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2023年09月28日
Alchemy of Actor Biochemistry Hydrogen 水素
Alchemy of Actor Biochemistry Hydrogen
水素 hydrogen、原子番号 atomic number 1の元素 元素記号は element symbol H。
原子量 relative atomic mass;Ar(H) 1.00794 非金属元素 nonmetal 。
中国語ではその気体としての軽さから「軽」の旁を用いて「氫」拼音: qīng
陽子1つと電子1つからなるシンプルな構造ゆえ、
原子構造論の発展において水素原子は中心的な役割を果たしてきた。
量子力学の入門として、水素原子や水素様分子をまず取り扱う教科書がほとんど。
元素およびガス状分子の中でもっとも軽く、地球上では水や有機化合物の構成要素として存在。
宇宙でもっとも豊富に存在する元素、珪素量を106とした際の比率は2.79×10の10乗
(ダークマターとダークエネルギーを除き)宇宙の質量の4分の3を占め、総量数比で全原子の90 %以上。
これらのほとんどは星間ガスや銀河間ガス、恒星、木星型惑星の構成物として存在。
「宇宙の晴れ上がり」
水素原子は宇宙が誕生してから約38万年後に初めて生成したとす。
それまでは陽子と電子がバラバラのプラズマ状態で光は宇宙空間を直進できなかった、
電子と陽子が結合することにより宇宙空間に散乱されずに進めるようになった。 宇宙における主系列星のエネルギー放射のほとんどはプラズマとなった
4個の水素原子核がヘリウムへ核融合する反応によるもの、比較的軽い星は陽子-陽子連鎖反応、
重い星はCNOサイクル過程を経てエネルギーを発生。
水素原子はいずれの核融合反応においてもこれを起こす担い手。
太陽の組成に占める水素の割合は約73 %。
地球表面の元素数では酸素・珪素に次いで3番目に多いが、
水素は質量が小さいため、質量パーセントで表すクラーク数では9番目。
地球表面の元素数ではほとんどは海水の状態で存在、
単体の水素分子状態では天然ガスの中にわずかに含まれる程度。
海水における推定存在度は1 Lあたりに108 g、地球の地殻における推定存在度は1 kgあたり1.4 g、
乾燥大気における構成比は0.55ppm。
宇宙空間に散逸する地球の大気は少ないが、それでも1秒あたり水素が3 kg、
ヘリウムが50 gずつ放出されている。
ジーンズエスケープ(大気が薄く原子や分子の速度が減速されずに宇宙へ飛び出す)や、
イオン状態の荷電粒子が地球磁場に沿って脱出。なお、
ハイドロダイナミックエスケープ(加熱された粒子がまとまって流出する)や
スパッタリング(太陽風が持ち去る)は現在の地球では起きていないが、
地球誕生直後はこの作用によって水素が大量に散逸。
固有磁場を持たない金星は、現在でもハイドロダイナミックエスケープやスパッタリングが続き、
地表には比較的重いため残った酸素や炭素が作る二酸化炭素が大気のほとんどを占め、
水がない非常に乾燥した状態。火星も軽い水素を中心に散逸し、
かろうじて氷となった水が極部分の土中に残る。
水素の同位体
天然水素は、
水素(軽水素、 protium )1H 質量数が1(原子核が陽子1つのみ)、
重水素 2H ( deuterium 略号D)質量数2(原子核が陽子1つと中性子1つ)、
三重水素 3H ( tritium 略号T);質量数が3(原子核が陽子1つと中性子2つ)の3つの同位体が知られている。
その他には非常に不安定な核種(4Hから7H)が実験室で合成されているが、天然には全く存在しない。
もっとも軽い 1H (1つの陽子と1つの電子のみ)、原子の中で中性子を持たない核種の1つ。
存在が確認されている中でほかに中性子を持たない核種はリチウム3 (Lithium-3・3Li )のみ。
それぞれの同位体は質量の差が2倍、3倍となり、性質の違いも大きい。
D2はH2よりも融点や沸点が高くなり、溶融潜熱は倍近くに、蒸気圧は10分の1近くとなる。
より重い同位体は水素4から水素7までが確認されている。
もっとも重い水素7(原子核は陽子1、中性子6)はヘリウム8を軽水素に衝突させることで合成。
質量数が4以上のものは寿命がきわめて短く、水素7では半減期が23 ys(= 2.3×10−23 s)。
水素の同位体は、それぞれの特徴を有効に活かした使い方をされる。
重水素は原子核反応での用途で、中性子の減速に使用され、
化学や生物学では同位体効果の研究、医療では診断薬の追跡に使用。
三重水素は原子炉内で生成され、水素爆弾の反応物質や核融合燃料、
放射性を利用したバイオテクノロジー分野でのトレーサーや発光塗料の励起源として使用。
[水素分子]は、
常温常圧では無色無臭の気体として存在、分子式 H2で表される単体。
分子量2.01588、融点 −259.2 °C(常圧)、沸点 −252.9 °C(常圧)、密度 0.0899 g/L、
比重 0.0695(空気を 1 として)、臨界圧力 12.80 気圧、水への溶解度 0.021 mL/mL(0 °C)。
最も軽い気体。原子間距離は 74 pm、結合エネルギーはおよそ 435 kJ/mol。
水素分子は常温では安定で、フッ素以外とは化学反応をまったく起こさない。
しかし たとえば光がある状態では塩素と激しい反応を起こす。
水素と酸素を混合したものに火をつけると起きる激しい爆発(水素爆鳴気)は、
混合比下限は4.65 %、上限は93.3 %、空気との混合では4.1 – 74.2 %、
これはアセチレンに次ぐ広い爆発限界の範囲。
ガス密度が低い水素は速い速度で拡散、燃焼時の伝播も速い。そのため、ガス漏れを起こしやすい。
原子径の小ささから、金属材料に侵入し機械的特性を低下させる(水素脆化)。
これは高温高圧環境下で顕著、封入容器の材質注意必要。
−250 °C以下で液化させると体積は 800分の1となり、さらに軽いため低温貯蔵性に優。
ガス惑星の内部など非常に高い圧力下では性質が変わり、液状の金属になる。
逆に宇宙空間など非常に圧力が低い場合、H2+やH3+、単独の水素原子などの状態も観測されている。
H2分子形状の雲は星の形成などに関係があり、新生惑星や衛星の観測に。
水素分子は、
原子核(プロトン)の核スピンの配向により、オルト(ortho)とパラ(para)の2種類の異性体が存在。
オルト水素は、互いの原子核のスピンの向きが平行、パラ水素ではスピンの向きが反平行。
この2つは、化学的性質に違いがないが、物理的性質(比熱や熱伝導率など)がかなり異なる。
これは内部エネルギーにある差によるもの、パラ水素側が低い。
統計的な重みが大きいほうをオルト。
「水素のボイル・オフ問題」常温以上では、オルト水素とパラ水素の存在比はおよそ3:1、
低温になるほどパラ水素の存在比が増し、絶対零度付近ではほぼ100パーセントパラ水素。ただし、
このオルト-パラ変換はスピン反転を伴うため、触媒を用いない場合極めて遅く、
触媒を用いずに水素を液化すると、
液化した後もオルト-パラ変換に伴い両者のエネルギー差に相当する熱が発生するため、
液化水素が気化してしまう。
オルト‐パラ変換を起こす触媒は、活性炭や鉄などの金属の一部、常磁性物質またはイオンなど。
「水素とほかの元素が化合した物質;水素化物」
水素は電気陰性度 electronegativity ;X が
2.2とアルカリ金属 alkali metals やアルカリ土類金属 alkaline earth metals よりも高く
ハロゲン halogens よりも小さい値であり、酸化剤としても還元剤としても働く。
このため非金属元素とも金属元素とも親和しやすい。
水素と酸素が化合するときには還元剤として働き、爆発的な燃焼とともに水H2Oを生じる。
ナトリウムと水素との反応では酸化剤として働き、水素化ナトリウムNaHを生じる。
水素化物の結合は、
イオン結合型 ionic bond ・
共有結合型 covalent bond 、
パラジウム水素化物などの侵入型固溶体(侵入型化合物interstitial alloy)3種類の形態。
イオン結合型の化合物の中では、水素はH−イオン Hydrogen anion, H- (ヒドリドイオン)として存在。
共有結合型は電気陰性度が高いPブロック元素と電子を共有して化合。
侵入型固溶体は一種の合金であり、水素原子は金属原子の隙間にはまり込むように存在。このため、
容易かつ可逆的に水素を吸収・放出することができ、水素吸蔵合金に利用。
高性能な水素吸蔵合金の中には、水素原子の密度が液体水素のそれに匹敵、上回るものもある。
より電気陰性度の大きい元素との化合物では水素はH+イオンとなる。
水中で水素イオンを生じる物質が狭義の酸。
水溶液中では水素イオンは、H+(hydron)ではなく、
水分子と結合してH3O+( oxonium ion ) として振る舞う。
水素は、炭素と結合することで、さまざまな有機化合物を形成。
ほとんどすべての有機化合物は構成原子に水素を含む。
分子構造の研究に非常によく利用される核磁気共鳴分光法(NMR)、1Hを用いた方法は代表的。
1Hはすべての核種の中で最も強い特異吸収を示すうえ、
水素はほとんどすべての有機化合物に含まれることもあり、NMRにおいて利用。
周囲の原子の電子から影響を受ける結果、吸収される周波数が変化する(化学シフト)ため、
原子の相対位置を推測可能。
水素のイオンには、陽イオンの水素イオン(hydron)と、
陰イオンの水素化物イオン(hydride)存在。
1H+はproton(陽子)そのものであるが、一般に水素は同位体混合物なので、
水素の陽イオンに対する呼称としてはhydronが正確( H+、D+、T+の総称)。しかし、
化学の領域において単に「proton」と呼ぶ際は水素イオンを指し示す。
水素イオンの濃度[H+]は酸性度を定量的に表す指標として用い、
mol/L単位で表した水素イオンの濃度の数値の対数に負号をつけた値を水素イオン指数(pH)で表す。
水中の[H+]濃度は1から10−14mol/L程度の広い範囲を取り、pHでは0 – 14 程度。
常温で中性の水には約10−7mol/Lの水素イオンが存在し、pHは約7。
H+であれ D+であれ、hydronは電子殻を持たないむき出しの原子核であるため、
化学的にはファンデルワールス半径を持たない正の点電荷のように振る舞う。
通常は単独で存在せず、溶媒などほかの分子の電子殻と結合したhydronium ionとして存在。
水素のイオン化エネルギーは1131 kJ/mol、
遊離状態の水素イオンの水和エネルギーは1091 kJ/molと見積もり、
これは高い電子密度に起因 水分子との高い親和力を示す。
H+(g)⟶rmH+(aq)
極性溶媒中では、水、アルコール、エーテルなどの酸素原子の電子殻と結合している場合が多いため、oxonium ionと呼ばれることも多い。
あるいは超強酸など極限状態においては単独で挙動するprotonも観測。
また、Svante August Arrhenius1859 – 1927 Swedish scientist. ) の定義ではhydronは酸の本体。
化学記号H− hydride, hydrogen anionは、
アルカリ金属、アルカリ土類金属あるいは第13族、14族元素(共有結合性が強い)などの、
電気的に陽性な元素の水素化物が電離する時に生成する水素の陰イオン。
hydrideはK殻が閉殻した電子配置を持ちヘリウムと等電子的であるために、
一定の大きさを持ったイオンとして振る舞う点でhydron(水素cation;positive ion)とは異なる。
実際、hydrideはフッ素アニオンよりもイオン半径が大きいように振る舞う。
hydrideはきわめて弱い酸でもある水素分子(pKa=35)の共役塩基で、強塩基として振る舞う。
hydrideは塩基として作用する場合と還元剤として作用する場合がある。
これを hydride reduction ヒドリド還元というが、
それは金属と還元を受ける化合物との組み合わせにより変化。
hydrideの標準酸化還元電位は−2.25Vと見積もられている。
H2(g) +2e−⟶2H−(aq)
hydrideの発生源は、NaBH4やLiAlH4(通称LAH)。
これらの化合物のBH4−やAlH4−からはH−が脱離。
この反応は有機合成時に非常に便利、炭素間二重結合に対して反マルコフニコフ付加を施したい時に有効。
「水素生体研究」
(1975)Doleらは水素ガスが動物の皮膚腫瘍を退縮する研究結果を『サイエンス』に。
(2001)肝臓に慢性の炎症を持つマウスでの高圧水素の抗炎症作用は、に報告.
水素ガスを含む吸気として、
飽和潜水用のガス水素50 %、ヘリウム49 %、酸素1 %用の混合気が用いられており、
水素に起因する毒性や安全性の問題は見られていない。
ボストン小児病院、ハーバード大学医学部も、
水素ガスの吸入による細胞障害、組織障害のような有害事象はないことが報告、
名古屋大学医学部産婦人科、香川大学医学部産婦人科も、水素の摂取による毒性や催奇性はないと報告。
ただし、水素は爆発性を有する気体であり、爆発濃度においては静電気のような微弱なエネルギーで爆発。
従って、水素ガス吸入療法においては、
爆発限界濃度以下(10 %以下)の水素ガスを発生させる水素ガス吸入機を用いることが重要、
市販の水素ガス吸入機の安全性について警鐘を鳴らす論文(2019)発表。
日本における水素の医療利用の研究は、
(2003)ヒドロキシルラジカルによる水素分子の水素引き抜き反応によって、
種々の酸化ストレスに起因する疾病を予防または改善報告。
(2005)ラットの酸化剤誘発モデルに対する水素水の抗酸化効果報告。
日本医科大学(2007)、慶應義塾大学(2012)心停止のラットでの治療モデルを確立。
(2015)慶應義塾大学先導研究センター内に水素ガス治療開発センターが開設。
心肺停止時の水素ガスの吸入は先進医療Bに認定され、研究が進められている。
(2016) 心停止の際の脳・心臓の臓器障害抑制のヒトを対象とした研究公表
、5人中4人が90日後には普通の生活に戻った。
心停止の影響によって寝たきりとなる、言葉がうまく話せなくなるといった後遺症を
抑制するための医療現場への導入が目標。
αグルコシダーゼ阻害剤である糖尿病治療薬のアカルボースを服用すると炭水化物の吸収が抑制され、
大腸の腸内細菌により水素などが発生。
アカルボースの服用が心血管事故を抑制する可能性があり、
この原因として高血糖の抑制に加えて、呼気中に水素ガスの増加が認められ、
この増加した水素の抗酸化作用で心血管事故を抑制するメカニズム想定。
水素と水素が水に溶存した水素水の研究は、臨床試験も年々増加。
水素は従来の医薬品とは異なり、病気の根源である酸化ストレスを抑制し広範囲の疾病に対する改善効果を有する 故 疾病に対する「ワイドスペクトラム分子」の可能性。
と たのしい演劇の日々
水素 hydrogen、原子番号 atomic number 1の元素 元素記号は element symbol H。
原子量 relative atomic mass;Ar(H) 1.00794 非金属元素 nonmetal 。
中国語ではその気体としての軽さから「軽」の旁を用いて「氫」拼音: qīng
陽子1つと電子1つからなるシンプルな構造ゆえ、
原子構造論の発展において水素原子は中心的な役割を果たしてきた。
量子力学の入門として、水素原子や水素様分子をまず取り扱う教科書がほとんど。
元素およびガス状分子の中でもっとも軽く、地球上では水や有機化合物の構成要素として存在。
宇宙でもっとも豊富に存在する元素、珪素量を106とした際の比率は2.79×10の10乗
(ダークマターとダークエネルギーを除き)宇宙の質量の4分の3を占め、総量数比で全原子の90 %以上。
これらのほとんどは星間ガスや銀河間ガス、恒星、木星型惑星の構成物として存在。
「宇宙の晴れ上がり」
水素原子は宇宙が誕生してから約38万年後に初めて生成したとす。
それまでは陽子と電子がバラバラのプラズマ状態で光は宇宙空間を直進できなかった、
電子と陽子が結合することにより宇宙空間に散乱されずに進めるようになった。 宇宙における主系列星のエネルギー放射のほとんどはプラズマとなった
4個の水素原子核がヘリウムへ核融合する反応によるもの、比較的軽い星は陽子-陽子連鎖反応、
重い星はCNOサイクル過程を経てエネルギーを発生。
水素原子はいずれの核融合反応においてもこれを起こす担い手。
太陽の組成に占める水素の割合は約73 %。
地球表面の元素数では酸素・珪素に次いで3番目に多いが、
水素は質量が小さいため、質量パーセントで表すクラーク数では9番目。
地球表面の元素数ではほとんどは海水の状態で存在、
単体の水素分子状態では天然ガスの中にわずかに含まれる程度。
海水における推定存在度は1 Lあたりに108 g、地球の地殻における推定存在度は1 kgあたり1.4 g、
乾燥大気における構成比は0.55ppm。
宇宙空間に散逸する地球の大気は少ないが、それでも1秒あたり水素が3 kg、
ヘリウムが50 gずつ放出されている。
ジーンズエスケープ(大気が薄く原子や分子の速度が減速されずに宇宙へ飛び出す)や、
イオン状態の荷電粒子が地球磁場に沿って脱出。なお、
ハイドロダイナミックエスケープ(加熱された粒子がまとまって流出する)や
スパッタリング(太陽風が持ち去る)は現在の地球では起きていないが、
地球誕生直後はこの作用によって水素が大量に散逸。
固有磁場を持たない金星は、現在でもハイドロダイナミックエスケープやスパッタリングが続き、
地表には比較的重いため残った酸素や炭素が作る二酸化炭素が大気のほとんどを占め、
水がない非常に乾燥した状態。火星も軽い水素を中心に散逸し、
かろうじて氷となった水が極部分の土中に残る。
水素の同位体
天然水素は、
水素(軽水素、 protium )1H 質量数が1(原子核が陽子1つのみ)、
重水素 2H ( deuterium 略号D)質量数2(原子核が陽子1つと中性子1つ)、
三重水素 3H ( tritium 略号T);質量数が3(原子核が陽子1つと中性子2つ)の3つの同位体が知られている。
その他には非常に不安定な核種(4Hから7H)が実験室で合成されているが、天然には全く存在しない。
もっとも軽い 1H (1つの陽子と1つの電子のみ)、原子の中で中性子を持たない核種の1つ。
存在が確認されている中でほかに中性子を持たない核種はリチウム3 (Lithium-3・3Li )のみ。
それぞれの同位体は質量の差が2倍、3倍となり、性質の違いも大きい。
D2はH2よりも融点や沸点が高くなり、溶融潜熱は倍近くに、蒸気圧は10分の1近くとなる。
より重い同位体は水素4から水素7までが確認されている。
もっとも重い水素7(原子核は陽子1、中性子6)はヘリウム8を軽水素に衝突させることで合成。
質量数が4以上のものは寿命がきわめて短く、水素7では半減期が23 ys(= 2.3×10−23 s)。
水素の同位体は、それぞれの特徴を有効に活かした使い方をされる。
重水素は原子核反応での用途で、中性子の減速に使用され、
化学や生物学では同位体効果の研究、医療では診断薬の追跡に使用。
三重水素は原子炉内で生成され、水素爆弾の反応物質や核融合燃料、
放射性を利用したバイオテクノロジー分野でのトレーサーや発光塗料の励起源として使用。
[水素分子]は、
常温常圧では無色無臭の気体として存在、分子式 H2で表される単体。
分子量2.01588、融点 −259.2 °C(常圧)、沸点 −252.9 °C(常圧)、密度 0.0899 g/L、
比重 0.0695(空気を 1 として)、臨界圧力 12.80 気圧、水への溶解度 0.021 mL/mL(0 °C)。
最も軽い気体。原子間距離は 74 pm、結合エネルギーはおよそ 435 kJ/mol。
水素分子は常温では安定で、フッ素以外とは化学反応をまったく起こさない。
しかし たとえば光がある状態では塩素と激しい反応を起こす。
水素と酸素を混合したものに火をつけると起きる激しい爆発(水素爆鳴気)は、
混合比下限は4.65 %、上限は93.3 %、空気との混合では4.1 – 74.2 %、
これはアセチレンに次ぐ広い爆発限界の範囲。
ガス密度が低い水素は速い速度で拡散、燃焼時の伝播も速い。そのため、ガス漏れを起こしやすい。
原子径の小ささから、金属材料に侵入し機械的特性を低下させる(水素脆化)。
これは高温高圧環境下で顕著、封入容器の材質注意必要。
−250 °C以下で液化させると体積は 800分の1となり、さらに軽いため低温貯蔵性に優。
ガス惑星の内部など非常に高い圧力下では性質が変わり、液状の金属になる。
逆に宇宙空間など非常に圧力が低い場合、H2+やH3+、単独の水素原子などの状態も観測されている。
H2分子形状の雲は星の形成などに関係があり、新生惑星や衛星の観測に。
水素分子は、
原子核(プロトン)の核スピンの配向により、オルト(ortho)とパラ(para)の2種類の異性体が存在。
オルト水素は、互いの原子核のスピンの向きが平行、パラ水素ではスピンの向きが反平行。
この2つは、化学的性質に違いがないが、物理的性質(比熱や熱伝導率など)がかなり異なる。
これは内部エネルギーにある差によるもの、パラ水素側が低い。
統計的な重みが大きいほうをオルト。
「水素のボイル・オフ問題」常温以上では、オルト水素とパラ水素の存在比はおよそ3:1、
低温になるほどパラ水素の存在比が増し、絶対零度付近ではほぼ100パーセントパラ水素。ただし、
このオルト-パラ変換はスピン反転を伴うため、触媒を用いない場合極めて遅く、
触媒を用いずに水素を液化すると、
液化した後もオルト-パラ変換に伴い両者のエネルギー差に相当する熱が発生するため、
液化水素が気化してしまう。
オルト‐パラ変換を起こす触媒は、活性炭や鉄などの金属の一部、常磁性物質またはイオンなど。
「水素とほかの元素が化合した物質;水素化物」
水素は電気陰性度 electronegativity ;X が
2.2とアルカリ金属 alkali metals やアルカリ土類金属 alkaline earth metals よりも高く
ハロゲン halogens よりも小さい値であり、酸化剤としても還元剤としても働く。
このため非金属元素とも金属元素とも親和しやすい。
水素と酸素が化合するときには還元剤として働き、爆発的な燃焼とともに水H2Oを生じる。
ナトリウムと水素との反応では酸化剤として働き、水素化ナトリウムNaHを生じる。
水素化物の結合は、
イオン結合型 ionic bond ・
共有結合型 covalent bond 、
パラジウム水素化物などの侵入型固溶体(侵入型化合物interstitial alloy)3種類の形態。
イオン結合型の化合物の中では、水素はH−イオン Hydrogen anion, H- (ヒドリドイオン)として存在。
共有結合型は電気陰性度が高いPブロック元素と電子を共有して化合。
侵入型固溶体は一種の合金であり、水素原子は金属原子の隙間にはまり込むように存在。このため、
容易かつ可逆的に水素を吸収・放出することができ、水素吸蔵合金に利用。
高性能な水素吸蔵合金の中には、水素原子の密度が液体水素のそれに匹敵、上回るものもある。
より電気陰性度の大きい元素との化合物では水素はH+イオンとなる。
水中で水素イオンを生じる物質が狭義の酸。
水溶液中では水素イオンは、H+(hydron)ではなく、
水分子と結合してH3O+( oxonium ion ) として振る舞う。
水素は、炭素と結合することで、さまざまな有機化合物を形成。
ほとんどすべての有機化合物は構成原子に水素を含む。
分子構造の研究に非常によく利用される核磁気共鳴分光法(NMR)、1Hを用いた方法は代表的。
1Hはすべての核種の中で最も強い特異吸収を示すうえ、
水素はほとんどすべての有機化合物に含まれることもあり、NMRにおいて利用。
周囲の原子の電子から影響を受ける結果、吸収される周波数が変化する(化学シフト)ため、
原子の相対位置を推測可能。
水素のイオンには、陽イオンの水素イオン(hydron)と、
陰イオンの水素化物イオン(hydride)存在。
1H+はproton(陽子)そのものであるが、一般に水素は同位体混合物なので、
水素の陽イオンに対する呼称としてはhydronが正確( H+、D+、T+の総称)。しかし、
化学の領域において単に「proton」と呼ぶ際は水素イオンを指し示す。
水素イオンの濃度[H+]は酸性度を定量的に表す指標として用い、
mol/L単位で表した水素イオンの濃度の数値の対数に負号をつけた値を水素イオン指数(pH)で表す。
水中の[H+]濃度は1から10−14mol/L程度の広い範囲を取り、pHでは0 – 14 程度。
常温で中性の水には約10−7mol/Lの水素イオンが存在し、pHは約7。
H+であれ D+であれ、hydronは電子殻を持たないむき出しの原子核であるため、
化学的にはファンデルワールス半径を持たない正の点電荷のように振る舞う。
通常は単独で存在せず、溶媒などほかの分子の電子殻と結合したhydronium ionとして存在。
水素のイオン化エネルギーは1131 kJ/mol、
遊離状態の水素イオンの水和エネルギーは1091 kJ/molと見積もり、
これは高い電子密度に起因 水分子との高い親和力を示す。
H+(g)⟶rmH+(aq)
極性溶媒中では、水、アルコール、エーテルなどの酸素原子の電子殻と結合している場合が多いため、oxonium ionと呼ばれることも多い。
あるいは超強酸など極限状態においては単独で挙動するprotonも観測。
また、Svante August Arrhenius1859 – 1927 Swedish scientist. ) の定義ではhydronは酸の本体。
化学記号H− hydride, hydrogen anionは、
アルカリ金属、アルカリ土類金属あるいは第13族、14族元素(共有結合性が強い)などの、
電気的に陽性な元素の水素化物が電離する時に生成する水素の陰イオン。
hydrideはK殻が閉殻した電子配置を持ちヘリウムと等電子的であるために、
一定の大きさを持ったイオンとして振る舞う点でhydron(水素cation;positive ion)とは異なる。
実際、hydrideはフッ素アニオンよりもイオン半径が大きいように振る舞う。
hydrideはきわめて弱い酸でもある水素分子(pKa=35)の共役塩基で、強塩基として振る舞う。
hydrideは塩基として作用する場合と還元剤として作用する場合がある。
これを hydride reduction ヒドリド還元というが、
それは金属と還元を受ける化合物との組み合わせにより変化。
hydrideの標準酸化還元電位は−2.25Vと見積もられている。
H2(g) +2e−⟶2H−(aq)
hydrideの発生源は、NaBH4やLiAlH4(通称LAH)。
これらの化合物のBH4−やAlH4−からはH−が脱離。
この反応は有機合成時に非常に便利、炭素間二重結合に対して反マルコフニコフ付加を施したい時に有効。
「水素生体研究」
(1975)Doleらは水素ガスが動物の皮膚腫瘍を退縮する研究結果を『サイエンス』に。
(2001)肝臓に慢性の炎症を持つマウスでの高圧水素の抗炎症作用は、に報告.
水素ガスを含む吸気として、
飽和潜水用のガス水素50 %、ヘリウム49 %、酸素1 %用の混合気が用いられており、
水素に起因する毒性や安全性の問題は見られていない。
ボストン小児病院、ハーバード大学医学部も、
水素ガスの吸入による細胞障害、組織障害のような有害事象はないことが報告、
名古屋大学医学部産婦人科、香川大学医学部産婦人科も、水素の摂取による毒性や催奇性はないと報告。
ただし、水素は爆発性を有する気体であり、爆発濃度においては静電気のような微弱なエネルギーで爆発。
従って、水素ガス吸入療法においては、
爆発限界濃度以下(10 %以下)の水素ガスを発生させる水素ガス吸入機を用いることが重要、
市販の水素ガス吸入機の安全性について警鐘を鳴らす論文(2019)発表。
日本における水素の医療利用の研究は、
(2003)ヒドロキシルラジカルによる水素分子の水素引き抜き反応によって、
種々の酸化ストレスに起因する疾病を予防または改善報告。
(2005)ラットの酸化剤誘発モデルに対する水素水の抗酸化効果報告。
日本医科大学(2007)、慶應義塾大学(2012)心停止のラットでの治療モデルを確立。
(2015)慶應義塾大学先導研究センター内に水素ガス治療開発センターが開設。
心肺停止時の水素ガスの吸入は先進医療Bに認定され、研究が進められている。
(2016) 心停止の際の脳・心臓の臓器障害抑制のヒトを対象とした研究公表
、5人中4人が90日後には普通の生活に戻った。
心停止の影響によって寝たきりとなる、言葉がうまく話せなくなるといった後遺症を
抑制するための医療現場への導入が目標。
αグルコシダーゼ阻害剤である糖尿病治療薬のアカルボースを服用すると炭水化物の吸収が抑制され、
大腸の腸内細菌により水素などが発生。
アカルボースの服用が心血管事故を抑制する可能性があり、
この原因として高血糖の抑制に加えて、呼気中に水素ガスの増加が認められ、
この増加した水素の抗酸化作用で心血管事故を抑制するメカニズム想定。
水素と水素が水に溶存した水素水の研究は、臨床試験も年々増加。
水素は従来の医薬品とは異なり、病気の根源である酸化ストレスを抑制し広範囲の疾病に対する改善効果を有する 故 疾病に対する「ワイドスペクトラム分子」の可能性。
と たのしい演劇の日々
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2023年09月10日
Alchemy of Actor Biochemistry Carbon
炭素carbon、原子番号6の元素。元素記号はC。原子量12.01。非金属元素、第14族元素、第2周期元素
単体・化合物両方においてきわめて多様な形状をとる。
非金属の炭素には、4つの外殻電子と4つの空席がある。そのため、
価電子数4元素の中でももっとも多い4組の共有結合を持つことが可能、
この特徴から多様な分子をつくる骨格となる。
炭素がほかの元素と結びついて作る化合物の種類は約5,400万種にのぼる。
融点や昇華を起こす温度は全元素の中でもっとも高い。
常圧下で融点を持たず、三重点は10.8±0.2MPa、4,600±300K、昇華は約3,900Kで起こる。
炭素原子同士の共有結合は非常に堅牢、
それがつくる単体において、自然物としてはもっとも硬いダイヤモンドから
もっとも柔らかいグラファイトまで、幅広い形態や同素体を持つ。
炭素の単体は有機物を不完全燃焼すれば簡単に取り出せるため、有史以前から知られていた。
ダイヤモンドの存在も紀元前2500年ごろの古代中国では知られており、
古代ローマでは今日と同様に木から木炭を得ていた。
古代エジプトでも、粘土で密封したピラミッドの中から空気を抜くために木を熱する方法が用いられた。
そのため、特定の元素発見者はいない。
炭素原子の生成にはヘリウムの原子核アルファ粒子の3重衝突が必要。
これには約1億度の熱が必要となるが、
ビッグバンでは宇宙がはじめに大きく膨張してすぐに急速に冷え、炭素は生成されなかった。しかし、
その後形成された恒星内でトリプルアルファ反応(triple-alpha process;
3個のヘリウム4の原子核(アルファ粒子)が結合して炭素12の原子核に変換される核融合反応)
によるヘリウム燃焼過程でエネルギーを放出しながら炭素生成。
こうして作られた炭素は、
主系列星の内部で水素がヘリウムになるCNOサイクル((CNO cycle;
恒星内部で水素がヘリウムに変換される核融合反応過程。
太陽より質量の大きな恒星での主なエネルギー生成過程)
を媒介し、星のエネルギー放射を担う。
宇宙での存在比は水素、ヘリウム、酸素に次いで多い。
炭素は太陽や恒星、彗星のなかにも豊富に存在し、さまざまな惑星の大気にも含まれている。
まれに隕石の中から微細なダイヤモンドが見つかることがあり、
これは太陽系が原始惑星系円盤だったころ、またはそれ以前に超新星爆発時に生成されたものと考える。
地球の 地表 海洋の元素分布では炭素は重量比0.08%(チタンやマンガンを下回る)。
炭素は他の元素との結びつき方で、性質の異なる多彩な化合物を作り出し、地球環境の中に存在。
地殻中元素の存在度15番目に多い炭素の約9割が鉱物、
中でも還元された形、炭素粒・石油・石炭・天然ガス中が4分の3以上。
4分の1が炭酸塩の岩石(石灰岩、苦灰岩 (CaMg(CO3)2)、結晶質石灰岩など)。
海洋など水に溶け込んだ炭酸も多く、炭素量で36兆トン存在。
生物圏に1兆9,000億トン、大気圏の二酸化炭素8,100億トン。
埋蔵石化燃料として石炭が9,000億トン、石油は1,500億トン、天然ガスが1,050億トン、
さらにシェールガスのような採掘しにくい形態で5,400億トンの存在。
メタンハイドレートとして極地に封じられた炭素量はシベリアの永久凍土層だけでも1兆4,000億トン。
[炭素循環]
炭素は地球上で多様な状態を示す。
地殻、海洋、生物圏、大気圏を循環し、年間の移動量は約2,000億トン。
惑星上では、ある元素がほかの元素に転換することは非常に稀。
地球に含まれる全炭素量はほぼ一定。そのため、
炭素を用いる過程はどこかでそれを獲得/放出することが必要。
この経路は、二酸化炭素の形で循環する体系を形成す。
植物は生育地の環境内で、呼吸により二酸化炭素を放出、
光のエネルギーを用いて吸収した二酸化炭素から炭素を固定するカルヴィン回路を働かせ、植物組織を形成。動物は植物を食べて炭素を吸収、呼吸によって一部を排出。
海洋は二酸化炭素を溶かし込み、
枯れた植物や動物の死体は、バクテリアなどが消化し地中で石油や石炭などの形で炭素をとどめる。
それらを化石燃料として利用、燃焼により再び炭素放出。
[炭素化合物]
炭素の特性は他の元素と結びついて化合物を作ること。
これまでに天然発見 人工的化合物の数は7,000万を超えるが、その約8割は炭素化合物。
生物
炭素-炭素結合で有機物の基本骨格をつくり、すべての生物の構成材料。
人体を構成する元素の約18%が炭素。
蛋白質、脂質、炭水化物に含まれる原子の過半数が炭素。
光合成や呼吸など生命活動全般で重要な役割を担う。
地表での炭素の重量比は0.08%にすぎないため、生命は自然界にあるわずかな炭素に依り成立。
炭素-炭素結合Carbon-carbon bond)2原子の炭素間の共有結合のこと。
もっとも一般的なのは単結合で、2つの炭素原子由来のそれぞれ1つずつの電子で構成される結合。
炭素-炭素単結合はσ結合で、これは炭素原子の混成軌道間で構成される。
Exa, エタンの混成軌道はsp3混成軌道。しかし、
他の混成軌道でも単結合は現れる(exa,:sp2 to sp2)。
炭素-炭素単結合を作るとき、両方の炭素が同じ混成軌道である必要はない。
アルケン二重結合は、sp2混成軌道によって構成され、1つのp軌道は混成に関与しない。
アルキン三重結合はsp混成軌道によって構成され、2つのp軌道が混成に関与しない。
混成に関与しないp軌道はπ結合に使われる。
炭素は他の元素と比べ、それ自身が長い連鎖を形成。
炭素-炭素結合によって結びつけられた分子の種類は莫大。
炭素鎖によってできた分子は生命にとって重要、炭素化合物は有機化合物 organic compound 。
炭素-炭素結合形成反応Carbon-carbon bond forming reactions)
新しい炭素-炭素結合を形成する反応。
これらは、製薬、合成樹脂のような人工化学物質の合成において重要な反応。
原子核に6つの陽子を含む炭素原子は、3種類の同位体(isotope;
同一原子番号を持ち 中性子数(質量数 A - 原子番号 Z)が異なる核種の関係をいう。
放射能を持つ放射性同位体 (radioisotope) とそうではない安定同位体 (stable isotope) の2種類に分類)、
12C(存在比98.93%)、13C(1.07%)、14C(微量)が自然界で存在、
それぞれがさまざまな学問分野で重要。
炭素は4本の共有結合ができ、結合の状態によって数種類の同素体(allotrope: allotropism);
同一元素の単体のうち、原子の配列(結晶構造)や結合様式の関係が異なる物質同士の関係をいう。
同素体は単体-互いに同じ元素-から構成されるが、化学的・物理的性質が異なる)
を形成。
と たのしい演劇の日々
単体・化合物両方においてきわめて多様な形状をとる。
非金属の炭素には、4つの外殻電子と4つの空席がある。そのため、
価電子数4元素の中でももっとも多い4組の共有結合を持つことが可能、
この特徴から多様な分子をつくる骨格となる。
炭素がほかの元素と結びついて作る化合物の種類は約5,400万種にのぼる。
融点や昇華を起こす温度は全元素の中でもっとも高い。
常圧下で融点を持たず、三重点は10.8±0.2MPa、4,600±300K、昇華は約3,900Kで起こる。
炭素原子同士の共有結合は非常に堅牢、
それがつくる単体において、自然物としてはもっとも硬いダイヤモンドから
もっとも柔らかいグラファイトまで、幅広い形態や同素体を持つ。
炭素の単体は有機物を不完全燃焼すれば簡単に取り出せるため、有史以前から知られていた。
ダイヤモンドの存在も紀元前2500年ごろの古代中国では知られており、
古代ローマでは今日と同様に木から木炭を得ていた。
古代エジプトでも、粘土で密封したピラミッドの中から空気を抜くために木を熱する方法が用いられた。
そのため、特定の元素発見者はいない。
炭素原子の生成にはヘリウムの原子核アルファ粒子の3重衝突が必要。
これには約1億度の熱が必要となるが、
ビッグバンでは宇宙がはじめに大きく膨張してすぐに急速に冷え、炭素は生成されなかった。しかし、
その後形成された恒星内でトリプルアルファ反応(triple-alpha process;
3個のヘリウム4の原子核(アルファ粒子)が結合して炭素12の原子核に変換される核融合反応)
によるヘリウム燃焼過程でエネルギーを放出しながら炭素生成。
こうして作られた炭素は、
主系列星の内部で水素がヘリウムになるCNOサイクル((CNO cycle;
恒星内部で水素がヘリウムに変換される核融合反応過程。
太陽より質量の大きな恒星での主なエネルギー生成過程)
を媒介し、星のエネルギー放射を担う。
宇宙での存在比は水素、ヘリウム、酸素に次いで多い。
炭素は太陽や恒星、彗星のなかにも豊富に存在し、さまざまな惑星の大気にも含まれている。
まれに隕石の中から微細なダイヤモンドが見つかることがあり、
これは太陽系が原始惑星系円盤だったころ、またはそれ以前に超新星爆発時に生成されたものと考える。
地球の 地表 海洋の元素分布では炭素は重量比0.08%(チタンやマンガンを下回る)。
炭素は他の元素との結びつき方で、性質の異なる多彩な化合物を作り出し、地球環境の中に存在。
地殻中元素の存在度15番目に多い炭素の約9割が鉱物、
中でも還元された形、炭素粒・石油・石炭・天然ガス中が4分の3以上。
4分の1が炭酸塩の岩石(石灰岩、苦灰岩 (CaMg(CO3)2)、結晶質石灰岩など)。
海洋など水に溶け込んだ炭酸も多く、炭素量で36兆トン存在。
生物圏に1兆9,000億トン、大気圏の二酸化炭素8,100億トン。
埋蔵石化燃料として石炭が9,000億トン、石油は1,500億トン、天然ガスが1,050億トン、
さらにシェールガスのような採掘しにくい形態で5,400億トンの存在。
メタンハイドレートとして極地に封じられた炭素量はシベリアの永久凍土層だけでも1兆4,000億トン。
[炭素循環]
炭素は地球上で多様な状態を示す。
地殻、海洋、生物圏、大気圏を循環し、年間の移動量は約2,000億トン。
惑星上では、ある元素がほかの元素に転換することは非常に稀。
地球に含まれる全炭素量はほぼ一定。そのため、
炭素を用いる過程はどこかでそれを獲得/放出することが必要。
この経路は、二酸化炭素の形で循環する体系を形成す。
植物は生育地の環境内で、呼吸により二酸化炭素を放出、
光のエネルギーを用いて吸収した二酸化炭素から炭素を固定するカルヴィン回路を働かせ、植物組織を形成。動物は植物を食べて炭素を吸収、呼吸によって一部を排出。
海洋は二酸化炭素を溶かし込み、
枯れた植物や動物の死体は、バクテリアなどが消化し地中で石油や石炭などの形で炭素をとどめる。
それらを化石燃料として利用、燃焼により再び炭素放出。
[炭素化合物]
炭素の特性は他の元素と結びついて化合物を作ること。
これまでに天然発見 人工的化合物の数は7,000万を超えるが、その約8割は炭素化合物。
生物
炭素-炭素結合で有機物の基本骨格をつくり、すべての生物の構成材料。
人体を構成する元素の約18%が炭素。
蛋白質、脂質、炭水化物に含まれる原子の過半数が炭素。
光合成や呼吸など生命活動全般で重要な役割を担う。
地表での炭素の重量比は0.08%にすぎないため、生命は自然界にあるわずかな炭素に依り成立。
炭素-炭素結合Carbon-carbon bond)2原子の炭素間の共有結合のこと。
もっとも一般的なのは単結合で、2つの炭素原子由来のそれぞれ1つずつの電子で構成される結合。
炭素-炭素単結合はσ結合で、これは炭素原子の混成軌道間で構成される。
Exa, エタンの混成軌道はsp3混成軌道。しかし、
他の混成軌道でも単結合は現れる(exa,:sp2 to sp2)。
炭素-炭素単結合を作るとき、両方の炭素が同じ混成軌道である必要はない。
アルケン二重結合は、sp2混成軌道によって構成され、1つのp軌道は混成に関与しない。
アルキン三重結合はsp混成軌道によって構成され、2つのp軌道が混成に関与しない。
混成に関与しないp軌道はπ結合に使われる。
炭素は他の元素と比べ、それ自身が長い連鎖を形成。
炭素-炭素結合によって結びつけられた分子の種類は莫大。
炭素鎖によってできた分子は生命にとって重要、炭素化合物は有機化合物 organic compound 。
炭素-炭素結合形成反応Carbon-carbon bond forming reactions)
新しい炭素-炭素結合を形成する反応。
これらは、製薬、合成樹脂のような人工化学物質の合成において重要な反応。
原子核に6つの陽子を含む炭素原子は、3種類の同位体(isotope;
同一原子番号を持ち 中性子数(質量数 A - 原子番号 Z)が異なる核種の関係をいう。
放射能を持つ放射性同位体 (radioisotope) とそうではない安定同位体 (stable isotope) の2種類に分類)、
12C(存在比98.93%)、13C(1.07%)、14C(微量)が自然界で存在、
それぞれがさまざまな学問分野で重要。
炭素は4本の共有結合ができ、結合の状態によって数種類の同素体(allotrope: allotropism);
同一元素の単体のうち、原子の配列(結晶構造)や結合様式の関係が異なる物質同士の関係をいう。
同素体は単体-互いに同じ元素-から構成されるが、化学的・物理的性質が異なる)
を形成。
と たのしい演劇の日々
2023年09月04日
Alchemy of Actor Biochemistry Oxygen
Alchemy of Actor Biochemistry Oxygen
酸素 oxygen、原子番号8の元素。元素記号はO。原子量は16.00。第16族元素、第2周期元素。
中国語圏では「酸」という字を用いず、「氧」(中国語読み:ヤン、ピンイン:yǎng、日本語読み:よう)
という字をあて、氧や氧氣(ようき)という。
性質
電気陰性度が大きいため反応性に富み、ほかのほとんどの元素と化合物(特に酸化物)を作る。
標準状態では2個の酸素原子が二重結合した無味無臭無色透明の二原子分子である酸素分子O2として存在。
物理的性質
約90 Kで液体、約54 Kで青みがかった固体となる。
ダイヤモンドアンビルセルなどで100万気圧を超えた高圧下では金属光沢を持ち、
125万気圧、0.6 Kでは超伝導金属となる。助燃性がある。
科学的性質
酸素は、フッ素に次いで2番目に電気陰性度が大きいため酸化力が強く、
ほとんどの元素と発熱反応を起こして化合物を作る。
希ガス-キセノンも、酸素と化合して三酸化キセノン(XeO3)などの化合物を作る(1962)。
分布
宇宙では水素、ヘリウムに次いで3番目に多くの質量を占め、
ケイ素量を106乗としたときの比率は2.38×107乗。
地球地殻においては最大を占める元素(質量の46.60 %、体積の93.77 %)、
石英の成分であるSiO2が地殻の大部分を構成。
気体の酸素分子は大気の体積の20.95 %、質量で23 %。
地球外でも酸素は多く存在。
おもな存在形態である氷は地球のほか、惑星、彗星、小惑星などにも見られる。
火星においては、大気組成の95 %を二酸化炭素が占める、
二酸化炭素(ドライアイス)やごく少量の水が氷として両極の氷床(氷冠)に存在。
星が生まれる元となる分子雲では、一酸化炭素が分子の中で2番目に存在量の多い分子。
酸素の起源は恒星核におけるヘリウムの核融合であり、酸素のスペクトルが検出される恒星も存在。
酸素分子dioxygen ;O2
物理的性質
常温常圧では無色無臭で助燃性をもつ気体として存在。
分子量32.00、沸点−183 °C(90 K)、融点−218.9 °C(54.3 K)。
水100 gに溶解する量は0 °Cで6.945 mg、25 °Cで3.931 mg、50 °Cで2.657 mg。
液体酸素は淡青色を示し、比重は1.14。
基底状態の三重項状態では不対電子を持つため常磁性体。
また活性酸素の一種で反磁性である励起状態の一重項酸素も存在。
構造
標準状態において一般の酸素は、
2つの酸素原子が縮退した三重項の電子配置で化学結合した分子構造(三重項酸素分子)を持つ
無色無臭の気体。
この結合次数は2で、一般に二重結合または1個の2電子結合と2個の3電子結合と表記。
三重項酸素分子とは電子の全スピン量子数が1となる状態で、
具体的には2つの不対電子が酸素分子に2つあるπ*(パイスター)反結合性軌道(アスタリスク (*) でラベル)を
ひとつずつ占め、しかも同じ向きのスピンを取っている。
このとき、酸素分子のエネルギーは基底状態にある。
また、酸素分子の二重結合は反結合軌道にも電子が存在するため、
結合軌道のみで電子を充足させる三重結合の窒素よりも安定さは下がり、
また、2つの電子が対を作らずビラジカルとして存在するため、
結果として酸素分子は窒素分子よりも少ないエネルギーでほかの物質と反応しやすい。
通常の三重項酸素分子は常磁性を持つ。
これは、不対電子のスピン磁気モーメント(スピンの向きが同じ電子がπ*反結合性軌道に入る)と
ふたつの酸素分子間に働く交換相互作用による。
液体酸素は磁石に吸いつけられ、実験では磁極間で自重を支えるに充分強い橋を作る。
これに対し、外部から高エネルギーが加わり不対電子のひとつがスピンを逆方向へ変え、
全スピン量子数が0となった酸素を一重項酸素といい、有機化合物との反応性が高い。
自然界で一重項酸素は、光合成の過程で水から作られたり、
対流圏で短波長の光によってオゾンの分解から発生したり、
または免疫システムの中で活性酸素の原料として用いられる。
その他
熱力学的に反応性が高く不安定な分子ではあるが、地球上では初期には光合成を行う嫌気性菌により、
のちの時代には植物の光合成によって年間約1011トン供給され続けているため多量に存在。
酸素呼吸を行う生物によって消費される。
実際、生命が発生する以前の原始大気では酸素分子はほとんど存在せず、
二酸化炭素などほかの原子と結合した状態であった。
現在の大気中の酸素分子はそのほぼすべてが光合成由来だと考える。
逆に、ほかの天体の大気中に遊離酸素の存在が確認されれば、生命の存在する間接的証拠となる。
酸素は、呼吸をする生物によっては必須であるが、同時に有害でもある。
呼吸の過程や光反応などで生じる活性酸素Reactive Oxygen Species, ROSは、
DNAなどの生体構成分子を酸化して変性。
純酸素の長時間吸引は生体にとって有害。
未熟児網膜症の原因、60 %以上の高濃度酸素を12時間以上吸引すると、
肺の充血などがみられ、最悪の場合、失明や死亡する。
25 °Cで標準気圧下では、淡水は1 L中に酸素を6.04 mL含んでいるが、
海水では1 Lあたり4.95 mLしか含んでいない。
5 °Cでの溶解度は、淡水では9.0 mL/L、海水では 7.2 mL/Lまで増加。
液体酸素は液体空気を分留して得られ、強い酸化剤。
液体空気を放置すると、沸点の低い窒素が先に蒸発するため、酸素分子が濃縮される。
1 Lの液化酸素が気化すると約800 Lの酸素ガスになる。
酸素は紫外線や無声放電などによってオゾン O3へと変換。また、
酸素分子のイオンとしてスーパーオキシドアニオン O2-とジオキシゲニル O2+あり。
生物学的役割
光合成と呼吸
自然界において遊離酸素は、光合成によって水が光分解されることで生じ
、海洋中の緑藻類やシアノバクテリアが地球大気中の酸素70 %を、残りは陸上の植物が作り出す。
簡易な光合成の反応式;6CO2+6H2O+photon->C6H12O6+6O2
二酸化炭素+水+日光 → グルコース+酸素
光分解による酸素発生は葉緑体のチラコイド膜中で起こる。
光をエネルギーとするこの作用は多くの段階を経て、
ATP を光リン酸化(photophosphorylation)させるプロトンの濃度勾配を起こす。
この際、水を酸化することで酸素ガスが発生し、大気中に放出。
酸素ガスは好気性生物が呼吸を行い、
ミトコンドリアで酸化的リン酸化反応を経てATPを発生させるために使われる。
酸素呼吸の反応は本質的に光合成の逆。
C6H12O6+6O2 -> 6CO2+6H2O+2880kjmol-1
脊椎動物では酸素ガスは肺の膜を通して血液中に拡散し赤血球中のヘモグロビンと結びつき、
その色を紫がかった赤から明るい赤へ変える。
1 Lの血液が溶かせる酸素ガスは200 mL。
超酸化物イオンや過酸化水素などの活性酸素は、
酸素呼吸を行う生体にとって非常に危険な副産物であり、
ミトコンドリアを取り込んだ真核生物は、
進化の過程でデオキシリボ核酸を酸素から保護するために核膜を獲得。その一方で、
高等生物は免疫系で細菌を破壊するために過酸化物を用いる。
成人が消費する酸素は、1分あたり約250 mL、これは約0.36 gに相当。
ここから計算すると、人類全体が1年間に消費する量は13億トンに相当。
なお、酸素を利用しない呼吸の形態を嫌気呼吸と云い。
最初の地球に酸素が存在しなかったことから、これが最初の呼吸のあり方と考える。
これは好気呼吸の経路にも、解糖系という形態で残る。
酸素を全く使わずに生活する微生物も存すが、酸素の存在下では死滅(嫌気性生物)。
初期の微生物にとっても、酸素は有毒物質であった。
化合物
酸素は電気陰性度が高く、ほとんどあらゆる元素と化学結合。
多くの有機化合物は構成元素として酸素を含み、無機化合物の酸素化合物は酸化物として多方面で利用。
同素体
地球上でのおもな同素体は酸素分子O2で、その結合長は121 pm、結合エネルギーは498 kJ/mol。
酸素分子は生物の複雑な細胞呼吸に使われている。
三酸素(O3)はオゾン 非常に反応性の大きい単体の気体、吸入すると肺組織を破壊。
オゾンは高層大気において、
酸素分子が紫外線によって分裂した酸素原子と別の酸素分子が結合することによって生成。
オゾンは紫外領域を強く吸収するため、
高層大気にあるオゾン層は地球を放射線から保護するシールドとして機能。
地表近くでもオゾンは生成しているが、これは自動車の排気ガスなどとして生成されている大気汚染物質。
同位体
酸素には安定同位体として16O、17O、18Oの3種類が知られるが、
天然存在比は16Oが99.7 %以上を占めている。また、放射性同位体も作られている。
かつては酸素を16として原子量を定義していたが、
物理学では16Oの原子量を16としたのに対して、
化学においては安定核種の平均原子量を16と置く定義の差があったことから、
酸素の同位体の存在が判明して以降混乱が起こり、1961年に炭素12を基準とするように置き換えられた。
と たのしい演劇の日々
酸素 oxygen、原子番号8の元素。元素記号はO。原子量は16.00。第16族元素、第2周期元素。
中国語圏では「酸」という字を用いず、「氧」(中国語読み:ヤン、ピンイン:yǎng、日本語読み:よう)
という字をあて、氧や氧氣(ようき)という。
性質
電気陰性度が大きいため反応性に富み、ほかのほとんどの元素と化合物(特に酸化物)を作る。
標準状態では2個の酸素原子が二重結合した無味無臭無色透明の二原子分子である酸素分子O2として存在。
物理的性質
約90 Kで液体、約54 Kで青みがかった固体となる。
ダイヤモンドアンビルセルなどで100万気圧を超えた高圧下では金属光沢を持ち、
125万気圧、0.6 Kでは超伝導金属となる。助燃性がある。
科学的性質
酸素は、フッ素に次いで2番目に電気陰性度が大きいため酸化力が強く、
ほとんどの元素と発熱反応を起こして化合物を作る。
希ガス-キセノンも、酸素と化合して三酸化キセノン(XeO3)などの化合物を作る(1962)。
分布
宇宙では水素、ヘリウムに次いで3番目に多くの質量を占め、
ケイ素量を106乗としたときの比率は2.38×107乗。
地球地殻においては最大を占める元素(質量の46.60 %、体積の93.77 %)、
石英の成分であるSiO2が地殻の大部分を構成。
気体の酸素分子は大気の体積の20.95 %、質量で23 %。
地球外でも酸素は多く存在。
おもな存在形態である氷は地球のほか、惑星、彗星、小惑星などにも見られる。
火星においては、大気組成の95 %を二酸化炭素が占める、
二酸化炭素(ドライアイス)やごく少量の水が氷として両極の氷床(氷冠)に存在。
星が生まれる元となる分子雲では、一酸化炭素が分子の中で2番目に存在量の多い分子。
酸素の起源は恒星核におけるヘリウムの核融合であり、酸素のスペクトルが検出される恒星も存在。
酸素分子dioxygen ;O2
物理的性質
常温常圧では無色無臭で助燃性をもつ気体として存在。
分子量32.00、沸点−183 °C(90 K)、融点−218.9 °C(54.3 K)。
水100 gに溶解する量は0 °Cで6.945 mg、25 °Cで3.931 mg、50 °Cで2.657 mg。
液体酸素は淡青色を示し、比重は1.14。
基底状態の三重項状態では不対電子を持つため常磁性体。
また活性酸素の一種で反磁性である励起状態の一重項酸素も存在。
構造
標準状態において一般の酸素は、
2つの酸素原子が縮退した三重項の電子配置で化学結合した分子構造(三重項酸素分子)を持つ
無色無臭の気体。
この結合次数は2で、一般に二重結合または1個の2電子結合と2個の3電子結合と表記。
三重項酸素分子とは電子の全スピン量子数が1となる状態で、
具体的には2つの不対電子が酸素分子に2つあるπ*(パイスター)反結合性軌道(アスタリスク (*) でラベル)を
ひとつずつ占め、しかも同じ向きのスピンを取っている。
このとき、酸素分子のエネルギーは基底状態にある。
また、酸素分子の二重結合は反結合軌道にも電子が存在するため、
結合軌道のみで電子を充足させる三重結合の窒素よりも安定さは下がり、
また、2つの電子が対を作らずビラジカルとして存在するため、
結果として酸素分子は窒素分子よりも少ないエネルギーでほかの物質と反応しやすい。
通常の三重項酸素分子は常磁性を持つ。
これは、不対電子のスピン磁気モーメント(スピンの向きが同じ電子がπ*反結合性軌道に入る)と
ふたつの酸素分子間に働く交換相互作用による。
液体酸素は磁石に吸いつけられ、実験では磁極間で自重を支えるに充分強い橋を作る。
これに対し、外部から高エネルギーが加わり不対電子のひとつがスピンを逆方向へ変え、
全スピン量子数が0となった酸素を一重項酸素といい、有機化合物との反応性が高い。
自然界で一重項酸素は、光合成の過程で水から作られたり、
対流圏で短波長の光によってオゾンの分解から発生したり、
または免疫システムの中で活性酸素の原料として用いられる。
その他
熱力学的に反応性が高く不安定な分子ではあるが、地球上では初期には光合成を行う嫌気性菌により、
のちの時代には植物の光合成によって年間約1011トン供給され続けているため多量に存在。
酸素呼吸を行う生物によって消費される。
実際、生命が発生する以前の原始大気では酸素分子はほとんど存在せず、
二酸化炭素などほかの原子と結合した状態であった。
現在の大気中の酸素分子はそのほぼすべてが光合成由来だと考える。
逆に、ほかの天体の大気中に遊離酸素の存在が確認されれば、生命の存在する間接的証拠となる。
酸素は、呼吸をする生物によっては必須であるが、同時に有害でもある。
呼吸の過程や光反応などで生じる活性酸素Reactive Oxygen Species, ROSは、
DNAなどの生体構成分子を酸化して変性。
純酸素の長時間吸引は生体にとって有害。
未熟児網膜症の原因、60 %以上の高濃度酸素を12時間以上吸引すると、
肺の充血などがみられ、最悪の場合、失明や死亡する。
25 °Cで標準気圧下では、淡水は1 L中に酸素を6.04 mL含んでいるが、
海水では1 Lあたり4.95 mLしか含んでいない。
5 °Cでの溶解度は、淡水では9.0 mL/L、海水では 7.2 mL/Lまで増加。
液体酸素は液体空気を分留して得られ、強い酸化剤。
液体空気を放置すると、沸点の低い窒素が先に蒸発するため、酸素分子が濃縮される。
1 Lの液化酸素が気化すると約800 Lの酸素ガスになる。
酸素は紫外線や無声放電などによってオゾン O3へと変換。また、
酸素分子のイオンとしてスーパーオキシドアニオン O2-とジオキシゲニル O2+あり。
生物学的役割
光合成と呼吸
自然界において遊離酸素は、光合成によって水が光分解されることで生じ
、海洋中の緑藻類やシアノバクテリアが地球大気中の酸素70 %を、残りは陸上の植物が作り出す。
簡易な光合成の反応式;6CO2+6H2O+photon->C6H12O6+6O2
二酸化炭素+水+日光 → グルコース+酸素
光分解による酸素発生は葉緑体のチラコイド膜中で起こる。
光をエネルギーとするこの作用は多くの段階を経て、
ATP を光リン酸化(photophosphorylation)させるプロトンの濃度勾配を起こす。
この際、水を酸化することで酸素ガスが発生し、大気中に放出。
酸素ガスは好気性生物が呼吸を行い、
ミトコンドリアで酸化的リン酸化反応を経てATPを発生させるために使われる。
酸素呼吸の反応は本質的に光合成の逆。
C6H12O6+6O2 -> 6CO2+6H2O+2880kjmol-1
脊椎動物では酸素ガスは肺の膜を通して血液中に拡散し赤血球中のヘモグロビンと結びつき、
その色を紫がかった赤から明るい赤へ変える。
1 Lの血液が溶かせる酸素ガスは200 mL。
超酸化物イオンや過酸化水素などの活性酸素は、
酸素呼吸を行う生体にとって非常に危険な副産物であり、
ミトコンドリアを取り込んだ真核生物は、
進化の過程でデオキシリボ核酸を酸素から保護するために核膜を獲得。その一方で、
高等生物は免疫系で細菌を破壊するために過酸化物を用いる。
成人が消費する酸素は、1分あたり約250 mL、これは約0.36 gに相当。
ここから計算すると、人類全体が1年間に消費する量は13億トンに相当。
なお、酸素を利用しない呼吸の形態を嫌気呼吸と云い。
最初の地球に酸素が存在しなかったことから、これが最初の呼吸のあり方と考える。
これは好気呼吸の経路にも、解糖系という形態で残る。
酸素を全く使わずに生活する微生物も存すが、酸素の存在下では死滅(嫌気性生物)。
初期の微生物にとっても、酸素は有毒物質であった。
化合物
酸素は電気陰性度が高く、ほとんどあらゆる元素と化学結合。
多くの有機化合物は構成元素として酸素を含み、無機化合物の酸素化合物は酸化物として多方面で利用。
同素体
地球上でのおもな同素体は酸素分子O2で、その結合長は121 pm、結合エネルギーは498 kJ/mol。
酸素分子は生物の複雑な細胞呼吸に使われている。
三酸素(O3)はオゾン 非常に反応性の大きい単体の気体、吸入すると肺組織を破壊。
オゾンは高層大気において、
酸素分子が紫外線によって分裂した酸素原子と別の酸素分子が結合することによって生成。
オゾンは紫外領域を強く吸収するため、
高層大気にあるオゾン層は地球を放射線から保護するシールドとして機能。
地表近くでもオゾンは生成しているが、これは自動車の排気ガスなどとして生成されている大気汚染物質。
同位体
酸素には安定同位体として16O、17O、18Oの3種類が知られるが、
天然存在比は16Oが99.7 %以上を占めている。また、放射性同位体も作られている。
かつては酸素を16として原子量を定義していたが、
物理学では16Oの原子量を16としたのに対して、
化学においては安定核種の平均原子量を16と置く定義の差があったことから、
酸素の同位体の存在が判明して以降混乱が起こり、1961年に炭素12を基準とするように置き換えられた。
と たのしい演劇の日々
2023年08月21日
Alchemy of Actor- learning lines
Alchemy of Actor learning lines
英語の台詞を自分のものにするために 日本語の台詞の場合とは違う手法を試みる
先ず ステッピングは大前提であるが
新聞記事を読む際
見出し 次いで さらりとリード から 結末へと飛び 下から読んでゆく習慣をヒントにし
英語の台詞に取り組んだ
モノローグの場合
先ずは その台詞で一番伝えたい言葉 その一行 に取り組む
その一行を出来るだけ細かく分ける 一単語 前置詞付きの一句 等
カタカナ日本語英語は必ず発音チェック 大抵英語の発音と違うから
(cambridge dictionary appを使っている IPA表記も当然付いているが 英人発音は時に不可解)
その短い一句 一単語を其々 舌が慣れるまで何度も何度も繰り返し発声
次いで モノローグの最後へと飛ぶ しかも 文節の末尾から取り組んでゆく
同様に 一単語 或いは 前置詞付き一句 と分割して 順次発声
その一行の先頭部へと向かいながら 一歩一歩舌を慣らしてゆく
繰り返して行くうち 一語 一句が肉付いてゆくのが判る
やがて 一番伝えたい一行へたどり着くが
驚いたことに 台詞を先頭から読んでいった折には全く感じ取れなかった
この一行を境にし その前後で台詞の色合い 密度 雰囲気が違うではないか
この台詞 他者/聞き手に 一番伝えたい思いが書き込まれた台詞
そこへ導いてゆく前半部は 他者・聞き手 への細かい配慮が色濃く言葉に表されている
それに引き換え 後半部は その思いを大らかに開放している
前半部はその為に このモノローグでは 自らも体験者である事を明かし 聞き手に寄り添う
事で 他者を引き込む
いつもながら 感情は一切気に留めない
ひたすら 舌が英語の台詞に慣れ 台詞が自らの物となるまで発声
をビデオに録り 一回一回客観視することは言うまでもない
と たのしい演劇の日々
英語の台詞を自分のものにするために 日本語の台詞の場合とは違う手法を試みる
先ず ステッピングは大前提であるが
新聞記事を読む際
見出し 次いで さらりとリード から 結末へと飛び 下から読んでゆく習慣をヒントにし
英語の台詞に取り組んだ
モノローグの場合
先ずは その台詞で一番伝えたい言葉 その一行 に取り組む
その一行を出来るだけ細かく分ける 一単語 前置詞付きの一句 等
カタカナ日本語英語は必ず発音チェック 大抵英語の発音と違うから
(cambridge dictionary appを使っている IPA表記も当然付いているが 英人発音は時に不可解)
その短い一句 一単語を其々 舌が慣れるまで何度も何度も繰り返し発声
次いで モノローグの最後へと飛ぶ しかも 文節の末尾から取り組んでゆく
同様に 一単語 或いは 前置詞付き一句 と分割して 順次発声
その一行の先頭部へと向かいながら 一歩一歩舌を慣らしてゆく
繰り返して行くうち 一語 一句が肉付いてゆくのが判る
やがて 一番伝えたい一行へたどり着くが
驚いたことに 台詞を先頭から読んでいった折には全く感じ取れなかった
この一行を境にし その前後で台詞の色合い 密度 雰囲気が違うではないか
この台詞 他者/聞き手に 一番伝えたい思いが書き込まれた台詞
そこへ導いてゆく前半部は 他者・聞き手 への細かい配慮が色濃く言葉に表されている
それに引き換え 後半部は その思いを大らかに開放している
前半部はその為に このモノローグでは 自らも体験者である事を明かし 聞き手に寄り添う
事で 他者を引き込む
いつもながら 感情は一切気に留めない
ひたすら 舌が英語の台詞に慣れ 台詞が自らの物となるまで発声
をビデオに録り 一回一回客観視することは言うまでもない
と たのしい演劇の日々
2023年08月17日
Alchemy of Actor Channeling-emotion
Alchemy of Actor Channeling-emotion
エンドカンナビノイドによる逆行性伝達は脳の非常に広い範囲で起こる。
カンナビノイド、CB1受容体は脳に
CB2受容体は主に免疫系の細胞で発現(CB2受容体も一部、脳で発現)。
CB1受容体は興奮性 /抑制性ニューロンの神経終末に発現し、そのパターンは脳部位によって異なる。
exs;海馬では、一部の抑制性ニューロンに強く発現、これに比べ興奮性ニューロンは一様に低い。
海馬の抑制性ニューロンのうちでも、パルブアルブミン陽性バスケット細胞にはCB1受容体存在せず、
コレシストキニン陽性バスケット細胞に強く発現、選択的な発現パターンを示す。
これらの入力を短期/長期に抑制することで
記憶・認知、運動制御、鎮痛、食欲調節、報酬系の制御、神経保護などの様々な脳機能に関与。
エンドカンナビノイドの2-アラキドノイルグリセロール(2-AG)は
シナプス後部ニューロンの脱分極によるカルシウムイオン流入、あるいは
Gq/11タンパク質共役型受容体の活性化によって作られる。
2-AGは前駆体ジアシルグリセロール(DG)からDGリパーゼ(DGL)によって作られる。
シナプス後ニューロンで強い脱分極が起きると
電位依存性カルシウムチャネルが開いてカルシウムイオンが流入。
細胞内カルシウム濃度がμM以上に達すると、2-AG産生。また、
グループI代謝活性型グルタミン酸受容体や M1/M3ムスカリン受容体といった
Gq/11タンパク質共役型受容体の活性化によってホスホリパーゼCβを介する経路で2-AG産生。この場合、
細胞内カルシウム上昇は必要ない。さらに、
こういった受容体の活性化と脱分極による細胞内へのカルシウムイオン流入が同時に起こると、
2-AG産生が相乗的に促進。これは、
PLCβがカルシウム感受性を持つため、受容体活性化と同時に細胞内カルシウム濃度が高まると、
PLCβ活性が増強。
上記のような刺激によって産生された2-AGは
細胞膜を通って逆行性にシナプス前終末に局在するCB1受容体を活性化。
活性化したCB1受容体は
共役するGi/oタンパク質を介して シナプス前終末の電位依存性カルシウムチャネルの開口を抑制し、
神経伝達物質の放出を抑制。
ニューロンの脱分極によって生じる
エンドカンナビノイドによる逆行性シナプス伝達抑圧
depolarization-induced suppression of inhibition/excitation (DSI/DSE)とよぶ。
脱分極したニューロンに入力する抑制性入力が抑えられる場合がDSI、
興奮性入力が抑えられる場合がDSE。
単なる脱分極と違い、
生理的条件に近いシナプス刺激によって
エンドカンナビノイドによる短期の逆行性シナプス伝達抑圧が起こる。この場合、
上述のようなGq/11タンパク質共役型受容体の活性化と
細胞内へのカルシウム流入の相乗効果で2-AGが作られる。
エンドカンナビノイドは細胞外を限られた範囲でしか拡散できない。
海馬では10~20μm程度。
2-AG分解酵素モノアシルグリセロールリパーゼ(MGL)は
シナプス前終末に局在、逆行性に運ばれて来た2-AGを速やかに分解 。
エンドカンナビノイド - 2-AG が様々なシナプスにおいて逆行性伝達物質として普遍的に働くのに対し
アナンダミドは限られたシナプスにおいてのみ逆行性伝達物質として働く。
エンドカンナビノイドは長期抑圧現象 (LTD)の誘導にも寄与す。
興奮性シナプスでみられるエンドカンナビノイド依存性のLTDは、
背側線条体、大脳皮質、側坐核、小脳、海馬、背側蝸牛神経核などで。一方、
抑制性シナプスでは、扁桃体、海馬、大脳皮質、腹側被蓋野などで。
エンドカンナビノイド依存性のLTD(eCB-LTD)誘導には
LTD誘発刺激中にエンドカンナビノイドが産生されて
シナプス前終末のCB1受容体が活性化されることが必須。
海馬ではCB1受容体が5-10分間、活性化されることがLTD誘導に必須、
LTDの維持にCB1受容体活性は不要。
LTD誘発刺激条件は脳部位によって様々だが
シナプス後部ニューロンへのカルシウムイオン流入 あるいは
グループI代謝活性型グルタミン酸受容体の活性化を介してエンドカンナビノイド産生が引き起こされる。
エンドカンナビノイドは興奮性シナプスで作られるので、
抑制性シナプスで起こるeCB-LTDは異シナプス的に誘導されるLTD。
小脳を除いて、eCB-LTDの発現は、すべてシナプス前性の可塑的変化による。しかし
数分間のCB1受容体の活性化がどのようにして長期の神経伝達物質放出の抑制を誘導するのかは不明。
海馬においてはシナプス前終末におけるRIM1αの作用と、
カルシウムイオン流入によるカルシニューリンの活性化が必須。
同じシナプス後細胞へのカルシウムイオン流入で
エンドカンナビノイド依存性のLTD以外にもLTPなどのシナプス可塑性が引き起こされ
どのようにしてこれらのシナプス可塑性が選択的に引き起こされるのかは不明。
大脳皮質のスパイクタイミング依存性LTP/LTDでは選択的に起こる。
プレーポストの順番で刺激されるとNMDA受容体が働きLTPが誘導され、
逆の順番ではグループI代謝活性型グルタミン酸受容体が強く活性化され
上述のPLCβ活性の相乗効果でエンドカンナビノイドが作られLTDが誘導。また
背側蝸牛神経核ではLTPとエンドカンナビノイド依存性LTDが同時に起こる
がLTPがマスクされ結果LTDも起こる。一方、
小脳ではプルキンエ細胞の脱分極でDSEと他の可塑性が時間差をおいて引き起こされる。
と たのしい演劇の日々
エンドカンナビノイドによる逆行性伝達は脳の非常に広い範囲で起こる。
カンナビノイド、CB1受容体は脳に
CB2受容体は主に免疫系の細胞で発現(CB2受容体も一部、脳で発現)。
CB1受容体は興奮性 /抑制性ニューロンの神経終末に発現し、そのパターンは脳部位によって異なる。
exs;海馬では、一部の抑制性ニューロンに強く発現、これに比べ興奮性ニューロンは一様に低い。
海馬の抑制性ニューロンのうちでも、パルブアルブミン陽性バスケット細胞にはCB1受容体存在せず、
コレシストキニン陽性バスケット細胞に強く発現、選択的な発現パターンを示す。
これらの入力を短期/長期に抑制することで
記憶・認知、運動制御、鎮痛、食欲調節、報酬系の制御、神経保護などの様々な脳機能に関与。
エンドカンナビノイドの2-アラキドノイルグリセロール(2-AG)は
シナプス後部ニューロンの脱分極によるカルシウムイオン流入、あるいは
Gq/11タンパク質共役型受容体の活性化によって作られる。
2-AGは前駆体ジアシルグリセロール(DG)からDGリパーゼ(DGL)によって作られる。
シナプス後ニューロンで強い脱分極が起きると
電位依存性カルシウムチャネルが開いてカルシウムイオンが流入。
細胞内カルシウム濃度がμM以上に達すると、2-AG産生。また、
グループI代謝活性型グルタミン酸受容体や M1/M3ムスカリン受容体といった
Gq/11タンパク質共役型受容体の活性化によってホスホリパーゼCβを介する経路で2-AG産生。この場合、
細胞内カルシウム上昇は必要ない。さらに、
こういった受容体の活性化と脱分極による細胞内へのカルシウムイオン流入が同時に起こると、
2-AG産生が相乗的に促進。これは、
PLCβがカルシウム感受性を持つため、受容体活性化と同時に細胞内カルシウム濃度が高まると、
PLCβ活性が増強。
上記のような刺激によって産生された2-AGは
細胞膜を通って逆行性にシナプス前終末に局在するCB1受容体を活性化。
活性化したCB1受容体は
共役するGi/oタンパク質を介して シナプス前終末の電位依存性カルシウムチャネルの開口を抑制し、
神経伝達物質の放出を抑制。
ニューロンの脱分極によって生じる
エンドカンナビノイドによる逆行性シナプス伝達抑圧
depolarization-induced suppression of inhibition/excitation (DSI/DSE)とよぶ。
脱分極したニューロンに入力する抑制性入力が抑えられる場合がDSI、
興奮性入力が抑えられる場合がDSE。
単なる脱分極と違い、
生理的条件に近いシナプス刺激によって
エンドカンナビノイドによる短期の逆行性シナプス伝達抑圧が起こる。この場合、
上述のようなGq/11タンパク質共役型受容体の活性化と
細胞内へのカルシウム流入の相乗効果で2-AGが作られる。
エンドカンナビノイドは細胞外を限られた範囲でしか拡散できない。
海馬では10~20μm程度。
2-AG分解酵素モノアシルグリセロールリパーゼ(MGL)は
シナプス前終末に局在、逆行性に運ばれて来た2-AGを速やかに分解 。
エンドカンナビノイド - 2-AG が様々なシナプスにおいて逆行性伝達物質として普遍的に働くのに対し
アナンダミドは限られたシナプスにおいてのみ逆行性伝達物質として働く。
エンドカンナビノイドは長期抑圧現象 (LTD)の誘導にも寄与す。
興奮性シナプスでみられるエンドカンナビノイド依存性のLTDは、
背側線条体、大脳皮質、側坐核、小脳、海馬、背側蝸牛神経核などで。一方、
抑制性シナプスでは、扁桃体、海馬、大脳皮質、腹側被蓋野などで。
エンドカンナビノイド依存性のLTD(eCB-LTD)誘導には
LTD誘発刺激中にエンドカンナビノイドが産生されて
シナプス前終末のCB1受容体が活性化されることが必須。
海馬ではCB1受容体が5-10分間、活性化されることがLTD誘導に必須、
LTDの維持にCB1受容体活性は不要。
LTD誘発刺激条件は脳部位によって様々だが
シナプス後部ニューロンへのカルシウムイオン流入 あるいは
グループI代謝活性型グルタミン酸受容体の活性化を介してエンドカンナビノイド産生が引き起こされる。
エンドカンナビノイドは興奮性シナプスで作られるので、
抑制性シナプスで起こるeCB-LTDは異シナプス的に誘導されるLTD。
小脳を除いて、eCB-LTDの発現は、すべてシナプス前性の可塑的変化による。しかし
数分間のCB1受容体の活性化がどのようにして長期の神経伝達物質放出の抑制を誘導するのかは不明。
海馬においてはシナプス前終末におけるRIM1αの作用と、
カルシウムイオン流入によるカルシニューリンの活性化が必須。
同じシナプス後細胞へのカルシウムイオン流入で
エンドカンナビノイド依存性のLTD以外にもLTPなどのシナプス可塑性が引き起こされ
どのようにしてこれらのシナプス可塑性が選択的に引き起こされるのかは不明。
大脳皮質のスパイクタイミング依存性LTP/LTDでは選択的に起こる。
プレーポストの順番で刺激されるとNMDA受容体が働きLTPが誘導され、
逆の順番ではグループI代謝活性型グルタミン酸受容体が強く活性化され
上述のPLCβ活性の相乗効果でエンドカンナビノイドが作られLTDが誘導。また
背側蝸牛神経核ではLTPとエンドカンナビノイド依存性LTDが同時に起こる
がLTPがマスクされ結果LTDも起こる。一方、
小脳ではプルキンエ細胞の脱分極でDSEと他の可塑性が時間差をおいて引き起こされる。
と たのしい演劇の日々
2023年08月16日
Alchemy of Actor Channeling-emotion
Alchemy of Actor Channeling-emotion
DSI-Depolarization-induced suppression of inhibition脱分極誘導性脱抑制
ニューロンが脱分極したときに、
そのニューロンに入力している抑制性シナプス応答が一過性(1〜2分間程度)に抑制される現象。
同じ現象が興奮性シナプスで起こる場合、Depolarization-induced suppression of excitation (DSE)と呼ぶ。
エンドカンナビノイドが担う逆行性シナプス伝達の一種。
脱分極により細胞内へのカルシウムイオン流入しエンドカンナビノイドの一種で2-AG産生。
シナプス後部でつくられた2-AGは細胞外へ放出され、
シナプス間隙を逆行しシナプス前終末に局在するカンナビノイド受容体I型(CB1)に結合 活性化。
CB1受容体の活性化は神経伝達物質の放出を一過性に抑制。
DSI/DSEの発生条件として、そのニューロンに2-AGを産生する能力(2-AG合成酵素の有無)があり、
かつ入力するシナプス前終末にCB1受容体が存在することが必要。
脳の広範囲のシナプスにおいてDSI/DSEが引き起こされる。
現在までに、海馬、小脳、線条体、大脳皮質、扁桃体、脳幹など
脳の様々な部位でDSI/DSEが起こることが報告されている。
エンドカンナビノイドはカンナビノイド受容体に対するリガンドの総称、複数存在。
その中でも2-AGがDSI/DSEを仲介する逆行性伝達物質として働く。
2-AGは膜のリン脂質から2つの酵素反応によって生成。
ホスホリパーゼC(PLC)活性の産物であるジアシルグリセロール(DG)が前駆体となり、
ジアシルグリセロールリパーゼ(DGL)による加水分解で2-AGが作られる。
DGLを薬理的に阻害するとDSI/DSEがブロックされる。
ただしDGLの薬理的阻害がDSI/DSEに影響しないという報告もある。しかし、
αとβの2つのサブタイプを有するDGLのうち
DGLαノックアウトマウスで海馬、小脳、線条体、扁桃体、前頭前野皮質という
5つの異なった脳部位でDSI/DSEが消失、DSIに DGLαが必須。さらに
2-AGの分解酵素モノアシルグリセロールリパーゼを薬理的あるいは遺伝子欠損によって阻害すると
DSI/DSEの持続時間が遷延。
2-AGは逆行性伝達物質。
DSIのメカニズム;
脱分極による細胞内へのカルシウムイオン流入が引き金となり細胞膜のリン脂質からDG産生。
DGはDGLにより加水分解され2-AG産生。
2-AGは細胞膜を通って細胞外へ放出され、シナプス前終末に局在するCB1受容体を活性化。
Gi/oタンパク質共役型受容体であるCB1受容体の活性化は
Gi/oタンパク質を介してカルシウムチャネルを抑制。あるいは
カリウムチャネルを活性化。
その結果、神経終末でのカルシウムイオン流入がブロックされ神経伝達物質の放出抑制。
シナプス後細胞での脱分極によるカルシウムイオン流入からどのようにしてDGが作られるのかは未だ不明。
すくなくともDSI/DSEは、PLCβやPLCδを欠損するマウスでも全く影響されないことから
PLCβ,PLCδ以外のPLCか、または別の分子を介するか?
グループI代謝活性型グルタミン酸受容体やM1/M3ムスカリン受容体の
アゴニスト存在下でニューロンを脱分極させると、DSI/DSE促進。すなわち
弱い脱分極でも、大きなDSIを引き起こす。
この現象のメカニズムにより グループI代謝活性型グルタミン酸受容体やM1/M3ムスカリン受容体
といったGq/11タンパク質共役型受容体はPLCβを活性化。
PLCβがカルシウム感受性を持つため、
受容体活性化に加えて脱分極による細胞内カルシウム流入が生じると、
PLCβ活性が増強し2-AGの前駆体であるDG産生が促進される。結果、
2-AGが効率よく作られ、DSIが起きやすくなる。つまり
「Gq/11共役型受容体活性化により2-AGを介する逆行性シナプス伝達抑圧の、
細胞内カルシウム上昇による促進」
神経細胞の強い脱分極だけで生ずるDSI/DSEは、PLCβ欠損マウスでも全く影響されない、
PLCβ以外のPLCか、または別の分子を介するか?
「DSIの促進」は機能的に重要な役割を担う exa、
線条体でアセチルコリン作動性抑制性ニューロンの発火により恒常的に細胞外にアセチルコリン存在。
そのため中型有棘神経細胞のシナプスでM1ムスカリン受容体が慢性的に活性化
弱い脱分極でもDSIが引き起こされる。
エンドカンナビノイドの細胞外での拡散範囲は限られている。したがって、
DSIは脱分極した細胞の近傍の細胞にしか及ばない。exa,
海馬CA1錐体細胞のDSIは
脱分極した細胞からの距離が20 μm以内であれば脱分極していない細胞でもDSIが起こる。
小脳では間接的なメカニズムにより遠くまでDSIの伝播が起こる。
脱分極によってプルキンエ細胞から放出されたエンドカンナビノイドが、
近傍の抑制性ニューロンのCB1受容体を活性化。
内向き整流性カリウムチャネルがCB1受容体の下流にあり、
このカリウムチャネルの活性化は抑制性ニューロンの発火を抑制。その結果、
発火が抑えられた抑制性ニューロンが投射している多くのプルキンエ細胞において入力が抑制される。
DSI/DSEはネガティブフィードバックとして働き局所回路においてシナプス伝達を制御する。
短期のシナプス可塑性DSIは神経回路の計算論的観点からも注目。また
DSIがメタ可塑性に関わる。
海馬CA1において閾値以下のテタヌス刺激では長期増強(LTP)を引き起こさないような場合でも
テタヌス刺激に先行してDSIを誘導させると次に来る閾値以下であった刺激でもLTPが誘導される。
DSIによる脱抑制が原因である。
DSI/DSEを誘導するには細胞内のカルシウム濃度がμMレベルにまで達しなければならない。
実際に生理的条件下でそのように大きなカルシウム濃度上昇を引き起こすほど
ニューロンが長時間脱分極するかどうかは疑わしい。したがって
DSIが生理的な現象であることを疑問視もある。しかし一方で、
小脳プルキンエ細胞や背側蝸牛神経核にあるCartwheel細胞の
持続的な発火によるμM以下のカルシウム濃度上昇でもDSI/DSEが起こることから
DSI/DSEが生理的現象である可能性も。
エンドカンナビノイドはDSIのような細胞内カルシウム濃度上昇だけでなく、
グループI代謝活性型グルタミン酸受容体といった
Gq/11タンパク質共役型受容体の活性化によっても産生・放出される。さらに
「DSIの促進効果」により弱い脱分極でもGq/11タンパク質共役型受容体の活性化と組合わさると、
効率よく逆行性シナプス伝達抑制が引き起こされる。したがって
生理的条件下ではDSIが単独で起こるよりも
Gq/11タンパク質共役型受容体の活性化を伴った神経活動によって
エンドカンナビノイドによる逆行性シナプス伝達抑制が引き起こされる。
と たのしい演劇の日々
DSI-Depolarization-induced suppression of inhibition脱分極誘導性脱抑制
ニューロンが脱分極したときに、
そのニューロンに入力している抑制性シナプス応答が一過性(1〜2分間程度)に抑制される現象。
同じ現象が興奮性シナプスで起こる場合、Depolarization-induced suppression of excitation (DSE)と呼ぶ。
エンドカンナビノイドが担う逆行性シナプス伝達の一種。
脱分極により細胞内へのカルシウムイオン流入しエンドカンナビノイドの一種で2-AG産生。
シナプス後部でつくられた2-AGは細胞外へ放出され、
シナプス間隙を逆行しシナプス前終末に局在するカンナビノイド受容体I型(CB1)に結合 活性化。
CB1受容体の活性化は神経伝達物質の放出を一過性に抑制。
DSI/DSEの発生条件として、そのニューロンに2-AGを産生する能力(2-AG合成酵素の有無)があり、
かつ入力するシナプス前終末にCB1受容体が存在することが必要。
脳の広範囲のシナプスにおいてDSI/DSEが引き起こされる。
現在までに、海馬、小脳、線条体、大脳皮質、扁桃体、脳幹など
脳の様々な部位でDSI/DSEが起こることが報告されている。
エンドカンナビノイドはカンナビノイド受容体に対するリガンドの総称、複数存在。
その中でも2-AGがDSI/DSEを仲介する逆行性伝達物質として働く。
2-AGは膜のリン脂質から2つの酵素反応によって生成。
ホスホリパーゼC(PLC)活性の産物であるジアシルグリセロール(DG)が前駆体となり、
ジアシルグリセロールリパーゼ(DGL)による加水分解で2-AGが作られる。
DGLを薬理的に阻害するとDSI/DSEがブロックされる。
ただしDGLの薬理的阻害がDSI/DSEに影響しないという報告もある。しかし、
αとβの2つのサブタイプを有するDGLのうち
DGLαノックアウトマウスで海馬、小脳、線条体、扁桃体、前頭前野皮質という
5つの異なった脳部位でDSI/DSEが消失、DSIに DGLαが必須。さらに
2-AGの分解酵素モノアシルグリセロールリパーゼを薬理的あるいは遺伝子欠損によって阻害すると
DSI/DSEの持続時間が遷延。
2-AGは逆行性伝達物質。
DSIのメカニズム;
脱分極による細胞内へのカルシウムイオン流入が引き金となり細胞膜のリン脂質からDG産生。
DGはDGLにより加水分解され2-AG産生。
2-AGは細胞膜を通って細胞外へ放出され、シナプス前終末に局在するCB1受容体を活性化。
Gi/oタンパク質共役型受容体であるCB1受容体の活性化は
Gi/oタンパク質を介してカルシウムチャネルを抑制。あるいは
カリウムチャネルを活性化。
その結果、神経終末でのカルシウムイオン流入がブロックされ神経伝達物質の放出抑制。
シナプス後細胞での脱分極によるカルシウムイオン流入からどのようにしてDGが作られるのかは未だ不明。
すくなくともDSI/DSEは、PLCβやPLCδを欠損するマウスでも全く影響されないことから
PLCβ,PLCδ以外のPLCか、または別の分子を介するか?
グループI代謝活性型グルタミン酸受容体やM1/M3ムスカリン受容体の
アゴニスト存在下でニューロンを脱分極させると、DSI/DSE促進。すなわち
弱い脱分極でも、大きなDSIを引き起こす。
この現象のメカニズムにより グループI代謝活性型グルタミン酸受容体やM1/M3ムスカリン受容体
といったGq/11タンパク質共役型受容体はPLCβを活性化。
PLCβがカルシウム感受性を持つため、
受容体活性化に加えて脱分極による細胞内カルシウム流入が生じると、
PLCβ活性が増強し2-AGの前駆体であるDG産生が促進される。結果、
2-AGが効率よく作られ、DSIが起きやすくなる。つまり
「Gq/11共役型受容体活性化により2-AGを介する逆行性シナプス伝達抑圧の、
細胞内カルシウム上昇による促進」
神経細胞の強い脱分極だけで生ずるDSI/DSEは、PLCβ欠損マウスでも全く影響されない、
PLCβ以外のPLCか、または別の分子を介するか?
「DSIの促進」は機能的に重要な役割を担う exa、
線条体でアセチルコリン作動性抑制性ニューロンの発火により恒常的に細胞外にアセチルコリン存在。
そのため中型有棘神経細胞のシナプスでM1ムスカリン受容体が慢性的に活性化
弱い脱分極でもDSIが引き起こされる。
エンドカンナビノイドの細胞外での拡散範囲は限られている。したがって、
DSIは脱分極した細胞の近傍の細胞にしか及ばない。exa,
海馬CA1錐体細胞のDSIは
脱分極した細胞からの距離が20 μm以内であれば脱分極していない細胞でもDSIが起こる。
小脳では間接的なメカニズムにより遠くまでDSIの伝播が起こる。
脱分極によってプルキンエ細胞から放出されたエンドカンナビノイドが、
近傍の抑制性ニューロンのCB1受容体を活性化。
内向き整流性カリウムチャネルがCB1受容体の下流にあり、
このカリウムチャネルの活性化は抑制性ニューロンの発火を抑制。その結果、
発火が抑えられた抑制性ニューロンが投射している多くのプルキンエ細胞において入力が抑制される。
DSI/DSEはネガティブフィードバックとして働き局所回路においてシナプス伝達を制御する。
短期のシナプス可塑性DSIは神経回路の計算論的観点からも注目。また
DSIがメタ可塑性に関わる。
海馬CA1において閾値以下のテタヌス刺激では長期増強(LTP)を引き起こさないような場合でも
テタヌス刺激に先行してDSIを誘導させると次に来る閾値以下であった刺激でもLTPが誘導される。
DSIによる脱抑制が原因である。
DSI/DSEを誘導するには細胞内のカルシウム濃度がμMレベルにまで達しなければならない。
実際に生理的条件下でそのように大きなカルシウム濃度上昇を引き起こすほど
ニューロンが長時間脱分極するかどうかは疑わしい。したがって
DSIが生理的な現象であることを疑問視もある。しかし一方で、
小脳プルキンエ細胞や背側蝸牛神経核にあるCartwheel細胞の
持続的な発火によるμM以下のカルシウム濃度上昇でもDSI/DSEが起こることから
DSI/DSEが生理的現象である可能性も。
エンドカンナビノイドはDSIのような細胞内カルシウム濃度上昇だけでなく、
グループI代謝活性型グルタミン酸受容体といった
Gq/11タンパク質共役型受容体の活性化によっても産生・放出される。さらに
「DSIの促進効果」により弱い脱分極でもGq/11タンパク質共役型受容体の活性化と組合わさると、
効率よく逆行性シナプス伝達抑制が引き起こされる。したがって
生理的条件下ではDSIが単独で起こるよりも
Gq/11タンパク質共役型受容体の活性化を伴った神経活動によって
エンドカンナビノイドによる逆行性シナプス伝達抑制が引き起こされる。
と たのしい演劇の日々
2023年08月09日
Alchemy of Actor-Channeling-emotion アラキドン酸
Alchemy of Actor Channeling-emotion
arachidonic acidアラキドン酸
Chemical formula; C20H32O2
アラキドン酸は4つのcis二重結合を有する20個の炭素鎖からなる脂肪酸。
メチル末端(ω or n)から数えて最初の二重結合が6番目と7番目の炭素の間に位置するため、
ω-6 (n-6)多価不飽和脂肪酸に含まれ、20:4ω-6と記載 。
アラキドン酸は、主に細胞膜のリン脂質のsn-2位にエステル化されて存在 。
主にグリセロリン脂質にコリンが結合したホスファチジルコリンに含まれるが、
ホスファチジルイノシトールなど他のグリセロリン脂質にも含まれる 。
刺激に応じホスホリパーゼA2phospholipase A2; PLA2 の酵素活性により細胞膜から遊離 、
エンドカンナビノイドの2-アラキドノイルグリセロール (2-AG)や
アナンダマイド(anandamide; の構成成分として細胞膜から遊離 。
エンドカンナビノイドはそれ自体で生理活性を有するが、代謝されて遊離アラキドン酸を産生 。
遊離アラキドン酸の大半は細胞膜のリン脂質に再度取り込まれるため、その濃度は低く維持されている 。
遊離アラキドン酸はプロスタノイドやロイコトリエンなど多様な生理活性脂質に変換され、
摂食、睡眠・覚醒、脳血流など生理的な脳機能の他、
疾病時の発熱や内分泌応答、疼痛、てんかん、脳虚血、ストレス、神経・精神疾患など様々な病態にも関与.
アラキドン酸は、肉、卵、魚介類などの食品から得られ
、細胞内のリン脂質に取り込まれ、様々な生体膜の合成に使用 。
実験(ラット使用)では、離乳後3〜4カ月の間ω-6 多価不飽和脂肪酸を欠乏させると、
脳内のアラキドン酸含有量が約30%減少 。
成人では、脳で代謝されるアラキドン酸は血漿から補われ、
脳内のアラキドン酸の含有量は一定に保たれている。
ヒトのPETイメージングにより、脳内へ取り込まれる血漿中のアラキドン酸は約18mg/日、
脳内におけるアラキドン酸の半減期は約147日 。
アラキドン酸は、18個の炭素鎖からなり2つのcis二重結合を含む
ω-6多価不飽和脂肪酸の1種であるリノール酸(18:2ω-6)からも産生。
リノール酸は必須脂肪酸、ナッツなどの種実類や植物油は豊富に含む 。
体内に取り込まれたリノール酸は、段階的な不飽和化 脂肪鎖伸長により
アラキドン酸やドコサテトラエン酸(22:4ω-6)などの脂肪酸に変換される。
リノール酸はΔ6不飽和化酵素fatty acid desaturase 2; FADS2)による脱水素化を介して
二重結合が付与されγ-リノレン酸(18:3ω-6)になる。
その後、γ-リノレン酸からΔ6脂肪酸伸長酵素(Δ6 elongase)により
脂肪酸が伸長されジホモ-γ-リノレン酸(20:3ω-6)になる。
Δ5不飽和化酵素(fatty acid desaturase 1; FADS1)によりジホモ-γ-リノレン酸からアラキドン酸産生 。
Δ5不飽和化酵素やΔ6不飽和化酵素の活性は、栄養、喫煙、老化などの要因により変動、肥満に関与。
脳内ではアラキドン酸を含むほとんどの多価不飽和脂肪酸は
長鎖脂肪酸CoAリガーゼ(long-chain-fatty-acid-CoA synthase; ACSL)により活性化、
細胞膜のリン脂質にエステル化される他、
エネルギー源としてβ酸化により代謝されアセチルCoAの産生を促す。
アラキドン酸の代謝効率は、
細胞膜にある脂肪酸トランスポーターや
脂肪酸結合タンパク質fatty acid-binding protein; FABP)により影響を受ける。
遊離アラキドン酸はACSLによりアラキドノイルCoAarachidonoyl-CoA)となって活性化され、
アシルトランスフェラーゼacyltransferase)により細胞膜のリン脂質のsn-2位に取り込まれる 。
リン脂質産生2つの生化学的経路
ケネディー経路(Kennedy Pathway):
リン脂質はグリセロール-3-リン酸から脂肪酸の付加により新たに合成される
この経路では、
グリセロール-3-リン酸アシルトランスフェラーゼglycerol-3-phosphate acyltransferase; GPAT)が
グリセロール-3-リン酸GP)のsn-1位に脂肪酸をエステル化により付加、
リゾリン脂質の一種であるリゾホスファチジン酸lysophosphatidic acid)生成。続いて、
リゾホスファチジン酸アシルトランスフェラーゼlysophosphatidic acid acyltransferase; LPAAT)が
リゾホスファチジン酸のsn-2位に脂肪酸をエステル化により付加し、
ホスファチジン酸phosphatidic acid)を生成。
ホスファチジン酸はジアシルグリセロールdiacylglycerol; DAG)に変換され、
トリアシルグリセロールtriglyceride)、ホスファチジルコリンphosphatidylcholine; PC)、
ホスファチジルエタノラミンphosphatidylethanolamine; PE)、
ホスファチジルセリン(phosphatidylserine; PS)が産生。また、
ホスファチジン酸は
シチジン二リン酸ジアシルグリセロールcytidine diphosphate-DAG; CDP-DAG)にも変換され、
ホスファチジルイノシトールphosphatidylinositol; PI)、ホスファチジルセリン、
ホスファチジルグリセロールphosphatidylglycerol; PG)、カルジオリピンcardiolipin; CL)産生。
ランズ回路Lands Cycle:
一度生成されたリン脂質では、sn-2位に含まれる脂肪酸が代謝回転。
PLA2 によりsn-2位の脂肪酸が遊離、リゾリン脂質生成。
リゾリン脂質アシルトランスフェラーゼは、
生成されたリゾリン脂質のsn-2位に脂肪酸をエステル化により付加、その結果、
リゾリン脂質はリン脂質に戻る。
ランズ回路を担うリゾリン脂質アシルトランスフェラーゼlysophospholipid acyltransferase; LPLAT)には
数多くのアイソフォームが存在、それぞれ基質とするリゾリン脂質や脂肪酸の種類に特異性あり 。
遺伝子欠損マウスを用いた解析が精力的に進められている。
exa, LPCAT3 lysophosphatidylcholine acyltransferase 3)の欠損で、
ランズ回路によるホスファチジルコリンへのアラキドン酸の再取り込み障害、
細胞膜中のアラキドン酸の含有量が大きく減少 。
リゾリン脂質アシルトランスフェラーゼの各アイソフォームは、基質特異性に加え、
特異的細胞内局在や発現分布を取り、その結果、細胞膜のリン脂質の非対称性 多様性が生まれる 。
細胞膜からの放出 2種類のメカニズム:
細胞が成長因子、ホルモン、サイトカインなど様々な細胞外刺激に曝されると
遊離アラキドン酸が産生される 。
PLA2による細胞膜からのアラキドン酸の遊離と、
アラキドン酸を構造に含むエンドカンナビノイドの代謝による遊離アラキドン酸の産生。しかし、
いずれの経路が働くかは脳領域や細胞種、刺激によって異なる、実態不明。
各経路の機能的意義に関わり、今後精査が必要。
細胞膜からの放出後は、遊離アラキドン酸の90%以上は
直ちにACSLを介してアラキドノイルCoA/arachidonoyl-CoA)となり活性化、
リゾリン脂質アシルトランスフェラーゼにより細胞膜のリン脂質のsn-2位に再エステル化されて再利用 。
1,細胞膜のリン脂質のsn-2位に含まれるアラキドン酸がPLA2によって遊離 。
PLA2は分泌型PLA2secretory PLA2; sPLA2)、細胞質型PLA2cytosolic PLA2; cPLA2)、
Ca2+非依存型PLA2Ca2+-independent PLA2; iPLA2)に大別。
各グループは異なる遺伝子がコードする複数のアイソフォーム存在、制御機構や脂質選択性が異なる 。
cPLA2αを含むcPLA2の多くはその活性化に細胞内Ca2+濃度の上昇を必要。
アラキドン酸の細胞膜からの遊離にはcPLA2とsPLA2が関与、
iPLA2は脂質リモデリングを司るランズ回路に関与 。
cPLA2α欠損マウスのマクロファージや消化管で、
細菌内毒素リポポリサッカライドによるアラキドン酸の遊離消失 。また、
マクロファージ細胞株で、
脂質メディエイター血小板活性化因子platelet activating factor; PAF)による
アラキドン酸遊離はcPLA2阻害薬MAFPとsPLA2阻害薬diC6SNPEにより抑制 。
神経活動依存的にPLA2を介するアラキドン酸遊離が誘導される。
[14C]標識アラキドン酸を用いた実験で
ラットの大脳皮質や線条体でのアラキドン酸の取り込みがドパミンD2受容体のアゴニスト投与により亢進 。
また、[3H]標識アラキドン酸を用いた実験で、
線条体の初代培養神経細胞におけるアラキドン酸の遊離がNMDA型グルタミン酸受容体の活性化により促進 、その促進がPLA2を阻害するmepacrine(quinacrine)により阻害される 。
さらに、小脳プルキンエ細胞のシナプス長期抑制(long-term depression; LTD)は
cPLA2α欠損マウスで消失、
この異常がアラキドン酸やその生理活性代謝物であるプロスタグランジンD2、E2の補充により回復 。
エンドカナビノイドの代謝による遊離アラキドン酸の産生
脳、肝臓、肺で、LPSの全身性投与による遊離アラキドン酸の上昇は
cPLA2α欠損マウスでも影響を受けず、
モノアシルグリセロールリパーゼmonoacylglycerol lipase; MGL)遺伝子欠損マウスや
阻害薬投与により消失 。この結果は、
これら臓器では主にエンドカナビノイドの2-AGがMGLにより代謝され遊離アラキドン酸を生ず。
2-AGはシナプス活動に伴う細胞内のCa2+濃度上昇によりシナプス後部で産生、
シナプス前部のカンナビノイド受容体CB1に作用、逆行性にシナプス伝達を抑制。
2-AGは、主にsn-2位にアラキドン酸を含むホスファチジルイノシトールphosphatidylinositol)が
ホスホリパーゼCphospholipase C; PLC)によりジアシルグリセロールに代謝され、
さらにDAGがジアシルグリセロールリパーゼdiacylglycerol lipase; DGL)により代謝されて生ずる 。
遊離アラキドン酸はアナンダマイドanandamide; )からも産生。
アナンダマイドは、主にsn-2位にアラキドン酸を含むホスファチジルエタノラミンが
N-アシルトランスフェラーゼによりN-アラキドノイルホスファチジルエタノラミンN-arachidonoyl phosphatidylethanolamine)に代謝され、
さらにホスホリパーゼDphospholipase D)により代謝されて生ずる。
アナンダマイドは脂肪酸アミド加水分解酵素fatty acid amide hydrolase; FAAH)によっ
て代謝され遊離アラキドン酸を生ず 。
アラキドン酸カスケード
細胞膜から遊離したアラキドン酸は、シクロオキシゲナーゼcyclooxygenase; COX)、
リポキシゲナーゼlipoxygenase; LOX)、シトクロムcytochrome)
P-450ファミリーに属するエポキシゲナーゼepoxygenase; EOX)の
いずれかを律速酵素とする三つの経路により代謝され、特異的作用を持った生理活性脂質を生ず 。
これら生理活性脂質はアラキドン酸由来の20個の炭素鎖を持つことから、
エイコサノイド(eicosanoid ギリシャ語の20を意味すeicosa )と呼ぶ 。
1,シクロオキシゲナーゼ(COX)経路;
遊離アラキドン酸はCOXによりプロスタグランジンprostaglandin; PG)G2、さらにPGH2に変換。
PGH2はPGD合成酵素、PGE合成酵素、PGF合成酵素、PGI合成酵素、トロンボキサンA合成酵素を介しPGD2、PGE2、PGF2α、PGI2、トロンボキサンA2といったプロスタノイドに変換、
それぞれDP、EP、FP、IP、TPと呼ばれる選択的なGタンパク質共役型受容体に結合し作用発揮。
プロスタノイドは、
循環器・消化器・骨の恒常性維持、生殖器の機能、局所炎症に伴う血管透過性亢進、細胞性免疫応答など
全身の様々な機能を担う。
特に脳では、摂食、睡眠・覚醒、脳血流など生理的な脳機能の他、
疾病時の発熱 内分泌応答、疼痛、てんかん、脳虚血、ストレス、神経・精神疾患など様々な病態に関与。
2, リポキシゲナーゼ (LOX)経路;
遊離アラキドン酸は基質特異性の異なるLOXにより複数のヒドロペルオキシエイコサテトラエン酸Hydroperoxyeicosatetraenoic acid; HpETE)に変換、
さらに酵素的・非酵素的反応を介しロイコトリエンleukotriene)ヒドロキシエイコサテトラエン酸Hydroxyeicosatetraenoic acid; HETE)など多様な生理活性脂質に変換 。
主には12-LOXや15-LOXを介し8-HpETE、12-HpETE、15-HpETE産生、5-LOXと
5-lipoxygenase-activating protein (FLAP)を介し5-HpETE産生。
5-HpETEは速やかな脱水反応によりLTA4となり、LTA4はLTA4加水分解酵素LTA4 hydrolase)により
速やかにLTB4を生ずるか、LTC4合成酵素LTC4 synthase)によりLTC4を生ず。
LTC4はさらにLTD4、LTE4になる。
LTA4産生酵素を持たない細胞でも、近傍の細胞からLTA4の供給を受け、LTC4産生。
この現象を細胞間生合成経路transcellular biosynthesis)と呼ぶ。
LTA4・LTB4とLTC4・LTD4・LTE4は、システイン残基の有無により構造が大きく異り、
作用する受容体も異なる。
BLT1とBLT2はLTA4・LTB4をリガンドとするGタンパク質共役型受容体として同定された。しかし、
BLT1の親和性がBLT2に比し高く、
BLT2には親和性の高い12-ヒドロキシヘプタデカトリエン酸 12-hydroxyheptadecatrienoic acid; 12-HHT)
というリガンドが存在 。
LTC4・LTD4・LTE4からなるシスティニルロイコトリエンcysteinyl leukotrienes; Cys-LT)は
主にCysLT受容体のI型CysLT1R)とII型CysLT2R)に結合し作用発揮。
ロイコトリエンは、
好中球の走化性・凝集・細胞接着・脱顆粒化、平滑筋収縮、血管の透過性や収縮の調節、粘液分泌の増強、
免疫制御、炎症性疼痛、喘息、アレルギー性鼻炎、アレルギー性結膜炎、アトピー性皮膚炎、嚢胞性線維症、慢性閉塞性肺疾患、糸球体腎炎、麻痺性関節炎、乾癬、炎症性腸疾患、間質性肺疾患など
様々な生理的機能や疾患に関与。また、
ロイコトリエンは、脳損傷、多発性硬化症、アルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン舞踏病、
てんかん、うつ、加齢など多様な脳疾患と関連 。
3,エポキシゲナーゼ(EOX)経路;
遊離アラキドン酸は基質特異性の異なるEOXにより
複数のHETEやエポキシエイコサトリエン酸Epoxyeicosatrienoic acid; EET)に変換、
さらにEETはエポキシド加水分解酵素epoxide hydrolase; EH)により
多様なジヒドロキシエイコサトリエン酸dihydroxyeicosatrienoic acid; DHET)に変換 。
EETは、血管拡張、血管新生制御、抗炎症作用、さらに虚血再灌流への保護作用を有する。
しかしこれら脂質の受容体は確定しておらず、その作用機序には不明。
脳機能関連は、
ラットのひげ刺激に伴う感覚野での機能性充血は
EOXの二つの異なる阻害薬MS-PPOHとミコナゾールにより阻害 。一方、
神経細胞の過興奮に続く抑制が次第に広がるcortical spreading depression病態モデルとして、
アストロサイトでのCa2+上昇による大脳皮質の脳血管収縮の研究では、
この脳血管収縮がPLA2を阻害するMAFPや、
血管収縮活性を持つ20-HETEの生合成酵素であるEOXの一種CYP4Aを阻害するHET0016の処置により消失 。
これらの研究は、受容体同定を含めた作用機序の解明が必要。
遊離アラキドン酸のカリウムチャネルへの作用
アフリカツメガエル卵母細胞での強制発現系で、
遊離アラキドン酸やその非代謝型類似体である
5,8,11,14-eicosatetraynoic acid (ETYA)が
電位依存性K+チャネルのKv4ファミリーに属するKv4.1、Kv4.2を選択的に抑制。
ラット肺動脈筋細胞では、遊離アラキドン酸が遅延性整流性K+電流の減衰を促進 。
ラット心房細胞では、
遊離アラキドン酸を含むいくつかの不飽和脂肪酸が
Gタンパク質活性化K+チャネルのATPによる増強作用を抑制。
遊離アラキドン酸によるK+チャネルの抑制作用は
COX・LOX等の阻害薬により阻害されない故に、遊離アラキドン酸の直接作用である。
COS細胞に強制発現したtwo-pore domain K+チャネルである
TWIK-related arachidonic acid-stimulated K+ channel (TRAAK)は
遊離アラキドン酸を含むいくつかの不飽和脂肪酸により活性化か?
HEK-293細胞に過剰発現した骨格筋由来の電位依存性Na+チャネルを遊離アラキドン酸は抑制。
HEK-293細胞に過剰発現したT型Ca2+チャネルの電位依存性を遊離アラキドン酸修飾 。
この作用の一部はEOXの生理活性代謝物である8,9-epoxyeicosatrienoic acid (8,9-EET)を介するが、
COX・LOX・EOXの阻害薬で阻害されない作用もり、遊離アラキドン酸の直接作用。
また、HEK-293などの培養細胞では、遊離アラキドン酸が細胞外からのCa2+流入を誘導。
この作用にはストア作動性Ca2+流入に関わるSTIMやOrai1/3が関与するが、
ストア作動性Ca2+流入とはメカニズムが異なり 遊離アラキドン酸の直接作用によるものかは不明。
遊離アラキドン酸は神経(様)細胞における突起伸展、イオンチャネル制御、シナプス可塑性に関与。
exa,遊離アラキドン酸はsyntaxin 3を介したSNARE複合体の形成、
さらにsyntaxin 3依存的なPC12細胞の突起伸展を促進 。
ラットの交感神経節後神経細胞ではムスカリン受容体作動薬Oxo-MがN型Ca2+チャネルの電位依存性を変化。この作用はPLA2阻害薬により阻害され、遊離アラキドン酸により模倣される 。
海馬の神経細胞では
遊離アラキドン酸やその非代謝型類似体ETYAが電位依存性K+チャネルを抑制し、
興奮性シナプス入力を増強する] 。
海馬のシナプス長期増強 やシナプス長期抑圧 を遊離アラキドン酸促進、
特にシナプス長期抑圧はPLA2阻害薬である4-bromophenacyl bromideにより抑制。
しかし神経(様)細胞での遊離アラキドン酸の作用の
アラキドン酸カスケード未解明、遊離アラキドン酸の直接作用であるかは不明。
海馬の初代培養神経細胞ではシナプス後部で産生されるPGE2がEP2を介してシナプス伝達を促進
またEP2欠損マウスでは海馬のSchaffer側枝-CA1シナプスにおけるシナプス長期抑圧が減弱 。
従って、遊離アラキドン酸はPGE2の産生を介して海馬のシナプス機能調節する。
また脳病態関連では、
統合失調症など精神疾患患者の血液における遊離アラキドン酸の濃度の異常も報告されているが、
病態との因果関係は不明。
と たのしい演劇の日々
arachidonic acidアラキドン酸
Chemical formula; C20H32O2
アラキドン酸は4つのcis二重結合を有する20個の炭素鎖からなる脂肪酸。
メチル末端(ω or n)から数えて最初の二重結合が6番目と7番目の炭素の間に位置するため、
ω-6 (n-6)多価不飽和脂肪酸に含まれ、20:4ω-6と記載 。
アラキドン酸は、主に細胞膜のリン脂質のsn-2位にエステル化されて存在 。
主にグリセロリン脂質にコリンが結合したホスファチジルコリンに含まれるが、
ホスファチジルイノシトールなど他のグリセロリン脂質にも含まれる 。
刺激に応じホスホリパーゼA2phospholipase A2; PLA2 の酵素活性により細胞膜から遊離 、
エンドカンナビノイドの2-アラキドノイルグリセロール (2-AG)や
アナンダマイド(anandamide; の構成成分として細胞膜から遊離 。
エンドカンナビノイドはそれ自体で生理活性を有するが、代謝されて遊離アラキドン酸を産生 。
遊離アラキドン酸の大半は細胞膜のリン脂質に再度取り込まれるため、その濃度は低く維持されている 。
遊離アラキドン酸はプロスタノイドやロイコトリエンなど多様な生理活性脂質に変換され、
摂食、睡眠・覚醒、脳血流など生理的な脳機能の他、
疾病時の発熱や内分泌応答、疼痛、てんかん、脳虚血、ストレス、神経・精神疾患など様々な病態にも関与.
アラキドン酸は、肉、卵、魚介類などの食品から得られ
、細胞内のリン脂質に取り込まれ、様々な生体膜の合成に使用 。
実験(ラット使用)では、離乳後3〜4カ月の間ω-6 多価不飽和脂肪酸を欠乏させると、
脳内のアラキドン酸含有量が約30%減少 。
成人では、脳で代謝されるアラキドン酸は血漿から補われ、
脳内のアラキドン酸の含有量は一定に保たれている。
ヒトのPETイメージングにより、脳内へ取り込まれる血漿中のアラキドン酸は約18mg/日、
脳内におけるアラキドン酸の半減期は約147日 。
アラキドン酸は、18個の炭素鎖からなり2つのcis二重結合を含む
ω-6多価不飽和脂肪酸の1種であるリノール酸(18:2ω-6)からも産生。
リノール酸は必須脂肪酸、ナッツなどの種実類や植物油は豊富に含む 。
体内に取り込まれたリノール酸は、段階的な不飽和化 脂肪鎖伸長により
アラキドン酸やドコサテトラエン酸(22:4ω-6)などの脂肪酸に変換される。
リノール酸はΔ6不飽和化酵素fatty acid desaturase 2; FADS2)による脱水素化を介して
二重結合が付与されγ-リノレン酸(18:3ω-6)になる。
その後、γ-リノレン酸からΔ6脂肪酸伸長酵素(Δ6 elongase)により
脂肪酸が伸長されジホモ-γ-リノレン酸(20:3ω-6)になる。
Δ5不飽和化酵素(fatty acid desaturase 1; FADS1)によりジホモ-γ-リノレン酸からアラキドン酸産生 。
Δ5不飽和化酵素やΔ6不飽和化酵素の活性は、栄養、喫煙、老化などの要因により変動、肥満に関与。
脳内ではアラキドン酸を含むほとんどの多価不飽和脂肪酸は
長鎖脂肪酸CoAリガーゼ(long-chain-fatty-acid-CoA synthase; ACSL)により活性化、
細胞膜のリン脂質にエステル化される他、
エネルギー源としてβ酸化により代謝されアセチルCoAの産生を促す。
アラキドン酸の代謝効率は、
細胞膜にある脂肪酸トランスポーターや
脂肪酸結合タンパク質fatty acid-binding protein; FABP)により影響を受ける。
遊離アラキドン酸はACSLによりアラキドノイルCoAarachidonoyl-CoA)となって活性化され、
アシルトランスフェラーゼacyltransferase)により細胞膜のリン脂質のsn-2位に取り込まれる 。
リン脂質産生2つの生化学的経路
ケネディー経路(Kennedy Pathway):
リン脂質はグリセロール-3-リン酸から脂肪酸の付加により新たに合成される
この経路では、
グリセロール-3-リン酸アシルトランスフェラーゼglycerol-3-phosphate acyltransferase; GPAT)が
グリセロール-3-リン酸GP)のsn-1位に脂肪酸をエステル化により付加、
リゾリン脂質の一種であるリゾホスファチジン酸lysophosphatidic acid)生成。続いて、
リゾホスファチジン酸アシルトランスフェラーゼlysophosphatidic acid acyltransferase; LPAAT)が
リゾホスファチジン酸のsn-2位に脂肪酸をエステル化により付加し、
ホスファチジン酸phosphatidic acid)を生成。
ホスファチジン酸はジアシルグリセロールdiacylglycerol; DAG)に変換され、
トリアシルグリセロールtriglyceride)、ホスファチジルコリンphosphatidylcholine; PC)、
ホスファチジルエタノラミンphosphatidylethanolamine; PE)、
ホスファチジルセリン(phosphatidylserine; PS)が産生。また、
ホスファチジン酸は
シチジン二リン酸ジアシルグリセロールcytidine diphosphate-DAG; CDP-DAG)にも変換され、
ホスファチジルイノシトールphosphatidylinositol; PI)、ホスファチジルセリン、
ホスファチジルグリセロールphosphatidylglycerol; PG)、カルジオリピンcardiolipin; CL)産生。
ランズ回路Lands Cycle:
一度生成されたリン脂質では、sn-2位に含まれる脂肪酸が代謝回転。
PLA2 によりsn-2位の脂肪酸が遊離、リゾリン脂質生成。
リゾリン脂質アシルトランスフェラーゼは、
生成されたリゾリン脂質のsn-2位に脂肪酸をエステル化により付加、その結果、
リゾリン脂質はリン脂質に戻る。
ランズ回路を担うリゾリン脂質アシルトランスフェラーゼlysophospholipid acyltransferase; LPLAT)には
数多くのアイソフォームが存在、それぞれ基質とするリゾリン脂質や脂肪酸の種類に特異性あり 。
遺伝子欠損マウスを用いた解析が精力的に進められている。
exa, LPCAT3 lysophosphatidylcholine acyltransferase 3)の欠損で、
ランズ回路によるホスファチジルコリンへのアラキドン酸の再取り込み障害、
細胞膜中のアラキドン酸の含有量が大きく減少 。
リゾリン脂質アシルトランスフェラーゼの各アイソフォームは、基質特異性に加え、
特異的細胞内局在や発現分布を取り、その結果、細胞膜のリン脂質の非対称性 多様性が生まれる 。
細胞膜からの放出 2種類のメカニズム:
細胞が成長因子、ホルモン、サイトカインなど様々な細胞外刺激に曝されると
遊離アラキドン酸が産生される 。
PLA2による細胞膜からのアラキドン酸の遊離と、
アラキドン酸を構造に含むエンドカンナビノイドの代謝による遊離アラキドン酸の産生。しかし、
いずれの経路が働くかは脳領域や細胞種、刺激によって異なる、実態不明。
各経路の機能的意義に関わり、今後精査が必要。
細胞膜からの放出後は、遊離アラキドン酸の90%以上は
直ちにACSLを介してアラキドノイルCoA/arachidonoyl-CoA)となり活性化、
リゾリン脂質アシルトランスフェラーゼにより細胞膜のリン脂質のsn-2位に再エステル化されて再利用 。
1,細胞膜のリン脂質のsn-2位に含まれるアラキドン酸がPLA2によって遊離 。
PLA2は分泌型PLA2secretory PLA2; sPLA2)、細胞質型PLA2cytosolic PLA2; cPLA2)、
Ca2+非依存型PLA2Ca2+-independent PLA2; iPLA2)に大別。
各グループは異なる遺伝子がコードする複数のアイソフォーム存在、制御機構や脂質選択性が異なる 。
cPLA2αを含むcPLA2の多くはその活性化に細胞内Ca2+濃度の上昇を必要。
アラキドン酸の細胞膜からの遊離にはcPLA2とsPLA2が関与、
iPLA2は脂質リモデリングを司るランズ回路に関与 。
cPLA2α欠損マウスのマクロファージや消化管で、
細菌内毒素リポポリサッカライドによるアラキドン酸の遊離消失 。また、
マクロファージ細胞株で、
脂質メディエイター血小板活性化因子platelet activating factor; PAF)による
アラキドン酸遊離はcPLA2阻害薬MAFPとsPLA2阻害薬diC6SNPEにより抑制 。
神経活動依存的にPLA2を介するアラキドン酸遊離が誘導される。
[14C]標識アラキドン酸を用いた実験で
ラットの大脳皮質や線条体でのアラキドン酸の取り込みがドパミンD2受容体のアゴニスト投与により亢進 。
また、[3H]標識アラキドン酸を用いた実験で、
線条体の初代培養神経細胞におけるアラキドン酸の遊離がNMDA型グルタミン酸受容体の活性化により促進 、その促進がPLA2を阻害するmepacrine(quinacrine)により阻害される 。
さらに、小脳プルキンエ細胞のシナプス長期抑制(long-term depression; LTD)は
cPLA2α欠損マウスで消失、
この異常がアラキドン酸やその生理活性代謝物であるプロスタグランジンD2、E2の補充により回復 。
エンドカナビノイドの代謝による遊離アラキドン酸の産生
脳、肝臓、肺で、LPSの全身性投与による遊離アラキドン酸の上昇は
cPLA2α欠損マウスでも影響を受けず、
モノアシルグリセロールリパーゼmonoacylglycerol lipase; MGL)遺伝子欠損マウスや
阻害薬投与により消失 。この結果は、
これら臓器では主にエンドカナビノイドの2-AGがMGLにより代謝され遊離アラキドン酸を生ず。
2-AGはシナプス活動に伴う細胞内のCa2+濃度上昇によりシナプス後部で産生、
シナプス前部のカンナビノイド受容体CB1に作用、逆行性にシナプス伝達を抑制。
2-AGは、主にsn-2位にアラキドン酸を含むホスファチジルイノシトールphosphatidylinositol)が
ホスホリパーゼCphospholipase C; PLC)によりジアシルグリセロールに代謝され、
さらにDAGがジアシルグリセロールリパーゼdiacylglycerol lipase; DGL)により代謝されて生ずる 。
遊離アラキドン酸はアナンダマイドanandamide; )からも産生。
アナンダマイドは、主にsn-2位にアラキドン酸を含むホスファチジルエタノラミンが
N-アシルトランスフェラーゼによりN-アラキドノイルホスファチジルエタノラミンN-arachidonoyl phosphatidylethanolamine)に代謝され、
さらにホスホリパーゼDphospholipase D)により代謝されて生ずる。
アナンダマイドは脂肪酸アミド加水分解酵素fatty acid amide hydrolase; FAAH)によっ
て代謝され遊離アラキドン酸を生ず 。
アラキドン酸カスケード
細胞膜から遊離したアラキドン酸は、シクロオキシゲナーゼcyclooxygenase; COX)、
リポキシゲナーゼlipoxygenase; LOX)、シトクロムcytochrome)
P-450ファミリーに属するエポキシゲナーゼepoxygenase; EOX)の
いずれかを律速酵素とする三つの経路により代謝され、特異的作用を持った生理活性脂質を生ず 。
これら生理活性脂質はアラキドン酸由来の20個の炭素鎖を持つことから、
エイコサノイド(eicosanoid ギリシャ語の20を意味すeicosa )と呼ぶ 。
1,シクロオキシゲナーゼ(COX)経路;
遊離アラキドン酸はCOXによりプロスタグランジンprostaglandin; PG)G2、さらにPGH2に変換。
PGH2はPGD合成酵素、PGE合成酵素、PGF合成酵素、PGI合成酵素、トロンボキサンA合成酵素を介しPGD2、PGE2、PGF2α、PGI2、トロンボキサンA2といったプロスタノイドに変換、
それぞれDP、EP、FP、IP、TPと呼ばれる選択的なGタンパク質共役型受容体に結合し作用発揮。
プロスタノイドは、
循環器・消化器・骨の恒常性維持、生殖器の機能、局所炎症に伴う血管透過性亢進、細胞性免疫応答など
全身の様々な機能を担う。
特に脳では、摂食、睡眠・覚醒、脳血流など生理的な脳機能の他、
疾病時の発熱 内分泌応答、疼痛、てんかん、脳虚血、ストレス、神経・精神疾患など様々な病態に関与。
2, リポキシゲナーゼ (LOX)経路;
遊離アラキドン酸は基質特異性の異なるLOXにより複数のヒドロペルオキシエイコサテトラエン酸Hydroperoxyeicosatetraenoic acid; HpETE)に変換、
さらに酵素的・非酵素的反応を介しロイコトリエンleukotriene)ヒドロキシエイコサテトラエン酸Hydroxyeicosatetraenoic acid; HETE)など多様な生理活性脂質に変換 。
主には12-LOXや15-LOXを介し8-HpETE、12-HpETE、15-HpETE産生、5-LOXと
5-lipoxygenase-activating protein (FLAP)を介し5-HpETE産生。
5-HpETEは速やかな脱水反応によりLTA4となり、LTA4はLTA4加水分解酵素LTA4 hydrolase)により
速やかにLTB4を生ずるか、LTC4合成酵素LTC4 synthase)によりLTC4を生ず。
LTC4はさらにLTD4、LTE4になる。
LTA4産生酵素を持たない細胞でも、近傍の細胞からLTA4の供給を受け、LTC4産生。
この現象を細胞間生合成経路transcellular biosynthesis)と呼ぶ。
LTA4・LTB4とLTC4・LTD4・LTE4は、システイン残基の有無により構造が大きく異り、
作用する受容体も異なる。
BLT1とBLT2はLTA4・LTB4をリガンドとするGタンパク質共役型受容体として同定された。しかし、
BLT1の親和性がBLT2に比し高く、
BLT2には親和性の高い12-ヒドロキシヘプタデカトリエン酸 12-hydroxyheptadecatrienoic acid; 12-HHT)
というリガンドが存在 。
LTC4・LTD4・LTE4からなるシスティニルロイコトリエンcysteinyl leukotrienes; Cys-LT)は
主にCysLT受容体のI型CysLT1R)とII型CysLT2R)に結合し作用発揮。
ロイコトリエンは、
好中球の走化性・凝集・細胞接着・脱顆粒化、平滑筋収縮、血管の透過性や収縮の調節、粘液分泌の増強、
免疫制御、炎症性疼痛、喘息、アレルギー性鼻炎、アレルギー性結膜炎、アトピー性皮膚炎、嚢胞性線維症、慢性閉塞性肺疾患、糸球体腎炎、麻痺性関節炎、乾癬、炎症性腸疾患、間質性肺疾患など
様々な生理的機能や疾患に関与。また、
ロイコトリエンは、脳損傷、多発性硬化症、アルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン舞踏病、
てんかん、うつ、加齢など多様な脳疾患と関連 。
3,エポキシゲナーゼ(EOX)経路;
遊離アラキドン酸は基質特異性の異なるEOXにより
複数のHETEやエポキシエイコサトリエン酸Epoxyeicosatrienoic acid; EET)に変換、
さらにEETはエポキシド加水分解酵素epoxide hydrolase; EH)により
多様なジヒドロキシエイコサトリエン酸dihydroxyeicosatrienoic acid; DHET)に変換 。
EETは、血管拡張、血管新生制御、抗炎症作用、さらに虚血再灌流への保護作用を有する。
しかしこれら脂質の受容体は確定しておらず、その作用機序には不明。
脳機能関連は、
ラットのひげ刺激に伴う感覚野での機能性充血は
EOXの二つの異なる阻害薬MS-PPOHとミコナゾールにより阻害 。一方、
神経細胞の過興奮に続く抑制が次第に広がるcortical spreading depression病態モデルとして、
アストロサイトでのCa2+上昇による大脳皮質の脳血管収縮の研究では、
この脳血管収縮がPLA2を阻害するMAFPや、
血管収縮活性を持つ20-HETEの生合成酵素であるEOXの一種CYP4Aを阻害するHET0016の処置により消失 。
これらの研究は、受容体同定を含めた作用機序の解明が必要。
遊離アラキドン酸のカリウムチャネルへの作用
アフリカツメガエル卵母細胞での強制発現系で、
遊離アラキドン酸やその非代謝型類似体である
5,8,11,14-eicosatetraynoic acid (ETYA)が
電位依存性K+チャネルのKv4ファミリーに属するKv4.1、Kv4.2を選択的に抑制。
ラット肺動脈筋細胞では、遊離アラキドン酸が遅延性整流性K+電流の減衰を促進 。
ラット心房細胞では、
遊離アラキドン酸を含むいくつかの不飽和脂肪酸が
Gタンパク質活性化K+チャネルのATPによる増強作用を抑制。
遊離アラキドン酸によるK+チャネルの抑制作用は
COX・LOX等の阻害薬により阻害されない故に、遊離アラキドン酸の直接作用である。
COS細胞に強制発現したtwo-pore domain K+チャネルである
TWIK-related arachidonic acid-stimulated K+ channel (TRAAK)は
遊離アラキドン酸を含むいくつかの不飽和脂肪酸により活性化か?
HEK-293細胞に過剰発現した骨格筋由来の電位依存性Na+チャネルを遊離アラキドン酸は抑制。
HEK-293細胞に過剰発現したT型Ca2+チャネルの電位依存性を遊離アラキドン酸修飾 。
この作用の一部はEOXの生理活性代謝物である8,9-epoxyeicosatrienoic acid (8,9-EET)を介するが、
COX・LOX・EOXの阻害薬で阻害されない作用もり、遊離アラキドン酸の直接作用。
また、HEK-293などの培養細胞では、遊離アラキドン酸が細胞外からのCa2+流入を誘導。
この作用にはストア作動性Ca2+流入に関わるSTIMやOrai1/3が関与するが、
ストア作動性Ca2+流入とはメカニズムが異なり 遊離アラキドン酸の直接作用によるものかは不明。
遊離アラキドン酸は神経(様)細胞における突起伸展、イオンチャネル制御、シナプス可塑性に関与。
exa,遊離アラキドン酸はsyntaxin 3を介したSNARE複合体の形成、
さらにsyntaxin 3依存的なPC12細胞の突起伸展を促進 。
ラットの交感神経節後神経細胞ではムスカリン受容体作動薬Oxo-MがN型Ca2+チャネルの電位依存性を変化。この作用はPLA2阻害薬により阻害され、遊離アラキドン酸により模倣される 。
海馬の神経細胞では
遊離アラキドン酸やその非代謝型類似体ETYAが電位依存性K+チャネルを抑制し、
興奮性シナプス入力を増強する] 。
海馬のシナプス長期増強 やシナプス長期抑圧 を遊離アラキドン酸促進、
特にシナプス長期抑圧はPLA2阻害薬である4-bromophenacyl bromideにより抑制。
しかし神経(様)細胞での遊離アラキドン酸の作用の
アラキドン酸カスケード未解明、遊離アラキドン酸の直接作用であるかは不明。
海馬の初代培養神経細胞ではシナプス後部で産生されるPGE2がEP2を介してシナプス伝達を促進
またEP2欠損マウスでは海馬のSchaffer側枝-CA1シナプスにおけるシナプス長期抑圧が減弱 。
従って、遊離アラキドン酸はPGE2の産生を介して海馬のシナプス機能調節する。
また脳病態関連では、
統合失調症など精神疾患患者の血液における遊離アラキドン酸の濃度の異常も報告されているが、
病態との因果関係は不明。
と たのしい演劇の日々
2023年08月06日
Alchemy of Actor Channeling - emotion
Alchemy of Actor Channeling - emotion
2-アラキドノイルグリセロール2-Arachidonoylglycerol (2-AG)
内因性カンナビノイドのひとつ。グリセロールの2位にアラキドン酸がエステル結合した構造。
アラキドン酸を側鎖に含むトリグリセリドやホスファチジルイノシトール、
一部のリン脂質から誘導・生合成
化学式: C₂₃H₃₈O₄
モル質量: 378.55 g mol−1
マリファナの多彩な生物活性の多くは,受容体を介したものである.
カンナビノイド受容体には,神経系を中心に発現している CB1受 容体と
炎症・免疫系を中心に発現している CB2受容体の2種類がある.
カンナビノ イド受容体の内在性リガンドとしては,これまでに
アナンダミドと2-アラキドノイルグ リセロールの二つが同定されているが,
,真の 内在性リガンドは2-アラキドノイルグリセロール
マリファナを吸引すると,時間感覚・空間感覚の混乱, 視覚・聴覚の鋭敏化,陶酔感,幻覚,離人感,
こみあげて くる笑い,空腹感,口渇,眠気,結膜の充血,眼圧低下な ど様々な反応が引き起こされる.
マリファナが持っている これらの作用は,Δ9 -テトラヒドロカンナビノール
(Δ9 - tetrahydrocannabinol,Δ9 -THC)を中心とする一連 の化合物(カンナビノイド)によるもの .
その活性発揮,モルヒネな どの場合と同様,特異的な受容体(カンナビノイド受容体)を介して作用.
カンナビノイド受容体の2種類の受容 体(CB1受容体, CB2受容体)遺伝子はクローニン グされている.
これら受容体は,生理的に重要 な役割を担う.一方,内在性リガンドとしては,
アナンダミド,2-アラキドノ イルグリセロールが同定されており
いずれもアラキドン酸 を含有する一種の中性脂質である.
最近の研究によ り,アナンダミドではなく
2-アラキドノイルグリセロー ルが真の内在性リガンドであると考えられる.
【 神経系におけるカンナビノイド受容体と 2-AG の生理的意義】
2-AG は CB1受容体を発現させた細胞のアデニル酸シク ラーゼを阻害し,
細胞内サイクリック AMP レベルを低下 させる
2-AG は分化した NG108-15細胞の脱分極 に伴う細胞内 Ca2+イオン濃度の上昇を抑制する
ラット海馬スライスの長期増強(long-term potentiation, LTP)を抑制し,神経伝達を低下させる .
2-AG は,電位依存性 Ca2+チャネルを抑制, K+チャネルの開口,神経伝達物質の放出抑制,
電気刺激 したマウス精管の収縮の抑制,体温低下,自発運動量の低 下など .ただ,
これらの2-AG の 作用の中には,2-AG が代謝されたあとの代謝産物が効い ているかもしれない.
2-AG が神経の興奮に伴って起こるイノシトールリン脂質などの リン脂質代謝亢進
,神経伝達を抑制的に制御しているカ ンナビノイド受容体の機能をリンクさせる .
神経が興奮して脱 分極・グルタミン酸の放出などが起きると,G タンパク質 が活性化されることにより,
あるいは電位依存性 Ca2+ チャネル等を介して細胞内 Ca2+イオン濃度が局所的に上 昇することにより,ホスホリパーゼ C が活性化され,イ ノシトールリン脂質などから,2-AG が速やかに生成
2-AG は膜透過性の物質で,シナプス間隙に 速やかに放出され,
主として前シ ナプスに存在する CB1受容体に作用し,
電位依存性 Ca2+チャネルを阻害することにより,神経伝達物質の放出 を抑制し,
神経の興奮にブレーキをかける.
2-AG は神経の興奮に伴って生成する 物質で, フィードバックして神経の興奮を抑制する.
ピクロトキシニンをラットに投与し脳を過剰興奮それに伴って2-AG のレベルが速やかに数倍に上昇す ,
シナプトソームを脱分極させると,2-AG が選 択的に速やかに生成し,外に放出される .
神経伝達に伴ってイノシトールリン脂質などから生 成する2-AG と,
その受容体である CB1受容体は,
オー トレセプターなどと共同して,神経伝達のネガティブ フィードバック制御.
,CB1受容体の内在性リガンドは, 神経伝達の抑制的制御において重要,
海馬や小脳等のニューロンでは,後 シナプスを脱分極させると,
後シナプスから逆行性のメ ディエーターが放出され,前シナプスからの神経伝達物質 の放出が抑制される .こ の現象を,抑制性シナプスの場合 depolarization-induced suppression of inhibition(DSI)と
興奮性シナプス の場合 depolarization-induced suppression of excitation (DSE)と呼ぶ.
DSI や DSE が CB1受容体のアンタゴニストによって阻害される,
外から加えた WIN55212-2などの CB1受容体のアゴニス トが,
DSI や DSE における逆行性メディエーターの働き を代行しうる,
DSI や DSE のメディエーターは,内在性カン ナビノイド受容体リガンドである.
DSE を起こす条件下で2- AG が産生されている,アナンダミドは生成し ていない,
ホスホリパーゼ Cβ4を欠損したマウスでは2-AG の生成能が大幅に低下し,
このマウスの 小脳では DSE も著しく抑制されている .
これらの結果は,DSE のメディエーターが,アナン ダミドなどでなく,
2-AG であるということを示唆 ,
シナプス伝達の 調節における2-AG の重要性は,実験的にも裏付けられ ている.
DSI や DSE は,持続時間が短いシナプス伝達の抑制機 構であるが,
LTD のように持続時間の長い現象において も,CB1受容体とその内在性リガンドが重要な役割をす.,
内在性 カンナビノイド受容体リガンドが,マウスの側座核におい て LTD を引き起こす.
同様の結果は,マ ウスの扁桃体 や線条体などでも観察されている.,
ホスホリパーゼ C や DG リパーゼの阻害剤で処理することにより,
ラット海馬やマ ウス小脳の LTD が抑制される,
エフェクター として働いている分子が2-AG である.
Δ9 -THC は傷害や虚血によって引き起こされる脳のダ メージを軽減する作用あり .
同様の活性は WIN55212-2などの合成カンナビノイ ドについても認められている.
CB1受 容体とその内在性リガンドが,脳において保護的な役割を 演じている.
CB1受容体はグ ルタミン酸などの神経伝達物質の前シナプスからの放出を 抑制的に制御,
CB1受容体アゴニストが神 経の過剰な興奮を抑制し,脳が受けるダメージを軽減.
CB1受容体をノックアウトし たマウスは痙攣を起こしやすく,寿命もやや短 い .
,脳虚血に対する抵抗性が低下.一方,
2-AG は,前シナプ スに発現している CB1受容体に作用して神経伝達物質の 放出を抑制し,
脳が過剰に興奮してダメージを受けるのを 防ぐ.
2-AG を脳内 に投与すると,傷害を与えた後の脳の浮腫や梗塞 が小さく抑えられる,
海馬ニューロンの細胞死が減少 する,障害からの回復が早まる.
CB1受容体は鎮痛にも関与.
Δ9 -THC やアナンダミドは,鎮痛効果を発揮 .ただ,アナンダミドは,
カンナビノイド受容体だ けでなくバニロイド受容体(唐辛子の成分カプサイ シンの受容体)にも結合
その鎮痛効果が,カンナビノイド受容体を介した ものかどうかは不明
一方,リパーゼの阻害剤 URB602をラットの中脳 中心灰白質に投与すると鎮痛効果が表れる,
2- AG が実際に痛みの調節に関与している.
神経系と CB1受容体は,視床下部 にて食欲調節に内在性カンナビノイド 受容体リガンドが関与,
CB1受容体の ノックアウトマウスは,野生型マウスに比べて餌の摂取量 が減る,
CB1受容体は, 脳における食欲の調節だけでなく,末梢におけるエネル ギーバランスにも関与,
SR141716A が,CB1受容体を介して脂肪細胞の縮小 化と脂肪分解の亢進を起こす
内在性カンナビノイド受容体リガンドが,脂肪細胞の代謝 に深く関与
.CB1受 容体のアンタゴニストSR141716A には,体重を減 少させる効果のあるが,
当初予想された 食欲抑制によるものではなく,脂肪細胞の代謝を 変化させたことによる.
マリファナの活性成分Δ9 -THC であるが,
この物質は CB1受容体の部分アゴニスト.
受容体に結合しても G タンパク質を十分に活性化す ることができない.
また,2-AG とは異なり,速やかには 分解されない.そのため,一旦,受容体に結合 すると,
受容体を占拠し,生理的リガンド 2-AG が,そのあと作用しにくくなる.
Δ9 -THC には幻覚 等を引き起こす作用があるが,CB1受容体を活性化したための結果では なく,
本来のリガンド2-AG の CB1受容体アゴニ ストとしての働きを撹乱することにより引き起こされたも の.2-AG は,脳内で恒常的に生成・分解を繰り 返している物質で.
2-AG や CB1受容体の本来の役割 は,生理的な現象である神経伝達の抑制的制御であって,
幻覚や異常感覚等を起こすために存在しているので はない.
と たのしい演劇の日々
2-アラキドノイルグリセロール2-Arachidonoylglycerol (2-AG)
内因性カンナビノイドのひとつ。グリセロールの2位にアラキドン酸がエステル結合した構造。
アラキドン酸を側鎖に含むトリグリセリドやホスファチジルイノシトール、
一部のリン脂質から誘導・生合成
化学式: C₂₃H₃₈O₄
モル質量: 378.55 g mol−1
マリファナの多彩な生物活性の多くは,受容体を介したものである.
カンナビノイド受容体には,神経系を中心に発現している CB1受 容体と
炎症・免疫系を中心に発現している CB2受容体の2種類がある.
カンナビノ イド受容体の内在性リガンドとしては,これまでに
アナンダミドと2-アラキドノイルグ リセロールの二つが同定されているが,
,真の 内在性リガンドは2-アラキドノイルグリセロール
マリファナを吸引すると,時間感覚・空間感覚の混乱, 視覚・聴覚の鋭敏化,陶酔感,幻覚,離人感,
こみあげて くる笑い,空腹感,口渇,眠気,結膜の充血,眼圧低下な ど様々な反応が引き起こされる.
マリファナが持っている これらの作用は,Δ9 -テトラヒドロカンナビノール
(Δ9 - tetrahydrocannabinol,Δ9 -THC)を中心とする一連 の化合物(カンナビノイド)によるもの .
その活性発揮,モルヒネな どの場合と同様,特異的な受容体(カンナビノイド受容体)を介して作用.
カンナビノイド受容体の2種類の受容 体(CB1受容体, CB2受容体)遺伝子はクローニン グされている.
これら受容体は,生理的に重要 な役割を担う.一方,内在性リガンドとしては,
アナンダミド,2-アラキドノ イルグリセロールが同定されており
いずれもアラキドン酸 を含有する一種の中性脂質である.
最近の研究によ り,アナンダミドではなく
2-アラキドノイルグリセロー ルが真の内在性リガンドであると考えられる.
【 神経系におけるカンナビノイド受容体と 2-AG の生理的意義】
2-AG は CB1受容体を発現させた細胞のアデニル酸シク ラーゼを阻害し,
細胞内サイクリック AMP レベルを低下 させる
2-AG は分化した NG108-15細胞の脱分極 に伴う細胞内 Ca2+イオン濃度の上昇を抑制する
ラット海馬スライスの長期増強(long-term potentiation, LTP)を抑制し,神経伝達を低下させる .
2-AG は,電位依存性 Ca2+チャネルを抑制, K+チャネルの開口,神経伝達物質の放出抑制,
電気刺激 したマウス精管の収縮の抑制,体温低下,自発運動量の低 下など .ただ,
これらの2-AG の 作用の中には,2-AG が代謝されたあとの代謝産物が効い ているかもしれない.
2-AG が神経の興奮に伴って起こるイノシトールリン脂質などの リン脂質代謝亢進
,神経伝達を抑制的に制御しているカ ンナビノイド受容体の機能をリンクさせる .
神経が興奮して脱 分極・グルタミン酸の放出などが起きると,G タンパク質 が活性化されることにより,
あるいは電位依存性 Ca2+ チャネル等を介して細胞内 Ca2+イオン濃度が局所的に上 昇することにより,ホスホリパーゼ C が活性化され,イ ノシトールリン脂質などから,2-AG が速やかに生成
2-AG は膜透過性の物質で,シナプス間隙に 速やかに放出され,
主として前シ ナプスに存在する CB1受容体に作用し,
電位依存性 Ca2+チャネルを阻害することにより,神経伝達物質の放出 を抑制し,
神経の興奮にブレーキをかける.
2-AG は神経の興奮に伴って生成する 物質で, フィードバックして神経の興奮を抑制する.
ピクロトキシニンをラットに投与し脳を過剰興奮それに伴って2-AG のレベルが速やかに数倍に上昇す ,
シナプトソームを脱分極させると,2-AG が選 択的に速やかに生成し,外に放出される .
神経伝達に伴ってイノシトールリン脂質などから生 成する2-AG と,
その受容体である CB1受容体は,
オー トレセプターなどと共同して,神経伝達のネガティブ フィードバック制御.
,CB1受容体の内在性リガンドは, 神経伝達の抑制的制御において重要,
海馬や小脳等のニューロンでは,後 シナプスを脱分極させると,
後シナプスから逆行性のメ ディエーターが放出され,前シナプスからの神経伝達物質 の放出が抑制される .こ の現象を,抑制性シナプスの場合 depolarization-induced suppression of inhibition(DSI)と
興奮性シナプス の場合 depolarization-induced suppression of excitation (DSE)と呼ぶ.
DSI や DSE が CB1受容体のアンタゴニストによって阻害される,
外から加えた WIN55212-2などの CB1受容体のアゴニス トが,
DSI や DSE における逆行性メディエーターの働き を代行しうる,
DSI や DSE のメディエーターは,内在性カン ナビノイド受容体リガンドである.
DSE を起こす条件下で2- AG が産生されている,アナンダミドは生成し ていない,
ホスホリパーゼ Cβ4を欠損したマウスでは2-AG の生成能が大幅に低下し,
このマウスの 小脳では DSE も著しく抑制されている .
これらの結果は,DSE のメディエーターが,アナン ダミドなどでなく,
2-AG であるということを示唆 ,
シナプス伝達の 調節における2-AG の重要性は,実験的にも裏付けられ ている.
DSI や DSE は,持続時間が短いシナプス伝達の抑制機 構であるが,
LTD のように持続時間の長い現象において も,CB1受容体とその内在性リガンドが重要な役割をす.,
内在性 カンナビノイド受容体リガンドが,マウスの側座核におい て LTD を引き起こす.
同様の結果は,マ ウスの扁桃体 や線条体などでも観察されている.,
ホスホリパーゼ C や DG リパーゼの阻害剤で処理することにより,
ラット海馬やマ ウス小脳の LTD が抑制される,
エフェクター として働いている分子が2-AG である.
Δ9 -THC は傷害や虚血によって引き起こされる脳のダ メージを軽減する作用あり .
同様の活性は WIN55212-2などの合成カンナビノイ ドについても認められている.
CB1受 容体とその内在性リガンドが,脳において保護的な役割を 演じている.
CB1受容体はグ ルタミン酸などの神経伝達物質の前シナプスからの放出を 抑制的に制御,
CB1受容体アゴニストが神 経の過剰な興奮を抑制し,脳が受けるダメージを軽減.
CB1受容体をノックアウトし たマウスは痙攣を起こしやすく,寿命もやや短 い .
,脳虚血に対する抵抗性が低下.一方,
2-AG は,前シナプ スに発現している CB1受容体に作用して神経伝達物質の 放出を抑制し,
脳が過剰に興奮してダメージを受けるのを 防ぐ.
2-AG を脳内 に投与すると,傷害を与えた後の脳の浮腫や梗塞 が小さく抑えられる,
海馬ニューロンの細胞死が減少 する,障害からの回復が早まる.
CB1受容体は鎮痛にも関与.
Δ9 -THC やアナンダミドは,鎮痛効果を発揮 .ただ,アナンダミドは,
カンナビノイド受容体だ けでなくバニロイド受容体(唐辛子の成分カプサイ シンの受容体)にも結合
その鎮痛効果が,カンナビノイド受容体を介した ものかどうかは不明
一方,リパーゼの阻害剤 URB602をラットの中脳 中心灰白質に投与すると鎮痛効果が表れる,
2- AG が実際に痛みの調節に関与している.
神経系と CB1受容体は,視床下部 にて食欲調節に内在性カンナビノイド 受容体リガンドが関与,
CB1受容体の ノックアウトマウスは,野生型マウスに比べて餌の摂取量 が減る,
CB1受容体は, 脳における食欲の調節だけでなく,末梢におけるエネル ギーバランスにも関与,
SR141716A が,CB1受容体を介して脂肪細胞の縮小 化と脂肪分解の亢進を起こす
内在性カンナビノイド受容体リガンドが,脂肪細胞の代謝 に深く関与
.CB1受 容体のアンタゴニストSR141716A には,体重を減 少させる効果のあるが,
当初予想された 食欲抑制によるものではなく,脂肪細胞の代謝を 変化させたことによる.
マリファナの活性成分Δ9 -THC であるが,
この物質は CB1受容体の部分アゴニスト.
受容体に結合しても G タンパク質を十分に活性化す ることができない.
また,2-AG とは異なり,速やかには 分解されない.そのため,一旦,受容体に結合 すると,
受容体を占拠し,生理的リガンド 2-AG が,そのあと作用しにくくなる.
Δ9 -THC には幻覚 等を引き起こす作用があるが,CB1受容体を活性化したための結果では なく,
本来のリガンド2-AG の CB1受容体アゴニ ストとしての働きを撹乱することにより引き起こされたも の.2-AG は,脳内で恒常的に生成・分解を繰り 返している物質で.
2-AG や CB1受容体の本来の役割 は,生理的な現象である神経伝達の抑制的制御であって,
幻覚や異常感覚等を起こすために存在しているので はない.
と たのしい演劇の日々
2023年08月03日
Alchemy of Actor channeling – emotion
Alchemy of Actor channeling – emotion
アナンダミド /アナンダマイド anandamide) は、
神経伝達物質あるいは脂質メディエーターの一種で、
内因性のカンナビノイド Cannabinoid 受容体リガンド(内因性カンナビノイド)。
動物体内にあり、特に脳に多い。
快感などに関係する脳内麻薬物質の一つ、中枢神経系および末梢で多様な機能を持っ。
内因性カンナビノイド endocannabinoid
エンドカンナビノイドは生体内で作られるカンナビノイド受容体のリガンドの総称。
大麻草(学名:Cannabis sativa)に含まれる生理活性成分の総称名カンナビノイドに対して
内因性のカンナビノイドであることから名付けられた。脳内マリファナ類似物質。
主要なものとして アナンダミドと 2-アラキドノイルグリセロール(2-AG)あり、
どちらもアラキドン酸を含む脂質性の物質。
アナンダミド(anandamide)という名はサンスクリット語で「至福」を意味するanandaから取られた。
この他にも、ノラジンエーテル、N-アラキドノイルドーパミンなど
数種類がエンドカンナビノイドとして報告されているが生理的に機能しているかどうか明らかでない。
現在のところアナンダミドと2-AGが生理的に主要なエンドカンナビノイドと考えられている。
脳内の含有量は2-AGがアナンダミドに対しておよそ数十から数百倍多い。
アナンダミドはカンナビノイド受容体以外にもバニロイド受容体のアゴニストとしても働くため、
エンドバニロイドとしても知られる。
アナンダミドと2-AGの生合成には複数の経路が知られている。
どちらも膜のリン脂質から2つの酵素反応によって生成される。
アナンダミドはN-アシル転移酵素とホスホリパーゼD、
2-AGはホスホリパーゼC(PLC)とジアシルグリセロールリパーゼ(DGL)によって生成される。
中枢神経系においてエンドカンナビノイドはもっぱらニューロンで作られる。
しかしグリア細胞も作ることができるとの報告あり。
どちらのエンドカンナビノイドも加水分解によって代謝される。
アナンダミドは脂肪酸アミド加水分解酵素(FAAH)、
2-AGはモノアシルグリセロールリパーゼ(MGL)によって分解される。
これら主要経路以外にシクロオキシゲナーゼー2(COX-2)による酸化により代謝される。
また最近2-AGを選択的に分解する新たな酵素 ABHD6とABHD12が同定された。
カンナビノイド受容体は7回膜貫通型のGi/oタンパク質共役型受容体でCB1とCB2の2種類があり。
CB1は中枢神経系に、CB2は免疫系に多く発現。
CB1受容体は脳内に広く分布し、特に大脳皮質、海馬、扁桃体、大脳基底核、視床、小脳などに多い。
興奮性、抑制性のどちらのニューロンにもCB1受容体は発現するが、
その発現パターンは脳部位によって異なる。
例えば海馬では、一部の抑制性ニューロンに強く発現、これに比べて興奮性ニューロンには一様に低く発現。海馬の抑制性ニューロンのうちでも、パルブアルブミン陽性バスケット細胞にはCB1受容体が存在せず、
コレシストキニン陽性バスケット細胞に強く発現し、選択的な発現パターンを示す。
ニューロン内では、神経終末及び軸索に豊富に局在し、細胞体や樹状突起の発現は極めて低い。
エンドカンナビノイドは脂質メディエーターとして中枢神経系においてさまざまな神経伝達調節を行う。
主にCB1受容体の活性化を介してその効果を発揮。
CB1受容体は中枢神経系において
Gタンパク質共役型受容体の中でも最も発現量の多い受容体として知られており、
その発現領域も脳全体にわたる。
そのためエンドカンナビノイドの生理的作用は、
記憶・認知、運動制御、鎮痛、食欲調節、報酬系の制御など多岐にわたる。
エンドカンナビノイドは病理的な条件下でも重要な役割を担っており、
海馬でてんかん発作時に神経保護的役割を果たす。
エンドカンナビノイドの脂質メディエーターとしての働きで最も詳しく調べられているのは
逆行性伝達物質としての役割。
2-AGはシナプス後部から産生・放出されて逆行性にシナプス前終末に局在するCB1受容体を活性化す。
活性化したCB1受容体は共役するGi/oタンパク質を介して
シナプス前終末の電位依存性カルシウムチャネルの開口を抑制し、神経伝達物質の放出を抑制す。
2-AGはシナプス後部のニューロンの脱分極によるカルシウムイオン流入、
あるいはGq/11タンパク質共役型受容体の活性化によって産生される。
シナプス後ニューロンで強い脱分極が起きると電位依存性カルシウムチャネルが開いてカルシウムが流入。
細胞内カルシウム濃度がマイクロモーラー以上に達すると、2-AGが産生される。また、
グループI代謝型グルタミン酸受容体やM1/M3ムスカリン受容体といった
Gq/11タンパク質共役型受容体の活性化によってPLCβを介する経路で2-AG産生が引き起こされる。
この場合、細胞内カルシウム上昇は必要ない。
上記受容体以外にも
オレキシン受容体、セロトニン受容体、オキシトシン受容体、プロテアーゼ活性化受容体1型、
エンドセリン受容体などによってもエンドカンナビノイド産生が引き起こされる。
さらに、こういった受容体の活性化と脱分極による細胞内へのカルシウム流入が同時におこると、
2-AG産生が相乗的に促進。これは、
PLCβがカルシウム感受性を持つため、受容体活性化と同時に細胞内カルシウム濃度が高まると、
PLCβ活性が増強するため。
エンドカンナビノイドは脂質であるため細胞外へ放出される際、受動的に細胞膜を通り抜けると考えられる。しかしトランスポーターを介する可能性も否定できない。
最近アナンダミドのトランスポーターの候補と考えられるFLATという分子が同定された。
2-AGに関してはトランスポーターの存在は現在報告されていない。
2-AGによる逆行性シナプス伝達抑制はこれまでに
海馬、小脳、大脳基底核、大脳皮質、扁桃体、視床下部、脳幹などの
様々な脳部位で報告されており普遍的な現象である。一方、
アナンダミドはごく一部のシナプスでのみ逆行性伝達物質として働く。
2-AGによる逆行性シナプス伝達抑制は短期あるいは長期にシナプス伝達を抑制す。
短期のシナプス伝達抑制としてdepolarization-induced suppression of inhibition/excitation (DSI/DSE)。
2-AGによる長期のシナプス伝達抑制は、多くのシナプスで長期抑圧(long-term depression: LTD)の誘導にCB1受容体の活性化が必須である。
多くの場合、LTD誘導刺激によって2-AGが逆行性シグナルとして働く。
このようなLTDは海馬、小脳、線条体、大脳皮質などで詳しく調べられており、
エンドカンナビノイドが記憶・学習、運動学習や運動制御、認知機能に重要な役割を果たしている。
大脳皮質体性感覚野5層の低頻度発火型の抑制性ニューロンでは
エンドカンナビノイドが自己分泌によって作用す。
抑制性ニューロンに繰り返しの脱分極パルスを与えると、
長時間に渡ってその細胞の膜電位が過分極する自己抑制が起こる。
脱分極によって放出された2-AGが自身の細胞体のCB1受容体を活性化し、
最終的に内向き整流性カリウムチャネルが活性化されることで引き起こされる。
海馬や大脳皮質において
ニューロンから放出されたエンドカンナビノイドは
直接ニューロンのCB1受容体に作用するだけでなく アストロサイトのCB1受容体にも作用し、
シナプス伝達を調節する。
アストロサイトのCB1受容体の活性化によってアストロサイトからグルタミン酸が放出され
シナプス前終末、あるいはシナプス後部のグルタミン酸受容体
(NMDA型グルタミン酸受容体or代謝活性型グルタミン酸受容体)を活性化しシナプス可塑性を引き起こす。
海馬歯状回、側座核、分界条床核の興奮性シナプスにおいての
アナンダミドが仲介する長期シナプス抑制/LTD 。
シナプス後部で作られたアナンダミドが細胞外に放出されずに、
細胞内でシナプス後部のTRPV1(一過性受容体電位カチオンチャネルサブファミリーVメンバー1
(Transient receptor potential cation channel subfamily V member 1 TrpV1、タンパク質、
記憶形成に関連(ヒトでは)TRPV1遺伝子によってコードされる )を活性化することで引き起こされる。
TRPV1を介した細胞内へのカルシウム流入が引き金となって
AMPA型グルタミン酸受容体のエンドサイトーシスが起こる。
と たのしい演劇の日々
アナンダミド /アナンダマイド anandamide) は、
神経伝達物質あるいは脂質メディエーターの一種で、
内因性のカンナビノイド Cannabinoid 受容体リガンド(内因性カンナビノイド)。
動物体内にあり、特に脳に多い。
快感などに関係する脳内麻薬物質の一つ、中枢神経系および末梢で多様な機能を持っ。
内因性カンナビノイド endocannabinoid
エンドカンナビノイドは生体内で作られるカンナビノイド受容体のリガンドの総称。
大麻草(学名:Cannabis sativa)に含まれる生理活性成分の総称名カンナビノイドに対して
内因性のカンナビノイドであることから名付けられた。脳内マリファナ類似物質。
主要なものとして アナンダミドと 2-アラキドノイルグリセロール(2-AG)あり、
どちらもアラキドン酸を含む脂質性の物質。
アナンダミド(anandamide)という名はサンスクリット語で「至福」を意味するanandaから取られた。
この他にも、ノラジンエーテル、N-アラキドノイルドーパミンなど
数種類がエンドカンナビノイドとして報告されているが生理的に機能しているかどうか明らかでない。
現在のところアナンダミドと2-AGが生理的に主要なエンドカンナビノイドと考えられている。
脳内の含有量は2-AGがアナンダミドに対しておよそ数十から数百倍多い。
アナンダミドはカンナビノイド受容体以外にもバニロイド受容体のアゴニストとしても働くため、
エンドバニロイドとしても知られる。
アナンダミドと2-AGの生合成には複数の経路が知られている。
どちらも膜のリン脂質から2つの酵素反応によって生成される。
アナンダミドはN-アシル転移酵素とホスホリパーゼD、
2-AGはホスホリパーゼC(PLC)とジアシルグリセロールリパーゼ(DGL)によって生成される。
中枢神経系においてエンドカンナビノイドはもっぱらニューロンで作られる。
しかしグリア細胞も作ることができるとの報告あり。
どちらのエンドカンナビノイドも加水分解によって代謝される。
アナンダミドは脂肪酸アミド加水分解酵素(FAAH)、
2-AGはモノアシルグリセロールリパーゼ(MGL)によって分解される。
これら主要経路以外にシクロオキシゲナーゼー2(COX-2)による酸化により代謝される。
また最近2-AGを選択的に分解する新たな酵素 ABHD6とABHD12が同定された。
カンナビノイド受容体は7回膜貫通型のGi/oタンパク質共役型受容体でCB1とCB2の2種類があり。
CB1は中枢神経系に、CB2は免疫系に多く発現。
CB1受容体は脳内に広く分布し、特に大脳皮質、海馬、扁桃体、大脳基底核、視床、小脳などに多い。
興奮性、抑制性のどちらのニューロンにもCB1受容体は発現するが、
その発現パターンは脳部位によって異なる。
例えば海馬では、一部の抑制性ニューロンに強く発現、これに比べて興奮性ニューロンには一様に低く発現。海馬の抑制性ニューロンのうちでも、パルブアルブミン陽性バスケット細胞にはCB1受容体が存在せず、
コレシストキニン陽性バスケット細胞に強く発現し、選択的な発現パターンを示す。
ニューロン内では、神経終末及び軸索に豊富に局在し、細胞体や樹状突起の発現は極めて低い。
エンドカンナビノイドは脂質メディエーターとして中枢神経系においてさまざまな神経伝達調節を行う。
主にCB1受容体の活性化を介してその効果を発揮。
CB1受容体は中枢神経系において
Gタンパク質共役型受容体の中でも最も発現量の多い受容体として知られており、
その発現領域も脳全体にわたる。
そのためエンドカンナビノイドの生理的作用は、
記憶・認知、運動制御、鎮痛、食欲調節、報酬系の制御など多岐にわたる。
エンドカンナビノイドは病理的な条件下でも重要な役割を担っており、
海馬でてんかん発作時に神経保護的役割を果たす。
エンドカンナビノイドの脂質メディエーターとしての働きで最も詳しく調べられているのは
逆行性伝達物質としての役割。
2-AGはシナプス後部から産生・放出されて逆行性にシナプス前終末に局在するCB1受容体を活性化す。
活性化したCB1受容体は共役するGi/oタンパク質を介して
シナプス前終末の電位依存性カルシウムチャネルの開口を抑制し、神経伝達物質の放出を抑制す。
2-AGはシナプス後部のニューロンの脱分極によるカルシウムイオン流入、
あるいはGq/11タンパク質共役型受容体の活性化によって産生される。
シナプス後ニューロンで強い脱分極が起きると電位依存性カルシウムチャネルが開いてカルシウムが流入。
細胞内カルシウム濃度がマイクロモーラー以上に達すると、2-AGが産生される。また、
グループI代謝型グルタミン酸受容体やM1/M3ムスカリン受容体といった
Gq/11タンパク質共役型受容体の活性化によってPLCβを介する経路で2-AG産生が引き起こされる。
この場合、細胞内カルシウム上昇は必要ない。
上記受容体以外にも
オレキシン受容体、セロトニン受容体、オキシトシン受容体、プロテアーゼ活性化受容体1型、
エンドセリン受容体などによってもエンドカンナビノイド産生が引き起こされる。
さらに、こういった受容体の活性化と脱分極による細胞内へのカルシウム流入が同時におこると、
2-AG産生が相乗的に促進。これは、
PLCβがカルシウム感受性を持つため、受容体活性化と同時に細胞内カルシウム濃度が高まると、
PLCβ活性が増強するため。
エンドカンナビノイドは脂質であるため細胞外へ放出される際、受動的に細胞膜を通り抜けると考えられる。しかしトランスポーターを介する可能性も否定できない。
最近アナンダミドのトランスポーターの候補と考えられるFLATという分子が同定された。
2-AGに関してはトランスポーターの存在は現在報告されていない。
2-AGによる逆行性シナプス伝達抑制はこれまでに
海馬、小脳、大脳基底核、大脳皮質、扁桃体、視床下部、脳幹などの
様々な脳部位で報告されており普遍的な現象である。一方、
アナンダミドはごく一部のシナプスでのみ逆行性伝達物質として働く。
2-AGによる逆行性シナプス伝達抑制は短期あるいは長期にシナプス伝達を抑制す。
短期のシナプス伝達抑制としてdepolarization-induced suppression of inhibition/excitation (DSI/DSE)。
2-AGによる長期のシナプス伝達抑制は、多くのシナプスで長期抑圧(long-term depression: LTD)の誘導にCB1受容体の活性化が必須である。
多くの場合、LTD誘導刺激によって2-AGが逆行性シグナルとして働く。
このようなLTDは海馬、小脳、線条体、大脳皮質などで詳しく調べられており、
エンドカンナビノイドが記憶・学習、運動学習や運動制御、認知機能に重要な役割を果たしている。
大脳皮質体性感覚野5層の低頻度発火型の抑制性ニューロンでは
エンドカンナビノイドが自己分泌によって作用す。
抑制性ニューロンに繰り返しの脱分極パルスを与えると、
長時間に渡ってその細胞の膜電位が過分極する自己抑制が起こる。
脱分極によって放出された2-AGが自身の細胞体のCB1受容体を活性化し、
最終的に内向き整流性カリウムチャネルが活性化されることで引き起こされる。
海馬や大脳皮質において
ニューロンから放出されたエンドカンナビノイドは
直接ニューロンのCB1受容体に作用するだけでなく アストロサイトのCB1受容体にも作用し、
シナプス伝達を調節する。
アストロサイトのCB1受容体の活性化によってアストロサイトからグルタミン酸が放出され
シナプス前終末、あるいはシナプス後部のグルタミン酸受容体
(NMDA型グルタミン酸受容体or代謝活性型グルタミン酸受容体)を活性化しシナプス可塑性を引き起こす。
海馬歯状回、側座核、分界条床核の興奮性シナプスにおいての
アナンダミドが仲介する長期シナプス抑制/LTD 。
シナプス後部で作られたアナンダミドが細胞外に放出されずに、
細胞内でシナプス後部のTRPV1(一過性受容体電位カチオンチャネルサブファミリーVメンバー1
(Transient receptor potential cation channel subfamily V member 1 TrpV1、タンパク質、
記憶形成に関連(ヒトでは)TRPV1遺伝子によってコードされる )を活性化することで引き起こされる。
TRPV1を介した細胞内へのカルシウム流入が引き金となって
AMPA型グルタミン酸受容体のエンドサイトーシスが起こる。
と たのしい演劇の日々
2023年08月01日
Alchemy of Actor channeling – emotion
Alchemy of Actor channeling – emotion- euphoria
β-エンドルフィン/beta-endorphin) C158H251N39O46S
中枢神経系と末梢神経系の双方の神経細胞で産生される内因性オピオイド神経ペプチド、ペプチドホルモン。α-、γ-とともに、ヒトで産生される3つのエンドルフィンのうちの1つ。
アミノ酸配列;
Tyr-Gly-Gly-Phe-Met-Thr-Ser-Glu-Lys-Ser-Gln-Thr-Pro-Leu-Val-Thr-Leu-Phe-Lys-Asn-Ala-Ile-Ile-Lys-Asn-Ala-Tyr-Lys-Lys-Gly-Glu。
最初の16アミノ酸はα-エンドルフィンと同。
β-エンドルフィンは内因性オピオイドで、
エンドルフィンに分類される神経ペプチド(
アミノ酸がペプチド結合(peptide bond)により短い鎖状につながった分子の総称 )。
実証されている内因性オピオイドペプチドは全て同じN末端のアミノ酸配列Tyr-Gly-Gly-Pheを持ち、
-Metまたは-Leuのいずれかが続く。
β-エンドルフィンの機能は空腹、スリル、疼痛、母性、性行動、報酬系と関係している。
最広義では、β-エンドルフィンは主にストレスを低下させ、恒常性を維持するために体内で利用される。
行動研究では、β-エンドルフィンはさまざまな刺激、特に新奇刺激に反応して、
拡散性伝達/volume transmission)によって脳室系へ放出される
β-エンドルフィンは、視床下部や脳下垂体の神経細胞に存在。
β-エンドルフィンはβ-リポトロピン/Lipotropin に由来し、
β-リポトロピンは脳下垂体において、より大きなペプチド前駆体であるプロオピオメラノコルチン
(Pro-opiomelanocortin-POMC, 241個のアミノ酸残基からなるポリペプチド前駆体 ,
POMC遺伝子;2p23.3 染色体に位置す )から産生される。
POMCは2つの神経ペプチド、副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)とβ-リポトロピンへと切断され。その後、
β-リポトロピンのC末端領域の切断の結果、
31アミノ酸長でαヘリックスの二次構造を持つβ-エンドルフィンが形成される。
POMCは、プロタンパク質コンベルターゼと呼ばれる酵素による細胞内でのプロセシングにより、
メラニン細胞刺激ホルモンなど他のペプチドホルモンの前駆体にもなる。
β-エンドルフィンと他の内因性オピオイドとの差異となる重要な因子は、
μ-オピオイド受容体に対する高いアフィニティと効果の持続性。
β-エンドルフィンの二次構造によるタンパク質分解酵素に対する抵抗性はその一因.
β-エンドルフィンの機能は、局所的機能と全身機能の2つの主要なカテゴリに分類される。
全身機能は
身体のストレスの低下と恒常性の維持に関連、疼痛管理、報酬効果、行動の安定などをもたらす。
β-エンドルフィンは脊髄の脳脊髄液を介し身体のさまざまな部分に拡散、
β-エンドルフィンの放出は末梢神経系にも影響。
局所的機能は、
扁桃体や視床下部などのさまざまな脳領域でβ-エンドルフィンの放出をもたらす。
β-エンドルフィンが体内で利用される2つの主要な方法は、末梢ホルモン作用と神経調節。
β-エンドルフィンや他のエンケファリン (enkephalin オピオイド(内在性のアヘン類縁物質)の一種
5つのアミノ酸からなるペプチド,プロエンケファリン遺伝子 (Penk1) がコードしており、
前駆体タンパクが翻訳後にプロセシングを受けてエンケファリンが作られる)。 は、
ホルモン系の機能の調節のためにACTHとともに放出され。
β-エンドルフィンによる神経調節は他の神経ペプチドの機能の阻害によって行われ、
神経ペプチドの放出を直接的な阻害や、
神経ペプチドの作用を低下させるシグナル伝達カスケードの誘導が行われる.
β-エンドルフィンはオピオイド受容体のアゴニスト、μ-オピオイド受容体に選択的に結合。
μ-オピオイド受容体の主要な内因性リガンドである、
アヘンから抽出された化学物質(モルヒネなど)が鎮痛作用を発揮するのもこの受容体を介して。
β-エンドルフィンはμ-オピオイド受容体に対する内因性オピオイドの中で最も高い結合親和性を示す。
オピオイド受容体はGタンパク質共役受容体の一種で、
β-エンドルフィンや他のオピオイドが結合すると細胞内のシグナル伝達カスケードが誘導される。しかし、
β-エンドルフィンのN末端のアセチル化は神経ペプチドを不活性化、受容体への結合を妨げる。
オピオイド受容体は中枢神経系全体と神経、非神経由来の末梢組織に分布。
水道周囲灰白質 central gray 、
青斑核(脳幹にあるノルアドレナリン作動性ニューロンを含む神経核。
モノアミン含有ニューロンの分類では、A6細胞群。覚醒、注意、情動に関与) 、
吻側延髄腹内側部RVMに高濃度で存在。
電位依存性カルシウムチャネル(VDCC)は神経細胞の脱分極を媒介する重要な膜タンパク質であり、
神経伝達物質の放出に大きな役割を果たす。
エンドルフィン分子がオピオイド受容体に結合すると、
Gタンパク質は活性化されてGαとGβγサブユニットへと解離。
GβγサブユニットはVDCCの2つの膜貫通ヘリックスの間の細胞内ループに結合し、
チャネルを阻害して神経細胞へのカルシウムイオンの流入を妨げる。
細胞膜にはGタンパク質共役内向き整流カリウムチャネル(GIRK)も埋め込まれており、
チャネルC末端にGβγ or Gα-GTPが結合することで活性化され神経細胞からカリウムイオンが排出される。
カリウムチャネルの活性化とその後のカルシウムチャネルの不活性化によって、
細胞膜の過分極が引き起こされる。
神経伝達物質の放出が起こるためにカルシウムイオン必要不可欠であるため、
カルシウムイオンの減少は神経伝達物質の低下を引きおこし、
グルタミン酸やサブスタンスPなどの神経伝達物質を神経細胞のシナプス前終末から放出を阻止。
これらの神経伝達物質は痛覚の伝達に重要で、
β-エンドルフィンはこうした物質の放出を減少させることで強い鎮痛作用を示す。
β-エンドルフィンは主に侵害受容(痛みの知覚など)への影響が研究されている。
β-エンドルフィンは中枢神経系と末梢神経系の双方で痛覚を調節す。
痛みが知覚された際に、痛みの受容体
(侵害受容器は脊髄の後角にシグナルを送り、
シグナルはサブスタンスPと呼ばれる神経ペプチドの放出を介して脳下垂体へ送られる。
末梢神経系では、このシグナルは痛みが知覚された部位へ免疫系の白血球細胞であるT細胞をリクルートす。
T細胞は局所的にβ-エンドルフィンを放出し、
オピオイド受容体への結合を介しサブスタンスPの放出を直接阻害す。
中枢神経系では、
β-エンドルフィンは後角のオピオイド受容体に結合して脊髄でのサブスタンスPの放出を阻害し、
脳へ送られる興奮性の痛覚シグナルの数を減少させる。
脳下垂体は
水道周囲灰白質のネットワークを介してβ-エンドルフィンを放出することで痛覚シグナルに応答し、
主にドーパミンの放出を阻害する神経伝達物質であるGABAの放出を阻害す。
β-エンドルフィンによるGABAの阻害はドーパミンの放出を高め、
β-エンドルフィンの鎮痛作用に部分的に寄与す。
これらの経路の組み合わせによって痛みの知覚は低下し、身体は送っていた痛み刺激を停止。
β-エンドルフィンの鎮痛効果はモルヒネのおよそ18倍から33倍、
そのホルモンとしての効果は種によって異なる。
運動への応答としてβ-エンドルフィンが放出される現象は、1980年代から知られ、研究されてきた。
血清中の内因性オピオイド、特にβ-エンドルフィンとβ-リポトロピンの濃度は、
急な運動の後にも長期運動の後にも上昇。
運動中のβ-エンドルフィンの放出は、「ランナーズハイrunner's high;
継続的な運動によって引き起こされる一時的な多幸感で、
喜び、深い満足感、高揚感、ウェルビーイングといったポジティブ感情を経験する感情的状態)
として知られる現象と関係。
アナンダミド /アナンダマイド anandamide) は、
アラキドノイルエタノールアミド (arachidonoylethanolamide, AEA) とも呼ばれ
神経伝達物質あるいは脂質メディエーターの一種で、
内因性のカンナビノイド Cannabinoid 受容体リガンド(内因性カンナビノイド)。
動物体内にあり、特に脳に多い。
快感などに関係する脳内麻薬物質の一つ、中枢神経系および末梢で多様な機能を持っている。
と たのしい演劇の日々
β-エンドルフィン/beta-endorphin) C158H251N39O46S
中枢神経系と末梢神経系の双方の神経細胞で産生される内因性オピオイド神経ペプチド、ペプチドホルモン。α-、γ-とともに、ヒトで産生される3つのエンドルフィンのうちの1つ。
アミノ酸配列;
Tyr-Gly-Gly-Phe-Met-Thr-Ser-Glu-Lys-Ser-Gln-Thr-Pro-Leu-Val-Thr-Leu-Phe-Lys-Asn-Ala-Ile-Ile-Lys-Asn-Ala-Tyr-Lys-Lys-Gly-Glu。
最初の16アミノ酸はα-エンドルフィンと同。
β-エンドルフィンは内因性オピオイドで、
エンドルフィンに分類される神経ペプチド(
アミノ酸がペプチド結合(peptide bond)により短い鎖状につながった分子の総称 )。
実証されている内因性オピオイドペプチドは全て同じN末端のアミノ酸配列Tyr-Gly-Gly-Pheを持ち、
-Metまたは-Leuのいずれかが続く。
β-エンドルフィンの機能は空腹、スリル、疼痛、母性、性行動、報酬系と関係している。
最広義では、β-エンドルフィンは主にストレスを低下させ、恒常性を維持するために体内で利用される。
行動研究では、β-エンドルフィンはさまざまな刺激、特に新奇刺激に反応して、
拡散性伝達/volume transmission)によって脳室系へ放出される
β-エンドルフィンは、視床下部や脳下垂体の神経細胞に存在。
β-エンドルフィンはβ-リポトロピン/Lipotropin に由来し、
β-リポトロピンは脳下垂体において、より大きなペプチド前駆体であるプロオピオメラノコルチン
(Pro-opiomelanocortin-POMC, 241個のアミノ酸残基からなるポリペプチド前駆体 ,
POMC遺伝子;2p23.3 染色体に位置す )から産生される。
POMCは2つの神経ペプチド、副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)とβ-リポトロピンへと切断され。その後、
β-リポトロピンのC末端領域の切断の結果、
31アミノ酸長でαヘリックスの二次構造を持つβ-エンドルフィンが形成される。
POMCは、プロタンパク質コンベルターゼと呼ばれる酵素による細胞内でのプロセシングにより、
メラニン細胞刺激ホルモンなど他のペプチドホルモンの前駆体にもなる。
β-エンドルフィンと他の内因性オピオイドとの差異となる重要な因子は、
μ-オピオイド受容体に対する高いアフィニティと効果の持続性。
β-エンドルフィンの二次構造によるタンパク質分解酵素に対する抵抗性はその一因.
β-エンドルフィンの機能は、局所的機能と全身機能の2つの主要なカテゴリに分類される。
全身機能は
身体のストレスの低下と恒常性の維持に関連、疼痛管理、報酬効果、行動の安定などをもたらす。
β-エンドルフィンは脊髄の脳脊髄液を介し身体のさまざまな部分に拡散、
β-エンドルフィンの放出は末梢神経系にも影響。
局所的機能は、
扁桃体や視床下部などのさまざまな脳領域でβ-エンドルフィンの放出をもたらす。
β-エンドルフィンが体内で利用される2つの主要な方法は、末梢ホルモン作用と神経調節。
β-エンドルフィンや他のエンケファリン (enkephalin オピオイド(内在性のアヘン類縁物質)の一種
5つのアミノ酸からなるペプチド,プロエンケファリン遺伝子 (Penk1) がコードしており、
前駆体タンパクが翻訳後にプロセシングを受けてエンケファリンが作られる)。 は、
ホルモン系の機能の調節のためにACTHとともに放出され。
β-エンドルフィンによる神経調節は他の神経ペプチドの機能の阻害によって行われ、
神経ペプチドの放出を直接的な阻害や、
神経ペプチドの作用を低下させるシグナル伝達カスケードの誘導が行われる.
β-エンドルフィンはオピオイド受容体のアゴニスト、μ-オピオイド受容体に選択的に結合。
μ-オピオイド受容体の主要な内因性リガンドである、
アヘンから抽出された化学物質(モルヒネなど)が鎮痛作用を発揮するのもこの受容体を介して。
β-エンドルフィンはμ-オピオイド受容体に対する内因性オピオイドの中で最も高い結合親和性を示す。
オピオイド受容体はGタンパク質共役受容体の一種で、
β-エンドルフィンや他のオピオイドが結合すると細胞内のシグナル伝達カスケードが誘導される。しかし、
β-エンドルフィンのN末端のアセチル化は神経ペプチドを不活性化、受容体への結合を妨げる。
オピオイド受容体は中枢神経系全体と神経、非神経由来の末梢組織に分布。
水道周囲灰白質 central gray 、
青斑核(脳幹にあるノルアドレナリン作動性ニューロンを含む神経核。
モノアミン含有ニューロンの分類では、A6細胞群。覚醒、注意、情動に関与) 、
吻側延髄腹内側部RVMに高濃度で存在。
電位依存性カルシウムチャネル(VDCC)は神経細胞の脱分極を媒介する重要な膜タンパク質であり、
神経伝達物質の放出に大きな役割を果たす。
エンドルフィン分子がオピオイド受容体に結合すると、
Gタンパク質は活性化されてGαとGβγサブユニットへと解離。
GβγサブユニットはVDCCの2つの膜貫通ヘリックスの間の細胞内ループに結合し、
チャネルを阻害して神経細胞へのカルシウムイオンの流入を妨げる。
細胞膜にはGタンパク質共役内向き整流カリウムチャネル(GIRK)も埋め込まれており、
チャネルC末端にGβγ or Gα-GTPが結合することで活性化され神経細胞からカリウムイオンが排出される。
カリウムチャネルの活性化とその後のカルシウムチャネルの不活性化によって、
細胞膜の過分極が引き起こされる。
神経伝達物質の放出が起こるためにカルシウムイオン必要不可欠であるため、
カルシウムイオンの減少は神経伝達物質の低下を引きおこし、
グルタミン酸やサブスタンスPなどの神経伝達物質を神経細胞のシナプス前終末から放出を阻止。
これらの神経伝達物質は痛覚の伝達に重要で、
β-エンドルフィンはこうした物質の放出を減少させることで強い鎮痛作用を示す。
β-エンドルフィンは主に侵害受容(痛みの知覚など)への影響が研究されている。
β-エンドルフィンは中枢神経系と末梢神経系の双方で痛覚を調節す。
痛みが知覚された際に、痛みの受容体
(侵害受容器は脊髄の後角にシグナルを送り、
シグナルはサブスタンスPと呼ばれる神経ペプチドの放出を介して脳下垂体へ送られる。
末梢神経系では、このシグナルは痛みが知覚された部位へ免疫系の白血球細胞であるT細胞をリクルートす。
T細胞は局所的にβ-エンドルフィンを放出し、
オピオイド受容体への結合を介しサブスタンスPの放出を直接阻害す。
中枢神経系では、
β-エンドルフィンは後角のオピオイド受容体に結合して脊髄でのサブスタンスPの放出を阻害し、
脳へ送られる興奮性の痛覚シグナルの数を減少させる。
脳下垂体は
水道周囲灰白質のネットワークを介してβ-エンドルフィンを放出することで痛覚シグナルに応答し、
主にドーパミンの放出を阻害する神経伝達物質であるGABAの放出を阻害す。
β-エンドルフィンによるGABAの阻害はドーパミンの放出を高め、
β-エンドルフィンの鎮痛作用に部分的に寄与す。
これらの経路の組み合わせによって痛みの知覚は低下し、身体は送っていた痛み刺激を停止。
β-エンドルフィンの鎮痛効果はモルヒネのおよそ18倍から33倍、
そのホルモンとしての効果は種によって異なる。
運動への応答としてβ-エンドルフィンが放出される現象は、1980年代から知られ、研究されてきた。
血清中の内因性オピオイド、特にβ-エンドルフィンとβ-リポトロピンの濃度は、
急な運動の後にも長期運動の後にも上昇。
運動中のβ-エンドルフィンの放出は、「ランナーズハイrunner's high;
継続的な運動によって引き起こされる一時的な多幸感で、
喜び、深い満足感、高揚感、ウェルビーイングといったポジティブ感情を経験する感情的状態)
として知られる現象と関係。
アナンダミド /アナンダマイド anandamide) は、
アラキドノイルエタノールアミド (arachidonoylethanolamide, AEA) とも呼ばれ
神経伝達物質あるいは脂質メディエーターの一種で、
内因性のカンナビノイド Cannabinoid 受容体リガンド(内因性カンナビノイド)。
動物体内にあり、特に脳に多い。
快感などに関係する脳内麻薬物質の一つ、中枢神経系および末梢で多様な機能を持っている。
と たのしい演劇の日々