2015年10月05日
2か国語を話せる人は、1か国語だけを話している人よりも脳の灰白質が多い
過去には、子供に2か国語を教えると、言葉の遅れを引き起こすという説がありましたが 『journal Cerebral Cortex』に発表された新しい研究結果では、2か国語を話すバイリンガルは、1か国語だけを話すモノリンガルよりも、神経細胞体が集まる灰白質の量が多いことがわかりました。
近年の研究では、バイリンガルは、モノリンガルよりも、実行機能 (executive control)に優れていて、注意や抑制、短期記憶を必要とする仕事が上手だといわれています。バイリンガルの優勢は、2つの話し言葉を長期的に使い続けることで起こると考えられています。
しかし全ての研究でバイリンガルの優勢が証明されているわけではなく、懐疑説も残ります。
そこで今回の実験を行ったジョージタウン大学メディカルセンターの研究者は、バイリンガルとモノリンガルの行動を比較するのではなく、脳の認識エリアそのものを比較するという、今までと違ったアプローチ方法を試みました。
実験では、英語とスペイン語を話すバイリンガルの成人と、英語だけを話すモノリンガルの成人の灰白質の量を比べました。その結果、バイリンガルのほうが灰白質の量が多いということがわかったのです。
灰白質の量は人の経験に影響され、その量に個人差があることが知られています。例えば、ロンドンのタクシー運転手達の脳は、空間ナビゲーションに関係する領域の灰白質が通常よりも多かったという有名な研究結果があります。
さらに研究者は、灰白質の量の違いが、単に使っているボキャブラリー数の差だけではないことも確認するために、英語と英語の手話を使うバイリンガルと、英語だけを話すモノリンガルの灰白質の量を比べました。その結果、英語を話すことに加え、英語の手話も操るバイリンガルと、英語だけを話すモノリンガルの間には、灰白質の量に差は見られませんでした。
この実験から、ボキャブラリーの数ではなく、2つの言語を同時に操っているということが、灰白質の量に影響しているという結論が出ました。
研究者は、今回の発見が、長期間に渡る技能の保持(今回の場合は、2か国語を操ること)により、脳が変化するという新たな事例になったと考えています。
"Thus we conclude that the management of two spoken languages in the same modality, rather than simply a larger vocabulary, leads to the differences we observed in the Spanish-English bilinguals."