります。環境問題の影響で、海はもちろん存在していても、恋を発生させたり育んだり燃え上がらせたりするような海・海岸はなくなってしまった、というのは最初に書いた通りなんですけども、このことは、それ以上のことを意味します。それは、わたしたちの生活スタイルそのものを変えさせられてしまう、変えざるを得なくなるという危機を意味するのです。夏といえば、バカンスといえば海でしょ!と思っているわたしたちはまだ幸せです。その時代を知っていて、すでに楽しんだことがあるのですから。でも、生まれてくる子どもたちは、未来の若者たちはそれを伝説としてしか知らないのです。
あ、今日は建国記念日ですね。建国記念日といえば黒いバスに大音量の軍歌です。いま来ました(笑)。こんな風物詩的なものが、「むかしは〜だったんだよー」と伝聞でしか知ることができなくなります。映画とかアニメとかマンガとかの世界です。そしてやがて、映画とかアニメとかマンガにも描かれなくなってゆくのです。黒バスは個人的にそうなってもわたくし別に困りませんけども。
赤い唇は紅を引いているのか引いていないのか、ともかく「あの娘」の肢体が光る波間に踊る光景は、もうこの世に存在しない……寂しいことじゃないですか……若い男女はいつの時代だって夏には海を求めるのです。現実世界でこのように若者の理解者のようなことを口走るオジサンは、腹の中ではゲヘヘヘ〜ざまーみやがれと、若いころの欲求不満をこじらせている可能性がなくもありませんので気をつけましょう。わたし?え?いやーそのーそうだそうだ、北海道が長かったもので、もともと「短いバカンス」だったんですよ!うん!(超早口で)
夏の海がない若者たちは、その前、春をどのように過ごすのか?梅雨のあいだ何を思うのか?秋には夏が去った寂しさがあるのか?そして葉が色づき訪れた冬をどのように耐えるのか?これは夏だけの問題でなく、年間全部を揺るがすライフスタイルの危機なわけです。それはもはや夏ではなく、春と秋の間にある何かとしかいいようがありません。扇風機浴びてアイス食ってああ極楽とだけ思う期間です。あの娘と泳ぎたい!とは夢にも思わずに……すみません、なぜかわたくし、お腹が痛くなってきました(笑)。
そんな北海道の若者たちが歌う夏の海を守りたい、守らなくちゃいけないという、軽快な曲調からは一見思いつかないような、超ヘビーな歌「Seaside Go Go」でした!
価格:1,533円 |
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ぜひライブアルバムもお楽しみくださいね!お好きな曲がたくさん入ってるやつがオススメです。きっと感激しますよ。
おお!演奏の巧さがわかるには!そうですね……わたしがやっぱ安全地帯巧いなーといちばん思うのは、ライブ音源なんです。
レコーディングはその気になれば同じ箇所だけ何千回でもやりなおしできますからヘタでもなんとかなるんですが、ライブだとなかなかそうもいきません。安全地帯はライブでぜんぜん乱れないのは当然で、さらにライブならではの魅力ある演奏をしてくれます。
ライブでイマイチなバンドはまだ未熟というか、そもそもライブ音源リリースを避ける傾向にあるでしょうから、ディスコグラフィーをパッとみてライブアルバムがそれなりにあるバンドだと、巧いバンドである可能性が高いといえます。
安全地帯の曲、演奏そんな簡単じゃないのは自分でコピーするとよくわかるんですが、なにより五人のアンサンブルをカチッと合わせるのがすごいです。それをライブでも完全再現するんで感動することがしばしばありますよ。
玉置さんは表現力があるので、松井さんの難しい歌詞でもちゃんと伝えることができていてすごいなって思います!!安全地帯は演奏が上手いってみんな言うけど、演奏の上手下手はどこを見たら分かるんでしょうか?
チャラい!(笑)たしかにチャラいです。なんでしょう、CROSSROADSサークルのせいでこういう曲調が何が高度なジャンルのように錯覚してましたが、実はそうでないですね。あの娘はルイジアナママで、誰があの娘を射止めるか街中のウワサってくらいの、かるーいノリですよね。ロックンロールの原点はチャラチャラなのかもわからないです。
歌詞はもちろん松井さんですからさすがーって感じますけど、いまの時代はそんな感じでないんでしょうか?スミマセン疎くて……30年も経つと歌詞の流行りというかスタイルもだいぶ違うんでしょうね。
今の時代と違って歌詞がプロっぼいですね(*˙˘˙*)❥❥