2015年10月06日
がん細胞が心臓病回復に効果あり?
ガン細胞といえば、反射的に悪役の印象を受けるが、これが役に立つかもしれないというのだ。ガン細胞は腫瘍になるまでは、再生を繰り返すものの、直接問題を起こしてはいないらしい。
このガン細胞の性質を利用して、加齢による心臓障害への対処に使えないかどうかの研究が行われている。
ガン細胞の増殖機能を利用する
サンディエゴ州立大学の心臓研究所主任研究員であるMark Sussman氏たちの研究チームは、ガン細胞を理解することが心臓治療に役立つとして研究を進めている。
心臓細胞は高齢になるほど、障害が発生したときの治療が困難になる。それは、心臓細胞が再生能力を失うためだ。しかしこれを、ガン細胞の再生能力を活用したバイオテクノロジーが確立できればどうだろうか、というのがMark Sussman氏の考えだ。
特定のガン細胞が成長し続けるために関連しているものに「PIM」と呼ばれる酵素があるという。このPIMをマウスの心臓の前駆細胞に取り込み、過剰発現させる実験をしてみた。
前駆細胞とは、様々な組織に分化できる幹細胞から特定の細胞に分化する途中段階にある細胞だ。細胞が健康であれば、PIMは染色体や細胞の分裂が容易になるように促進するのだ。
心臓を若返らせるバイオテクノロジー
このとき、細胞分裂は促すが、ガン化しない遺伝子が見つかっている。しかも、この遺伝子は、注入する場所によって働きが異なるという現象も見つかっている。
たとえば細胞の核内に注入した場合は、新たな細胞が増殖することを確認できている。
つまり、この研究が進めば、医師は患者の症状に合わせた治療に必要な効果を狙って、細胞の増加を操作する事が出来るようになるということになる。Mark Sussman氏たちは、この実験結果を人の細胞で再現するために、臨床試験を予定している。
ガンのリスク無しに細胞を増殖させることで、つまりは心臓に若さを取り戻すことが出来るようになるということだろう。なにやら神の領域に踏み込んでいるような話しだが、この技術を待ち望んでいる人たちがいることも確かなのだ。