2023年09月28日
Alchemy of Actor Biochemistry Hydrogen 水素
Alchemy of Actor Biochemistry Hydrogen
水素 hydrogen、原子番号 atomic number 1の元素 元素記号は element symbol H。
原子量 relative atomic mass;Ar(H) 1.00794 非金属元素 nonmetal 。
中国語ではその気体としての軽さから「軽」の旁を用いて「氫」拼音: qīng
陽子1つと電子1つからなるシンプルな構造ゆえ、
原子構造論の発展において水素原子は中心的な役割を果たしてきた。
量子力学の入門として、水素原子や水素様分子をまず取り扱う教科書がほとんど。
元素およびガス状分子の中でもっとも軽く、地球上では水や有機化合物の構成要素として存在。
宇宙でもっとも豊富に存在する元素、珪素量を106とした際の比率は2.79×10の10乗
(ダークマターとダークエネルギーを除き)宇宙の質量の4分の3を占め、総量数比で全原子の90 %以上。
これらのほとんどは星間ガスや銀河間ガス、恒星、木星型惑星の構成物として存在。
「宇宙の晴れ上がり」
水素原子は宇宙が誕生してから約38万年後に初めて生成したとす。
それまでは陽子と電子がバラバラのプラズマ状態で光は宇宙空間を直進できなかった、
電子と陽子が結合することにより宇宙空間に散乱されずに進めるようになった。 宇宙における主系列星のエネルギー放射のほとんどはプラズマとなった
4個の水素原子核がヘリウムへ核融合する反応によるもの、比較的軽い星は陽子-陽子連鎖反応、
重い星はCNOサイクル過程を経てエネルギーを発生。
水素原子はいずれの核融合反応においてもこれを起こす担い手。
太陽の組成に占める水素の割合は約73 %。
地球表面の元素数では酸素・珪素に次いで3番目に多いが、
水素は質量が小さいため、質量パーセントで表すクラーク数では9番目。
地球表面の元素数ではほとんどは海水の状態で存在、
単体の水素分子状態では天然ガスの中にわずかに含まれる程度。
海水における推定存在度は1 Lあたりに108 g、地球の地殻における推定存在度は1 kgあたり1.4 g、
乾燥大気における構成比は0.55ppm。
宇宙空間に散逸する地球の大気は少ないが、それでも1秒あたり水素が3 kg、
ヘリウムが50 gずつ放出されている。
ジーンズエスケープ(大気が薄く原子や分子の速度が減速されずに宇宙へ飛び出す)や、
イオン状態の荷電粒子が地球磁場に沿って脱出。なお、
ハイドロダイナミックエスケープ(加熱された粒子がまとまって流出する)や
スパッタリング(太陽風が持ち去る)は現在の地球では起きていないが、
地球誕生直後はこの作用によって水素が大量に散逸。
固有磁場を持たない金星は、現在でもハイドロダイナミックエスケープやスパッタリングが続き、
地表には比較的重いため残った酸素や炭素が作る二酸化炭素が大気のほとんどを占め、
水がない非常に乾燥した状態。火星も軽い水素を中心に散逸し、
かろうじて氷となった水が極部分の土中に残る。
水素の同位体
天然水素は、
水素(軽水素、 protium )1H 質量数が1(原子核が陽子1つのみ)、
重水素 2H ( deuterium 略号D)質量数2(原子核が陽子1つと中性子1つ)、
三重水素 3H ( tritium 略号T);質量数が3(原子核が陽子1つと中性子2つ)の3つの同位体が知られている。
その他には非常に不安定な核種(4Hから7H)が実験室で合成されているが、天然には全く存在しない。
もっとも軽い 1H (1つの陽子と1つの電子のみ)、原子の中で中性子を持たない核種の1つ。
存在が確認されている中でほかに中性子を持たない核種はリチウム3 (Lithium-3・3Li )のみ。
それぞれの同位体は質量の差が2倍、3倍となり、性質の違いも大きい。
D2はH2よりも融点や沸点が高くなり、溶融潜熱は倍近くに、蒸気圧は10分の1近くとなる。
より重い同位体は水素4から水素7までが確認されている。
もっとも重い水素7(原子核は陽子1、中性子6)はヘリウム8を軽水素に衝突させることで合成。
質量数が4以上のものは寿命がきわめて短く、水素7では半減期が23 ys(= 2.3×10−23 s)。
水素の同位体は、それぞれの特徴を有効に活かした使い方をされる。
重水素は原子核反応での用途で、中性子の減速に使用され、
化学や生物学では同位体効果の研究、医療では診断薬の追跡に使用。
三重水素は原子炉内で生成され、水素爆弾の反応物質や核融合燃料、
放射性を利用したバイオテクノロジー分野でのトレーサーや発光塗料の励起源として使用。
[水素分子]は、
常温常圧では無色無臭の気体として存在、分子式 H2で表される単体。
分子量2.01588、融点 −259.2 °C(常圧)、沸点 −252.9 °C(常圧)、密度 0.0899 g/L、
比重 0.0695(空気を 1 として)、臨界圧力 12.80 気圧、水への溶解度 0.021 mL/mL(0 °C)。
最も軽い気体。原子間距離は 74 pm、結合エネルギーはおよそ 435 kJ/mol。
水素分子は常温では安定で、フッ素以外とは化学反応をまったく起こさない。
しかし たとえば光がある状態では塩素と激しい反応を起こす。
水素と酸素を混合したものに火をつけると起きる激しい爆発(水素爆鳴気)は、
混合比下限は4.65 %、上限は93.3 %、空気との混合では4.1 – 74.2 %、
これはアセチレンに次ぐ広い爆発限界の範囲。
ガス密度が低い水素は速い速度で拡散、燃焼時の伝播も速い。そのため、ガス漏れを起こしやすい。
原子径の小ささから、金属材料に侵入し機械的特性を低下させる(水素脆化)。
これは高温高圧環境下で顕著、封入容器の材質注意必要。
−250 °C以下で液化させると体積は 800分の1となり、さらに軽いため低温貯蔵性に優。
ガス惑星の内部など非常に高い圧力下では性質が変わり、液状の金属になる。
逆に宇宙空間など非常に圧力が低い場合、H2+やH3+、単独の水素原子などの状態も観測されている。
H2分子形状の雲は星の形成などに関係があり、新生惑星や衛星の観測に。
水素分子は、
原子核(プロトン)の核スピンの配向により、オルト(ortho)とパラ(para)の2種類の異性体が存在。
オルト水素は、互いの原子核のスピンの向きが平行、パラ水素ではスピンの向きが反平行。
この2つは、化学的性質に違いがないが、物理的性質(比熱や熱伝導率など)がかなり異なる。
これは内部エネルギーにある差によるもの、パラ水素側が低い。
統計的な重みが大きいほうをオルト。
「水素のボイル・オフ問題」常温以上では、オルト水素とパラ水素の存在比はおよそ3:1、
低温になるほどパラ水素の存在比が増し、絶対零度付近ではほぼ100パーセントパラ水素。ただし、
このオルト-パラ変換はスピン反転を伴うため、触媒を用いない場合極めて遅く、
触媒を用いずに水素を液化すると、
液化した後もオルト-パラ変換に伴い両者のエネルギー差に相当する熱が発生するため、
液化水素が気化してしまう。
オルト‐パラ変換を起こす触媒は、活性炭や鉄などの金属の一部、常磁性物質またはイオンなど。
「水素とほかの元素が化合した物質;水素化物」
水素は電気陰性度 electronegativity ;X が
2.2とアルカリ金属 alkali metals やアルカリ土類金属 alkaline earth metals よりも高く
ハロゲン halogens よりも小さい値であり、酸化剤としても還元剤としても働く。
このため非金属元素とも金属元素とも親和しやすい。
水素と酸素が化合するときには還元剤として働き、爆発的な燃焼とともに水H2Oを生じる。
ナトリウムと水素との反応では酸化剤として働き、水素化ナトリウムNaHを生じる。
水素化物の結合は、
イオン結合型 ionic bond ・
共有結合型 covalent bond 、
パラジウム水素化物などの侵入型固溶体(侵入型化合物interstitial alloy)3種類の形態。
イオン結合型の化合物の中では、水素はH−イオン Hydrogen anion, H- (ヒドリドイオン)として存在。
共有結合型は電気陰性度が高いPブロック元素と電子を共有して化合。
侵入型固溶体は一種の合金であり、水素原子は金属原子の隙間にはまり込むように存在。このため、
容易かつ可逆的に水素を吸収・放出することができ、水素吸蔵合金に利用。
高性能な水素吸蔵合金の中には、水素原子の密度が液体水素のそれに匹敵、上回るものもある。
より電気陰性度の大きい元素との化合物では水素はH+イオンとなる。
水中で水素イオンを生じる物質が狭義の酸。
水溶液中では水素イオンは、H+(hydron)ではなく、
水分子と結合してH3O+( oxonium ion ) として振る舞う。
水素は、炭素と結合することで、さまざまな有機化合物を形成。
ほとんどすべての有機化合物は構成原子に水素を含む。
分子構造の研究に非常によく利用される核磁気共鳴分光法(NMR)、1Hを用いた方法は代表的。
1Hはすべての核種の中で最も強い特異吸収を示すうえ、
水素はほとんどすべての有機化合物に含まれることもあり、NMRにおいて利用。
周囲の原子の電子から影響を受ける結果、吸収される周波数が変化する(化学シフト)ため、
原子の相対位置を推測可能。
水素のイオンには、陽イオンの水素イオン(hydron)と、
陰イオンの水素化物イオン(hydride)存在。
1H+はproton(陽子)そのものであるが、一般に水素は同位体混合物なので、
水素の陽イオンに対する呼称としてはhydronが正確( H+、D+、T+の総称)。しかし、
化学の領域において単に「proton」と呼ぶ際は水素イオンを指し示す。
水素イオンの濃度[H+]は酸性度を定量的に表す指標として用い、
mol/L単位で表した水素イオンの濃度の数値の対数に負号をつけた値を水素イオン指数(pH)で表す。
水中の[H+]濃度は1から10−14mol/L程度の広い範囲を取り、pHでは0 – 14 程度。
常温で中性の水には約10−7mol/Lの水素イオンが存在し、pHは約7。
H+であれ D+であれ、hydronは電子殻を持たないむき出しの原子核であるため、
化学的にはファンデルワールス半径を持たない正の点電荷のように振る舞う。
通常は単独で存在せず、溶媒などほかの分子の電子殻と結合したhydronium ionとして存在。
水素のイオン化エネルギーは1131 kJ/mol、
遊離状態の水素イオンの水和エネルギーは1091 kJ/molと見積もり、
これは高い電子密度に起因 水分子との高い親和力を示す。
H+(g)⟶rmH+(aq)
極性溶媒中では、水、アルコール、エーテルなどの酸素原子の電子殻と結合している場合が多いため、oxonium ionと呼ばれることも多い。
あるいは超強酸など極限状態においては単独で挙動するprotonも観測。
また、Svante August Arrhenius1859 – 1927 Swedish scientist. ) の定義ではhydronは酸の本体。
化学記号H− hydride, hydrogen anionは、
アルカリ金属、アルカリ土類金属あるいは第13族、14族元素(共有結合性が強い)などの、
電気的に陽性な元素の水素化物が電離する時に生成する水素の陰イオン。
hydrideはK殻が閉殻した電子配置を持ちヘリウムと等電子的であるために、
一定の大きさを持ったイオンとして振る舞う点でhydron(水素cation;positive ion)とは異なる。
実際、hydrideはフッ素アニオンよりもイオン半径が大きいように振る舞う。
hydrideはきわめて弱い酸でもある水素分子(pKa=35)の共役塩基で、強塩基として振る舞う。
hydrideは塩基として作用する場合と還元剤として作用する場合がある。
これを hydride reduction ヒドリド還元というが、
それは金属と還元を受ける化合物との組み合わせにより変化。
hydrideの標準酸化還元電位は−2.25Vと見積もられている。
H2(g) +2e−⟶2H−(aq)
hydrideの発生源は、NaBH4やLiAlH4(通称LAH)。
これらの化合物のBH4−やAlH4−からはH−が脱離。
この反応は有機合成時に非常に便利、炭素間二重結合に対して反マルコフニコフ付加を施したい時に有効。
「水素生体研究」
(1975)Doleらは水素ガスが動物の皮膚腫瘍を退縮する研究結果を『サイエンス』に。
(2001)肝臓に慢性の炎症を持つマウスでの高圧水素の抗炎症作用は、に報告.
水素ガスを含む吸気として、
飽和潜水用のガス水素50 %、ヘリウム49 %、酸素1 %用の混合気が用いられており、
水素に起因する毒性や安全性の問題は見られていない。
ボストン小児病院、ハーバード大学医学部も、
水素ガスの吸入による細胞障害、組織障害のような有害事象はないことが報告、
名古屋大学医学部産婦人科、香川大学医学部産婦人科も、水素の摂取による毒性や催奇性はないと報告。
ただし、水素は爆発性を有する気体であり、爆発濃度においては静電気のような微弱なエネルギーで爆発。
従って、水素ガス吸入療法においては、
爆発限界濃度以下(10 %以下)の水素ガスを発生させる水素ガス吸入機を用いることが重要、
市販の水素ガス吸入機の安全性について警鐘を鳴らす論文(2019)発表。
日本における水素の医療利用の研究は、
(2003)ヒドロキシルラジカルによる水素分子の水素引き抜き反応によって、
種々の酸化ストレスに起因する疾病を予防または改善報告。
(2005)ラットの酸化剤誘発モデルに対する水素水の抗酸化効果報告。
日本医科大学(2007)、慶應義塾大学(2012)心停止のラットでの治療モデルを確立。
(2015)慶應義塾大学先導研究センター内に水素ガス治療開発センターが開設。
心肺停止時の水素ガスの吸入は先進医療Bに認定され、研究が進められている。
(2016) 心停止の際の脳・心臓の臓器障害抑制のヒトを対象とした研究公表
、5人中4人が90日後には普通の生活に戻った。
心停止の影響によって寝たきりとなる、言葉がうまく話せなくなるといった後遺症を
抑制するための医療現場への導入が目標。
αグルコシダーゼ阻害剤である糖尿病治療薬のアカルボースを服用すると炭水化物の吸収が抑制され、
大腸の腸内細菌により水素などが発生。
アカルボースの服用が心血管事故を抑制する可能性があり、
この原因として高血糖の抑制に加えて、呼気中に水素ガスの増加が認められ、
この増加した水素の抗酸化作用で心血管事故を抑制するメカニズム想定。
水素と水素が水に溶存した水素水の研究は、臨床試験も年々増加。
水素は従来の医薬品とは異なり、病気の根源である酸化ストレスを抑制し広範囲の疾病に対する改善効果を有する 故 疾病に対する「ワイドスペクトラム分子」の可能性。
と たのしい演劇の日々
水素 hydrogen、原子番号 atomic number 1の元素 元素記号は element symbol H。
原子量 relative atomic mass;Ar(H) 1.00794 非金属元素 nonmetal 。
中国語ではその気体としての軽さから「軽」の旁を用いて「氫」拼音: qīng
陽子1つと電子1つからなるシンプルな構造ゆえ、
原子構造論の発展において水素原子は中心的な役割を果たしてきた。
量子力学の入門として、水素原子や水素様分子をまず取り扱う教科書がほとんど。
元素およびガス状分子の中でもっとも軽く、地球上では水や有機化合物の構成要素として存在。
宇宙でもっとも豊富に存在する元素、珪素量を106とした際の比率は2.79×10の10乗
(ダークマターとダークエネルギーを除き)宇宙の質量の4分の3を占め、総量数比で全原子の90 %以上。
これらのほとんどは星間ガスや銀河間ガス、恒星、木星型惑星の構成物として存在。
「宇宙の晴れ上がり」
水素原子は宇宙が誕生してから約38万年後に初めて生成したとす。
それまでは陽子と電子がバラバラのプラズマ状態で光は宇宙空間を直進できなかった、
電子と陽子が結合することにより宇宙空間に散乱されずに進めるようになった。 宇宙における主系列星のエネルギー放射のほとんどはプラズマとなった
4個の水素原子核がヘリウムへ核融合する反応によるもの、比較的軽い星は陽子-陽子連鎖反応、
重い星はCNOサイクル過程を経てエネルギーを発生。
水素原子はいずれの核融合反応においてもこれを起こす担い手。
太陽の組成に占める水素の割合は約73 %。
地球表面の元素数では酸素・珪素に次いで3番目に多いが、
水素は質量が小さいため、質量パーセントで表すクラーク数では9番目。
地球表面の元素数ではほとんどは海水の状態で存在、
単体の水素分子状態では天然ガスの中にわずかに含まれる程度。
海水における推定存在度は1 Lあたりに108 g、地球の地殻における推定存在度は1 kgあたり1.4 g、
乾燥大気における構成比は0.55ppm。
宇宙空間に散逸する地球の大気は少ないが、それでも1秒あたり水素が3 kg、
ヘリウムが50 gずつ放出されている。
ジーンズエスケープ(大気が薄く原子や分子の速度が減速されずに宇宙へ飛び出す)や、
イオン状態の荷電粒子が地球磁場に沿って脱出。なお、
ハイドロダイナミックエスケープ(加熱された粒子がまとまって流出する)や
スパッタリング(太陽風が持ち去る)は現在の地球では起きていないが、
地球誕生直後はこの作用によって水素が大量に散逸。
固有磁場を持たない金星は、現在でもハイドロダイナミックエスケープやスパッタリングが続き、
地表には比較的重いため残った酸素や炭素が作る二酸化炭素が大気のほとんどを占め、
水がない非常に乾燥した状態。火星も軽い水素を中心に散逸し、
かろうじて氷となった水が極部分の土中に残る。
水素の同位体
天然水素は、
水素(軽水素、 protium )1H 質量数が1(原子核が陽子1つのみ)、
重水素 2H ( deuterium 略号D)質量数2(原子核が陽子1つと中性子1つ)、
三重水素 3H ( tritium 略号T);質量数が3(原子核が陽子1つと中性子2つ)の3つの同位体が知られている。
その他には非常に不安定な核種(4Hから7H)が実験室で合成されているが、天然には全く存在しない。
もっとも軽い 1H (1つの陽子と1つの電子のみ)、原子の中で中性子を持たない核種の1つ。
存在が確認されている中でほかに中性子を持たない核種はリチウム3 (Lithium-3・3Li )のみ。
それぞれの同位体は質量の差が2倍、3倍となり、性質の違いも大きい。
D2はH2よりも融点や沸点が高くなり、溶融潜熱は倍近くに、蒸気圧は10分の1近くとなる。
より重い同位体は水素4から水素7までが確認されている。
もっとも重い水素7(原子核は陽子1、中性子6)はヘリウム8を軽水素に衝突させることで合成。
質量数が4以上のものは寿命がきわめて短く、水素7では半減期が23 ys(= 2.3×10−23 s)。
水素の同位体は、それぞれの特徴を有効に活かした使い方をされる。
重水素は原子核反応での用途で、中性子の減速に使用され、
化学や生物学では同位体効果の研究、医療では診断薬の追跡に使用。
三重水素は原子炉内で生成され、水素爆弾の反応物質や核融合燃料、
放射性を利用したバイオテクノロジー分野でのトレーサーや発光塗料の励起源として使用。
[水素分子]は、
常温常圧では無色無臭の気体として存在、分子式 H2で表される単体。
分子量2.01588、融点 −259.2 °C(常圧)、沸点 −252.9 °C(常圧)、密度 0.0899 g/L、
比重 0.0695(空気を 1 として)、臨界圧力 12.80 気圧、水への溶解度 0.021 mL/mL(0 °C)。
最も軽い気体。原子間距離は 74 pm、結合エネルギーはおよそ 435 kJ/mol。
水素分子は常温では安定で、フッ素以外とは化学反応をまったく起こさない。
しかし たとえば光がある状態では塩素と激しい反応を起こす。
水素と酸素を混合したものに火をつけると起きる激しい爆発(水素爆鳴気)は、
混合比下限は4.65 %、上限は93.3 %、空気との混合では4.1 – 74.2 %、
これはアセチレンに次ぐ広い爆発限界の範囲。
ガス密度が低い水素は速い速度で拡散、燃焼時の伝播も速い。そのため、ガス漏れを起こしやすい。
原子径の小ささから、金属材料に侵入し機械的特性を低下させる(水素脆化)。
これは高温高圧環境下で顕著、封入容器の材質注意必要。
−250 °C以下で液化させると体積は 800分の1となり、さらに軽いため低温貯蔵性に優。
ガス惑星の内部など非常に高い圧力下では性質が変わり、液状の金属になる。
逆に宇宙空間など非常に圧力が低い場合、H2+やH3+、単独の水素原子などの状態も観測されている。
H2分子形状の雲は星の形成などに関係があり、新生惑星や衛星の観測に。
水素分子は、
原子核(プロトン)の核スピンの配向により、オルト(ortho)とパラ(para)の2種類の異性体が存在。
オルト水素は、互いの原子核のスピンの向きが平行、パラ水素ではスピンの向きが反平行。
この2つは、化学的性質に違いがないが、物理的性質(比熱や熱伝導率など)がかなり異なる。
これは内部エネルギーにある差によるもの、パラ水素側が低い。
統計的な重みが大きいほうをオルト。
「水素のボイル・オフ問題」常温以上では、オルト水素とパラ水素の存在比はおよそ3:1、
低温になるほどパラ水素の存在比が増し、絶対零度付近ではほぼ100パーセントパラ水素。ただし、
このオルト-パラ変換はスピン反転を伴うため、触媒を用いない場合極めて遅く、
触媒を用いずに水素を液化すると、
液化した後もオルト-パラ変換に伴い両者のエネルギー差に相当する熱が発生するため、
液化水素が気化してしまう。
オルト‐パラ変換を起こす触媒は、活性炭や鉄などの金属の一部、常磁性物質またはイオンなど。
「水素とほかの元素が化合した物質;水素化物」
水素は電気陰性度 electronegativity ;X が
2.2とアルカリ金属 alkali metals やアルカリ土類金属 alkaline earth metals よりも高く
ハロゲン halogens よりも小さい値であり、酸化剤としても還元剤としても働く。
このため非金属元素とも金属元素とも親和しやすい。
水素と酸素が化合するときには還元剤として働き、爆発的な燃焼とともに水H2Oを生じる。
ナトリウムと水素との反応では酸化剤として働き、水素化ナトリウムNaHを生じる。
水素化物の結合は、
イオン結合型 ionic bond ・
共有結合型 covalent bond 、
パラジウム水素化物などの侵入型固溶体(侵入型化合物interstitial alloy)3種類の形態。
イオン結合型の化合物の中では、水素はH−イオン Hydrogen anion, H- (ヒドリドイオン)として存在。
共有結合型は電気陰性度が高いPブロック元素と電子を共有して化合。
侵入型固溶体は一種の合金であり、水素原子は金属原子の隙間にはまり込むように存在。このため、
容易かつ可逆的に水素を吸収・放出することができ、水素吸蔵合金に利用。
高性能な水素吸蔵合金の中には、水素原子の密度が液体水素のそれに匹敵、上回るものもある。
より電気陰性度の大きい元素との化合物では水素はH+イオンとなる。
水中で水素イオンを生じる物質が狭義の酸。
水溶液中では水素イオンは、H+(hydron)ではなく、
水分子と結合してH3O+( oxonium ion ) として振る舞う。
水素は、炭素と結合することで、さまざまな有機化合物を形成。
ほとんどすべての有機化合物は構成原子に水素を含む。
分子構造の研究に非常によく利用される核磁気共鳴分光法(NMR)、1Hを用いた方法は代表的。
1Hはすべての核種の中で最も強い特異吸収を示すうえ、
水素はほとんどすべての有機化合物に含まれることもあり、NMRにおいて利用。
周囲の原子の電子から影響を受ける結果、吸収される周波数が変化する(化学シフト)ため、
原子の相対位置を推測可能。
水素のイオンには、陽イオンの水素イオン(hydron)と、
陰イオンの水素化物イオン(hydride)存在。
1H+はproton(陽子)そのものであるが、一般に水素は同位体混合物なので、
水素の陽イオンに対する呼称としてはhydronが正確( H+、D+、T+の総称)。しかし、
化学の領域において単に「proton」と呼ぶ際は水素イオンを指し示す。
水素イオンの濃度[H+]は酸性度を定量的に表す指標として用い、
mol/L単位で表した水素イオンの濃度の数値の対数に負号をつけた値を水素イオン指数(pH)で表す。
水中の[H+]濃度は1から10−14mol/L程度の広い範囲を取り、pHでは0 – 14 程度。
常温で中性の水には約10−7mol/Lの水素イオンが存在し、pHは約7。
H+であれ D+であれ、hydronは電子殻を持たないむき出しの原子核であるため、
化学的にはファンデルワールス半径を持たない正の点電荷のように振る舞う。
通常は単独で存在せず、溶媒などほかの分子の電子殻と結合したhydronium ionとして存在。
水素のイオン化エネルギーは1131 kJ/mol、
遊離状態の水素イオンの水和エネルギーは1091 kJ/molと見積もり、
これは高い電子密度に起因 水分子との高い親和力を示す。
H+(g)⟶rmH+(aq)
極性溶媒中では、水、アルコール、エーテルなどの酸素原子の電子殻と結合している場合が多いため、oxonium ionと呼ばれることも多い。
あるいは超強酸など極限状態においては単独で挙動するprotonも観測。
また、Svante August Arrhenius1859 – 1927 Swedish scientist. ) の定義ではhydronは酸の本体。
化学記号H− hydride, hydrogen anionは、
アルカリ金属、アルカリ土類金属あるいは第13族、14族元素(共有結合性が強い)などの、
電気的に陽性な元素の水素化物が電離する時に生成する水素の陰イオン。
hydrideはK殻が閉殻した電子配置を持ちヘリウムと等電子的であるために、
一定の大きさを持ったイオンとして振る舞う点でhydron(水素cation;positive ion)とは異なる。
実際、hydrideはフッ素アニオンよりもイオン半径が大きいように振る舞う。
hydrideはきわめて弱い酸でもある水素分子(pKa=35)の共役塩基で、強塩基として振る舞う。
hydrideは塩基として作用する場合と還元剤として作用する場合がある。
これを hydride reduction ヒドリド還元というが、
それは金属と還元を受ける化合物との組み合わせにより変化。
hydrideの標準酸化還元電位は−2.25Vと見積もられている。
H2(g) +2e−⟶2H−(aq)
hydrideの発生源は、NaBH4やLiAlH4(通称LAH)。
これらの化合物のBH4−やAlH4−からはH−が脱離。
この反応は有機合成時に非常に便利、炭素間二重結合に対して反マルコフニコフ付加を施したい時に有効。
「水素生体研究」
(1975)Doleらは水素ガスが動物の皮膚腫瘍を退縮する研究結果を『サイエンス』に。
(2001)肝臓に慢性の炎症を持つマウスでの高圧水素の抗炎症作用は、に報告.
水素ガスを含む吸気として、
飽和潜水用のガス水素50 %、ヘリウム49 %、酸素1 %用の混合気が用いられており、
水素に起因する毒性や安全性の問題は見られていない。
ボストン小児病院、ハーバード大学医学部も、
水素ガスの吸入による細胞障害、組織障害のような有害事象はないことが報告、
名古屋大学医学部産婦人科、香川大学医学部産婦人科も、水素の摂取による毒性や催奇性はないと報告。
ただし、水素は爆発性を有する気体であり、爆発濃度においては静電気のような微弱なエネルギーで爆発。
従って、水素ガス吸入療法においては、
爆発限界濃度以下(10 %以下)の水素ガスを発生させる水素ガス吸入機を用いることが重要、
市販の水素ガス吸入機の安全性について警鐘を鳴らす論文(2019)発表。
日本における水素の医療利用の研究は、
(2003)ヒドロキシルラジカルによる水素分子の水素引き抜き反応によって、
種々の酸化ストレスに起因する疾病を予防または改善報告。
(2005)ラットの酸化剤誘発モデルに対する水素水の抗酸化効果報告。
日本医科大学(2007)、慶應義塾大学(2012)心停止のラットでの治療モデルを確立。
(2015)慶應義塾大学先導研究センター内に水素ガス治療開発センターが開設。
心肺停止時の水素ガスの吸入は先進医療Bに認定され、研究が進められている。
(2016) 心停止の際の脳・心臓の臓器障害抑制のヒトを対象とした研究公表
、5人中4人が90日後には普通の生活に戻った。
心停止の影響によって寝たきりとなる、言葉がうまく話せなくなるといった後遺症を
抑制するための医療現場への導入が目標。
αグルコシダーゼ阻害剤である糖尿病治療薬のアカルボースを服用すると炭水化物の吸収が抑制され、
大腸の腸内細菌により水素などが発生。
アカルボースの服用が心血管事故を抑制する可能性があり、
この原因として高血糖の抑制に加えて、呼気中に水素ガスの増加が認められ、
この増加した水素の抗酸化作用で心血管事故を抑制するメカニズム想定。
水素と水素が水に溶存した水素水の研究は、臨床試験も年々増加。
水素は従来の医薬品とは異なり、病気の根源である酸化ストレスを抑制し広範囲の疾病に対する改善効果を有する 故 疾病に対する「ワイドスペクトラム分子」の可能性。
と たのしい演劇の日々
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