| 総持寺の桜も峠を越えたころ、境内の隅に黄色い花が目についた。 写真に撮り、納経所に向かう。コロナの影響か客は無し、二人居られた係の人は暇そう。これ幸いと写真を示しながら訊ねた。「イペイと言います」と親切に教えてくれた。「有難う御座います、イッペイやるかですな」とお礼を言うと、しら〜とした顔となった。真言宗は禁酒なのだ、両親が世話になったお寺も真言宗で法事で皆が酒を飲んでもお坊さんは決して口にしなかった。申し訳ない気持ちで再度黄色い花を眺めると、さわやかな桜と違って暑苦しい感じが。 改めてネットで検索する。空が見えぬほど黄色で覆われた写真が沢山見られる。ちと早すぎたかと、五日後に再度見に行くが前回とあまり変わらぬ。 枝には若葉が、地面には落花が見られる。ガッカリしていると老婦人が珍しい木ですねと。 「イペイと言いますよ、南国の花でブラジルの国花です」と教えてあげる。ちょっと生意気そうに聞こえたのではと、「私もさっき知ったばかりです」と。 婦人は有難うと、ほほ笑んでくれた。
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