2023年07月20日
Alchemy of Actor channeling – emotion
Alchemy of Actor channeling – emotion
ある脳科学者の評論より
脳が推論する働きは、ものを見るだけではなくて、感情にも関係している。
研究では「感情」と「情動」に分け感情はfeelingやaffect、情動はemotionと云う。
情動(emotion)とは、外の刺激や、何らかの記憶を思い出すことで生理的な反応が起こることだと定義。
ドキドキするとか、体温、血圧が上がるといった反応。
感情(feeling)とは、情動の発生にともなって生じる、主観的な意識体験だとされ、
たとえば息苦しさや、汗をかくという生理的な反応によって、悲しい、怒り、恐れなどの感情が生まれる。
生理的な反応である情動がもとになって感情が起こるのだから、
感情の大部分は、自分の体の状態が関わっているといえる。
私たちの脳では、言葉を発した瞬間に、イメージが想起される。
たとえば、「太陽」と口に出したとき、 明るい、暖かい、輝いている...といったイメージが浮かぶ。
それらは、「太陽」という言葉そのもの以上に、強く印象に残る。
言葉を発すると、脳内では、言葉に関わる「言語野」と同時に、視覚に関係する「視覚野」が活性化、
その結果、パフォーマンスが変わることがわかっている。
私たちはうれしい体験をしたとき、「やったー!」「最高」「ありがとう」などと口にする。
そのとき、脳では
リラックスのホルモン=セロトニン、
やる気のホルモン=ドーパミン、
至福のホルモン=β(ベータ)エンドルフィン などが分泌される。
自分の脳の働きを変える一番いい方法は、「感動する」ということ。
感動することほど、人を変えることはない。感動は、人間を変えてしまう「劇薬」。
人生を振り返ってみ 何に感動したかで、おそらく、人の人生は決まっている。
それぐらい感動というのは、根深い。
ライアル・ワトソン Lyall Watson (1939-2008 動物行動学者
動植物界、人間界における超常現象を含む科学の水際をフィールドワークとして
「新自然学」の確立を目指し、自然的現象と超自然的現象を生物学的見地から解説しようと試みた) は
世界各地へ出かけていって、その自然や文化を見て、美しい文章に表現した。
ライアルがまだ若かった頃、インドネシアのある島に行き、夜、ボートで海に漕ぎ出した。
すると、海の底のほうから、1つまた1つと小さな明かりが上がってき、気づいたら、
そのボートが光で取り囲まれていた。イカが発光しながら、集まってきたのだ。
ボートがゆらめくと、イカたちの光もゆらめいて、
ボートの端をたたくと、その光も一緒に振動するようにヴァーン、ヴァーンと動く。
その感動的な体験が、ワトソンの人生を決定づけた。ワトソンはそのとき、考えた。
イカたちは非常に精巧な眼球を持っていて、この眼球は、
イカのあの貧弱な中枢神経系では処理しきれないくらいの情報を扱っている。ではなぜ、
イカはこんな精巧な眼球を持っているのか。ワトソンはそこで、
イカは自分のためではなく、何かもっと大きなもののために世界を見ているのに違いない、
という直観を得る。その体験が、
後の『水の惑星』や『風の博物誌』などの、一連の仕事につながっていった。
そのときのワトソンの感動を、想像してみよう。
「あれはイカだ」とか「ルシフェリン・ルシフェラーゼで光っている」とか、
分析をして片付けてしまったら、あのようなメッセージは得られない。
ワトソンは、何かを見てしまったのだ。こんなときに、何を感じるかで、その人の人生は決まる。
生命を人工的につくろうという「人工生命 Artificial Life 」のパイオニア
クリストファー・ラングトン Christopher Langton (1949- 計算機科学)は
ある夜、1人で研究室で仕事をしていたら、フッと後ろに誰かがいる気配がして、
「何だろう」と思って振り返ってみた。しかし、そこにあったのは、
コンピュータのスクリーンに、白と黒がシミュレーション・パターンで点滅する ライフゲームだった。
大抵、「なんだ、ライフゲームか……」と思うだけだろう。しかしラングトンは、
「このライフゲームは、確かに生きている!」という、強い直観を得 それが、
人工生命という研究分野が立ち上がる、決定的なきっかけとなった。
近代日本を代表する文芸評論家の小林秀雄(1902-83)は、戦後すぐに御母堂が亡くなられ、
そのことが日本が戦争に負けたことよりも、自分にとってはずっと大きな出来事だった、と云う。
ある日、鎌倉の扇ヶ谷を歩いていた折 お母様の仏壇に灯すロウソクが切れたのに気づき、買いに出かけた。歩いていると、ずいぶん大ぶりの蛍が、1匹飛んでいる。そのとき唐突に、
「ああ、おっかさんは今、蛍になっている」と思った
とアンリ・ベルクソン Henri-Louis Bergson (1859-1941)哲学者を論じた未完の作品、
『感想』の冒頭に書かれている。
このようなとき、ただ「ああ、蛍ね……」と思う人もいる。しかし、
それを見た小林さんが深く感動したという、そのことがやはり大事。
感動できるという能力、つまり自分が楽器だとすると、その楽器をどれくらい大きく鳴らせるか――
人と会って大切な話をしているとき、あるいは、何か心動かされる物事と向き合っているとき、
人生の大事な局面に佇んでいるとき、自分という楽器をどのくらい大きな音で鳴らせるか――、
脳の中には、100種類の神経伝達物質があり、
ドーパミン、グルタミン酸、ギャバ、ベータエンドルフン、セロトニン――、
いろいろな神経伝達物質が、われわれの脳の中で、いわばシンフォニーを奏でている。
感動する、大きく楽器を鳴らすということは、
その化学物質がザワザワザワーッと脳の中の1000億の神経細胞の間を、走り回っているような状態。
そのとき、われわれの脳は変化する。
その神経伝達物質は、脳が自分で分泌する化学物質であり、外から入ってくるものではない。
したがって、どういう化学物質が、どういうタイミングで分泌されるかは、
体験している現象に対して、われわれがどれくらい脳を共鳴させているかによって、変わる。
人間にとって「恒常性」は、たいへん大事。
脳の機能の中でもっとも大事なものを1つ挙げろと言われたら、恒常性が入る。
感動するということは、自分がよろめいて、揺るがされているということ。
涙が出るということは、処理できないくらい多量の情報を、脳が受け取って、オーバーフローすること。
どうしようもないことを、なんとか処理しようとしている結果。
涙は産出物だから、脳が、何かを外に出している。
情動系が、感情が、あまりにも巨大なものを受け取ってしまったがために、どうすることもできなくて、
涙が出る。そのことで、なんとか恒常性が維持される。
ですから、揺れ動くときには、思いっ切り揺れ動く。
アクセルを踏みつ放しにしないと、脳が本当には変化できない。
変わるためにどうしても必要なことは、自分の心を開くこと、
そしてなるべく恐れをなくして、その状況の中に飛び込むこと。
と たのしい演劇の日々
ある脳科学者の評論より
脳が推論する働きは、ものを見るだけではなくて、感情にも関係している。
研究では「感情」と「情動」に分け感情はfeelingやaffect、情動はemotionと云う。
情動(emotion)とは、外の刺激や、何らかの記憶を思い出すことで生理的な反応が起こることだと定義。
ドキドキするとか、体温、血圧が上がるといった反応。
感情(feeling)とは、情動の発生にともなって生じる、主観的な意識体験だとされ、
たとえば息苦しさや、汗をかくという生理的な反応によって、悲しい、怒り、恐れなどの感情が生まれる。
生理的な反応である情動がもとになって感情が起こるのだから、
感情の大部分は、自分の体の状態が関わっているといえる。
私たちの脳では、言葉を発した瞬間に、イメージが想起される。
たとえば、「太陽」と口に出したとき、 明るい、暖かい、輝いている...といったイメージが浮かぶ。
それらは、「太陽」という言葉そのもの以上に、強く印象に残る。
言葉を発すると、脳内では、言葉に関わる「言語野」と同時に、視覚に関係する「視覚野」が活性化、
その結果、パフォーマンスが変わることがわかっている。
私たちはうれしい体験をしたとき、「やったー!」「最高」「ありがとう」などと口にする。
そのとき、脳では
リラックスのホルモン=セロトニン、
やる気のホルモン=ドーパミン、
至福のホルモン=β(ベータ)エンドルフィン などが分泌される。
自分の脳の働きを変える一番いい方法は、「感動する」ということ。
感動することほど、人を変えることはない。感動は、人間を変えてしまう「劇薬」。
人生を振り返ってみ 何に感動したかで、おそらく、人の人生は決まっている。
それぐらい感動というのは、根深い。
ライアル・ワトソン Lyall Watson (1939-2008 動物行動学者
動植物界、人間界における超常現象を含む科学の水際をフィールドワークとして
「新自然学」の確立を目指し、自然的現象と超自然的現象を生物学的見地から解説しようと試みた) は
世界各地へ出かけていって、その自然や文化を見て、美しい文章に表現した。
ライアルがまだ若かった頃、インドネシアのある島に行き、夜、ボートで海に漕ぎ出した。
すると、海の底のほうから、1つまた1つと小さな明かりが上がってき、気づいたら、
そのボートが光で取り囲まれていた。イカが発光しながら、集まってきたのだ。
ボートがゆらめくと、イカたちの光もゆらめいて、
ボートの端をたたくと、その光も一緒に振動するようにヴァーン、ヴァーンと動く。
その感動的な体験が、ワトソンの人生を決定づけた。ワトソンはそのとき、考えた。
イカたちは非常に精巧な眼球を持っていて、この眼球は、
イカのあの貧弱な中枢神経系では処理しきれないくらいの情報を扱っている。ではなぜ、
イカはこんな精巧な眼球を持っているのか。ワトソンはそこで、
イカは自分のためではなく、何かもっと大きなもののために世界を見ているのに違いない、
という直観を得る。その体験が、
後の『水の惑星』や『風の博物誌』などの、一連の仕事につながっていった。
そのときのワトソンの感動を、想像してみよう。
「あれはイカだ」とか「ルシフェリン・ルシフェラーゼで光っている」とか、
分析をして片付けてしまったら、あのようなメッセージは得られない。
ワトソンは、何かを見てしまったのだ。こんなときに、何を感じるかで、その人の人生は決まる。
生命を人工的につくろうという「人工生命 Artificial Life 」のパイオニア
クリストファー・ラングトン Christopher Langton (1949- 計算機科学)は
ある夜、1人で研究室で仕事をしていたら、フッと後ろに誰かがいる気配がして、
「何だろう」と思って振り返ってみた。しかし、そこにあったのは、
コンピュータのスクリーンに、白と黒がシミュレーション・パターンで点滅する ライフゲームだった。
大抵、「なんだ、ライフゲームか……」と思うだけだろう。しかしラングトンは、
「このライフゲームは、確かに生きている!」という、強い直観を得 それが、
人工生命という研究分野が立ち上がる、決定的なきっかけとなった。
近代日本を代表する文芸評論家の小林秀雄(1902-83)は、戦後すぐに御母堂が亡くなられ、
そのことが日本が戦争に負けたことよりも、自分にとってはずっと大きな出来事だった、と云う。
ある日、鎌倉の扇ヶ谷を歩いていた折 お母様の仏壇に灯すロウソクが切れたのに気づき、買いに出かけた。歩いていると、ずいぶん大ぶりの蛍が、1匹飛んでいる。そのとき唐突に、
「ああ、おっかさんは今、蛍になっている」と思った
とアンリ・ベルクソン Henri-Louis Bergson (1859-1941)哲学者を論じた未完の作品、
『感想』の冒頭に書かれている。
このようなとき、ただ「ああ、蛍ね……」と思う人もいる。しかし、
それを見た小林さんが深く感動したという、そのことがやはり大事。
感動できるという能力、つまり自分が楽器だとすると、その楽器をどれくらい大きく鳴らせるか――
人と会って大切な話をしているとき、あるいは、何か心動かされる物事と向き合っているとき、
人生の大事な局面に佇んでいるとき、自分という楽器をどのくらい大きな音で鳴らせるか――、
脳の中には、100種類の神経伝達物質があり、
ドーパミン、グルタミン酸、ギャバ、ベータエンドルフン、セロトニン――、
いろいろな神経伝達物質が、われわれの脳の中で、いわばシンフォニーを奏でている。
感動する、大きく楽器を鳴らすということは、
その化学物質がザワザワザワーッと脳の中の1000億の神経細胞の間を、走り回っているような状態。
そのとき、われわれの脳は変化する。
その神経伝達物質は、脳が自分で分泌する化学物質であり、外から入ってくるものではない。
したがって、どういう化学物質が、どういうタイミングで分泌されるかは、
体験している現象に対して、われわれがどれくらい脳を共鳴させているかによって、変わる。
人間にとって「恒常性」は、たいへん大事。
脳の機能の中でもっとも大事なものを1つ挙げろと言われたら、恒常性が入る。
感動するということは、自分がよろめいて、揺るがされているということ。
涙が出るということは、処理できないくらい多量の情報を、脳が受け取って、オーバーフローすること。
どうしようもないことを、なんとか処理しようとしている結果。
涙は産出物だから、脳が、何かを外に出している。
情動系が、感情が、あまりにも巨大なものを受け取ってしまったがために、どうすることもできなくて、
涙が出る。そのことで、なんとか恒常性が維持される。
ですから、揺れ動くときには、思いっ切り揺れ動く。
アクセルを踏みつ放しにしないと、脳が本当には変化できない。
変わるためにどうしても必要なことは、自分の心を開くこと、
そしてなるべく恐れをなくして、その状況の中に飛び込むこと。
と たのしい演劇の日々
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