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2020年09月06日

用水路の暗渠と雨乞いの石碑(旧浦和市)

今回は川沿いをウォーキング中に見つけた石碑の話です。

<石碑>
sn478ankyo (4).jpg
これはなんの石碑だろう?

sn478ankyo (5).jpg
なるほど

ちょっと冒頭を抜粋させて頂きます
『この碑は、かつてこの地域が農業盛んであった時代のもので、水の恵みを預かる様、雨乞い祈願したものと云い伝えられてきました』

雨乞い祈願
の石碑だったのですね

いまではそんな雰囲気は漂いませんが、この付近は江戸時代の半ば頃までは低湿地、その後は水路の整備で沼地の水が抜かれ、水田へと姿を変えました。これにより食べ物の生産性は飛躍的に向上することになりますが、雨不足は豊かになったはずの暮らしにそのまま直撃する深刻な問題です。場合によっては、致命的な被害となったことでしょう。

天気は人の力ではどうしようもないことです。個々の祈りが集まり、形となったのがこの石碑なのでしょう。


ところで
もはや周囲に水田はありません。でも水路は残されています。もっとも、地表からは姿を消しましたが

<鴻沼川の旧流路>こうぬまがわ
sn478ankyo (12).jpg
さきほどの石碑のすぐそばです。立ち入り禁止のこの空き地は、かつての川跡です。川の名は鴻沼川。現在のさいたま市を流れるこの川は、自然の河川ではなく、江戸時代の新田開発の際に開削された水路、いわば人口の川です。ながらくここを流れていましたが、のちに流路変更されました。

<鴻沼川の旧流路の暗渠>
sn478ankyo (13).jpg
道を挟んだこちらもかつての鴻沼川の川跡です。地下からはゴーゴーという水の音が聞こえます。いわゆる暗渠ですね。

<鴻沼川東縁の暗渠>
sn478ankyo (11).jpg
こちらは石碑の真ん前の道路です。左手のアパートの脇に石碑があります。ここもただの道ではなく、いわゆる暗渠。正確に言うと、一番左手は歩道、真ん中が水路だった暗渠、右手は水路沿いの道です。

sn478ankyo (9).jpg
鴻沼川の本流ではなく、同時期に設けられた鴻沼川東縁の暗渠です。道路ではないので、耐久性の問題から車止めが設けられています。水はいまでも地下を流れ、本流である鴻沼川へ合流します。

画像だけ見るとコンクリばかりですね。でもとらえ方によっては、ここは今でも水辺なのです。

sn478ankyo (6).jpg
都市開発が進み、水田の多くは姿を消し、現在でも我々の生活に役立っている水路まで、地上から姿を消しつつあります。水道の蛇口をひねれば、水は確保できるのですから、その存在を意識する機会は減りましたよね。石碑の説明文の最後には『いつの世も水を大切にする心は重要です』と記されています。水に不自由しないということが、実はとても大切なことなんだと、この石碑が伝えてくれているような気がしました。

<鴻沼川>
sn478ankyo (1).jpg
流路変更された現在の鴻沼川

以上です。
拙ブログに訪問頂き、ありがとうございました。

■訪問:雨乞いの石碑
[埼玉県さいたま市南区関]


---------(お勧め本)---------
静かなブームになりつつある『暗渠』に関する本のご紹介です。当ブログでは下記をお勧め致します。

暗渠パラダイス!(朝日新聞出版)
著者:高山英男/吉村生

はじめての暗渠散歩(ちくま文庫)
著者:本田創/山英男/吉村生/三土たつお

暗渠マニアック ! (柏書房)
著者:吉村生/山英男

※広告掲載期限切れのため書名のみ
タグ:暗渠 埼玉
posted by Isuke at 21:48| Comment(2) | TrackBack(0) | 川跡・暗渠
この記事へのコメント
高山さん
お勧め暗渠本の著者直々にコメント頂き恐縮です。

そうですね。当時の人たちの心境を、現代人の感覚でどの程度測ってよいものか分かりませんが、やはり「切羽詰まった思い」だったのではないでしょうか。自然を受け入れて暮らす。感謝の気持ちだけを取り上げれば美しい話ですが、恐れは勿論、怒りなどもあったような気がします。

拙ブログに訪問頂き、ありがとうございました。
Posted by Isuke at 2020年09月07日 21:40
拙著ご紹介いただきまして、どうもありがとうございます。

いつの間にかそのへんに転がされ、野ざらしになっていたんですね、この石碑。いつのまにか雨ごいの要らない社会になっていたんですね。
当時の雨ごいって、どれくらいのインパクト(雨を降らせたかどうかよりも、雨ごいした人々の満足度や心配解消度)があったんでしょうね。
そんな儀式の真ん中にこの柱があって、みんなの何年もの愛憎が塗りこめられているかと思うと、不思議な気持ちになります。
Posted by 高山英男 at 2020年09月07日 13:02
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