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2023年08月16日

Alchemy of Actor Channeling-emotion

Alchemy of Actor Channeling-emotion

DSI-Depolarization-induced suppression of inhibition脱分極誘導性脱抑制


ニューロンが脱分極したときに、
そのニューロンに入力している抑制性シナプス応答が一過性(1〜2分間程度)に抑制される現象。
同じ現象が興奮性シナプスで起こる場合、Depolarization-induced suppression of excitation (DSE)と呼ぶ。
エンドカンナビノイドが担う逆行性シナプス伝達の一種。

脱分極により細胞内へのカルシウムイオン流入しエンドカンナビノイドの一種で2-AG産生。
シナプス後部でつくられた2-AGは細胞外へ放出され、
シナプス間隙を逆行しシナプス前終末に局在するカンナビノイド受容体I型(CB1)に結合 活性化。
CB1受容体の活性化は神経伝達物質の放出を一過性に抑制。
DSI/DSEの発生条件として、そのニューロンに2-AGを産生する能力(2-AG合成酵素の有無)があり、
かつ入力するシナプス前終末にCB1受容体が存在することが必要。
脳の広範囲のシナプスにおいてDSI/DSEが引き起こされる。
現在までに、海馬、小脳、線条体、大脳皮質、扁桃体、脳幹など
脳の様々な部位でDSI/DSEが起こることが報告されている。



エンドカンナビノイドはカンナビノイド受容体に対するリガンドの総称、複数存在。
その中でも2-AGがDSI/DSEを仲介する逆行性伝達物質として働く。
2-AGは膜のリン脂質から2つの酵素反応によって生成。
ホスホリパーゼC(PLC)活性の産物であるジアシルグリセロール(DG)が前駆体となり、
ジアシルグリセロールリパーゼ(DGL)による加水分解で2-AGが作られる。
DGLを薬理的に阻害するとDSI/DSEがブロックされる。
ただしDGLの薬理的阻害がDSI/DSEに影響しないという報告もある。しかし、
αとβの2つのサブタイプを有するDGLのうち
DGLαノックアウトマウスで海馬、小脳、線条体、扁桃体、前頭前野皮質という
5つの異なった脳部位でDSI/DSEが消失、DSIに DGLαが必須。さらに
2-AGの分解酵素モノアシルグリセロールリパーゼを薬理的あるいは遺伝子欠損によって阻害すると
DSI/DSEの持続時間が遷延。
2-AGは逆行性伝達物質。



DSIのメカニズム;
脱分極による細胞内へのカルシウムイオン流入が引き金となり細胞膜のリン脂質からDG産生。
DGはDGLにより加水分解され2-AG産生。
2-AGは細胞膜を通って細胞外へ放出され、シナプス前終末に局在するCB1受容体を活性化。
Gi/oタンパク質共役型受容体であるCB1受容体の活性化は
Gi/oタンパク質を介してカルシウムチャネルを抑制。あるいは
カリウムチャネルを活性化。
その結果、神経終末でのカルシウムイオン流入がブロックされ神経伝達物質の放出抑制。
シナプス後細胞での脱分極によるカルシウムイオン流入からどのようにしてDGが作られるのかは未だ不明。
すくなくともDSI/DSEは、PLCβやPLCδを欠損するマウスでも全く影響されないことから 
PLCβ,PLCδ以外のPLCか、または別の分子を介するか?



 グループI代謝活性型グルタミン酸受容体やM1/M3ムスカリン受容体の
アゴニスト存在下でニューロンを脱分極させると、DSI/DSE促進。すなわち
弱い脱分極でも、大きなDSIを引き起こす。
この現象のメカニズムにより  グループI代謝活性型グルタミン酸受容体やM1/M3ムスカリン受容体
といったGq/11タンパク質共役型受容体はPLCβを活性化。
PLCβがカルシウム感受性を持つため、
受容体活性化に加えて脱分極による細胞内カルシウム流入が生じると、
PLCβ活性が増強し2-AGの前駆体であるDG産生が促進される。結果、
2-AGが効率よく作られ、DSIが起きやすくなる。つまり 
「Gq/11共役型受容体活性化により2-AGを介する逆行性シナプス伝達抑圧の、
細胞内カルシウム上昇による促進」

神経細胞の強い脱分極だけで生ずるDSI/DSEは、PLCβ欠損マウスでも全く影響されない、
PLCβ以外のPLCか、または別の分子を介するか?

「DSIの促進」は機能的に重要な役割を担う exa、
線条体でアセチルコリン作動性抑制性ニューロンの発火により恒常的に細胞外にアセチルコリン存在。
そのため中型有棘神経細胞のシナプスでM1ムスカリン受容体が慢性的に活性化 
弱い脱分極でもDSIが引き起こされる。



エンドカンナビノイドの細胞外での拡散範囲は限られている。したがって、
DSIは脱分極した細胞の近傍の細胞にしか及ばない。exa,
海馬CA1錐体細胞のDSIは
脱分極した細胞からの距離が20 μm以内であれば脱分極していない細胞でもDSIが起こる。

 小脳では間接的なメカニズムにより遠くまでDSIの伝播が起こる。
脱分極によってプルキンエ細胞から放出されたエンドカンナビノイドが、
近傍の抑制性ニューロンのCB1受容体を活性化。
内向き整流性カリウムチャネルがCB1受容体の下流にあり、
このカリウムチャネルの活性化は抑制性ニューロンの発火を抑制。その結果、
発火が抑えられた抑制性ニューロンが投射している多くのプルキンエ細胞において入力が抑制される。



DSI/DSEはネガティブフィードバックとして働き局所回路においてシナプス伝達を制御する。
短期のシナプス可塑性DSIは神経回路の計算論的観点からも注目。また
DSIがメタ可塑性に関わる。
海馬CA1において閾値以下のテタヌス刺激では長期増強(LTP)を引き起こさないような場合でも
テタヌス刺激に先行してDSIを誘導させると次に来る閾値以下であった刺激でもLTPが誘導される。
DSIによる脱抑制が原因である。

 DSI/DSEを誘導するには細胞内のカルシウム濃度がμMレベルにまで達しなければならない。
実際に生理的条件下でそのように大きなカルシウム濃度上昇を引き起こすほど
ニューロンが長時間脱分極するかどうかは疑わしい。したがって
DSIが生理的な現象であることを疑問視もある。しかし一方で、
小脳プルキンエ細胞や背側蝸牛神経核にあるCartwheel細胞の
持続的な発火によるμM以下のカルシウム濃度上昇でもDSI/DSEが起こることから
DSI/DSEが生理的現象である可能性も。

 エンドカンナビノイドはDSIのような細胞内カルシウム濃度上昇だけでなく、
グループI代謝活性型グルタミン酸受容体といった
Gq/11タンパク質共役型受容体の活性化によっても産生・放出される。さらに
「DSIの促進効果」により弱い脱分極でもGq/11タンパク質共役型受容体の活性化と組合わさると、
効率よく逆行性シナプス伝達抑制が引き起こされる。したがって
生理的条件下ではDSIが単独で起こるよりも
Gq/11タンパク質共役型受容体の活性化を伴った神経活動によって
エンドカンナビノイドによる逆行性シナプス伝達抑制が引き起こされる。

と たのしい演劇の日々
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