2023年08月09日
Alchemy of Actor-Channeling-emotion アラキドン酸
Alchemy of Actor Channeling-emotion
arachidonic acidアラキドン酸
Chemical formula; C20H32O2
アラキドン酸は4つのcis二重結合を有する20個の炭素鎖からなる脂肪酸。
メチル末端(ω or n)から数えて最初の二重結合が6番目と7番目の炭素の間に位置するため、
ω-6 (n-6)多価不飽和脂肪酸に含まれ、20:4ω-6と記載 。
アラキドン酸は、主に細胞膜のリン脂質のsn-2位にエステル化されて存在 。
主にグリセロリン脂質にコリンが結合したホスファチジルコリンに含まれるが、
ホスファチジルイノシトールなど他のグリセロリン脂質にも含まれる 。
刺激に応じホスホリパーゼA2phospholipase A2; PLA2 の酵素活性により細胞膜から遊離 、
エンドカンナビノイドの2-アラキドノイルグリセロール (2-AG)や
アナンダマイド(anandamide; の構成成分として細胞膜から遊離 。
エンドカンナビノイドはそれ自体で生理活性を有するが、代謝されて遊離アラキドン酸を産生 。
遊離アラキドン酸の大半は細胞膜のリン脂質に再度取り込まれるため、その濃度は低く維持されている 。
遊離アラキドン酸はプロスタノイドやロイコトリエンなど多様な生理活性脂質に変換され、
摂食、睡眠・覚醒、脳血流など生理的な脳機能の他、
疾病時の発熱や内分泌応答、疼痛、てんかん、脳虚血、ストレス、神経・精神疾患など様々な病態にも関与.
アラキドン酸は、肉、卵、魚介類などの食品から得られ
、細胞内のリン脂質に取り込まれ、様々な生体膜の合成に使用 。
実験(ラット使用)では、離乳後3〜4カ月の間ω-6 多価不飽和脂肪酸を欠乏させると、
脳内のアラキドン酸含有量が約30%減少 。
成人では、脳で代謝されるアラキドン酸は血漿から補われ、
脳内のアラキドン酸の含有量は一定に保たれている。
ヒトのPETイメージングにより、脳内へ取り込まれる血漿中のアラキドン酸は約18mg/日、
脳内におけるアラキドン酸の半減期は約147日 。
アラキドン酸は、18個の炭素鎖からなり2つのcis二重結合を含む
ω-6多価不飽和脂肪酸の1種であるリノール酸(18:2ω-6)からも産生。
リノール酸は必須脂肪酸、ナッツなどの種実類や植物油は豊富に含む 。
体内に取り込まれたリノール酸は、段階的な不飽和化 脂肪鎖伸長により
アラキドン酸やドコサテトラエン酸(22:4ω-6)などの脂肪酸に変換される。
リノール酸はΔ6不飽和化酵素fatty acid desaturase 2; FADS2)による脱水素化を介して
二重結合が付与されγ-リノレン酸(18:3ω-6)になる。
その後、γ-リノレン酸からΔ6脂肪酸伸長酵素(Δ6 elongase)により
脂肪酸が伸長されジホモ-γ-リノレン酸(20:3ω-6)になる。
Δ5不飽和化酵素(fatty acid desaturase 1; FADS1)によりジホモ-γ-リノレン酸からアラキドン酸産生 。
Δ5不飽和化酵素やΔ6不飽和化酵素の活性は、栄養、喫煙、老化などの要因により変動、肥満に関与。
脳内ではアラキドン酸を含むほとんどの多価不飽和脂肪酸は
長鎖脂肪酸CoAリガーゼ(long-chain-fatty-acid-CoA synthase; ACSL)により活性化、
細胞膜のリン脂質にエステル化される他、
エネルギー源としてβ酸化により代謝されアセチルCoAの産生を促す。
アラキドン酸の代謝効率は、
細胞膜にある脂肪酸トランスポーターや
脂肪酸結合タンパク質fatty acid-binding protein; FABP)により影響を受ける。
遊離アラキドン酸はACSLによりアラキドノイルCoAarachidonoyl-CoA)となって活性化され、
アシルトランスフェラーゼacyltransferase)により細胞膜のリン脂質のsn-2位に取り込まれる 。
リン脂質産生2つの生化学的経路
ケネディー経路(Kennedy Pathway):
リン脂質はグリセロール-3-リン酸から脂肪酸の付加により新たに合成される
この経路では、
グリセロール-3-リン酸アシルトランスフェラーゼglycerol-3-phosphate acyltransferase; GPAT)が
グリセロール-3-リン酸GP)のsn-1位に脂肪酸をエステル化により付加、
リゾリン脂質の一種であるリゾホスファチジン酸lysophosphatidic acid)生成。続いて、
リゾホスファチジン酸アシルトランスフェラーゼlysophosphatidic acid acyltransferase; LPAAT)が
リゾホスファチジン酸のsn-2位に脂肪酸をエステル化により付加し、
ホスファチジン酸phosphatidic acid)を生成。
ホスファチジン酸はジアシルグリセロールdiacylglycerol; DAG)に変換され、
トリアシルグリセロールtriglyceride)、ホスファチジルコリンphosphatidylcholine; PC)、
ホスファチジルエタノラミンphosphatidylethanolamine; PE)、
ホスファチジルセリン(phosphatidylserine; PS)が産生。また、
ホスファチジン酸は
シチジン二リン酸ジアシルグリセロールcytidine diphosphate-DAG; CDP-DAG)にも変換され、
ホスファチジルイノシトールphosphatidylinositol; PI)、ホスファチジルセリン、
ホスファチジルグリセロールphosphatidylglycerol; PG)、カルジオリピンcardiolipin; CL)産生。
ランズ回路Lands Cycle:
一度生成されたリン脂質では、sn-2位に含まれる脂肪酸が代謝回転。
PLA2 によりsn-2位の脂肪酸が遊離、リゾリン脂質生成。
リゾリン脂質アシルトランスフェラーゼは、
生成されたリゾリン脂質のsn-2位に脂肪酸をエステル化により付加、その結果、
リゾリン脂質はリン脂質に戻る。
ランズ回路を担うリゾリン脂質アシルトランスフェラーゼlysophospholipid acyltransferase; LPLAT)には
数多くのアイソフォームが存在、それぞれ基質とするリゾリン脂質や脂肪酸の種類に特異性あり 。
遺伝子欠損マウスを用いた解析が精力的に進められている。
exa, LPCAT3 lysophosphatidylcholine acyltransferase 3)の欠損で、
ランズ回路によるホスファチジルコリンへのアラキドン酸の再取り込み障害、
細胞膜中のアラキドン酸の含有量が大きく減少 。
リゾリン脂質アシルトランスフェラーゼの各アイソフォームは、基質特異性に加え、
特異的細胞内局在や発現分布を取り、その結果、細胞膜のリン脂質の非対称性 多様性が生まれる 。
細胞膜からの放出 2種類のメカニズム:
細胞が成長因子、ホルモン、サイトカインなど様々な細胞外刺激に曝されると
遊離アラキドン酸が産生される 。
PLA2による細胞膜からのアラキドン酸の遊離と、
アラキドン酸を構造に含むエンドカンナビノイドの代謝による遊離アラキドン酸の産生。しかし、
いずれの経路が働くかは脳領域や細胞種、刺激によって異なる、実態不明。
各経路の機能的意義に関わり、今後精査が必要。
細胞膜からの放出後は、遊離アラキドン酸の90%以上は
直ちにACSLを介してアラキドノイルCoA/arachidonoyl-CoA)となり活性化、
リゾリン脂質アシルトランスフェラーゼにより細胞膜のリン脂質のsn-2位に再エステル化されて再利用 。
1,細胞膜のリン脂質のsn-2位に含まれるアラキドン酸がPLA2によって遊離 。
PLA2は分泌型PLA2secretory PLA2; sPLA2)、細胞質型PLA2cytosolic PLA2; cPLA2)、
Ca2+非依存型PLA2Ca2+-independent PLA2; iPLA2)に大別。
各グループは異なる遺伝子がコードする複数のアイソフォーム存在、制御機構や脂質選択性が異なる 。
cPLA2αを含むcPLA2の多くはその活性化に細胞内Ca2+濃度の上昇を必要。
アラキドン酸の細胞膜からの遊離にはcPLA2とsPLA2が関与、
iPLA2は脂質リモデリングを司るランズ回路に関与 。
cPLA2α欠損マウスのマクロファージや消化管で、
細菌内毒素リポポリサッカライドによるアラキドン酸の遊離消失 。また、
マクロファージ細胞株で、
脂質メディエイター血小板活性化因子platelet activating factor; PAF)による
アラキドン酸遊離はcPLA2阻害薬MAFPとsPLA2阻害薬diC6SNPEにより抑制 。
神経活動依存的にPLA2を介するアラキドン酸遊離が誘導される。
[14C]標識アラキドン酸を用いた実験で
ラットの大脳皮質や線条体でのアラキドン酸の取り込みがドパミンD2受容体のアゴニスト投与により亢進 。
また、[3H]標識アラキドン酸を用いた実験で、
線条体の初代培養神経細胞におけるアラキドン酸の遊離がNMDA型グルタミン酸受容体の活性化により促進 、その促進がPLA2を阻害するmepacrine(quinacrine)により阻害される 。
さらに、小脳プルキンエ細胞のシナプス長期抑制(long-term depression; LTD)は
cPLA2α欠損マウスで消失、
この異常がアラキドン酸やその生理活性代謝物であるプロスタグランジンD2、E2の補充により回復 。
エンドカナビノイドの代謝による遊離アラキドン酸の産生
脳、肝臓、肺で、LPSの全身性投与による遊離アラキドン酸の上昇は
cPLA2α欠損マウスでも影響を受けず、
モノアシルグリセロールリパーゼmonoacylglycerol lipase; MGL)遺伝子欠損マウスや
阻害薬投与により消失 。この結果は、
これら臓器では主にエンドカナビノイドの2-AGがMGLにより代謝され遊離アラキドン酸を生ず。
2-AGはシナプス活動に伴う細胞内のCa2+濃度上昇によりシナプス後部で産生、
シナプス前部のカンナビノイド受容体CB1に作用、逆行性にシナプス伝達を抑制。
2-AGは、主にsn-2位にアラキドン酸を含むホスファチジルイノシトールphosphatidylinositol)が
ホスホリパーゼCphospholipase C; PLC)によりジアシルグリセロールに代謝され、
さらにDAGがジアシルグリセロールリパーゼdiacylglycerol lipase; DGL)により代謝されて生ずる 。
遊離アラキドン酸はアナンダマイドanandamide; )からも産生。
アナンダマイドは、主にsn-2位にアラキドン酸を含むホスファチジルエタノラミンが
N-アシルトランスフェラーゼによりN-アラキドノイルホスファチジルエタノラミンN-arachidonoyl phosphatidylethanolamine)に代謝され、
さらにホスホリパーゼDphospholipase D)により代謝されて生ずる。
アナンダマイドは脂肪酸アミド加水分解酵素fatty acid amide hydrolase; FAAH)によっ
て代謝され遊離アラキドン酸を生ず 。
アラキドン酸カスケード
細胞膜から遊離したアラキドン酸は、シクロオキシゲナーゼcyclooxygenase; COX)、
リポキシゲナーゼlipoxygenase; LOX)、シトクロムcytochrome)
P-450ファミリーに属するエポキシゲナーゼepoxygenase; EOX)の
いずれかを律速酵素とする三つの経路により代謝され、特異的作用を持った生理活性脂質を生ず 。
これら生理活性脂質はアラキドン酸由来の20個の炭素鎖を持つことから、
エイコサノイド(eicosanoid ギリシャ語の20を意味すeicosa )と呼ぶ 。
1,シクロオキシゲナーゼ(COX)経路;
遊離アラキドン酸はCOXによりプロスタグランジンprostaglandin; PG)G2、さらにPGH2に変換。
PGH2はPGD合成酵素、PGE合成酵素、PGF合成酵素、PGI合成酵素、トロンボキサンA合成酵素を介しPGD2、PGE2、PGF2α、PGI2、トロンボキサンA2といったプロスタノイドに変換、
それぞれDP、EP、FP、IP、TPと呼ばれる選択的なGタンパク質共役型受容体に結合し作用発揮。
プロスタノイドは、
循環器・消化器・骨の恒常性維持、生殖器の機能、局所炎症に伴う血管透過性亢進、細胞性免疫応答など
全身の様々な機能を担う。
特に脳では、摂食、睡眠・覚醒、脳血流など生理的な脳機能の他、
疾病時の発熱 内分泌応答、疼痛、てんかん、脳虚血、ストレス、神経・精神疾患など様々な病態に関与。
2, リポキシゲナーゼ (LOX)経路;
遊離アラキドン酸は基質特異性の異なるLOXにより複数のヒドロペルオキシエイコサテトラエン酸Hydroperoxyeicosatetraenoic acid; HpETE)に変換、
さらに酵素的・非酵素的反応を介しロイコトリエンleukotriene)ヒドロキシエイコサテトラエン酸Hydroxyeicosatetraenoic acid; HETE)など多様な生理活性脂質に変換 。
主には12-LOXや15-LOXを介し8-HpETE、12-HpETE、15-HpETE産生、5-LOXと
5-lipoxygenase-activating protein (FLAP)を介し5-HpETE産生。
5-HpETEは速やかな脱水反応によりLTA4となり、LTA4はLTA4加水分解酵素LTA4 hydrolase)により
速やかにLTB4を生ずるか、LTC4合成酵素LTC4 synthase)によりLTC4を生ず。
LTC4はさらにLTD4、LTE4になる。
LTA4産生酵素を持たない細胞でも、近傍の細胞からLTA4の供給を受け、LTC4産生。
この現象を細胞間生合成経路transcellular biosynthesis)と呼ぶ。
LTA4・LTB4とLTC4・LTD4・LTE4は、システイン残基の有無により構造が大きく異り、
作用する受容体も異なる。
BLT1とBLT2はLTA4・LTB4をリガンドとするGタンパク質共役型受容体として同定された。しかし、
BLT1の親和性がBLT2に比し高く、
BLT2には親和性の高い12-ヒドロキシヘプタデカトリエン酸 12-hydroxyheptadecatrienoic acid; 12-HHT)
というリガンドが存在 。
LTC4・LTD4・LTE4からなるシスティニルロイコトリエンcysteinyl leukotrienes; Cys-LT)は
主にCysLT受容体のI型CysLT1R)とII型CysLT2R)に結合し作用発揮。
ロイコトリエンは、
好中球の走化性・凝集・細胞接着・脱顆粒化、平滑筋収縮、血管の透過性や収縮の調節、粘液分泌の増強、
免疫制御、炎症性疼痛、喘息、アレルギー性鼻炎、アレルギー性結膜炎、アトピー性皮膚炎、嚢胞性線維症、慢性閉塞性肺疾患、糸球体腎炎、麻痺性関節炎、乾癬、炎症性腸疾患、間質性肺疾患など
様々な生理的機能や疾患に関与。また、
ロイコトリエンは、脳損傷、多発性硬化症、アルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン舞踏病、
てんかん、うつ、加齢など多様な脳疾患と関連 。
3,エポキシゲナーゼ(EOX)経路;
遊離アラキドン酸は基質特異性の異なるEOXにより
複数のHETEやエポキシエイコサトリエン酸Epoxyeicosatrienoic acid; EET)に変換、
さらにEETはエポキシド加水分解酵素epoxide hydrolase; EH)により
多様なジヒドロキシエイコサトリエン酸dihydroxyeicosatrienoic acid; DHET)に変換 。
EETは、血管拡張、血管新生制御、抗炎症作用、さらに虚血再灌流への保護作用を有する。
しかしこれら脂質の受容体は確定しておらず、その作用機序には不明。
脳機能関連は、
ラットのひげ刺激に伴う感覚野での機能性充血は
EOXの二つの異なる阻害薬MS-PPOHとミコナゾールにより阻害 。一方、
神経細胞の過興奮に続く抑制が次第に広がるcortical spreading depression病態モデルとして、
アストロサイトでのCa2+上昇による大脳皮質の脳血管収縮の研究では、
この脳血管収縮がPLA2を阻害するMAFPや、
血管収縮活性を持つ20-HETEの生合成酵素であるEOXの一種CYP4Aを阻害するHET0016の処置により消失 。
これらの研究は、受容体同定を含めた作用機序の解明が必要。
遊離アラキドン酸のカリウムチャネルへの作用
アフリカツメガエル卵母細胞での強制発現系で、
遊離アラキドン酸やその非代謝型類似体である
5,8,11,14-eicosatetraynoic acid (ETYA)が
電位依存性K+チャネルのKv4ファミリーに属するKv4.1、Kv4.2を選択的に抑制。
ラット肺動脈筋細胞では、遊離アラキドン酸が遅延性整流性K+電流の減衰を促進 。
ラット心房細胞では、
遊離アラキドン酸を含むいくつかの不飽和脂肪酸が
Gタンパク質活性化K+チャネルのATPによる増強作用を抑制。
遊離アラキドン酸によるK+チャネルの抑制作用は
COX・LOX等の阻害薬により阻害されない故に、遊離アラキドン酸の直接作用である。
COS細胞に強制発現したtwo-pore domain K+チャネルである
TWIK-related arachidonic acid-stimulated K+ channel (TRAAK)は
遊離アラキドン酸を含むいくつかの不飽和脂肪酸により活性化か?
HEK-293細胞に過剰発現した骨格筋由来の電位依存性Na+チャネルを遊離アラキドン酸は抑制。
HEK-293細胞に過剰発現したT型Ca2+チャネルの電位依存性を遊離アラキドン酸修飾 。
この作用の一部はEOXの生理活性代謝物である8,9-epoxyeicosatrienoic acid (8,9-EET)を介するが、
COX・LOX・EOXの阻害薬で阻害されない作用もり、遊離アラキドン酸の直接作用。
また、HEK-293などの培養細胞では、遊離アラキドン酸が細胞外からのCa2+流入を誘導。
この作用にはストア作動性Ca2+流入に関わるSTIMやOrai1/3が関与するが、
ストア作動性Ca2+流入とはメカニズムが異なり 遊離アラキドン酸の直接作用によるものかは不明。
遊離アラキドン酸は神経(様)細胞における突起伸展、イオンチャネル制御、シナプス可塑性に関与。
exa,遊離アラキドン酸はsyntaxin 3を介したSNARE複合体の形成、
さらにsyntaxin 3依存的なPC12細胞の突起伸展を促進 。
ラットの交感神経節後神経細胞ではムスカリン受容体作動薬Oxo-MがN型Ca2+チャネルの電位依存性を変化。この作用はPLA2阻害薬により阻害され、遊離アラキドン酸により模倣される 。
海馬の神経細胞では
遊離アラキドン酸やその非代謝型類似体ETYAが電位依存性K+チャネルを抑制し、
興奮性シナプス入力を増強する] 。
海馬のシナプス長期増強 やシナプス長期抑圧 を遊離アラキドン酸促進、
特にシナプス長期抑圧はPLA2阻害薬である4-bromophenacyl bromideにより抑制。
しかし神経(様)細胞での遊離アラキドン酸の作用の
アラキドン酸カスケード未解明、遊離アラキドン酸の直接作用であるかは不明。
海馬の初代培養神経細胞ではシナプス後部で産生されるPGE2がEP2を介してシナプス伝達を促進
またEP2欠損マウスでは海馬のSchaffer側枝-CA1シナプスにおけるシナプス長期抑圧が減弱 。
従って、遊離アラキドン酸はPGE2の産生を介して海馬のシナプス機能調節する。
また脳病態関連では、
統合失調症など精神疾患患者の血液における遊離アラキドン酸の濃度の異常も報告されているが、
病態との因果関係は不明。
と たのしい演劇の日々
arachidonic acidアラキドン酸
Chemical formula; C20H32O2
アラキドン酸は4つのcis二重結合を有する20個の炭素鎖からなる脂肪酸。
メチル末端(ω or n)から数えて最初の二重結合が6番目と7番目の炭素の間に位置するため、
ω-6 (n-6)多価不飽和脂肪酸に含まれ、20:4ω-6と記載 。
アラキドン酸は、主に細胞膜のリン脂質のsn-2位にエステル化されて存在 。
主にグリセロリン脂質にコリンが結合したホスファチジルコリンに含まれるが、
ホスファチジルイノシトールなど他のグリセロリン脂質にも含まれる 。
刺激に応じホスホリパーゼA2phospholipase A2; PLA2 の酵素活性により細胞膜から遊離 、
エンドカンナビノイドの2-アラキドノイルグリセロール (2-AG)や
アナンダマイド(anandamide; の構成成分として細胞膜から遊離 。
エンドカンナビノイドはそれ自体で生理活性を有するが、代謝されて遊離アラキドン酸を産生 。
遊離アラキドン酸の大半は細胞膜のリン脂質に再度取り込まれるため、その濃度は低く維持されている 。
遊離アラキドン酸はプロスタノイドやロイコトリエンなど多様な生理活性脂質に変換され、
摂食、睡眠・覚醒、脳血流など生理的な脳機能の他、
疾病時の発熱や内分泌応答、疼痛、てんかん、脳虚血、ストレス、神経・精神疾患など様々な病態にも関与.
アラキドン酸は、肉、卵、魚介類などの食品から得られ
、細胞内のリン脂質に取り込まれ、様々な生体膜の合成に使用 。
実験(ラット使用)では、離乳後3〜4カ月の間ω-6 多価不飽和脂肪酸を欠乏させると、
脳内のアラキドン酸含有量が約30%減少 。
成人では、脳で代謝されるアラキドン酸は血漿から補われ、
脳内のアラキドン酸の含有量は一定に保たれている。
ヒトのPETイメージングにより、脳内へ取り込まれる血漿中のアラキドン酸は約18mg/日、
脳内におけるアラキドン酸の半減期は約147日 。
アラキドン酸は、18個の炭素鎖からなり2つのcis二重結合を含む
ω-6多価不飽和脂肪酸の1種であるリノール酸(18:2ω-6)からも産生。
リノール酸は必須脂肪酸、ナッツなどの種実類や植物油は豊富に含む 。
体内に取り込まれたリノール酸は、段階的な不飽和化 脂肪鎖伸長により
アラキドン酸やドコサテトラエン酸(22:4ω-6)などの脂肪酸に変換される。
リノール酸はΔ6不飽和化酵素fatty acid desaturase 2; FADS2)による脱水素化を介して
二重結合が付与されγ-リノレン酸(18:3ω-6)になる。
その後、γ-リノレン酸からΔ6脂肪酸伸長酵素(Δ6 elongase)により
脂肪酸が伸長されジホモ-γ-リノレン酸(20:3ω-6)になる。
Δ5不飽和化酵素(fatty acid desaturase 1; FADS1)によりジホモ-γ-リノレン酸からアラキドン酸産生 。
Δ5不飽和化酵素やΔ6不飽和化酵素の活性は、栄養、喫煙、老化などの要因により変動、肥満に関与。
脳内ではアラキドン酸を含むほとんどの多価不飽和脂肪酸は
長鎖脂肪酸CoAリガーゼ(long-chain-fatty-acid-CoA synthase; ACSL)により活性化、
細胞膜のリン脂質にエステル化される他、
エネルギー源としてβ酸化により代謝されアセチルCoAの産生を促す。
アラキドン酸の代謝効率は、
細胞膜にある脂肪酸トランスポーターや
脂肪酸結合タンパク質fatty acid-binding protein; FABP)により影響を受ける。
遊離アラキドン酸はACSLによりアラキドノイルCoAarachidonoyl-CoA)となって活性化され、
アシルトランスフェラーゼacyltransferase)により細胞膜のリン脂質のsn-2位に取り込まれる 。
リン脂質産生2つの生化学的経路
ケネディー経路(Kennedy Pathway):
リン脂質はグリセロール-3-リン酸から脂肪酸の付加により新たに合成される
この経路では、
グリセロール-3-リン酸アシルトランスフェラーゼglycerol-3-phosphate acyltransferase; GPAT)が
グリセロール-3-リン酸GP)のsn-1位に脂肪酸をエステル化により付加、
リゾリン脂質の一種であるリゾホスファチジン酸lysophosphatidic acid)生成。続いて、
リゾホスファチジン酸アシルトランスフェラーゼlysophosphatidic acid acyltransferase; LPAAT)が
リゾホスファチジン酸のsn-2位に脂肪酸をエステル化により付加し、
ホスファチジン酸phosphatidic acid)を生成。
ホスファチジン酸はジアシルグリセロールdiacylglycerol; DAG)に変換され、
トリアシルグリセロールtriglyceride)、ホスファチジルコリンphosphatidylcholine; PC)、
ホスファチジルエタノラミンphosphatidylethanolamine; PE)、
ホスファチジルセリン(phosphatidylserine; PS)が産生。また、
ホスファチジン酸は
シチジン二リン酸ジアシルグリセロールcytidine diphosphate-DAG; CDP-DAG)にも変換され、
ホスファチジルイノシトールphosphatidylinositol; PI)、ホスファチジルセリン、
ホスファチジルグリセロールphosphatidylglycerol; PG)、カルジオリピンcardiolipin; CL)産生。
ランズ回路Lands Cycle:
一度生成されたリン脂質では、sn-2位に含まれる脂肪酸が代謝回転。
PLA2 によりsn-2位の脂肪酸が遊離、リゾリン脂質生成。
リゾリン脂質アシルトランスフェラーゼは、
生成されたリゾリン脂質のsn-2位に脂肪酸をエステル化により付加、その結果、
リゾリン脂質はリン脂質に戻る。
ランズ回路を担うリゾリン脂質アシルトランスフェラーゼlysophospholipid acyltransferase; LPLAT)には
数多くのアイソフォームが存在、それぞれ基質とするリゾリン脂質や脂肪酸の種類に特異性あり 。
遺伝子欠損マウスを用いた解析が精力的に進められている。
exa, LPCAT3 lysophosphatidylcholine acyltransferase 3)の欠損で、
ランズ回路によるホスファチジルコリンへのアラキドン酸の再取り込み障害、
細胞膜中のアラキドン酸の含有量が大きく減少 。
リゾリン脂質アシルトランスフェラーゼの各アイソフォームは、基質特異性に加え、
特異的細胞内局在や発現分布を取り、その結果、細胞膜のリン脂質の非対称性 多様性が生まれる 。
細胞膜からの放出 2種類のメカニズム:
細胞が成長因子、ホルモン、サイトカインなど様々な細胞外刺激に曝されると
遊離アラキドン酸が産生される 。
PLA2による細胞膜からのアラキドン酸の遊離と、
アラキドン酸を構造に含むエンドカンナビノイドの代謝による遊離アラキドン酸の産生。しかし、
いずれの経路が働くかは脳領域や細胞種、刺激によって異なる、実態不明。
各経路の機能的意義に関わり、今後精査が必要。
細胞膜からの放出後は、遊離アラキドン酸の90%以上は
直ちにACSLを介してアラキドノイルCoA/arachidonoyl-CoA)となり活性化、
リゾリン脂質アシルトランスフェラーゼにより細胞膜のリン脂質のsn-2位に再エステル化されて再利用 。
1,細胞膜のリン脂質のsn-2位に含まれるアラキドン酸がPLA2によって遊離 。
PLA2は分泌型PLA2secretory PLA2; sPLA2)、細胞質型PLA2cytosolic PLA2; cPLA2)、
Ca2+非依存型PLA2Ca2+-independent PLA2; iPLA2)に大別。
各グループは異なる遺伝子がコードする複数のアイソフォーム存在、制御機構や脂質選択性が異なる 。
cPLA2αを含むcPLA2の多くはその活性化に細胞内Ca2+濃度の上昇を必要。
アラキドン酸の細胞膜からの遊離にはcPLA2とsPLA2が関与、
iPLA2は脂質リモデリングを司るランズ回路に関与 。
cPLA2α欠損マウスのマクロファージや消化管で、
細菌内毒素リポポリサッカライドによるアラキドン酸の遊離消失 。また、
マクロファージ細胞株で、
脂質メディエイター血小板活性化因子platelet activating factor; PAF)による
アラキドン酸遊離はcPLA2阻害薬MAFPとsPLA2阻害薬diC6SNPEにより抑制 。
神経活動依存的にPLA2を介するアラキドン酸遊離が誘導される。
[14C]標識アラキドン酸を用いた実験で
ラットの大脳皮質や線条体でのアラキドン酸の取り込みがドパミンD2受容体のアゴニスト投与により亢進 。
また、[3H]標識アラキドン酸を用いた実験で、
線条体の初代培養神経細胞におけるアラキドン酸の遊離がNMDA型グルタミン酸受容体の活性化により促進 、その促進がPLA2を阻害するmepacrine(quinacrine)により阻害される 。
さらに、小脳プルキンエ細胞のシナプス長期抑制(long-term depression; LTD)は
cPLA2α欠損マウスで消失、
この異常がアラキドン酸やその生理活性代謝物であるプロスタグランジンD2、E2の補充により回復 。
エンドカナビノイドの代謝による遊離アラキドン酸の産生
脳、肝臓、肺で、LPSの全身性投与による遊離アラキドン酸の上昇は
cPLA2α欠損マウスでも影響を受けず、
モノアシルグリセロールリパーゼmonoacylglycerol lipase; MGL)遺伝子欠損マウスや
阻害薬投与により消失 。この結果は、
これら臓器では主にエンドカナビノイドの2-AGがMGLにより代謝され遊離アラキドン酸を生ず。
2-AGはシナプス活動に伴う細胞内のCa2+濃度上昇によりシナプス後部で産生、
シナプス前部のカンナビノイド受容体CB1に作用、逆行性にシナプス伝達を抑制。
2-AGは、主にsn-2位にアラキドン酸を含むホスファチジルイノシトールphosphatidylinositol)が
ホスホリパーゼCphospholipase C; PLC)によりジアシルグリセロールに代謝され、
さらにDAGがジアシルグリセロールリパーゼdiacylglycerol lipase; DGL)により代謝されて生ずる 。
遊離アラキドン酸はアナンダマイドanandamide; )からも産生。
アナンダマイドは、主にsn-2位にアラキドン酸を含むホスファチジルエタノラミンが
N-アシルトランスフェラーゼによりN-アラキドノイルホスファチジルエタノラミンN-arachidonoyl phosphatidylethanolamine)に代謝され、
さらにホスホリパーゼDphospholipase D)により代謝されて生ずる。
アナンダマイドは脂肪酸アミド加水分解酵素fatty acid amide hydrolase; FAAH)によっ
て代謝され遊離アラキドン酸を生ず 。
アラキドン酸カスケード
細胞膜から遊離したアラキドン酸は、シクロオキシゲナーゼcyclooxygenase; COX)、
リポキシゲナーゼlipoxygenase; LOX)、シトクロムcytochrome)
P-450ファミリーに属するエポキシゲナーゼepoxygenase; EOX)の
いずれかを律速酵素とする三つの経路により代謝され、特異的作用を持った生理活性脂質を生ず 。
これら生理活性脂質はアラキドン酸由来の20個の炭素鎖を持つことから、
エイコサノイド(eicosanoid ギリシャ語の20を意味すeicosa )と呼ぶ 。
1,シクロオキシゲナーゼ(COX)経路;
遊離アラキドン酸はCOXによりプロスタグランジンprostaglandin; PG)G2、さらにPGH2に変換。
PGH2はPGD合成酵素、PGE合成酵素、PGF合成酵素、PGI合成酵素、トロンボキサンA合成酵素を介しPGD2、PGE2、PGF2α、PGI2、トロンボキサンA2といったプロスタノイドに変換、
それぞれDP、EP、FP、IP、TPと呼ばれる選択的なGタンパク質共役型受容体に結合し作用発揮。
プロスタノイドは、
循環器・消化器・骨の恒常性維持、生殖器の機能、局所炎症に伴う血管透過性亢進、細胞性免疫応答など
全身の様々な機能を担う。
特に脳では、摂食、睡眠・覚醒、脳血流など生理的な脳機能の他、
疾病時の発熱 内分泌応答、疼痛、てんかん、脳虚血、ストレス、神経・精神疾患など様々な病態に関与。
2, リポキシゲナーゼ (LOX)経路;
遊離アラキドン酸は基質特異性の異なるLOXにより複数のヒドロペルオキシエイコサテトラエン酸Hydroperoxyeicosatetraenoic acid; HpETE)に変換、
さらに酵素的・非酵素的反応を介しロイコトリエンleukotriene)ヒドロキシエイコサテトラエン酸Hydroxyeicosatetraenoic acid; HETE)など多様な生理活性脂質に変換 。
主には12-LOXや15-LOXを介し8-HpETE、12-HpETE、15-HpETE産生、5-LOXと
5-lipoxygenase-activating protein (FLAP)を介し5-HpETE産生。
5-HpETEは速やかな脱水反応によりLTA4となり、LTA4はLTA4加水分解酵素LTA4 hydrolase)により
速やかにLTB4を生ずるか、LTC4合成酵素LTC4 synthase)によりLTC4を生ず。
LTC4はさらにLTD4、LTE4になる。
LTA4産生酵素を持たない細胞でも、近傍の細胞からLTA4の供給を受け、LTC4産生。
この現象を細胞間生合成経路transcellular biosynthesis)と呼ぶ。
LTA4・LTB4とLTC4・LTD4・LTE4は、システイン残基の有無により構造が大きく異り、
作用する受容体も異なる。
BLT1とBLT2はLTA4・LTB4をリガンドとするGタンパク質共役型受容体として同定された。しかし、
BLT1の親和性がBLT2に比し高く、
BLT2には親和性の高い12-ヒドロキシヘプタデカトリエン酸 12-hydroxyheptadecatrienoic acid; 12-HHT)
というリガンドが存在 。
LTC4・LTD4・LTE4からなるシスティニルロイコトリエンcysteinyl leukotrienes; Cys-LT)は
主にCysLT受容体のI型CysLT1R)とII型CysLT2R)に結合し作用発揮。
ロイコトリエンは、
好中球の走化性・凝集・細胞接着・脱顆粒化、平滑筋収縮、血管の透過性や収縮の調節、粘液分泌の増強、
免疫制御、炎症性疼痛、喘息、アレルギー性鼻炎、アレルギー性結膜炎、アトピー性皮膚炎、嚢胞性線維症、慢性閉塞性肺疾患、糸球体腎炎、麻痺性関節炎、乾癬、炎症性腸疾患、間質性肺疾患など
様々な生理的機能や疾患に関与。また、
ロイコトリエンは、脳損傷、多発性硬化症、アルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン舞踏病、
てんかん、うつ、加齢など多様な脳疾患と関連 。
3,エポキシゲナーゼ(EOX)経路;
遊離アラキドン酸は基質特異性の異なるEOXにより
複数のHETEやエポキシエイコサトリエン酸Epoxyeicosatrienoic acid; EET)に変換、
さらにEETはエポキシド加水分解酵素epoxide hydrolase; EH)により
多様なジヒドロキシエイコサトリエン酸dihydroxyeicosatrienoic acid; DHET)に変換 。
EETは、血管拡張、血管新生制御、抗炎症作用、さらに虚血再灌流への保護作用を有する。
しかしこれら脂質の受容体は確定しておらず、その作用機序には不明。
脳機能関連は、
ラットのひげ刺激に伴う感覚野での機能性充血は
EOXの二つの異なる阻害薬MS-PPOHとミコナゾールにより阻害 。一方、
神経細胞の過興奮に続く抑制が次第に広がるcortical spreading depression病態モデルとして、
アストロサイトでのCa2+上昇による大脳皮質の脳血管収縮の研究では、
この脳血管収縮がPLA2を阻害するMAFPや、
血管収縮活性を持つ20-HETEの生合成酵素であるEOXの一種CYP4Aを阻害するHET0016の処置により消失 。
これらの研究は、受容体同定を含めた作用機序の解明が必要。
遊離アラキドン酸のカリウムチャネルへの作用
アフリカツメガエル卵母細胞での強制発現系で、
遊離アラキドン酸やその非代謝型類似体である
5,8,11,14-eicosatetraynoic acid (ETYA)が
電位依存性K+チャネルのKv4ファミリーに属するKv4.1、Kv4.2を選択的に抑制。
ラット肺動脈筋細胞では、遊離アラキドン酸が遅延性整流性K+電流の減衰を促進 。
ラット心房細胞では、
遊離アラキドン酸を含むいくつかの不飽和脂肪酸が
Gタンパク質活性化K+チャネルのATPによる増強作用を抑制。
遊離アラキドン酸によるK+チャネルの抑制作用は
COX・LOX等の阻害薬により阻害されない故に、遊離アラキドン酸の直接作用である。
COS細胞に強制発現したtwo-pore domain K+チャネルである
TWIK-related arachidonic acid-stimulated K+ channel (TRAAK)は
遊離アラキドン酸を含むいくつかの不飽和脂肪酸により活性化か?
HEK-293細胞に過剰発現した骨格筋由来の電位依存性Na+チャネルを遊離アラキドン酸は抑制。
HEK-293細胞に過剰発現したT型Ca2+チャネルの電位依存性を遊離アラキドン酸修飾 。
この作用の一部はEOXの生理活性代謝物である8,9-epoxyeicosatrienoic acid (8,9-EET)を介するが、
COX・LOX・EOXの阻害薬で阻害されない作用もり、遊離アラキドン酸の直接作用。
また、HEK-293などの培養細胞では、遊離アラキドン酸が細胞外からのCa2+流入を誘導。
この作用にはストア作動性Ca2+流入に関わるSTIMやOrai1/3が関与するが、
ストア作動性Ca2+流入とはメカニズムが異なり 遊離アラキドン酸の直接作用によるものかは不明。
遊離アラキドン酸は神経(様)細胞における突起伸展、イオンチャネル制御、シナプス可塑性に関与。
exa,遊離アラキドン酸はsyntaxin 3を介したSNARE複合体の形成、
さらにsyntaxin 3依存的なPC12細胞の突起伸展を促進 。
ラットの交感神経節後神経細胞ではムスカリン受容体作動薬Oxo-MがN型Ca2+チャネルの電位依存性を変化。この作用はPLA2阻害薬により阻害され、遊離アラキドン酸により模倣される 。
海馬の神経細胞では
遊離アラキドン酸やその非代謝型類似体ETYAが電位依存性K+チャネルを抑制し、
興奮性シナプス入力を増強する] 。
海馬のシナプス長期増強 やシナプス長期抑圧 を遊離アラキドン酸促進、
特にシナプス長期抑圧はPLA2阻害薬である4-bromophenacyl bromideにより抑制。
しかし神経(様)細胞での遊離アラキドン酸の作用の
アラキドン酸カスケード未解明、遊離アラキドン酸の直接作用であるかは不明。
海馬の初代培養神経細胞ではシナプス後部で産生されるPGE2がEP2を介してシナプス伝達を促進
またEP2欠損マウスでは海馬のSchaffer側枝-CA1シナプスにおけるシナプス長期抑圧が減弱 。
従って、遊離アラキドン酸はPGE2の産生を介して海馬のシナプス機能調節する。
また脳病態関連では、
統合失調症など精神疾患患者の血液における遊離アラキドン酸の濃度の異常も報告されているが、
病態との因果関係は不明。
と たのしい演劇の日々
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