長期活動休止前のラストアルバム、安全地帯八枚目『安全地帯VIII 太陽』です。
「心をこめた歌がたくさんできました。」
当時(1991年12月)の帯に書かれていた言葉です。わたくし今回一字一句正確に転記するために、帯をしまっておいたCDケースの内側を空けようとして、当時のケースを少し壊してしまいました(泣)。当時ものですからこのままにしておきますけど、これでしばらく帯も取り出すことはないでしょう。この言葉は、当時レコード店に貼られていたポスター(ジャケットと同じ写真)にも書かれていました。
心をこめた歌……安全地帯の歌はもちろんすべて心がこもっていますので、よく考えれば当たり前のことを言っているにすぎないんですけども、そう書くからには普段にもまして心がこもっているのかもしれないと、期待感がドカッと上がりました。キティレコードのコピーライターのせいです(笑)。
この白黒写真……安全地帯のジャケットはモノトーンかそれに近いものが多かったですから、違和感はありませんでした。むしろ『夢の都』がドッキリの派手さだったのです。
さらに前作からかわって、サポートメンバーにBAnaNAが復活しています。「太陽」だけですけども。のちに玉置ソロでよくお名前を見かける藤井丈二さんも同じく「太陽」でパーカッションを担当しています。ストリングスは金子飛鳥グループ、現在ではマレー飛鳥というお名前で活動されているバイオリニストのグループです。
わたくし、当時何かの事情で、たぶんバンドでチケットノルマとかにつぎ込んじゃったとかそんな理由なんだと思うんですが、1991年内に聴くことができず、年明けに購入した記憶があります。ポスター自体はまだ暑い時期から貼っていたと思います。お!金残しておかないと!と思ったけどもなかなか出ないので待ちきれなかったのでしょう。おかげで、「1991年からの警告」を1992年に聴く羽目になりました。
世の中がバブル崩壊(1991年)で、何かが起こったらしいということはなんとなく察していましたが、だから何なの?という気分でもありました。今までだって不景気はあっただろうし、二〜三年でまた持ち直すでしょ、というお気楽さがまだあったように思います。街は相変わらず元気でしたから、肌でその恐怖を感じることは不可能でした。
16.4万枚(Wikipediaより)、これが安全地帯にとっていかに厳しい数字であるかは明らかです。なにしろ前作から10万枚近くも落としています。事務所を設立し、新体制で臨んだこの渾身のアルバムは、ついにセールス的な成功をおさめることはありませんでした。体制の変化によって安全地帯の音楽性が上がるとか下がるとか技量に変化があるとかは考えにくいですので、とにかく時期が悪かったというほかはないのですが、それは30年も経ったいまだからこそ言えることで、その渦中にいた安全地帯にとってはこれがどれほど深刻だったか、察して余りあるものがあります。
もちろん、発売前からそんなに売れないとわかるわけはないですから、このアルバムにおさめられた曲たちが一種暗いイメージをまといがちであるのは、バブル崩壊とかセールス不調とかとは関係ないはずです。ですが、あの頃の薄い記憶と、このアルバムの印象とが相まって、90年代ってモノトーンの時代だったなー、と、わたくしにズシーンとした何やら重いイメージを抱かせるだけの、とんでもない影響力をもったアルバムだったのです。だって安全地帯このあと10年も活動しなかったんだもん!
では、一曲ずつの短いご紹介を。
1.「1991年からの警告」:タイトルからもわかるバリバリの世紀末ソングです。
2.「太陽」:タイトルナンバー、もの凄い迫力の、民族音楽、ワールドミュージック的な曲です。
3.「花咲く丘」:静かで、やさしさが悲しく感じられるバラードです。
4.「いつも君のそばに」:シングル曲です。キャッチーですが、派手でないです。
5.「俺はどこか狂っているのかもしれない」:切れ味するどいロックですが、当時吐き捨てるような歌い方に驚きました。安全地帯新機軸でしょう。
6.「SEK'K'EN=GO」:はやくも新機軸第二弾とでもいうべき切れ味ロック曲で、立て続けにきました。当時前曲とこれは馴染むのに時間がかかりました。
7.「エネルギー」:これも切れ味ロック第三段ですが、最初に気に入ったのはこの曲でした。この曲がなければ、前二曲を理解できた自信がありません(笑)。
8.「ジョンがくれたGUITAR」:アコギロックです。この格好良さ、望郷的な歌詞の寂しさに圧倒されます。
9.「朝の陽ざしに君がいて」:問答無用の安全地帯ラブソングバラードです。初期のうちからいい曲!と感動できる曲だと思います。
10.「黄昏はまだ遠く」:安全地帯が抱いた夢、この後の崩壊、そのすべてを表現するような壮大ロックバラードで、うっかり聴くと泣けてきます。「太陽」と並ぶ迫力があります。
前述したとおり、このアルバムは10年間強も安全地帯最新作であり続けました。それどころか、最終作だったんじゃないか、このまま安全地帯はなくなるんじゃないかと思わせる雰囲気バリバリの、悲愴なアルバムでした。わたしはこのアルバムが最高傑作と確信するに至るまで、このアルバムを10年も聴き続けたのです。そうして『安全地帯V』ころの派手さが、かえって悲しく感じられる段階に至ったのです。つらいつらい、忍耐と成長の10年間でした。
ともあれ、春頃にこのアルバムを扱うとコメントで申し上げておりましたので、間に合ってよかったとホッとしております(笑)。次回以降、一曲ずつの解説を始めてまいります。どうぞよろしくお願いします。
価格:1,271円 |
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