| 母は質素な生活だった。旅行は無論、外食もしない。ただ一つ、狭い庭に花を育てる事が唯一の楽しみだった。 そんな母が亡くなった時、母のただ一人の友人がシンビジウムの花を供えてくれた。 「おばちゃん、おばちゃん」と呼びかけ、よく遊んでもらったのを覚えている。我が家にテレビが無かった時期には、よくテレビを見せてもらい、お菓子をよばれたのを憶えている。 そんな事で頂いた鉢を大切に育てたつもりだが、4年後に一度花を付けた後は一向に蕾も付けぬ。株が増えたので二鉢に分けてベランダのあちこちに位置を替え頑張った。その内の一鉢に昨年末にやっと蕾が付いた。がなかなか花とならぬ。 駄目かも…と思いながらも手当ては怠らなかった。 それが昨日、待望の開花、10年振りに3輪咲いたのだ。今朝起きてみると6輪、全て咲くと10輪となる。 母もおばちゃんも、へたくそがやっと咲かせたと、笑っているだろう。
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