2022年09月17日
Alchemy of Actor epigenetics 08
Genomic iprtinting
ヒトをはじめとする哺乳類はすべて父と母に由来する一対のゲノムを持つ。
従って、常染色体上のすべての遺伝子座に一対の対立遺伝子があり、
通常それらはともに発現し個体の発生や生体の営みを調節す。
正常発生には父母由来の両方のゲノムが必須。
哺乳類の常染色体には一方の対立遺伝子だけが発現する遺伝子座があり、
これが父母由来ゲノム間の機能的な差をもたらしている。
精子や卵子の形成過程において何らかの形で遺伝子に「しるし」あるいは「記憶」が刷り込まれ、
そのしるしにしたがって子での遺伝子発現が生じる。
インプリンティングは遺伝情報に恒久的変化を与えず、
世代ごとに新たにプログラムされるので、遺伝とは異なるepigeneticな現象。
自然界では(鳥 爬虫類を含む脊椎動物)で単為発生がみられ、
形態的にも機能的にも正常な個体を作るが、哺乳類にはその例がない。
両親由来ゲノムには違いが刷り込まれている。
(1)単為発生細胞を含むキメラは正常胚より30〜50%程度小さく、
雄核発生細胞を含むキメラは同程度大きい、
(2)単為発生細胞は生殖細胞、脳、心、腎、脾などで高い寄与率を示すが、
骨格筋、肝、膵には分化できない、
(3)雄核発生細胞は骨格筋、心、骨などに寄与するが脳での寄与率は低い。
このように父・母由来のゲノムは胚の成長や各細胞系列の分化・増殖を調節している。
ノックアウトマウスの実験(1991)で
インプリンティングを受ける遺伝子 Igfz/インスリン様成長因子II
の最初の例 偶然発見。
Igfz は父親由来の時だけ発現するインプリンティング遺伝子で 第7染色体遠位部にある。
この発見以来、ヒトとマウスで次々とインプリンティング遺伝子が同定されている。
インプリンティングを受ける遺伝子のどちらの対立遺伝子が発現するかは遺伝子ごとに決まっている。
しかし 常に対立遺伝子特異的な発現を示すわけではなく、
組織や発生段階に依存したインプリンティングもある。
インプリンティング遺伝子の共通点。
(1)ゲノム上でクラスターを形成する傾向がある。
(2)遺伝子産物の機能は成長因子、ホルモン、膜表面受容体、転写因子、酵素など様々だが、
細胞の増殖や成長を促進するものについては父性対立遺伝子、
増殖を阻害する遺伝子は母性対立遺伝子が発現する傾向にある。
(3)いくつかの例外を除いてヒト・マウス間でインプリンティングが保存されている
インプリンティングを受ける染色体領域 or 遺伝子は、
配偶子形成/gametogenesis 過程で
精子(父)由来か 卵子(母)由来かの「しるし=インプリント(imprint)」を刷り込まれる。
このインプリントの違いは受精を経て、同一の核に入っても維持され、
さらに複製・細胞分裂を繰り返しても消失しない。
そして体細胞ではインプリントにしたがって父性または母性対立遺伝子特異的な発現が起こる。
インプリンティングのサイクル
DNA配列に変化を与えないエピジェネティックな機構の代表 DNAメチル化/DNAmethylation。
シトシンのメチル化は哺乳類ゲノムDNAの唯一の生理的修飾で、
DNA(シトシン‐5)‐メチルトランスフェラーゼが
2塩基配列CpGのシトシンを認識して5‐メチルシトシンを生成。
CpGに相補的な配列はCpGであるから、2本鎖DNAは両鎖にメチル化の標的をもつ。
哺乳類は3種類のDNA(シトシン‐5)‐メチルトランスフェラーゼを持つ。
そのうちDnmt1メチルトランスフェラーゼは主に体細胞で発現、
一方の鎖がメチル化されたヘミメチル化/hemimethylated CpGを優先的に認識し、
相補鎖上のシトシンを維持メチル化/maintenance methylation。
この酵素の活性により、哺乳類の体細胞はDNA複製を経て同じメチル化状態を維持。
インプリンティング遺伝子のメチル化状態は、父性・母性対立遺伝子の間に差が見られる。
Dnmt1をノックアウトしたマウスの体細胞で、3つの遺伝子のインプリンティングが変化。
DNAメチル化は
ヒストン蛋白質の修飾などのエピジェネティックな機構と協調してインプリンティングを制御する。
始原生殖細胞(PGC)
精子/卵子を作りだす元になる細胞、発生の初期に体細胞系列とは別に分化。
この細胞が腸間膜を移動し 、胎仔精巣や卵巣にはいって、分化過程を経て精子や卵子になる。
インプリンティングの最初の段階は、
雌雄の配偶子形成過程で父由来、母由来のインプリントが刷り込まれる。
配偶子形成途中の生殖細胞が父型・母型のインプリントを獲得しているかどうかは、
核移植や顕微受精の技術で発生能を調べると推定できる。
母型インプリントの大部分が卵形成過程のうち第一減数分裂前期の卵成長期(一次卵母細胞)に獲得される。父型インプリントは精子形成過程の減数分裂以前に刷り込まれる。
一方、初期の発生過程で生殖系列に入った細胞は、
新たな刷り込みが起こる前に両親由来のインプリントが消去される。
始原生殖細胞は8.0〜8.5日齢胚の移動期の始原生殖細胞から樹立されたEGembryonic germ細胞は、
正常胚とキメラを形成する能力を持ち、移動期の始原生殖細胞はインプリントを保持。
しかし11.5~12.5日齢胚の始原生殖細胞から樹立したEG細胞は
、キメラ形成実験にて異常な表現型を示し、すでにインプリントの消去 or 書き換えが始まっている。
始原生殖細胞が生殖隆起に達し、性分化が始まるころには、新たなサイクルに入る。
ノックアウトマウスの解析結果(2004)から、
Dnmt3aメチルトランスフェラーゼ酵素が
雌雄の配偶子形成過程で父親型・母親型のインプリントを刷り込んでいること発見。
Dnmt3aは非メチル化状態のDNAに新たなメチル化を導入活性化、
どうして雌雄の配偶子形成過程で異なるインプリントが生じるのか
どのようにして異なる遺伝子群がメチル化されるのかは未だ不明。
と たのしい演劇の日々
ヒトをはじめとする哺乳類はすべて父と母に由来する一対のゲノムを持つ。
従って、常染色体上のすべての遺伝子座に一対の対立遺伝子があり、
通常それらはともに発現し個体の発生や生体の営みを調節す。
正常発生には父母由来の両方のゲノムが必須。
哺乳類の常染色体には一方の対立遺伝子だけが発現する遺伝子座があり、
これが父母由来ゲノム間の機能的な差をもたらしている。
精子や卵子の形成過程において何らかの形で遺伝子に「しるし」あるいは「記憶」が刷り込まれ、
そのしるしにしたがって子での遺伝子発現が生じる。
インプリンティングは遺伝情報に恒久的変化を与えず、
世代ごとに新たにプログラムされるので、遺伝とは異なるepigeneticな現象。
自然界では(鳥 爬虫類を含む脊椎動物)で単為発生がみられ、
形態的にも機能的にも正常な個体を作るが、哺乳類にはその例がない。
両親由来ゲノムには違いが刷り込まれている。
(1)単為発生細胞を含むキメラは正常胚より30〜50%程度小さく、
雄核発生細胞を含むキメラは同程度大きい、
(2)単為発生細胞は生殖細胞、脳、心、腎、脾などで高い寄与率を示すが、
骨格筋、肝、膵には分化できない、
(3)雄核発生細胞は骨格筋、心、骨などに寄与するが脳での寄与率は低い。
このように父・母由来のゲノムは胚の成長や各細胞系列の分化・増殖を調節している。
ノックアウトマウスの実験(1991)で
インプリンティングを受ける遺伝子 Igfz/インスリン様成長因子II
の最初の例 偶然発見。
Igfz は父親由来の時だけ発現するインプリンティング遺伝子で 第7染色体遠位部にある。
この発見以来、ヒトとマウスで次々とインプリンティング遺伝子が同定されている。
インプリンティングを受ける遺伝子のどちらの対立遺伝子が発現するかは遺伝子ごとに決まっている。
しかし 常に対立遺伝子特異的な発現を示すわけではなく、
組織や発生段階に依存したインプリンティングもある。
インプリンティング遺伝子の共通点。
(1)ゲノム上でクラスターを形成する傾向がある。
(2)遺伝子産物の機能は成長因子、ホルモン、膜表面受容体、転写因子、酵素など様々だが、
細胞の増殖や成長を促進するものについては父性対立遺伝子、
増殖を阻害する遺伝子は母性対立遺伝子が発現する傾向にある。
(3)いくつかの例外を除いてヒト・マウス間でインプリンティングが保存されている
インプリンティングを受ける染色体領域 or 遺伝子は、
配偶子形成/gametogenesis 過程で
精子(父)由来か 卵子(母)由来かの「しるし=インプリント(imprint)」を刷り込まれる。
このインプリントの違いは受精を経て、同一の核に入っても維持され、
さらに複製・細胞分裂を繰り返しても消失しない。
そして体細胞ではインプリントにしたがって父性または母性対立遺伝子特異的な発現が起こる。
インプリンティングのサイクル
DNA配列に変化を与えないエピジェネティックな機構の代表 DNAメチル化/DNAmethylation。
シトシンのメチル化は哺乳類ゲノムDNAの唯一の生理的修飾で、
DNA(シトシン‐5)‐メチルトランスフェラーゼが
2塩基配列CpGのシトシンを認識して5‐メチルシトシンを生成。
CpGに相補的な配列はCpGであるから、2本鎖DNAは両鎖にメチル化の標的をもつ。
哺乳類は3種類のDNA(シトシン‐5)‐メチルトランスフェラーゼを持つ。
そのうちDnmt1メチルトランスフェラーゼは主に体細胞で発現、
一方の鎖がメチル化されたヘミメチル化/hemimethylated CpGを優先的に認識し、
相補鎖上のシトシンを維持メチル化/maintenance methylation。
この酵素の活性により、哺乳類の体細胞はDNA複製を経て同じメチル化状態を維持。
インプリンティング遺伝子のメチル化状態は、父性・母性対立遺伝子の間に差が見られる。
Dnmt1をノックアウトしたマウスの体細胞で、3つの遺伝子のインプリンティングが変化。
DNAメチル化は
ヒストン蛋白質の修飾などのエピジェネティックな機構と協調してインプリンティングを制御する。
始原生殖細胞(PGC)
精子/卵子を作りだす元になる細胞、発生の初期に体細胞系列とは別に分化。
この細胞が腸間膜を移動し 、胎仔精巣や卵巣にはいって、分化過程を経て精子や卵子になる。
インプリンティングの最初の段階は、
雌雄の配偶子形成過程で父由来、母由来のインプリントが刷り込まれる。
配偶子形成途中の生殖細胞が父型・母型のインプリントを獲得しているかどうかは、
核移植や顕微受精の技術で発生能を調べると推定できる。
母型インプリントの大部分が卵形成過程のうち第一減数分裂前期の卵成長期(一次卵母細胞)に獲得される。父型インプリントは精子形成過程の減数分裂以前に刷り込まれる。
一方、初期の発生過程で生殖系列に入った細胞は、
新たな刷り込みが起こる前に両親由来のインプリントが消去される。
始原生殖細胞は8.0〜8.5日齢胚の移動期の始原生殖細胞から樹立されたEGembryonic germ細胞は、
正常胚とキメラを形成する能力を持ち、移動期の始原生殖細胞はインプリントを保持。
しかし11.5~12.5日齢胚の始原生殖細胞から樹立したEG細胞は
、キメラ形成実験にて異常な表現型を示し、すでにインプリントの消去 or 書き換えが始まっている。
始原生殖細胞が生殖隆起に達し、性分化が始まるころには、新たなサイクルに入る。
ノックアウトマウスの解析結果(2004)から、
Dnmt3aメチルトランスフェラーゼ酵素が
雌雄の配偶子形成過程で父親型・母親型のインプリントを刷り込んでいること発見。
Dnmt3aは非メチル化状態のDNAに新たなメチル化を導入活性化、
どうして雌雄の配偶子形成過程で異なるインプリントが生じるのか
どのようにして異なる遺伝子群がメチル化されるのかは未だ不明。
と たのしい演劇の日々
【このカテゴリーの最新記事】
-
no image
-
no image
-
no image
-
no image
-
no image