2018年04月30日
飲酒による死亡リスクは、飲む量よりも「運動習慣」が重要
飲酒はさまざまな病気のリスクを高めることが知られているが、豪シドニー大学と英ロンドン大学の研究チームが35万人以上ものデータを分析した結果によると、飲酒による死亡リスクは、日常生活にウォーキングなどの適度な運動を取り入れることで軽減できるという。
□飲酒で死亡リスクが高まる
仕事で張り詰めた神経を緩めようと、ほっと一息。疲れを癒やすべく、毎日晩酌を重ねている人も多いことだろう。しかし、お酒は適量、ほどほどがよい。このことは医学的にも証明されている。飲酒量の増大は、がんや心疾患、脳血管疾患での死亡リスクの増大など、さまざまな原因による死亡リスク(全死亡リスク)を増大させるのである。
また、人によっては夜眠る前の「寝酒」が習慣になっている人もいるだろう。しかし、寝酒は睡眠にとっては好ましくない。お酒を飲むと一時的に眠くなり、よく眠れるような錯覚を引き起こすが、実はアルコールは、一時的な催眠効果の後に覚醒効果を発揮するので、眠りを浅くしてしまうのである
□全く飲まない人はかえって死亡リスクが高い
酒は百薬の長とも言われるが、お酒を全く飲まない人よりも、少し飲む人の方が、かえって死亡リスクが低いのも確かである。もちろん、全く飲めない人が健康のためにと無理して飲むのはお門違いだが、健康に良いからといって「断酒する必要はない」ということだ。お酒は適量を楽しむのが、体の健康にも心の健康にも良いということだろう。
□どれくらい飲むと死亡リスクが高まるか?
男性で46グラム、女性でその半分の23グラム。これがアルコールの1日あたりの適量だ。これ以上の飲酒は死亡リスクを高めてしまう。
では、アルコール23グラムとはどれほどかというと、ビール大瓶1本(633ml)、日本酒1合(180ml)、25度の焼酎120ml、ワインはグラス2杯(200ml)、ウイスキーダブルなら1杯(60ml)がおおよその目安である。
□適度な運動でリスク軽減!?
豪シドニー大学と英ロンドン大学の研究チームが、飲酒による死亡リスクと運動効果の関係を明らかにするため、40歳以上の男女35万3049人分のデータを解析した。データには、運動量と飲酒量、病気の既往歴や健康状態が長期間記録されている。アルコールは「ユニット」という単位で表されており、ビール1缶(約440ml)やワイングラス1杯(約175ml)がそれぞれ2ユニットに相当する。
解析の結果、男性では1日に2.4ユニット、女性では1.6ユニット以上の飲酒習慣がある人では、全死亡リスク(全ての原因による死亡リスク)が13%増加していた。しかし、ウォーキングなどの適度な運動を週に少なくとも150〜200分以上行っている場合、このリスクはなくなっていたという。適切な飲酒量であっても運動していない人は死亡リスクが上昇する。過剰摂取であっても、週2、3回程度の適度な運動を日常生活に取り入れることで軽減できることが示されたのだ。
なかなかやめられないのがアルコールの怖いところだが、日常生活に適度な運動を取り入れることで、将来的な健康に貢献することは間違いなさそうだ。