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2023年01月16日

Alchemy of Actor epigenetics 16

Alchemy of Actor epigenetics 16


がん抑制遺伝子( tumor suppressor gene)は、
がん発生抑制機能を持つタンパク質(がん抑制タンパク質)をコードす(遺伝子p53、Rb、BRCA1)など。
2倍体の細胞において2つのがん抑制遺伝子両方が損傷することなどにより、
がん抑制タンパク質が作られなくなったり、
損傷遺伝子からの異常ながん抑制タンパク質が 正常がん抑制タンパク質の機能を阻害すると、
組織特異的にがん化が起きる。

現在十数以上のがん抑制遺伝子が知られており、組織特異的であることが多い。
p53の変異は大腸癌、乳癌など非組織特異的とみられる、
Rbの変異は網膜芽細胞腫、骨肉腫など、
BRCA1の変異は家族性乳がん、子宮がんなど、
MSH2の変異は大腸癌などに見られる。
これらがん抑制タンパク質の機能は
細胞周期チェックポイント制御、転写因子制御、転写、DNA修復など多岐にわたる。


癌でのDNAメチル化異常

がんでは ゲノム全体の低メチル化と CGI(CpG island)のメチル化 が特徴

LINEやAlu(SINE)などの繰返し配列はCPG部位に富み 正常細胞ではメチル化されている。
がん細胞ではこれら繰返し配列が低メチル化状態になり ゲノム全体の低メチル化として観察される。
低メチル化状態はゲノム不安定を招来し リンパ腫などの腫瘍発生を促進。

繰返し配列に加え 生理的にメチル化された特定のゲノム領域の低メチル化も起きる。
IGF2は 母親由来のアレルがメチル化により不活性化されている刷り込み遺伝子。
このIGF2の一定領域の脱メチル化により 
本来不活性化されているはずの母親由来のアレルの転写が活性化される(Loss of Imprinting:LOI)。
大腸がんでは 増殖因子であるIGF2がLOIにより過剰に発現され 発がんを促進する。

正常細胞では 殆どのCGIは脱メチル化状態に保たれている。
がん細胞では 一部のCGIが異常にメチル化されている。
CGIのメチル化は 突然変異 染色体欠失同様に 遺伝子不活性化の原因となる。
p16, VHL, BRCA1, CDH1など 
重要ながん制御遺伝子のメチル化による不活性化が 様々な癌で高頻度に見られる。



がん組織のヒストン

各ヒストンタンパク質のバリアント(アミノ酸配列が異なる変異体)が入れ替わることで、
クロマチン構造を変え、特異的な核内プロセスを制御す。
H2AファミリーのバリアントH2A.Xは、
DNAのダメージを監視し、DNA修復タンパク質のリクルートを促進し、
ゲノムの保全に働くバリアントH2A.Zは、遺伝子の活性抑制の双方で重要な役割を持つ。
高レベルのH2A.Z発現は、多くのがんで広範に検出され、細胞増殖とゲノムの不安定性とに関連。

がんに特異的なヒストンの化学的修飾。
がん抑制遺伝子プロモーターのCpGアイランドDNAメチル化は、
ヒストン脱アセチル化酵素 (HDAC) をリクルートすることで
がん抑制遺伝子の発現を抑制し、がんの発生の一因。



と たのしい演劇の日々

2023年01月09日

Alchemy of Actor epigenetics 15

Alchemy of Actor epigenetics 15

Paramutation・パラ変異

「動物の行動は、その行動を行う特定の動物の体内にその遺伝子が存在するかどうかに関わらず、
その行動のための遺伝子の生存を最大化する傾向がある。」
Extended Phenotype (1982 by Richard Dawkins (1941- evolutionary biologist),


パラミューテーション:

相同DNA配列が減数分裂的な遺伝的発現状態を確立するためにトランス状態で情報伝達する過程 ,
その機構は未だ完全には解明されていない。

パラミューテーションは特異的なクロマチン状態の確立と 遺伝的伝達の基礎になる かも。,

植物(Arabodpsis thalianaやトウモロコシ)と酵母(Saccharomyces pombe)での
RNA依存転写サイレンシングに関与する転写/
非コード性タンデム反復配列と蛋白質はパラミューテーションにとって必要 だが, 
遺伝的サイレンシングに介入する特異的分子類は未決。


遺伝法則に反する遺伝パターン、
1950年代トウモロコシで発見、それ以来植物や菌類、マウスでも認められる。
メンデルの法則はほとんどの場合に当てはまるが、各対立遺伝子が独立して分離す。

表現型に現れないほうの対立遺伝子が、実際に発現する方の対立遺伝子を「変異」させ、
発現しないようにしてしまう相互作用。

トウモロコシの研究で、パラミューテーションはRNAによるものであることが示された。

 トランスポゾンのサイレンシングに関係するクロマチン状態の安定性には、
RNA依存性RNAポリメラーゼをコードするmop1遺伝子が必要。


1対の対立遺伝子のそれぞれが分離して配偶子に振り分けられる とするメンデルの法則は、
たいていの場合に当てはまる。しかし、
1個の遺伝子座にある2個の対立遺伝子の相互作用であるパラミューテーションが生じると、
片方の対立遺伝子に遺伝性の変化が起こる。このような非メンデル遺伝が動物でも見つかった。

マウスのKit遺伝子研究、ヌル変異体との交雑で野生型の表現型の出現が抑えられる。

kit遺伝子:4番染色体長腕(4q12)に座位する遺伝子

このエピジェネティックな(DNAに依存しない)変異の仕組みは、
配偶子と接合子の間でのRNAの受け渡しが関係。
RNAはこの現象の立役者の1人で、遺伝情報の貯蔵庫、調節性のマイクロRNAとして、
さまざまなエピジェネティックな遺伝にかかわっている。

と たのしい演劇の日々

2023年01月01日

新年のご挨拶

2023 japanese.jpg



本年も宜しくお願い致します。

2022年12月20日

Alchemy of Actor epigenetics 14

Alchemy of Actor epigenetics 14


プリオンprion
は感染可能なタンパク質の形態。タンパク質からなる感染性因子のこと

ミスフォールド(誤って折りたたまれたタンパク質)状態のタンパク質が
その構造を正常の構造のタンパク質に伝えることによって伝播す。

一部のタンパク質は、複数の立体構造をとるように変化でき、その一例としてプリオンがある。

プリオンは、
同じアミノ酸配列のタンパク質を自然状態から感染性立体構造へ触媒的に変換するタンパク質と定義
ゲノムを変更せず表し 現型の変化を誘導することができるエピジェネティックな媒介物と見る。

プリオンは他の感染性因子と異なり、DNAやRNAといった核酸は含まれていない。

狂牛病やクロイツフェルト・ヤコブ病などの伝達性海綿状脳症の原因となり、
これらの病気はプリオン病と呼ばれる。

脳などの神経組織の構造に影響を及ぼす極めて進行が速い疾患として知られており、
治療法が確立していない致死性の疾患。

哺乳類においてプリオンとしてふるまい、狂牛病などのプリオン病の原因となるのはPrP。

PrPは、ヒトで253個、マウスで254個のアミノ酸からなるタンパク質、
そのアミノ酸配列は高度に保存される。

PrPは健康なヒトや動物でも発現しているタンパク質で、
脳、心臓、肝臓など多くの組織、臓器において発現、特に脳、神経細胞において高く発現。  

同一のアミノ酸配列でありながら、
正常プリオンタンパク質と異常プリオンタンパク質の二つの異なる高次構造をとる、



異常プリオンタンパク質(scrapie PrP:PrPSc)

PrPCが構造変化を起こしたプリオン病に特異的に検出される。  

PrP遺伝子はヒトにおいては第20番染色体上に存在し、2つのエクソンからなる。

PrPScは、PrPCと比べてβシート構造に富んだ構造

PrPCが界面活性剤に可溶性、プロテアーゼKなどのタンパク質分解酵素によって容易に分解されるのに対し、PrPScは、界面活性剤に難溶性、タンパク質分解酵素にも抵抗性を示す。

PrPScの凝集体はアミロイド線維とよばれる構造、
PrPのアミロイド線維はPrP単量体が結合する鋳型として働くことができ、
PrPの単量体がPrPのアミロイド線維にとりこまれることによってPrPのアミロイドは伸長する。

毒性・感染力の強いPrPScはアミロイドよりもむしろオリゴマー。
( oligome:)比較的少数のモノマーが結合した重合体のこと 
有限個(10~100個)のモノマーが結合した比較的分子量が低い重合体を指す。
オリゴマーに対してポリマーは非常に多数(数100個以上)のモノマーが結合した状態のこと


ミスフォールドしたPrPが健康な個体に感染すると、
健康な個体に存在していた正常な構造のPrPがミスフォールドしたPrPへの構造変換が起きる。

ミスフォールドしたPrPは他のPrPの構造変換を引き起こす鋳型としてふるまい、
可溶性の正常型タンパク質がアミロイドに重合していくことによって、
構造変化がおこり異常型タンパク質の構造へと変化する。

アミロイドは物理的にも化学的にも非常に安定な構造であり、
このことがプリオン病の封じ込めを困難にしている。



と たのしい演劇の日々

2022年12月09日

Alchemy of actor epigenetics 13

Alchemy of actor epigenetics 13

親世代が獲得したストレス耐性能力は、エピジェネティック情報の組織間伝達を介し次世代に継承される

モデル生物(線虫)を用い、個体のストレス耐性制御における、組織・臓器の連携についての研究結果、
腸組織でのエピジェネティック変化が生殖腺におけるエピジェネティック変化を誘導、
この組織間コミュニケーションにより、個体のストレス耐性が上昇す。
さらに、この腸-生殖腺の組織間コミュニケーションを介し、ストレス耐性の上昇が子世代へ継承される。

生物は、ストレス応答(生体防御機構)を活性化させることで、外界からのさまざまなストレスに適応。
エピジェネティクスの制御機構が個体のストレス応答において重要な役割を担うことが解明されている。

エピジェネティクスは、DNAやヒストンへの後天的な化学修飾を通し、
塩基配列の変化を伴わずに遺伝子発現が制御される仕組み。
個体は環境刺激に対してエピジェネティック修飾を変化させ、遺伝子発現を調節し、恒常性を維持す。



ストレス応答とエピジェネティクス制御についての、二つの現象

1,ある臓器で生じたストレス応答が、個体全身の統合的なストレス応答を誘導す。

2,環境刺激によって生じたエピジェネティック修飾が世代を超えて伝わる

実験対象モデル生物「線虫」は、
酸化ストレスなどのストレス応答に関わるエピジェネティック修飾として、
ヒストンのメチル化が知られている。

ヒストンメチル化を触媒するエピジェネティック修飾因子の中で、
酸化ストレス耐性に関わる ヒストンH3リジン4トリメチル化(H3K4me3)修飾因子の
ASH-2タンパク質をコードする ash-2遺伝子 を全身でノックダウンすると、
個体のストレス耐性が大きく上昇。
これは、ヒストンのメチル化が減少すると、ストレス耐性が上昇 することを示す。事実、
ヒストンの脱メチル化を触媒する酵素の RBR-2タンパク質 
をコードするrbr-2遺伝子 をノックダウンしてヒストンメチル化の減少を抑制すると、
ash-2遺伝子のノックダウンによるストレス耐性上昇の効果は見られなくなる。



組織ごとにash-2遺伝子をノックダウンする実験を行い
ash-2遺伝子の欠損によるストレス応答に関わる組織を特定。
腸組織 生殖腺 のどちらかでash-2遺伝子をノックダウンすると、個体のストレス耐性が上昇、
この効果にはそれぞれの組織でのRBR-2タンパク質の機能(脱メチル化)が必要。


腸組織と生殖腺の関係性 

腸組織で特異的にash-2遺伝子を欠損させた変異体を用い解析。その結果、
腸組織でash-2遺伝子を欠損したときのストレス耐性の上昇に、腸組織だけではなく
生殖腺のRBR-2タンパク質も必要。また、
腸組織で特異的にash-2遺伝子を欠損した線虫は、
生殖腺におけるASH-2タンパク質の機能(メチル化)が正常であるにもかかわらず、
生殖腺でのヒストンメチル化レベルが減少。

腸組織におけるヒストンメチル化の減少が、
生殖腺のヒストンメチル化の減少を誘導するエピジェネティック情報の伝達機構が存在し、
この組織間コミュニケーションによって個体のストレス耐性が上昇する。


親世代の腸組織でのash-2遺伝子の欠損により誘導される生殖腺のエピジェネティック変化が、
子世代のストレス耐性に影響
を与える。
腸組織のash-2遺伝子を欠損した親から産まれた野生型の子世代の線虫は、
ASH-2タンパク質の機能(メチル化)は正常であるにもかかわらずストレス耐性が上昇、
そしてその効果は孫世代まで継承される。

腸-生殖腺の組織間コミュニケーションとストレス応答の世代間継承を担う分子メカニズム

発現が変化する遺伝子の影響:

ストレス耐性上昇には、腸組織において転写因子DAF-16が機能

腸組織から分泌されると予想し同定したタンパク質F08F1.3の発現が減少することが必要。



腸組織のエピジェネティック変化が生殖腺のエピジェネティック変化を誘導することで、
酸化ストレスに耐性を持つ生存優位性が次世代へと継承される。
消化器官は、外界から摂取したさまざま物質が集積する場所、
環境変化に晒される腸組織から生殖腺へと情報が伝達され、
親と子の生存力を向上させる、生物の生存戦略の一部として機能す。

環境ストレスにより獲得した形質が遺伝する事がさまざまな生物種で報告されている、




ストレス応答、酸化ストレス:
熱ショック、活性酸素、高浸透圧、紫外線、放射線など、環境からのストレスに対して生体が示す反応。
酸化ストレスは、活性酸素によって引き起こされ、
脂質やタンパク質が酸化されることによる分子機能の低下、DNAの損傷による遺伝子変異などを招く。

ノックダウン:
mRNAの分解や翻訳抑制などの操作により、遺伝子機能の発現を大幅に低下させること

転写因子:
遺伝子の発現を調節するタンパク質。
DNA上に存在する遺伝子のシス転写調節領域に結合し、
DNAを鋳型としてRNAが産生(転写)される時期や量を調節す。



と たのしい演劇の日々

2022年12月08日

Alchemy of Actor epigenetics 12

Alchemy of Actor epigenetics 12

位置効果[position effect

遺伝子が存在する位置の上流域の構造が与える発現抑制/活性化の効果

遺伝子が染色体上のどの位置にあるかによって,表現型に生じてくる効果が異なること。
遺伝学の原則的な考え方によれば,各遺伝子は独立して形質発現に寄与するが,
実際には遺伝子の段階での相互配置により,各種の位置効果が生じる。
exa;
ショウジョウバエ,2種類の遺伝子 (aとb) が同一染色体に乗っていれば(ab/++),
わずかに眼が小さいだけであるが,
相同染色体上に分れて乗っていると(a+/+b),著しく眼の小さくなる例がある。
遺伝子の位置が変るのは,核分裂の際に起る染色体の一部分の切断とつなぎ換えによる。

位置効果は、染色体chromosome内の遺伝子の位置が変化したときの遺伝子の発現expressionへの影響で、
多くの場合、転座translocationによって変化す。

ショウジョウバエDdrosphiaの眼の色の研究(1941) 
位置効果による斑入り(PEV:position effect variegation);
ヘテロクロマチン近傍に逆位転座した眼色の遺伝子が発現抑制を受けることを報告
これはエピジェネティクスという用語が作成される以前に報告されたものであるが、
現在ではこの分野の端緒の一つであるとす。

PEVは遺伝子サイレンシングの一例、
同様のヘテロクロマチン構造の影響による遺伝子発現抑制は酵母でも見出されている。

PEVは、ヘテロクロマチン領域との位置関係だけではなく、
温度・過剰な染色体の存在・被抑制遺伝子の塩基配列などに影響を受ける確率的なもの、
より直接的にはヘテロクロマチン化に働く因子やヒストン修飾と関連。



Enhancer:
特定の遺伝子の転写の可能性を高めるためにタンパク質(アクチベーター)が結合する、
短い(50–1500塩基対)DNA領域。多くの場合、これらのエンハンサーに結合するタンパク質は転写因子と呼ばれる。
エンハンサーはシスに作用し、遺伝子から最大で100万塩基対も離れている場合もあり、
転写開始部位の上流下流に位置する。
エンハンサーは原核生物と真核生物の双方に存在、ヒトのゲノム中には数十万個のエンハンサーが存在す。

(1983)真核生物のエンハンサーが最初に発見された、
免疫グロブリン重鎖の遺伝子において巨大なイントロンの内部に位置するこのエンハンサーによって、
遺伝子再構成が起こっていないVhプロモーターは不活性であるのに対し、
再構成が起こったVhプロモーターからの転写が活性化されることの説明が可能となった。
遺伝子発現に大きな影響を与え、
一部の遺伝子では活発なエンハンサーの存在によって発現が最大100倍にまで上昇す。

エンハンサーは、ゲノム中の主要な遺伝子調節エレメント。
エンハンサーは細胞種特異的な遺伝子発現プログラムを制御するが、
その制御はDNAの長距離のループを形成することで
特定のエンハンサーを標的遺伝子のプロモーターに物理的に近接させることによって行われる。
エンハンサーのDNA領域とプロモーターの距離はは数十万塩基対にも及ぶが、
特定の組織では特定のエンハンサーのみが、そのエンハンサーが制御するプロモーターと近接。

大脳皮質の神経細胞での研究では、エンハンサーを標的プロモーターに近接させる24,937個のループ発見。
複数のエンハンサーは、
それぞれ標的遺伝子から数万から数十万ヌクレオチド離れた位置にあることが多いが、
標的遺伝子のプロモーターへのループを形成し、互いに協調的に共通の標的遺伝子の発現を制御.



キイロショウジョウバエは、多くの生物で見られるCpGでのDNAメチル化の頻度が低く、
識別できるDNAメチル化酵素としてはDnmt2のみしかない。
この現象についての議論には結論は出ていない。
なお同じ昆虫類でもセイヨウミツバチではCpGのメチル化は、
ゲノム全域で見受けられ、遺伝子発現制御に利用される.



と たのしい演劇の日々

2022年11月01日

Alchemy of Actor epigenetics 11

Alchemy of Actor epigenetics 11

遺伝子サイレンシングgene silencing

クロマチン chromatin(真核細胞内に存在するDNAとタンパク質の複合体
ヒト二倍体細胞に納められているDNAの総延長およそ2 mを直径約10 μmの核に収納するための構造 )
への後天的な修飾により遺伝子を制御する、

「遺伝子サイレンシング」遺伝子組み換え以外の機序で
遺伝子の「スイッチを切る」ことを記述するために用いられる。
正常な環境下で発現する(スイッチが入る)が細胞内の何らかの機構により切られることを意味する。

転写型遺伝子サイレンシング:
転写そのものが止められた状態で、mRNA合成の停止により確認される。
転写型遺伝子サイレンシングはヒストン(histone真核生物のクロマチンを構成する主要タンパク質 )の修飾、
またはヘテロクロマチン(heterochromatin 遺伝子密度が低 遺伝子発現が抑制されている領域
強く折り畳まれている) 環境が作り変えられた結果生じると考えられている。

転写後遺伝子抑制とは、特定のmRNAが破壊されることによるもの。
mRNAの破壊は転写による遺伝子生産物(タンパク質など)の形成を妨げる。
転写後遺伝子抑制に共通する機構はRNAi(RNA interference :
二本鎖RNA(dsRNA)が翻訳抑制 転写抑制によって遺伝子の発現を配列特異的に抑制する生物学的過程 )である。


遺伝子サイレンシングはまたゲノムの組織を
トランスポゾン (transposon:細胞内にてゲノム上の位置を転移 (transposition) することのできる塩基配列 ) やウイルスから保護する。

遺伝子サイレンシングはDNAを感染症から守るために細胞が太古から本来持っている免疫機構の一つか
exa,糸状菌アカパンカビ、の遺伝子は減数分裂の段階でDNAがメチル化を受けてサイレンシングされる。




遺伝子抑制の種類

<転写型遺伝子サイレンシング/Trascriptional Gene Silencing

<ゲノムインプリンティング

<パラミューテーション

<トランスポゾン抑制/Transposon silencing

<トランスジーン抑制/Transgene silencing

<配置効果/position effect



転写後遺伝子サイレンシング/Post-Transcriptional Gene Silencing

2022年10月22日

Alchemy of Actor エピジェネティクスepigenetics 10

Alchemy of Actor epigenetics 10


reprogrammingリプログラミング  心筋の研究例

通常細胞分化は不可逆、一度決まった臓器や組織に分化した体細胞は、

exa,いったん心筋細胞に分化したならば、その後肝臓や神経など他の種類の細胞になることはない。

それに対してリプログラミングとは、
すでに分化した細胞からこの固定化された標識を消去して未分化の状態に戻し、
体を構成するあらゆる種類の細胞に分化することができる多能性を持った幹細胞を作り出す現象を指す。

リプログラミング技術により、ヒトの皮膚などの体細胞からiPS細胞を作り、
目的の臓器や組織に分化誘導して病気やけがで損なわれた部位に移植する再生医療 クローンを導く


ダイレクトリプログラミング

体細胞を初期化しiPS細胞に戻してから分化誘導し、目的の細胞を樹立するまで長時間を要す。
加えて培養した心筋細胞のほとんどは筋線維の配列が不揃いで収縮力が弱く、細胞の成熟度が低い。
実際の心筋細胞と同じように拍動するまで成熟するのは数パーセントに満たない。
実用可能なレベルにまでリプログラミングの性能を高める研究が進む一方で、
もう一つ注目されている手法『ダイレクトリプログラミング』。

ダイレクトリプログラミングは体細胞に特定の因子を導入し、ダイレクトに目的の細胞に性質を転換。
iPS細胞を作るプロセスが省略され、時間もコストも削減で誘導した細胞の成熟度も高い。
ヒトの細胞を抽出し実験室で作製するiPS細胞と違い、
,心筋に直接導入因子を注入し、身体の中で心筋細胞を誘導す。
現在その為のダイレクトリプログラミングを促す因子発見が進む。

リプログラミングは罹患率・死亡率が高い心臓病の治療に期待がかかる。
心臓は自己再生能力が極めて低く、現在は重症心不全においては心臓移植以外に有効な治療手段がない。

心臓の中でも特殊な細胞「ペースメーカー細胞」は、不整脈の発生と関わる。
ペースメーカー組織 刺激伝導系は 
心拍動の源となる電気信号を作り出し、それを心筋に伝える特殊な心筋群、心拍動の司令塔、
ペースメーカー組織に異常を来たすと心臓は正常なリズムで拍動しなくなる。
ペースメーカー組織は部位によって異なる電気信号を発する性質があり、
異常が起きる部位によって異なる種類の不整脈を起こす。
そこでどのような因子がどこでどのように作用して不整脈を起こすのか解明が進んでいる。

運動によって引きおこされる不整脈・徐脈(心臓の拍動数が異常に減少した状態)の原因を調べた研究では
 運動させ徐脈を誘発したマウスのペースメーカー組織内で変動する分子を解析
 miR-423-5p(マイクロRNA)が徐脈の原因となっている事を発見。

一般にマイクロRNAは遺伝子の発現を抑制する働きを持つ。
通常はタンパク質が必要以上に合成されるのを抑えて正常なレベルに保つ働きを担う。
徐脈マウスではそのマイクロRNAがペースメーカー組織で異常に増加し、
ペースメーカー組織の機能維持に重要な転写因子やイオンチャネルの量を減少させている。

マイクロRNAの発現を抑えると徐脈マウスの心拍数が正常に戻る、
疾病時 変動するマイクロRNAや転写因子のような分子は細胞機能に影響を与えるが、
ペースメーカー細胞のダイレクトリプログラミングを可能にする導入因子でもある。



と たのしい演劇の日々

2022年10月07日

Alchemy of Actor 量子もつれ 09

Alchemy of Actor 量子もつれ 09

04/10/22 スウェーデン王立科学アカデミー ノーベル物理学賞の受賞者 量子情報科学の分野で功績
Alain Aspect(フランス国立科学研究センター)、
John F. Clauser(米J.F. Clauser&Association)、
Anton Zeilinger(オーストリア・ウィーン大学)の3人を選出

「ベル(Bell)の不等式の破れの確認に基づく、光子の量子もつれについての実験と、量子情報科学の開拓」により 最近の量子コンピューターや量子情報通信の興隆の基礎を成した


1927,「コペンハーゲン解釈」では、
量子の測定値(電子の位置など)が確率的に変動することはある種の“原理”だという理解が広がる 
ただし、その確率自体はシュレディンガー方程式などを解いて波動関数を求めることで計算でき、
半導体のように制御も可能。


1935、アインシュタイン、ポドルスキー、ローゼン3者は、
もしコペンハーゲン解釈が正しいなら、量子には非局所相関があることになると指摘。
これは物理的に離れた複数の量子間で瞬間的な相関があることを意味す。
それまでの古典的物理学では「ありえない」ことで「EPRパラドックス」と呼ばれた。
アインシュタインらは、このコペンハーゲン解釈は不完全で暫定的な解釈にすぎず、
今後の研究で確率的振る舞いの理由が判明するものと考えた。


 1960年代半ばにかけ、古典的物理学で量子の確率的振る舞いを説明しようとする「隠れた変数理論」提唱。

  英物理学者ジョン・スチュアート・ベル「ベルの不等式」発表。

実験結果がこの不等式を満たせば、隠れた変数理論が正しい、
満たさなければ、コペンハーゲン解釈が正しい、という判定機に。
しかも後者であれば、量子の確率的振る舞いはある意味“宇宙の原理”であって、
それを他の理論で説明することはできないということにもなり

 判定は「非局所相関あり」  ただし、実験自体が難しかった。


1969、 Clauser はこのベルの不等式を実験で検証できる形に拡張「CHSH不等式」を開発し発表。

1982、 Aspectは、このCHSH不等式を実験的に検証し、論文発表。

結果 ベルの不等式が破れる、つまり、
「確率的振る舞いは原理的なもの」「非局所相関はある」という結果「アスペの実験」。
これにより、2つの量子間の相関を「量子もつれ Quantum Entanglement」と
特に、非局所相関は「EPR相関」とも呼ぶ。




 1997、 Zeilingerは、遠く離れても量子もつれ状態にある2つの量子間で、量子情報を伝送できる
「量子テレポーテーション」を実験的に証明。

量子テレポーテーション;
量子もつれ状態にある複数の量子間で量子状態を瞬時に伝送する技術。ただし、
この技術では光速を超える情報通信は不可能。
量子情報自体は瞬間的に送ることができるが 、
それを古典的に読み解く“鍵”を古典的通信路を介して送る必要がある。このため、
原理的に盗聴ができない量子暗号通信の長距離化などへの応用検討中。


 量子テレポーテーションの実験に関連した論文は1994年以降、別の研究グループも発表。
一方、1997, Zeilingerらは、3つ以上の量子間での量子もつれの研究 や
 1998, 2つの量子もつれの連結、
 2012, 143km離れた量子間での量子テレポーテーション(光で自由空間を伝送)の実験 など
基礎から応用まで幅広い分野で多数の功績をあげている。


 2020、米California Institute of Technology(カリフォルニア工科大学、カルテク)の研究チーム
長さ44kmの光ファイバーを介した量子テレポーテーションの実験に成功 論文発表、
「量子インターネット」の実現性が高まった。


「量子もつれ」;「
日常の常識が通じないほど小さな粒子たちが、お互いに複雑に関連している状態」

John F. Clauser 、私たちの日常の常識の限界について  曰く

「大方の人々は、宇宙 は空間と時間全体に分散した物体から作られていると思い込んでいるが、
実はそうではない」と述べ

ジョンズ・ホプキンス大学の物理学者、Amitage  曰く

「宇宙の一部は、互いに遠く離れた場所にあるものであっても、つながっている。
これは人間的な直感に相容れない事実ではあるが」と。



と たのしい演劇の日々

2022年09月17日

Alchemy of Actor epigenetics 08

Genomic iprtinting

ヒトをはじめとする哺乳類はすべて父と母に由来する一対のゲノムを持つ。
従って、常染色体上のすべての遺伝子座に一対の対立遺伝子があり、
通常それらはともに発現し個体の発生や生体の営みを調節す。

正常発生には父母由来の両方のゲノムが必須。
哺乳類の常染色体には一方の対立遺伝子だけが発現する遺伝子座があり、
これが父母由来ゲノム間の機能的な差をもたらしている。
精子や卵子の形成過程において何らかの形で遺伝子に「しるし」あるいは「記憶」が刷り込まれ、
そのしるしにしたがって子での遺伝子発現が生じる。

インプリンティングは遺伝情報に恒久的変化を与えず、
世代ごとに新たにプログラムされるので、遺伝とは異なるepigeneticな現象。



自然界では(鳥 爬虫類を含む脊椎動物)で単為発生がみられ、
形態的にも機能的にも正常な個体を作るが、哺乳類にはその例がない。

両親由来ゲノムには違いが刷り込まれている。
(1)単為発生細胞を含むキメラは正常胚より30〜50%程度小さく、
雄核発生細胞を含むキメラは同程度大きい、
(2)単為発生細胞は生殖細胞、脳、心、腎、脾などで高い寄与率を示すが、
骨格筋、肝、膵には分化できない、
(3)雄核発生細胞は骨格筋、心、骨などに寄与するが脳での寄与率は低い。
このように父・母由来のゲノムは胚の成長や各細胞系列の分化・増殖を調節している。



ノックアウトマウスの実験(1991)で
インプリンティングを受ける遺伝子 Igfz/インスリン様成長因子II
の最初の例 偶然発見。
Igfz は父親由来の時だけ発現するインプリンティング遺伝子で 第7染色体遠位部にある。
この発見以来、ヒトとマウスで次々とインプリンティング遺伝子が同定されている。

インプリンティングを受ける遺伝子のどちらの対立遺伝子が発現するかは遺伝子ごとに決まっている。
しかし 常に対立遺伝子特異的な発現を示すわけではなく、
組織や発生段階に依存したインプリンティングもある。

インプリンティング遺伝子の共通点。
(1)ゲノム上でクラスターを形成する傾向がある。
(2)遺伝子産物の機能は成長因子、ホルモン、膜表面受容体、転写因子、酵素など様々だが、
細胞の増殖や成長を促進するものについては父性対立遺伝子、
増殖を阻害する遺伝子は母性対立遺伝子が発現する傾向にある。
(3)いくつかの例外を除いてヒト・マウス間でインプリンティングが保存されている



インプリンティングを受ける染色体領域 or 遺伝子は、
配偶子形成/gametogenesis 過程で
精子(父)由来か 卵子(母)由来かの「しるし=インプリント(imprint)」を刷り込まれる。
このインプリントの違いは受精を経て、同一の核に入っても維持され、
さらに複製・細胞分裂を繰り返しても消失しない。
そして体細胞ではインプリントにしたがって父性または母性対立遺伝子特異的な発現が起こる。

インプリンティングのサイクル
DNA配列に変化を与えないエピジェネティックな機構の代表 DNAメチル化/DNAmethylation。
シトシンのメチル化は哺乳類ゲノムDNAの唯一の生理的修飾で、
DNA(シトシン‐5)‐メチルトランスフェラーゼが
2塩基配列CpGのシトシンを認識して5‐メチルシトシンを生成。
CpGに相補的な配列はCpGであるから、2本鎖DNAは両鎖にメチル化の標的をもつ。

哺乳類は3種類のDNA(シトシン‐5)‐メチルトランスフェラーゼを持つ。
そのうちDnmt1メチルトランスフェラーゼは主に体細胞で発現、
一方の鎖がメチル化されたヘミメチル化/hemimethylated CpGを優先的に認識し、
相補鎖上のシトシンを維持メチル化/maintenance methylation。
この酵素の活性により、哺乳類の体細胞はDNA複製を経て同じメチル化状態を維持。

インプリンティング遺伝子のメチル化状態は、父性・母性対立遺伝子の間に差が見られる。
Dnmt1をノックアウトしたマウスの体細胞で、3つの遺伝子のインプリンティングが変化。
DNAメチル化は
ヒストン蛋白質の修飾などのエピジェネティックな機構と協調してインプリンティングを制御する。



始原生殖細胞(PGC)
精子/卵子を作りだす元になる細胞、発生の初期に体細胞系列とは別に分化。
この細胞が腸間膜を移動し 、胎仔精巣や卵巣にはいって、分化過程を経て精子や卵子になる。



インプリンティングの最初の段階は、
雌雄の配偶子形成過程で父由来、母由来のインプリントが刷り込まれる。
配偶子形成途中の生殖細胞が父型・母型のインプリントを獲得しているかどうかは、
核移植や顕微受精の技術で発生能を調べると推定できる。
母型インプリントの大部分が卵形成過程のうち第一減数分裂前期の卵成長期(一次卵母細胞)に獲得される。父型インプリントは精子形成過程の減数分裂以前に刷り込まれる。

一方、初期の発生過程で生殖系列に入った細胞は、
新たな刷り込みが起こる前に両親由来のインプリントが消去される。
始原生殖細胞は8.0〜8.5日齢胚の移動期の始原生殖細胞から樹立されたEGembryonic germ細胞は、
正常胚とキメラを形成する能力を持ち、移動期の始原生殖細胞はインプリントを保持。
しかし11.5~12.5日齢胚の始原生殖細胞から樹立したEG細胞は
、キメラ形成実験にて異常な表現型を示し、すでにインプリントの消去 or 書き換えが始まっている。
始原生殖細胞が生殖隆起に達し、性分化が始まるころには、新たなサイクルに入る。

ノックアウトマウスの解析結果(2004)から、
Dnmt3aメチルトランスフェラーゼ酵素が
雌雄の配偶子形成過程で父親型・母親型のインプリントを刷り込んでいること発見。
Dnmt3aは非メチル化状態のDNAに新たなメチル化を導入活性化、

どうして雌雄の配偶子形成過程で異なるインプリントが生じるのか 
どのようにして異なる遺伝子群がメチル化されるのかは未だ不明。



と たのしい演劇の日々
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